説明

電気式床暖房セットおよびそれを用いた施工された電気式床暖房フロア

【課題】3線式コード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルにおいて、3線式コード状ヒータに疲労断線が生じて異常発熱した場合に、出火に至るのを確実に防止すること。
【解決手段】3線式コード状ヒータとして、通電により発熱する第1と第2の2本のヒータ線と検知線との3線式ヒータを用いる。第1のヒータ線と検知線は第1の被覆樹脂で被覆されており、第2のヒータ線は第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている。電気式床暖房パネルと床暖房用コントローラを配線キット1で接続する。配線キットには、電気式床暖房パネルに組み込んだ3線式コード状ヒータの第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる第1のヒータ線と検知線との短絡により検知線に流れる電流が流れ込む抵抗器と、抵抗器が発熱する熱により溶断する温度ヒューズとからなる抵抗器付き温度ヒューズを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルと、床暖房用コントローラと、一方端に電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に床暖房用コントローラに接続する接続端を備えた配線キットと、で構成される電気式床暖房セット、およびそれを用いて施工される電気式床暖房フロアに関する。さらに、そこで用いられる電気式床暖房パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続しながら床下地面に敷き詰め、床暖房用コントローラを介して電気式床暖房パネルに所要の電力を供給するようにした電気式床暖房フロアは知られている(特許文献1等参照)。床暖房用コントローラには、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられ、電気式床暖房フロアの安全性を確保している。
【0003】
また、木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルの複数枚を電気的に接続しながら床下地面に敷き詰めると共に、敷き詰めた電気式床暖房パネルと床暖房用コントローラとの間を、一方端に電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に床暖房用コントローラに接続する接続部を備えた配線キットで接続するようにした電気式床暖房フロアも知られている(特許文献2参照)。このような配線キッドを用いることにより、従来使用していた貼りじまい用ヒーターパネルが不要となり、施工現場での品番の削減、施工時の作業手間の軽減、等の効果がもたらされる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−308202号公報
【特許文献2】特開2005−106301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気式床暖房フロアの安全運転は、通常の使用状態では充分に保証されている。しかし、一般に構造部材は、その構造上からくる寿命を当然に有しており、例えば電気式床暖房パネルの場合、10年程度の長期にわたって継続して使用されると、歩行等による荷重が繰り返し加わることで、内部に組み込んだコード状ヒータにひずみによる応力が繰り返しかかり、その影響で疲労断線が起こる可能性がある。断線すると断線箇所でスパークが発生し、燃焼を起こす恐れがある。
【0006】
本発明は、上記のように製品寿命を超えたときに起こる可能性のある、コード状ヒータの断線に起因する燃焼等の不都合に対して、安全設計を施した電気式床暖房セット、およびそれを用いて施工される電気式床暖房フロア、並びにそこで用いる電気式床暖房パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明による電気式床暖房セットは、木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルと、床暖房用コントローラと、一方端に前記電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