説明

非水電解質電池モジュール

【課題】放熱性が高く、且つ各電池の放熱バランスに優れた非水電解質電池モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の非水電解質電池モジュールは、複数の非水電解質電池と、複数の放熱部材と、複数の断熱部材と、前記非水電解質電池、前記放熱部材及び前記断熱部材を収納した外装体とを備え、前記非水電解質電池は、電池要素と、前記電池要素を収納した可撓性を有する外装材とを含み、前記非水電解質電池は、前記放熱部材を介して積層されて電池積層体を形成し、前記放熱部材の端部は、前記外装体の内面に圧接状態で接触し、前記断熱部材は、前記電池積層体の積層方向の両端部と前記外装体との間に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する外装材を備えた非水電解質電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューター等の携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴ってリチウムイオン二次電池の高容量化が更に進む傾向にあり、エネルギー密度を更に向上させるため、可撓性を有するラミネート外装材を用いた扁平型非水電解質電池が多く使用されている。
【0003】
一方、最近では非水電解質電池の高性能化に伴い、非水電解質電池が携帯機器の電源以外の電源としても用いられ始めた。例えば、自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等に非水電解質電池が用いられ始めた。
【0004】
また、非水電解質電池を自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等に用いる場合には、更なる高容量化のため非水電解質電池を複数組み合わせてモジュール化して用いられる。非水電解質電池をこのようにモジュール化して用いる場合には、充放電時に発生する各非水電解質電池からの熱が外部に発散し難くなるため、各非水電解質電池からの放熱性を向上させる必要がある。
【0005】
更に、非水電解質電池モジュールの放熱性の向上を検討するに際し、各非水電解質電池からの放熱性のみならず、非水電解質電池モジュールを構成する各非水電解質電池の放熱のバランスを考慮する必要がある。各非水電解質電池の放熱に不均衡が生じると、各非水電解質電池の温度に差異が発生し、各非水電解質電池の充放電特性に不均衡が生じるからである。
【0006】
電池モジュールの放熱対策としては、例えば、特許文献1には、外装材により発電要素を内部に封止してなる扁平型電池を複数積層して形成した組電池を、ケース内に収納してなり、上記外装材の周縁部を上記扁平型電池の積層方向に折り曲げることにより形成した折り曲げ部を、上記ケースの内面に当接した電池モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−172911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、熱伝導性があまり高くないと考えられる外装材の周縁部をケースの内面に当接して放熱させているため、放熱が十分に行われないおそれがある。また、特許文献1では、外装材の周縁部を折り曲げて単にケースの内面に当接させているのみであるため、折り曲げ部の外装材への押圧が十分ではなく、放熱が不十分となるおそれがある。更に、特許文献1では、個々の電池の放熱は考慮さているが、各電池の放熱のバランスについては考慮されておらず、たとえ放熱がある程度進んだとしても、各電池の温度に不均衡が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は上記問題を解決したもので、電池及び電池モジュールが高温となっても放熱性が高く、且つ各電池の放熱バランスに優れた非水電解質電池モジュールを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の非水電解質電池モジュールは、複数の非水電解質電池と、複数の放熱部材と、複数の断熱部材と、前記非水電解質電池、前記放熱部材及び前記断熱部材を収納した外装体とを含む非水電解質電池モジュールであって、前記非水電解質電池は、電池要素と、前記電池要素を収納した可撓性を有する外装材とを含み、前記非水電解質電池は、前記放熱部材を介して積層されて電池積層体を形成し、前記放熱部材の端部は、前記外装体の内面に圧接状態で接触し、前記断熱部材は、前記電池積層体の積層方向の両端部と前記外装体との間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、放熱性が高く、且つ各電池の放熱バランスに優れた非水電解質電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは本発明で用いる電極体を説明するための斜視図であり、図1Bは電極体を外装材に収納している状態を示す斜視図であり、図1Cは電極体を外装材に収納して扁平型リチウムイオン二次電池を完成した状態の斜視図である。
【図2】本発明の非水電解質電池モジュールの断面図である。
