説明

電池パック

【課題】電池端子の位置精度を向上させるための複雑な加工や追加部品を加えることなく、電池端子を出来る限り機器側に近づけることができる電池パックを提供する。
【解決手段】本発明の電池パックは、扁平で略直方体形状の電池セルと、回路基板に電子部品を実装して構成した保護回路部と、電池セルの主面部が臨む位置が開放され、主面部に直交する4つの側面部を取り囲むフレーム部と、電池セルと保護回路部とフレーム部とを一体的に被覆するラベルとを備えてなる電池パックであって、フレーム部の1辺に、電池セルを押圧する保持構造体が存在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック、特に、電池パックの電池端子の位置精度を向上させる電池パックフレームを有した電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電池パックでは、図5に示すように、電池端子16は保護回路基板15上にあり、保護回路基板15は、図6に示すようにフレームにある保護回路基板固定用のツメ21により固定されている。この保護回路基板15を固定する部分には、ツメ21自身と保護回路基板15の寸法バラツキ及び保護回路基板15のはめ込み性を考慮し、一定のクリアランスを必要としている。
【0003】
また、電池パックは、図3に示すように、電池セル11に絶縁紙12を貼り付けた上で、保護回路基板15、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ13、及び、接続用タブ14を電気溶接などの方法で加工、組立てた電池組立て品10をフレームで囲い、それらをラベル40で覆うように巻きつけている(図4参照)。この電池組立て品10の寸法バラツキを考慮して、フレーム2a、フレーム2bの内側寸法も一定のクリアランスを必要としている(図2参照)。
【0004】
これらのクリアランスは、低減可能であるが、ゼロには出来ないため、これらのクリアランス分、電池パックの電池端子位置は自由度を持つことになり、電池パックを装着する機器側の端子で、この自由度分を考慮した設計をする必要が生じていた。
【0005】
電池パックを取り付ける機器側の電池端子は、電池パック側の電池端子の自由度範囲に対応できるよう十分な寸法で設計されていた。しかしながら、機器の小型化が進むにつれて、電池端子の設計上、この自由度を許容していると機器の小型化に限界が生じてくる。そこで、機器の小型化の課題として、電池端子の位置精度を向上させ、出来る限り、機器と電池パックの電池端子を接近させる必要があった。
【0006】
このような課題を解決する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1記載の電池パックは、電池セルを取り囲むフレームがあり、そのフレーム自体が二重構造になっており、その内側に電池端子を備えた保護回路基板を収納できる基板収納部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−250204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この特許文献1に記載された技術は、電池パックの電池端子位置が電池端子を備えた保護回路基板を収納したフレームによって決定されるので、電池パックの電池端子位置の自由度を限定し、位置精度を向上させることができる。しかしながら、特許文献1の電池パックのフレームは、保護回路基板を収納するための二重構造を有しているため、フレーム自体に高精度な加工を施す必要がある。また、フレームの各部の寸法は、対応する電池セルの大きさにフィットするようにしなければならない。そのため、フレームの製造においては、複雑な加工のための多大な工数を要することや追加部品によって高コストになるという課題が生じる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上述した課題である電池端子の位置精度を向上させるための複雑な加工や追加部品を加えることなく、電池端子を出来る限り機器側に近づけることができる電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電池パックは、扁平で略直方体形状の電池セルと、回路基板に電子部品を実装して構成した保護回路部と、電池セルの主面部が臨む位置が開放され、主面部に直交する4つの側面部を取り囲むフレーム部と、電池セルと保護回路部とフレーム部とを一体的に被覆するラベルとを備えてなる電池パックであって、フレーム部の1辺に、電池セルを押圧する保持構造体が存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、電池端子の位置精度を向上させ、出来る限り、機器と電池パックの電池端子を接近させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電池パックの構成図である。
【図2】従来の電池パックの構成図である。
【図3】電池組立て品の外観図である。
【図4】ラベルによる被覆のプロセス図である。
【図5】保護回路部の外観図である。
【図6】フレーム(P)における保護回路基板の固定配置図及びその拡大図である。
【図7】フレーム(C)の形状図である。
【図8】本発明の一実施形態(その1)を示す電池パックの構成図である。
【図9】フレーム(P)の形状図である。
【図10】フレーム(C)の他の形状図である。
【図11】本発明の一実施形態(その2)を示す電池パックの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電池パックの構成を図1に示す。図1は、電池パックの電池端子位置が、最もフレームの外側面に近くなるように、電池端子位置を固定できるフレーム構造を示している。このフレーム構造によって、電池パック内の電池組立て品及びフレーム寸法など、使用する部品の寸法バラツキがあっても、最もフレームの外側面に近くなるように電池端子位置を固定できる。