に前記床暖房用コントローラに接続する接続端を備えた配線キットと、で構成される電気式床暖房セットであって、前記電気式床暖房パネルに組み込まれるコード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであり、前記配線キットは、前記電気式床暖房パネルに組み込んだ3線式コード状ヒータの前記第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる前記第1のヒータ線と前記検知線との短絡により前記検知線に流れる電流が流れる抵抗器と、前記抵抗器が発熱する熱により溶断する温度ヒューズとからなる抵抗器付き温度ヒューズを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明による電気式床暖房フロアは、上記の電気式床暖房セットを用いて施工された電気式床暖房フロアである。
【0009】
また、本発明による床暖房パネルは、木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルであって、前記コード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであることを特徴とする。
【0010】
本発明において、床暖房用コントローラは従来の電気式床暖房フロアで用いられているコントローラをそのまま用いることができる。
【0011】
本発明による電気式床暖房フロアにおいて、通常の使用状態では、前記配線キットに備えた抵抗器付き温度ヒューズには、床暖房用コントローラによって制御された電流が流れており、温度ヒューズが溶断することなく、正常な運転が継続する。
【0012】
製品寿命を超えた長期の使用等により、電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータに疲労断線等による部分断線等が生じた場合、スパーク等の発生によりその近傍に設定値以上の発熱が生じ、そのまま使用を継続すると発火に至る恐れがある。本発明による電気式床暖房パネルは、発火に至るような危険が生じるのを確実に回避する。
【0013】
すなわち、本発明による電気式床暖房パネルでは、前記した第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなる固有の構成の3線式コード状ヒータを用いており、第1と第2の2本のヒータ線のいずれかの箇所において断線が生じて設定以上の異常発熱が生じた場合、その発熱により、前記第1のヒータ線と検知線とを被覆している第1の被覆樹脂が溶融する。絶縁層として機能していた第1の被覆樹脂が溶融することにより、第1のヒータ線と検知線が短絡状態となる。
【0014】
この短絡により検知線に短絡電流が流れ、短絡電流は前記配線キットに組み込んだ抵抗器付き温度ヒューズの抵抗器に流れ込む。それにより抵抗器は発熱し、その熱によって温度ヒューズが溶断する。温度ヒューズの溶断により、床暖房用コントローラから電気式床暖房パネルへの電力の供給は完全に遮断され、それ以降は、3線式コード状ヒータにおける断線箇所においてスパーク等が発生することはなく、燃焼に至るような事態となるのは確実に阻止される。すなわち、本発明による電気式床暖房フロアでは、事故発生時に、確実に安全サイドに導かれる。
【0015】
本発明による電気式床暖房セットおよび電気式床暖房フロアにおいて、電気式床暖房パネルは1枚であってもよい。しかし、床暖房を行う床面積の広さに応じて、通常は、複数枚の電気式床暖房パネルが用いられる。その場合、本発明の好ましい態様では、前記複数枚の電気式床暖房パネルは、各電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータの2本のヒータ線と1本の検知線のそれぞれがコネクタを介して並列接続された1組以上のグループにグループ化されており、前記配線キットは、前記配線キットは、前記各グループのそれぞれに対応したコネクタと前記抵抗器付き温度ヒューズとを備えるようにされるか、前記各グループのそれぞれに対応したコネクタと1個の前記抵抗器付き温度ヒューズとを備えるようにされる。
【0016】