【図3】本発明の非水電解質電池モジュールの他の形態を示す断面図である。
【図4】本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。
【図5】本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。
【図6】本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。
【図7】本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。
【図8】本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。
【図9】本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の非水電解質電池モジュールは、複数の非水電解質電池と、複数の放熱部材と、複数の断熱部材と、上記非水電解質電池、上記放熱部材及び上記断熱部材を収納した外装体とを備えている。また、上記非水電解質電池は、電池要素と、上記電池要素を収納した可撓性を有する外装材とを含み、上記非水電解質電池は、上記放熱部材を介して積層されて電池積層体を形成している。更に、上記放熱部材の端部は、上記外装体の内面に圧接状態で接触し、上記断熱部材は、上記電池積層体の積層方向の両端部と上記外装体との間に配置されている。
【0014】
本発明の非水電解質電池モジュールは、外装体の内面に圧接状態で接触する放熱部材を備えているので、放熱部材が外装体の内面に十分に押圧される。このため、各非水電解質電池から伝導した熱を上記放熱部材から効率良く外装体へ伝導して放熱することができる。また、本発明の非水電解質電池モジュールでは、電池積層体の積層方向の両端部と外装体との間に、断熱部材が配置されているので、電池積層体を構成する両端の非水電解質電池の放熱が、他の電池の放熱より進むことがなく、各非水電解質電池の放熱を均一に行うことができる。これにより、各非水電解質電池に温度差が生じることを防止でき、各電池の充放電特性を均一に維持することができる。
【0015】
上記外装体は、金属から形成され、上記放熱部材は、金属板で形成されていることが好ましい。これにより、各非水電解質電池からの熱を効率よく外装体まで伝導でき、その熱を外装体から外部へ放熱できるからである。
【0016】
また、上記放熱部材の端部は、屈曲部を有し、上記屈曲部の屈曲角は、鈍角であることが好ましい。金属板からなる放熱部材の端部を鈍角に折り曲げることにより、金属板の靭性により、放熱部材が外装体の内面に押圧され、放熱部材の端部が外装体の内面に確実に圧接状態で接触させることができる。
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。但し、図1〜図9では、同一部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する場合がある。
【0018】
先ず、本発明に用いる非水電解質電池の実施形態について扁平型リチウムイオン二次電池を例に説明する。図1Aは本実施形態で用いる電極体を説明するための斜視図であり、図1Bは電極体を外装材に収納している状態を示す斜視図であり、図1Cは電極体を外装材に収納して扁平型リチウムイオン二次電池を完成した状態の斜視図である。
【0019】
図1Aにおいて、電池要素に含まれる電極体10は、矩形状の正極11と矩形状の負極12とを、矩形状のセパレータ13を介して積層して作製される。正極11の一端には、正極リード端子11aが設けられ、負極12の一端には、負極リード端子12aが設けられている。
【0020】
図1Bにおいて、可撓性を有する矩形状の外装材14は、谷折りされて第1外装面14aと第2外装面14bとから構成されている。第1外装面14aには、深絞り成形により電極収納部15が形成されている。また、各正極リード端子11a(図1A)及び各負極リード端子12a(図1A)は、それぞれ重ね合わされて溶接されて、それぞれ正極リード端子部16a及び負極リード端子部16bを形成している。
【0021】
図1Cにおいて、電極体10は、非水電解質と共に谷折りされた第1外装面14aと第2外装面14bとが形成する電極収納部15に収納されている。また、外装材14の外周辺のうち、谷折りされた一辺以外の三辺が所定の幅をもって接合されて封止部17a、17b、17cを形成している。正極リード端子部16a及び負極リード端子部16bは、外装材14の谷折りされた一辺と対向する封止部17cから外部に引き出されている。このようにして、非水電解質電池(扁平型リチウムイオン二次電池)20が完成する。
【0022】
正極11は、正極活物質、正極用導電助剤、正極用バインダ等を含む混合物に、溶剤を加えて十分に混練して得た正極合剤ペーストを、正極集電体の両面に塗布して乾燥した後に、その正極合剤層を所定の厚さ及び所定の電極密度に制御することにより形成できる。
【0023】
上記正極活物質としては、マンガンを含むスピネル構造のリチウム含有複合酸化物の単体、又はマンガンを含むスピネル構造のリチウム含有複合酸化物と他の正極活物質との混合体を用いることができる。上記マンガンを含むスピネル構造のリチウム含有複合酸化物の含有量は、正極活物質全体の質量割合で、70〜100質量%であることが好ましい。上記含有量が、70質量%を下回ると正極活物質の熱的安定性が不十分となる傾向にあるからである。
