説明

電子デバイス及びその製造方法

【課題】塗布プロセス(印刷やIJ)により製造が可能であって、電磁波照射による異常放電がなく、生産効率及び生産安定性が高く、かつキャリア移動度及びon/off比が向上した電子デバイス及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】基板上に、電極を有し、少なくとも1部に熱変換材料または熱変換材料を含むエリアと、前記熱変換材料または熱変換材料を含むエリアに隣接もしくは近接して電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアを配置し、電磁波を照射して、該電磁波吸収能を持つ物質が発生する熱により、熱変換材料を機能材料に変換する電子デバイスの製造方法において、前記電極の辺が形成する角が全て90°より大きく180°より小さい、または、曲面であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収能を持つ物質を用いて、電極及び絶縁層、半導体層等の各種機能膜を形成する電子デバイスの製造方法及びその製造方法により得られる電子デバイスに関し、より詳しくは、塗布プロセス(印刷やIJ)により製造が可能であって、電磁波照射による異常放電がなく、同時に電極形成、半導体形成工程の1工程化ができる生産効率及び生産安定性の高い電子デバイスの製造方法及びその製造方法により得られる電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報端末の急速な小型化に伴い、それに搭載されるプリント配線板の配線ピッチの狭小化も進み、具体的には、半導体内回路のファイン化に伴い、プリント配線板上に形成される回路パターンの最小線幅、膜厚もますます狭くなっている。
【0003】
このような状況の中、特開2002−324966号公報には、平均粒径数nm〜数100nmの金属超微粒子をインクジェット法で基板上にパターン印刷し、該回路パターンを、200℃以上の温度で焼成し、導電性回路パターンを得る方法が開示されている。
【0004】
また、特開2006−32326号公報には、平均粒径1〜40nm金属超微粒子を溶媒に分散した溶液を、基板上にスピンコートまたはスプレーコートによって均一塗膜を形成し400〜900℃で焼成して、薄膜電極及び薄膜素子(例えば誘電体素子)を得る方法が開示されている。
【0005】
しかし、これらの方法は比較的低温な焼成ではあるが、ガラス転移温度、融解温度が低いプラスチック基板を用いようとすると、さらに低温での焼成が求められるため、実際には高い導電性や目的の素子特性を得ることはできなかった。
【0006】
また、特開2004−55363号公報には、このような耐熱性の低い基板上に薄膜導電性層を得る方法として、平均粒径1〜20nmの特定金属化合物ナノ粒子を含有するコロイド分散物を、インクジェット法により描画し、赤外光または紫外光から選ばれたいずれかのレーザを用いて焼成する方法が開示されている。
【0007】
この方法は、耐熱性の低い基板に対して効果的な方法ではあるが、ビーム径が10〜数十μmのレーザを走査するため、実際にパターン化した電極を焼成しようとすると、長い時間を要すること、表面抵抗が数百Ω/□程度までしか抵抗が下がらないこと、また、金属酸化物からなる透明導電膜についての記載はあるが、微細な金属パターンにいての焼成については詳細な記載がされていない。
【0008】
また、特開2005−294053号公報には、マイクロ波を用いた焼成方法も開示されており、この方法は熱分解性を有し、かつ、高周波電磁波を吸収する粒子を、各種基板上に表面塗布を行った後に、高周波電磁波照射を行うことで、熱分解性粒子を選択的に加熱し、分解、融着することで低抵抗な金属パターンが得られるものである。
【0009】
しかも、高周波電磁波を吸収する粒子自身が分解して金属となることから、電磁波吸収能が消失し自発的に加熱が終了する利点がある。
【0010】
しかしながら、この方法で効率よく導電性パターンを作製するためには、高い電磁波吸収能(誘電損失)と低い分解温度の両方を併せ持つ材料を選択する必要があり、実質的には、高い誘電損失と低温分解(還元反応)性を持つ酸化銀、窒化銀、ハロゲン化銀を用いなければ効率が低く、中でも高い誘電損失を持つ酸化銀を用いないと実用可能な導電率を得ることは難しかった。
【0011】
また、一方で、マイクロ波照射時に放電現象がおこり、結果的にマイクロ波照射が行われる部位での熱暴走がおこり、照射部位に亀裂が発生する等の問題点が指摘されていた。
【0012】
それに対して、例えば、導電性発泡シートを塗膜の下に敷くことで放電を電磁波照射時の放電を防止する(例えば、特許文献1参照。)、また、透明導電性膜の表面に、酸化チタンの微粒子のペーストを塗布して酸化チタン粒子集合体薄膜を設け、導電体の上側に、酸化チタン粒子集合体薄膜側が下になるような姿勢で載置してマイクロ波を照射して放電を防止する(例えば、特許文献2参照。)等の技術がある。
【0013】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の導電性薄膜前駆体からの放電をアースする目的で、導電体を導電性薄膜前駆体に直接密着させる必要があり、密着性が保たれないとアースできなくなり放電するという問題点があった。
【0014】
さらにまた、マイクロ波照射の対象物の損失係数に応じて出力調整することで放電を防止するという技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0015】
しかしながら、高温に昇温した場合、マイクロ波の出力が上げられなくなる場合があり、また、高温が必要な導電層の形成には出力調整のみでは所定温度まで昇温できないという問題点があった。
【特許文献1】特開2001−91126号公報
【特許文献2】特開2006−60064号公報
【特許文献3】特開2001−54730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、塗布プロセス(印刷やIJ)により製造が可能であって、電磁波照射による異常放電がなく、同時に電極形成、半導体形成工程の1工程化ができる生産効率及び生産安定性が高く、かつキャリア移動度及びon/off比が向上した電子デバイスの製造方法及びその製造方法により得られる電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
【0018】
1.基板上に、電極を有し、少なくとも1部に熱変換材料または熱変換材料を含むエリアと、前記熱変換材料または熱変換材料を含むエリアに隣接もしくは近接して電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアを配置し、電磁波を照射して、該電磁波吸収能を持つ物質が発生する熱により、熱変換材料を機能材料に変換する電子デバイスの製造方法において、前記電極の辺が形成する角が全て90°より大きく180°より小さい、または、曲面であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【0019】
2.前記電磁波吸収能を持つ物質が金属酸化物であることを特徴とする前記1に記載の電子デバイスの製造方法。
【0020】
3.前記電磁波吸収能を持つ物質が導電体であることを特徴とする前記1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【0021】
4.前記金属酸化物が少なくともIn、Sn、Znのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする前記2または3に記載の電子デバイスの製造方法。
【0022】
5.電子デバイスがトランジスタ素子であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0023】
6.熱変換材料が半導体前駆体材料であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0024】
7.熱変換材料が絶縁膜前駆体材料であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0025】
8.熱変換材料が保護膜前駆体材料であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0026】
9.熱変換材料が電極前駆体材料であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0027】
10.前記電極前駆体材料が金属を含み、電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアと隣接することを特徴とする前記9に記載の電子デバイスの製造方法。
【0028】
11.前記半導体前駆体材料が金属酸化物半導体前駆体であり、金属酸化物半導体に変換されることを特徴とする前記6に記載の電子デバイスの製造方法。
【0029】
12.金属酸化物半導体前駆体が少なくとも、In、Zn、Snのいずれかの元素を含むことを特徴とする前記11に記載の電子デバイスの製造方法。
【0030】
13.金属酸化物半導体前駆体がGa、Alのいずれかを含むことを特徴とする前記11または12に記載の電子デバイスの製造方法。
【0031】
14.前記半導体前駆体材料が有機半導体前駆体であり、有機半導体に変換されることを特徴とする前記6に記載の電子デバイスの製造方法。
【0032】
15.電磁波吸収能を持つ物質を含む電極と、絶縁膜前駆体エリア、半導体前駆体エリア、保護膜前駆体エリアのうち少なくとも2つの機能層前駆体エリアを形成後、電磁波波を照射し、機能層前駆体層エリアを同時に加熱して機能層を形成することを特徴とする前記1〜14のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0033】
16.電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含む電極前駆体エリアと、絶縁膜前駆体エリア、半導体前駆体エリア、保護膜前駆体エリアのうち少なくとも1つの機能層前駆体エリアを形成後、電磁波を照射し、電極前駆体エリアと機能層前駆体エリアを同時に加熱して電極と機能層を同時に形成することを特徴とする前記1〜14のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0034】
17.前記トランジスタ素子がボトムゲート構造であり、ゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアからなることを特徴とする前記6〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0035】
18.前記トランジスタ素子がボトムコンタクト構造であり、ゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアからなることを特徴とする前記5〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0036】
19.前記トランジスタ素子がトップゲート構造であり、ゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアからなることを特徴とする前記5〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0037】
20.電磁波がマイクロ波(周波数0.3〜50GHz)であることを特徴とする前記1〜19のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0038】
21.前記トランジスタ素子の電極前駆体材料及び半導体前駆体材料、絶縁体前駆体材料、保護膜前駆体材料の少なくとも1層が塗布で形成されることを特徴とする前記5〜20のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0039】
22.電子デバイスの基板温度が50〜200℃、塗膜表面温度が200〜600℃であることを特徴とする前記1〜21のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0040】
23.前記基板が樹脂基板であることを特徴とする前記1〜22のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0041】
24.電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)と電子デバイスの基盤の最短距離が、電磁波を吸収して発熱するエリアの加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と、加熱変換される機能層前駆体エリア全境界間の最長距離の、1/200〜10倍であることを特徴とする前記1〜23のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【0042】
25.前記1〜24のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法で製造されたことを特徴とする電子デバイス。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、塗布プロセス(印刷やIJ)により製造が可能であって、電磁波照射による異常放電がなく、同時に電極形成、半導体形成工程の1工程化ができる生産効率及び生産安定性が高く、かつキャリア移動度及びon/off比が向上した電子デバイスの製造方法及びその製造方法により得られる電子デバイスを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明は、基板上に、電極を有し、少なくとも1部に熱変換材料または熱変換材料を含むエリアと、前記熱変換材料または熱変換材料を含むエリアに隣接もしくは近接して電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアを配置し、電磁波を照射して、該電磁波吸収能を持つ物質が発生する熱により、熱変換材料を機能材料に変換する電子デバイスの製造方法において、前記電極の辺が形成する角が全て90°より大きく180°より小さい、または、曲面であることを特徴とする電子デバイスの製造方法及びその製造方法により得られる電子デバイスである。
【0045】
セラミックスの分野では、本発明に係る電磁波を焼結に利用することが既に公知となっている。磁性を含む材料に電磁波を照射すると、その物質の複素透磁率の損失部の大きさに応じて発熱することを利用し、短時間で均一に、かつ高温にすることができる。
【0046】
