電力変換装置
【課題】系統電源に流れる高調波電流を簡単な構成で低減でき、安価で高効率な電解コンデンサレスの電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流側にコンデンサCoが接続され、交流側に三相系統4が接続され、直流側と交流側との間で電力を変換する三相インバータ2と、交流側で三相インバータ2に接続され、三相インバータ2の動作により発生する高調波電流による瞬時無効電力を補償して三相系統4の系統電流を正弦波状とする瞬時無効電力補償装置3とを有する。
【解決手段】直流側にコンデンサCoが接続され、交流側に三相系統4が接続され、直流側と交流側との間で電力を変換する三相インバータ2と、交流側で三相インバータ2に接続され、三相インバータ2の動作により発生する高調波電流による瞬時無効電力を補償して三相系統4の系統電流を正弦波状とする瞬時無効電力補償装置3とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、系統電源の高調波電流を低減して力率を高効率で改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、系統電源の高調波電流を低減しつつ高効率化を図る電力変換装置として、図12に示す電力変換装置が知られている(非特許文献1)。この電力変換装置は、図12に示すように、DC−AC変換を行う三相直列多重ハイブリッド変換器であり、直流電源Edの直流電力を交流電力に変換して三相系統に供給する。
【0003】
三相直列多重ハイブリッド変換器は、U相,V相,W相の6つの大容量GTO(Gate Turn-Off thyristor)素子TH1〜TH6で構成されるGTO変換器21と、高速動作により高調波電流を低減するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1〜Q12で構成されるIGBT変換器22とを、変圧器23,24を用いて直列多重化して三相系統に接続している。
【0004】
GTO変換器21は、図13(b)に示すように、方形波電圧VGTOu(U相のみを示す。)を出力し、出力電圧基本波成分のベース分を変圧器24に供給する。IGBT変換器22は、図13(c)のV*IGBTu(u相のみを示す)に示すように、IGBTの高速スイッチング特性を活かしてPWMスイッチングを行う。IGBT変換器22は、出力電圧基本波の追加成分を分担すると同時に、GTO変換器21が出力する高調波電流を相殺する電圧をも出力する。
【0005】
より具体的に説明すると、まず、U相出力電圧指令Vu*を、図13(a)に示すように正弦波と仮定する。このU相出力電圧指令Vu*に対して、GTO変換器21は、U相出力電圧指令Vu*と基本波が同位相の方形波電圧VGTOuを出力する。U相出力電圧指令Vu*とGTO変換器21の方形波電圧VGTOuとの差をIGBT変換器22のPWM用指令信号V*IGBTuとする。
【0006】
IGBT変換器22は、PWM用指令信号V*IGBTuを、図14に示すように、正及び負にバイアスされた2つの三角搬送波信号Tri1,Tri2と比較することにより、パルス信号を生成し、このパルス信号によりIGBT素子Q1〜Q12のPWM制御を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】李東昇,福田昭治,久保佑允,北野正之,「三相直列多重ハイブリッド変換器」,電気学会論文D,124巻5号,pp503−509,2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の電力変換装置では、IGBT変換器22に電解コンデンサからなる直流コンデンサC11,C12を用いていたが、電解コンデンサは寿命に問題がある。このため、電解コンデンサレスが望まれていた。
【0009】
また、GTO変換器21とIGBT変換器22とを接続するために変圧器23,24が用いられており、変圧器23,24のコストや大きさが大きくなってしまう。さらに、IGBT変換器22のIGBT素子Q1〜Q12をPWM制御するために、効率を上げることは難しい。
【0010】
また、系統電源から直流電源を得るAC−DC変換の一般的な方法としてダイオードを用いた整流器がある。ダイオード整流器は、直流側に直流電圧変動を抑制するための大容量の平滑コンデンサ(一般的に電解コンデンサ)が使用される。このような構成でAC−DC変換を行う場合、交流側の電流はパルス状になり、大きな高調波電流が系統電源に流れることになる。この高調波電流を抑制するための簡単な方法は、リアクトルをダイオード整流器に直列に接続することであるが、大幅な高調波電流の低減は期待できない。
【0011】
このため、AC−DC変換にスイッチング素子を用い、高周波スイッチングして系統電源に流れる電流を正弦波状にする方法(例えば、PWMコンバータ)が知られている。しかしながら、スイッチング素子はダイオードに比べて高価であり、また、PWM制御するために、効率を上げることは難しい。
【0012】
本発明の課題は、系統電源に流れる高調波電流を簡単な構成で低減でき、安価で高効率な電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、第1直流側に第1コンデンサが接続され、第1交流側に三相系統が接続され、第1直流側と第1交流側との間で電力を変換する電力変換部と、第1交流側で電力変換部に接続され、電力変換部の動作により発生する高調波電流による瞬時無効電力を補償して三相系統の系統電流を正弦波状とする瞬時無効電力補償部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力が電力変換部の動作により発生するが、この高調波電流による瞬時無効電力を瞬時無効電力補償部が補償するので、三相系統の系統電流を正弦波状にでき、高調波電流を低減することができ、効率を向上させることができる。また、電力変換部及び瞬時無効電力補償部の第1コンデンサ及び第2コンデンサは、エネルギーを蓄積する目的のコンデンサではないので、電解コンデンサレスにでき、電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例2に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例3に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施例4に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例4に係る電力変換装置の各スイッチの動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施例4に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施例5に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施例6に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来の電力変換装置の一例を示す構成図である。
【図13】従来の電力変換装置の出力指令値とGTO変換器の出力電圧とIGBT変換器の指令値を示す図である。
【図14】従来の電力変換装置のIGBT変換器のPWM制御法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の電力変換装置のいくつかを図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図1に示す電力変換装置は、昇圧コンバータ1(直流電源)、コンデンサCo(第1コンデンサ)、昇圧コンバータ1及びコンデンサCoと三相系統4とに接続される三相インバータ2(三相ブリッジ構成の第1スイッチング回路)、三相系統4及び三相インバータ2に接続される瞬時無効電力補償装置3(瞬時無効電力補償部)を有している。昇圧コンバータ1とコンデンサCoと三相インバータ2とは、電解コンデンサレスインバータを構成する。
【0018】
昇圧コンバータ1は、太陽電池(PV)又は燃料電池(FC)等の直流源Voの直流電圧を昇圧リアクトルLdとMOSFETなどからなるスイッチング素子SdL,SdHとで昇圧して、昇圧された直流電圧Vdを三相インバータ2に供給する。なお、スイッチング素子SdHをダイオードに置き換えることもできる。
【0019】
三相インバータ2は、周知の三相ブリッジ構成のインバータ回路を形成する6つのスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLとを有する。スイッチング素子SuHとスイッチング素子SuLとの接続点(U相第1交流側)は三相系統4のu相に接続され、スイッチング素子SvHとスイッチング素子SvLとの接続点(V相第1交流側)は三相系統4のv相に接続され、スイッチング素子SwHとスイッチング素子SwLとの接続点(W相第1交流側)は三相系統4のw相に接続されている。
【0020】
スイッチング素子SuH,SuLの直列回路と、スイッチング素子SvH,SvLの直列回路と、スイッチング素子SwH,SwLの直列回路とが並列に接続されて直流側(第1直流側)を形成し、昇圧コンバータ1及びコンデンサCoに接続されている。
【0021】
