説明

釣り靴

【課題】本発明は釣り靴に係り、歩行時の釣り靴の撓りを確保しつつ下からの突き上げによる不快感を解消し、併せて足の指先の感覚を損なうことのない釣り靴を提供することを目的とする。
【解決手段】請求項1に係る発明は、靴本体の底部に、ゴム製のミッドソールと滑り止め用のフェルト底を積層した釣り靴に於て、足の土踏まずの前側の前記ミッドソールに、つま先側先端と周縁部を残して該つま先側先端や周縁部に比し硬い硬質部を設けたことを特徴とする。そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の釣り靴に於て、前記硬質部に、足の屈曲用の溝を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底に滑り止め用のフェルト底を用いた釣り靴に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に開示されるように、従来、川釣りや渓流釣りでは、苔岩や川床での滑り止めのため、靴底にフェルト底を用いた釣り靴が広く使用されている。
【0003】
フェルトは、合成樹脂繊維やヒツジ,ラクダ等の動物の毛のかたまりを薄く板状に繰り返し押し固めて作られたもので、フェルト底はクッション性に優れ、また、撓りがあって高い滑り止め効果が得られる。このため、川釣りや渓流釣りでは、靴本体の底部にゴム製のミッドソールとフェルト底を積層した釣り靴が使用されている。
【特許文献1】実開昭63−38801号公報
【特許文献2】特開2004−160064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フェルト底はクッション性に優れるとはいえ、川底の尖った岩等を踏みつけると下からの突き上げが不快で、また、フェルトは摩擦に弱く、長期に亘る使用で摩耗が進むと、下からの突き上げで足の裏が痛いといった不具合が指摘されている。
【0005】
特に釣りは前体重、即ち、足の土踏まずの前側(つま先側)に体重をかけていることが多く、下からの突き上げで土踏まずの前側が痛いのが実情であった。
【0006】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、歩行時の釣り靴の撓りを確保しつつ下からの突き上げによる不快感を解消し、併せて足の指先の感覚を損なうことのない釣り靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、靴本体の底部に、ゴム製のミッドソールと滑り止め用のフェルト底を積層した釣り靴に於て、足の土踏まずの前側の前記ミッドソールに、つま先側先端と周縁部を残して該つま先側先端や周縁部に比し硬い硬質部を設けたことを特徴とする。
【0008】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の釣り靴に於て、前記硬質部に、足の屈曲用の溝を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、ミッドソールとフェルト底の撓りを確保しつつ下からの突き上げによる不快感を解消することができると共に、足の指先の感覚を損なう虞のない釣り靴を提供することが可能となった。
【0010】
そして、請求項2に係る発明によれば、硬質部に屈曲用の溝を設けた結果、足が屈曲し易い利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2は請求項1及び請求項2の第一実施形態に係る釣り靴を示し、本実施形態に係る釣り靴1は、靴本体3と、該靴本体3のつま先側から側周面に亘って取り付く補強シート(補強ゴム)5と、靴本体3の底部に取り付くゴム製のミッドソール7と、該ミッドソール7の底部に取り付く天然繊維や合成樹脂繊維を加圧して板状に形成したフェルト底9とで構成されている。
【0013】
尚、前記釣り靴1は右足用のもので、該釣り靴1と左右対称に形成された左足用の釣り靴(図示せず)とで本実施形態に係る釣り靴が構成されるが、説明を簡略化するため、本明細書では右足用の釣り靴1について説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように前記靴本体3は、非透水性で伸縮自在なクロロプレーンゴムシートの両面に伸縮自在なナイロン繊維等の織布を添着して足袋状に形成したもので、常に足にぴったり密着した状態となるように形成されている。そして、その側部にサイドファスナ11が足の出入れ口13から踝方向へ縫着され、また、靴本体3のつま先側から側周面に亘り薄肉な補強シート5が表面に貼着されて靴本体3の補強が図られている。
【0015】
