説明

電磁誘導機器

【課題】簡単な構造及び組立て作業性で、高温化を抑制したトランスを得る。
【解決手段】この発明に係るトランスは、ガラスエポキシ樹脂にコイルパターン10を内蔵したコイル基板3と、このコイル基板3に対面して設けられているとともにガラスエポキシ樹脂に放熱パターン11を内蔵した放熱基板6と、この放熱基板6を支持したベース8とを備え、コイルパターン10に流れる電流により発生した熱は、放熱パターン11を通じてベース8に流れるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイルパターンを内蔵したコイル基板を有する電磁誘導機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導機器であるトランスの小型化、薄型化を図るために、コイルパターンを内蔵したコイル基板を構成部品として用いたものがある。
そして、大電流対応可能なトランスは、コイル基板に内蔵したコイルパターンでの電流密度が大きくなり、発熱による損失が大きくなるために、同様なコイルパターンを内蔵した別のコイル基板を重ねて配置し、かつ両コイル基板を並列に接続することでトランスの発熱による損失を低減したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−300734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のトランスでは、発熱による損失を低減するために、両コイル基板を積層し、かつ並列に電気的に接続しなければならず、構造が複雑になるとともに、組立て作業性が面倒であるという問題点があった。
【0005】
この発明は、かかる問題点を解決することを課題とするものであって、簡単な構造及び組立て作業性で、高温化を抑制できる電磁誘導機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電磁誘導機器は、コイルパターンを内蔵したコイル基板と、このコイル基板に対面して設けられているとともに放熱パターンを内蔵した放熱基板と、この放熱基板を支持したベースとを備え、前記コイルパターンに流れる電流により発生した熱は、前記放熱パターンを通じて前記ベースに流れるようになっている。
【発明の効果】
【0007】
この発明による電磁誘導機器によれば、コイルパターンに流れる電流により発生した熱は、コイル基板に対面した放熱基板の放熱パターンを通じてベースに流れるようになっているので、簡単な構造及び組立て作業性で、高温化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1におけるトランスを示す断面図である。
【図2】図1の要部分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態2におけるトランスを示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3におけるトランスを示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4におけるトランスを示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態5におけるトランスを示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態6におけるトランスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の各実施の形態のトランスについて図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるトランスを示す断面図、図2は図1の要部分解斜視図である。
上記トランスは、フェライトで構成されたコア1と、このコア1の支柱2の上部の周りを囲った一次コイルであるコイル基板3と、このコア1の支柱2の下部の周りを囲った二次コイル4と、コイル基板3にシリコンゴムからなる放熱性シート5を介して面接触した放熱基板6と、放熱基板6をねじ7を用いて脚部9で支持、固定したベース8とを備えている。
【0011】
上記コア1は、Iの字形状の第1のコア部14と、支柱2を含むとともに両端部が折曲されたEの字形状の第2のコア部15とを有している。第1のコア部14と第2のコア部15とは、紙面の手前側と奥側とでそれぞれ端面同士が面接触している。
上記コイル基板3は、ガラスエポキシ樹脂に螺旋形状のコイルパターン10が埋設している。
上記二次コイル4は、銅板をリング状にプレス成形して形成されている。
【0012】
上記放熱基板6は、ガラスエポキシ樹脂に平板状の放熱パターン11が多段にわたって埋設している。各放熱パターン11には、中心から径方向の外側に延びたスリット(図示せず)が形成されている。各段の放熱パターン11は、上下方向に延びて形成され内壁面が銅メッキされた複数のスルーホール12で接続されている。
放熱基板6は、矩形形状であり、縁部でねじ止めされた複数のねじ7によりベース8に固定されている。放熱基板6は、コイル基板3との間で絶縁する必要があるために、両者間に放熱性シート5が介在しているが、脚部9との間では絶縁する必要がなく、絶縁性の放熱性シートを介在させる必要性はない。
【0013】
上記構成のトランスでは、コイル基板3のコイルパターン10は、二次コイル4と比較して電流通路断面積が小さく、コイル基板3では二次コイル4と比較して発熱量が大きく、またコア1での磁束の流れで生じる磁気抵抗による発熱量も、二次コイル4での発熱量と同程度である。
従って、コア1の支柱2を中心とした、点線で囲った領域13が発熱源となり、この発熱源で発生した熱は、放熱基板6の各放熱パターン11、スルーホール12、ねじ7及びベース8を通じてトランスの外部に放出されるので、トランスの高温化を抑制して、トランスの熱損失を低減することができる。