【0024】
上記マンガンを含むスピネル構造のリチウム含有複合酸化物としては、例えば、一般式LixMn24(0.98<x≦1.1)の組成を有するリチウム含有複合酸化物、又は上記Mnの一部がGe、Zr、Mg、Ni、Al及びCoより選ばれる少なくとも1種の元素で置換されたリチウム含有複合酸化物(例えば、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.54等)等が挙げられる。上記マンガンを含むスピネル構造のリチウム含有複合酸化物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記他の正極活物質としては、例えば、一般式LiCoO2に代表されるリチウムコバルト複合酸化物(構成元素の一部が、Ni、Al、Mg、Zr、Ti、B等の元素で置換された複合酸化物も含む。)、一般式LiNiO2、Li1+xNi0.7Co0.25Al0.052等に代表されるリチウムニッケル複合酸化物(構成元素の一部が、Co、Al、Mg、Zr、Ti、B等の元素で置換された複合酸化物も含む。)等の層状構造の複合酸化物;一般式Li4Ti512に代表されるリチウムチタン複合酸化物(構成元素の一部が、Ni、Co、Al、Mg、Zr、B等の元素で置換された複合酸化物も含む。)等のスピネル構造の複合酸化物;一般式LiMPO4に代表されるオリビン構造のリチウム複合酸化物(但し、MはNi、Co及びFeより選ばれる少なくとも1種)等が例示される。
【0026】
上記正極用導電助剤は、正極合剤層の導電性向上等の目的で必要に応じて添加すればよく、通常は導電性粉末が用いられる。上記導電性粉末としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素、黒鉛等の炭素粉末や、ニッケル粉末等の金属粉末を利用することができる。
【0027】
上記正極用バインダには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
上記正極集電体としては、構成された電池において実質的に化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。正極集電体としては、例えば、厚さが10〜30μmのアルミニウム箔等が用いられる。
【0029】
上記溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等が使用できる。
【0030】
正極11の厚さは特に限定されないが、通常は110〜230μmである。
【0031】
負極12は、負極活物質、負極用導電助剤、負極用バインダ等を含む混合物に、溶剤を加えて十分に混練して得た負極合剤ペーストを、負極集電体の両面に塗布して乾燥した後に、その負極合剤層を所定の厚さ及び所定の電極密度に制御することにより形成できる。
【0032】
上記負極活物質としては、例えば、天然黒鉛又は塊状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等の人造黒鉛等の炭素材料が用いられるが、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であればこれらに限定はされない。
【0033】
上記負極集電体としては、構成された電池において実質的に化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。負極集電体としては、例えば、厚さが5〜20μmの銅箔等が用いられる。
【0034】
上記負極用導電助剤、負極用バインダ、溶剤については、正極に用いたものと同様のものを使用できる。
【0035】
負極12の厚さは特に限定されないが、通常は65〜220μmである。
【0036】
セパレータ13としては、厚さが10〜50μmの耐熱性多孔質基体と、厚さが10〜30μmの熱可塑性樹脂からなる微多孔フィルムとを備えた2層構造のセパレータを用いることができる。耐熱性多孔質基体としては、例えば、耐熱温度が150℃以上の繊維状物で形成してもよく、上記繊維状物は、セルロース及びその変成体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアミドイミド及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で形成することができ、より具体的には上記材料からなる織布、不織布(紙を含む。)等のシート状物を耐熱性多孔質基体として用いることができる。
【0037】
また、上記熱可塑性樹脂からなる微多孔フィルムとしては、一定温度以上(100〜140℃)で微孔を閉塞し、抵抗を上げるシャットダウン機能をセパレータに付与するために、例えば、融点が80〜140℃である熱可塑性樹脂からなる微多孔フィルムを用いることができる。より具体的には、耐有機溶剤性及び疎水性を有するポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマーからなる微多孔シートを用いることができる。
【0038】
セパレータ13の厚さは特に限定されないが、通常は25〜90μmである。