一方、図1乃至図3に示すように前記ミッドソール7は、従来と同様、周縁に立ち上がり部15が延設されたカップソールタイプで、一例として天然ゴムやウレタンゴム等の合成ゴムで形成されている。そして、前記立ち上がり部15で囲繞されたミッドソール7の上面に、平面視正方形状,平面視矩形状,平面視三角形状等からなる複数の独立したブロック状の突起17が、釣り靴1の前後左右方向に互いに間隙を有し、夫々の突起17が独立して撓むように並設されており、図2に示すように突起17はミッドソール7の踵側へと順次肉厚に形成されている。
【0016】
そして、図2及び図3に示すように本実施形態は、上述の如き構成に加え、足19の土踏まず(図示せず)の前側のミッドソール7に、つま先側先端21と左右両側の周縁部23を残して該つま先側先端21や周縁部23に比し硬い材料からなる硬質部25を設けると共に、該硬質部25に足19の屈曲用の溝27,29を設けたものである。
【0017】
前記硬質部25は、平面視でその輪郭がミッドソール7の外周形状に沿って形成され、ミッドソール7を天然ゴムとし、硬質部25をこれより硬度の高いウレタンゴムとしたり、両者共に同種の材料(例えばウレタンゴム)とし、硬質部25をミッドソール7より高硬度の材料を用いてもよい(硬度はJIS K 6253の試験方法による)。
【0018】
而して、前記硬質部25は平面視略おむすび状のプレートからなり、ミッドソール7の上面に設けた凹状の収納部31内に該上面と面一に固着されている。そして、図3に示すように釣り靴1を履いた足19の指先の感覚を損なうことがないように、硬質部25はミッドソール7のつま先側先端21と周縁部23を残して平面視でミッドソール7より小さく形成されている。
【0019】
そして、硬質部25の夫々前後に、足19の親指33と人差し指35との隙間37に沿って夫々硬質部25の外周に開口し、中央側に向かって延びる溝27が設けられており、硬質部25の前側に溝27を設けることで、親指33と人差し指35が上下方向に自在に動いて足19のつま先に力をかけ易く、また、硬質部25の後側に溝27を設けることで、ミッドソール7の左右の上下方向の撓みに支障を来すことがないようになっている。
【0020】
更に、硬質部25の左右方向に夫々2本づつ、4本の溝29が設けられており、斯様に複数本の溝27を硬質部25の左右方向に設けることで、つま先を曲げたときに硬質部25がミッドソール7の撓みに支障を来すことがなく、実釣時に足19の甲部の屈曲に追従してミッドソール7が撓み易くなっている。
【0021】
而して、ミッドソール7への硬質部25の取付けは、先ず、上面に前記突起17と凹部31を有するミッドソール7を製造する。この後、該凹部31内にこれよりも厚肉な硬質部形成部材を収納して、熱をかけ乍ら該硬質部形成部材を上方からプレスすることで、上面と面一な前記硬質部25を凹部31内に固着する。そして、斯様に形成したミッドソール7の立ち上がり部15内に前記靴本体3を収納,配置した後、熱をかけてこれらを加硫することで、立ち上がり部15の内周と該立ち上がり部15で囲繞されたミッドソール7の上面(突起17の上面)に靴本体3が溶着される。尚、靴本体3の側周面は、前記補強シート5を介して立ち上がり部15に溶着されている。
【0022】
そして、ミッドソール7の底部に、従来と同様、1.0〜2.0cm程の厚みのフェルト底9が取り付けられており、フェルト底9はミッドソール7の底部との間にゴム板を挟み、これを加硫することでミッドソール7の底部に溶着固定されている。尚、接着剤を用いてミッドソール7の底部にフェルト底9を接着してもよい。
【0023】
また、図2及び図3に示すように、前記硬質部25の略中央とミッドソール7に水抜き孔39が連通して設けられており、該水抜き孔39は前記靴本体3の底部とフェルト底9に挟まれている。
【0024】
即ち、既述したように靴本体3の側周面は補強シート5を介して前記立ち上がり部15に溶着されているものの、靴本体3の表面には伸縮自在なナイロン繊維等の織布が添着されているため、この織布に染み込んだ水が、補強シート5と靴本体3の間から靴本体3の底部に染み出して、ミッドソール7との間に溜まってしまうことがある。
【0025】
このため、前記水抜き孔41は、靴本体3の底部とミッドソール7との間に染み出した水を、フェルト底9を通して外部に排水させるためのものである。
【0026】
本実施形態に係る釣り靴1はこのように構成されており、釣り靴1を履くには、前記サイドファスナ11を操作して釣り靴1の出入れ口13を広げればよい。
【0027】
而して、ミッドソール7の上面に設けられた突起17は、夫々、独立した構造でミッドソール7やフェルト底9の撓りを損なうものではないため、フェルト底9が十分に撓って苔岩や川床での滑りを防止する。
【0028】
また、既述したように従来、川底の尖った岩等を踏みつけると、フェルト底を通して下からの突き上げがあったが、本実施形態によれば、ミッドソール7に設けた硬質部25が突き上げによる足19の痛みを防ぎ、更に、前記突起17が下からの突き上げを緩和して足19の痛みを防止する。
【0029】
