説明

電子部品の粒子感度を決定する方法

電子部品を分析するために、この部品を集束させたレーザビームにさらす。部品の感度帯域の位置および深さに関係するレーザマッピングによって提供される情報を、予測コード内の入力パラメータとして使用して、自然の放射環境内の電離粒子に対するマッピングされた部品の感度を定量化する。予測コードを使用して、電子部品内の誤動作の発生を決定する。放射環境に関連するリスクの決定には、2つの態様が要求される。一方は確率論的であり、粒子/物質の相互作用を考慮し、他方は電気的であり、電子部品内の電荷収集を考慮する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、粒子/物質の相互作用の物理的特性に基づいたレーザシステムおよび誤動作予測コードの共同使用を通じて、重イオン、中性子、および陽子などの粒子に対する電子部品の感度を決定することである。
【背景技術】
【0002】
自然または人工の放射環境(中性子、陽子、重イオン、フラッシュX線、ガンマ線による)は、電子部品の働きを妨害する可能性がある。これらの妨害は、物質と放射環境の粒子の間の相互作用による。1つの結果として、部品内に寄生電流が生じる。発生する寄生電流の大きさは、物質と粒子の間の相互作用に従って変動する。この結果、部品内に局部的な電荷収集領域が存在することになる。
【0003】
重イオンおよび陽子によって生じるそのような応力は通常、宇宙空間において、衛星および発射装置で発生する。航空機が移動するより低い高度では、特に中性子からの応力が確認される可能性がある。そのような応力は、海面の高さでも発生することがあり、携帯型の装置内または自動車内に埋め込まれた電子部品に影響を及ぼすことがある。
【0004】
特に宇宙および航空の適用分野で、重イオン、中性子、および陽子に対する部品の挙動の予測を可能にするには、電荷蓄積帯域の表面積、ならびにその位置および深さの寸法を知ることが必要である。これは、3次元のマッピングを作製できることを前提とする。
【0005】
従来、放射環境の粒子に対する電子部品の粒子感度を評価するには、部品に粒子の流れをかけ、妨害の詳細を明らかにする。部品全体に照射するため、このタイプの試験では、電荷収集帯域の位置までたどることができない。さらに、世界中で粒子の流れを生成することが可能な設備は比較的少ないので、これらの試験は比較的高価である。最後に、粒子加速器から来る粒子の性質が放射環境のものと同じである場合でも、そのエネルギーは異なることがある。特に部品内への侵入がより少ないので、このことは主要な誤差を招くことがある。
【0006】
粒子加速器の出力から、サイズの小さいビームを抽出することができる。したがって、これらのマイクロビームを使用して、部品の感度帯域をマッピングすることができる。このマッピングは平面内で行われ、電荷収集帯域の位置を外面的に明らかにするだけである。このタイプの試験では、感度帯域の深さの位置に関する情報は得られない。
【0007】
現在まで、放射に対する部品の感度を事前に特徴づけるツールとして、主にレーザが使用されてきた。放射環境の粒子の場合と同様に、その波長が適当なとき、レーザにより部品内で寄生電流が発生する可能性がある。
【0008】
レーザには、放射の影響を調査するのに非常に有益な利点がある。レーザの空間解像度は、電子部品内に含まれる基本構造と比較すると比較的小さな寸法に達することができるので、マイクロビームの場合のように、電子部品をマッピングしてその電荷収集帯域を識別することが可能である。ビームの焦点の深さを変動させることによって、第3の次元でも感度をマッピングすることが可能であり、これを工業的規模で容易に行うことができる。しかし、この知識は、放射下の電子部品の全体的な挙動を知るには十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題を克服するために、本発明は、シミュレーションによって動作するアイディアを考案した。部品の感度のマップを獲得した後、マップは、X、Y、Zの参照枠と感度の係数、またはX、Y、Z、Tの参照枠と感度の係数という4次元または5次元を有するモデル、実際にはマトリックスの形式で提示される。次いで、この部品モデルに模擬応力をかけて、その模擬応答を測定する。たとえば概略的には、所与の瞬間Tに、模擬イオン(1次イオンであるか、それとも核反応によって生成されたイオンであるかに関わらない)がX、Y、Z座標を有する基本帯域を通過する場合、そしてこの瞬間に、当該基本帯域が感度sを有する場合、この帯域には品質値sが割り当てられる。次いで、この実験が別の模擬イオンに対して繰り返される。このようにして所与の調査期間にわたって処理が継続され、一方時間が場合によって変動する場合、そして部品によって動作されるアプリケーションが継続する場合、これらの値sが収集され、次いでたとえば所与の測定期間の終わりに、測定した品質値を集計して部品の本当の品質を見出す。この動作モードによって、推察によるマッピングではなく、真の品質測定が得られる。