一方で、金属に電磁波を照射すると自由電子が高い周波数で運動を始めるためアーク放電が発生し、加熱できないこともよく知られている。また、導電性が高くとも束縛の緩い自由電子を持つ金属は、自身が放電してしまう可能性が高いことや自由電子の運動のため電磁波を反射してしまうことから、電磁波照射による電極製造の電極材料としては使い難いという問題があった。
【0047】
ここで電子デバイスの電極とは、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、画素電極、蓄積コンデンサ電極、容量コンデンサ電極等を指す。
【0048】
このような技術背景のもとに、本発明者等は上記の問題点を鋭意検討した結果、前記電極の辺が形成する角を全て90°より大きく180°より小さい、または、曲面(以下、90°より大きく180°より小さい、または、曲面を鈍角ともいう)とすることにより、電磁波照射時のアーク(異常放電)の発生が防止され、異常放電にもとづく照射領域での亀裂発生や構成材料の炭化等による劣化が防止され、生産安定性が向上することを見出した。電極の辺が形成する角は全て110°より大きく150°より小さいことがより好ましい。
【0049】
図1は、従来の電極の平面形状を示す。図2は、本発明に係る電極の平面形状を示す。
【0050】
電極の辺が形成する角を鈍角とするには、ITO、Al、Cr等の電極材料をスパッタして薄膜を形成した後、フォトリソグラフ法でこの形状になるようにエッチング加工する、またはこれらの金属を含む流動性電極材料をこの形状になるようにインクジェット法で吐出、描画する方法等がある。
【0051】
また、同様の観点から電極材料としては、縮退伝導により室温から高温域まで比較的高い導電性を示す、ドープされたSi、In酸化物、Zn酸化物、Sn酸化物等のいわゆる導電性金属酸化物が好ましい。また、これら導電性金属酸化物の内部に粒界等の抵抗が高い部分があると、その部分で放電を起こす危険性があるので単結晶で作製されたものが好ましい。
【0052】
熱変換材料とは、熱により電子デバイスにおける種々の機能材料(層)に変換される前駆体を意味し、具体的には、例えば、半導体材料前駆体、絶縁材料前駆体、また電極材料前駆体等であり、それぞれ半導体、絶縁材料、電極等に、熱によって変換される機能材料前駆体である。熱変換材料には、熱によって反応する材料だけでなくいわゆるアニーリング効果を発現する材料も含まれる。
【0053】
また、電磁波吸収能を持つ物質としては、例えば、金属酸化物であり、さらに、前記電磁波吸収能を持つ物質は導電体であることが好ましい。電磁波を吸収するのは金属酸化物中のMe−O結合であると思われる(金属そのものは吸収しない)。
【0054】
また、前記の金属酸化物中、導電性が高いことから、少なくともIn、Sn、Znの酸化物を含むことが好ましく、より電磁波吸収能が高いことから、少なくともIn、Sn、特に、Sn酸化物を含むことが好ましい。
【0055】
特に、例えば、導電体であるITO微粒子を用いた時、In酸化物、Zn酸化物に比べSn酸化物は特に電磁波吸収能が高いので、Sn酸化物を含む電極パターン部は最初に高温になる。このような電磁波吸収能を持つ物質のパターンを形成後、例えば、この上に、機能層前駆体(例えば半導体前駆体)エリア(薄膜)を形成し、電磁波の照射を行うことで、ITOからなる電極パターン部のみでなくその近傍も高温となり、例えば、ITOにより熱変換材料層から機能材料層(例えば半導体層)への形成を同時に進行させることができる。
【0056】
また、電極パターンに従い電極材料前駆体エリアを形成した後、熱変換材料を含むエリアを形成して、電磁波照射を行えば、電極、機能材料層のいずれも同時に形成される。
【0057】
電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアとしては電極であることが好ましい。
【0058】
電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアを電極に適用した電子デバイスとしては、薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池、発光ダイオード(LED)等を挙げることができるが、中でも、本発明の薄膜トランジスタ素子が好ましい。
【0059】
電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアを電極とし、絶縁膜、半導体、保護膜等複数の機能層エリアを形成し、電磁波照射により、電磁波吸収能を持つ電極、また電極前駆体エリアを熱源として、機能層前駆体層エリアを同時に加熱して複数の機能層を同時に形成することのできるので、薄膜トランジスタ素子であることが好ましい。
【0060】
例えば、電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれる電極と、絶縁膜前駆体エリア、半導体前駆体エリア、保護膜前駆体エリアのうち少なくとも二つの機能層前駆体エリアを形成後、電磁波を照射し、機能層前駆体層エリアを同時に加熱して複数の機能層を同時に形成する。
【0061】
また、電極を、電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれる電極前駆体により形成して、絶縁膜前駆体エリア、半導体前駆体エリア、保護膜前駆体エリア等のうち少なくとも1つの機能層前駆体エリアを形成して後、電磁波を照射して、電極前駆体エリア自身と、機能層前駆体エリアを加熱して電極と機能層とを共に形成することもできる。
【0062】
従って、本発明は、基板上に、電磁波吸収能を持つ物質でエリアを形成し、その上に機能材料前駆体を含むエリアを形成した後、これに電磁波を照射することにより、電磁波吸収能を持つ物質で形成されたエリアを発熱させ、発生する熱によって、電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアの近傍において、機能材料前駆体を含むエリアを加熱して、機能材料前駆体から機能材料(薄膜)への転換を行う電子デバイスの製造方法である。
【0063】
機能材料あるいはその膜に変換される熱変換材料としては、例えば、本発明の第一の態様として、熱変換材料が半導体前駆体材料である場合が挙げられる。また、第二の態様としては、熱変換材料が絶縁膜前駆体材料である場合が挙げられ、第三の態様としては、熱変換材料が保護膜前駆体材料である場合が挙げられ、また、さらに熱変換材料が電極前駆体材料である場合も挙げられる。
【0064】
以下、順次説明する。
【0065】
本発明の一の態様として、基板上に、電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれる電極パターン(エリア)を形成し、その上に熱変換材料として半導体前駆体材料エリア(薄膜)を形成した後、これに電磁波を照射することにより、電極と半導体層を同時に形成することが挙げられる。
【0066】
前記第一の態様について、図を用いて説明する。
【0067】
図3は、例えば、ガラス基板6上にITO薄膜からなるゲート電極4を、例えばスパッタして薄膜を形成した後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角を鈍角になるようにエッチング加工し(鈍角の形状は図示せず)、パターニングすることでゲート電極パターンを、さらに、この上に、同様にスパッタあるいはプラズマCVD法等により酸化珪素からなるゲート絶縁膜5を形成したところを断面図で示している(図3(1))。ここで導電性のITOは電磁波吸収能を持っている。
【0068】
次いで、ゲート絶縁膜5上に、半導体前駆体材料である、金属イオン含有薄膜、例えば、In(NO、Zn(NO、Ga(NO(組成比質量で1:1:1)それぞれをアセトニトリルに溶解した溶液を、インクジェット装置によって吐出して半導体前駆体材料によるエリアを成膜する。これを脱水、乾燥処理して、例えば、平均膜厚は100nmの半導体前駆体材料エリア(薄膜)1′を形成する(図3(2))。
【0069】
このように、電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極上に、金属酸化物半導体前駆体材料を含む薄膜をそのチャネル領域(エリア)に成膜し、その後、これに電磁波を照射すると、電磁波(マイクロ波)照射によって、電磁波吸収能を持つITOからなる電極パターンがこれを吸収することで、電極パターン内部にジュール熱が発生し、ジュール熱はその近傍を伝熱によって加熱するので、金属酸化物半導体前駆体材料膜1′は、酸素の存在下、熱酸化を受けて金属酸化物半導体層1に転化する(図3(3))。
【0070】
金属酸化物半導体前駆体材料から金属酸化物半導体が生成するためには酸素が必要であり、空気(酸素)の存在下において、電磁波照射を行うことで、熱酸化が起こって、金属酸化物半導体前駆体材料薄膜は半導体膜に変換される。
【0071】
樹脂基板のような耐熱性の低い基板を用いる場合には、電磁波の出力、照射時間、さらには照射回数を制御することで基板温度は、50〜200℃、前駆体を含有する薄膜の表面温度が200〜600℃になるように処理することが好ましい。
【0072】
次いで、ソース電極2、ドレイン電極3を例えば金蒸着等により形成すれば、薄膜トランジスタ素子14が得られる(図3(4))。
【0073】
また、半導体層として、例えば有機半導体前駆体材料、例えば、特開2003−304014号公報に記載の如きビシクロポルフィリン化合物を用いて半導体前駆体層を作製することで、ITO電極の電磁波吸収による発熱による熱分解によって、同じく有機半導体層に変換できるので、有機薄膜トランジスタを効率よく形成することが可能である。
【0074】
ITO薄膜は電磁波吸収能を持つ物質であるが、通常の金属材料からなる電極を用いる場合には、電磁波吸収をしないので、電極上に、ITO等の電磁波吸収能を持つ物質を形成し、これにより電極を熱源とすることができる。また、これにより、後述する電極前駆該材料を用いて電極パターンを形成し、この上に形成されたITO等の電磁波吸収能を持つ物質により、これを電極材料に変換することも可能である。
【0075】
また、逆に、金属酸化物導電体であるITO薄膜上に、電極材料前駆体、例えば、特開平3−34211号、特開平11−80647号各公報等に記載された金属のナノ粒子(分散体)を適用して、ITOの発熱によって、焼成して電極とすることも可能である。
【0076】
上記においては、機能層として半導体層を、電磁波吸収能を有する電極パターンからの電磁波照射による発熱で形成する例であるが、例えば第二の態様のように、変換材料として絶縁層前駆体材料(後述する)を用いてこれを絶縁層に変換・形成することが可能である。
【0077】
この例を図4に示す。図は、ガラス基板6上にITOからなる電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4(鈍角の形状は図示せず)、さらに絶縁膜パターンに従い絶縁膜前駆体エリア5′を形成したところを示している。ITOは、例えばスパッタ法によりガラス基板上に形成する。マスクを用いることにより、またフォトレジストによりパターニングすることで電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4パターンを得る。
【0078】
絶縁膜前駆体材料としては、例えば、酸化珪素膜を形成する場合、テトラエトキシシラン、またジシラザン、ポリシラザン等の金属化合物材料を用いることができ、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)を上記のITOからなるゲート電極パターン上に塗布して薄膜の絶縁膜前駆体材料エリア5′を形成する(図4(1))。
【0079】
絶縁膜前駆体材料としては、比誘電率の高い金属酸化物皮膜、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、等を形成する前駆体が挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の金属窒化物も好適に用いることができる。
【0080】
これらを形成する前駆体としては、例えば、いわゆるゾル−ゲル膜が好ましく、ゾル−ゲル法とよばれる、前記の金属酸化物の金属、例えば珪素等の金属アルコキシド、金属ハライド等を任意の有機溶剤あるいは水中において酸触媒等により加水分解、重縮合させた液を塗布、乾燥する方法が用いられる。この方法によれば、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウエットプロセスが、材料に応じて使用できる。
【0081】
また絶縁膜前駆体材料として、有機化合物皮膜を用いる時は、例えば、熱で重縮合して絶縁性の有機皮膜を形成する材料、例えば硬化性ポリイミド等重縮合により絶縁膜を形成する前駆体材料、また、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、架橋剤を含むポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等による皮膜を同じく塗布によって形成させ、これらを絶縁膜に変換することができる。例えば、硬化性のポリイミドとしては、京セラケミカル(株)製CT4112、4200、4150等が入手できる。
【0082】
これら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0083】
絶縁膜前駆体材料エリア5′形成の後、次いで、電磁波、好ましくはマイクロ波を照射する。マイクロ波照射によって、電磁波吸収能を持つゲート電極材料(ITO)がこれを吸収する。マイクロ波吸収は電磁波吸収能が高い物質に集中するので、その結果、電極材料前駆体パターン中、その物質が最初にジュール熱を発生して薄膜内部から加熱され、このジュール熱が近傍に伝熱することで、隣接した絶縁膜前駆体材料エリア′を加熱し、絶縁膜前駆体材料エリアは、ゲート絶縁膜5に転化することとなる(図4(2))。
【0084】
代表的な絶縁膜材料であるSiO膜の前駆体であるTEOSには電磁波吸収能が殆ど無いが、電磁波吸収能を持つゲート電極部周辺(近傍では)のSiO結合が形成し酸化絶縁膜となることで電極と酸化絶縁膜を同時に形成することができる(図4(3))。
【0085】
また、もし酸化絶縁膜として吸収能がある金属(例えばTi)からなる、例えばTiNのような絶縁膜の場合は空気中でTiNが形成されると同時にその発熱で自身の焼結も進行することになる。
【0086】
これら絶縁膜の生成には酸素が必要であり、空気(酸素)の存在下において、マイクロ波照射を行うことで熱酸化が起こり、これにより高度の絶縁膜(誘電膜)が形成する。
【0087】
