説明

電力変換装置

【目的】半導体電力変換装置の半導体スイッチング素子などから構成される個々のユニットの水冷の冷却体において、冷却水循環運転時の冷却体内の気泡の除去、メンテナンス時の水抜きの容易化、ユニットの組立性の向上を図る。
【解決手段】排水口が、冷却体の背面側の上側に設けられているため、気泡を、排水口を通じて冷却体の内部から外部へ排出することで、内部に気泡が残留しにくくすることができる。また、メンテナンス時に冷却水を抜く際に、冷却水を、給水口を通じて冷却体の内部から外部へ排出することで、内部に冷却水が残留しにくくすることができる。そのほか、給水口と主配管(給水側)との間の距離や、排水口と主配管(排水側)との間の距離を長く設定することで、例えばフレキシブル配管を使用する場合において、組み立て性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置に関するものであり、特にその冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流を直流に変換するコンバータや直流を交流に変換するインバータなどの電力変換装置は、交流電動機を駆動するために用いられる。特に、近年、このような電力変換装置は大容量化している。そのため、発熱増大などに対応するため、冷却方式として水冷方式が採用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、図6および図7により、従来の水冷方式の電力変換装置の冷却構造を説明する。
図6は、従来の電力変換装置の正面側斜視図である。図7は、従来の電力変換装置の背面側斜視図である。101は半導体スイッチング素子、102は冷却体、103は主配管(給水側)、104は主配管(排水側)、105は分岐配管(給水側)、106は分岐配管(排水側)、107は給水口、108は排水口である。
【0004】
従来の水冷方式の電力変換装置の構成を説明する。
図6において、2つの半導体スイッチング素子101が、1つの板状の冷却体102に固定されている。冷却体102の両側には、主配管(給水側)103と主配管(排水側)104が配置されている。主配管(給水側)103と冷却体102とは、分岐配管(給水側)105で接続されている。同様に、主配管(排水側)104と冷却体102とは、分岐配管(排水側)106で接続されている。なお、冷却体102は、軸方向に直列に複数配置されている。
【0005】
図7において、冷却体102と分岐配管(給水側)105とは、冷却体102の背面側に設けられた給水口107を介して接続されている。同様に、冷却体102と分岐配管(排水側)106とは、冷却体102の背面側に設けられた排水口108を介して接続されている。
【0006】
なお、冷却体2の背面側に配置されている給水口107および排水口108は、各主配管の近傍であって、軸方向の中央付近に配置されている。
次に、従来の水冷方式の電力変換装置の動作を説明する。
【0007】
図6および図7において、例えば冷却水が、主配管(給水側)103の内部を流れる。そして、冷却水は、分岐配管(給水側)105を通り、給水口107を介して冷却体102の内部に流入する。
【0008】
このとき、冷却体102の内部を冷却水が通過することにより、冷却体102に固定された半導体スイッチング素子101が冷却される。そして、冷却体102の内部を通過した冷却水は、排水口108を介して、分岐配管(排水側106)を通って、主配管(排水側)104へ排出される。
【0009】
以上が、従来の水冷方式の電力変換装置の冷却構造の説明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−117829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような従来の水冷方式の電力変換装置の冷却構造には、以下のような課題があった。
従来の電力変換装置では、例えば冷却水の循環運転時において、冷却体102の固定方向によっては、冷却体102の内部に気泡が残留しやすいという問題があった。
【0012】
この問題を、図8により説明する。図8は、従来の水冷方式の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その1)である。
図8のとおり、冷却体102の内部では、給水口107から排水口108へ向けて冷却水が内部を流通する。このとき、冷却体の内部では、上側に気泡が残留しやすい。気泡が残留すると、残留部分の熱伝導率が極端に悪化してしまう。そのため、半導体スイッチング素子101を十分に冷却することができず、半導体スイッチング素子101を破損させるおそれがあった。
【0013】
