説明

電源装置及びその寿命診断方法

【課題】専用の付帯回路を用いた常時の寿命診断を行うことなく、システムの定期的な点検時等に所望の点検が可能であり、且つ木目細かな部品レベルの診断と、部品毎にメンテンナンスが可能となる電源装置を提供する。
【解決手段】交流電圧を入力とし、同入力電圧を平滑するための平滑コンデンサを有する電源装置において、前記平滑コンデンサの両端に電源投入時に発生する前記平滑コンデンサへの突入電流を外部から測定するための一対のモニタ端子を設けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重電プラント監視制御装置等の高信頼性が要求されるシステムに用いられる電源装置及びその寿命診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高信頼性を要求される重電プラントの監視制御システムにおいては、そのキーパーツとなる電源装置の寿命はシステムの信頼性に大きく影響する。一方、この電源装置の寿命は、装置内部に有する入力電圧平滑用の電解コンデンサの寿命に大きく影響されるものである。これらの事実から、これまで上記平滑コンデンサの寿命を推定するための方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、電解コンデンサのリップル電流の測定を行うことによりこれを行うもの(特許文献1を参照)あるいは、電源装置内部の温度の測定によりこれを行うもの(特許文献2を参照)等がある。しかし、このような従来の方式は、いずれも、測定のための専用ハードウェアが必要となり電源装置の回路規模が増大する課題を有していた。例えば、重電プラント監視制御装置等の高信頼性が要求されるシステムにおいては、リップル電流の測定のためには、専用のCPU、ADコンバータ等の付帯回路が常時必要となり、また、リップル電圧の増大を確認した電源装置に対しては、可及的速やかな電源装置一式での予防保全的な交換が発生するため、交換費用が高くつく等、低価格化の支障となっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2002−281735号公報
【特許文献2】特開平9−293539
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、専用の付帯回路を用いた常時の寿命診断を行うことなく、システムの定期的な点検時等に所望の点検が可能であり、且つ木目細かな部品レベルの診断が可能で、しかも各部品毎にメンテンナンスが可能となる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、交流電圧を入力とし、同入力電圧を平滑するための平滑コンデンサを有する電源装置において、前記平滑コンデンサの両端に電源投入時に発生する前記平滑コンデンサへの突入電流を外部から測定するための一対のモニタ端子を設けたことを特徴とするものである。
またこの発明は新規な電源装置の寿命診断方法に関し、上記平滑コンデンサへの突入電流を外部から測定することにより上記平滑コンデンサの寿命診断を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、大容量の平滑コンデンサの容量低下を、電源投入時に発生する突入電流をモニタすることによって判断するために、電源装置内部にCPU、ADコンバータ等の専用回路が不要となり、また、同突入電流の測定にあたっては、電源回路内部の電圧をオシロスコープ等で直接モニタできるので、電流プローブ等の特殊な計測器を使用する必要がなく簡単且つ安価な方式で電源装置の寿命診断が可能となる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるスイッチング電源装置の概略構成回路図である。図1において、1は一対のAC入力端子に接続され、スイッチング電源装置への交流入力をオン・オフする電源スイッチ、2は上記AC入力に含まれるノイズを除去するノイズフィルタ、3はノイズが除去された交流を整流する整流回路で通常、半導体素子からなる全波整流回路により構成される。4は電解コンデンサからなる平滑用コンデンサであり電源装置の寿命に大きく影響を与える素子である。
【0009】
5は半導体スイッチング素子からなるスイッチング回路、6は上記平滑化された電圧を所定の電圧に変換する絶縁・変圧用トランス、7は半導体スイッチング素子及びコンデンサ等からなりDC出力端子に整流出力を供給するDC出力回路、8は上記スイッチング回路5及びDC出力回路7のスイッチング素子を導通制御する制御回路である。以上の構成はいわゆるスイッチング電源装置として公知のものである。
【0010】
9は上記平滑コンデンサの両端の電圧を外部にモニタするためのモニタ回路であり、例えば外線短絡時に内部回路を保護するために高抵抗、あるいはフィルタ回路を含んでいる。10は外部からモニタ用の測定器を接続するためのモニタ端子である。モニタ端子10はオシロスコープ等の標準的な測定器を接続することにより、上記平滑コンデンサへの突入電流をモニタできる。なお、上記モニタ回路9はオシロスコープ等の標準的な測定器内に外線短絡時に内部回路を保護する手段が装備されている場合はこれを省略することができる。
【0011】
次に、このスイッチング電源装置の動作を説明する。今、電源スイッチ1を押下すると、平滑コンデンサ4には、ほぼI=2πfCVで決まる突入電流Iが流れる。ここに、fは入力電圧の周波数、Cは一次側平滑コンデンサの容量、Vは入力平滑コンデンサの両端の電圧である。このため、平滑コンデンサ4の両端の電圧を、モニタ回路9を通して、モニタ端子10にオシロスコープ等の標準的な測定器を接続することによりモニタすれば、突入電流Iの測定が可能となる。本測定を、例えば製品出荷時、電源装置の定期点検時等に行い、これらをデータ比較することで、簡単に入力平滑コンデンサ4の容量低下が推定可能となる。
【0012】
図5は平滑コンデンサ4の突入電流I波形の一例を示しており、その大きさ、波形はコンデンサのタイプあるいは容量によって若干異なることは言うまでもない。今、製品出荷時のある平滑コンデンサ4の突入電流Iが、図5に示すi1であったとして、電源装置の定期点検時のモニタ結果i2が例えばその80%まで低下したことが判明した場合には寿命が劣化したものとしてその交換を行うこととする。
【0013】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、平滑後の電圧を外部からモニタできる端子を設け、電源投入時に発生する平滑コンデンサ4の突入電流Iをモニタ端子10にオシロスコープ等の標準的な測定器を接続するだけで簡単に測定できるようにしたので、この突入電流Iはコンデンサの静電容量Cの値に比例することから、平滑コンデンサ4の容量抜けを電流プローブ等の特殊測定器を用いることなく即座に判定することができるものである。なお、このモニタ端子10はチェック端子等により構成することができる。
