説明

電子内視鏡システム、電子内視鏡、及び励起光照射方法

【課題】通常光観察機能のみを有する電子内視鏡システムにおいても、簡単に且つコストをかけることなく、AFIを実施できるようにする。
【解決手段】電子内視鏡には、その挿入部にオーバーチューブ13が装着され、その先端部にフード14が装着されている。オーバーチューブ13には、励起光の光源装置で発せられた励起光を導光する第1および第2光ファイバ38,39が設けられている。フード14には、外周面に励起光を体腔内に向けて照射する第1および第2投光ユニット41,42が固着されている。励起光の照射により体腔内の生体組織からは自家蛍光が発せられる。オーバーチューブ13、フード14、第1および第2投光ユニット41,42、励起光の光源装置は、電子内視鏡に対して外付けであることから、簡単に且つコストをかけることなくAFIを実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内の生体組織から発せられる自家蛍光を観察する電子内視鏡システム、電子内視鏡、及び励起光照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野では、電子内視鏡システムを用いた診断や治療が数多く行なわれている。電子内視鏡システムでは、波長が青色帯域から赤色帯域にまでおよぶ白色光を体腔内を照射し、体腔内で反射した光をCCDなどの撮像素子で撮像する。そして、撮像により得られた画像をモニタに表示する。これにより、体腔内の画像をリアルタイムに確認することができるため、診断などを確実に行うことができる。
【0003】
白色光を照射したときに得られる撮像画像からは、被写体組織全体を大まかに把握することはできるものの、微細血管、深層血管、ピットパターン(腺口構造)、陥凹や隆起といった凹凸構造などの被写体組織は明瞭に観察することが難しいことがある。このような被写体組織には病変部が潜んでいる可能性があることから、微細血管や陥凹や隆起なども撮像画像から確実に把握できるようにすることが求められている。
【0004】
例えば、癌などの腫瘍性病変を観察する方法としては、特許文献1に示すように、特定波長に制限した励起光を体腔内に照射し、その励起光によって生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる自家蛍光を撮像素子で撮像するAFI(Auto Fluorescence Imaging)が知られている。このAFIでは、腫瘍性病変がある病変部から発せられる自家蛍光の強度が、腫瘍性病変が存在しない正常部から発せられる自家蛍光の強度よりも弱くなる性質を利用して、撮像画像においては病変部と正常部とを別々の色で表示している。これによって、正常部とほとんど見分けが付かない病変部であっても観察できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−34224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、未だ多くの医療施設においては、白色光による通常光観察機能のみを有する電子内視鏡システムが一般的であり、特許文献1に示すようなAFI搭載の電子内視鏡システムはそれほど普及していない。したがって、通常光観察機能のみを有する電子内視鏡システムにおいても、簡単に且つコストをかけることなく、AFIを実施できるようにすることが望まれている。
【0007】
例えば、特許文献1では、励起光の光量が足りないと自家蛍光が微弱となるため、電子内視鏡の先端部に、白色光や励起光を照射する通常の照明窓とは別に、励起光専用の照明窓を設け、これら2つの照明窓からそれぞれ励起光を照射することで、生体組織に十分な励起光が当たるようにしている。しかしながら、電子内視鏡の先端部に励起光専用の照明窓を設けたり、また、この励起光専用の照明窓にまで励起光を導光するライトガイドを電子内視鏡の挿入部内に組み込んだりすることは、極めてコストがかかかる。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、通常光観察機能のみを有する電子内視鏡システムにおいても、簡単に且つコストをかけることなく、AFIを実施することができる電子内視鏡システム、電子内視鏡、及び励起光照射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電子内視鏡システムは、体腔内の生体組織から蛍光を励起させるための励起光を発する励起光の光源装置と、体腔内に挿入される挿入部を有する電子内視鏡と、電子内視鏡の挿入部が挿通されるオーバーチューブと、オーバーチューブに設けられ、前記励起光の光源装置で発せられた励起光を導光する励起光導光部材と、前記励起光導光部材により導光された励起光を体腔内に向けて照射する投光ユニットを備えることを特徴とする。
【0010】
前記電子内視鏡は、前記挿入部の先端部に設けられ、体腔内で反射した光を受光する観察窓と、観察窓に入る前の光のうち励起光の波長帯域を含む光をカットする励起光カットフィルタを有する先端部装着用のフードとを備え、前記投光ユニットは、フードの外周面に固着されていることが好ましい。
【0011】
前記投光ユニットは、観察窓に関して対称の位置に設けられた2つの第1および第2投光ユニットを有することが好ましい。前記投光ユニットは、前記第1投光ユニットの近傍に設けられ、励起光の照射範囲が前記第1投光ユニットにおける励起光の照射範囲と異なる第3投光ユニットと、前記第2投光ユニットの近傍に設けられ、励起光の照射範囲が前記第2投光ユニットにおける励起光の照射範囲と異なる第4投光ユニットを更に有することが好ましい。
【0012】
各投光ユニットにおいて、それぞれ異なる光拡散部材、レンズ、及び保護ガラスを組み込むことによって、各投光ユニットにおける励起光の照射範囲を相異させていることが好ましい。前記第1〜第4投光ユニットのうち所定の投光ユニットから励起光が照射されるように、前記励起光の光源装置内における励起光の光路を切替える切替部を備えることが好ましい。
【0013】
前記電子内視鏡は、前記挿入部の先端部に設けられ、波長が青色帯域から赤色帯域におよぶ白色光を体腔内に向けて照射する照射窓を有し、前記励起光の照射範囲は前記白色光の照射範囲内に入っていることが好ましい。前記励起光と前記白色光の光量比は一定に保持されていることが好ましい。
【0014】