樹脂基板を用いる時、耐熱性が低いため、電磁波の出力、照射時間、さらには照射回数を制御することで基板温度が50〜200℃、前駆体を含有する薄膜の表面温度が200〜600℃になる様に処理することが好ましい。
【0088】
絶縁層の形成後に、公知の方法により半導体層形成、ソース、ドレイン電極の形成を前記図3と同様のプロセスで行うことで同様に薄膜トランジスタ素子が得られる(図4(3)〜(5))。
【0089】
また、前記絶縁膜前駆体材料エリア5′形成後、さらに、金属酸化物半導体前駆体エリアを形成し、それぞれ乾燥の後、電磁波、好ましくはマイクロ波を照射することで、ITO電極による電磁波吸収に伴う発熱を用いて、絶縁膜前駆体材料エリアと共に、金属酸化物半導体前駆体エリアを、同時に熱酸化して、それぞれ、絶縁層、また半導体層に変換することができる。
【0090】
本発明においては、電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)と電子デバイスの基板との最短距離が、電磁波を吸収して発熱するエリアの加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と、加熱変換される機能層前駆体エリア全境界間で決められる最長距離の(複数の機能層前駆体エリアがある場合でもそのいずれとの境界間においても)、1/200〜10倍であることが好ましい。
【0091】
図5で、これを説明する。図5は、基板6上に中間層8を介して電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4(鈍角の形状は図示せず)、ゲート絶縁層5、さらに半導体層に変換する機能層前駆体層薄膜1′が形成されたところを示す。
【0092】
電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)であり、この熱源エリアと基板との最短距離とは、ここでいう、ゲート電極と基板上に形成された中間層の膜厚lが該当する、膜厚のうち、ゲート電極下にある層の厚みの中最短距離を取る。
【0093】
また、電磁波を吸収して発熱するエリアの加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と、加熱変換される機能層前駆体エリア全境界間で決められる最長距離とは、発熱エリア周囲界面の加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と機能層前駆体エリア界面間での最長の距離をいう。図における発熱エリア界面の加熱変換される機能層前駆体エリア側の任意の位置から機能層前駆体エリア全界面の任意の位置を結んだ時最長となる距離であり、図5(1)でDにあたる。各層前駆体を形成するエリアの界面全体を見て決められる。
【0094】
また、電磁波を吸収して発熱するエリアの加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と、加熱変換される機能層前駆体エリア境界間で決められる最長距離(D)という概念の理解のために、もう1つの例を図5(2)に挙げる。
【0095】
図5(2)において、電磁波を吸収して発熱するエリアを電極の辺が形成する角が鈍角状のソース電極2または電極の辺が形成する角が鈍角状のドレイン電極3とすると、この電磁波を吸収して発熱するエリアの加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と、ソース電極2、ドレイン電極3間のチャネル領域に形成された機能層(半導体層)前駆体エリア全境界間で決められる最長距離はDで表されることになる。
【0096】
Dは、電磁波を吸収して発熱する材料から、この発熱により機能層に変換される変換材料エリアまでの最長距離を表すものであり、電磁波を吸収する物質で構成される電極材料は、電極の膜厚としては30〜500nmの範囲であることから、変換材料エリアが発熱材料から遠い場合には、変換材料の熱変換は充分なものとならない。
【0097】
即ち、電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)を例えばゲート電極とすると、ゲート電極による電磁波の吸収によって発生する熱の伝播によって、充分に熱変換材料が機能材料に変換され、かつ、基板にダメージがないよう(特に、プラスチック基板)にするには、熱源から、加熱変換される例えば絶縁体前駆体層また半導体前駆体層エリアまでの距離を示すDに対して、ゲート電極から基板までの最短距離l(多くは、ゲート電極が形成される樹脂支持体上に形成された下引き層等の厚みがこれにあたる)は、1/200〜10倍であることが好ましい。
【0098】
例えば、電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)と、基板(支持体)の間に、熱変換材料層がある場合、また、基板と反対側にある場合でも、電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)と基板との距離、また、電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)と熱変換材料層との距離は、熱変換材料層が熱により変換され機能層を形成した後において計測するものとする。
【0099】
この範囲にある時、熱源としての電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアの近傍において充分に熱変換材料の機能材料への変換が行われ、かつ、基板に対する熱の影響が少ない。1/200未満となる場合には、基板に対するダメージが懸念されたり、また、一方で熱変換材料の、機能材料への変換が不充分となる。また10倍を超える時には、素子の性能がやはり不充分となり、また一方でひび割れ等の問題が顕在化し始め薄膜材料として可撓性等の利点が失われることがある。
【0100】
従って、上記の関係を満足する場合、トランジスタ素子において、素子上に保護膜を形成する場合、保護膜の形成にも適用できる。例えば、第三の態様として、保護膜前駆体材料を熱変換材料として用いて、電磁波照射により保護膜を形成することができる。これらの保護膜の形成においては前述した絶縁膜前駆体材料と同様の材料が用いられる。
【0101】
本発明においては、また、電磁波吸収能を持つ物質であれば、電極材料前駆体であっても電磁波吸収しジュール熱を発生する熱源として自身が電極材料に変換する材料として用いることができる。
【0102】
即ち、形成した電極前駆体エリアからの電磁波及による発熱により、電極自身、また隣接する機能層を、例えば絶縁層や半導体層に変換することが可能である。
【0103】
図3と同様に、電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4パターンに従って、電極の前駆体であって電磁波吸収能を持つ物質、例えばITO微粒子によって電極前駆体エリアを形成することができる。例えばITO粒子を水やアルコール等有機溶媒中に分散したものを、塗布(インクジェット法)により電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極パターン様に基板上に形成し乾燥して、電極前駆体エリアを形成する。塗布はここでは所謂塗布のみでなく、インクジェット法、印刷法等広い意味での塗布液、インク等を適用するウエットプロセスを意味している。
【0104】
ITO粒子を水やアルコール等有機溶媒中に分散した分散体は、これを塗料として塗布(インクジェット)法等によって、基材上に描画できる。
【0105】
例えばITO微粒子を用い電極パターンに従い形成された電極材料前駆体エリア上に、前記同様に、金属酸化物半導体材料前駆体として、金属イオン含有薄膜、例えば、In(NO、Zn(NO、Ga(NO(組成比質量で1:1:1)それぞれを水に溶解した溶液を、インクジェット装置によって、吐出して同様に成膜し、乾燥後、電磁波を照射することで、薄膜の電極パターン内部にジュール熱が発生するので、電極材料前駆体エリアが内部から加熱され、電極材料前駆体が焼成により電極に、また、ジュール熱の伝熱により金属酸化物半導体前駆体エリアも、酸素の存在下で、熱酸化を受けて同時に金属酸化物半導体層に転化する。
【0106】
電磁波吸収能を持つ電極材料、あるいは前駆体材料は、マイクロ波のような電磁波の照射を受けると電子が振動して、ジュール熱が発生するため、内部から均一に加熱される。一方、ガラスや樹脂等の基板は、マイクロ波領域には吸収が殆ど無いため、基板自体は殆ど発熱しない。従って、プラスチック基板を用いる場合、前記のように所定の距離以上を保ち発熱層を設けることで基板等の熱変形や、変質を起こさずに薄膜トランジスタ素子等の電子デバイスの製造を行うことができる。
【0107】
マイクロ波のような電磁波加熱において一般的なように、電磁波(マイクロ波)吸収は吸収が強い物質に集中し、なお、かつ、非常に短時間で500〜600℃まで昇温することが可能なため、電子デバイスが形成される基板自身は殆ど電磁波による加熱の影響を受けず、短時間に電磁波吸収能を持つ物質のみを昇温でき、例えばトランジスタ素子において、電極にこれを用いた時、電極自身、また、隣接した例えば薄膜の金属酸化物半導体前駆体材料エリアを瞬時に加熱することができるため、これを迅速に半導体に変換することが可能である。また、加熱温度、加熱時間は照射するマイクロ波の出力、照射時間で制御することが可能であり、前駆体材料、基板材料に合わせて調整することが可能である。
【0108】
また、電極材料前駆体として、電磁波吸収能を持つ金属酸化物を用いる場合、さらに電極材料として金属微粒子からなる層を組み合わせ(金属は電磁波を吸収しない)、例えばITO微粒子と金属微粒子からなる電極材料前駆体エリアを電極パターンに従い形成して電極前駆体層を形成、あるいは、例えば金属微粒子から形成した電極材料前駆体層上に、これらの電磁波吸収能を持つ物質層を形成し電極前駆体層とし、これに電磁波を照射、電極材料を形成する方法をとってもよい。
【0109】
以上、ゲート電極に電磁波吸収能を持つ物質を適用して、機能層中の熱変換材料を、機能材料に変換する態様について述べたが、例えば、薄膜トランジスタにおいて、ソース電極、ドレイン電極等にこれら電磁波吸収能を持つ物質を適用して、熱変換材料を、機能材料に変換して薄膜トランジスタ素子を形成することもできる。これらの態様については、実施例にて具体的に説明する。
【0110】
(マイクロ波の照射)
本発明においては、電磁波として、マイクロ波が好ましく、マイクロ波照射が好ましい。即ち、電磁波吸収能を持つ電極の辺が形成する角が鈍角状のソース、ドレイン電極パターン、また金属酸化物半導体前駆体である金属を含む薄膜を形成した後、該薄膜に対し、電磁波、特にマイクロ波(周波数0.3〜50GHz)を照射することにより、電磁波吸収能を持つ電極パターン薄膜自身を内部から発熱させることで、電極パターン、そして隣接する金属酸化物半導体前駆体を加熱し、電極パターン及びから金属酸化物半導体を製造する。
【0111】
なお、本発明の電磁波吸収能を持つ電極前駆体のパターンと共に金属酸化物半導体前駆体を含む薄膜を加熱する時、酸素の存在下で、マイクロ波を照射することが、短時間で金属酸化物半導体前駆体の酸化反応を進行させる上で好ましい。
【0112】
また、マイクロ波照射において、熱伝導により少なからず基材にも熱は伝わることがあり、特に樹脂基板のような耐熱性の低い基材の場合は、マイクロ波の出力、照射時間、さらには照射回数を制御することで基板温度が50〜200℃、前駆体を含有する薄膜の表面温度が200〜600℃になるように処理することが好ましい。薄膜表面の温度、基板の温度等は熱電対を用いた表面温度計により測定できる。
【0113】
また、金属酸化物半導体前駆体を含む薄膜は、形成後、マイクロ波照射の前に、例えば、酸素プラズマ、UVオゾン洗浄等のドライ洗浄プロセスによって洗浄し、薄膜中及び薄膜表面に存在し不純物の原因となる有機物を分解、洗浄して、金属成分以外の有機物を排除しておくことも好ましい。
【0114】
一般的に、マイクロ波とは0.3〜50GHzの周波数を持つ電磁波のことを指し、携帯通信で用いられる0.8MHz及び1.5GHz帯、2GHz帯、アマチュア無線、航空機レーダー等で用いられる1.2GHz帯、電子レンジ、構内無線、VICS等で用いられる2.4GHz帯、船舶レーダー等に用いられる3GHz帯、その他ETCの通信に用いられる5.6GHz等は全てマイクロ波の範疇に入る電磁波である。
【0115】
セラミクスの分野では、このような電磁波を焼結に利用することが既に公知となっている。磁性を含む材料に電磁波を照射すると、その物質の複素透磁率の損失部の大きさに応じて発熱することを利用し、短時間で均一に、かつ高温にすることができる。一方で、金属にマイクロ波を照射すると自由電子が高い周波数で運動を始めるためアーク放電が発生し、加熱できないことも良く知られている。
【0116】
このような背景を元に、発明者らは、本発明の電磁波吸収能を持つ電極材料前駆体の他に、金属酸化物半導体の前駆体を、同時に、また短時間で、かつ、均一に、高温まで加熱して、それぞれ、電極材料そして金属酸化物半導体に、同時に転化できることを見出した。セラミックスの分野と異なるのは、金属イオン含有溶液のような金属酸化物半導体前駆体は磁性を殆ど持たないため、ジュール損失及び/または誘電損失という電子及び/または双極子運動に関連する損失成分が発熱の主因となっていると考えられるが、金属イオン含有溶液を塗布/乾燥したのみの薄膜でこのような現象が起こる理由は、明らかではない。
【0117】
前記薄膜電極パターン及び金属酸化物前駆体を含む薄膜は、必ずしも塗布で形成する必要はないが、本発明においては、これらを塗布により形成することが、塗布による電極形成、塗布による半導体形成工程と1程化ができる等により、薄膜トランジスタの製造において、生産効率の向上が図れ、好ましい。
【0118】
(電磁波吸収能を持つ物質)
本発明において、電磁波吸収能を持つ物質としては、1つには、金属酸化物材料微粒子であり、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、IZO、ITO等が好ましく、少なくともIn、Snの酸化物を含むことが好ましい。本発明においては、これら電磁波吸収能を有する物質を電極として用いることができる。
【0119】
酸化インジウムに錫をドーピングして得られるITO膜においては得られるITO膜のIn:Snの原子数比が好ましくは、100:0.5〜100:10の範囲なるよう調整される。In:Snの原子数比はXPS測定により求めることができる。また、酸化錫にフッ素をドーピング(Sn:Fの原子数比が100:0.01〜100:50の範囲)して得られる透明導電膜(FTO膜という)、In−ZnO系アモルファス導電膜(In:Znの原子数比が100:50〜100:5の範囲)等を用いることができる。原子数比はXPS測定により求めることができる。