【0011】
本発明によれば、電子部品の感度帯域の位置および深さに関するレーザマッピング動作によって与えられる知識を、予測コード内の入力パラメータとして使用して、自然の放射環境の電離粒子に対するマッピングされた電子部品の感度を定量化することができる。これらの予測コードにより、電子部品内の誤動作の発生を評価することができる。放射環境に関係するリスクの評価には、2つの態様が必要である。第1の態様は確率論的であり、粒子/物質の相互作用を考慮する。他方の態様は電気的であり、電子部品内の電荷の収集を考慮する。
【0012】
この方法は、レーザ試験を通じて放射に対する電子部品の感度を決定するために使用される。このとき部品の電荷収集帯域の幾何形状に関する情報は、粒子(重イオン、中性子、陽子など)に対する誤差予測のシミュレーションで入力パラメータとして働く。本発明の方法は、放射抵抗に対する特定の技術の弱さに光を当てる。これは、製造方法の観点から新しい部品を開発する際に、そして最も低い感度を有するように電子システム内で使用すべき電子部品を選択するために主要な情報になる。本発明では、電子部品の構成核との核反応の徹底的なシミュレーションを実施するのではなく、中性子または陽子に対する感度を調査する場合、事前に構築したデータベースを使用することが好ましい。所与の入射粒子からの応力のエネルギーにより、反応から来る生成物の特性、ならびにそれぞれの可能な反応に関連する確率が与えられるからである。重イオンの場合、重イオンは高い電離能力を直接有するので、核反応は調査されておらず、データベースは存在しない。シミュレーションコードにより、これらの粒子の相互作用が電子部品の働きに及ぼす影響を、基準から評価することができる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、電子部品のエネルギー相互作用に対する感度を特徴づける方法であって、
− 電子部品を動作させ、
− こうして動作させた電子部品を、レーザ放射によって生じる励起によって励起させ、
− これらの励起に対応する動作させた電子部品の誤動作を測定し、
− これらの励起が影響を及ぼす部品の感度帯域のマッピングを行い、
− エネルギー相互作用を促す粒子によって印加される応力のシミュレーションのプログラムを感度帯域のマッピングに適用し、
− このシミュレーションプログラムによって、部品内の粒子がとる多数の可能な経路に基づいて、ならびに、中性子および陽子の場合、データベースから抽出される多数の反応に基づいて、部品の感度を定量化する、方法である。
【0014】
本発明は、以下の説明および添付の図からよりはっきりと理解されるであろう。これらの図は説明のためだけに与えられ、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a−1c】部品の統合レベルに従って攻撃の効率を区別する調査の3つの異なる場合を示す図である。
【図2】所与のエネルギーの入射粒子に対する核反応中に生じる生成物およびこの反応に関連する確率についての詳細な説明を与えるデータベースの記号の内容を示す図である。
【図3】電子部品の感度を予測するためのモンテカルロコードの一般的な原理を示す図である。
【図4a−4b】イオンの通過によって堆積したキャリアの収集、および0.6μm技術に対するSEUの基準(Imax、tImax)の原理を時間ベースで表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によれば、レーザデバイスにより、まず第1に試験すべき電子部品を動作させ、レーザ光線によって生じる励起によってこの電子部品を励起させ、そしてこれらの励起に対応する動作させた電子部品の誤動作を測定することが可能になる。したがって、このデバイスにより、これらの励起が影響を及ぼす部品の感度帯域のマッピングを設定することが可能になる。一例では、レーザ源は、部品の半導電性材料内の陽子の吸収を促す。
【0017】
本発明は、その後、レーザシステムおよび予測コードの共同使用に基づいて、自然の放射環境に対する電子部品の感度を算出する。このレーザを使用して、電荷の局部的な注入に対する部品の感度をマッピングする。基準が観察される。この基準は、調査される事象を考慮する。この基準は電気信号とすることができ、この電気信号は、事象が活動化したとき、予期された信号とは異なる。メモリなどの論理部品の場合、この基準は、メモリセル内に記憶された値とすることができる。線形部品の場合、この部品のアナログ信号とすることができる。