即ち、トランスの高温化を抑制するために、両コイル基板を積層し、かつ並列に電気的に接続しなければならずないといった、面倒な組み立て作業をすることなく、コイル基板3に放熱性シート5を介して放熱基板6を面接触させる簡単な構造でトランスの高温化を抑制して、トランスの熱損失を低減することができる。
【0014】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2におけるトランスを示す断面図である。
この実施の形態では、コイル基板3Aは、ガラスエポキシ樹脂にコイルパターン10が埋設しているが、このコイルパターン10は、上面では露出しているが、放熱基板6側の下面では露出していない。
他の構成は、実施の形態1のトランスと同じである。
【0015】
この実施の形態のトランスによれば、実施の形態1のトランスと同様の効果を得ることができるとともに、コイル基板3Aは、放熱基板6側の下面ではコイルパターン10が露出していないので、実施の形態1の放熱性シート5を用いなくてもコイル基板3Aと放熱基板6との間では絶縁性が確保され、従って製造コストが低減され、また組立て工数が削減される。
【0016】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3におけるトランスを示す断面図である。
この実施の形態では、放熱基板6Aは、ガラスエポキシ樹脂に放熱パターン11が埋設しているが、この放熱パターン11は、コイル基板3側の上面では露出してなく、ベース8側の下面では露出している。
他の構成は、実施の形態1のトランスと同じである。
【0017】
この実施の形態のトランスによれば、実施の形態1のトランスと同様の効果を得ることができるとともに、放熱基板6Aは、コイル基板3側の上面では放熱パターン11が露出していないので、実施の形態1の放熱性シート5を用いなくてもコイル基板3と放熱基板6Aとの間では絶縁性が確保され、従って製造コストが低減され、また組立て工数が削減される。
また、実施の形態2のトランスのコイル基板3Aと比較して、コイルパターン10の巻数を減少させる必要がない。
【0018】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4におけるトランスを示す断面図である。
この実施の形態では、放熱基板6の上面には、パット状の第1の電極部20が設けられている。コイル基板3の下面には、パット状の第2の電極部21が第1の電極部20と対向して設けられている。第1の電極部20と第2の電極部21との間には、はんだ22が介在しており、この接合手段であるはんだ22により、放熱基板6にコイル基板3が接合されている。なお、はんだ22は一例であり、はんだ22以外のろう材であってもよい。
他の構成は、実施の形態1のトランスと同じである。
【0019】
この実施の形態のトランスによれば、はんだ22により、放熱基板6にコイル基板3が接合されているので、放熱性シート5は、コイル基板3及び放熱基板6に強固に密接している。従って、コイル基板3と放熱基板6との間の熱抵抗は低減され、コイル基板3で発生した熱は、放熱性シート5を介して放熱基板6に円滑に伝達され、引き続きねじ7及びベース8を通じてトランスの外部に放出されるので、トランスの高温化をより抑制することができる。
【0020】
なお、この実施の形態では、はんだ22、第1の電極部20及び第2の電極部21により、コイルパターン10の電極を構成しており、この電極を通じてコイル基板3への電流が流れているが、接合手段であるはんだ22は、必ずしも第1の電極部20と第2の電極部21との間に介在させる必要性はない。
【0021】
なお、はんだ22により、放熱基板6とコイル基板3とを接合する部位、及び数は適宜設定される。当然に、接合する部位を増加させることで、放熱基板6とコイル基板3とはより強固に結合される。
【0022】
また、実施の形態2及び3のトランスでは、放熱性シート5を用いることなく、コイル基板3と放熱基板6との間の絶縁性が確保されているが、これらのトランスでも、はんだ22を用いてコイル基板3A,3と放熱基板6,6Aとを強固に接合するようにしてもよい。
【0023】
実施の形態5.
図6は、この発明の実施の形態5におけるトランスを示す断面図である。
この実施の形態では、コイル基板3及び放熱基板6には、挿通孔が形成されており、この挿通孔に挿通した接合手段であるリベット30によりコイル基板3及び放熱基板6が接合されている。
他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0024】
この実施の形態のトランスによれば、リベット30により、放熱基板6とコイル基板3とは接合されているので、放熱性シート5は、コイル基板3及び放熱基板6に密接している。従って、コイル基板3と放熱基板6との間の熱抵抗は低減され、コイル基板3で発生した熱は、放熱性シート5を介して放熱基板6に円滑に伝達され、引き続きねじ7及びベース8を通じてトランスの外部に放出されるので、トランスの高温化をより抑制することができる。
【0025】
なお、接合手段であるリベット30は、コイル基板3のコイルパターン10に電流を流すための電極として用いてもよい。
【0026】
また、放熱基板6とコイル基板3とを接合するリベット30の部位、及び数は適宜設定される。当然に、リベット30の本数を増加させることで、放熱基板6とコイル基板3とはより強固に結合される。
【0027】
また、実施の形態2及び3のトランスでは、放熱性シート5を用いることなく、コイル基板3と放熱基板6との間の絶縁性が確保されているが、これらのトランスでも、リベット30を用いてコイル基板3A,3と放熱基板6,6Aとを強固に接合するようにしてもよい。
【0028】
実施の形態6.