このように複数枚の電気式床暖房パネルを適宜の数にグループ化することにより、1枚ごとの電気式床暖房パネルに前記した形態の抵抗器付き温度ヒューズを備える場合と比較して、抵抗器付き温度ヒューズの数を減らすことができ、低コストで電気式床暖房フロアを構築することができる。また、各電気式床暖房パネルは並列接続しているので、いずれの電気式床暖房パネルにおける3線式コード状ヒータにおいて断線による異常発熱が生じても、電気式床暖房フロアは確実に安全サイドに導かれる。
【0017】
本発明による各電気式床暖房パネルにおいて、3線式コード状ヒータを構成する第1と第2の2本のヒータ線の一方端は電源側に、直接もしくは必要に応じて通常の温度ヒューズを介して電源側に接続し、他方端は互いに接続する構成である。そのために、3線式コード状ヒータの一方端は開放端であってよく、従来のコード状ヒータのように閉ループとなる回路を作る必要がないので、電気式床暖房パネルへのヒータ線の組み込み作業が容易となる。NC等による配線の自動化も可能となる。さらに、ダイオードも不要となるので、有効ヒータゾーンも大きくなり、電気式床暖房パネル自体の構成も簡素化される。また、3線式コード状ヒータ内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本のヒータ線を電流が往復で流れるので、磁界が打ち消し合うようになり、電気式床暖房パネルからの電磁波の発生もカットされる。
【0018】
本発明による電気式床暖房パネルの全体形状は任意であり、矩形状、長尺状の単位ピースを長手方向に位置をずらしながら雁木状に組み付けた雁木形状、などを例示できる。木質基材の裏面に緩衝材層を貼着した形態であってもよく、この形態の電気式床暖房パネルは、直貼り式の床暖房パネルとして有効に用いられる。
【0019】
本発明による電気式床暖房フロアは、上記した電気式床暖房パネルの複数枚が実質的に並列接続した状態で床下地面に敷き詰められた構成であり、事故発生時には、短絡が生じた電気式床暖房パネルのみを、それ単独で、新しいものと交換することができる。その際に、配線キットに取り付けた抵抗器付き温度ヒューズを新しいものと付け替えることは当然に必要である。また、前記構成の配線キットを用いることから、従来の電気式床暖房フロアで必要であった、貼りじまい用ヒーターパネルが不要となり、施工現場での品番の削減、施工時の作業手間の軽減、等の効果がもたらされる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製品寿命を超えたときにあるいは地震のような異常事態が発生したときに起こる可能性のある、3線式コード状ヒータの断線に起因する燃焼等の不都合に対して、信頼度の高い安全設計を施した電気式床暖房フロアが提供される。また、本発明による電気式床暖房パネルは、3線式コード状ヒータを木質基材へ組み込む作業が容易であると共に、それ自体では高価な抵抗器付き温度ヒューズを備える必要がないので、部品数も少なく、低コストでの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態により説明する。図1(a)は電気式床暖房フロアの全体を示す概略図、図1(b)は配線キットの取り付け状態を説明するための図、図2は電気式床暖房パネルの一例を示す図、図3(a)(b)は電気式床暖房パネルに組み込む3線式コード状ヒータを説明する図であり、図3(c)はそれを電気式床暖房パネルに組み込んだ状態の配線図である。図4と図5は電気式床暖房パネルに配線キットを取り付けたときの2つの態様を示す図、図6は配線キットの3つの態様を示す図である。図7は電気式床暖房フロアにおける発熱回路を説明する図、図8と図9は発熱回路に断線が発生したときの2つの態様を説明する図である。
【0022】
最初に、本発明による電気式床暖房フロアFの全体構成の一例を、その施工手順と共に説明する。この例において、床下地はコンクリートスラブCであり、後に説明する図2に示す電気式床暖房パネルAの複数枚が直貼りされる。なお、図2では電気式床暖房パネルAを雁木形状として示しているが、図1では図示の煩雑さを避けるために単に矩形状に示している。施工に際しては、最初に、壁面に沿ってコード状ヒータを備えない周辺パネルBを貼り、次に、貼り出し用電気式床暖房パネルA1(これは1個のコネクタのみを持つ)を取り付け、以下、必要枚数の電気式床暖房パネルルAを多段に貼り付ける。その両辺には前記した周辺パネルBを貼り付ける。なお、この例で、電気式床暖房パネルAの群は2組にグループ化されており、最下段には、電気式床暖房パネルAa、Abが各グループへの電流取り入れ部として配置してある。