三相インバータ2は、昇圧コンバータ1からの直流電力を、各々のスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLが三相系統電圧VSに同期して120度期間導通するスイッチング動作(三相120度通電方式のスイッチング動作)により三相系統4に交流電力を供給する。各々のスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLは、還流ダイオードを備えたMOSFETなどからなる。
【0022】
三相インバータ2は、三相系統4に供給する有効電力を一定とするために、三相インバータ2の直流側コンデンサであるコンデンサCoとして、電解コンデンサではなく、小容量のフィルムコンデンサを用いている。コンデンサCoは、サージ電圧を吸収するものであり、エネルギー蓄積要素ではない。
【0023】
瞬時無効電力補償装置3は、三相系統4側で三相インバータ2と並列に接続され、コンデンサC1(第2コンデンサ)と周知の三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路を形成する6つのスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2と3つのリアクトルLu,Lv,Lw(第1リアクトル)とを有している。
【0024】
スイッチング素子Su1とスイッチング素子Su2との接続点(U相第2交流側)は、リアクトルLuの一端に接続され、リアクトルLuの他端は三相系統4のu相に接続されている。スイッチング素子Sv1とスイッチング素子Sv2との接続点(V相第2交流側)はリアクトルLvの一端に接続され、リアクトルLvの他端は三相系統4のv相に接続されている。スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw2との接続点(W相第2交流側)は、リアクトルLwの一端に接続され、リアクトルLwの他端は三相系統4のw相に接続されている。
【0025】
スイッチング素子Su1,Su2の直列回路と、スイッチング素子Sv1,Sv2の直列回路と、スイッチング素子Sw1,Sw2の直列回路とが並列に接続されて直流側(第2直流側)を形成し、コンデンサC1に接続されている。
【0026】
瞬時無効電力補償装置3は、各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を高速スイッチングさせることにより、三相インバータ2のスイッチング動作により発生する瞬時無効電力、即ち高調波電流を補償する。各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2は、還流ダイオードを備えたMOSFETなどからなる。瞬時無効電力補償装置3の直流側コンデンサであるコンデンサC1は、エネルギー蓄積が目的ではないので、小容量のフィルムコンデンサなどを用いている。
【0027】
次にこのように構成された実施例1の電力変換装置の動作を図2を参照しながら詳細に説明する。図2では、u相のみを示している。まず、三相インバータ2は、6つのスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLのうち、相電圧が最大となる相の上側スイッチング素子(上アーム)と相電圧が最小の相の下側スイッチング素子(下アーム)とをオンさせる。その結果、コンデンサCoは、三相系統電圧VSの線間電圧最大値が現われ、図2の電圧Vdのような三相ブリッジ構成の整流回路の整流波形になる。
【0028】
このとき、昇圧コンバータ1が一定電力Pを伝達しているとすると、三相インバータ2の直流側には、P/Vdの電流が流れ込み、交流側から三相系統4に流出する。従って、三相インバータ2のU相電流iIuは、図2に示すように、基本波力率1の方形波電流になる。三相インバータ2の瞬時有効電力は、P一定であるので、U相電流iIuの高調波成分は全て瞬時無効電力である。即ち、U相電流iIuは、瞬時有効電力になる基本波電流iIfと瞬時無効電力になる高調波電流iIhとの合成である。
【0029】
瞬時無効電力補償装置3は、図2に示すように、高調波電流iIhとは逆位相の補償電流iCuを三相系統4に注入することによりU相電流iIuの高調波電流iIhを補償する。その結果、三相系統4のU相系統電流iSuは、力率1の正弦波状になる。
【0030】
このとき、補償電流iCuの最大値はiSuの1/2であり、通常のPWMインバータに比較して、リアクトルLu,Lv,Lwの蓄積エネルギーは1/4でよく、リアクトルLu,Lv,Lwの小型化及び軽量化が図れる。また、瞬時無効電力補償装置3のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2には、三相インバータ2に比較して、小容量のMOSFETを使用できるため、スイッチング損失を低減できる。
【0031】
なお、一般的に高調波電流は、瞬時有効電力成分と瞬時無効電力成分との両方を含むため、一般的な高調波抑制装置ではエネルギー蓄積要素が必要である。
【0032】
これに対して、実施例1の電力変換装置では、電解コンデンサレスインバータの高調波電流は、全て瞬時無効電力であるため、その高調波抑制には原理的にエネルギー蓄積要素を必要としない。従って、三相インバータ2の直流側コンデンサであるコンデンサCo、瞬時無効電力補償装置3の直流側コンデンサであるコンデンサC1は、エネルギーを蓄積する必要がない。
【0033】
このように、実施例1の電力変換装置によれば、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力が三相インバータ2の動作により発生するが、この高調波電流による瞬時無効電力を瞬時無効電力補償装置3が補償するので、三相系統4の系統電流を力率1の正弦波状にでき、高調波電流を低減することができる。また、三相インバータ2は、三相系統電圧VSに同期して120度期間導通するスイッチング動作であるので、三相系統周波数でのスイッチングとなり電力変換の効率を向上させることができる。また、三相インバータ2は直流電力を交流電力に変換するものであるが、三相インバータ2及び瞬時無効電力補償装置3のコンデンサCo,C1は、エネルギーを蓄積する目的のコンデンサではないので、電解コンデンサレスにでき、電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することができる。
【実施例2】
【0034】
図3は本発明の実施例2に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図3に示す実施例2の電力変換装置は、図1に示す実施例1の三相インバータ2の直流側と瞬時無効電力補償装置3の直流側とを共通に接続し、コンデンサC1を削除したことを特徴とする。
【0035】
即ち、実施例1のコンデンサCoとコンデンサC1とはともにエネルギー蓄積要素ではないので、コンデンサCoを設けるのみで済み、安価で構成を簡単にできる。
【0036】
図3に示すコンデンサCoの両端電圧である直流電圧Vdは三相ブリッジ構成の整流回路の整流波形になり、瞬時無効電力補償装置3aには1相PWM制御を適用することができ、図1に示す電力変換装置に比較して、スイッチング損失が1/3程度に低減できる。
【0037】
また、三相インバータ2から瞬時無効電力補償装置3aの正極直流側に電流iCpが流入し、負極直流側に電流iCnが流入する。電流iCpは三相系統4から三相インバータ2の上アームを通して瞬時無効電力補償装置3aへ流入し、電流iCnは三相インバータ2の下アームを通して瞬時無効電力補償装置3aへ流入し、補償電流iCuは三相インバータ2の開放相を介して三相系統4に供給される。
【0038】
図4は本発明の実施例2に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。図4では、u相のみを示している。三相インバータ2のU相電流iIuは、120度期間導通するパルス波形であり、三相系統4のU相系統電流iSuの最大値付近が現われる。リアクトルLuを流れる補償電流iCuは、三相インバータ2のU相の零電流期間の電流を補償するので、U相系統電流iSuは力率1の正弦波状となる。
【0039】
このように実施例2の電力変換装置によれば、実施例1の電力変換装置の効果と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0040】
図5は本発明の実施例3に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図5に示す実施例3の電力変換装置は、図3に示す実施例2の電力変換装置に対して、瞬時無効電力補償装置3bがハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5と、リアクトルLSW(第2リアクトル)と、3つの交流スイッチSu,Sv,Swとで構成されることを特徴とする。
【0041】
ハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5は、コンデンサCoの両端に接続され、還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswHと還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswLとが直列に接続されてなる。
【0042】
リアクトルLSWは、スイッチング素子SswHとスイッチング素子SswLとの接続点(第3交流側)に一端が接続されている。3つの交流スイッチSu,Sv,Swは、一端がリアクトルLSWの他端に接続され他端が三相系統4のU相,V相,W相に接続されている。