図7は、この発明の実施の形態6におけるトランスを示す断面図である。
この実施の形態では、放熱基板6には、ばね孔41が形成されている。このばね孔41には薄板形状のばね部材40が挿通している。このばね部材40は、両端部でそれぞれ内側に波状に折曲している。ばね部材40は、一方の端部がコイル基板3の上面に当接し、他方の端部が放熱基板6の下面に当接して、コイル基板3及び放熱基板6を挟持している。
他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0029】
この実施の形態のトランスによれば、接合手段であるばね部材40により、放熱基板6とコイル基板3とは接合されているので、放熱性シート5は、コイル基板3及び放熱基板6に密接している。従って、コイル基板3と放熱基板6との間の熱抵抗は低減され、コイル基板3で発生した熱は、放熱性シート5を介して放熱基板6に円滑に伝達され、引き続きねじ7及びベース8を通じてトランスの外部に放出されるので、トランスの高温化をより抑制することができる。
【0030】
また、コイル基板3と放熱基板6とは、経年劣化により、厚さが変化する場合があるが、コイル基板3及び放熱基板6を挟持したばね部材40は、弾性力でその変化を吸収するので、長期にわたって放熱基板6とコイル基板3との接合強度が確保され、放熱性シート5を介してコイル基板3と放熱基板6との間の熱伝導性は維持される。
【0031】
なお、放熱基板6とコイル基板3とを接合するばね部材40の部位、及び数は適宜設定される。当然に、ばね部材40の本数を増加させることで、放熱基板6とコイル基板3とはより強固に結合される。
【0032】
また、実施の形態2及び3のトランスでは、放熱性シート5を用いることなく、コイル基板3と放熱基板6との間の絶縁性が確保されているが、これらのトランスでも、ばね部材40を用いてコイル基板3A,3と放熱基板6,6Aとを強固に接合するようにしてもよい。
【0033】
なお、上記各実施の形態では、電磁誘導機器としてトランスについて説明したが、この発明は、コア1、二次コイル4のない、コイル基板からなるコイルだけの電磁誘導機器にも適用することができる。
また、接合手段として、はんだ22、リベット30及びばね部材40を用いた場合について説明したが、勿論これらのものに限定されるものではなく、例えば接着剤であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 コア、2 支柱、3 コイル基板(一次コイル)、4 二次コイル、5 放熱性シート、6 放熱基板、7 ねじ、8 ベース、9 脚部、10 コイルパターン、11 放熱パターン、12 スルーホール、13 領域、14 第1のコア部、15 第2のコア部、20 第1の電極部、21 第2の電極部、22 はんだ(ろう材、接合手段)、30 リベット(接合手段)、40 ばね部材(接合手段)、41 ばね孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルパターンを内蔵したコイル基板と、
このコイル基板に対面して設けられているとともに放熱パターンを内蔵した放熱基板と、
この放熱基板を支持したベースとを備え、
前記コイルパターンに流れる電流により発生した熱は、前記放熱パターンを通じて前記ベースに流れるようになっていることを特徴とする電磁誘導機器。
【請求項2】
前記コイル基板は、前記放熱基板と面接触する側の面では、前記コイルパターンが露出していないことを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導機器。
【請求項3】
前記放熱基板は、前記コイル基板と面接触する側の面では、前記放熱パターンが露出していないことを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導機器。
【請求項4】
前記コイル基板と前記放熱基板との間には、放熱性シートが介在していることを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導機器。
【請求項5】
前記コイル基板と前記放熱基板とは接合手段による接合されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電磁誘導機器。
【請求項6】
前記接合手段は、前記コイル基板と前記放熱基板との間に介在したろう材であることを特徴とする請求項5に記載の電磁誘導機器。
【請求項7】
前記コイルパターンの電極は、前記ろう材、前記放熱基板に設けられ前記ろう材が結着した第1の電極部、及びこの第1の電極部に対向して前記コイル基板に設けられ前記ろう材が結着した第2の電極部により構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電磁誘導機器。
【請求項8】
前記接合手段は、前記コイル基板及び前記放熱基板を挿通したリベットであることを特徴とする請求項5に記載の電磁誘導機器。
【請求項9】
前記コイルパターンの電極は、前記リベットであることを特徴とする請求項8に記載の電磁誘導機器。
【請求項10】
前記接合手段は、前記コイル基板及び前記放熱基板を挟持したばね部材であることを特徴とする請求項5に記載の電磁誘導機器。
【請求項11】
前記放熱パターンは、多段層で構成され、各層の放熱パターンは、スルーホールで連結されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の電磁誘導機器。
【請求項12】
前記電磁誘導機器は、コアと、このコアを囲った一次コイルである前記コイル電極と、前記コアを囲った二次コイルとを備えたトランスであることを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の電磁誘導機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62355(P2013−62355A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199551(P2011−199551)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】