説明

電池パック

【課題】電池パックが電子機器本体と共に海水や淡水に浸かり、端子間が短絡した場合でも、端子金属が短時間で消耗することのない電池パックを提供する。
【解決手段】電池パック1aは、二次電池セル2、電池保護回路3、スイッチ回路4および可変抵抗回路7で構成されている。可変抵抗回路7は、電池パック1aが充電器から分離されると、電圧検出端子15と二次電池セル2との間の抵抗値が高くなる。結果として、電圧検出端子15と充電端子12が短絡した場合でも、可変抵抗回路7がない場合に比べて流れる電流が極めて少なくなるため、端子金属が短時間で消耗することがない。一方、電池パック1aの充電時には、二次電池セル2と電圧検出端子15との間の抵抗値が小さくなるため、FET71での電圧降下が極力抑えられ、結果として、二次電池セル2の電圧を正確に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用電子機器の電源として用いられる電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トランシーバ、携帯電話等の携帯用電子機器は、電源がない場所でも作動できるように、電池パックを装着している(例えば、非特許文献1参照)。そして電池パックには、経済的な側面を考慮して、充放電が可能な二次電池を採用している場合が多い。代表的な二次電池として、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池、リチウムイオン電池などがあげられる。
【0003】
図2の回路図を参照して、非特許文献1に記載された従来の電池パックについて説明する。電池パック1bは、基本的に、二次電池セル2、電池保護回路3およびスイッチ回路4で構成されている。
【0004】
二次電池セル2は、充電時には、プラス側/マイナス側の2つの充電端子11および12を介して充電器(図示せず)に接続される。一方、放電時すなわち電子機器に電力を供給する時には、二次電池セル3は、プラス側/マイナス側の2つの放電端子13および14を介して携帯用電子機器(図示せず)に接続される。
【0005】
上述した充電端子11、12および放電端子13、14とは別に、二次電池セル2の電圧を検出するための電圧検出端子15が設けられている。この電圧検出端子15を充電器の電圧検出回路に接続することにより、充電の際の電圧制御が行われる。
【0006】
なお、電池保護回路3は、何らかの理由で二次電池セル2の端子間が短絡して過大な電流が流れた場合や、二次電池セル2が過充電や過放電された際に、スイッチ回路4により通電を遮断して二次電池を保護するものである。また電池パック1bには、逆流防止用ダイオード5および電圧検出用抵抗器6が設けられている。
【0007】
図3は、図2の回路を内蔵した電池パック1bを背面から見た図、図4は電池パック1bが、携帯用電子機器の一種であるトランシーバ20に装着される状態を示した図である。
【0008】
トランシーバ20は、使用時に海水や淡水などに浸かる可能性があるため、トランシーバ本体21だけでなく、それに装着される電池パック1bも防水構造を採用している。
【0009】
図3に示すように、電池パック1bの表面は、直方体形状をしたケース16で覆われている。電池パック1bの最下部は上部よりも幅が広くなっており、この部分は、電池パック1bがトランシーバ本体21に装着されたときに外部に露出するため、防水構造となっている。また境界部にはリング状のパッキン17が配置されている。そしてケース16の上面には放電端子13および14が露出し、背面の最下部には充電端子11ならびに12、および電圧検出端子15が露出している。
【0010】
図4に示すように、トランシーバ20の本体21の背面側下部には、電池パック収容用の穴22が形成されている。この穴22に電池パック1bの先端を挿入し、矢印で示す方向に移動させることにより、電池パック1bは穴22に収容される。
【0011】
トランシーバ本体21の穴22の上部には、受電用の一対の端子(図示せず)が設けられている。電池パック1bの上面に露出した放電端子13および14を、これらの端子に接触させることにより、トランシーバ20への電力供給が行われる。
【0012】
図4に示すようにパッキン17を穴22の先端に押し当てた状態でネジ23を回転させると、ネジ23の先端に設けられた係止片(図示せず)がトランシーバ本体21の穴に係合し、電池パック1bがトランシーバ20に装着される。穴22の開口部はパッキン17により防水が確保される。
【0013】
