説明

電源装置及び電源装置を備える車両

【課題】電池セルの変形などによらず、電池セルの積層体を安定的に保持して位置ずれを防止する。
【解決手段】電源装置は、複数の角形電池セルを積層してなる電池積層体と、この電池積層体を内面に保持する電池フレームと、複数の角形電池セルの積層方向に配置される弾性体とを備える。電池フレームは、側面視L字状に形成された第1フレームと、同じく側面視L字状に形成された第2フレームとで構成されている。電源装置は、第1フレームと第2フレームを組み合わせて構成される空間に電池積層体と弾性体とを収納した状態で、電池積層体を両端面から押圧する姿勢で電池フレームが電池積層体を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ハイブリッド車や電気自動車等の自動車を駆動するモータの電源用、あるいは家庭用、工場用の蓄電用途等に使用される大電流用の電源装置及びこのような電源装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
モータで走行する電気自動車やモータとエンジンの両方で走行するハイブリッド車等の自動車は、複数の電池セルをケースに収納した電源装置を搭載している。この電源装置は、モータで自動車を走行できるように出力を大きくする必要上、多数の電池セルを直列に接続して出力電圧を高くしている。例えば、自動車に搭載される電装用のバッテリの電圧は、多くが12Vであるが、走行用のモータを駆動する電源装置の出力電圧は、一般的には200V以上と極めて高電圧である。
【0003】
従来の電源装置では、角形電池セルを積層した組電池を構成している。このような組電池では、図16に示すように、複数の電池セル201及びセパレータ202を積層してなる電池積層体205の両側端面を2枚のエンドプレート203で狭持した状態で、バインドバー204等の連結部材で拘束している。とくに、組電池210の上面には、各電池セル201の電極端子が表出するため、これらをバスバーなどで電気接続するために、同一平面上に電池セル201を並べた状態で固定することが望ましい。このため、電池積層体205を同一平面上に揃えた状態でバインドバー204にて締結することで、電池セル201の位置ずれ等を防止していた。とくに、車載用途の電源装置などでは、振動や衝撃に晒されるおそれがあるため、このような外力によって電池セルが位置ずれすることがないよう、強固に締結する必要がある。
【0004】
一方で電池セルの外装缶等の金属部材は熱で変形し、また電池セルは大電流で充放電されると膨張されることがあるため、このような膨張収縮等の変形によって締結状態が緩むことがないよう、バインドバーにはある程度のバネ性が要求される。このような状態で、バインドバーで固定された組電池は、図17に示すように、ベースフレーム220上に、両端のエンドプレート203が固定される。しかしながら、ベースフレーム220と電池セル201の温度ギャップによりエンドプレート203を倒すような機械ストレスが生じたり、電池セル201の拘束力が損なわれる欠点があった。具体的には、図18に示すように、組電池210をベースフレーム220に固定した状態で、ベースフレーム220が熱によって膨張し、その変形量が組電池210の変形量を上回ると、ベースフレーム220に固定されたエンドプレート203の下側が外側に引っ張られる状態となって、2本のバインドバー204の内、下側のバインドバー204の締結が緩む状態となる。また逆に、組電池210の変形量がベースフレーム220の変形量を上回ると、ベースフレーム220に固定されたエンドプレート203は、外側への移動がベースフレーム220で拘束される状態となって、電池セル201の下側では過剰なストレスが生じる状態となってしまう。
【0005】
また、上述の通りバインドバーにはバネ性が要求されるため、温度変化に対して電池セルの保持力を維持できるようにバインドバーのばね定数をむやみに上げることができず、頑丈な組電池にできなかった。したがって、電池セルの積層方向に対して垂直な外力、例えば上下方向の振動等に対して弱くなってしまうという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−200051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点を解決することを目的になされたものである。本発明の主な目的は、電池セルの変形などによらず、電池セルの積層体を安定的に保持して位置ずれを防止可能な電源装置及び電源装置を備える車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電源装置によれば、複数の角形電池セルを積層してなる電池積層体と、この電池積層体を内面に保持する電池フレームと、複数の角形電池セルの積層方向に配置される弾性体とを備える。電池フレームは、側面視L字状に形成された第1フレームと、同じく側面視L字状に形成された第2フレームとで構成されている。電源装置は、第1フレームと第2フレームを組み合わせて構成される空間に電池積層体と弾性体とを収納した状態で、電池積層体を両端面から押圧する姿勢で電池フレームが電池積層体を保持している。