【0043】
図5に示す実施例3の電力変換装置では、交流スイッチSu,Sv,Swが必要となるが、2つのスイッチング素子SswH,SswLと1つのリアクトルLSWで済み、装置を小型化及び軽量化できる。
【0044】
このような構成の瞬時無効電力補償装置3bによれば、三相インバータ2の開放相(例えばu相のとき)の交流スイッチSuのみをオンさせることにより、補償電流iCuを三相系統4のU相に流す。このときの三相インバータ2のU相電流iIu、補償電流iCuは図6に示すようになる。
【0045】
また、リアクトルLswに流れるリアクトル電流iswは三相の補償電流iCu,iCv,iCwの和となり、図6に示すように三角波状の電流が流れる。
【実施例4】
【0046】
図7は本発明の実施例4に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図7に示す実施例4の電力変換装置は、図5に示す実施例3の電力変換装置のより具体的な回路例を示したものである。
【0047】
瞬時無効電力補償装置3cは、ハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5と、リアクトルLSWと、3つの交流スイッチとして還流ダイオードを備えた2つのMOSFETを逆接続してなる双方向スイッチSuM,SvM,SwMとで構成されることを特徴とする。
【0048】
また、双方向スイッチSuM,SvM,SwMと三相系統4である三相交流電源Vu,Vv,Vwとの間には、三相用コンデンサCFと三相用リアクトルLacとのLC回路が設けられている。
【0049】
図8は本発明の実施例4に係る電力変換装置の各スイッチの動作を説明するタイミングチャートである。
【0050】
次に、図8を参照しながら、実施例4の電力変換装置の各スイッチの動作を説明する。まず、時刻t1〜t2(60度期間)において、U相系統電圧Vuが最大で、V相系統電圧Vvが最小であるので、スイッチング素子SvLがオン状態で、スイッチング素子SuHをオンさせる。また、開放相がW相であるので、W相の双方向スイッチSwMをオンさせると、補償電流iswwが流れる。時刻t1〜時刻t2においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswwをW相系統電圧Vwの減少に合わせて減少させる。
【0051】
次に、時刻t2〜t3(60度期間)において、U相系統電圧Vuが最大で、W相系統電圧VWが最小であるので、スイッチング素子SUHがオン状態で、スイッチング素子SwLをオンさせる。また、開放相がV相であるので、V相の双方向スイッチSvMをオンさせると、補償電流iswvが流れる。時刻t2〜時刻t3においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswvをV相系統電圧Vvの増加に合わせて増加させる。
【0052】
次に、時刻t3〜t4(60度期間)において、V相系統電圧Vvが最大で、W相系統電圧VWが最小であるので、スイッチング素子SwLがオン状態で、スイッチング素子SvHをオンさせる。また、開放相がU相であるので、U相の双方向スイッチSuMをオンさせると、補償電流iswuが流れる。時刻t3〜時刻t4においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswuをU相系統電圧Vuの減少に合わせて減少させる。
次に、時刻t4〜t5(60度期間)において、V相系統電圧Vvが最大で、U相系統電圧Vuが最小であるので、スイッチング素子SvHがオン状態で、スイッチング素子SuLをオンさせる。また、開放相がW相であるので、W相の双方向スイッチSwMをオンさせると、補償電流iswwが流れる。時刻t4〜時刻t5においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswwをW相系統電圧Vwの増加に合わせて増加させる。
【0053】
次に、時刻t5〜t6(60度期間)において、W相系統電圧Vwが最大で、U相系統電圧Vuが最小であるので、スイッチング素子SuLがオン状態で、スイッチング素子SwHをオンさせる。また、開放相がV相であるので、V相の双方向スイッチSvMをオンさせると、補償電流iswvが流れる。時刻t5から時刻t6においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswvをV相系統電圧Vvの減少に合わせて減少させる。時刻t6以降も上記処理と同様な処理が行われることになる。
【0054】
なお、時刻t1〜時刻t6において、スイッチング素子SswLとスイッチング素子SswHとが交互に短い周期でPWMスイッチングしている。
【0055】
図9は本発明の実施例4に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートであり、シミュレーション結果を示している。図9では、u相のみを示している。シミュレーションでは、交流出力電力Pが4kWとし、三相系統4が200V、50Hzの平衡三相正弦波とした。
【0056】
U相系統電流iuは正弦波状に制御されている。リアクトルLswに流れるリアクトル電流iswは三角波電流となっており、双方向スイッチSuM,SvM,SwMには60度期間について三相系統4に補償電流iswu,iswv,iswwが流れる。
【0057】
図9において、U相電流iSu,補償電流iswu,リアクトル電流isw,電流idは、波形が僅かに上下動しながら変化しているが、これはスイッチング素子SswLとスイッチング素子SswHとが交互に短い周期でPWMスイッチングしているため、スイッチング素子SswHがオンしているときには電流が僅かに増加し、スイッチング素子SswLがオンしているときには電流が僅かに減少しているためである。
【0058】
このように実施例4の電力変換装置によれば、実施例3の電力変換装置の効果と同様な効果が得られる。
【0059】
実施例1乃至実施例4の電力変換装置では、DC−AC変換について説明したが、本発明の電力変換装置は、AC−DC変換としても動作させることができる。なお、DC−AC変換は、パワーコンディショナーに利用される。
【実施例5】
【0060】
図10は本発明の実施例5に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図10に示す実施例5に係る電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換(AC−DC変換)することを特徴とする。
【0061】
この電力変換装置は、三相系統4、三相系統4に接続される三相ダイオード整流回路6、三相系統4及び三相ダイオード整流回路6に接続される瞬時無効電力補償装置3dを有している。
【0062】
三相ダイオード整流回路6は、三相ブリッジ構成の全波整流回路を形成する6つのダイオードD11〜D16からなる。ダイオードD11とダイオードD12との接続点(U相第1交流側)は三相系統4のu相に接続され、ダイオードD13とダイオードD14との接続点(V相第1交流側)は三相系統4のv相に接続され、ダイオードD15とダイオードD16との接続点(W相第1交流側)は三相系統4のw相に接続されている。
【0063】
ダイオードD11,D12の直列回路と、ダイオードD13,D14の直列回路と、ダイオードD15,D16の直列回路とが並列に接続されて直流側(第1直流側)を形成し、コンデンサCo(第1コンデンサ)及び負荷7に接続されている。
【0064】
三相ダイオード整流回路6は、各ダイオードD11〜D16による全波整流動作により、交流側に接続される三相系統4からの基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力を、直流電力に変換して直流側のコンデンサCo及び負荷7に出力する。
【0065】
瞬時無効電力補償装置3dは、三相系統4側で三相ダイオード整流回路6と並列に接続され、コンデンサC1(第2コンデンサ)と周知の三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路を形成する6つの第2スイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2と3つのリアクトルLu,Lv,Lw(第1リアクトル)とを有している。
【0066】
スイッチング素子Su1とスイッチング素子Su2との接続点(U相第2交流側)は、リアクトルLuの一端に接続され、リアクトルLuの他端は三相系統4のu相に接続されている。スイッチング素子Sv1とスイッチング素子Sv2との接続点(V相第2交流側)はリアクトルLvの一端に接続され、リアクトルLvの他端は三相系統4のv相に接続されている。スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw2との接続点(W相第2交流側)は、リアクトルLwの一端に接続され、リアクトルLwの他端は三相系統4のw相に接続されている。
【0067】
スイッチング素子Su1,Su2の直列回路と、スイッチング素子Sv1,Sv2の直列回路と、スイッチング素子Sw1,Sw2の直列回路とが並列に接続されて直流側(第2直流側)を形成し、コンデンサC1に接続されている。
【0068】