トランシーバ20は、電池パック1bを装着したまま充電を行うことができる。具体的には、電池パック1bが装着されたトランシーバ20を充電器に載置し、電池パック1bの充電端子11および12を充電器の一対の充電用端子(図示せず)に接触させ、また電圧検出端子15を充電器の電圧検出用端子に接触させる。この状態で充電が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】アイコム株式会社製トランシーバ(製品番号:IC−M36)サービスマニュアルP2〜P3、P23〜P24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
電池パック1bの複数の端子のうち、ケース16の上部に設けられた放電端子13および14は、パッキン17によって密閉されたトランシーバ本体21の穴22内にあるため、トランシーバ20が海水や淡水に浸かった場合でも短絡することはない。これに対し、ケース16の最下部に設けられた充電端子11、12および電圧検出端子15は、充電器側の端子と接触できるように外部に露出している。従って、トランシーバ20が海水や淡水に浸かった場合、電池パック1bのケース16から露出した電圧検出端子15とマイナス側の充電端子12とが短絡して、二次電池セル2が放電する。
【0016】
このような場合、機械的なスイッチや電子スイッチ回路を用いて二次電池セル2と端子12、15間の接続を遮断すれば、二次電池セル2の放電を防止できるが、回路構成が複雑になり、電池パックのコストアップにつながる。そこで従来の電池パック1bは、このような場合でも、二次電池セル2が短時間に放電することがないように、電圧検出用の抵抗器6として10KΩ程度の高抵抗の抵抗器を用いている(図2参照)。
【0017】
しかし、海水や淡水に漬けた状態が長く続いた場合、水を通して電圧検出端子15と充電端子12との間で電流が流れる結果、端子12および15の金属が電気腐食を起こして消耗し、最悪の場合、端子が消滅して充電ができなくなる。
【0018】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、電池パックが電子機器本体と共に海水や淡水に浸かり、端子間が短絡した場合でも、端子金属が短時間で消耗することのない電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明にかかる電池パックは、少なくとも1個の二次電池を含んだ二次電池セルを内蔵し、充電器と接続されるプラス側/マイナス側の一対の充電端子ならびに電圧検出端子、および電子機器に接続されるプラス側/マイナス側の一対の放電端子を備えた電池パックであって、
前記電圧検出端子と前記二次電池セルとの間に可変抵抗回路が接続され、
かつ前記可変抵抗回路は、前記一対の充電端子および前記電圧検出端子が前記充電器に接続されて充電が行われるときに抵抗値が低くなり、前記一対の充電端子および前記電圧検出端子が前記充電器から分離されたときに抵抗値が高くなるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
ここで、前記可変抵抗回路は、
前記二次電池セルと前記電圧検出端子との間に接続されたFET(Field Effect Transistor)と、
前記FETと並列に接続された抵抗器と、
入力側が前記プラス側の充電端子に接続され、出力側が前記FETのゲートに接続され、接地側が前記マイナス側の充電端子に接続されたトランジスタと、で構成されることが好ましい。
【0021】
また前記FETとしてオン状態の内部抵抗が10Ω以下のFETを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、電圧検出端子と二次電池セルとの間に簡単な構成の可変抵抗回路を配置したものであり、電圧検出端子と充電端子との間で短絡が生じた場合でも、流れる電流は極めて少なく、従って、端子金属が短時間で消耗することがない。
【0023】
また本発明の可変抵抗回路は、従来の電池パックの回路基板の配線パターンを若干変更する程度で実現できるため、電池パックのコストアップを抑えられる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態にかかる電池パックの回路図である。
【図2】従来の電池パックの回路図である。
【図3】従来の電池パックを背面側から見た図である。
【図4】電池パックをトランシーバに装着する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態にかかる電池パックについて、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1に本実施の形態にかかる電池パック1aの回路構成を示す。電池パック1aは、二次電池セル2、電池保護回路3、スイッチ回路4および可変抵抗回路7で構成されている。
【0027】
すなわち電池パック1aは、図1に示した従来の電池パック1bの二次電池セル2と電圧検出端子15との間に可変抵抗回路7を接続したものである。図中、図2と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。