前記白色光は、R色の光、G色の光、B色の光が時分割して照射される面順次光であることが好ましい。前記白色光は、蛍光体に対する特定波長の青色光の照射によって、その蛍光体から励起発光される光であることが好ましい。
【0015】
本発明は、体腔内の生体組織から蛍光を励起させるための励起光を発する励起光の光源装置に接続された電子内視鏡において、体腔内に挿入される挿入部と、挿入部が挿通されるオーバーチューブと、オーバーチューブに設けられ、前記励起光の光源装置で発せられた励起光を導光する励起光導光部材と、前記励起光導光部材により導光された励起光を体腔内に向けて照射する投光ユニットを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明は、体腔内の生体組織から蛍光を励起させるための励起光を発する励起光の光源装置と、体腔内に挿入される挿入部をオーバーチューブに挿通させた電子内視鏡とを用いる励起光照射方法において、前記励起光の光源装置で発せられた励起光を、オーバーチューブに設けられた励起光導光部材により導光し、導光された励起光を投光ユニットから体腔内に向けて照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子内視鏡に対して外付けとなるオーバーチューブに、自家蛍光などの蛍光を励起させるための励起光を導光するための励起光導光部材を設けるとともに、その励起光導光部材で導光された励起光を体腔内に照射するための投光ユニットを、オーバーチューブと同様に電子内視鏡に対して外付けにして設けていることから、通常光観察機能のみを有する電子内視鏡システムにおいても、単に励起光の光源装置、オーバーチューブ、投光ユニット等を外付けするだけで、簡単に且つコストをかけることなく、AFIを実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の電子内視鏡システムを示す概略図である。
【図2】第1実施形態の電子内視鏡システムにおける電気的構成を示すブロック図である。
【図3】励起光、自家蛍光、及び白色光の分光強度分布を示すグラフである。
【図4】オーバーチューブおよびフードが装着された第1実施形態の電子内視鏡の先端部を示す斜視図である。
【図5】白色光の照射範囲を説明するための説明図である。
【図6A】白色光照射期間にあるときのロータリシャッタを説明するための説明図である。
【図6B】白色光遮光期間にあるときのロータリシャッタを説明するための説明図である。
【図7】白色光の光量に応じて励起光の光量を制御する方法を説明するための説明図である。
【図8】励起光の照射範囲を説明するための説明図である。
【図9】励起光照射用の第1投光ユニットの断面図である。
【図10A】通常光観察モードにおけるCCDの撮像制御を説明するための説明図である。
【図10B】自家蛍光観察モードにおけるCCDの撮像制御を説明するための説明図である。
【図11】信号処理部における処理フローを示すブロック図である。
【図12】第2実施形態の電子内視鏡システムにおける電気的構成を示すブロック図である。
【図13】オーバーチューブおよびフードが装着された第2実施形態の電子内視鏡の先端部を示す斜視図である。
【図14】RGBの面順次光の照射に用いられるロータリフィルタの平面図である。
【図15】別の実施形態における電子内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図16】白色光照射用の投光ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の第1実施形態の電子内視鏡システム10は、被検者の体腔内をCCDなどの撮像素子で撮像する電子内視鏡11と、この電子内視鏡11の挿入部20が挿通されるオーバーチューブ13と、挿入部20における先端部24aに装着されるフード14と、撮像により得られた信号に基づいて体腔内の被写体組織の画像を生成するプロセッサ装置15と、体腔内に照射する白色光を供給する白色光の光源装置16と、生体組織内から自家蛍光を励起するための励起光を供給する励起光の光源装置17と、体腔内の画像を表示するモニタ18とを備えている。
【0020】
電子内視鏡11は、体腔内に挿入される可撓性の挿入部20と、挿入部の基端部分に設けられた操作部21と、操作部21とプロセッサ装置15及び白色光の光源装置16との間を連結するユニバーサルコード23とを備えている。挿入部20の先端には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部24が形成されている。湾曲部24は、操作部のアングルノブ26における操作によって、上下左右方向に湾曲動作する。
【0021】
湾曲部24の先端には、体腔内撮影用の光学系等を内蔵した先端部24aが設けられいる。先端部24aは、湾曲部24の湾曲動作によって、体腔内の所望の方向に向けられる。先端部24aには、白色光や励起光を照射する2つの第1および第2照明窓57,59(図4参照)と、体腔内からの白色光や自家蛍光を受光する観察窓62(図4参照)と、観察窓に向けて水やエアを吹き付ける送気・送水ノズル63(図4参照)と、挿入部20内の鉗子チャンネルに挿通された処置具の出口となる鉗子出口64(図4参照)とが設けられている。
【0022】
操作部21には、白色光を用いて体腔内の観察を行なう通常光観察モード、励起光を用いて生体組織内から発せられる自家蛍光を観察する自家蛍光観察モードのいずれかに切り替える観察モード切替ボタン28が設けられている。この観察モード切替ボタン28による切替情報はプロセッサ装置のコントローラ113(図2参照)に送信される。
【0023】
ここで、通常光観察モードに設定されている場合には、体腔内で反射した白色光を撮像することにより得られる白色光画像がモニタ18に表示され、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、自家蛍光を撮像することにより得られる自家蛍光画像、または白色光画像と自家蛍光画像とを合成した合成画像がモニタ18に表示される。
【0024】
ユニバーサルコード23のうち、プロセッサ装置15および白色光の光源装置16側の端部にはコネクタ30が取り付けられている。コネクタ30は、通信用コネクタと光源用コネクタからなる複合タイプのコネクタであり、電子内視鏡11は、このコネクタ30を介して、プロセッサ装置15および白色光の光源装置16に着脱自在に接続される。