これにより、角形電池セルが熱や充放電で膨張しても、弾性体によって変化量を吸収でき、また製造公差なども吸収できる。さらに、電池フレームが固定されるベースフレーム等の変形や外的ストレスに対しても、弾性体によって対応できる。加えてL字状の第1フレームと第2フレームを組み合わせることで電池フレームを構成するので、製造も容易となる。
【0009】
また、第2の側面に係る電源装置によれば、弾性体は、電池積層体の端面と、該端面と対向する電池フレームの内面との間に配置することができる。これにより、電池積層体は、端面を押圧する弾性体を介して、角形電池セルの積層方向に確実に押圧されて、角形電池セルの膨張等による変化量を確実に吸収できる。
【0010】
また、第3の側面に係る電源装置によれば、第1フレームと第2フレームを、電池積層体の端面に対向する端面プレートと、電池積層体の外周面を保持する連結フレームとを略垂直な姿勢で連結して全体の形状を側面視L字状とし、第1フレームと第2フレームとを互いに反転する姿勢で連結して、電池積層体と弾性体とを収納する空間を内側に設けることができる。これにより、第1フレームと第2フレームの端面プレートを互いに対向させて、電池積層体と弾性体とを両端から押圧しながら、第1フレームと第2フレームの連結フレームを互いに対向させて、電池積層体を安定して保持できる。
【0011】
また、第4の側面に係る電源装置によれば、連結フレームを、一対の縦フレームを横フレームで連結してなる枠形状として、一対の縦フレームの一端に端面プレートを固定すると共に、縦フレームの横断面形状をL字状として、この縦フレームのL字状の内側コーナー部を電池積層体の側面のコーナー部に位置させて電池積層体を保持することができる。これにより、電池積層体の隅部を横断面形状をL字状とする縦フレームの内側コーナー部で保持して、角形電池セルの上下左右へのずれを有効に防止できる。また、電池積層体を構成する角形電池セルが充放電や熱膨張等により積層方向へ変形する状態においては、各々の角形電池セルを縦フレームの内側コーナー部に沿ってスムーズに移動できる。また、対向する端面プレートを連結する縦フレームの横断面形状をL字状とすることで、曲げやねじれに対する強度を高くして電池フレームを強靱にできる。
【0012】
また、第5の側面に係る電源装置によれば、第1フレームと第2フレームとを同一の形状に構成することができる。これにより、電池フレームの製造コストを低減して、安価に多量生産できる。
【0013】
また、第6の側面に係る電源装置によれば、弾性体を板バネとすることができる。板バネである弾性体は、耐熱性に優れると共に、経時的な劣化を有効に防止しながら、長期間にわたって安定して使用できる。
【0014】
また、第7の側面に係る電源装置によれば、電池積層体が、互いに隣接する角形電池セルの間にセパレータを挟んで積層することができる。
【0015】
さらにまた、第8の側面に係る車両によれば、上記いずれかの電源装置を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る電源装置を備える電源装置の斜視図である。
【図2】図1に示す電源装置の上ケースを外した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の組電池を示す斜視図である。
【図4】図3に示す組電池の分解斜視図である。
【図5】図3に示す組電池の横断面図である。
【図6】図3に示す組電池を組み立てる工程を示す斜視図である。
【図7】図4に示す電池フレームの分解斜視図である。
【図8】図3に示す組電池を組み立てる工程を示す概略平面図である。
【図9】図3に示す組電池を組み立てる工程を示す概略側面図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る電源装置の組電池を組み立てる工程を示す斜視図である。
【図11】図10に示す組電池を組み立てる工程を示す平面図である。
【図12】電池フレームの他の一例を示す分解斜視図である。
【図13】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図14】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図15】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【図16】従来の電源装置の組電池を示す分解斜視図である。
【図17】従来の電源装置の組電池が熱膨張により変形する一例を示す概略側面図である。
【図18】従来の電源装置の組電池が熱膨張により変形する他の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及び電源装置を備える車両を例示するものであって、本発明は電源装置及び電源装置を備える車両を以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0018】