而も、既述したように硬質部25は、ミッドソール7のつま先側先端21と周縁部23を残しているため、足19の指先の感覚を損なうことがなく、また、硬質部25の前側に前記溝27を設けた結果、親指33と人差し指35を上下方向に自在に動かすことができて足19のつま先に力がかけ易くなる。
【0030】
更に、硬質部25の後側に溝27を設けると共に、硬質部25の左右方向に4本の溝29を設けたため、ミッドソール7の撓みに硬質部25が支障を来すことがなく、実釣時に足19の甲部の屈曲等に追従してミッドソール7が容易に撓むこととなる。
【0031】
そして、靴本体3の表面の織布に染み込んだ水が補強シート5と靴本体3の間から靴本体3の底部に染み出すが、靴本体3の底部とミッドソール7との間に水が溜まることなく水抜き孔39からフェルト底9を通して排水される。
【0032】
このように、本実施形態によれば、ミッドソール7とフェルト底9(釣り靴1)の撓りを確保しつつ下からの突き上げによる不快感を解消することができると共に、足19の指先の感覚を損なう虞のない釣り靴1を提供することが可能となった。
【0033】
また、屈曲用の溝27,29を設けた結果、硬質部25が親指33と人差し指35の動き(屈曲)に支障を来すことがなくなるため、親指33と人差し指35が自在に動いて足19のつま先に力をかけ易く、また、足19が屈曲し易い利点を有する。
【0034】
更に、本実施形態によれば、靴本体3の底部とミッドソール7との間に水が溜まることがない。
【0035】
図4は請求項1及び請求項2の第二実施形態に係る釣り靴の右足用釣り靴の断面図を示し、本実施形態は、前記硬質部25に代え、硬質部25-1をミッドソール7-1の底面まで貫通させたことを特徴とする。
【0036】
尚、発明部分を除く構成は前記第一実施形態と同様であるため、ここではそれらについての説明は省略し、専ら発明部分について説明する。そして、前記実施形態と同一のものは同一符号を以って表示する。
【0037】
図示しないが本実施形態の硬質部25-1も前記硬質部25と同一の平面形状を有し、ミッドソール7-1のつま先側先端21と周縁部を残してミッドソール7-1と一体に形成され、前記溝27,29と同一の溝が形成されている。
【0038】
而して、本実施形態に於ける硬質部25-1の成形は、突起17の形成前のミッドソールの原形上に硬質部形成部材を配置した後、ミッドソールの原形全体に熱をかけ乍ら金型でプレスすることで、ミッドソール7-1を貫通する硬質部25-1を該ミッドソール7-1に一体形成すると共に、ミッドソール7-1の上面に金型で突起17を設けたものである。
【0039】
而して、本実施形態に係る釣り靴1-1によっても、前記釣り靴1と同様、所期の目的を達成することが可能で、ミッドソール7-1とフェルト底9(釣り靴1-1)の撓りを確保しつつ下からの突き上げによる不快感を解消することができると共に、足の指先の感覚を損なう虞のない釣り靴1-1を提供することが可能となった。
【0040】
また、屈曲用の溝27,29を設けた結果、硬質部25-1が親指と人差し指の動き(屈曲)に支障を来すことがなくなるため、親指と人差し指が自在に動いて足のつま先に力をかけ易く、また、足が屈曲し易い利点を有する。
【0041】
更に、本実施形態によっても、靴本体3の底部とミッドソール7-1との間に水が溜まることがない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】請求項1及び請求項2の第一実施形態に係る釣り靴の右足用釣り靴の側面図である。
【図2】図1に示す釣り靴の断面図である。
【図3】ミッドソールの平面図である。
【図4】請求項1及び請求項2の第二実施形態に係る釣り靴の右足用釣り靴の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,1-1 釣り靴
3 靴本体
5 補強シート
7,7-1 ミッドソール
9 フェルト底
11 サイドファスナ
15 立ち上がり部
17 突起
19 足
21 つま先側先端
23 周縁部
25,25-1 硬質部
27,29 溝
31 収納部
33 親指
35 人差し指
39 水抜き孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴本体の底部に、ゴム製のミッドソールと滑り止め用のフェルト底を積層した釣り靴に於て、
足の土踏まずの前側の前記ミッドソールに、つま先側先端と周縁部を残して該つま先側先端や周縁部に比し硬い硬質部を設けたことを特徴とする釣り靴。
【請求項2】
前記硬質部に、足の屈曲用の溝を設けたことを特徴とする請求項1に記載の釣り靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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