【0025】
電子内視鏡11の先端部24aには、励起光カットフィルタ32を備えるフード14が装着される。励起光カットフィルタ32は、先端部24aに設けられた観察窓62(図4参照)を覆うことにより、観察窓62に入る前の光のうち励起光の波長帯域の光をカットまたは減光する。エネルギーが非常に高い励起光を観察窓62の手前でカットし、その励起光が観察窓62の奥側に設けられたCCD100(図2参照)に入らないようにすることで、CCD100の画素が電荷飽和状態になって画面が真っ白になるハレーションを防止することができる。
【0026】
オーバーチューブ13は、チューブ本体35と、このチューブ本体35内に設けられ、電子内視鏡11の挿入部29が挿通される内視鏡挿通管路37と、この内視鏡挿通管路37の周囲に設けられ、励起光の光源装置17からの励起光を導光する2本の第1および第2光ファイバ38,39とを備えている。
【0027】
内視鏡挿通管路37は、電子内視鏡の挿入部20の挿入口となる基端側開口37aと、その挿入部20の出口となる先端側開口37bとを備えている。したがって、挿入部20を内視鏡挿通管路37に挿通したときには、先端側開口37bから電子内視鏡の先端部24a及びその先端部24aに装着されたフード14が露呈される。電子内視鏡の挿入部20を体腔内に挿入する際には、オーバーチューブ13に挿入部20を挿通させた状態で挿入する。
【0028】
フード14の外周面には、第1および第2光ファイバ38,39からの励起光を体腔内に照射する第1および第2投光ユニット41,42が固着されている。特許文献1では、励起光の光量を上げるために、通常の励起光に加えてアシスト励起光の2本の励起光で照射を行なっているが、このアシスト励起光を照射するためには、電子内視鏡の挿入部にアシスト励起光専用のライトガイドやアシスト励起光専用の照明窓を設ける必要がある。
【0029】
これに対して、本発明では、電子内視鏡の挿入部の内部ではなく、電子内視鏡に対して外付けのフードに2本の励起光を照射するための第1および第2光ファイバや第1および第2投光ユニットを設けているため、特許文献1と比較して、2本の励起光の照射に要するコストを抑えることができる。また、本発明では、励起光の照射に用いられる光ファイバや投光ユニットの設置に、各種処置具の挿通路となる鉗子チャンネルを利用していないため、自家蛍光観察中においても、鉗子チャンネル内に挿通させた各種処置具を用いて、治療等を行なうことができる。
【0030】
図2に示すように、白色光の光源装置16、白色光光源45、絞り調節機構46、白色光制御部47、ロータリシャッタ48、位置検出部49、回転制御部50を備えている。白色光光源45は、白色光の光源装置16の電源がオンのときに、常にオンにして白色光を発する。白色光は、波長が青色帯域から赤色帯域に及ぶ広帯域光であり、例えば、図3に示すように、400nm〜700nmの波長帯域を有している。白色光光源45としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、LED(発光ダイオード)、蛍光発光素子ランプ、またはLD(レーザーダイオード)などが使用される。白色光光源45から発せられる白色光は、レンズ53で集光される。レンズ53で集光された光は、絞り調節機構46を介して、第1および第2ライトガイド55,56に入射する。
【0031】
第1および第2ライトガイド55,56は大口径光ファイバなどから構成されている。第1および第2ライトガイド55,56の入射側端部は、白色光の光源装置16に接続されている。一方、図4に示すように、第1ライトガイド55の出射側端部は電子内視鏡11の先端部24aの第1照明窓57に向けられおり、第2ライトガイド55の出射側端部は先端部24aの第2照明窓59に向けられている。これら第1および第2照明窓57,59のそれぞれから白色光が体腔内に向けて出射される。
【0032】
第1照明窓57と第2照明窓59は、フード14に設けられた励起光カットフィルタ32(または観察窓62)に関して、それぞれ対称の位置に設けられている。また、図5に示すように、第1照明窓57から出射される白色光の照射範囲WL1と第2照明窓59から出射される白色光の照射範囲WL2とはほぼ重なり合っている。したがって、先端部24aを観察対象Tに向けたときには、それら照射範囲WL1,WL2の重複領域WLR内に観察対象Tがほぼ入る。これにより、観察対象Tに対して、白色光を十分に且つ照明ムラなく照射することができる。
【0033】
なお、フード14は、先端部24aのうち観察窓62のみを覆い、それ以外は開口部14aから体腔内に露呈している。したがって、第1および第2照明窓57,59からの白色光の照射をフード14が妨げることはない。また送気・送水ノズル63からのエアや水をフードの励起光カットフィルタ32に吹き付けることができる。さらには、鉗子出口64から処置具を体腔内に向けて突出させることができる。
【0034】
図2に示すように、絞り調節機構46は、レンズ53とロータリシャッタ48との間に配置され、白色光光源45から発せられる白色光の光量を調節する。絞り調節機構46は、例えば、絞り径を可変させる複数の絞り羽根、及びこの絞り羽根を移動させるモータなどから構成される。絞り調節機構の絞り量(すなわち、白色光の光量)は、ドライバ47aを介して、白色光制御部47によって制御される。白色光制御部47は、プロセッサ装置15内の信号処理により得られる白色光画像に基づいて、絞り量(すなわち、白色光の光量)を制御する。
【0035】
図6A及びBに示すように、ロータリシャッタ48は、円板形状で一部に扇形の切欠部分を有する。ロータリシャッタ48のうち、切欠部分が白色光を透過させる光透過部48aとなり、残りの部分が白色光を遮断する遮光部48bとなっている。ロータリシャッタ48は、白色光光源45の光軸と平行に配置されたモータ70の回転軸70aに接続されている。このモータ70の駆動によってロータリーシャッタ48が回転することで、白色光光源の光路P上に光透過部48aと遮光部48bとが交互に位置する。
【0036】
光路P上に光透過部48a、遮光部48bのいずれが位置しているかは、フォトセンサなどから構成される位置検出部49によって検出される。ここで、図2や図6A及びBにおいては、位置検出部はロータリシャッタの外周近傍に配置されているが、配置位置はそれ以外、例えば、ロータリシャッタの内部であってもよい。
【0037】