【0018】
このシステムは、
− 波長が当該半導電性材料内で(線形または非線形吸収の機構によって)電荷を生成できるレーザ源と、
− 空間の3つの方向すべてに沿って、試験されている部品に対してレーザを相対的に移動させるデバイスと、
− 場合によっては、試験されている部品とレーザを制御するシステムとの間の通信を可能にするインターフェースと、
− レーザエネルギーを修正するシステムと、
− 事象が発生したまたは発生していないことを確認するシステムとを含む。
【0019】
部品の感度のマッピングが、空間の3つの次元すべてで実行される。これには、時間を考慮し、したがって別の次元を加えることもできる。マッピングシステムの各位置X、Y、Zで、また場合によっては、部品またはこの部品によって実行されるアプリケーションの動作の周期の各瞬間tで、レーザ発射が行われる。このレーザ発射は、半導体材料内の電荷の生成を促す。特に電界および拡散機構の影響下では、電荷は移動を開始し、電子部品の働きを妨害しうる電流を発生させる。マッピングシステムのすべての位置(空間および時間位置)が同じ感度を有するというわけではない。空間的には、位置に応じて部品の物理的パラメータは同じではなく、また時間的には、部品のすべての帯域が時間の過程で同じように作用を受けるというわけではないからである。レーザマッピングにより、電荷の局部的な生成下で部品の感度帯域に光を当てること、すなわち空間的な感度、および場合によっては時間的な感度の変動を明らかにすることが可能になる。これらは、重イオン、中性子、および陽子などの電離粒子(直接または間接電離粒子)を感知できる帯域である。
【0020】
レーザマッピングを使用して、
1−感度帯域の空間位置X、Y、Z、
2−感度帯域の時間位置、すなわち帯域が電荷の注入を感知できると考えられる時点、
3−この感度帯域の形状および体積(場合によっては時間の関数として発展する)、
4−隣接する感度帯域に対するこの感度帯域の相対位置、
5−論理部品の場合、必要に応じて、感度帯域内への電荷の注入中に影響を受ける論理関数、を識別する。
【0021】
レーザマッピングから抽出される情報4および5は、技術、使用の条件、場合によっては部品によって動作されるアプリケーションに依存する。逆に、これらの情報は電荷が堆積する変化率には依存せず、したがって、考慮される電荷堆積が何であっても有効である(たとえば粒子またはレーザ電荷に関わらない)。レーザマッピング処理から抽出される情報1、2、および3は、技術、本発明者らの条件、および場合によっては部品によって作成されるアプリケーションに依存する。これらの情報はまた、電荷堆積の時間変化率(2の場合)ならびに空間変化率(1および3の場合)にも依存する。2の場合、レーザは、半導体材料内で電離粒子の電荷が堆積する持続時間(ほぼ1ピコ秒)と同等のパルス持続時間を有し、この場合、得られる情報は、考慮される電荷堆積が何であっても(たとえば粒子またはレーザ)有効である。
【0022】
したがって、レーザマッピングにより、2つの異なるタイプの情報を得ることが可能になる。前者の場合、場合4および5では、レーザマッピングを直接利用して、放射環境の粒子に対する電子部品の感度に関するデータを抽出することができる。
【0023】
第2の場合、場合1、2、および3では、ペイロード情報を抽出して粒子に対する電子部品の感度を推定する処理をレーザマッピングに適用することが必要であり、この処理では、粒子/物質の相互作用の特有の性質を考慮する。
【0024】
レーザマッピングの直接利用、すなわち場合4および5に関しては、レーザ手段を使用して、感度帯域の相対位置を識別することができる(時間に依存するか否かに関わらない)。この情報の精度は、そのスポットのサイズではなく、レーザマッピングを得るのに使用される移動距離のサイズに関連する。この意味では、感度帯域間の距離に関するこの情報を得ることは、考慮されるビームのサイズに左右されない。
【0025】
また、基本セル(メモリなど)からなる非常に精巧な周期的構成を保持する最も統合された部品では、(セル全体で感知できると考えられるため)レーザマッピングによって得られるセルとそれに最も近い近接セルとの間の距離に関する幾何学的情報により、基本セルの感度帯域の最大サイズが与えられる。この情報は直接得られるものであり、処理なしで利用することができる。
【0026】