【0023】
前記最下段の2つの電気式床暖房パネルAa、Abに対して、後に説明する本発明による配線キット1の2つのコネクタ2、2がそれぞれ接続され、配線キット1のケーブル3の他端側の接続端4が床暖房用コントローラDに接続される。図1(b)に示すように、配線キット1が配線された領域には、配線キット1のコネクタ2やケーブル3を収容する凹溝6を裏面に形成した第2の周辺パネルB1が貼り付けられる。
【0024】
施工後に、各電気式床暖房パネルAには、外部からの商用電力が床暖房用コントローラDおよび配線キット1を介して供給される。床暖房用コントローラDは、前記特許文献1あるいは2に記載のような従来知られた電気式床暖房フロアで用いられているものであってよく、加熱エリアの特定、通電の開始と停止、定常運転モードでの温度レベル設定、などの機能が備えられる。なお、この配線キット1を用いる施工態様では、従来の電気式床暖房フロアで必要であった、貼りじまい用ヒーターパネルを使用しないので、現場での施工作業が容易となる。
【0025】
次に、電気式床暖房パネルAの一例を図2を参照して説明する。この例において、電気式床暖房パネルAは、図2(a)に緩衝材層を除去した状態の背面図に示すように、長尺状の単位ピース30が長手方向に位置をずらしながら雁木状に組み付けられており、その裏面にはその全面にわたるようにして連続する配線溝32が形成されている。配線溝32の中には、図3に示す3線式コード状ヒータ20が埋め込まれており、3線式コード状ヒータ20の一方端20aは、電源線20bを介して3線式コネクタ34、35に電気的に接続している。3線式コード状ヒータ20の他方端20cには、サーモスタット28(図3(c)参照)が取り付けられる。なお、前記した貼り出し用電気式床暖房パネルA1は一方のコネクタ34を備えない。
【0026】
図2で、36は、各単位ピース30の裏面に配線溝32に交差するようにして形成される遮音溝である。また、電気式床暖房パネルAの裏面には緩衝材層37が貼り付けられており、この例において緩衝材層37は、図2(b)に示すように、不織布層38と樹脂発泡体層39との2層構成とされている。このような緩衝材層37を備えることにより、直貼り床材として用いることができる。
【0027】
次に、3線式コード状ヒータ20を説明する。図3(a)(b)に示すように、3線式コード状ヒータ20は、第1のヒータ線21と、第2のヒータ線22と、銅線のような電気抵抗の小さい線からなる検知線23とからなる3線式ヒータであり、各線は、ヒータ線の異常発熱等で溶融する非導電性材料からなる被覆樹脂24、25、26でそれぞれ被覆されている。図3(b)に示すように3本の線は寄り合わされて一本の線となり、その全体が図3(a)に示すように耐熱PVCのような断熱性のある非導電性材料からなる被覆材27により覆われている。
【0028】
被覆樹脂24、25、26は、ナイロン系樹脂あるいはポリアミド系樹脂のような熱可塑性樹脂である。ただし、第1のヒータ線21を被覆する第1の被覆樹脂24と第2のヒータ線22を被覆する第2の被覆樹脂25には、溶融温度の異なる樹脂が用いられており、限定されるものではないが、この例で、第1の被覆樹脂24の溶融温度はほぼ170℃程度、第2の被覆樹脂25の溶融温度はほぼ220℃程度である。すなわち、第2のヒータ線22は第1の被覆樹脂24の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂25で被覆されている。また、検知線23を覆う被覆樹脂26には、前記した比較して溶融温度の低い第1の被覆樹脂24と同じ樹脂が用いられている。
【0029】
これらの被覆樹脂24、25、26は、電気式床暖房フロアFの通常の運転時ではそのままで存在しており、絶縁材として機能している。しかし、第1のヒータ線21または第2のヒータ線22に断線あるいは部分断線等が生じてスパーク等が発生し、溶融温度を超える異常加熱状態が部分的に発生したときには、溶融して絶縁機能を喪失する。
【0030】
図3(c)に示すように、電気式床暖房パネルAにおいて、第1のヒータ線21、第2のヒータ線22、および検知線23の一方端は、通常の温度ヒューズ28aを介して、前記した3線式コネクタ34、35に並列的に接続し、第1のヒータ線21と第2のヒータ線22の他方端は、サーモスタット28を介して互いに接続している。なお、温度ヒューズ28aとサーモスタット28は省略することもできる。