また、従来の電力変換装置では、例えばメンテナンス時に水を抜く際に、冷却体102の固定方向によっては、冷却体102の内部の下側に冷却水が残留しやすいという問題があった。
【0014】
この問題を、図9により説明する。図9は、従来の水冷方式の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その2)である。
図9のとおり、メンテナンス時に水を抜くときに、冷却体102の内部では、下側に冷却水が残留しやすい。冷却水が残留すると、周囲の機器に冷却水がかかって破損させてしまうおそれがある。また、残留した冷却水の水質が悪化することにより、冷却体102の腐食が生じるというおそれもあった。
【0015】
さらに、例えば氷点下の環境などにおいて、残留した冷却水の凍結が生じると、冷却体が破損してしまうおそれもあった。
そのほか、従来の電力変換装置では、各分岐配管として例えばフレキシブル配管を使用する場合において、主配管(給水側)103と給水口107との間、そして、主配管(排水側)104と排水口108との間のそれぞれの距離が短いため、組み立て性がよくないという問題があった。
【0016】
具体的には、フレキシブル配管は縮む量が少ないため、例えば2点間への後付けなどが困難になる。そのため、組み立て時において、組み立て誤差および吸収量が小さくなってしまう。従って、フレキシブル配管を過度に縮ませながら組み立てるざるを得なくなってしまい、配管系のどこかに無理な力がかかるような事態が生じてしまう。また、組み立て順序にも制約ができてしまう。そのほか、メンテナンスや分解、交換作業も容易ではない。
【0017】
さらに、従来の電力変換装置には、冷却体102の両側に各主配管が配置されているため、全体の幅寸法が大きくなってしまうという問題もあった。
そこで、本発明は、上記の課題を解決するために、電力変換装置の冷却構造の性能低下や劣化の防止を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の一の形態に係る電力変換装置は、半導体素子が取り付けられ、内部に冷却液の流れる流路が形成されるとともに、その外面に供給口および排出口が配置された冷却体と、該供給口を介して前記冷却体に接続し、前記冷却液を前記冷却体の内部へ供給する供給配管と、前記排出口を介して前記冷却体に接続し、前記冷却液を前記冷却体の外部へ排出する排出配管とを備え、前記排出口が、前記冷却体の外面の上方側に配置されるようにしたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記冷却体が角板状であり、前記排出口が、前記冷却体の外面の上方側の角部近傍に配置されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記半導体素子が前記冷却体の一面に取り付けられ、前記排出口が他面に配置されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記供給口が、前記冷却体の外面の下方側に配置されることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記冷却体が角板状であり、前記供給口が、前記冷却体の外面の下方側の角部近傍に配置されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記供給配管が、前記冷却体に離隔して設けられた供給用主配管と、該供給用主配管から前記供給口までを接続する供給用分岐配管とから構成され、前記排出配管が、前記冷却体に離隔して設けられた排出用主配管と、該排出用主配管から前記排出口までを接続する排出用分岐配管とから構成され、前記排出用分岐配管の距離が、前記排出口から前記供給用主配管までの距離よりも長く設定されていることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記供給配管が、前記冷却体に離隔して設けられた供給用主配管と、該供給用主配管から前記供給口までを接続する供給用分岐配管とから構成され、前記排出配管が、前記冷却体に離隔して設けられた排出用主配管と、該排出用主配管から前記排出口までを接続する排出用分岐配管とから構成され、前記排出用分岐配管の距離が、前記排出口から前記供給用主配管までの距離よりも長く設定されており、前記供給用分岐配管の距離が、前記供給口から前記排出用主配管までの距離よりも長く設定されていることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記排出用分岐配管が、フレキシブル配管であることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記供給用分岐配管および前記排出用分岐配管が、フレキシブル配管であることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記供給用主配管および前記排出用主配管が、前記冷却体の中心位置の近傍に配置されていることを特徴としている。