図1〜図9に基づいて、実施例1に係る電源装置100として、車載用の電源装置100に適用した例を説明する。これらの図に示す電源装置100は、主として、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車や、モータのみで走行する電気自動車などの電動車両の電源に最適である。ただ、本発明の電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車以外の車両に使用し、また、電動車両以外の大出力が要求される用途にも使用できる。
(電源装置100)
【0019】
電源装置100の外観は、図1の斜視図に示すように、上面を長方形状とする箱形である。この電源装置100は、図1及び図2に示すように、箱形の外装ケース70を二分割して、内部に複数の組電池10を収納している。外装ケース70は、下ケース71と、上ケース72と、これらの下ケース71、上ケース72の両端に連結している端面プレート73とを備えている。上ケース72と下ケース71は、外側に突出する鍔部74を有し、この鍔部74をボルトとナットで固定している。外装ケース70は、鍔部74を外装ケース70の側面に配置している。また、図2に示すように組電池10を長手方向に2つ、横方向に2列、計4個を下ケース71に収納している。各組電池10は、下ケース71に止ネジ等で固定して、外装ケース70内部の定位置に固定している。端面プレート73は、下ケース71と上ケース72の両端に連結されて、外装ケース70の両端を閉塞している。
(組電池10)
【0020】
組電池10は、図3〜図9に示すように、複数の角形電池セル1を積層してなる電池積層体5と、この電池積層体5を内面に保持する電池フレーム3と、電池積層体5の端面と、この端面と対向する電池フレーム3の内面との間に配置される弾性体4とを備えている。図の電池積層体5は、複数の角形電池セル1同士を積層する面に介在させて、角形電池セル1間を絶縁するセパレータ2を備えており、角形電池セル1とセパレータ2とを交互に積層させて電池積層体5としている。さらに、図の電池積層体5は、両端面にもセパレータ2を積層している。
【0021】
なお、組電池は、必ずしも角形電池セルの間にセパレータを介在させる必要はない。例えば角形電池セルの外装缶を絶縁材で成形し、あるいは角形電池セルの外装缶の外周を絶縁シートや絶縁塗料等で被覆する等の方法で、互いに隣接する角形電池セル同士を絶縁することによって、セパレータを不要とできる。さらに、角形電池セルの間にセパレータを介在させない組電池は、角形電池セルの間に冷却風を強制送風して角形電池セルを冷却する空冷式を採用することなく、冷媒等を用いて直接冷却する方式を採用して角形電池セルを冷却できる。
(角形電池セル1)
【0022】
角形電池セル1は、図5に示すように、外形を、幅よりも厚さを薄くした角形とする外装缶で構成され、外装缶を閉塞する封口板に正負の電極端子を設けると共に、電極端子の間に安全弁を設けている。安全弁は、外装缶の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。安全弁の開弁により、外装缶の内圧上昇を停止することができる。この角形電池セル1を構成する素電池は、リチウムイオン電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。とくに、角形電池セル1にリチウムイオン電池を使用すると、パック電池全体の体積や質量に対する充電容量を大きくできる特長がある。
【0023】
図5の角形電池セル1は、所定の厚さを有する四角形で、上面の両端部には正負の電極端子を突出して設けており、上面の中央部には安全弁の開口部を設けている。積層される角形電池セル1は、隣接する正負の電極端子をバスバーで連結して互いに直列に接続している。隣接する角形電池セル1を互いに直列に接続する組電池10は、出力電圧を高くして出力を大きくできる。ただ、組電池は、隣接する角形電池セルを並列に接続することもできる。また角形電池セル1は、金属製の外装缶で製作している。この角形電池セル1は、隣接する角形電池セル1の外装缶のショートを防止するために絶縁材のセパレータ2を挟着している。なお、角形電池セルの外装缶は、プラスチックなどの絶縁材で製作することもできる。この場合、角形電池セルは外装缶を絶縁して積層する必要がないので、セパレータを金属製とすることもできる。
(セパレータ2)
【0024】