瞬時無効電力補償装置3dは、各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を高速スイッチングさせることにより、三相ダイオード整流回路6で発生する瞬時無効電力、即ち、高調波電流を補償する補償電流(高調波電流とは逆位相の電流)を三相系統4に注入して系統電流を力率1の正弦波状にする。各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2は、還流ダイオードを備えたMOSFETなどからなる。
【0069】
このように実施例5の電力変換装置によれば、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力が三相ダイオード整流回路6の動作により発生するが、この高調波電流による瞬時無効電力を瞬時無効電力補償装置3dが補償するので、三相系統4の系統電流を力率1の正弦波状にでき、高調波電流を低減することができる。また、三相ダイオード整流回路6は、交流電力を直流電力に変換するものであるが、三相ダイオード整流回路6及び瞬時無効電力補償装置3dのコンデンサCo,C1は、エネルギーを蓄積する目的のコンデンサではないので、電解コンデンサレスにでき、電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することができる。
【実施例6】
【0070】
図11は本発明の実施例5に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図11に示す実施例6に係る電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換(AC−DC変換)することを特徴とする。
【0071】
この電力変換装置は、三相系統4、三相系統4に接続される三相ダイオード整流回路6、三相系統4及び三相ダイオード整流回路6に接続される瞬時無効電力補償装置3eを有している。即ち、この電力変換装置は、図10に示す電力変換装置に対して瞬時無効電力補償装置3eのみが異なる。
【0072】
瞬時無効電力補償装置3eは、コンデンサC2(第3コンデンサ)とハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5とリアクトルLSW(第2リアクトル)と3つの交流スイッチSu,Sv,Swとで構成されることを特徴とする。
【0073】
ハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5は、コンデンサC2の両端に接続され、還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswHと還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswLとが直列に接続されてなる。コンデンサC2は、負荷7に接続されている。
【0074】
リアクトルLSWは、スイッチング素子SswHとスイッチング素子SswLとの接続点(第3交流側)に一端が接続されている。3つの交流スイッチSu,Sv,Swは、一端がリアクトルLSWの他端に接続され他端が三相系統4のU相,V相,W相に接続されている。
【0075】
このように実施例6の電力変換装置によれば、実施例5の電力変換装置の効果と同様な効果が得られるととともに、瞬時無効電力補償装置3eを簡単に構成できる。
【0076】
このように、実施例1乃至実施例6の電力変換装置は、DC−AC電力変換装置やAC−DC電力変換装置として動作させることができる。
【0077】
なお、本発明は上述した実施例1乃至実施例6の電力変換装置に限定されるものではない。図5に示す実施例3の電力変換装置の変形例として、瞬時無効電力補償部が、コンデンサC1とハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5とリアクトルLSWと交流スイッチSU,SV,SWとからなり、第3スイッチング回路5の直流側にコンデンサC1が接続され、第3スイッチング回路5の交流側にリアクトルLSWと交流スイッチSU,SV,SWとを介して三相系統4側が接続されるように構成しても良い。
【0078】
また、図10に示す実施例5の電力変換装置の変形例として、三相ダイオード整流回路6の直流側と瞬時無効電力補償装置3dの直流側とを共通に接続し、1つのコンデンサ(例えばコンデンサCo)で構成としても良い。
【0079】
また、図11に示す実施例6の電力変換装置の変形例として、三相ダイオード整流回路6の直流側と瞬時無効電力補償装置3eの直流側とを共通に接続し、1つのコンデンサ(例えばコンデンサCo)で構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、DC−ACコンバータ、AC−DCコンバータなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 昇圧コンバータ
2 三相インバータ
3,3a,3b,3c,3d,3e 瞬時無効電力補償装置
4 三相系統
6 三相ダイオード整流回路
7 負荷
Vo 直流源
Ld 昇圧リアクトル
Sd,SdH,SdL,SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwL,Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,SswH,SswL スイッチング素子
Co,C1,C2 コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、系統電源の高調波電流を低減して力率を高効率で改善する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、系統電源の高調波電流を低減しつつ高効率化を図る電力変換装置として、図12に示す電力変換装置が知られている(非特許文献1)。この電力変換装置は、図12に示すように、DC−AC変換を行う三相直列多重ハイブリッド変換器であり、直流電源Edの直流電力を交流電力に変換して三相系統に供給する。
【0003】
三相直列多重ハイブリッド変換器は、U相,V相,W相の6つの大容量GTO(Gate Turn-Off thyristor)素子TH1〜TH6で構成されるGTO変換器21と、高速動作により高調波電流を低減するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1〜Q12で構成されるIGBT変換器22とを、変圧器23,24を用いて直列多重化して三相系統に接続している。
【0004】
GTO変換器21は、図13(b)に示すように、方形波電圧VGTOu(U相のみを示す。)を出力し、出力電圧基本波成分のベース分を変圧器24に供給する。IGBT変換器22は、図13(c)のV*IGBTu(u相のみを示す)に示すように、IGBTの高速スイッチング特性を活かしてPWMスイッチングを行う。IGBT変換器22は、出力電圧基本波の追加成分を分担すると同時に、GTO変換器21が出力する高調波電流を相殺する電圧をも出力する。
【0005】
より具体的に説明すると、まず、U相出力電圧指令Vu*を、図13(a)に示すように正弦波と仮定する。このU相出力電圧指令Vu*に対して、GTO変換器21は、U相出力電圧指令Vu*と基本波が同位相の方形波電圧VGTOuを出力する。U相出力電圧指令Vu*とGTO変換器21の方形波電圧VGTOuとの差をIGBT変換器22のPWM用指令信号V*IGBTuとする。
【0006】
IGBT変換器22は、PWM用指令信号V*IGBTuを、図14に示すように、正及び負にバイアスされた2つの三角搬送波信号Tri1,Tri2と比較することにより、パルス信号を生成し、このパルス信号によりIGBT素子Q1〜Q12のPWM制御を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】李東昇,福田昭治,久保佑允,北野正之,「三相直列多重ハイブリッド変換器」,電気学会論文D,124巻5号,pp503−509,2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の電力変換装置では、IGBT変換器22に電解コンデンサからなる直流コンデンサC11,C12を用いていたが、電解コンデンサは寿命に問題がある。このため、電解コンデンサレスが望まれていた。
【0009】
また、GTO変換器21とIGBT変換器22とを接続するために変圧器23,24が用いられており、変圧器23,24のコストや大きさが大きくなってしまう。さらに、IGBT変換器22のIGBT素子Q1〜Q12をPWM制御するために、効率を上げることは難しい。
【0010】
また、系統電源から直流電源を得るAC−DC変換の一般的な方法としてダイオードを用いた整流器がある。ダイオード整流器は、直流側に直流電圧変動を抑制するための大容量の平滑コンデンサ(一般的に電解コンデンサ)が使用される。このような構成でAC−DC変換を行う場合、交流側の電流はパルス状になり、大きな高調波電流が系統電源に流れることになる。この高調波電流を抑制するための簡単な方法は、リアクトルをダイオード整流器に直列に接続することであるが、大幅な高調波電流の低減は期待できない。
【0011】
このため、AC−DC変換にスイッチング素子を用い、高周波スイッチングして系統電源に流れる電流を正弦波状にする方法(例えば、PWMコンバータ)が知られている。しかしながら、スイッチング素子はダイオードに比べて高価であり、また、PWM制御するために、効率を上げることは難しい。
【0012】