【0120】
電磁波吸収能を持つ金属酸化物材料微粒子からなる導電性の薄膜の形成は、真空蒸着やスパッタ法等を用いることにより、また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド、アルキル金属等の有機金属化合物を用いてプラズマCVD法により形成することも好ましい。また、インジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造でき、比抵抗値で10−4Ω・cmオーダーの優れた導電性を有するITO膜を得ることができる。適当なパターニング方法と組み合わせて電極パターンを得る。
【0121】
電磁波吸収能を持つ物質としては、上記のように、蒸着あるいはスパッタあるいはプラズマCVD等により形成された導電性のIZO、ITO等の薄膜であってよいが、また、少なくともIn、Snの酸化物を含む金属酸化物微粒子の分散体である電極前駆体材料であってもよく、この場合には、成膜後に、焼成することで導電性となるので、電極パターンに従い、例えばインクジェット法等塗布法により、これにて電極前駆体エリアを形成した後、これを焼成して、電極材料とする。焼成は、マイクロ波照射によって行うことが好ましい。
【0122】
少なくともIn、Snの酸化物を含む金属酸化物微粒子の分散体としては、特にITO微粒子が非常に微細かつ高分散であり好ましい。Sn酸化物は電磁波吸収能が高く、Sn酸化物を含む電極パターン部が最初に高温になるので、これを電極材料前駆体に含む場合、電極パターン部の近傍も高温となり好ましい。
【0123】
これらの金属酸化物微粒子は、例えば、pHを調製した溶液を加熱して得たゲル状物から、これを加熱、低温焼結する等の方法により得られるもので、これらを水あるいはアルコール等の適宜な溶媒に分散させた塗料(インク)は、塗布にあるいはインクジェットまた印刷法等に用いても凝集等による目詰まりが発生しない微粒子、高分散である。
【0124】
このような粒子として好ましくは、粒径は5〜50nmの範囲である。
【0125】
これらは市販されており、市場から直接入手することもできる。シーアイ化成社製、NanoTek Slurry ITO、また、SnO等が挙げられる。
【0126】
これら微粒子分散液を電極材料前駆体として用いると、スパッタ法等によらず、ITO等の電極材料がインクジェット法等、塗布法により容易にパターニング形成でき、かつ、薄膜の表面温度が200〜600℃という比較的低温の熱処理あるいは焼結により、微粒子の結晶化が起こり導電性の高い薄膜が得られる。
【0127】
また電極材料前駆体としては、また、少なくともIn、Sn、Zn原子含有化合物が挙げられ、これらの金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
【0128】
少なくともIn、Sn、Znを含む金属塩としては、硝酸塩、酢酸塩等を、ハロゲン金属化合物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物等を好適に用いることができる。
【0129】
以上の電極材料前駆体のうち、好ましいのは、インジウム、錫、亜鉛の硝酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸スズ、硝酸亜鉛、塩化インジウム、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化亜鉛、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ等が挙げられる。
【0130】
これらの電極材料前駆体、例えば硝酸インジウム、硝酸スズ等の溶液を、前記基板上に電極パターンに従い電極材料前駆体エリアを形成し、前記同様に、この上に絶縁層となる絶縁膜前駆体エリアを形成し、これに電磁波を照射することで、これらの電極材料前駆体中に一部形成される酸化物が、発熱体として作用するために、前記同様に、自身が触媒的に電極材料となる他、隣接した絶縁膜前駆体エリアに熱を及ぼし、これを絶縁膜に変換できる。
【0131】
(半導体前駆体材料)
本発明において、熱変換材料である半導体前駆体としては、金属酸化物半導体前駆体、また有機半導体前駆体材料も用いることができる。
【0132】
金属酸化物半導体前駆体としては、金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子含有化合物には、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。
【0133】
金属塩、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物の金属としては、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
【0134】
それらの金属塩のうち、インジウム、錫、亜鉛のいずれかの金属イオンを含むことが好ましく、それらを併用して混合させてもよい。
【0135】
また、その他の金属として、ガリウムまたはアルミニウムを含むことが好ましい。
【0136】
金属塩としては、硝酸塩、酢酸塩等を、ハロゲン金属化合物としては塩化物、ヨウ化物、臭化物等を好適に用いることができる。
【0137】
有機金属化合物としては、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
【0138】
一般式(I) RMR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。Rのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えばアセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子にしたものでもよい。有機金属化合物の中では、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも1つ有する金属化合物が最も好ましい。金属塩の中では、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。硝酸塩としては、硝酸インジウム、硝酸錫、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム等が挙げられる。
【0139】
以上の金属酸化物半導体前駆体のうち、好ましいのは、金属の硝酸塩、金属のハロゲン化物、アルコキシド類である。具体例としては、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム、硝酸スズ、硝酸アルミニウム、塩化インジウム、塩化亜鉛、塩化スズ(2価)、塩化スズ(4価)、塩化ガリウム、塩化アルミニウム、トリ−i−プロポキシインジウム、ジエトキシ亜鉛、ビス(ジピバロイルメタナト)亜鉛、テトラエトキシスズ、テトラ−i−プロポキシスズ、トリ−i−プロポキシガリウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム等が挙げられる。
【0140】
(金属酸化物半導体前駆体薄膜の成膜方法、パターン化方法)
これらの金属酸化物半導体の前駆体となる金属を含有する薄膜を形成するためには、公知の成膜法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法等を用いることができるが、本発明については金属塩、ハロゲン化物、有機金属化合物等を適切な溶媒に溶解した溶液を用いて基板上に連続的に塗設することで生産性を大幅に向上することができ好ましい。この点からも、金属化合物としては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、金属アルコキシド等を用いることが溶解性の観点からより好ましい。
【0141】
溶媒としては、水の他、用いる金属化合物を溶解するものであれば特に制限されるところではないが、水や、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル系、また、アセトニトリル等、さらに、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒、α−テルピネオール、また、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を好適に用いることができる。
【0142】
金属ハロゲン化物及び/または金属アルコキシドを用いた場合には比較的極性の高い溶媒が好ましく、中でも沸点が100℃以下の水、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、またはこれらの混合物を用いると乾燥温度を低くすることができため、樹脂基板に塗設することが可能となりより好ましい。
【0143】
また、溶媒中に金属アルコキシドと種々のアルカノールアミン、α−ヒドロキシケトン、β−ジケトン等の多座配位子であるキレート配位子を添加すると、金属アルコキシドを安定化したり、カルボン酸塩の溶解度を増加させることができ、悪影響が出ない範囲で添加することが好ましい。
【0144】
半導体前駆体材料を含有する液体を基材上に適用して薄膜を形成する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、バーコート法、ダイコート法等塗布法、また、凸版、凹版、平版、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷法等、広い意味での塗布による方法が挙げられ、また、これによりパターン化する方法等が挙げられる。また、塗布膜からフォトリソグラフ法、レーザーアブレーション等によりパターン化してもよい。これらのうち、好ましいのは薄膜の塗布が可能な、インクジェット法、スプレーコート法等である。
【0145】
成膜する場合、塗布後、150℃程度で溶媒を揮発させることにより金属酸化物の前駆体の薄膜が形成される。なお、溶液を滴下する際、基板自体を150℃程度に加熱しておくと、塗布、乾燥の2プロセスを同時に行えるため好ましい。
【0146】
(金属の組成比)
好ましい、金属の組成比としては、Inを1とした時、ZnSn1−y(ここにおいてyは0〜1の正数)は0.2〜5、好ましくは0.5〜2とする。さらにInを1とした時に、Gaの組成比は0.2〜5、好ましくは0.5〜2とする。
【0147】
また、前駆体となる金属を含む薄膜の膜厚は1〜200nm、より好ましくは5〜100nmである。
【0148】
(非晶質酸化物)
形成される金属酸化物半導体としては、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの状態も使用可能だが、好ましくは非晶質の薄膜を用いる。
【0149】
金属酸化物半導体の前駆体となる金属化合物材料から形成された、本発明に係る金属酸化物である非晶質酸化物の電子キャリア濃度は1018/cm未満が実現されていればよい。電子キャリア濃度は室温で測定する場合の値である。室温とは、例えば25℃であり、具体的には0℃から40℃程度の範囲から適宜選択されるある温度である。なお、本発明に係るアモルファス酸化物の電子キャリア濃度は、0℃から40℃の範囲全てにおいて、1018/cm未満を充足する必要はない。例えば、25℃において、キャリア電子密度1018/cm未満が実現されていればよい。また、電子キャリア濃度をさらに下げ、1017/cm以下、より好ましくは1016/cm以下にするとノーマリーオフのTFTが歩留まり良く得られる。
【0150】
電子キャリア濃度の測定は、ホール効果測定により求めることができる。
【0151】
金属酸化物である半導体の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、半導体膜の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0152】
本発明においては、前駆体材料、組成比、製造条件等を制御して、例えば、電子キャリア濃度を、1012/cm以上1018/cm未満とする。より好ましくは1013/cm以上1017/cm以下、さらには1015/cm以上1016/cm以下の範囲にすることが好ましいものである。
【0153】
(その他半導体層)
本発明においては、電極、また絶縁層前駆体材料を熱変換材料として絶縁層を形成する場合、半導体層は、公知の方法により形成してもよい。
【0154】
例えば、電磁波吸収能を持つ物質を電極に用いマイクロ波照射によりこれを熱源として半導体層を形成する本発明の方法を用いないでもよく、前記の金属酸化物半導体前駆体材料を用いて半導体前駆体エリアを形成した後、例えば、熱酸化、また、プラズマ酸化、酸素の存在下紫外線を照射等により、これを熱酸化する方法で形成することができる。
【0155】
例えば、プラズマ酸化を用いる場合、大気圧プラズマ法が好ましく、またプラズマ酸化において、前駆体を含有する薄膜を形成した基板は、150〜300℃の範囲で加熱させ、大気圧下で、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを放電ガスとして、これと共に反応ガス(酸素を含むガス)を放電空間に導入して、高周波電界を印加して、放電ガスを励起させ、プラズマ発生させ、反応ガスと接触させて酸素プラズマを発生させ、これを基体表面に晒すことで半導体前駆体材料のプラズマ酸化を行う。大気圧下とは、20〜110kPaの圧力を表すが、好ましくは93〜104kPaである。
【0156】
大気圧プラズマ法により、酸素含むガスを反応性ガスとして用いて酸素プラズマを発生させる時、使用するガスは、薄膜の種類によって異なるが、基本的には放電ガス(不活性ガス)と酸化性ガスの混合ガスである。プラズマ酸化を行う場合、酸化性ガスとして酸素ガスを混合ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。0.1〜10体積%であることがより好ましいが、さらに好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0157】
上記不活性ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンや、窒素ガス等が挙げられるが、ヘリウム、アルゴン、窒素ガスが好ましく用いられる。
【0158】
大気圧下でのプラズマ法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号各公報、WO2006/129461号パンフレット等に記載されている。
【0159】
(その他有機半導体層)
また、前記第二の態様においては、有機半導体薄膜(層)を、半導体層として用いることができる。
【0160】