図6Aに示すように、光透過部48aが光路P上に位置する間は、白色光が第1および第2ライトガイド55,56に入射するため、体腔内に白色光が照射される。この期間を、以下において白色光照射期間する。一方、図6Bに示すように、遮光部48bが光路P上に位置する間は、第1および第2ライトガイド55,56へ白色光が入射しないため、体腔内において白色光が遮光された状態となる。この期間を、以下において白色光遮光期間とする。位置検出部49は、白色光照射期間と白色光遮光期間のいずれの状態にあるかについての情報を、励起光の光源装置内の励起光制御部75およびプロセッサ装置のコントローラ113に適宜送信する。
【0038】
白色光照射期間と白色光遮光期間は観察モードによって異なり、自家蛍光観察モード時における各期間は通常光観察モード時の2倍に設定されている。したがって、図2に示す回転制御部50は、自家蛍光観察モード時においては、ロータリシャッタ48の回転速度を通常光観察モード時の回転速度の半分とする回転制御を行なっている。なお、回転制御部50は、モータ70に接続されたドライバ50aを介して、ロータリシャッタ48の回転速度を制御する。
【0039】
図2に示すように、励起光の光源装置17は、第1及び第2レーザ光源72,73、励起光制御部75を備えている。第1および第2レーザ光源72,73は発光ダイオード等から構成され、図3に示すような、405±10nmの波長を有する励起光を発する。このような波長域を有する励起光を体腔内に照射することで、波長が420nm〜650nmにおよぶ自家蛍光が生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる。
【0040】
第1および第2レーザ光源72,73は、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、常に励起光が発せられる。これにより、生体組織からは常に自家蛍光が発せられる。図3に示すように、電子内視鏡の先端部24aに戻ってくる励起光は励起光カットフィルタによりカットされ、また自家蛍光の光量は白色光に比べて微弱である。したがって、体腔内において白色光だけでなく励起光や自家蛍光が存在する状態で、白色光画像を取得したとしても、その取得した白色光画像においては励起光や自家蛍光は全く影響を与えない。
【0041】
励起光制御部75は、ドライバ75a,75bを介して、第1および第2レーザ光源72,73の励起光の光量を制御する。励起光制御部75は、白色光制御部47に接続されており、白色光制御部47による白色光の光量制御に従って、励起光の光量も制御する。励起光の光量の制御は、白色光と励起光とが所定の相関を有するように、例えば、励起光の光量と白色光の光量との光量比が1/10等を保持するように、励起光の光量を変化させる。
【0042】
このように白色光の光量が変更された場合であっても、これに追従して、励起光の光量も励起光制御部で自動的に変更されるため、白色光画像と自家蛍光画像との露出バランスを常に適正な状態に維持することができる。なお、励起光の光量制御は、白色光の光量制御に連動してごとに行なうのではく、図7に示すように、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わったときに、白色光と励起光とが所定の相関を有するように制御してもよい。
【0043】
第1レーザー光源72から発せられた励起光は、オーバーチューブの第1光ファイバ38に入射する。もう一方の第2レーザー光源73から発せられた励起光は、オーバーチューブの第2光ファイバ39に入射する。そして、図4に示すように、第1光ファイバ38内の励起光ELはフード14の第1投光ユニット41から出射し、第2光ファイバ内の励起光ELはフード14の第2投光ユニット42から出射する。
【0044】
第1および第2投光ユニット41,42は、先端部24aの第1および第2照明窓57,59と同様に、フード14の励起光カットフィルタ32(または観察窓62)に関して、それぞれ対称の位置に設けられている。また、図8に示すように、第1投光ユニット41から出射される励起光の照射範囲EL1と第2投光ユニット42から出射される励起光の照射範囲EL2とはほぼ重なり合っている(重複領域ELR)。さらに、この重複領域ELRは、2つの白色光の照射範囲が重なりあった重複領域WLRに含まれている。
【0045】
以上のような照射範囲EL1,EL2を有することから、先端部24aを観察対象Tに向けたときには、それら照射範囲EL1,EL2の重複領域ELRに観察対象Tがほぼ入る。これにより、観察対象Tに対して、励起光を十分に且つ照明ムラなく照射することができる。したがって、例えば、観察対象Tの全体が正常部である場合には、その観察対象の全域からほぼ同一強度の自家蛍光が発せられる。さらには、2つの励起光の照射範囲が重なり合った重複領域ELRは、2つの白色光の照射範囲の重複領域WLRに含まれていることから、観察対象T全体において、白色光と励起光の光量比は一定に保持される。
【0046】
図9に示すように、第1投光ユニット41は、光拡散部材90、この光拡散部材の外周を覆う筒状のスリーブ部材91と、スリーブ部材91の一端側を封止する保護ガラス92と、スリーブ部材内に挿入され第1光ファイバ38を保持するフェルール93とを備えている。また、フェルール93の後端側から外皮に覆われて延出される第1光ファイバ38には、その外皮の外側を覆うフレキシブルスリーブ95がスリーブ部材91との間に挿入されている。なお、第2投光ユニットについては第1投光ユニットと同様であることから説明を省略する。
【0047】
光拡散部材90は、第1光ファイバ38からの励起光を拡散させる透光性樹脂材料からなる。透光性樹脂材料の他にも、例えば、透光性セラミックスやガラス等が利用可能である。また、光拡散部材90は、その表面や中間層等に、微小の凹凸や屈折率の異なる粒子(フィラー等)を混在させた光拡散層を設けた構成や、半透明の材料を用いた構成としてもよい。これにより、光拡散部材90から出射する励起光は、光の偏光作用や拡散作用によって光量が均一化される。したがって、光拡散部材の材料や分量を適宜変更することによって、第1投光ユニット内で、励起光の照射範囲や光量を調節することができる。なお、第1投光ユニット内での光の照射範囲や光量は、光拡散部材の他、レンズや保護ガラスを適宜変更することによっても調節することができる。
【0048】