本発明の課題は、系統電源に流れる高調波電流を簡単な構成で低減でき、安価で高効率な電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の電力変換装置は、第1直流側に第1コンデンサが接続され、第1交流側に三相系統が接続され、第1直流側と第1交流側との間で電力を変換する電力変換部と、第1交流側で電力変換部に接続され、電力変換部の動作により発生する高調波電流による瞬時無効電力を補償して三相系統の系統電流を正弦波状とする瞬時無効電力補償部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力が電力変換部の動作により発生するが、この高調波電流による瞬時無効電力を瞬時無効電力補償部が補償するので、三相系統の系統電流を正弦波状にでき、高調波電流を低減することができ、効率を向上させることができる。また、電力変換部及び瞬時無効電力補償部の第1コンデンサ及び第2コンデンサは、エネルギーを蓄積する目的のコンデンサではないので、電解コンデンサレスにでき、電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例2に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例3に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施例4に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例4に係る電力変換装置の各スイッチの動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施例4に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施例5に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施例6に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【図12】従来の電力変換装置の一例を示す構成図である。
【図13】従来の電力変換装置の出力指令値とGTO変換器の出力電圧とIGBT変換器の指令値を示す図である。
【図14】従来の電力変換装置のIGBT変換器のPWM制御法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の電力変換装置のいくつかを図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図1に示す電力変換装置は、昇圧コンバータ1(直流電源)、コンデンサCo(第1コンデンサ)、昇圧コンバータ1及びコンデンサCoと三相系統4とに接続される三相インバータ2(三相ブリッジ構成の第1スイッチング回路)、三相系統4及び三相インバータ2に接続される瞬時無効電力補償装置3(瞬時無効電力補償部)を有している。昇圧コンバータ1とコンデンサCoと三相インバータ2とは、電解コンデンサレスインバータを構成する。
【0018】
昇圧コンバータ1は、太陽電池(PV)又は燃料電池(FC)等の直流源Voの直流電圧を昇圧リアクトルLdとMOSFETなどからなるスイッチング素子SdL,SdHとで昇圧して、昇圧された直流電圧Vdを三相インバータ2に供給する。なお、スイッチング素子SdHをダイオードに置き換えることもできる。
【0019】
三相インバータ2は、周知の三相ブリッジ構成のインバータ回路を形成する6つのスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLとを有する。スイッチング素子SuHとスイッチング素子SuLとの接続点(U相第1交流側)は三相系統4のu相に接続され、スイッチング素子SvHとスイッチング素子SvLとの接続点(V相第1交流側)は三相系統4のv相に接続され、スイッチング素子SwHとスイッチング素子SwLとの接続点(W相第1交流側)は三相系統4のw相に接続されている。
【0020】
スイッチング素子SuH,SuLの直列回路と、スイッチング素子SvH,SvLの直列回路と、スイッチング素子SwH,SwLの直列回路とが並列に接続されて直流側(第1直流側)を形成し、昇圧コンバータ1及びコンデンサCoに接続されている。
【0021】
三相インバータ2は、昇圧コンバータ1からの直流電力を、各々のスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLが三相系統電圧VSに同期して120度期間導通するスイッチング動作(三相120度通電方式のスイッチング動作)により三相系統4に交流電力を供給する。各々のスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLは、還流ダイオードを備えたMOSFETなどからなる。
【0022】
三相インバータ2は、三相系統4に供給する有効電力を一定とするために、三相インバータ2の直流側コンデンサであるコンデンサCoとして、電解コンデンサではなく、小容量のフィルムコンデンサを用いている。コンデンサCoは、サージ電圧を吸収するものであり、エネルギー蓄積要素ではない。
【0023】
瞬時無効電力補償装置3は、三相系統4側で三相インバータ2と並列に接続され、コンデンサC1(第2コンデンサ)と周知の三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路を形成する6つのスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2と3つのリアクトルLu,Lv,Lw(第1リアクトル)とを有している。
【0024】
スイッチング素子Su1とスイッチング素子Su2との接続点(U相第2交流側)は、リアクトルLuの一端に接続され、リアクトルLuの他端は三相系統4のu相に接続されている。スイッチング素子Sv1とスイッチング素子Sv2との接続点(V相第2交流側)はリアクトルLvの一端に接続され、リアクトルLvの他端は三相系統4のv相に接続されている。スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw2との接続点(W相第2交流側)は、リアクトルLwの一端に接続され、リアクトルLwの他端は三相系統4のw相に接続されている。
【0025】
スイッチング素子Su1,Su2の直列回路と、スイッチング素子Sv1,Sv2の直列回路と、スイッチング素子Sw1,Sw2の直列回路とが並列に接続されて直流側(第2直流側)を形成し、コンデンサC1に接続されている。
【0026】
瞬時無効電力補償装置3は、各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を高速スイッチングさせることにより、三相インバータ2のスイッチング動作により発生する瞬時無効電力、即ち高調波電流を補償する。各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2は、還流ダイオードを備えたMOSFETなどからなる。瞬時無効電力補償装置3の直流側コンデンサであるコンデンサC1は、エネルギー蓄積が目的ではないので、小容量のフィルムコンデンサなどを用いている。
【0027】
次にこのように構成された実施例1の電力変換装置の動作を図2を参照しながら詳細に説明する。図2では、u相のみを示している。まず、三相インバータ2は、6つのスイッチング素子SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwLのうち、相電圧が最大となる相の上側スイッチング素子(上アーム)と相電圧が最小の相の下側スイッチング素子(下アーム)とをオンさせる。その結果、コンデンサCoは、三相系統電圧VSの線間電圧最大値が現われ、図2の電圧Vdのような三相ブリッジ構成の整流回路の整流波形になる。
【0028】
このとき、昇圧コンバータ1が一定電力Pを伝達しているとすると、三相インバータ2の直流側には、P/Vdの電流が流れ込み、交流側から三相系統4に流出する。従って、三相インバータ2のU相電流iIuは、図2に示すように、基本波力率1の方形波電流になる。三相インバータ2の瞬時有効電力は、P一定であるので、U相電流iIuの高調波成分は全て瞬時無効電力である。即ち、U相電流iIuは、瞬時有効電力になる基本波電流iIfと瞬時無効電力になる高調波電流iIhとの合成である。
【0029】
瞬時無効電力補償装置3は、図2に示すように、高調波電流iIhとは逆位相の補償電流iCuを三相系統4に注入することによりU相電流iIuの高調波電流iIhを補償する。その結果、三相系統4のU相系統電流iSuは、力率1の正弦波状になる。
【0030】
このとき、補償電流iCuの最大値はiSuの1/2であり、通常のPWMインバータに比較して、リアクトルLu,Lv,Lwの蓄積エネルギーは1/4でよく、リアクトルLu,Lv,Lwの小型化及び軽量化が図れる。また、瞬時無効電力補償装置3のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2には、三相インバータ2に比較して、小容量のMOSFETを使用できるため、スイッチング損失を低減できる。
【0031】
なお、一般的に高調波電流は、瞬時有効電力成分と瞬時無効電力成分との両方を含むため、一般的な高調波抑制装置ではエネルギー蓄積要素が必要である。
【0032】
これに対して、実施例1の電力変換装置では、電解コンデンサレスインバータの高調波電流は、全て瞬時無効電力であるため、その高調波抑制には原理的にエネルギー蓄積要素を必要としない。従って、三相インバータ2の直流側コンデンサであるコンデンサCo、瞬時無効電力補償装置3の直流側コンデンサであるコンデンサC1は、エネルギーを蓄積する必要がない。