【0014】
詳細に説明すると、本発明の電池パックを構成するフレームは、端子用の窓22が存在する保護回路基板15側フレームのフレーム(P)2a(図9参照)とそれに対向する側のフレーム(C)2b(図7参照)の2部品からなる。
【0015】
更に、保護回路基板15について説明すると、電池セル11の過充電または過放電などを防止するための保護回路と、外部への電力供給などを行うための電池端子16が設けられている。上述の端子用の窓22は、この電池端子16を露出させるためのものである。また、保護回路基板15の一端側には、PTCサーミスタ13が設けられている。PTCサーミスタ13は、電池セル11の温度が異常上昇したような場合に感応して高抵抗となることにより、回路を遮断するものである。
【0016】
一方、フレーム(C)2bには、バネ性を持たせるための傾斜部分と電池組立て品10を押す先端部からなる保持構造体1がある(図8参照)。
【0017】
上述の構造は、フレーム(P)2a、フレーム(C)2bに囲まれた内部空間と電池組立て品10との寸法クリアランスが最大の時でも、確実に電池組立て品10を保護回路基板15側のフレーム(P)2aの内側に押し付けられ、かつ寸法クリアランスが最小の時でも、フレーム(C)2bの外側にはみ出ることが無い形状・寸法で構成する。
【0018】
電池組立て品10をこのフレーム(P)2aとフレーム(C)2bで囲むように組み込むと、電池組立て品10は、フレーム(C)2bの保持構造体1により押圧されるので、電池組立て品10を構成する保護回路基板15に設けられている電池端子16が最もフレーム(P)2a側の位置となる。この状態を保持したまま、フレーム(P)2aとフレーム(C)2bを含めて全体をラベル40で覆い、電池パック30を構成する。
【0019】
本発明の第1の効果は、フレーム(P)2aの基板固定ツメ21にクリアランスがあっても、電池端子16の位置が最もフレーム(P)2aの外側面に近くなる状態を保持できる。
【0020】
本発明の第2の効果は、フレーム(C)2bに保持構造体1を設けるため、新たな部品追加をしなくても、電池端子16の位置が最もフレーム(P)2aの外側面に近くなる状態を保持できる。
【0021】
本発明の第3の効果は、電池端子16をフレーム(P)2aに押し当てるため、電池端子16の位置は、フレーム(P)2aの肉厚のみとなり、位置精度が向上する。すなわち、図6において説明すれば、クリアランスが限りなくゼロになり、端子凹寸法がフレーム(P)2aの肉厚のみとなる状態である。
【0022】
上述の実施形態において、保持構造体は、電池組立て品・フレームなどの寸法を考慮して確実に電池組立て品を押し付けられれば、形状、個数、向きなどは、任意に構成することが可能であり、本発明と同様の効果が期待できる。例えば、図10に示すフレーム(C)2bは、バネ性を持たせるための傾斜部分が互いに反対方向を向いている実施形態である。
【0023】
更に、フレームの個数・形状は、任意であり、1個や3個以上、桶や枠のような形など、どのような形であっても、電池組立て品・フレームなどの寸法を考慮して確実に電池組立て品を押し付けられれば、同様な効果が期待できる。例えば、図11に示すフレーム3は、一体構造のフレームの実施形態である。
【0024】
また、確実に電池組立て品を押し付けられれば、図6で示したようなフレームの基板固定ツメを構成しなくても、同様の効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の電池パックは、電池を駆動源にする電子機器などにおいて、更なる小型化を実現するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 保持構造体
2a フレーム(P)
2b フレーム(C)
3 フレーム
10 電池組立て品
11 電池セル
12 絶縁紙
13 PTCサーミスタ
14 接続用タブ
15 保護回路基板
16 電池端子
17 保護回路部品搭載部
21 ツメ
22 端子用の窓
30 電池パック
40 ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平で略直方体形状の電池セルと、
回路基板に電子部品を実装して構成した保護回路部と、
前記電池セルの主面部が臨む位置が開放され、前記主面部に直交する4つの側面部を取り囲むフレーム部と、
前記電池セルと前記保護回路部と前記フレーム部とを一体的に被覆するラベルと、
を備えてなる電池パックであって
前記フレーム部の1辺に、前記電池セルを押圧する保持構造体が存在すること
を特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1記載の電池パックであって、
前記保持構造体は、前記フレーム部を加工して形成されること
を特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1または2記載の電池パックであって、
前記保護回路部は、前記電池セルの4つの側面部のうちの1つの側面部に取り付けられていること
を特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項3記載の電池パックであって、
前記保持構造体は、前記保護回路部が接する前記フレーム部の1辺と対向する位置に存在すること
を特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池パックであって、
前記保護回路部の回路基板は、電池端子を有すること
を特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−9038(P2011−9038A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150739(P2009−150739)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】