図2に示すように、電子内視鏡11は、CCD100、アナログ処理回路104(AFE:Analog Front End)、撮像制御部106を備えている。CCD100は、励起光カットフィルタ32、観察窓62、及び集光レンズ102を透過した光を、撮像面100aで受光する。そして、CCD100では、撮像面100aで受光した光を光電変換して信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を撮像信号として読み出す。読み出された撮像信号は、AFE104に送られる。
【0049】
CCD100はカラーCCDであり、撮像面100aには、R色、G色、B色のカラーフィルターが設けられたR画素、G画素、B画素の3色の画素が配列されている。ここで、白色光は波長域が青色帯域から赤色帯域にまでおよぶことから、白色光がCCDの撮像面に入射したときには、R画素、G画素、B画素の全てが感応する。したがって、白色光受光時に得られる撮像信号には、R画素から出力される撮像信号、G画素から出力される撮像信号、及びB画素から出力される撮像信号の3種類が含まれている。
【0050】
一方、自家蛍光は主たる波長域が緑色帯域であり、一部が青色帯域または赤色帯域にまで及ぶ。そのため、自家蛍光がCCDの撮像面100aに入射したときには、G画素は確実に自家蛍光に感応する。したがって、自家蛍光受光時に得られる撮像信号には、G画素から出力される撮像信号が含まれている。
【0051】
AFE104は、相関二重サンプリング回路(CDS)および自動ゲイン制御回路(AGC)から構成されている。CDSは、CCDからの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施し、CCD100の駆動により生じたノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。
【0052】
撮像制御部106はCCD44の撮像制御を行なう。この撮像制御部106の撮像制御に従って、AFE45から所定のフレームレートで撮像信号が出力される。撮像制御部106は、プロセッサ装置15内のコントローラ113に接続されており、撮像時においてコントローラ113が認識している観察モード等によって、撮像制御部106は制御方法を適宜変更する。
【0053】
ここで、図10Aに示すように、通常光観察モードに設定されている場合には、白色光照射期間のときに、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。そして、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わったときには、撮像制御部106から撮像信号読出パルスがCCD100に送信される。CCD100が撮像信号読出しパルスを受信したときに、CCD100で蓄積した信号電荷が撮像信号としてAFE104に出力される。そして、白色光遮光期間から白色光照射期間に切り替わったときに、再度、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。以上の一連の動作は、通常光画像モードに設定されている間、繰り返し行なわれる。
【0054】
これに対して、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、図10Bに示すように、白色光照射期間のときには、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。そして、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わったときには、撮像制御部106から撮像信号読出パルスがCCD100に送信される。CCD100が撮像信号読出しパルスを受信したときに、CCD100で蓄積した信号電荷が撮像信号としてAFE104に出力される。これとほぼ同時に、自家蛍光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。自家蛍光は微弱であるが、自家蛍光観察モード時の白色光遮光期間、即ち自家蛍光観察期間を通常光観察モード時の白色光遮光期間の2倍にすることで、自家蛍光画像を形成できる程度の光量はCCD100で確実に受光することができる。
【0055】
そして、白色光照射期間から白色光遮光期間に切り替わってから一定時間経過後、撮像制御部106から撮像信号読出パルスがCCD100に送信される。これに応じて、CCD100で蓄積した信号電荷が撮像信号としてAFE104に出力される。そして、白色光遮光期間から白色光照射期間に切り替わったときに、再度、白色光を光電変換して信号電荷を蓄積するステップが行なわれる。以上の一連の動作は、自家蛍光観察モードに設定されている間、繰り返し行なわれる。
【0056】
図2に示すように、プロセッサ装置15は、電子内視鏡11、白色光の光源装置16、励起光の光源装置17、モニタ18、キーボード(図示省略)、プリンタ(図示省略)等と電気的に接続され、電子内視鏡システム10全体の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置15は、信号処理部110と、フレームメモリ112と、コントローラ113とを備えている。
【0057】
信号処理部110は、電子内視鏡11のAFE104から出力される撮像信号に対して、A/D変換部115、色調補正部116、及び画像処理部117で各種処理を施すことによって、モニタ18に表示可能な映像信号を生成する。そして、この映像信号に基づいて、各種画像がモニタ18に表示される。なお、色調補正部116および画像処理部117は、例えば、それぞれ対応する処理を行なうソフトウエアと、このソフトウエアを格納するEPROM(書き換え可能型ROM)等の記憶装置等によって構成される。また、A/D変換後のデジタルの画像データや画像処理部において画像処理された後の映像信号は、一時的にまたは処理が施される毎に、フレームメモリ112に記憶される。
【0058】
A/D変換部115は、AFE104からの撮像信号をデジタルの画像データに変換する。画像データには、CCD100のB画素から出力された撮像信号から得られるB画像、G画素から出力された撮像信号から得られるG画像、R画素から出力された撮像信号から得られるR画像が含まれている。また、A/D変換後の画像データには、通常光観察モード時または自家蛍光観察モード時に取得する白色光画像の画像データと、自家蛍光観察モード時に取得する自家蛍光画像の画像データとがある。