また、本発明の他の形態に係る電力変換装置は、前記電力変換装置が多相の電力変換装置であり、前記半導体素子が相ごとに分かれて複数の前記冷却体にそれぞれ取り付けられ、異なる相の前記半導体素子を取り付けた複数の前記冷却体が、直列に配管接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、電力変換装置の冷却構造の性能低下や劣化の防止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例の電力変換装置の正面側の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施例の電力変換装置の背面側の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その1)である。
【図4】本発明の第1の実施例の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その2)である。
【図5】本発明の第2の実施例の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図である。
【図6】従来の電力変換装置の正面側斜視図である。
【図7】従来の電力変換装置の背面側斜視図である。
【図8】従来の水冷方式の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その1)である。
【図9】従来の水冷方式の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下の記載は、あくまでも本発明の例示であり、これに限定されるものではない。つまり、当分野で通常の知識を有する者によって、本発明の技術的思想内で多くの変形実施を行うことが可能である。
【実施例】
【0028】
最初に、図1および図2により、本発明の第1の実施例の電力変換装置の構成を説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の電力変換装置の正面側の斜視図である。図2は、その背面側の斜視図である。1は半導体スイッチング素子、2は冷却体、3は主配管(給水側)、4は主配管(排水側)、5は分岐配管(給水側)、6は分岐配管(排水側)、7は給水口、8は排水口である。
【0029】
図1により、電力変換装置の正面側を説明する。
図1では、2つの半導体スイッチング素子1が、1つの板状の冷却体2に固定されている。冷却体2の背面側の中央付近には、主配管(給水側)3と主配管(排水側)4が、冷却体2とは離隔して配置されている。主配管(給水側)3および主配管(排水側)4と冷却体2とは、背面側で分岐配管により接続されているが、この点は後述する。また、冷却体2は、軸方向に直列に複数配置されている。それぞれの冷却体2は、同様に、背面側で分岐配管により冷却体2に接続されている。
【0030】
冷却体2としては、例えば水冷冷却体を使用することができる。この場合、冷却体2の内部には、冷却水を流通させる空間(冷媒流路)が形成されている。
全体構成としては、冷却水の給水が向かう方向が下方、排水が向かう方向が上方となるように設置されている。そして、上方側にはポンプ(図示しない)が設置されている。ポンプは、主配管(給水側)3および主配管(排水側)4と接続されている。このポンプの働きにより、冷却水が、各主配管の内部を上述した方向に循環させられる。
【0031】
また、主配管(給水側)3および主配管(排水側)4のそれぞれの配管上(例えば下方側)には、メンテナンス時等に水抜きを行うことのできる水抜き栓(図示しない)が設けられている。
【0032】
図2により、電力変換装置の背面側を説明する。
図2では、冷却体2と主配管(給水側)3とは、給水口7を介して、分岐配管(給水側)5により接続されている。同様に、冷却体2と主配管(排水側)4とは、排水口8を介して、分岐配管(排水側)6により接続されている。
【0033】
給水口7は、冷却体2の背面側の下側の角部の近傍に配置されている。排水口は、冷却体2の背面側の上側の角部の近傍に配置されている。
さらに、給水口7は、主配管(排水側)4を挟むようにして、主配管(給水側)3と接続されている。この接続には、分岐配管(給水側)5が用いられている。なお、分岐配管(給水側)5は、主配管(排水側)4の裏側を通って、給水口7に接続している。
【0034】
一方、排水口8は、主配管(給水側)3を挟むようにして、主配管(排水側)4と接続されている。この接続には、分岐配管(排水側)6が用いられている。なお、分岐配管(排水側)6は、主配管(給水側)の裏側を通って、排水口8に接続している。