【0039】
外装材14としては、アルミニウム等の金属層と熱可塑性樹脂層とが積層されたラミネートフィルム等を用いることができる。例えば、厚さが20〜100μmのアルミニウム層の外側に厚さが20〜50μmの熱可塑性樹脂層を設け、そのアルミニウム層の内側に20〜100μmの接着層を設けたラミネートフィルムを用いることができる。これにより、封止部17a、17b、17cは、熱溶着により確実に接合できる。
【0040】
外装材14の厚さは特に限定されないが、通常は60〜250μmである。
【0041】
上記非水電解質としては、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた非水電解液を使用することができる。上記有機溶媒としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン等の有機溶媒を1種類又は2種類以上混合して用いることができる。また、上記リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3等から選ばれる少なくとも1種類のリチウム塩を用いることができる。非水電解液中のLiイオンの濃度は、0.5〜1.5mol/Lとすればよい。
【0042】
次に、本発明の非水電解質電池モジュールの実施形態について説明する。本実施形態の非水電解質電池モジュールは、上記非水電解質電池を放熱部材と断熱部材と共に複数積層して外装体に挿入したものである。
【0043】
(実施形態1)
図2は、本実施形態の非水電解質電池モジュールの断面図である。図2において、非水電解質電池モジュール40の外装体30の内部には、8個の非水電解質電池20が放熱部材21を介して交互に積層されて収納されている。但し、図2では、図面の理解を容易にするため、非水電解質電池20については、断面を示すハッチングを省略している。後述の図3〜図9も同様である。非水電解質電池20と放熱部材21とは交互に積層されると共に、更に両端部に放熱部材21を配置して電池積層体25を形成している。通常、電池積層体25は、外装体30に挿入する前に形成され、形成後に外装体30内に挿入される。また、非水電解質電池20と放熱部材21とは接着剤で接合して積層してもよい。
【0044】
放熱部材21は金属板で形成され、その端部は鈍角に折り曲げられて屈曲部21aを形成している。これにより、金属板の靭性により、放熱部材21の端部は、外装体30の内面に圧接状態で接触でき、熱伝導性が向上する共に、電池積層体25の位置安定性も向上する。屈曲部21aは、電池積層体25を形成した際に予め形成してもよい。その場合、屈曲部21aの屈曲方向を全て同一とすれば、外装体30に電池積層体25を挿入しやすくなる。また、屈曲部21aは、放熱部材21の外寸法を外装体30の内寸法より大きく形成して電池積層体25を形成し、その電池積層体25を外装体30に圧入する際に、圧入力により端部を折り曲げて形成してもよい。その場合には、屈曲部21aの屈曲方向は全て同一となる。
【0045】
放熱部材21を形成する金属板の材質としては、靭性を有する金属であれば特に限定されないが、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等を使用できる。また、放熱部材21の厚さも上記靭性を生じる厚さであれば特に限定されないが、強度と熱伝導性を考慮すると、例えば、0.1〜3mm程度、更に電池の軽量化を考慮すると、0.1〜1mm程度とすることができる。
【0046】
また、電池積層体25の積層方向の両端部と外装体30との間には、断熱部材22aが配置されている。断熱部材22aの材質としては、断熱性の高い材質であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂、ウレタンフォーム等の発泡樹脂等が使用できる。また、断熱部材22aの材質として、PE、PP、ポリアセタール、ポリアミド、ABS等の熱膨張性樹脂を使用すると、非水電解質電池モジュール40の使用時に発生する熱により断熱部材22aが膨張し、電池積層体25を上下から押圧することができ、非水電解質電池20と放熱部材21との接触性が向上し、放熱性も向上する。断熱部材22aの厚さも非水電解質電池20と外装体30との間の熱伝導を抑制できる厚さであれば特に限定されないが、例えば、2〜5mm程度とすることができる。
【0047】
外装体30は、蓋部30aと、槽部30bとから形成さている。外装体30の蓋部30a及び槽部30bは、外装体30の全体の放熱及び断熱の均衡を図るため、同じ金属から形成することが好ましい。外装体30を構成する金属としては特に限定されないが、熱伝導性が高いアルミニウム材が好ましい。
【0048】
本実施形態では、非水電解質電池20と外装体30との間には、空間部31が形成されているが、その空間部31に樹脂を充填してもよい。これにより、電池積層体25の外装体30内での位置安定性及び放熱特性が更に向上し、非水電解質電池モジュール40の耐震性及び放熱性が向上する。
【0049】