有機半導体材料としては、後述する種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が適用可能である。
【0161】
有機半導体材料としての縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、フタロシアニン、ポルフィリン等の化合物及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0162】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。また特開2003−304014号公報に記載のような環状構造を持つビシクロ化合物(ビシクロポルフィリン化合物)も用いることができる。
【0163】
これらの有機半導体層を形成する方法としては、公知の方法で形成することができ、例えば、真空蒸着、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)、レーザ蒸着、電子ビーム蒸着、電着、また溶液からのキャスト法、スピンコート、ディップコート、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、及びLB法等、またスクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレード塗布等の方法を挙げることができる。
【0164】
この中で生産性の点で、有機半導体の溶液を用いて簡単かつ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等が好まれる。特に、本発明に係わるパターン形成方法により有機半導体層を形成する場合、有機半導体溶液を、パターニングされた基体表面に塗布、適用することが好ましい。
【0165】
有機半導体溶液を作製する際に使用される有機溶媒は、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素または脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素または脂肪族炭化水素がより好ましい。
【0166】
芳香族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルナフタレン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0167】
脂肪族炭化水素としては、オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサンシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0168】
脂肪族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジフルオロエタン、フルオロクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0169】
本発明で用いられるこれらの有機溶媒は、1種類あるいは2種類以上混合して用いてもよい。また、有機溶媒は50℃〜250℃の沸点を有するものが好ましい。
【0170】
なおAdvanced Material誌 1999年 第6号、p480〜483に記載のように、ペンタセン等前駆体が溶媒に可溶であるものは、塗布により形成した前駆体の膜を熱処理して目的とする有機材料の薄膜を形成してもよい。
【0171】
これら有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0172】
さらに、本発明の有機半導体素子によれば、そのゲート電極、ソース/ドレイン電極のうち少なくとも一つを本発明の有機半導体素子の製造方法によって形成することによって、低抵抗の電極を、高温を必要とせず有機半導体層材料層の特性劣化を引き起こすことなしに形成することが可能となる。
【0173】
有機半導体層を形成する場合、有機半導体層の形成に先立って、絶縁膜、また下引き等の例えば金属酸化物からなる基板表面の有機半導体層を形成する領域に有機物からなる表面処理を施すことが好ましい。有機物からなる表面処理としては、基板表面に物理吸着するもの、また界面活性剤等を用いることができる。有機半導体層が形成される、例えば絶縁膜等が形成された基板表面に物理吸着、あるいは化学吸着により単分子膜を形成するものが特に好ましい。中でもシランカップリング剤による表面処理が好ましい。シランカップリング剤は絶縁層となる酸化物表面と化学反応により結合することで単分子膜を形成する。
【0174】
特に、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、
また、下記の化合物も好ましいシランカップリング剤である。
【0175】
【化1】

【0176】
また、オクチルトリクロロチタン、オクチルトリイソプロポキシチタン等のチタンカップリング剤による表面処理も好ましい。
【0177】
次いで、以下、薄膜トランジスタを構成する他の各要素について説明する。
【0178】
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、前記の方法により作製される電磁波吸収能を持つ電極材料、例えば、金属酸化物導電材料からなるものの他、他の電極材料も使用できる。例えば、第1の態様に従って、ゲート電極、ゲート絶縁層をマイクロ波照射により本発明の方法にて形成した後、ソース、ドレイン電極については、必ずしも同様の方法によらずともよい。
【0179】
また、ソース、ドレイン電極に電磁波吸収能を持つ電極材料を用い、半導体前駆体材料を、半導体層とする場合においても、例えばゲート電極の電極材料について限定はない。
【0180】
他の電極材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
【0181】
また、導電性材料としては、導電性ポリマーや金属微粒子等を好適に用いることができる。金属微粒子を含有する分散物としては、例えば公知の導電性ペースト等を用いてもよいが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
【0182】
また、前記のように、これらの電極材料と、前記電磁波吸収能を有する物質とを組み合わせ、電磁波吸収能を有する電極材料として用いることができる。
【0183】
(電極等の形成方法)
これらの電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極の辺が形成する角が鈍角状の電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングし電極の辺が形成する角が鈍角状の電極形成する方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法により、電極の辺が形成する角が鈍角状に電極パターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により電極の辺が形成する角が鈍角状の電極を形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法で電極の辺が形成する角が鈍角状に電極パターニングする方法も用いることができる。
【0184】
ソース、ドレイン、あるいはゲート電極等の電極、またゲート、あるいはソースバスライン等を、エッチングまたはリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
【0185】
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号公報にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、電極の辺が形成する角が鈍角状に電極パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により前記部分に無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
【0186】
無電解メッキの触媒と、メッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
【0187】
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版またインクジェット法による印刷等が用いられる。
【0188】
(ゲート絶縁膜)
本発明の方法により酸化物絶縁膜を形成しない時には、薄膜トランジスタのゲート絶縁膜としては、種々の絶縁膜を用いることができる。特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0189】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法等のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウエットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0190】
ウエットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0191】
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマ法である。
【0192】
ゲート絶縁膜(層)が陽極酸化膜または該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
【0193】
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウムまたはタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0194】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
【0195】
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0196】
〔保護層〕
また有機薄膜トランジスタ素子上には保護層を設けることも可能である。保護層としては無機酸化物または無機窒化物、アルミニウム等の金属薄膜、ガス透過性の低いポリマーフィルム、及びこれらの積層物等が挙げられ、このような保護層を有することにより、有機薄膜トランジスタの耐久性が向上する。これらの保護層の形成方法としては、前述したゲート絶縁膜の形成法と同様の方法を挙げることができる。また、ポリマーフィルム上に各種の無機酸化物等が積層されたフィルムを単にラミネートする等といった方法で保護層を設けてもよい。
【0197】
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素等のセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基板、紙、不織布等を用いることができるが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができると共に、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0198】
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
【0199】
(素子構成)
図6は薄膜トランジスタ素子の代表的な構成を示す図である。
【0200】
同図(a)は、支持体6上に電極の辺が形成する角が鈍角状のソース電極2(鈍角の形状は図示せず)、電極の辺が形成する角が鈍角状のドレイン電極3(鈍角の形状は図示せず)を形成し、これを基材(基板)として、両電極間に半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、さらにその上に電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4(鈍角の形状は図示せず)を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極及び支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体6上に先ず半導体層1を形成し、その後電極の辺が形成する角が鈍角状のソース電極2(鈍角の形状は図示せず)、電極の辺が形成する角が鈍角状のドレイン電極3(鈍角の形状は図示せず)、絶縁層5、電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4(鈍角の形状は図示せず)を形成したものを表す。
【0201】
同図(d)は、支持体6上に電極の辺が形成する角が鈍角状のゲート電極4(鈍角の形状は図示せず)、絶縁層5を形成し、その上に、電極の辺が形成する角が鈍角状のソース電極2(鈍角の形状は図示せず)及び電極の辺が形成する角が鈍角状のドレイン電極3(鈍角の形状は図示せず)を形成し、該電極間に半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0202】
上記のうち、同図におけるゲート電極と絶縁層、また、半導体層、そして、ソース、ドレイン電極と半導体層を同時に形成する過程等に本発明を適用することができる。また、ここに図示されていないが、保護層等の形成過程にも用いることができる。
【0203】
本発明においてはトランジスタ素子の場合、ボトムゲート構造を有することが好ましい(図6(d)〜(f))。この構造の場合、ゲート電極に電磁波を吸収する物質を用いると、これを熱源として、(ゲート)絶縁層、半導体層等複数の層を同時に熱変換材料から機能層に変換できるので好ましい。
【0204】
また、ゲート電極から見てソース/ドレイン電極が、有機半導体層の手前にあるボトムコンタクト型が好ましく(図6(c)、(e)等)、ゲート電極とソース、ドレイン電極を含めた電極や絶縁層等の形成を半導体層の形成と切り離せるので、電極材料や絶縁層への変換と、半導体層への変換の条件が異なる場合、それぞれの変換が充分に行えるので好ましい。
【0205】
また、トップゲート構造である場合(図6(a)〜(c))には、ゲート電極は、基板から遠い構造となり、基板がプラスチック基板である場合、基板の熱変形、変質等の観点から好ましい。
【0206】
図7は、薄膜トランジスタ素子が複数配置される電子デバイスである薄膜トランジスタシート10の1例の概略の等価回路図である。
【0207】