【0033】
このように、実施例1の電力変換装置によれば、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力が三相インバータ2の動作により発生するが、この高調波電流による瞬時無効電力を瞬時無効電力補償装置3が補償するので、三相系統4の系統電流を力率1の正弦波状にでき、高調波電流を低減することができる。また、三相インバータ2は、三相系統電圧VSに同期して120度期間導通するスイッチング動作であるので、三相系統周波数でのスイッチングとなり電力変換の効率を向上させることができる。また、三相インバータ2は直流電力を交流電力に変換するものであるが、三相インバータ2及び瞬時無効電力補償装置3のコンデンサCo,C1は、エネルギーを蓄積する目的のコンデンサではないので、電解コンデンサレスにでき、電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することができる。
【実施例2】
【0034】
図3は本発明の実施例2に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図3に示す実施例2の電力変換装置は、図1に示す実施例1の三相インバータ2の直流側と瞬時無効電力補償装置3の直流側とを共通に接続し、コンデンサC1を削除したことを特徴とする。
【0035】
即ち、実施例1のコンデンサCoとコンデンサC1とはともにエネルギー蓄積要素ではないので、コンデンサCoを設けるのみで済み、安価で構成を簡単にできる。
【0036】
図3に示すコンデンサCoの両端電圧である直流電圧Vdは三相ブリッジ構成の整流回路の整流波形になり、瞬時無効電力補償装置3aには1相PWM制御を適用することができ、図1に示す電力変換装置に比較して、スイッチング損失が1/3程度に低減できる。
【0037】
また、三相インバータ2から瞬時無効電力補償装置3aの正極直流側に電流iCpが流入し、負極直流側に電流iCnが流入する。電流iCpは三相系統4から三相インバータ2の上アームを通して瞬時無効電力補償装置3aへ流入し、電流iCnは三相インバータ2の下アームを通して瞬時無効電力補償装置3aへ流入し、補償電流iCuは三相インバータ2の開放相を介して三相系統4に供給される。
【0038】
図4は本発明の実施例2に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートである。図4では、u相のみを示している。三相インバータ2のU相電流iIuは、120度期間導通するパルス波形であり、三相系統4のU相系統電流iSuの最大値付近が現われる。リアクトルLuを流れる補償電流iCuは、三相インバータ2のU相の零電流期間の電流を補償するので、U相系統電流iSuは力率1の正弦波状となる。
【0039】
このように実施例2の電力変換装置によれば、実施例1の電力変換装置の効果と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0040】
図5は本発明の実施例3に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図5に示す実施例3の電力変換装置は、図3に示す実施例2の電力変換装置に対して、瞬時無効電力補償装置3bがハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5と、リアクトルLSW(第2リアクトル)と、3つの交流スイッチSu,Sv,Swとで構成されることを特徴とする。
【0041】
ハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5は、コンデンサCoの両端に接続され、還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswHと還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswLとが直列に接続されてなる。
【0042】
リアクトルLSWは、スイッチング素子SswHとスイッチング素子SswLとの接続点(第3交流側)に一端が接続されている。3つの交流スイッチSu,Sv,Swは、一端がリアクトルLSWの他端に接続され他端が三相系統4のU相,V相,W相に接続されている。
【0043】
図5に示す実施例3の電力変換装置では、交流スイッチSu,Sv,Swが必要となるが、2つのスイッチング素子SswH,SswLと1つのリアクトルLSWで済み、装置を小型化及び軽量化できる。
【0044】
このような構成の瞬時無効電力補償装置3bによれば、三相インバータ2の開放相(例えばu相のとき)の交流スイッチSuのみをオンさせることにより、補償電流iCuを三相系統4のU相に流す。このときの三相インバータ2のU相電流iIu、補償電流iCuは図6に示すようになる。
【0045】
また、リアクトルLswに流れるリアクトル電流iswは三相の補償電流iCu,iCv,iCwの和となり、図6に示すように三角波状の電流が流れる。
【実施例4】
【0046】
図7は本発明の実施例4に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図7に示す実施例4の電力変換装置は、図5に示す実施例3の電力変換装置のより具体的な回路例を示したものである。
【0047】
瞬時無効電力補償装置3cは、ハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5と、リアクトルLSWと、3つの交流スイッチとして還流ダイオードを備えた2つのMOSFETを逆接続してなる双方向スイッチSuM,SvM,SwMとで構成されることを特徴とする。
【0048】
また、双方向スイッチSuM,SvM,SwMと三相系統4である三相交流電源Vu,Vv,Vwとの間には、三相用コンデンサCFと三相用リアクトルLacとのLC回路が設けられている。
【0049】
図8は本発明の実施例4に係る電力変換装置の各スイッチの動作を説明するタイミングチャートである。
【0050】
次に、図8を参照しながら、実施例4の電力変換装置の各スイッチの動作を説明する。まず、時刻t1〜t2(60度期間)において、U相系統電圧Vuが最大で、V相系統電圧Vvが最小であるので、スイッチング素子SvLがオン状態で、スイッチング素子SuHをオンさせる。また、開放相がW相であるので、W相の双方向スイッチSwMをオンさせると、補償電流iswwが流れる。時刻t1〜時刻t2においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswwをW相系統電圧Vwの減少に合わせて減少させる。
【0051】
次に、時刻t2〜t3(60度期間)において、U相系統電圧Vuが最大で、W相系統電圧VWが最小であるので、スイッチング素子SUHがオン状態で、スイッチング素子SwLをオンさせる。また、開放相がV相であるので、V相の双方向スイッチSvMをオンさせると、補償電流iswvが流れる。時刻t2〜時刻t3においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswvをV相系統電圧Vvの増加に合わせて増加させる。
【0052】
次に、時刻t3〜t4(60度期間)において、V相系統電圧Vvが最大で、W相系統電圧VWが最小であるので、スイッチング素子SwLがオン状態で、スイッチング素子SvHをオンさせる。また、開放相がU相であるので、U相の双方向スイッチSuMをオンさせると、補償電流iswuが流れる。時刻t3〜時刻t4においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswuをU相系統電圧Vuの減少に合わせて減少させる。
次に、時刻t4〜t5(60度期間)において、V相系統電圧Vvが最大で、U相系統電圧Vuが最小であるので、スイッチング素子SvHがオン状態で、スイッチング素子SuLをオンさせる。また、開放相がW相であるので、W相の双方向スイッチSwMをオンさせると、補償電流iswwが流れる。時刻t4〜時刻t5においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswwをW相系統電圧Vwの増加に合わせて増加させる。
【0053】
次に、時刻t5〜t6(60度期間)において、W相系統電圧Vwが最大で、U相系統電圧Vuが最小であるので、スイッチング素子SuLがオン状態で、スイッチング素子SwHをオンさせる。また、開放相がV相であるので、V相の双方向スイッチSvMをオンさせると、補償電流iswvが流れる。時刻t5から時刻t6においては、スイッチング素子SswH,SswLをPWM制御し、リアクトルLswに流れる電流isw、即ち、補償電流iswvをV相系統電圧Vvの減少に合わせて減少させる。時刻t6以降も上記処理と同様な処理が行われることになる。
【0054】
なお、時刻t1〜時刻t6において、スイッチング素子SswLとスイッチング素子SswHとが交互に短い周期でPWMスイッチングしている。
【0055】
図9は本発明の実施例4に係る電力変換装置の各部の動作を説明するタイミングチャートであり、シミュレーション結果を示している。図9では、u相のみを示している。シミュレーションでは、交流出力電力Pが4kWとし、三相系統4が200V、50Hzの平衡三相正弦波とした。
【0056】