本実施形態の非水電解質電池モジュール40は、外装体30の内面に圧接状態で接触する放熱部材21を備えているので、放熱部材21が外装体30の内面に十分に押圧される。このため、各非水電解質電池20から伝導した熱を放熱部材21から効率良く外装体30へ伝導して、更にその熱を外部に放出することができる。また、非水電解質電池モジュール40では、電池積層体25の積層方向の両端部と外装体30との間に、断熱部材22aが配置されているので、電池積層体25を構成する両端の非水電解質電池20の放熱が、他の非水電解質電池20の放熱より進むことがなく、各非水電解質電池20の放熱を均一に行うことができる。これにより、各非水電解質電池20に温度差が生じることを防止でき、各非水電解質電池20の充放電特性を均一に維持することができる。
【0050】
(実施形態2)
図3は、本発明の非水電解質電池モジュールの他の形態を示す断面図である。本実施形態では、屈曲部21aの屈曲方向を上下で一部異ならせた以外は、実施形態1と同様である。これにより、電池積層体25の外装体30内での積層方向での位置安定性が更に向上し、非水電解質電池モジュール40の耐震性等が更に向上する。
【0051】
(実施形態3)
図4は、本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。本実施形態では、放熱部材21の片面に断熱部材22bを更に配置した以外は、実施形態1と同様である。これにより、各非水電解質電池20間の熱伝導が抑制されることから、各非水電解質電池20の放熱を均一に行うことができる。このため、各非水電解質電池20に温度差が生じることをより確実に防止でき、各非水電解質電池20の充放電特性を均一に維持することができる。放熱部材21と断熱部材22bとは、接着剤で接合してもよい。また、本実施形態においても、屈曲部21aの屈曲方向を一部異ならせてもよい。
【0052】
断熱部材22bの材質は特に限定されないが、例えば断熱部材22aの材質と同様のものが使用できる。断熱部材22bの厚さも特に限定されないが、例えば断熱部材22aより薄くすることができる。
【0053】
(実施形態4)
図5は、本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。本実施形態では、放熱部材21の両面に絶縁シート23を更に配置した以外は、実施形態1と同様である。これにより、非水電解質電池20と外装体30との間での短絡を確実に防止できる。各非水電解質電池20の内部と外部とは絶縁されているため通常短絡の問題はないが、各非水電解質電池20を多数直列接続して高電位となると、多くの場合、外装体30は接地電位となるため、非水電解質電池20と外装体30との電位差が極めて大きくなる。しかし、この場合でも放熱部材21の両面に絶縁シート23を配置すれば、非水電解質電池20と外装体30との間での短絡を確実に防止できる。また、本実施形態においても、屈曲部21aの屈曲方向を一部異ならせてもよい。
【0054】
絶縁シート23の材質は、絶縁性が高ければ特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。絶縁シート23の厚さも特に限定されないが、厚すぎると放熱部材21の熱伝導性が低下するので、0.1〜0.5mm程度とすればよい。また、絶縁シート23と放熱部材21とは、接着剤で接合して一体として配置することもできる。
【0055】
(実施形態5)
図6は、本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。本実施形態では、放熱部材21の両側に非水電解質電池20を配置して、非水電解質電池20、放熱部材21及び非水電解質電池20からなる積層ユニット25aを形成し、積層ユニット25aを更に積層して電池積層体25を形成した以外は、実施形態1と略同様である。これにより、部品点数を削減でき、効率的に非水電解質電池モジュール40を製造できる。
【0056】
また、本実施形態においても、放熱部材21と非水電解質電池20、及び積層ユニット25a間は、接着剤で接着してもよい。更に、屈曲部21aの屈曲方向を一部異ならせてもよい。
【0057】
(実施形態6)
図7は、本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。本実施形態では、積層ユニット25aの間に断熱部材22bを更に配置し、屈曲部21aの屈曲方向を上下で一部異ならせた以外は、実施形態5と同様である。これにより、各非水電解質電池20に温度差が生じることをより確実に防止でき、各非水電解質電池20の充放電特性を均一に維持することができると共に、電池積層体25の外装体30内での積層方向での位置安定性が更に向上し、非水電解質電池モジュール40の耐震性等が更に向上する。
【0058】
(実施形態7)
図8は、本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。本実施形態では、放熱部材21の両面に絶縁シート23を更に配置した以外は、実施形態5と同様である。これにより、非水電解質電池20と外装体30との間での短絡を確実に防止できる。また、本実施形態においても、屈曲部21aの屈曲方向を一部異ならせてもよい。
【0059】
(実施形態8)