【0059】
色調補正部116および画像処理部117は、図11に示すようなフローに従って処理を行なう。色調補正部116は、白色光画像のうち励起光カットフィルタ32によってカットまたは減光されたB画像の成分を補う。図3に示すように、電子内視鏡11は415nm以下の波長帯域の成分をカットまたは減光する励起光カットフィルタ32を通して撮像を行なうため、白色光画像及び自家蛍光画像のB画像のうちの低波長側の一部がカットされている。したがって、このカットされた部分の画像を色調補正部116によって補正する。
【0060】
白色光画像のB画像の補正は、以下のようにして行われる。まず、内視鏡使用前に、以下の補正式(1)、(2)を求めておく。ここで、励起光カットフィルタを装着しない場合における白色光画像のB画像の光量をB´とし、励起光カットフィルタを装着した場合における白色光画像のB´画像の光量をBとした場合には、BとB´との関係は次式(1)で表される。
B=B´×α ・・・(1)
ここで、αは励起光カットフィルタによる光量カット率である。したがって、B´は、次式(2)で求めることができる。
B´=B/α ・・・(2)
【0061】
式(2)に示すように、BとB´との関係が線形の関係にある場合には、励起光カットフィルタを装着したときに得られる白色光画像のB画像の光量Bを係数αで除算することで、励起光カットフィルタによりカットされた部分の光量B´が求まる。そして、白色光のB画像のうちカットされた部分の光量Bを光量B´に置き換えることで、励起光カットフィルタを装着しない場合と同様の白色光画像を得ることができる。
【0062】
なお、BとB´との関係が線形の関係にない場合には、例えば、乗算、加算、マトリックス変換等の演算処理によって、B画像のカットされた部分に相当する光量を増加させることができる。また、B画像のカットされた成分に相当する成分だけG画像およびR画像の成分を減少させてもよい。さらに、励起光カットフィルタによってG画像のうち低周波側の一部の成分がカットされた場合には、B画像の場合と同様にして、色調補正を行うことが好ましい。
【0063】
図2に示す画像処理部117は、色調補正が施された画像データに対して、バランス調整処理、高感度化処理、表示階調処理を施す。バランス調整処理は、自家蛍光観察モードに設定されている場合に、較正データを用いて、白色光画像と自家蛍光画像とのバランス調整を行なう処理である。較正データは、不特定の被写体の病変部(早期ガン等の発生部)および正常部について、予め撮像した白色光画像および自家蛍光画像から得られる。
【0064】
較正データを用いてバランス調整を行なうことで、例えば、白色光画像における病変部と正常部のコントラストと、自家蛍光画像における病変部と正常部とのコントラストとが、等しくなる。例えば、白色光画像のコントラストに対して自家蛍光画像のコントラストが1/5であった場合には、色調補正部116は、較正データに基づいて、自家蛍光画像のコントラストを5倍にするバランス調整を行なう。なお、上述したように、白色光と励起光の光量比は一定に保持されていることにより、バランス調整はより精度良く行なわれる。
【0065】
白色光画像と自家蛍光画像のバランスは、CCD等の特性に依存するため、バランス調整は、電子内視鏡システムの工場出荷前、もしくは、電子内視鏡システムを初めて使用する前等に、少なくとも1回実施することが好ましい。
【0066】
高感度化処理には、デジタルゲイン、フレーム加算、デジタルビニング等の処理が含まれる。この高感度化処理を行なうことで、自家蛍光画像の高感度化を図ることができる。デジタルゲインは、デジタルの画像データを所定の増幅率で増幅する処理である。フレーム加算は、連続する複数のフレームの画像データを加算して、1フレーム分の画像データを得る処理である。デジタルビニングは、CCDにおいて隣接する複数の画像を1セットとし、その1セット単位で撮像信号を出力することにより、受光面積を大きくしてCCDの感度を上げる処理である。なお、高感度化処理は自家蛍光画像だけでなく白色光画像にも施してもよい。
【0067】
表示階調処理は、白色光画像または自家蛍光画像をモニタに表示可能な映像信号に変換する処理である。この表示階調処理には、モニタに対応したγ補正処理や階調補正処理が含まれる。この表示階調処理においては、通常光観察モードに設定されている場合には、白色光画像のうち、B画像が映像信号のBチャンネル信号に、G画像が映像信号のGチャンネル信号に、R画像がRチャンネル信号に割り当てられる。
【0068】
一方、自家蛍光観察モードに設定されている場合には、白色光画像のB画像が映像信号のBチャンネル信号に、白色光画像のR画像が映像信号のRチャンネル信号に割り当てられ、自家蛍光画像のG画像が映像信号のGチャンネル信号に割り当てられる。これにより、白色光画像と自家蛍光画像とが合成された合成画像が得られる。このような合成画像をモニタ18に表示することで、正常部は緑色で、病変部はマゼンダ色で表示される。
【0069】
なお、自家蛍光の輝度レベルが低くなるのは、病変部が原因である他に、撮像距離が遠くなることも原因の一つにある。そこで、画像処理部は、モニタにマゼンダ色を表示する前には、白色光画像のG画像と自家蛍光画像のG画像の輝度レベルを比較する。その比較の結果、両者がともに低い場合には、病変部ではなく、単に撮像距離が遠くて輝度レベルが低くなっているだけと判断し、マゼンダ色ではなく緑色で表示する。一方、白色光画像のG画像の輝度レベルが高く、自家蛍光画像の輝度レベルが低い場合には、病変部であると判断し、マゼンダ色で表示する。
【0070】
次に、本発明の作用について説明する。まず、観察モード切替ボタン28により、自家蛍光観察モードに設定される。自家蛍光観察モードでは、白色光の光源装置16の常時電源オンに加えて、励起光の光源装置17の電源も常時オンになる。白色光の光源装置16においては、白色光照射期間に白色光が第1および第2ライトガイド55,56に入射する一方、白色光遮光期間には白色光は第1および第2ライトガイド55,56に入射しない。一方、励起光の光源装置17においては、第1レーザ光源72からの励起光が第1光ファイバ38に常時入射するとともに、第2レーザー光源73からの励起光が第2光ファイバ39に常時入射する。
【0071】