セパレータ2は、隣接する角形電池セル1を電気的、熱的に絶縁して積層するスペーサである。このセパレータ2はプラスチック等の絶縁材で製作しており、互いに隣接する角形電池セル1同士の間に配置されて、隣接する角形電池セル1を絶縁している。セパレータ2は、図9に示すように、角形電池セル1を冷却するために、角形電池セル1との間に、空気などの冷却気体を通過させる送風隙間11を設けている。図6のセパレータ2は、角形電池セル1との対向面に、両側縁まで延びる溝12を設けて、角形電池セル1との間に送風隙間11を設けている。図のセパレータ2は、複数の溝12を、互いに平行に所定の間隔で設けている。また、このセパレータ2は、両面に溝12を設けており、互いに隣接する角形電池セル1とセパレータ2との間に送風隙間11を設けている。この構造は、セパレータ2の両側に形成される送風隙間11で、両側の角形電池セル1を効果的に冷却できる特長がある。ただ、セパレータは、片面にのみ溝を設けて、角形電池セルとセパレータとの間に送風隙間を設けることもできる。図の送風隙間11は、電池積層体5の左右に開口するように水平方向に設けている。以上のように、送風隙間11に強制送風される空気は、角形電池セル1の外装缶を直接に効率よく冷却する。この構造は、角形電池セル1の熱暴走を有効に阻止しながら、角形電池セル1を効率よく冷却できる特徴がある。
(電池フレーム3)
【0025】
複数の角形電池セル1とセパレータ2とを交互に積層した電池積層体5は、電池フレーム3に収納されて、積層状態に保持される。図の電池フレーム3は、電池積層体5の両端面に対向して配置される一対の端面プレート6と、互いに対向する端面プレート6を連結してなる一対の連結フレーム7とを備えている。図4の組電池10は、電池フレーム3を、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとで構成している。第1フレーム3Aと第2フレーム3Bは、図7に示すように端面プレート6の一端に連結フレーム7を垂直姿勢で固定して、全体の形状を側面視L字状としている。側面視をL字状とする第1フレーム3Aと第2フレーム3Bは、図4に示すように、一方を反転する姿勢として互いに連結されて、内側に電池積層体5を収納する。
【0026】
この電池フレーム3は、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとを互いに連結する状態で、各々の端面プレート6を電池積層体5の端面に対向させると共に、各々の連結フレーム7を電池積層体5の外周面の両側に位置させて電池積層体5を内面に保持する。図の電池フレーム3は、第1フレーム3Aの連結フレーム7を電池積層体5の下面側に配置すると共に、第2フレーム3Bの連結フレーム7を電池積層体5の上面側に配置する構造としている。この電池フレーム3は、一対の端面プレート6で電池積層体5を両端から挟着状態に保持すると共に、一対の連結フレーム7で電池積層体5を上下から挟着状態で保持する。ただ、電池フレームは、第1フレームの連結フレームを電池積層体の片側(例えば左側面側)に配置すると共に、第2フレームの連結フレームを電池積層体の他の片側(例えば右側面側)に配置して、電池積層体を左右の両側から一対の連結フレームで挟着する状態に保持することもできる。
【0027】
電池フレーム3は、両端に配置される一対の端面プレート6で、複数の角形電池セル1とセパレータ2を積層してなる電池積層体5を積層方向に押圧するが、この一対の端面プレート6を連結する連結フレーム7の縦フレーム7Aには、従来のバインドバーのようなバネ性は要求されない。それは、互いに対向する一対の端面プレート6の間において、電池積層体5の端面と端面プレート6との間に配設される弾性体4を介して電池積層体5の両端面を押圧するからである。したがって、電池フレーム3は、好ましくは剛性に優れた金属板を使用する。これにより、電池フレーム3を強靱にして熱や外力による変形を極減できる。
【0028】
端面プレート6は、図4と図7に示すように、金属板の両端部をコ字状に折曲してなる折曲プレートとしている。この構造の端面プレート6は、折曲部6Aで全体を補強できると共に、この折曲部6Aを、連結フレーム7に連結する連結片に併用できる。図4と図7に示す第1フレーム3Aは、端面プレート6の折曲部6Aを内側(電池積層体5を配置している側)に向ける姿勢として、端面プレート6の下端部に連結フレーム7を固定している。図の第1フレーム3Aは、両側の折曲部6Aの内側面に連結フレーム7を固定している。また、図4と図7に示す第2フレーム3Bは、端面プレート6の折曲部6Aを外側(電池積層体5を配置している側と反対側)に折曲する姿勢として、端面プレート6の上端部に連結フレーム7を固定している。図の第2フレーム3Bは、両側の折曲部6Aの外側面に連結フレーム7を固定している。端面プレート6と連結フレーム7は、溶着等の方法で固定される。
【0029】