薄膜トランジスタシート10はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子14を有する。11は各薄膜トランジスタ素子14のゲート電極のゲートバスラインであり、12は各薄膜トランジスタ素子14のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子14のドレイン電極には、出力素子16が接続され、この出力素子16は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子16として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。15は蓄積コンデンサ、17は垂直駆動回路、18は水平駆動回路である。
【0208】
このような、支持体上にTFT素子を2次元的に配列した薄膜トランジスタシートの作製に本発明の方法を用いることができる。
【0209】
また、本発明の電子デバイスの製造法は、いかなる電子デバイスにも適用が可能であり、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)等に適用できる。
【0210】
有機EL素子は、基板上に、二つの電極間に発光する有機層が積層され挟持された構成を持ち、少なくとも一方の電極は光取り出しのために透明電極で構成される。
【0211】
例えば、有機EL素子は、最も単純には、陽極/発光層/陰極から構成されるが、通常、発光効率を挙げるために有機層は正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の機能分離された各種機能層の積層構造からなっている。
【0212】
有機層、各薄膜の膜厚は1nm〜数μmの範囲に亘る薄膜素子であり、上記以外にも電子阻止層、また正孔阻止層、またバッファー層等適宜必要な層が所定の層順で積層されており、両極から注入された正孔及び電子等のキャリア移動がスムースに行われるよう構成されている。
【0213】
有機EL素子を構成するこれら各有機層において、発光層中に含有される有機発光材料としては、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等及びこれらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体等が挙げられるが、本発明においてはこれに限られるものではなく、広く公知の材料を用いることができる。
【0214】
また発光層中(成膜材料)には、好ましくは0.1〜20質量%程度のドーパントが発光材料中に含まれてもよい。ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、また、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、等に代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が同様に0.1〜20質量%程度含有される。発光層の膜厚は、1nm〜数百nmの範囲に亘る。
【0215】
正孔注入・輸送層中に用いられる材料としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)等に代表される導電性高分子等の高分子材料が、また、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼン等のピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類等に代表される高分子発光材料等が挙げられる。
【0216】
電子注入・輸送層材料としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物もしくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0217】
これら有機材料にはビニル基等の架橋性基を有するのが好ましい。架橋性基を持つ材料は熱あるいは光等によって架橋するので、塗布が容易であり、かつ、架橋してネットワークポリマーを形成するので、これに塗布・積層する場合層が不溶化し好ましい。
【0218】
即ち、塗布により有機材料層の前駆体として前駆体層を形成し、これを同様に、電磁波吸収能を持つ電極材料によるマイクロ波加熱によって、架橋を進行させ各機能層とすることができる。
【0219】
有機EL素子、各有機層の膜厚は、0.05〜0.3μm程度必要であり、好ましくは0.1〜0.2μm程度である。
【0220】
また、有機層(有機EL各機能層)の形成方法としては蒸着法、塗布法等手段は問わないが、中でも塗布及び印刷等が好ましく、塗布は、スピン塗布、転写塗布、イクストリュージョン塗布等が使用できる。材料使用効率を考慮すると、転写塗布、イクストリュージョン塗布のようなパターン塗布できる方法が好ましく、特に転写塗布が好ましい。
【0221】
また、印刷は、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等が使用できる。表示素子としては膜が薄く、素子サイズが微小で、RGBのパターンの重ね等を考慮すると、オフセット印刷、インクジェット印刷のような高精度高精細印刷が好ましい。
【0222】
各有機材料には溶解特性(溶解パラメータやイオン化ポテンシャル、極性)がそれぞれにあり、溶解できる溶媒には限定がある。またその際には溶解度もそれぞれ違うため、一概に濃度も決めることができないが、溶媒の種類は、成膜しようとする有機EL材料に応じて、前記の条件に適ったものを、公知の溶媒から選択すればよく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールや、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等のパラフィン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、ピリジン、キノリン、アニリン等のアミン系溶媒、アセトニトリル、バレロニトリル等のニトリル系溶媒、チオフェン、二硫化炭素等の硫黄系溶媒が挙げられる。
【0223】
なお、使用可能な溶媒は、これらに限るものではなく、これらを二種以上混合して溶媒として用いてもよい。
【0224】
これらのうち好ましい例としては、有機EL材料において、各機能層材料によっても異なるものの、大凡について、良溶媒としては、例えば芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒等であり、好ましくは、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒である。また、貧溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、パラフィン系溶媒等が挙げられ、中でもアルコール系溶媒、パラフィン系溶媒である。
【0225】
2つの電極のうち、正孔の注入を行う陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、銀、金、白金、パラジウム等及びそれらの合金、酸化スズ、酸化インジウム、ITO等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。透光性であることが好ましく、透明電極としてはITOが好ましい。ITO透明電極の形成方法としては、マスク蒸着またはフォトリソパターニング等が使用できるが、これに限られるものではない。
【0226】
また、陰極として使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、アルミニウム等が挙げられる。合金としては、マグネシウム/銀、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられる。また、その形成方法は、マスク蒸着、フォトリソパターニング、メッキ、印刷等が使用できるが、これに限られるものではない。
【0227】
本発明により、このような構成を持つ有機EL素子等の電子デバイスにおいても、例えば電磁波吸収能を持つ電極、あるいは電極前駆体材料を用いて各機能層前駆体層を、電磁波照射を用いることで、機能層に変換することができる。
【実施例】
【0228】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0229】
実施例1
ボトムゲート・トップコンタクト構成の薄膜トランジスタの製造例
図3に製造プロセスを概略の断面図で示した。
【0230】
支持体6として、ガラス基板を用いてスパッタにてITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が円弧状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極4とした(厚み100nm)。
【0231】
次いで、大気圧プラズマCVD法により、厚さ200nmの酸化珪素からなるゲート絶縁膜5を形成した(図3(1))。大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
【0232】
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
【0233】
次ぎに、半導体前駆体材料として、下記ビシクロポルフィリン化合物の0.8gをクロロホルム1.25gに溶解した溶液をインクとして用いてインクジェット法によりゲート絶縁膜上のチャネル形成部に吐出、乾燥して成膜し半導体前駆体材料エリア(薄膜)1′を形成した(厚み30nm、図3(2))。
【0234】
【化2】

【0235】
その後、この基板に、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。マイクロ波の照射は、電磁波出力を調整しながら200℃で15分間保持した。
【0236】
マイクロ波を照射することで、半導体前駆体材料エリア(薄膜)1′は、ITOから形成されたゲート電極部が最初に高温まで昇温し、ゲート絶縁層上のチャネル形成部の半導体前駆体材料エリア1′(ビシクロポルフィリン化合物)も電極部と同程度まで加熱され、熱分解することで(TBP:テトラベンゾポルフィリン銅錯体)膜に変換され、半導体層1が形成された(厚さ50nm、図3(3))。
【0237】
次に、マスクを介して金を蒸着することで、ソース電極2、ドレイン電極3を形成し薄膜トランジスタ素子を作製した。それぞれのサイズは、幅10μm、長さ50μm(チャネル幅)厚さ50nmであり、ソース電極、ドレイン電極の距離(チャネル長)は15μmとなるようにした。
【0238】
以上の方法により作製した薄膜トランジスタはp型のエンハンスメント動作を示した。ドレインバイアスを−10Vとし、ゲートバイアスを+10Vから−40Vまで掃引した時のドレイン電流の増加(伝達特性)が観測された。その飽和領域から見積もった移動度は1.0cm/Vs、on/off比は6桁であり、良好に駆動し、p型のエンハンスメント動作を示す薄膜トランジスタであった。
【0239】
比較例として、上記ITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0240】
実施例2
実施例1において、半導体前駆体材料を下記に代えた以外は同様にして薄膜トランジスタ素子を製造した。
【0241】
(半導体前駆体薄膜の形成)
硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとしてチャネル形成部にインクジェット塗布し同様に、150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体材料薄膜1′を形成した(図3(2))。
【0242】
実施例1と同様の条件でマイクロ波照射を行うことで、同様に半導体前駆体材料薄膜1′は電極部からの熱により熱酸化を受けて半導体層1に変換した。
【0243】
次いで、ソース電極、ドレイン電極の形成を実施例1と同様に行って薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0244】
薄膜トランジスタは実施例1同様、良好に駆動し、移動度は5cm/Vs以上、on/off比は5桁以上であった。
【0245】
比較例として、上記ITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0246】
実施例3
図4に製造プロセスを概略の断面図で示した。
【0247】
支持体6として、ガラス基板を用いて基板上に、スパッタにてITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が円弧状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極4とした(厚み100nm)。
【0248】
次に、アクアミカNN110(パーヒドロポリシラザン/キシレン溶液:AZエレクトロニックマテリアル製)をスピンコート(3000rpm×30sec)にて基板上に塗布、乾燥し絶縁膜前駆体材料層5′を形成した(厚み200nm、図4(1))。
【0249】
実施例1と同様の条件でマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。マイクロ波の照射は、1サイクルを90secとし、3サイクル行った。
【0250】
ゲート電極のITOの発熱により隣接した絶縁膜前駆体材料層5′は熱処理(焼成)を受け、シリカガラス膜となり絶縁層を形成した(図4(2))。
【0251】
(半導体前駆体薄膜の形成)
次いで、絶縁膜上に、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとしてチャネル形成部にインクジェット塗布し同様に、150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体材料エリア(薄膜)1′を形成した(図4(3))。
【0252】
次いで、実施例2と同様の条件でマイクロ波照射を行うことで、同様に半導体前駆体材料エリア(薄膜)1′は電極部からの熱により熱酸化を受けて半導体層1に変換した(図4(4))。
【0253】
次いで、ソース電極2、ドレイン電極3の形成を実施例1と同様に行って薄膜トランジスタ素子を形成した。
【0254】
薄膜トランジスタは実施例1同様、良好に駆動し、移動度は5cm/Vs以上、on/off比は5桁以上であった。
【0255】
比較例として、上記ITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0256】
実施例4
絶縁層を下記ポリマー絶縁膜に代えた以外、実施例3と同様に薄膜トランジスタ素子を製造した。
【0257】
(絶縁膜前駆体材料層)
実施例3と同様に電極の辺が形成する角が円弧状のゲート電極を形成した基板上に、熱硬化ポリイミド(京セラケミカル社製CT4112)を4500rpm×20sec(300nm)でスピンコート塗布、厚み200nmの絶縁膜前駆体材料層5′を形成した。