第1ライトガイド55内の白色光は先端部24aの第1照明窓57から体腔内に向けて出射され、第2ライトガイド56内の白色光は先端部24aの第2照明窓59から体腔内に向けて出射される。先端部24aにおける第1および第2照明窓57,59の配置位置と白色光の照射範囲WL1,WL2,WLRとから、先端部24aを観察対象Tに向けたときには、観察対象Tには白色光が十分に且つ照明ムラなく照射される。
【0072】
一方、第1光ファイバ38内の励起光はフード14に固着された第1投光ユニット41から体腔内に向けて出射し、第2光ファイバ39内の励起光はフード14に固着された第2投光ユニット42から体腔内に向けて出射される。第1および第2投光ユニット41,42の配置位置と励起光の照射範囲EL1,EL2,ELRとから、先端部24aを観察対象Tに向けたときには、観察対象Tには励起光が十分に且つ照明ムラなく照射される。これにより、例えば、観察対象T全体が正常部である場合には、その観察対象Tの全域からほぼ同一の自家蛍光が発せられる。加えて、2つの励起光の照射範囲の重複領域ELRは、2つの白色光の照射範囲の重複領域WLRに含まれていることから、観察対象T全体において、白色光と励起光の光量比は一定に保持される。
【0073】
電子内視鏡11は、B画素、G画素、R画素からなるカラーのCCD100を用いて、白色光照射期間にあるときには白色光画像を撮像し、白色光遮光期間にあるときには自家蛍光画像を撮像する。これら撮像によって取得した撮像信号はプロセッサ装置15に送られる。
【0074】
プロセッサ装置15では、A/D変換部115によって、撮像信号をデジタルの画像データに変換する。これにより、CCD100のB画素から出力された撮像信号から得られるB画像、G画素から出力された撮像信号から得られるG画像、R画素から出力された撮像信号から得られるR画像を含む画像データが得られる。
【0075】
そして、得られた画像データに基づいて、色調補正部116でB画像の補正がなされる。その後、画像処理部117において、較正データを用いたバランス調整、高感度化処理、表示階調処理が行なわれる。これら処理を経て、白色光画像と自家蛍光画像とを合成した合成画像が得られる。そして、この合成画像がモニタ18に表示される。
【0076】
自家蛍光観察モードにおいては、白色光の光量制御が白色光制御部47により行なわれるとともに、励起光の光量制御が励起光制御部75によって行なわれる。白色光制御部47は、例えば、白色光画像のG画像の輝度の平均値を算出し、その平均値が予め設定された所定の輝度となるように、白色光の光量を制御する。また、励起光制御部75は、白色光制御部47における白色光の光量制御に従って、例えば、励起光と白色光の光量比が1/10等を保持するように、励起光の光量制御を行なう。
【0077】
図12および図13に示すように、本発明の第2実施形態の電子内視鏡システム200は、励起光を照射する投光ユニットして、第1実施形態で示した第1および第2投光ユニット41,42に加えて第3および第4投光ユニット202,203をフード14に設け、それら4つの第1〜第4投光ユニット41,42,202,203のうちの2つから励起光を体腔内に照射する。なお、それ以外については、第1実施形態と同様であるので、以下では説明を省略する。また、この第2実施形態では、励起光の照射を2つの投光ユニットで行なうが、これに限らず、3または4の投光ユニットで行なってもよい。
【0078】
第3投光ユニット202は第1投光ユニット41の近傍に、第4投光ユニット203は第2投光ユニット42の近傍に設けられている。また、第3および第4投光ユニット202,203で使用される光拡散部材、レンズ、及び保護ガラスは、第1および第2投光ユニット41,42で使用されているものと異なっている。したがって、第3投光ユニット202から照射される励起光の照射範囲はその近傍の第1投光ユニット41の照射範囲と異なり、また、第4投光ユニット203から照射される励起光の照射範囲はその近傍の第2投光ユニット42の照射範囲と異なっている。このような第1〜第4投光ユニット41,42,202,203における照射範囲の相違を利用することで、観察状況に応じて、臨機応変に照射パターンを変更することができる。
【0079】
励起光の光源装置206内の切替ミラー207,208は、第1〜第4投光ユニットのうち所望の投光ユニット41,42,202,203から励起光が照射されるように、前記励起光の光源装置内において励起光の光路を切替える。切替ミラー207は、第1レーザ光源72からの励起光を第1光ファイバ38にそのまま入射させる退避位置と、第1レーザ光源72からの励起光を反射させて、その反射光を第3投光ユニット202に接続された第3光ファイバ210に入射させる挿入位置との間で移動自在となっている。もう一方の切替ミラー208は、第2レーザ光源73からの励起光を第2光ファイバ39にそのまま入射させる退避位置と、第2レーザ光源73からの励起光を反射させて、その反射光を第4投光ユニット203に接続された第4光ファイバ211に入射させる挿入位置との間で移動自在となっている。
【0080】
なお、上記第1および第2実施形態では、体腔内に白色光をそのまま照射したが、これに代えて、R色の光、G色の光、B色の光からなる面順次光を体腔内に照射してもよい。面順次光を照射するためには、図6A及びBに示すロータリシャッタ48に代えて、図14に示すようなロータリフィルタ220が用いられる。ロータリフィルタ220には、ロータリシャッタ48の遮光部48bと同様の遮光部221と、白色光光源45からの白色光のうちR色の光を透過させるR色カラーフィルタ223rと、白色光光源45からの白色光のうちG色の光を透過させるG色カラーフィルタ223gと、白色光光源45からの白色光のうちB色の光を透過させるB色カラーフィルタ223bとが、周方向に沿って設けられている。このロータリフィルタ220が回転軸220aを中心に回転することで、白色光照射期間に、R色の光、G色の光、B色の光がこの順で体腔内に照射される。
【0081】
また、上記第1および第2実施形態では、体腔内に照射する白色光を白色光の光源装置内の白色光光源で発生させているが、これに代えて、図15の電子内視鏡システム300に示すように、白色光の光源装置内の青色レーザ光源304と電子内視鏡の先端部24a内に設けられた投光ユニット306,307とによって白色光を発生させてもよい。青色レーザ光源304は、中心波長445nmを有する青色レーザ光を発する。発せられた青色レーザ光は、ライトガイド55,56を介して、投光ユニット306,307から体腔内に向けて照射される。なお、青色レーザ光源304は、ドライバ305aを介して、青色レーザ光制御部305によって制御される。