【0031】
上記した形態の電気式床暖房パネルAの複数枚がコネクタ34、35を介して互いに接続することにより、グループ化された電気式床暖房パネル群AGとされる。電気式床暖房パネル群AGでは、各電気式床暖房パネルAに組み込まれた3線式コード状ヒータ20の2本のヒータ線と21、22と1本の検知線23のそれぞれは並列接続されている。なお、図4に示す電気式床暖房パネル群AGは、3枚の電気式床暖房パネルAで構成されており、上位の電気式床暖房パネルAは、図1でいう貼り出し用電気式床暖房パネルA1に相当し、下段の電気式床暖房パネルAは電気式床暖房パネルAaに相当する。何枚の電気式床暖房パネルで電気式床暖房パネル群AGを構成するかは任意である。
【0032】
電気式床暖房フロアFを施工するに当たっては、図1に基づき説明したように、電気式床暖房パネル群AGが、周辺パネルBと共に、床下地面に貼り付けられ、下段の電気式床暖房パネルAaに対して、図6に示す配線キット1のコネクタ2が接続され、該配線キット1のケーブル3の他端側の接続端4が床暖房用コントローラDに接続される。その後、第2の周辺パネルB1を貼り付けて施工は終了する。なお、接続端4は、ケーブル3の他端側を床暖房用コントローラD側に電気的に接続できれば任意の手段でよく、コネクタを用いる態様、電線同士を直接結線できるように床暖房用コントローラD側に速結端子台を取り付ける態様、さらには両者の電線同士を直接結線する態様などであってよい。後ろの2者の場合には、ケーブル3の端部が接続端4を構成する。
【0033】
図6により、配線キット1を詳細に説明する。図6(a)に示す配線キット1は、VVFケーブルを基本構成とするものであり、電気式床暖房パネルAの3線式コネクタ35に接続するコネクタ2と、ケーブル線3a、3bを備える。一方のケーブル3aは抵抗器付き温度ヒューズ50を介してコネクタ2に接続しており、他方のケーブル3bは直接コネクタ2に接続している。ケーブル線3a、3bの他方端は、床暖房用コントローラDに接続し、そこから電源が供給される。
【0034】
前記抵抗器付き温度ヒューズ50は、コネクタ2、35を介して3線式コード状ヒータ20の前記第2のヒータ線22に接続する温度ヒューズ51と、やはりコネクタ2、35を介して3線式コード状ヒータ20前記検知線23に接続する回路52を備えており、該回路52の他端は、前記温度ヒューズ51に近接して設けられる抵抗器53を介して、前記温度ヒューズ51とコネクタ2との間で前記ケーブル3aに接続している。この抵抗器付き温度ヒューズ50において、電流が抵抗器53に流れて抵抗器53が発熱したときに、その熱により温度ヒューズ51は溶断するように設計されている。この例において、抵抗器53の抵抗は150Ωであり、第1と第2のヒータ線21、22の抵抗値よりも低い。また、温度ヒューズ51は99℃で溶断するようにされている。
【0035】
なお、前記他方のケーブル3bはコネクタ2、35を介して3線式コード状ヒータ20第1のヒータ線21に接続する。
【0036】
図5に示す例では、前記電気式床暖房パネル群AGの3組によって暖房面が形成されており、この場合には、図6(c)に示す3つのコネクタ2および抵抗器付き温度ヒューズ50を備える配線キット1が用いられる。配線キット1の3つのコネクタ2のそれぞれが、各電気式床暖房パネル群AGにおける下段の電気式床暖房パネルAa、Ab、Acのコネクタ35に接続され、該配線キット1のケーブル3の他端側の接続端4が床暖房用コントローラDに接続される。図6(b)に示す配線キット1は、図1に示したように2組の電気式床暖房パネル群AGで床暖房フロアを構築するときに用いられる。
【0037】
上記の床暖房フロアにおいて、各電気式床暖房パネルAが正常に運転している環境では、供給される電力は、高い抵抗値を持つ第1のヒータ線21と第2のヒータ線22とを循環するように流れ、その発熱により床暖房が行われる。正常運転での温度制御等は前記した床暖房用コントローラDにより行われる。正常運転時には前記配線キット1の回路52および3線式コード状ヒータ20の検知線23には電流は流れず、また配線キット1の温度ヒューズ51を流れる電流は、大きな抵抗値を持つヒータ線の抵抗値に依存する小さな値であり、温度ヒューズ51が溶断することはない。
【0038】