【0035】
分岐配管(給水側)5および分岐配管(排水側)6としては、例えばフレキシブル配管を用いることができる。なお、フレキシブル配管の材質としては、例えばステンレス(SUS)、アルミニウム、銅、ゴムなどを用いることができる。
【0036】
ここで、主配管(給水側)3および主配管(排水側)4は、冷却体2の中心位置の近傍に並列して配置されている。
なお、給水口7と主配管(給水側)3とは、主配管(排水側)4を挟むようにして接続されている。すなわち、給水口7から距離が遠い方の主配管を、主配管(給水側)3として給水口7と接続している。そのため、この接続に使用される分岐配管(給水側)5の長さは、従来例と比較すると長くなっている。
【0037】
同様に、排水口8と主配管(排水側)4とは、主配管(給水側)3を挟むようにして接続されている。すなわち、排水口8から距離が遠い方の主配管を、主配管(排水側)4として排水口8と接続している。そのため、この接続に使用される分岐配管(排水側)6の長さは、従来例と比較すると長くなっている。
【0038】
続いて、同じく図1および図2により、本発明の第1の実施例の電力変換装置の動作を説明する。
図1および図2では、図示しないポンプから、冷却水が主配管(給水側)3の内部を通って強制的に送られてくる。そして、送られてきた冷却水は、分岐配管(給水側)5から、給水口7を介して、冷却体2の内部に流入する。
【0039】
冷却体2の内部に流入した冷却水は、その内部の流路を通ることにより、冷却体2の内部を通過する。このとき、冷却体2の外部に固定された半導体スイッチング素子1より発生する熱損失は、冷却体2の表面を介して、冷却体2の内部の流路を強制的に流れる冷却水に熱伝達される。これにより、半導体スイッチング素子1を冷却して、その温度上昇を抑制することができる。
【0040】
そして、冷却体2の内部を通過した冷却水は、排水口8を介して、分岐配管(排水側)6を通って、主配管(排水側)4へ排出される。
以上が、本発明の第1の実施例の電力変換装置の構成および動作の説明である。
【0041】
かくして、本発明の第1の実施例によれば、排水口8が、冷却体2の背面側の上側に設けられているため、気泡を排水口8を通じて冷却体2の内部から外部へ排出することで、内部に気泡が残留しにくくすることができる。
【0042】
この効果について、図3を用いて詳細に説明する。
図3は、本発明の第1の実施例の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その1)である。図3のとおり、冷却水の循環運動時において、冷却体2の内部では、給水口7から排水口8へ向けて冷却水が流路を流れる。このとき、冷却水の通過に伴って発生する気泡が、上側に残留しやすい。しかし、排水口8が上側に形成されているため、気泡を、排水口8を通じて外部へ排出することができる。
【0043】
このように、冷却体2内で発生する気泡を取り除くことで、冷却水の循環運転時において、冷却体2内に気泡のない冷却水を供給し続けることができる。
従って、冷却体2の内部に気泡が残留することで生じる残留部分の熱伝導率の悪化を抑制することができる。そのため、半導体スイッチング素子1の冷却効率の悪化も防止することができる。
【0044】
また、本発明の第1の実施例によれば、給水口7が、冷却体2の背面側の下側に設けられているため、例えばメンテナンス時に冷却水を抜く際に、冷却水を、給水口7を通じて冷却体2の内部から外部へ排出することで、内部に冷却水が残留しにくくすることができる。
【0045】
この効果について、図4を用いて詳細に説明する。
図4は、本発明の第1の実施例の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図(その2)である。図4のとおり、冷却水のメンテナンス時などにおいて、冷却体2の内部では、下側から冷却水が抜かれる。このとき、下側に残留しやすい。しかし、給水口7が下側に形成されているため、冷却水を、給水口7を通じて外部へ排出することができる。
【0046】
このように、メンテナンス時などにおいて、冷却体2内の冷却水を残留しにくくすることで、周囲の機器に冷却水がかかるおそれや、残留した冷却水の水質悪化による冷却体2の腐食などを防止することができる。
【0047】
また、残留した冷却水の凍結による冷却体2の破損も防止することができる。
そのほか、本発明の第1の実施例によれば、冷却体2の背面側の中央付近に、主配管(給水側)3と主配管(排水側)4が配置されているため、全体としての幅寸法を小さくできる。そのため、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0048】