【0082】
図16に示すように、投光ユニット306は、第1および第2投光ユニット41,42において、光拡散部材の代わりに蛍光体310を備える以外は、同一の構成を備えている。蛍光体310は、ライトガイド55からの青色レーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体物質(例えばYAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)を含んで構成される。これにより、青色レーザ光を励起光とする緑色〜黄色の励起発光光と、蛍光体310により吸収されず透過した青色レーザ光とが合わされて、白色光が生成される。なお、投光ユニット307も、投光ユニット306と同様であるので、説明を省略する。
【0083】
また、上記第1および第2実施形態では、励起光の照射によって生体組織内の内因性蛍光物質から発せられる自家蛍光を観察するAFIを本発明に適用した場合について説明したが、本発明は、蛍光薬剤を用いて蛍光観察を行なうPDD(Photo Dynamic Diagnosis)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10,200,300 電子内視鏡システム
11 電子内視鏡
13 オーバーチューブ
14 フード
16,302 白色光の光源装置
17,206 励起光の光源装置
20 挿入部
24a 先端部
32 励起光カットフィルタ
38,39 第1および第2光ファイバ
41,42 第1および第2投光ユニット
202,203 第3および第4投光ユニット
210,211 第3および第4光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内の生体組織から蛍光を励起させるための励起光を発する励起光の光源装置と、
体腔内に挿入される挿入部を有する電子内視鏡と、
電子内視鏡の挿入部が挿通されるオーバーチューブと、
オーバーチューブに設けられ、前記励起光の光源装置で発せられた励起光を導光する励起光導光部材と、
前記励起光導光部材により導光された励起光を体腔内に向けて照射する投光ユニットを備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記電子内視鏡は、
前記挿入部の先端部に設けられ、体腔内で反射した光を受光する観察窓と、
観察窓に入る前の光のうち励起光の波長帯域を含む光をカットする励起光カットフィルタを有する先端部装着用のフードとを備え、
前記投光ユニットは、フードの外周面に固着されていることを特徴とする請求項1記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記投光ユニットは、観察窓に関して対称の位置に設けられた2つの第1および第2投光ユニットを有することを特徴とする請求項2記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記投光ユニットは、前記第1投光ユニットの近傍に設けられ、励起光の照射範囲が前記第1投光ユニットにおける励起光の照射範囲と異なる第3投光ユニットと、前記第2投光ユニットの近傍に設けられ、励起光の照射範囲が前記第2投光ユニットにおける励起光の照射範囲と異なる第4投光ユニットを更に有することを特徴とする請求項3記載の電子内視鏡システム。
【請求項5】
各投光ユニットにおいて、それぞれ異なる光拡散部材、レンズ、及び保護ガラスを組み込むことによって、各投光ユニットにおける励起光の照射範囲を相異させていることを特徴とする請求項3または4記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記第1〜第4投光ユニットのうち所定の投光ユニットから励起光が照射されるように、前記励起光の光源装置内における励起光の光路を切替える切替部を備えることを特徴とする請求項4記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記電子内視鏡は、
前記挿入部の先端部に設けられ、波長が青色帯域から赤色帯域におよぶ白色光を体腔内に向けて照射する照射窓を有し、
前記励起光の照射範囲は前記白色光の照射範囲内に入っていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記励起光と前記白色光の光量比は一定に保持されていることを特徴とする請求項7記載の電子内視鏡システム。
【請求項9】
前記白色光は、R色の光、G色の光、B色の光が時分割して照射される面順次光であることを特徴とする請求項7または8記載の電子内視鏡システム。
【請求項10】
前記白色光は、蛍光体に対する特定波長の青色光の照射によって、その蛍光体から励起発光される光であることを特徴とする請求項7ないし9いずれか1項記載の電子内視鏡システム。
【請求項11】
体腔内の生体組織から蛍光を励起させるための励起光を発する励起光の光源装置に接続された電子内視鏡において、
体腔内に挿入される挿入部と、
挿入部が挿通されるオーバーチューブと、
オーバーチューブに設けられ、前記励起光の光源装置で発せられた励起光を導光する励起光導光部材と、
前記励起光導光部材により導光された励起光を体腔内に向けて照射する投光ユニットを備えることを特徴とする電子内視鏡。
【請求項12】
体腔内の生体組織から蛍光を励起させるための励起光を発する励起光の光源装置と、体腔内に挿入される挿入部をオーバーチューブに挿通させた電子内視鏡とを用いる励起光照射方法において、
前記励起光の光源装置で発せられた励起光を、オーバーチューブに設けられた励起光導光部材により導光し、導光された励起光を投光ユニットから体腔内に向けて照射することを特徴とする励起光照射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−81048(P2012−81048A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229510(P2010−229510)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】