レーザマッピングの処理に関しては、識別した第2の場合、すなわち1、2、および3の場合、ペイロード情報を抽出して放射環境の粒子に対する電子部品の感度を推定する処理をレーザマッピングに適用することが必要である。このとき、部品の統合レベルに応じて、調査の3つの異なる場合を区別することが必要である。これらの3つの場合について、図1a〜1cを参照して説明する。
【0027】
場合A:レーザの電離トレースおよび所与のエネルギーイオンの電離トレースが、電子部品の基本構造および/または感度帯域の特徴的な寸法より小さなサイズを有する、あまり統合されていない部品。
【0028】
場合B:レーザの電離トレースが電子部品の基本構造または感度帯域の特徴的な寸法より大きなサイズのものであり、一方これらの構造と比較すると、所与のエネルギーイオンの電離のトレースがより小さなサイズのものである、統合された部品。
【0029】
場合C:レーザの電離トレースおよび所与のエネルギーイオンの電離トレースが、電子部品の基本構造または感度帯域の特徴的な寸法より大きなサイズのものである、高度に統合された部品。
【0030】
どの場合でも、電離粒子に対する感度帯域を知るためにデータを処理することが可能である(直接または間接電離に関わらない)。
【0031】
第1の場合Aでは、集束させたレーザによって得られる電荷堆積、およびイオンによって得られる電荷堆積は、部品の基本構造に対して非常に局部的である。レーザによって感知できると識別されたこれらの帯域はまた、イオンの場合も感知できるであろう。したがってこの場合、レーザマッピングにより、電離粒子(直接または間接)の通過を感知できる帯域を空間的および/または時間的に直接識別することが可能になる。
【0032】
第2の場合Bでは、イオンによって感知できるとすでに検出したものと比較すると、レーザでは感度帯域のサイズを大きく推定しすぎる。言い換えれば、レーザによって検出される感度帯域は、部品の本当の感度帯域とレーザによって生成される電離トレースのサイズとのたたみ込みと考えられる。次いで数学的な逆たたみ込みを行い、この数学的な逆たたみ込みを使用して、電離粒子に対する部品の感度帯域の推定されるサイズをレーザマッピングから抽出するためのレーザスポットのサイズを考慮する。数学的な逆たたみ込みは、レーザによって検出される感度帯域、ならびにレーザの電離トレースの形状およびサイズが知られている場合に、部品の本当の感度帯域を取得する動作である。数学的観点から見れば、これは、以下の等式の解によって表すことができる。
【0033】
ZSlaser=f(ZSi)
上式で、ZSlaserはレーザによって識別される感度帯域であり、ZSiは粒子に対する部品の感度帯域であり、fはレーザの電離トレースの関数である。
【0034】
この等式を解くことは関数f−1を見出すことからなり、したがってZSi=f−1(ZSlaser)を決定することができる。
【0035】
第3の場合Cでは、電荷の堆積がイオンによるものか、それともレーザによるものかに関わらず、そのサイズは部品の基本構造のサイズより大きい。この基本構造の観点から見れば、電荷は基本構造全体にわたって生じるので、イオンまたはレーザによる電荷堆積はほぼ同じである。この場合基本構造全体で感知できるので、この場合、レーザによって得られる感度に関する情報から電離粒子に対する感度に関して予期される情報へ渡すための相関関係を作ることが容易である。レーザおよびイオンによって検出される、基本構造に関連する感度帯域は、それぞれレーザおよびイオンの電離トレースのサイズに直接関連する。
【0036】
感度帯域の深さにおける局部化は、焦点距離を変化させることによって、または集束させたレーザの深さを部品に対して移動させることによって、レーザビームの焦点を変動させることにより決定される。
【0037】
したがって、レーザにより、電離粒子に対する電子部品の感度帯域の位置およびサイズに関する幾何学的情報を送り返すことが可能になる。場合によっては、場合Bでは、引出しを行うことも行わないこともある。その後、電離粒子に対する電子部品の感度を定量化するには、これらの幾何学的情報と以下にさらに説明する予測コードとを結合させることが必要である。
【0038】