【0014】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2になるスイッチング電源装置の概略構成回路であり、平滑用コンデンサが複数個から構成される場合を示している。この場合平滑用コンデンサ4−1から4−nまで任意の必要数nを並列接続し、それぞれの平滑用コンデンサ4−1〜4−nに対してスイッチS1〜Snを直列接続されている。上記以外の構成は図1の実施の形態1と同一である。このスイッチS1〜Snは突入電流の測定対象となる平滑用コンデンサ(4−1〜4−n)に応じて、選択的に開閉することにより、各平滑用コンデンサ4−1から4−n毎に突入電流の測定が可能となり、コンデンサ毎の容量抜けが推定可能となる。
【0015】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3になるスイッチング電源装置の概略構成回路であり、実施の形態2において、必要な平滑コンデンサ(4−1〜4−n)に対して4−(n+1)のコンデンサを追加することで冗長化を図ったものである。例えば平滑コンデンサ4−1に容量抜けが確認されても冗長化コンデンサ4−(n+1)を使用することにより、緊急のコンデンサ交換が不要な電源装置が得られるものである。これは重電プラント監視制御装置等高信頼性が要求されるシステムに用いられる電源装置において、特に有用性をもつものである。
【0016】
実施の形態4.
更に、図4はこの発明の実施の形態4になるスイッチング電源装置の概略構成回路であり、図3の冗長化コンデンサ4−(n+1)を例えばタンタルコンデンサ等比較的小容量で且つ寿命レスであるコンデンサを容量補償用コンデンサとして搭載したものである。実施の形態4においては、回路としてクリティカルとなる容量低下分を、予め設計段階にて計画しておくことで、冗長化のためのスイッチSn+1を不要とし、且つ平滑機能を実現する大容量コンデンサに容量低下が確認されても、緊急のコンデンサ交換が不要な電源装置を得るものである。
【0017】
実施の形態5.
図6は、平滑コンデンサ4をモジュール化し、容量抜けが判定されたコンデンサの簡単・速やかな取替えを可能としたものである。図中、4−1、4−2は上述した複数個の電解コンデンサの一部本体であり、11−1、11−2はそのコンデンサ単体の取付板で、それぞれ取付孔12を介してネジ13−1、13−2、取付台14により電源装置本体基板15に締付け固定されている。
【0018】
いま電解コンデンサ4−1の容量抜けが判定された場合、ネジ13−1を緩めることにより簡単に、これを取り外すことができ、速やかに新品と交換することができる。以上のように本モジュール化コンデンサを、例えばネジ等を用いて電源装置本体基板15に容易な着脱が可能となる構造としておくことにより、容量低下が確認されたコンデンサのみを容易に交換可能とすることができる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1における電源装置の寿命診断装置の構成を示す概略回路構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2における電源装置の寿命診断装置の構成を示す概略回路構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3における電源装置の寿命診断装置の構成を示す概略回路構成図である。
【図4】この発明の実施の形態4における電源装置の寿命診断装置の構成を示す概略回路構成図である。
【図5】この発明の測定対象であるコンデンサへの突入電流の一例を示す波形図である。
【図6】この発明の実施の形態5におけるモジュール化コンデンサの取付例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 電源スイッチ、 2 ノイズ除去回路、 3 整流回路、
4 平滑コンデンサ、 5 スイッチング回路、
6 絶縁・変圧トランス、7 DC出力回路、8 制御回路、
9 モニタ回路、10 モニタ端子、
11 取付板、 12 取付孔、
13 ネジ、 14 取付台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を入力とし、同入力電圧を平滑するための平滑コンデンサを有する電源装置において、前記平滑コンデンサの両端に電源投入時に発生する前記平滑コンデンサへの突入電流を外部から測定するための一対のモニタ端子を設けたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記平滑コンデンサは互いに並列接続された複数個のコンデンサからなり、各並列コンデンサに直列に、個別に回路への接続・切断を行うスイッチを設けたことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
互いに並列接続された複数個のコンデンサの他に、(N+1)の冗長化コンデンサを設けたことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記冗長化のためのコンデンサを、回路にとって致命的となるコンデンサの容量低下値を補償する容量としたことを特徴とする請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記平滑コンデンサを、個別にモジュール化し個別の着脱可能としたことを特徴とする請求項1あるいは2に記載の電源装置。
【請求項6】
交流電圧を入力とし、同入力電圧を平滑するための平滑コンデンサを有する電源装置において、上記平滑コンデンサへの突入電流を外部から測定することにより上記平滑コンデンサの寿命診断を行うことを特徴とする電源装置の寿命診断方法。
【請求項7】
電源装置の出荷時の突入電流モニタ結果と、定期点検時の突入電流モニタ結果を比較し、所定レベル以下への低減により寿命を診断することを特徴とする請求項6に記載の電源装置の寿命診断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−86113(P2008−86113A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262441(P2006−262441)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】