連結フレーム7は、図4と図7に示すように、一対の金属バーからなる縦フレーム7Aを金属プレートからなる横フレーム7Bで連結してなる枠形状としている。図の連結フレーム7は、一対の縦フレーム7Aの両端に横フレーム7Bを連結して全体を長方形の枠形状としている。縦フレーム7Aは、図6に示すように、板状の金属バーの横断面形状をL字状に加工して、電池積層体5の側面に沿う垂直部と、電池積層体5の上面または下面に沿う水平部とを設けている。この形状の縦フレーム7Aは強靱な構造として、電池フレーム3全体の曲げやねじれに対する強度を強くできる。さらに、横断面形状をL字状とする縦フレーム7Aは、図6に示すように、L字状の内側コーナー部15を電池積層体5のコーナー部に位置させて、電池積層体5を安定して保持している。図に示す縦フレーム7Aは、電池積層体5の四隅に対向して配置してなる2対の縦フレーム7AのL字状の内側コーナー部15を互いに対向する姿勢として、その内面形状を長方形の四隅に対向する配置としている。この構造の電池フレーム3は、電池積層体5の側面の4辺に沿って縦フレーム7Aの内側コーナー部15を配置するので、電池積層体5を4本の縦フレームの内側に位置決めしながら配置して、角形電池セル1が上下左右に位置ずれするのを確実に防止できる。さらに、電池積層体5を構成する角形電池セル1が充放電や熱膨張等により積層方向へ変形する状態においては、各々の角形電池セル1を縦フレーム7Aの内側コーナー部15に沿ってスムーズに移動できる。
【0030】
さらに、電池フレーム3は、図7の鎖線で示すように、電池積層体5の下面に配置される連結フレーム7の両側の縦フレーム7Aの中間を補強フレーム7Cで連結して補強することもできる。この電池フレーム3は、連結フレーム7をより強靱な構造として、電池積層体5をより安定して保持できる。
【0031】
以上の構造の電池フレーム3は、弾性体4と電池積層体5とを両端側から端面プレート6で狭持するように第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとを連結する。第1フレーム3Aと第2フレーム3Bは、対向する連結孔14に連結具13が挿通されて互いに連結される。この連結具13は、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとを積層している積層部に、それぞれ設けている。図の第1フレーム3Aと第2フレーム3Bは、端面プレート6の折曲部6Aと縦フレーム7Aの垂直部とを互いに積層させており、この積層部を連結具13で固定している。連結具13は、例えば、ボルトとナットとすることができる。ボルトである連結具13は、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bに開口された連結孔14を貫通して挿通され、先端にナット(図示せず)がねじ込まれて互いに固定される。ボルトがねじ込まれるナットは、連結孔の周囲に溶着して固定することもできる。ただ、連結具は、止ネジとすることもできる。連結具を止ネジとする構造は、止ネジがねじ込まれる連結孔を雌ネジ孔としてこの連結孔に止ネジをねじ込んで第1フレームと第2フレームとを固定する。
(弾性体4)
【0032】
弾性体4は、電池積層体5の端面と電池フレーム3の内面である端面プレート6との間に配置されて、電池積層体5を押圧する。弾性体4は、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとを互いに連結する状態で、電池積層体5を両端面から押圧して複数の角形電池セル1を所定の圧力で押圧する。図に示す弾性体4は、板バネ4Aである。板バネ4Aである弾性体4は、弾性金属板を所定の形状に変形して製造される。図に示す板バネ4Aは、弾性金属板を中央部に凸部が形成される波形に湾曲して製造している。板バネ4Aである弾性体4は、その外形を角形電池セル1の外形とほぼ等しい角形として電池積層体5の端面と端面プレート部6との間に確実に配置できる。さらに、図に示す組電池10は、電池積層体5の端面を板バネ4Aで均一に押圧できるように、弾性体4と対向する端面に、当て板8を配置している。この当て板8は、角形電池セル1とほぼ等しい外形としており、電池積層体5の端面に配置されるセパレータ2の外側面に嵌入されて、電池積層体5の端面を平面状にしている。図に示す組電池10は、電池積層体5の片端面にのみ弾性体4を配置しているが、弾性体は、電池積層体の両端面に対向して配置することもできる。このように、電池積層体の両端面に弾性体を配置する構造は、電池積層体を両端からより均一に押圧できる特徴がある。
【0033】
さらに、図10と図11に示す組電池10は、弾性体4をゴム状弾性体4Bとしている。ゴム状弾性体4Aである弾性体4は、角形電池セル1の外形に沿う角形のブロック状として、電池積層体5の端面と端面プレート6との間に確実に配置できる。ただ、ブロック状のゴム状弾性体は、角形電池セルの外形よりも小さな外形とすることもできる。この弾性体は、第1フレームの端面プレート、または、当て板の外側面に接着して定位置にできる。さらに、図に示すブロック状のゴム状弾性体4B、側面を貫通する複数の貫通孔4bを開口して設けている。この弾性体4は、ゴム状弾性体の材質や、側面に設ける貫通孔の数や大きさを変更してその弾性係数を調整できる。弾性体としては、板バネやゴム状弾性体に限らず、弾性を有する部材、例えばコイルバネ等の弾性材を使用することもできる。
【0034】