所与の放射環境(宇宙または航空電子工学的な環境)で所与の電子部品の感度を評価するために、多くの予測ツールが開発されてきた。とりわけSMC DASIE(2次イオンの影響の簡略化されたモンテカルロ詳細分析)が挙げられる。この方法は、「11th IEEE International On−Line Testing Symposium」のG.Hubertら「A review of DASIE codes family:contribution to SEU/MBU understanding」、2005年に記載されている。このコードの様々なバージョンは、影響を活動化させる電荷収集モジュールおよび基準に結合された核データベースの同じ利用原理に基づく。このレーザにより、初めは知られていない技術をもつ特定の部品に対して電荷を局部的に注入することによって、方法および感度に関するデータを抽出することができる。これらのモンテカルロ演算ツールは、重イオン相互作用、または部品を構成する核との中性子もしくは陽子の核反応に続く、可能な電離トレースの条件を再現する多数の相互作用のランダム抽出に依拠する。したがって、これらのツールは、誤差周波数(SERまたは単一事象変化率)を算出する。
【0039】
特定のモンテカルロ予測コードを使用して、多数の基本セルを考慮することができ、したがってこの部品の異なるセル内で同時に現れる複数の影響に関係する問題を処理することができる。
【0040】
モンテカルロ法を設定することは、次の3組の事項および問題を管理することからなる。
【0041】
1−考慮される環境に応じた相互作用のモンテカルロ抽出の管理
2−粒子/物質の相互作用の物理的特性(データベース):1次イオン、または中性子もしくは陽子と部品の構成核との反応によって生成される2次イオンの特性についての知識
3−誤差基準:電荷の収集およびその結果を決定する。
【0042】
放射線帯の大気中の中性子または陽子によって電子部品内で引き起こされる単独の影響を調査するには、これらの核子が目標の原子で促す電離生成物(2次イオン、反跳核、破砕片、または生成物と呼ばれる)を知ることが必要である。
【0043】
異なるタイプの相互作用(弾性、非弾性など)のエネルギーの程度または範囲(1MeV〜1GeV)が与えられた場合、相互作用の異なる機構を、それらの特定性、すなわち反応およびエネルギーのタイプに従って説明するために、異なるコードを使用してデータベースが生成された。HETC、MC−RED、MC−Recoil、GEANT4、GNASH、もしくはMCNP6(入射粒子のエネルギーに依存する)などの専用の演算コード、またはENDFもしくはJENDLなどの相互作用のデータベースを使用することができる。これらの核コードの大部分は、インターネットを通じてアクセス可能である。中性子nまたは陽子pと目標核との相互作用の原理を図2に表す。
【0044】
中性子/陽子のエネルギーレベルが10MeVより低い場合、弾性反応が優勢になる。逆に、エネルギーレベルが50MeVより大きい場合、非弾性タイプの反応が大部分になる。弾性タイプの反応とは、入射n/pおよび反跳イオンからエネルギーを引き起こすものである(運動エネルギーおよび質量数の維持)。非弾性反応は様々であり、各反応は、エネルギー出現閾値によって特徴づけられる。これらの反応は、1つまたは複数の2次イオンの生成を引き起こす。
【0045】
データベースは、中性子/物質または陽子/物質の相互作用を処理し、またそれぞれの入射エネルギー値に対して数十万の非弾性および弾性核事象によって形成され、これらの核反応の詳細、すなわち2次イオンの核の数および質量数、これらのエネルギー値、ならびにこれらが送る特性(送る角度)を有する。
【0046】
電子部品の感度の予測に対するモンテカルロコードの一般的な原理を図3に示す。この方法は、部品内の核反応の位置の抽出と関連する核反応の1組のランダム抽出を得るものである。この組の抽出を行うことは、実験の持続時間になぞらえられる。これらの構成ではそれぞれ、物理的電荷収集機構の調査の簡略化されたモデルに基づく分析により、そのような特性を有する2次イオンによって引き起こされる誤差の発生を決定することが可能になる。重イオンの調査の場合、この方法は同一のままであるが、1つの1次粒子だけを調査するので、核反応のランダム抽出は行われない。
【0047】
場合によっては、これらのシミュレーションコードでは、荷電粒子の電離トレースのサイズを考慮する。1つの点だけに電荷を堆積させるのではなく、電荷の径方向の分配が導入される。
【0048】
物理的モジュールの簡略化は、多数の構成要素シミュレーションの調査によって得られる。これらのシミュレーションにより、所与の事前に網状にした構造で、構造の各網掛け点に対して、また調査される時間ドメインの各瞬間に対して、半導体の等式を解くことが可能になる。これらのシミュレーションにより、電離相互作用に対して電子部品が有する挙動を非常に精密に調査することができる。しかし、これらのシミュレーションは、演算時間の点で非常に高価である。この理由のため、本発明の状況では、機能不全が調査される場合をシミュレートする方法を簡略化することが必要である。多数の構成要素シミュレーションの事前の調査によって、誤差の出現に影響を与えるパラメータを識別し、予測ツール内で実施される利用されている物理的機構の簡略化されたモジュールを定義することが可能になる。