【0028】
二次電池セル2は、リチウムイオン電池などの二次電池を少なくとも1個含み、通常は、複数個の二次電池が直列および/もしくは並列に接続されて構成されている(図では、リチウムイオン電池が2個直列に接続された例を示す)。
【0029】
電池保護回路3は、二次電池セル2の放電端子13および14が、何らかの理由で短絡して過大な電流が流れた場合や、二次電池セル2が過充電や過放電された際に、スイッチ回路4により通電を遮断して二次電池を保護するものである。
【0030】
二次電池セル2は、プラス側/マイナス側の2つの充電端子11および12を介して充電器に接続され、充電が行われる。また二次電池セル2は、プラス側/マイナス側の2つの放電端子13および14を介して携帯用電子機器に接続され、携帯用電子機器に必要な電力が供給される。
【0031】
電圧検出端子15は二次電池セル2の電圧を検出するための端子であり、この端子15を充電器の電圧検出回路に接続することにより、充電の際の電圧制御が行われる。二次電池セル2の電圧を検出する専用の端子15を設けたのは、ダイオード5による電圧降下の影響を受けることなく、二次電池セル2の電圧を精度よく検出するためである。
【0032】
ダイオード5は、二次電池セル2からの電流が充電端子11を介して逆流するのを防止するために用いられる。また抵抗器6は、二次電池セル2の端子間電圧を正確に測定するために用いられ、充電器内に設けられた抵抗器と共に電圧を分割する形態、もしくは単独で用いられる。抵抗器6は、電圧検出端子15と充電端子12との間で短絡が生じた際に、電流を流れにくくする機能を併せて発揮する。
【0033】
次に、可変抵抗回路7の構成と動作について説明する。可変抵抗回路7は、基本的に、FET71、抵抗器72およびトランジスタ73で構成されている。
【0034】
FET71は、二次電池セル2のプラス側と抵抗器6との間に接続されている。抵抗器72は、FET71と並列に接続されている。トランジスタ73は、入力側が充電端子11と接続され、出力側がFET71のゲートと接続され、接地側がマイナス側の充電端子12と接続されている。なお、トランジスタ73にはバイアス抵抗が内蔵されている。また、抵抗器74および75は、電圧調整用の抵抗器である。
【0035】
可変抵抗回路7は、充電端子11、12および電圧検出端子15が充電器(図示せず)に接続されて充電が行われるときに抵抗値が低くなり、これらの端子が充電器から分離されたときに抵抗値が高くなるように構成されている。
【0036】
最初に、充電時の可変抵抗回路7の動作を説明する。電池パック1aが充電器に接続され、プラス側の充電端子11に電圧が印加された場合、トランジスタ73に電流が流れ、トランジスタ73の出力側に接続されたFET71のゲートの電流を引き込み、FET71がオン状態となる。
【0037】
このとき、二次電池セル2からの電流は、低抵抗のFET71を経由して電圧検出端子15に流れる。後述するように、FET71における電圧降下は、抵抗器6における電圧降下に比べて桁違いに小さいため、二次電池セル2の電圧を検出する際にほとんど影響しない。
【0038】
次に、充電器が電池パック1aから分離されて、充電端子11に電圧が印加されない場合の動作を説明する。トランジスタ73に電流が流れないためにFET71のゲートの電流を引き込まず、FET71がオフ状態となる。従って、電池パック1aが海水や淡水に漬かって電圧検出端子15と充電端子12とが短絡した場合、二次電池セル2からの電流は高抵抗の抵抗器72および抵抗器6を経由して電圧検出端子15に流れる。結果として、電圧検出端子15と充電端子12との間に流れる電流が少なくなり、端子金属が腐食によって短時間に消耗するのを防止できる。
【0039】
本実施の形態では、FET71としてオン状態の内部抵抗が10Ω以下のFETを用い、また抵抗器72の抵抗値を470KΩ、抵抗器6の抵抗値を10KΩ、抵抗器74および75の抵抗値を47KΩとした。
【0040】
電池パック1aへの充電時において、二次電池セル2の電圧は、電圧検出端子15と充電端子12との間の電圧として検出される。FET71としてオン状態の内部抵抗が10Ω以下のものを用いた場合、FET71のオン状態における抵抗値は、抵抗器6の抵抗値10KΩに比べて3桁以上小さい。従って、二次電池セル2の電圧を測定する際に、FET71で生じる電圧降下をほとんど無視できるため、正確な電圧測定が可能となる。
【0041】
一方、電池パック1aが充電器から分離された状態では、FET71はオフ状態であるため、二次電池セル2からの電流は抵抗器72および抵抗器6を介して電圧検出端子15に流れる。このとき二次電池セル2と電圧検出端子15との間の抵抗値は480KΩとなる。これに対し、可変抵抗回路7がない従来の電池パック1bの場合、二次電池セル2と電圧検出端子15との間の抵抗値は10KΩである。