さらに、組電池は、複数の電池セルを積層方向に押圧する弾性要素があれば電池積層体を構成する複数の角形電池セルを積層方向に押圧できるので、別途、新しい部品(弾性体)を使用することなく、現行の組電池に使用される部品、例えばセパレータ等に弾性要素としての機能を持たせることもできる。図に示す電池積層体は5、複数の角形電池セル1を、絶縁体からなる複数のセパレータ2を介して積層しているが、これらのセパレータを弾性体として機能させることもできる。このようなセパレータとして、例えば、使用する樹脂の材質や形状等を種々に変更することで、複数の角形電池の積層方向に弾性変形できる構造として弾性体に併用できる。さらに、組電池は、このような弾性要素としてのセパレータに加えて、前述の弾性体を併用することもできる。
(電池フレームの変形例)
【0035】
さらに、電池フレーム3は、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bを、図12に示すように、同一の形状とすることもできる。この図に示す第1フレーム3Aは、第2フレーム3Bと同様に、端面プレート6の折曲部6Aを外側(電池積層体5を配置している側と反対側)に向ける姿勢として、端面プレート6の下端部に連結フレーム7を固定している。さらに、図の第1フレーム3Aは、両側の折曲部6Aの外側面に連結フレーム7を固定して、第2フレーム3Bと同一の形状としている。この構造の電池フレーム3は、第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとを同一形状とすることで、効率よく、しかも製造コストを低減しながら製造できる。
【0036】
以上の組電池は、以下のようにして、電池積層体5と弾性体4とを電池フレーム3に収納する。
(1)図6に示すように、第1フレーム3Aを水平な姿勢で配置し、端面プレート6の内面側から順に、弾性体4、当て板8、セパレータ2、角形電池セル1、セパレータ2、角形電池セル3・・・と積層する。所定の数の角形電池セル1を積層した後、端面にセパレータ2を積層し、さらに、このセパレータ2の外側面に当て板8を嵌入する。
(2)端面プレート6の内側に弾性体4と電池積層体5とが配置された第1フレーム3Aに第2フレーム3Bを連結する。このとき、図9に示すように、第2フレーム3Bの端面プレート6で電池積層体5の他方の端面を押圧しながら、また、電池積層体5の上面に第2フレーム3Bの連結フレーム7を配置して、電池積層体5の上面を同一平面状としながら第1フレーム3Aに第2フレーム3Bを配置する。
(3)第1フレーム3Aと第2フレーム3Bとを連結具13で連結する。この状態で、電池積層体5は、一方の端面が弾性体4を介して第1フレーム3Aの端面プレート6で押圧され、他方の端面が第2フレーム3Bの端面プレート6で押圧されて、両端から所定の圧力で押圧される。
【0037】
以上の電源装置は、車載用の電源として利用できる。電源装置を搭載する車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、あるいはモータのみで走行する電気自動車などの電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0038】
図13に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(電気自動車用電源装置)
【0039】
また図14に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(蓄電用電源装置)
【0040】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、載置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力などで充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源などにも利用できる。このような例を図15に示す。この図に示す電源装置100は、複数の電池パック81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。各電池パック81は、複数の電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電池パック81は、電源コントローラ84により制御される。この電源装置100は、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0041】
電源装置100で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100と接続されている。電源装置100の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。図15の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0042】