【0049】
したがってたとえば、それによって本発明を適用できる部品のタイプを制限することなく、SRAMセルの切換えの場合、その感度は臨界LETパラメータ(経路ユニット当たりのエネルギーの損失と定義される)または臨界電荷によって特徴づけられることが特に知られている。誤差を促すには、核反応によって生成される1つまたは複数のイオンが、オフ状態のトランジスタのドレイン内に十分なエネルギーを堆積させなければならない。部品シミュレーションでは、切換えを発生させるのに十分な寄生電流または電荷の収集を中で引き起こすように、誤差を生じるのに好ましい条件により、そのトレースが感度帯域の1つにかなり近接して通過し、またそうでなければその帯域を通り抜けることがわかった。阻止したドレインでのキャリアの両極性拡散および電荷の収集に基づく簡単な拡散収集モデル(特に分析モデル)により、キャリアの移動について説明することが可能になる。
【0050】
様々な方法を使用して、イオンの通過後に機能不全が発生したか否かを評価することができる。第1の方法には、簡略化された(1次)手法を伴う。これは、基本セルの感度体積内のイオンによって堆積した電荷、およびこのセルと切換えの閾値との比較の決定に基づく。
【0051】
第2の方法は、現象のより精巧な調査である(2次現象)。図4aでは、電流を再構築するために、イオンの通過によって堆積したキャリアの収集が時間的に調査される。電流の時間的な進行を使用して、切換えが発生しているか否かを決定する。たとえば、動的基準(Imax、tImax)により、SEU(単一現象故障)とも呼ばれる切換えを引き起こす対(Imax、tImax)と、いかなるそのような切換えも引き起こさないものとを分離する境界曲線を導入する。粒子のすべての通過が同じ形状を有する電流を引き起こし、すなわち迅速な成長の後にゆっくりと減少する電流を引き起こすことを観察することから、電流の最大振幅(Imax)および電流の最大振幅が設定される時間(tImax)を構成する対によって、イオンのそれぞれの通過を特徴づけることができる。
【0052】
図4bは、0.6μm技術でのSEUに対する感度を調査するための動的基準(Imax、tImax)の原理の例を示す。部品の誤動作を測定するために、励起に起因する電流の時間的な進行を測定する。この電流の基準(Imax、tImax)により、部品の論理状態の切換えを決定することが可能になる。
【0053】
前述の例はSRAMメモリセル内のSEU機構の調査に属するが、放射によって引き起こされる影響の基準が識別されるという条件で(同じ基準が、放射によって引き起こされるいくつかの影響に共通する可能性があるため)、本発明の目的を、あらゆるタイプの電子部品および放射によって引き起こされるあらゆるタイプの影響に適用することができる。
【0054】
本明細書に前述の核データベースに加えて、材料内へ通過中の2次イオンまたは重イオンのエネルギー堆積の挙動を記述する演算コード(たとえばインターネットを通じてアクセス可能なSRIMツールなど)によって、曲線が提供される。調査される誤差のタイプが何であっても、このデータベースおよびSRIM曲線は固定されるが、電子部品を構成する材料に依存する。演算コードに必要な技術的な入力は、部品のトポロジ(すなわち、感度帯域の体積および2つの感度帯域間の距離)に関する情報である。これらのパラメータは、調査される部品および誤差のタイプに従って変動する。
【0055】
電子部品の感度を予測するのに必要な入力は、基本セルの寸法、所望の現象に関連するセルの感度体積の寸法および位置、ならびに隣接する感度帯域の位置である。この情報を得るために、レーザツールが使用される。したがって、予測ツールとレーザマッピングの間の結合により、電子部品の感度および品質を定量化することが可能になる。レーザマッピングによって得られる情報の起こりうる処理は、レーザスポットのサイズおよび利用されている粒子の電離トレースに対する部品の統合レベルに依存する。この幾何学的データを予測コードの入力で使用して、自然の放射環境の粒子に対する電子部品の感度を定量化する。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品のエネルギー相互作用に対する感度を特徴づける方法であって、
− 前記電子部品を動作させ、
− こうして動作させた前記電子部品を、レーザ放射によって生じる励起によって励起させ、
− これらの励起に対応する動作させた前記電子部品の誤動作を測定し、