図7は、本発明による電気式床暖房フロアFの発熱回路を示す。図7において、Aは電気式床暖房パネル、1は配線キット、Dは床暖房用コントローラである。また、20は電気式床暖房パネルに組み込んだ3線式コード状ヒータ、50は抵抗器付き温度ヒューズを示す。
【0039】
上記の発熱回路において、製品寿命を超えてもなお継続使用していると、使用者が知らないうちに3線式コード状ヒータ20を構成する第1のヒータ線21と第2のヒータ線22のいずれかに部分断線が生じ、接触抵抗が異常に増加してスパーク等による異常加熱が生じる場合がある。図8は、そのような断線が第1のヒータ線21において起こった場合の状態を説明している。第1のヒータ線21のいずれかの箇所Pでスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第1の被覆樹脂24は溶融し、そこに近接する検知線23を被覆する被覆樹脂26も溶融する。
【0040】
双方の被覆樹脂が溶融することにより、図8に領域Qで示すように、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となり、電流は、その短絡箇所から検知線23側に流れる。検知線23に電流が流れることにより、前記のように配線キット1に組み込んだ抵抗器付き温度ヒューズの抵抗器53は発熱し、その熱によって温度ヒューズ51は溶断する。温度ヒューズ51が溶断することより床暖房用コントローラDから3線式コード状ヒータ20への電力供給は完全に遮断されるので、断線箇所Pでのそれ以上の発熱やスパークは起こらない。それにより、各電気式床暖房パネルAの裏面に積層した前記した不織布層38や樹脂発泡体層39からなる緩衝材層37が着火するという事態は確実に回避される。
【0041】
図9は、断線が第2のヒータ線22において起こった場合の状態を説明している。第2のヒータ線22のいずれかの箇所Pでスパーク等による異常加熱が生じたときに、その箇所の第2の被覆樹脂25が昇温する。第2の被覆樹脂25の溶融温度は、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24、26の溶融温度よりも高く設定してあるので、第2の被覆樹脂25が溶融する前に、第1のヒータ線21および検知線23を被覆している第1の被覆樹脂24、26が溶融する。それにより、図8において説明したと同様に、領域Qにおいて、第1のヒータ線21と検知線23とが短絡した状態となる。
【0042】
抵抗器53の抵抗値は第2のヒータ線22の抵抗値より低い値に設定してあるので、第1のヒータ線21と検知線23との短絡により、検知線23側により多くの電流が流れるようになり、配線キット1に組み込んだ抵抗器付き温度ヒューズの抵抗器53は発熱する。それにより、この場合にも、第1のヒータ線21側で断線が起こった場合と同様に、温度ヒューズ51は溶断する。
【0043】
上記したように、本発明による電気式床暖房フロアFでは、異常時での安全性が確保されることに加え、そこで用いる電気式床暖房パネルAの木質基材31の裏面に3線式コード状ヒータ20を埋め込む作業は、閉ループを作る必要がないので、きわめて容易である。場合によっては、NCによる配線も可能となる。さらに、一本の3線式コード状ヒータ20内で、実質的に平行に走る第1と第2の2本のヒータ線21、22を電流が往復で流れることから磁界が打ち消し合うようになり、電気式床暖房パネルAからの電磁波の発生もカットされる。また、配線キット1を用いることにより、従来の電気式床暖房フロアで必要であった、貼りじまい用ヒーターパネルが不要となり、現場での施工作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)は電気式床暖房フロアの全体を示す概略図、図1(b)は配線キットの取り付け状態を説明するための図。
【図2】電気式床暖房パネルの一例を示す図であり、図2(a)は緩衝材層を除去した状態の背面図、図2(b)は断面図。
【図3】図3(a)(b)は電気式床暖房パネルに組み込む3線式コード状ヒータを説明するための図、図3(c)はそれを電気式床暖房パネルに組み込んだ状態の配線図。
【図4】電気式床暖房パネルに配線キットを取り付けたとき状態を説明する図。
【図5】電気式床暖房パネルに配線キットを取り付けたとき他の状態を説明する図。
【図6】図6(a)は一つのコネクタを備えた配線キットを説明するための図、図6(b)、図6(c)は2つおよび3つコネクタを備えた配線キットを説明するための図。