【0258】
次いで、実施例3と同様の条件でマイクロ波照射を行った。絶縁膜前駆体材料層5′は電極部からの熱で硬化してポリイミド膜からなる絶縁膜5に変換した(図4(2))。
【0259】
次いで、半導体層1、ソース電極2、ドレイン電極3の形成を実施例3と同様に行って薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0260】
形成した薄膜トランジスタは実施例1同様、良好に駆動し、移動度は10cm/Vs以上、on/off比は5桁であった。
【0261】
比較例として、上記ITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0262】
実施例5
実施例2と同様にして薄膜トランジスタ素子を製造した(図8(1))。
【0263】
形成した酸化物からなる半導体層1上に下記組成の未硬化PVP水溶液をインクジェット法により適用して半導体保護層前駆体材料膜7′を成膜した(図8(2))。
【0264】
(未硬化PVP溶液)
ポリ(4−ビニルフェノール) アルドリッチ製 10質量%
架橋剤※ 5質量%
2−アセトキシ−1−メトキシプロパン 85質量%
※架橋剤:Poly(melamine−co−formaldehyde),methylatedの84質量%1−ブタノール溶液(アルドリッチ製)
次いで、マイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。マイクロ波の照射は、電磁波出力を調整しながら200℃で120分間保持した。
【0265】
半導体保護層前駆体材料膜7′はマイクロ波を照射すると硬化してPVPからなる保護膜7が素子上に形成された(図8(3))。
【0266】
本発明の方法は薄膜トランジスタ素子の保護膜形成に適用できることが示された。
【0267】
比較例として、上記ITO膜を作製後、フォトリソグラフ法で電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるようにエッチング加工し、パターニングしてゲート電極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0268】
実施例6
ボトムゲート・トップコンタクト構成の薄膜トランジスタの製造例
図9に製造プロセスを概略断面図にて示した。
【0269】
実施例3と同様に支持体6として、ガラス基板を用いて基板上に電極の辺が形成する角が円弧状のゲート電極4を、そして同様にアクアミカNN110を用いて絶縁膜前駆体材料層5′を形成した(厚み200nm、(図9(1))。
【0270】
乾燥後、次いで、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとしてチャネル形成部にインクジェット塗布し同様に、150℃で10分間処理して乾燥し半導体前駆体材料薄膜1′を形成した(図9(2))。
【0271】
次いで、絶縁膜前駆体材料層5′及び半導体前駆体材料薄膜1′が形成された基板にマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。マイクロ波の照射は、1サイクルを90secとし、4サイクル行った。絶縁膜前駆体材料層5′及び半導体前駆体材料薄膜1′は同時にそれぞれ酸化珪素からなる絶縁層5、また半導体層1に変換された。
【0272】
次いで、実施例1と同様にソース電極、ドレイン電極を金蒸着により形成して薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0273】
なお、ソース電極、ドレイン電極それぞれのサイズは、幅10μm、長さ50μm(チャネル幅)厚さ50nmであり、チャネル長は15μmとなるようにした。
【0274】
形成した薄膜トランジスタ素子は、移動度は5cm/Vs以上、on/off比は5桁以上であり良好に駆動し、絶縁層及び半導体層への変換が行われたことが分かる。
【0275】
比較例として、電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるように加工してゲート電極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0276】
実施例7
同じくボトムゲート・トップコンタクト構成の薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0277】
図10に製造プロセスを概略の断面図にて示した。
【0278】
支持体6として、ガラス基板を用いて、基板上に基板温度を100℃に保って、電極材料前駆体として金ナノ粒子インク(特開平11−80647号公報に記載の方法に準じた方法で作製した)をインクジェット法にてゲート電極様にパターニングし、電極前駆体薄膜の辺が形成する角が円弧状の電極前駆体薄膜4′を形成した(厚み100nm、図10(1))。
【0279】
次いで、(ゲート)電極前駆体薄膜4′上にITOナノ微粒子インク(シーアイ化成 NanoTek Slurry ITO(トルエン))を用いて同様にしてインクジェット法にて電磁波吸収層の辺が形成する角が円弧状の、ITO微粒子からなる電磁波吸収層4″をパターニング成膜した(厚み50nm、図10(2))。
【0280】
次いで、実施例6と同様にアクアミカNN110を用いて絶縁膜前駆体材料層5′を形成し(厚み200nm)、さらに乾燥後、チャネル形成部に、In、Zn、Ga塩を混合した半導体前駆体材料薄膜1′をインクジェット法によりパターニング形成し、さらに、ソース電極、ドレイン電極パターンに従い前記ITO微粒子ナノインクを用いてインクジェット法により電極前駆体薄膜の辺が形成する角が円弧状の電極前駆体薄膜4′を形成した(図10(3))。
【0281】
次いで、電極前駆体薄膜4′電磁波吸収層4″絶縁膜前駆体材料層5′半導体前駆体材料薄膜1′が形成された基板にマイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。マイクロ波の照射は、1サイクルを90secとし、4サイクル行った。
【0282】
前記電磁波吸収層4″(ゲート電極)また、ITOからなる電極前駆体薄膜4′(ソース、ドレイン電極)はマイクロ波の吸収によって発熱し、電極前駆体薄膜4′絶縁膜前駆体材料層5′半導体前駆体材料薄膜1′及び電極前駆体薄膜4′はそれぞれゲート電極、ゲート絶縁層5、半導体層1またソース電極2、ドレイン電極3に同時に変換され、薄膜トランジスタ素子が形成された(図10(4))。
【0283】
作製した薄膜トランジスタ素子は、移動度は5cm/Vs以上であり、on/off比は5桁以上であり良好に駆動し、電極や、絶縁層及び半導体層への変換が行われたことが分かる。
【0284】
比較例として、電極前駆体薄膜の辺が形成する角、電磁波吸収層の辺が形成する角及び電極前駆体薄膜の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるように加工したものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0285】
実施例8
トップゲート・ボトムコンタクト構成の薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0286】
図11に製造プロセスを概略の断面図にて示した。
【0287】
支持体6として、ガラス基板上に、金蒸着、パターニングにより、電極の辺が形成する角が135°の4つの角を有するソース電極2、電極の辺が形成する角が135°の4つの角を有するドレイン電極3を作製した(厚み50nm、図11(1))。
【0288】
次いで、半導体前駆体材料薄膜1′を、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものをインクとして、ソース、ドレイン電極間のチャネル形成部にインクジェット塗布し、150℃で10分間処理して乾燥して形成した(厚み50nm、図11(2))。
【0289】
次に、アクアミカNN110を用いてインクジェット塗布により絶縁膜前駆体材料層5′を形成した(厚み200nm、図11(3))。
【0290】
次いで、ITOナノ微粒子インク(シーアイ化成 NanoTek Slurry ITO(トルエン))を用いて、インクジェット法にてゲート電極様にパターニングし電極前駆対薄膜の辺が形成する角が135°の4つの角を有する電極前駆体薄膜4′を形成した(厚み100nm、図11(4))。
【0291】
マイクロ波照射を実施例7と同様に行ったところ、半導体前駆体材料薄膜1′、絶縁膜前駆体材料層5′、電極前駆体薄膜4′(ゲート電極)は、それぞれ半導体層、ゲート絶縁層、ゲート電極に同時に変換され、薄膜トランジスタ素子が形成された(図11(5))。
【0292】
作製した薄膜トランジスタ素子は、移動度は5cm/Vs以上であり、on/off比は5桁以上であり良好に駆動し、電極や、絶縁層及び半導体層への変換が行われたことが分かる。
【0293】
比較例として、ソース電極の辺が形成する角、ドレイン電極の辺が形成する角及び電極前駆体薄膜の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるように加工したものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0294】
実施例9
同じく、トップゲート・ボトムコンタクト構成の薄膜トランジスタ素子を作製した。
【0295】
図12に製造プロセスを概略の断面図にて示した。
【0296】
基板6としてポリエチレンナフタレートフィルム(厚み200μm)を用い、この上に、先ず、50W/m/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後以下のように接着性向上のため断熱層8を形成した。
【0297】
(断熱層の形成)
下記条件で連続的に大気圧プラズマCVD法により厚さ300nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を断熱層8とした(図12(1))。大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
【0298】
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
高周波電源:13.56MHz
放電出力:10W/cm
(電極条件)
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
【0299】
次いで、この断熱層上に、実施例8と同様に電極の辺が形成する角が135°の4つの角を有するソース電極及び電極の辺が形成する角が135°の4つの角を有するドレイン電極(金蒸着)、半導体材料前駆体薄膜1′、絶縁膜前駆体材料層5′、ITO微粒子インクによりゲート電極様にパターニングして電極前駆体薄膜の辺が形成する角が135°の4つの角を有する電極前駆体薄膜4′を順次形成した(図12(2))。
【0300】
マイクロ波照射を実施例7と同様に行ったところ、半導体前駆体材料薄膜1′、絶縁膜前駆体材料層5′、電極前駆体薄膜4′(ゲート電極)は、それぞれ半導体層1、ゲート絶縁層5、ゲート電極4に同時に変換され薄膜トランジスタ素子が形成された。
【0301】
図12(4)に素子の断面図と各層の厚みを示したが、この素子は断熱層の厚み300nmなので、熱源から基板までの最短距離(l)が450nm、熱源から前駆体までの最長距離(D)が15μm(ほぼチャネル長(c=15μm)と等価)になるため、熱源から樹脂基板までの最短距離/熱源から前駆体までの最長距離=1/33.3となる。
【0302】
作製した薄膜トランジスタ素子は、移動度は5cm/Vs以上であり、on/off比は5桁以上であり良好に駆動し、電極や、絶縁層及び半導体層への変換が行われたことが示される。
【0303】
比較例として、ソース電極の辺が形成する角、ドレイン電極の辺が形成する角及び電極前駆体薄膜の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるように加工したものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0304】
実施例10
ここでは、有機EL素子への適用例を示す。
【0305】
実施例9と同様に支持体6であるポリエチレンナフタレートフィルム上に、大気圧プラズマCVD法によって酸化珪素からなる断熱層8を作製した(図13(1))。
【0306】
次いで、ITO薄膜をスパッタにより作製して陽極の辺が形成する角が円弧状の陽極11とした(厚み50nm、図13(2))。
【0307】
さらに、下記組成の正孔注入層12、正孔輸送層13を塗布した(図13(3))。
【0308】
正孔注入層
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚20nmの正孔注入層を設けた。
【0309】
正孔輸送層
窒素雰囲気下に移し、正孔輸送層上に、50mgの正孔輸送材料1を10mlのトルエンに溶解した溶液を1500rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜した。膜厚約20nmの正孔輸送層とした。
【0310】
【化3】

【0311】
次いで、窒素雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。マイクロ波の照射は、1サイクルを90secとし、3サイクル行った。正孔輸送層において架橋基を有する正孔輸送材料1が100〜150℃に加熱され、架橋(熱硬化)してネットワークポリマーを形成し不溶化した(図13(4))。以下の発光層、電子輸送層の塗布時に溶解等は起こらなかった。
【0312】
次いで、この正孔輸送層13上に、100mgの下記化合物1−1と10mgの下記Ir−15を10mlのトルエンに溶解した溶液を1000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜した。120℃で1時間真空乾燥し、膜厚約50nmの発光層とした。
【0313】
次にこの発光層上に、50mgの電子輸送材料1を10mlの1−ブタノールに溶解した溶液を5000rpm、30秒の条件下、スピンコート法により製膜した。60℃で1時間真空乾燥し、膜厚約15nmの電子輸送層とした。
【0314】
【化4】

【0315】
続いて、この基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空槽を4×10−4Paまで減圧し、陰極バッファー層としてフッ化リチウム1.0nm及び陰極としてアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0316】