U相系統電流iuは正弦波状に制御されている。リアクトルLswに流れるリアクトル電流iswは三角波電流となっており、双方向スイッチSuM,SvM,SwMには60度期間について三相系統4に補償電流iswu,iswv,iswwが流れる。
【0057】
図9において、U相電流iSu,補償電流iswu,リアクトル電流isw,電流idは、波形が僅かに上下動しながら変化しているが、これはスイッチング素子SswLとスイッチング素子SswHとが交互に短い周期でPWMスイッチングしているため、スイッチング素子SswHがオンしているときには電流が僅かに増加し、スイッチング素子SswLがオンしているときには電流が僅かに減少しているためである。
【0058】
このように実施例4の電力変換装置によれば、実施例3の電力変換装置の効果と同様な効果が得られる。
【0059】
実施例1乃至実施例4の電力変換装置では、DC−AC変換について説明したが、本発明の電力変換装置は、AC−DC変換としても動作させることができる。なお、DC−AC変換は、パワーコンディショナーに利用される。
【実施例5】
【0060】
図10は本発明の実施例5に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図10に示す実施例5に係る電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換(AC−DC変換)することを特徴とする。
【0061】
この電力変換装置は、三相系統4、三相系統4に接続される三相ダイオード整流回路6、三相系統4及び三相ダイオード整流回路6に接続される瞬時無効電力補償装置3dを有している。
【0062】
三相ダイオード整流回路6は、三相ブリッジ構成の全波整流回路を形成する6つのダイオードD11〜D16からなる。ダイオードD11とダイオードD12との接続点(U相第1交流側)は三相系統4のu相に接続され、ダイオードD13とダイオードD14との接続点(V相第1交流側)は三相系統4のv相に接続され、ダイオードD15とダイオードD16との接続点(W相第1交流側)は三相系統4のw相に接続されている。
【0063】
ダイオードD11,D12の直列回路と、ダイオードD13,D14の直列回路と、ダイオードD15,D16の直列回路とが並列に接続されて直流側(第1直流側)を形成し、コンデンサCo(第1コンデンサ)及び負荷7に接続されている。
【0064】
三相ダイオード整流回路6は、各ダイオードD11〜D16による全波整流動作により、交流側に接続される三相系統4からの基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力を、直流電力に変換して直流側のコンデンサCo及び負荷7に出力する。
【0065】
瞬時無効電力補償装置3dは、三相系統4側で三相ダイオード整流回路6と並列に接続され、コンデンサC1(第2コンデンサ)と周知の三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路を形成する6つの第2スイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2と3つのリアクトルLu,Lv,Lw(第1リアクトル)とを有している。
【0066】
スイッチング素子Su1とスイッチング素子Su2との接続点(U相第2交流側)は、リアクトルLuの一端に接続され、リアクトルLuの他端は三相系統4のu相に接続されている。スイッチング素子Sv1とスイッチング素子Sv2との接続点(V相第2交流側)はリアクトルLvの一端に接続され、リアクトルLvの他端は三相系統4のv相に接続されている。スイッチング素子Sw1とスイッチング素子Sw2との接続点(W相第2交流側)は、リアクトルLwの一端に接続され、リアクトルLwの他端は三相系統4のw相に接続されている。
【0067】
スイッチング素子Su1,Su2の直列回路と、スイッチング素子Sv1,Sv2の直列回路と、スイッチング素子Sw1,Sw2の直列回路とが並列に接続されて直流側(第2直流側)を形成し、コンデンサC1に接続されている。
【0068】
瞬時無効電力補償装置3dは、各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2を高速スイッチングさせることにより、三相ダイオード整流回路6で発生する瞬時無効電力、即ち、高調波電流を補償する補償電流(高調波電流とは逆位相の電流)を三相系統4に注入して系統電流を力率1の正弦波状にする。各々のスイッチング素子Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2は、還流ダイオードを備えたMOSFETなどからなる。
【0069】
このように実施例5の電力変換装置によれば、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力が三相ダイオード整流回路6の動作により発生するが、この高調波電流による瞬時無効電力を瞬時無効電力補償装置3dが補償するので、三相系統4の系統電流を力率1の正弦波状にでき、高調波電流を低減することができる。また、三相ダイオード整流回路6は、交流電力を直流電力に変換するものであるが、三相ダイオード整流回路6及び瞬時無効電力補償装置3dのコンデンサCo,C1は、エネルギーを蓄積する目的のコンデンサではないので、電解コンデンサレスにでき、電解コンデンサレスの電力変換装置を提供することができる。
【実施例6】
【0070】
図11は本発明の実施例5に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。図11に示す実施例6に係る電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換(AC−DC変換)することを特徴とする。
【0071】
この電力変換装置は、三相系統4、三相系統4に接続される三相ダイオード整流回路6、三相系統4及び三相ダイオード整流回路6に接続される瞬時無効電力補償装置3eを有している。即ち、この電力変換装置は、図10に示す電力変換装置に対して瞬時無効電力補償装置3eのみが異なる。
【0072】
瞬時無効電力補償装置3eは、コンデンサC2(第3コンデンサ)とハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5とリアクトルLSW(第2リアクトル)と3つの交流スイッチSu,Sv,Swとで構成されることを特徴とする。
【0073】
ハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5は、コンデンサC2の両端に接続され、還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswHと還流ダイオードを備えたMOSFETからなるスイッチング素子SswLとが直列に接続されてなる。コンデンサC2は、負荷7に接続されている。
【0074】
リアクトルLSWは、スイッチング素子SswHとスイッチング素子SswLとの接続点(第3交流側)に一端が接続されている。3つの交流スイッチSu,Sv,Swは、一端がリアクトルLSWの他端に接続され他端が三相系統4のU相,V相,W相に接続されている。
【0075】
このように実施例6の電力変換装置によれば、実施例5の電力変換装置の効果と同様な効果が得られるととともに、瞬時無効電力補償装置3eを簡単に構成できる。
【0076】
このように、実施例1乃至実施例6の電力変換装置は、DC−AC電力変換装置やAC−DC電力変換装置として動作させることができる。
【0077】
なお、本発明は上述した実施例1乃至実施例6の電力変換装置に限定されるものではない。図5に示す実施例3の電力変換装置の変形例として、瞬時無効電力補償部が、コンデンサC1とハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路5とリアクトルLSWと交流スイッチSU,SV,SWとからなり、第3スイッチング回路5の直流側にコンデンサC1が接続され、第3スイッチング回路5の交流側にリアクトルLSWと交流スイッチSU,SV,SWとを介して三相系統4側が接続されるように構成しても良い。
【0078】
また、図10に示す実施例5の電力変換装置の変形例として、三相ダイオード整流回路6の直流側と瞬時無効電力補償装置3dの直流側とを共通に接続し、1つのコンデンサ(例えばコンデンサCo)で構成としても良い。
【0079】
また、図11に示す実施例6の電力変換装置の変形例として、三相ダイオード整流回路6の直流側と瞬時無効電力補償装置3eの直流側とを共通に接続し、1つのコンデンサ(例えばコンデンサCo)で構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、DC−ACコンバータ、AC−DCコンバータなどに適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 昇圧コンバータ
2 三相インバータ
3,3a,3b,3c,3d,3e 瞬時無効電力補償装置
4 三相系統
6 三相ダイオード整流回路
7 負荷
Vo 直流源
Ld 昇圧リアクトル
Sd,SdH,SdL,SuH,SuL,SvH,SvL,SwH,SwL,Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,SswH,SswL スイッチング素子
Co,C1,C2 コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流側に第1コンデンサが接続され、第1交流側に三相系統が接続され、前記第1直流側と前記第1交流側との間で電力を変換する電力変換部と、