さらに、本発明の第1の実施例によれば、給水口7と主配管(給水側)3との間の距離(=分岐配管(給水側)5の長さ)を、給水口7から主配管(排水側)4までの距離よりも長く設定することができる。また、排水口8と主配管(排水側)4との間の距離(=分岐配管(排水側)6の長さ)を、排水口8から主配管(給水側)3までの距離よりも長く設定することができる。そのため、各分岐配管5および6として、例えばフレキシブル配管を使用する場合において、組み立て性を向上させることができる。
【0049】
つまり、通常、フレキシブル配管は縮む量が少ない。しかし、第1の実施例では、給水口7と主配管(給水側)3との間の距離、そして、排水口8と主配管(排水側)4との間の距離のそれぞれが長く設定されているため、フレキシブル配管を使用した場合でも、例えば2点間への後付けなどを容易にすることができる。従って、組み立て誤差および吸収量を大きくすることができるため、フレキシブル配管を過度に縮ませながら組み立てる必要もなくなり、配管系に無理な力がかかるような事態も防止することができる。また、組み立て順序にも制約を受けない。さらに、メンテナンスや分解、交換作業も容易にすることができる。
【0050】
そのほか、本発明の第1の実施例によれば、冷却体2の背面側の中央付近(つまり、冷却体2の中心位置の近傍)に、主配管(給水側)3および主配管(排水側)4が配置されているため、全体としての幅寸法を小さくすることができる。従って、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【0051】
以上が、本発明の第1の実施例の効果である。
次に、図5により、本発明の第2の実施例の電力変換装置の構成を説明する。図5は、本発明の第2の実施例の電力変換装置の冷却体の背面側の内部図である。
【0052】
第2の実施例の電力変換装置は、正面側の構成は第1の実施例と共通である。背面側も、冷却体2の中央付近に、主配管(給水側)3と主配管(排水側)4配置されている点は共通である。また、給水口7の位置も第1の実施例と同様である。そのほかの構成も特に示していないものは、第1の実施例と共通である。
【0053】
しかし、排水口8の位置が第1の実施例とは異なる。ここでは、給水口7の軸方向の延長上に、排水口8が形成されている。また、冷却体2の内部には、冷却水の流路として、下側から上側へ流通させるための上下二段の流路が形成されている点も、第1の実施例とは異なる。ここで、下段の流路には給水口7が設けられており、上段の流路には排水口8が設けられている。
【0054】
続いて、同じく図5により、本発明の第2の実施例の電力変換装置の動作を説明する。
第2の実施例の電力変換装置は、基本的な動作は第1の実施例と共通であるが、冷却体2の内部における冷却水の流れが異なる。給水口7から冷却体2の内部へ流入した冷却水は、内部に形成された下段の流路を通過した後、上段の流路を通過して、排水口8に至る。そして、排水口8から配管へ進むことにより、冷却水の循環運転が行われる。
【0055】
以上が、本発明の第2の実施例の電力変換装置の構成および動作の説明である。
かくして、本発明の第2の実施例によれば、排水口8が、冷却体2の背面側の上側に設けられているため、気泡を、排水口8を通じて冷却体2の内部から外部へ排出することで、内部に気泡が残留しにくくすることができる。
【0056】
また、本発明の第2の実施例によれば、給水口7が、冷却体2の背面側の下側に設けられているため、例えばメンテナンス時に冷却水を抜く際に、冷却水を給水口7を通じて冷却体2の内部から外部へ排出することで、内部に冷却水が残留しにくくすることができる。
【0057】
以上が、本発明の第2の実施例の効果である。
なお、上記の第1および第2の実施例では、給水口7を下側に設置しているが、これに限定されない。反対に、排水口8を下側に設置した場合であっても、メンテナンス時に、排水口を通じて冷却水を排出することで、冷却体2の内部に冷却水が残留しにくくすることができる。
【0058】
また、上記の第1および第2の実施例では、給水口7および排水口8はそれぞれ角部の近傍に設置されているが、これに限定されない。排水口8は、気泡を外部へ排出できる程度に、冷却体2の内部の上側に配置されていればよい。給水口7は、冷却水を外部へ排出できる程度に、冷却体2の内部の下側に配置されていればよい。
【0059】
なお、上記の第1および第2の実施例では、給水口7から主配管(給水側)3までの距離と、排水口8から主配管(排水側)4までの距離が、ともに長く設定されている。しかし、どちらか一方の距離だけを長く設定した場合であっても、その分、組み立て性を向上させることができる。
【0060】