− これらの励起が影響を及ぼす前記部品の感度帯域のマッピングを行い、
− エネルギー相互作用を促す粒子によって印加される応力のシミュレーションのプログラムを前記感度帯域の前記マッピングに適用し、
− このシミュレーションプログラムによって、前記部品内の前記粒子がとる多数の可能な経路、ならびに、中性子および陽子の場合、データベースから抽出される多数の反応を生成し、
− このシミュレーションプログラムによって、これらの可能な経路から、また前記部品の前記感度の前記マッピングからの電荷収集モデルを実施し、
− このシミュレーションプログラムによって、これらの電荷収集を分析して、これらの電荷収集に関係する誤差の発生を決定し、
− この分析から、またこれらの決定から、前記部品の品質信号を導出する、方法。
【請求項2】
− 前記中性子および前記陽子の場合、データベースを使用して、可能な核反応の生成物および確率に関する情報を提供し、また
− 前記部品の働きに対する電離の影響を測定する
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
− 前記準備されたレーザマッピングに処理を適用して有用なマッピングを抽出し、この有用なマッピングが、電離粒子に対する前記部品の前記感度を考慮する
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
− 数学的な逆たたみ込みを実行して、電離粒子に対する前記部品の感度帯域の推定されるサイズに対するレーザ衝撃のサイズを考慮する
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
− 精巧な統合をもつ部品の場合、前記レーザマッピングを用いて基本セルの前記感度帯域の最大サイズを測定する
ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
− 前記部品の前記感度を定量化するために、調査される機能不全に対して決定された基準に従って、励起に対する前記電子部品の応答を測定する
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
− 前記シミュレーションプログラムが、調査される前記粒子のタイプおよびエネルギーに対応するデータベースから核反応を選択する
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
− エネルギー相互作用の測定として、重イオンおよび/または陽子および/または中性子の相互作用をレーザシミュレーションによって測定する
ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
− レーザ源のレーザ光子のエネルギーが、前記半導体部品のバンドギャップの値より大きい
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
− 前記レーザ源が、前記半導体材料内のいくつかの光子の同時吸収を促す
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
− 前記レーザマッピングが、空間の3つの次元すべてで行われる
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
− 前記レーザマッピングが、4つの次元、すなわち空間の前記3つの次元ならびに時間で行われる
ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12の1項に記載の方法を実施するデバイス。

【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2011−504581(P2011−504581A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530526(P2010−530526)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051913
【国際公開番号】WO2009/056738
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510115085)ヨーロピアン エアロノーティック ディフェンス アンド スペース カンパニー イーズ フランス (1)
【出願人】(507189703)エルビュス オペラシオン (エス.アー.エス.) (35)
【出願人】(507115252)アストリウム・エス・エー・エス (13)
【Fターム(参考)】