【0042】
すなわち、可変抵抗回路7を設けることによって、二次電池セル2と電圧検出端子15との間の抵抗値が48倍となる。結果として、電圧検出素子15と充電端子12との間が短絡した場合に流れる電流は、従来の電池パック1bに比べて50分の1程度に低減される。
【0043】
なお、可変抵抗回路7において、トランジスタ73を省略して充電端子11を直接FET71のゲートに接続した場合、ダイオード5からの漏れ電流が大きいとFET71がオンして誤動作する恐れがある。従って、ダイオード5として、漏れ電流の小さい素子を用いる必要がある。またこの場合、FET71にはNchタイプのものを用いなければならない。
【0044】
これに対し、充電端子11の電流を、トランジスタ73を介してFET71に導くことにより、充電端子11に電圧が印加されない場合であっても、ダイオード5からの漏れ電流によりFET71がオンするのを防止できる。
【0045】
なお、抵抗器72の抵抗値は抵抗器6の抵抗値に比較し、10倍〜100倍に設定することが好ましい。抵抗器6の抵抗値が大きい程、短絡の際に流れる電流は小さくなるが、逆に充電時の電圧検出用として用いた場合のオン抵抗が大きくなる。
【0046】
上述したように可変抵抗回路7は、電池パック1aが充電器から分離されると、電圧検出端子15と二次電池セル2との間の抵抗値が高くなる。結果として、電圧検出端子15と充電端子12が短絡した場合でも、可変抵抗回路7がない場合に比べて流れる電流値が極めて小さくなるため、端子金属が短時間で消耗することがない。
【0047】
一方、電池パック1aの充電時には、二次電池セル2と電圧検出端子15との間の抵抗値が小さくなるため、FET71での電圧降下が極力抑えられて、二次電池セル2の電圧を正確に検出できる。
【0048】
また可変抵抗回路7は少ない部品で構成され、従来の電池パック1bの回路基板の配線パターンを若干変更する程度で実現できるため、電池パック1aのコストアップを最小限に抑えられる。
【0049】
なお、本実施の形態では、可変抵抗回路7を1つのFETと1つのトランジスタを用いて構成したが、これに限定されない。同様の機能を発揮できれば、他の半導体素子を用いて、もしくは複数個のFETとトランジスタを組み合わせて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明にかかる電池パックは、海水や淡水に浸かる可能性のある携帯用電子機器の電源として好適であり、更には室外に設置される電子機器の電源としても利用できるものである。
【符号の説明】
【0051】
1a 電池パック
2 二次電池セル
3 電池保護回路
4 スイッチ回路
5 ダイオード
6、72、74、75 抵抗器
7 可変抵抗回路
11、12 充電端子
13、14 放電端子
15 電圧検出端子
16 ケース
17 パッキン
20 トランシーバ
21 トランシーバ本体
22 電池パック収容穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の二次電池を含んだ二次電池セルを内蔵し、充電器と接続されるプラス側/マイナス側の一対の充電端子ならびに電圧検出端子、および電子機器に接続されるプラス側/マイナス側の一対の放電端子を備えた電池パックであって、
前記電圧検出端子と前記二次電池セルとの間に可変抵抗回路が接続され、
かつ前記可変抵抗回路は、前記一対の充電端子および前記電圧検出端子が前記充電器に接続されて充電が行われるときに抵抗値が低くなり、前記一対の充電端子および前記電圧検出端子が前記充電器から分離されたときに抵抗値が高くなるように構成されている、ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記可変抵抗回路は、
前記二次電池セルと前記電圧検出端子との間に接続されたFETと、
前記FETと並列に接続された抵抗器と、
入力側が前記プラス側の充電端子に接続され、出力側が前記FETのゲートに接続され、接地側が前記マイナス側の充電端子に接続されたトランジスタと、で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記FETとしてオン状態の内部抵抗が10Ω以下のFETを用いることを特徴とする、請求項1または2に記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−103706(P2011−103706A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256622(P2009−256622)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】