そのほか、上記の第1および第2の実施例では、主配管(給水側)3と主配管(排水側)4を、冷却体2の中央付近に配置している。しかし、従来例どおり、主配管(給水側)3と主配管(排水側)4を冷却体2の両側に配置して、給水口7と排水口8の位置を従来例と反対にしてもよい。つまり、主配管(給水側)3から遠い位置に給水口7を設置し、主配管(排水側)4から遠い位置に排水口8を設置する。これにより、主配管(給水側)3から給水口7までの距離を長くすることができる。また、主配管(排水側)4から排水口8までの距離も長くすることができる。
【0061】
また、上記の第1および第2の実施例では、全体構成として、冷却水の給水が向かう方向が下側、排水が向かう方向が上側となるように、ポンプが上側に設置されている。しかし、冷却水を循環させるポンプの設置は上側に限定されない。冷却水を循環させることができる位置であればよい。また、冷却水の給水および排水が向かう方向も、第1および2の実施例とは逆方向でもよい。
【0062】
なお、上記の第1および第2の実施例では、冷却体2として、水冷冷却体を使用したが、これに限定されるものではない。その他の冷媒を冷却液として使用する冷却体を使用することができる。
【0063】
さらに、上記の第1および第2の実施例では、各分岐配管として、フレキシブル配管を使用したが、これに限定されるものではない。フレキシブル配管のように伸縮が可能な材質を有するものであれば使用することができる。
【0064】
そのほか、上記の第1および第2の実施例において、冷却体2は矩形状である。しかし、冷却体2の形状は矩形状に限定される必要はない。正方形状でも略円柱などの形状であってもよい。
【0065】
また、半導体スイッチング素子1を相ごとに分けて別々の冷却体2に取り付け、各主配管は各冷却体2の相ごとに接続し、各冷却体2を直列に接続することもできる。具体的には、冷却体2に取り付けられた半導体スイッチング素子1を、上方から下方へ順番に、U相、V相、W相とする。この場合には、各主配管を相ごとに直列に接続することができるため、配管の簡素化を図ることができる。
【0066】
さらに、上下の配置は、図1および図2とは逆の上下配置でも構わない。さらに、完全な上下配置ではなく、斜め要素を含んでいても、本発明の作用が発揮できる程度に上下構成が実現されていればよい。
【0067】
なお、上記の第1および第2の実施例において、冷却対象は半導体スイッチング素子1であるが、これに限定されるものではない。半導体スイッチング素子以外でも、半導体スイッチング素子で変換した電流を平滑するコンデンサや、コンデンサの電圧バランスを取るための抵抗、半導体スイッチング素子のサージ電圧を抑制するためのコンデンサや抵抗や、その他リアクトル、基板などを冷却対象とすることもできる。
【0068】
そのほか、上記の第1および第2の実施例において、給水口7および排水口8は、半導体スイッチング素子1が取り付けられた外面(正面)とは反対側の面(背面)に設けられているが、これに限定されるものではない。可能であれば、給水口7および排水口8は、正面に設けられていてもよい。
【0069】
さらに、上記の第1および第2の実施例において、主配管(給水側)3、主配管(排水側)4、分岐配管(給水側)5、分岐配管(排水側)6は筒状の配管であるが、この形状に限定されるものではない。これらの配管の形状は、板状などの筒状以外の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 半導体スイッチング素子
2 冷却体
3 主配管(給水側)
4 主配管(排水側)
5 分岐配管(給水側)
6 分岐配管(排水側)
7 給水口
8 排水口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が取り付けられ、内部に冷却液の流れる流路が形成されるとともに、その外面に供給口および排出口が配置された冷却体と、
該供給口を介して前記冷却体に接続し、前記冷却液を前記冷却体の内部へ供給する供給配管と、
前記排出口を介して前記冷却体に接続し、前記冷却液を前記冷却体の外部へ排出する排出配管とを備え、
前記排出口が、前記冷却体の外面の上方側に配置されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記冷却体が角板状であり、
前記排出口が、前記冷却体の外面の上方側の角部近傍に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記半導体素子が前記冷却体の一面に取り付けられ、
前記排出口が他面に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置であって、
前記供給口が、前記冷却体の外面の下方側に配置されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記冷却体が角板状であり、