【図7】電気式床暖房フロア全体の発熱回路の一例を説明する図。
【図8】発熱回路に異常発熱が生じたときの第1の態様を説明する図。
【図9】発熱回路に異常発熱が生じたときの第2の態様を説明する図。
【符号の説明】
【0045】
A…電気式床暖房パネル、AG…グループ化された電気式床暖房パネル群、C…コンクリートスラブ(床下地)、D…床暖房用コントローラ、1…配線キット、2…配線キットのコネクタ、3a,3b…配線キットのケーブル、4…配線キットの他端側の接続端、20…3線式コード状ヒータ、20c…3線式コード状ヒータの自由端、21…第1のヒータ線、22…第2のヒータ線、23…検知線、24,26…第1の被覆樹脂、25…第2の被覆樹脂、27…被覆材、30…単位ピース、31…木質基材、32…配線溝、34,35…電気式床暖房パネルのコネクタ、36…遮音溝、37…緩衝材層、50…抵抗器付き温度ヒューズ、51…温度ヒューズ、52…配線キットにおける検知線に接続する回路、53…抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルと、床暖房用コントローラと、一方端に前記電気式床暖房パネル側のコネクタに接続するコネクタをまた他方端に前記床暖房用コントローラに接続する接続端を備えた配線キットと、で構成される電気式床暖房セットであって、
前記電気式床暖房パネルに組み込まれるコード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであり、
前記配線キットは、前記電気式床暖房パネルに組み込んだ3線式コード状ヒータの前記第1の被覆樹脂が溶融することにより生じる前記第1のヒータ線と前記検知線との短絡により前記検知線に流れる電流が流れる抵抗器と、前記抵抗器が発熱する熱により溶断する温度ヒューズとからなる抵抗器付き温度ヒューズを備える、
ことを特徴とする電気式床暖房セット。
【請求項2】
複数枚の前記電気式床暖房パネルを備え、前記複数枚の電気式床暖房パネルは、各電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータの2本のヒータ線と1本の検知線のそれぞれがコネクタを介して並列接続された1組以上のグループにグループ化されており、前記配線キットは、前記グループのそれぞれに対応したコネクタと前記抵抗器付き温度ヒューズを備えることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房セット。
【請求項3】
複数枚の前記電気式床暖房パネルを備え、前記複数枚の電気式床暖房パネルは、各電気式床暖房パネルに組み込まれた3線式コード状ヒータの2本のヒータ線と1本の検知線のそれぞれがコネクタを介して並列接続された1組以上のグループにグループ化されており、前記配線キットは、前記グループのそれぞれに対応したコネクタと1個の前記抵抗器付き温度ヒューズを備えることを特徴とする請求項1に記載の電気式床暖房セット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気式床暖房セットにおいて、各電気式床暖房パネルはその木質基材の裏面に緩衝材層が貼着されていることを特徴とする電気式床暖房セット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電気式床暖房セットを用いて施工された電気式床暖房フロア。
【請求項6】
木質基材の裏面にコード状ヒータを組み込んだ電気式床暖房パネルであって、前記コード状ヒータは、第1と第2の2本のヒータ線と1本の検知線とからなり、前記第1のヒータ線と前記検知線とはそれぞれが第1の被覆樹脂で被覆されており、前記第2のヒータ線は前記第1の被覆樹脂の溶融温度よりも高い溶融温度を持つ第2の被覆樹脂で被覆されている3線式コード状ヒータであることを特徴とする電気式床暖房パネル。
【請求項7】
前記木質基材の裏面に緩衝材層が貼着されていることを特徴とする請求項6に記載の電気式床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−30887(P2009−30887A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195690(P2007−195690)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】