図9は、本発明の非水電解質電池モジュールの更に他の形態を示す断面図である。本実施形態では、放熱部材21の屈曲部21aが接触する外装体30の側面が、蛇腹状に形成されている以外は、実施形態5と略同様である。これにより、外装体30の側面の表面積が増大するため、外装体30からの外部への放熱性が向上する。また、本実施形態においても、屈曲部21aの屈曲方向を一部異ならせてもよい。
【0060】
外装体30の側面を蛇腹状に形成することは、実施形態1〜8においても合わせて実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、放熱性が高く、且つ各電池の放熱バランスに優れた非水電解質電池モジュールを提供できる。従って、本発明の非水電解質電池モジュールは、広い使用温度範囲が考えられる自動車用やバイク用の電源、ロボット等の移動体用の電源等として広く利用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 電極体
11 正極
11a 正極リード端子
12 負極
12a 負極リード端子
13 セパレータ
14 外装材
14a 第1外装面
14b 第2外装面
15 電極収納部
16a 正極リード端子部
16b 負極リード端子部
17a、17b、17c 封止部
20 非水電解質電池
21 放熱部材
21a 屈曲部
22a、22b 断熱部材
23 絶縁シート
25 電池積層体
25a 積層ユニット
30 外装体
30a 蓋部
30b 槽部
31 空間部
40 非水電解質電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非水電解質電池と、複数の放熱部材と、複数の断熱部材と、前記非水電解質電池、前記放熱部材及び前記断熱部材を収納した外装体とを含む非水電解質電池モジュールであって、
前記非水電解質電池は、電池要素と、前記電池要素を収納した可撓性を有する外装材とを含み、
前記非水電解質電池は、前記放熱部材を介して積層されて電池積層体を形成し、
前記放熱部材の端部は、前記外装体の内面に圧接状態で接触し、
前記断熱部材は、前記電池積層体の積層方向の両端部と前記外装体との間に配置されていることを特徴とする非水電解質電池モジュール。
【請求項2】
前記外装体は、金属から形成され、
前記放熱部材は、金属板で形成され、
前記放熱部材の端部は、屈曲部を有し、
前記屈曲部の屈曲角は、鈍角である請求項1に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項3】
前記非水電解質電池と、前記放熱部材とは、交互に積層されている請求項1又は2に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項4】
前記屈曲部の屈曲方向が全て同一である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項5】
前記屈曲部の屈曲方向が一部異なる請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項6】
前記放熱部材の片面に前記断熱部材を更に配置した請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項7】
前記放熱部材の両面に絶縁シートを更に配置した請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項8】
前記放熱部材の両側に前記非水電解質電池を配置して、前記非水電解質電池、前記放熱部材及び前記非水電解質電池からなる積層ユニットを形成し、
前記積層ユニットは、更に積層されて前記電池積層体を形成している請求項1又は2に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項9】
前記屈曲部の屈曲方向が全て同一である請求項8に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項10】
前記屈曲部の屈曲方向が一部異なる請求項8に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項11】
前記積層ユニットの間に前記断熱部材を更に配置した請求項8〜10のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項12】
前記放熱部材の両面に絶縁シートを更に配置した請求項8〜10のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項13】
前記放熱部材の端部が接触する前記外装体の側面は、蛇腹状に形成されている請求項1〜12のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。
【請求項14】
前記非水電解質電池と前記外装体との間には、樹脂が充填されている請求項1〜13のいずれか1項に記載の非水電解質電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16375(P2013−16375A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149006(P2011−149006)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】