前記供給口が、前記冷却体の外面の下方側の角部近傍に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記半導体素子が前記冷却体の一面に取り付けられ、
前記供給口が他面に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置であって、
前記供給配管が、前記冷却体に離隔して設けられた供給用主配管と、該供給用主配管から前記供給口までを接続する供給用分岐配管とから構成され、
前記排出配管が、前記冷却体に離隔して設けられた排出用主配管と、該排出用主配管から前記排出口までを接続する排出用分岐配管とから構成され、
前記排出用分岐配管の距離が、前記排出口から前記供給用主配管までの距離よりも長く設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記供給配管が、前記冷却体に離隔して設けられた供給用主配管と、該供給用主配管から前記供給口までを接続する供給用分岐配管とから構成され、
前記排出配管が、前記冷却体に離隔して設けられた排出用主配管と、該排出用主配管から前記排出口までを接続する排出用分岐配管とから構成され、
前記排出用分岐配管の距離が、前記排出口から前記供給用主配管までの距離よりも長く設定されており、
前記供給用分岐配管の距離が、前記供給口から前記排出用主配管までの距離よりも長く設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記供給配管が、前記冷却体に離隔して設けられた供給用主配管と、該供給用主配管から前記供給口までを接続する供給用分岐配管とから構成され、
前記排出配管が、前記冷却体に離隔して設けられた排出用主配管と、該排出用主配管から前記排出口までを接続する排出用分岐配管とから構成され、
前記排出用分岐配管の距離が、前記排出口から前記供給用主配管までの距離よりも長く設定されており、
前記供給用分岐配管の距離が、前記供給口から前記排出用主配管までの距離よりも長く設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記供給配管が、前記冷却体に離隔して設けられた供給用主配管と、該供給用主配管から前記供給口までを接続する供給用分岐配管とから構成され、
前記排出配管が、前記冷却体に離隔して設けられた排出用主配管と、該排出用主配管から前記排出口までを接続する排出用分岐配管とから構成され、
前記排出用分岐配管の距離が、前記排出口から前記供給用主配管までの距離よりも長く設定されており、
前記供給用分岐配管の距離が、前記供給口から前記排出用主配管までの距離よりも長く設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項7に記載の電力変換装置であって、
前記排出用分岐配管が、フレキシブル配管であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項10に記載の電力変換装置であって、
前記供給用分岐配管および前記排出用分岐配管が、フレキシブル配管であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項11に記載の電力変換装置であって、
前記供給用主配管および前記排出用主配管が、前記冷却体の中心位置の近傍に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項12に記載の電力変換装置であって、
前記供給用主配管および前記排出用主配管が、前記冷却体の中心位置の近傍に配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項13に記載の電力変換装置であって、
前記電力変換装置が多相の電力変換装置であり、
前記半導体素子が相ごとに分かれて複数の前記冷却体にそれぞれ取り付けられ、
異なる相の前記半導体素子を取り付けた複数の前記冷却体が、直列に配管接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
請求項14に記載の電力変換装置であって、
前記電力変換装置が多相の電力変換装置であり、
前記半導体素子が相ごとに分かれて複数の前記冷却体にそれぞれ取り付けられ、
異なる相の前記半導体素子を取り付けた複数の前記冷却体が、直列に配管接続されていることを特徴とする電力変換装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66306(P2013−66306A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203515(P2011−203515)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】