さらにこの電源装置100は、電池ユニット82の均等化のための均等化モードを備える。電池ユニット82は並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。このため電源コントローラ84に制御される均等化回路86を備えている。均等化回路86によって、複数の電池ユニット82間の電池残存容量のばらつきを抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る電源装置及び電源装置を備える車両は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車などの電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機などのバックアップ電源用などの用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0044】
100…電源装置
1…角形電池セル
2…セパレータ
3…電池フレーム 3A…第1フレーム
3B…第2フレーム
4…弾性体 4A…板バネ
4B…ゴム状弾性体
4b…貫通孔
5…電池積層体
6…端面プレート 6A…折曲部
7…連結フレーム 7A…縦フレーム
7B…横フレーム
7C…補強フレーム
8…当て板
10…組電池
11…送風隙間
12…溝
13…連結具
14…連結孔
15…内側コーナー部
70…外装ケース
71…下ケース
72…上ケース
73…端面プレート
74…鍔部
81…電池パック
82…電池ユニット
84…電源コントローラ
85…並列接続スイッチ
86…均等化回路
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
201…電池セル
202…セパレータ
203…エンドプレート
204…バインドバー
205…電池積層体
210…組電池
220…ベースフレーム
EV、HV…車両
LD…負荷;CP…充電用電源;DS…放電スイッチ;CS…充電スイッチ
OL…出力ライン;HT…ホスト機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形電池セルとを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体を内面に保持する電池フレームと、
複数の前記角形電池セルの積層方向に配置される弾性体と、
を備える電源装置であって、
前記電池フレームは、側面視L字状に形成された第1フレームと、
同じく側面視L字状に形成された第2フレームと、
で構成されており、
前記第1フレームと第2フレームを組み合わせて構成される空間に、前記電池積層体と弾性体とを収納した状態で、前記電池積層体を両端面から押圧する姿勢で、前記電池フレームが該電池積層体を保持してなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記弾性体は、前記電池積層体の端面と、該端面と対向する前記電池フレームの内面との間に配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源装置であって、
前記第1フレームと前記第2フレームが、前記電池積層体の端面に対向する端面プレートと前記電池積層体の外周面を保持する連結フレームとを略垂直な姿勢で連結して全体の形状を側面視L字状としており、
前記第1フレームと前記第2フレームとを互いに反転する姿勢で連結して、前記電池積層体と前記弾性体とを収納する空間を内側に設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源装置であって、
前記連結フレームが一対の縦フレームを横フレームで連結してなる枠形状とすると共に、一対の縦フレームの一端に端面プレートを固定しており、
さらに、前記縦フレームが横断面形状をL字状とすると共に、この縦フレームのL字状の内側コーナー部を前記電池積層体の側面のコーナー部に位置させて前記電池積層体を保持してなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の電源装置であって、
前記第1フレームと前記第2フレームとが同一の形状に構成されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の電源装置であって、
前記弾性体が板バネであることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電源装置であって、
前記電池積層体が、互いに隣接する角形電池セルの間にセパレータを挟んで積層してなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の電源装置を搭載してなる車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−160347(P2012−160347A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19284(P2011−19284)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】