前記第1交流側で前記電力変換部に接続され、前記電力変換部の動作により発生する高調波電流による瞬時無効電力を補償して前記三相系統の系統電流を正弦波状とする瞬時無効電力補償部と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部は、三相120度通電方式のスイッチング動作により、前記第1直流側に接続される直流電源からの直流電力を、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力に変換して前記第1交流側に出力する三相ブリッジ構成の第1スイッチング回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第2コンデンサと三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路と第1リアクトルとからなり、前記第2スイッチング回路の第2直流側には前記第2コンデンサが接続され、前記第2スイッチング回路の第2交流側には前記第1リアクトルを介して前記第1スイッチング回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換部は、三相120度通電方式のスイッチング動作により、前記第1直流側に接続される直流電源からの直流電力を、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力に変換して前記第1交流側に出力する三相ブリッジ構成の第1スイッチング回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第3コンデンサとハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路と第2リアクトルと交流スイッチとからなり、前記第3スイッチング回路の第3直流側には前記第3コンデンサが接続され、前記第3スイッチング回路の第3交流側には前記交流スイッチと前記第2リアクトルを介して前記第1スイッチング回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換部は、全波整流動作により、前記第1交流側に接続される前記三相系統からの基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力を、直流電力に変換して前記第1直流側に出力する三相ブリッジ構成のダイオード整流回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第2コンデンサと三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路と第1リアクトルとからなり、前記第2スイッチング回路の第2直流側には前記第2コンデンサが接続され、前記第2スイッチング回路の第2交流側には前記第1リアクトルを介して前記ダイオード整流回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換部は、全波整流動作により、前記第1交流側に接続される前記三相系統からの基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力を、直流電力に変換して前記第1直流側に出力する三相ブリッジ構成のダイオード整流回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第3コンデンサとハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路と第2リアクトルと交流スイッチとからなり、前記第3スイッチング回路の第3直流側には前記第3コンデンサが接続され、前記第3スイッチング回路の第3交流側には前記交流スイッチと前記第2リアクトルを介して前記ダイオード整流回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1直流側と前記第2直流側とを共通に接続し、この直流側に接続されるコンデンサを、二つから一つとする構成にしたことを特徴とする請求項2又は請求項4記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1直流側と前記第3直流側とを共通に接続し、この直流側に接続されるコンデンサを、二つから一つとする構成にしたことを特徴とする請求項3又は請求項5記載の電力変換装置。
【請求項1】
第1直流側に第1コンデンサが接続され、第1交流側に三相系統が接続され、前記第1直流側と前記第1交流側との間で電力を変換する電力変換部と、
前記第1交流側で前記電力変換部に接続され、前記電力変換部の動作により発生する高調波電流による瞬時無効電力を補償して前記三相系統の系統電流を正弦波状とする瞬時無効電力補償部と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部は、三相120度通電方式のスイッチング動作により、前記第1直流側に接続される直流電源からの直流電力を、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力に変換して前記第1交流側に出力する三相ブリッジ構成の第1スイッチング回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第2コンデンサと三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路と第1リアクトルとからなり、前記第2スイッチング回路の第2直流側には前記第2コンデンサが接続され、前記第2スイッチング回路の第2交流側には前記第1リアクトルを介して前記第1スイッチング回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換部は、三相120度通電方式のスイッチング動作により、前記第1直流側に接続される直流電源からの直流電力を、基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力に変換して前記第1交流側に出力する三相ブリッジ構成の第1スイッチング回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第3コンデンサとハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路と第2リアクトルと交流スイッチとからなり、前記第3スイッチング回路の第3直流側には前記第3コンデンサが接続され、前記第3スイッチング回路の第3交流側には前記交流スイッチと前記第2リアクトルを介して前記第1スイッチング回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換部は、全波整流動作により、前記第1交流側に接続される前記三相系統からの基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力を、直流電力に変換して前記第1直流側に出力する三相ブリッジ構成のダイオード整流回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第2コンデンサと三相ブリッジ構成の第2スイッチング回路と第1リアクトルとからなり、前記第2スイッチング回路の第2直流側には前記第2コンデンサが接続され、前記第2スイッチング回路の第2交流側には前記第1リアクトルを介して前記ダイオード整流回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換部は、全波整流動作により、前記第1交流側に接続される前記三相系統からの基本波電流による瞬時有効電力と高調波電流による瞬時無効電力とを含む交流電力を、直流電力に変換して前記第1直流側に出力する三相ブリッジ構成のダイオード整流回路からなり、
前記瞬時無効電力補償部は、第3コンデンサとハーフブリッジ構成の第3スイッチング回路と第2リアクトルと交流スイッチとからなり、前記第3スイッチング回路の第3直流側には前記第3コンデンサが接続され、前記第3スイッチング回路の第3交流側には前記交流スイッチと前記第2リアクトルを介して前記ダイオード整流回路の前記第1交流側が接続されることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1直流側と前記第2直流側とを共通に接続し、この直流側に接続されるコンデンサを、二つから一つとする構成にしたことを特徴とする請求項2又は請求項4記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1直流側と前記第3直流側とを共通に接続し、この直流側に接続されるコンデンサを、二つから一つとする構成にしたことを特徴とする請求項3又は請求項5記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−113269(P2011−113269A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268608(P2009−268608)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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