この有機EL素子に通電したところほぼ所定の発光が得られ、別途、正孔輸送層形成後、窒素雰囲気下、180秒間紫外光を照射し、光重合・架橋を行ったサンプルと比較して、発光輝度、素子寿命に差は見られなかった。マイクロ波の照射により、正孔輸送層が充分に架橋し層界面の乱れがなく、架橋した正孔輸送層が形成されたことが分かる。
【0317】
比較例として、ITO薄膜をスパッタにより作製して陽極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるように加工して陽極としたものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【0318】
実施例11
次に薄膜トランジスタ回路の構成に用いた例を示す。
【0319】
図14に作製したトランジスタ回路の画素単位の回路構成をその等価回路図と共に示した。トランジスタ回路はスイッチングトランジスタ(Sw−TFT)及び駆動トランジスタ(D−TFT)の二つのトランジスタ及び容量コンデンサCs、バスラインB(Vscan、Vdata、Vss)、表示電極28等からなり、表示素子(OLED)及びこれ以降の配線部分(Vk)については示されていない。
【0320】
以下、図15及び16の概略平面図及び断面図により、図14に示した薄膜トランジスタ回路(画素単位)の作製について例を示す。なお、表示素子(OLED)部分を除いた表示電極までの作製について示す。
【0321】
先ず、ガラス基板上に、ゲート電極を構成するようITO薄膜(100nm)パターンをスパッタにより、また続いてフォトレジストを用いて電極の辺が形成する角が円弧状になるように形成した。得られたゲート電極22(ITOパターン)を図15(1)に画素単位で断面図と共に示した。このITOパターンがマイクロ波照射により発熱し半導体形成においてヒーターの役割を果たす。
【0322】
次いで、スパッタ法により、厚さ300nmのアルミニウム皮膜を一面に成膜した後、フォトリソグラフ法により、エッチングしてバスラインB(Vscan、Vcap)、電極の辺が形成する角が円弧状になるように蓄積コンデンサ用電極Cs1、また、電極の辺が形成する角が円弧状になるように駆動トランジスタのゲート電極22に繋げるスルーホールTHの形成領域等を形成した(図15(2))。
【0323】
次に、スルーホールTHを残しゲート絶縁膜23を形成した(容量コンデンサ用絶縁膜も兼ねる)。ゲート絶縁膜23は、大気圧プラズマCVD法(大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた)により、厚み200nmの酸化珪素を形成した(図15(3))。
【0324】
ゲート絶縁膜上に、硝酸インジウム、硝酸亜鉛、硝酸ガリウムを金属比率で1:1:1(モル比)で混合した10質量%水溶液としたものを塗布し、150℃で10分間乾燥し前駆体材料薄膜26′を形成した(図15(4))。
【0325】
前駆体材料薄膜26′を形成した後、マイクロ波照射を行った。即ち、酸素と窒素の分圧が1:1の雰囲気下、大気圧条件で、500Wの出力でマイクロ波(2.45GHz)を照射した。
【0326】
マイクロ波の照射は、1サイクルを90secとし、4サイクル行った。これにより前駆体材料薄膜はITOのマイクロ波吸収による発熱で、ゲート電極23(ITO)パターンに従って酸化物半導体層26に変換された。蒸留水で基板をよくすすぎ前駆体材料膜26′の変換されなかった領域を洗い流した。ゲート絶縁膜上にゲート電極に対向して酸化物半導体層26が形成された(図16(1))。
【0327】
次のステップとして、チャネル保護膜27を半導体パターン上に形成した。
【0328】
即ち、下記組成物をアイソパーE″(イソパラフィン系炭化水素、エクソン化学(株)製)に溶解した溶液を水性分散液とし、固形分濃度10.3質量%に希釈したものをインクとして、ピエゾ方式のインクジェット法によりパターンに従って吐出し、加熱(100℃)、乾燥して、厚さ0.4μmの保護膜7をパターニング形成した(図16(2))。
【0329】
(組成物)
α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン(分子量約60,000) 100部
HMS−501(両末端メチル(メチルハイドロジェンシロキサン)(ジメチルシロキサン)共重合体、SiH基数/分子量=0.69mol/g、チッソ(株)製)
7部
ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン 3部
SRX−212(白金触媒、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製) 5部
次いで、マスクを介してクロムを蒸着することで、ソース電極24、ドレイン電極25、また容量コンデンサの対電極Cs2及びデータまたバスラインB(Vdata、Vss)、さらに画素電極28を形成した(図16(3))。スルーホール部分も蒸着されスイッチングトランジスタと駆動トランジスタが電気的に導通した。
【0330】
次に、画素電極28部分を残し、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる封止膜Sにて封止した。即ち、エチレン含有量29モル%、ケン化度99.5モル%、重合度1000のエチレン−ビニルアルコール共重合体にイソプロピルアルコールを加え、80℃に加熱撹拌し、約5%濃度の溶液を調製し、フォトレジストを用いてパターニングすることで塗工により封止膜(厚さ5μm)を形成した(図16(4))。
【0331】
作製したTFTシートに表示素子として有機EL素子(OLED)を組み込むことで、これを良好に駆動させることができた。
【0332】
比較例として、スイッチングトランジスタのゲート電極の辺が形成する角、蓄積コンデンサ用電極の辺が形成する角、駆動トランジスタのゲート電極の辺が形成する角が図1の比較1の形状になるように加工したものは、その後のマイクロ波の照射工程で異常放電が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0333】
【図1】従来の電極の平面形状を示す図である。
【図2】本発明に係る電極の平面形状を示す図である。
【図3】電極パターン(エリア)を熱源として電磁波を照射することでこの上の熱変換材料を半導体層に変換する本発明の第一の態様を示す概略断面図である。
【図4】電極パターン(エリア)を熱源として電磁波を照射することでこの上の熱変換材料を絶縁層に変換する本発明の第二の態様を示す概略断面図である。
【図5】熱源エリアと基板との距離が、また熱源エリアと加熱変換される機能層前駆体エリアとの距離の関係を示す図である。
【図6】膜トランジスタ素子の代表的な構成を示す図である。
【図7】薄膜トランジスタ素子が複数配置される電子デバイスである薄膜トランジスタシート10の1例の概略の等価回路図である。
【図8】実施例5の製造プロセスを概略断面図にて示す図である。
【図9】実施例6の製造プロセスを概略断面図にて示す図である。
【図10】実施例7の製造プロセスを概略の断面図にて示す図である。
【図11】実施例8の製造プロセスを概略の断面図にて示す図である。
【図12】実施例9の製造プロセスを概略の断面図にて示す図である。
【図13】本発明の有機EL素子への適用例を示す図である。
【図14】作製したトランジスタ回路の画素単位の回路構成及びその等価回路図を示す図である。
【図15】薄膜トランジスタ回路の作製プロセスを画素単位で示す概略図である。
【図16】薄膜トランジスタ回路の作製プロセスを画素単位で示す概略図である。
【符号の説明】
【0334】
1 半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁層
10 薄膜トランジスタシート
11 ゲートバスライン
12 ソースバスライン
14 薄膜トランジスタ素子
15 蓄積コンデンサ
16 出力素子
17 垂直駆動回路
18 水平駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、電極を有し、少なくとも1部に熱変換材料または熱変換材料を含むエリアと、前記熱変換材料または熱変換材料を含むエリアに隣接もしくは近接して電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリアを配置し、電磁波を照射して、該電磁波吸収能を持つ物質が発生する熱により、熱変換材料を機能材料に変換する電子デバイスの製造方法において、前記電極の辺が形成する角が全て90°より大きく180°より小さい、または、曲面であることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記電磁波吸収能を持つ物質が金属酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記電磁波吸収能を持つ物質が導電体であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物が少なくともIn、Sn、Znのいずれかの酸化物を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
電子デバイスがトランジスタ素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
熱変換材料が半導体前駆体材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
熱変換材料が絶縁膜前駆体材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
熱変換材料が保護膜前駆体材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
熱変換材料が電極前駆体材料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記電極前駆体材料が金属を含み、電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアと隣接することを特徴とする請求項9に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記半導体前駆体材料が金属酸化物半導体前駆体であり、金属酸化物半導体に変換されることを特徴とする請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
金属酸化物半導体前駆体が少なくとも、In、Zn、Snのいずれかの元素を含むことを特徴とする請求項11に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
金属酸化物半導体前駆体がGa、Alのいずれかを含むことを特徴とする請求項11または12に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記半導体前駆体材料が有機半導体前駆体であり、有機半導体に変換されることを特徴とする請求項6に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
電磁波吸収能を持つ物質を含む電極と、絶縁膜前駆体エリア、半導体前駆体エリア、保護膜前駆体エリアのうち少なくとも2つの機能層前駆体エリアを形成後、電磁波波を照射し、機能層前駆体層エリアを同時に加熱して機能層を形成することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含む電極前駆体エリアと、絶縁膜前駆体エリア、半導体前駆体エリア、保護膜前駆体エリアのうち少なくとも1つの機能層前駆体エリアを形成後、電磁波を照射し、電極前駆体エリアと機能層前駆体エリアを同時に加熱して電極と機能層を同時に形成することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記トランジスタ素子がボトムゲート構造であり、ゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアからなることを特徴とする請求項6〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記トランジスタ素子がボトムコンタクト構造であり、ゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアからなることを特徴とする請求項5〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
前記トランジスタ素子がトップゲート構造であり、ゲート電極が電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質が含まれるエリアからなることを特徴とする請求項5〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電磁波がマイクロ波(周波数0.3〜50GHz)であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項21】
前記トランジスタ素子の電極前駆体材料及び半導体前駆体材料、絶縁体前駆体材料、保護膜前駆体材料の少なくとも1層が塗布で形成されることを特徴とする請求項5〜20のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項22】
電子デバイスの基板温度が50〜200℃、塗膜表面温度が200〜600℃であることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項23】
前記基板が樹脂基板であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項24】
電磁波吸収能を持つ物質または電磁波吸収能を持つ物質を含むエリア(熱源エリア)と電子デバイスの基盤の最短距離が、電磁波を吸収して発熱するエリアの加熱変換される機能層前駆体エリア側の境界面と、加熱変換される機能層前駆体エリア全境界間の最長距離の、1/200〜10倍であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法で製造されたことを特徴とする電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−129742(P2010−129742A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302199(P2008−302199)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】