説明

靴の中敷及びその製造方法、並びに、サンダル及びスリッパの足底並びにその製造方法

【課題】使用者の足裏のアーチにフィットするとともに使用者の好み又は障害に応じたアーチサポート機能を有する靴の中敷を簡易かつ迅速に提供する。
【解決手段】下板4の上面の、足裏のアーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、下板4に上板3を重ね合わせるように、上板3の上側から踏圧をかけることにより、前記シリコーンゴム5a,5b、5cを足裏のアーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、上板3と下板4とを接着又は粘着させて挟持し、靴の中敷1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチサポート機能を持たせた靴の中敷及びその製造方法、並びに、アーチサポート機能を持たせたサンダル及びスリッパの足底並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
足裏には大切な3つのアーチ、すなわち、中足骨部の横アーチ、距骨から土踏まずにかけての内側縦アーチ、及び、踵骨外側前方の外側縦アーチがある。そして、これらのアーチにより歩行時等において体重が支えられ、衝撃が吸収される。したがって、前記3つのアーチを形成する足の骨格が崩れると、足、膝、腰、背中、肩又は頭等、体の各部に歪みや痛みが生じたり、体全体に障害が生じる場合がある。
【0003】
前記3つのアーチを正しい位置に戻すことができるアーチサポート機能を持たせた靴の中敷により、障害の予防、疲労回復又は運動性向上等を図る構成について、多くの提案がなされている。例えば、中敷本体板の表面に駒状面ファスナを貼り付け、裏面(下面)にパイル状面ファスナが接着されている第1ないし第3のパッドを前記3つのアーチに対応させて中敷本体板上に取り付け、その上から、裏面にパイル状面ファスナが接着されている被覆シートを中敷本体板表面に貼り付けることにより、靴の中敷を構成するもの(特許文献1参照。)等がある。
【0004】
また、熱可塑性材料を用いて踏圧によって靴の中敷を成型するもの(特許文献2参照。)、採型用スポンジにより顧客の足の陰性モデルを形成し、該陰性モデルを三次元スキャナを用いて測定することにより採寸データを得、該採寸データに基づいて靴の中敷を製作するもの(特許文献3参照)、採型用スポンジにより顧客の足の陰性モデルを形成した後、該陰性モデルに石膏を流し込んで陽性モデルを製作し、該陽性モデルに基づいて靴の中敷を製作するもの、フットプリントで足の形や足裏の設置具合を調べた後にデジタイザ等で足の形状をスキャンし、CAD(Computer Aided Design)システムにより設計し、CAM(Computer Aided Manufacturing)システムにより前記設計データを用いて自動的に加工して靴の中敷を製作するもの等もある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−88405号公報(図2)
【特許文献2】特開平9−149802号公報(図1、図4−5)
【特許文献3】特開2004−275611号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人間の足型を足指の長さのバランスにより大別すると、エジプト型、ギリシャ型、正方形(スクエア)型の三種類があり、足趾の大きさ及び形状にも個人差がある。また、足部の筋力、骨格、柔軟性及びアーチ形状にも個人差がある。したがって、前記3つのアーチの形状及び大きさ並びに足裏の外形に対する相対的な位置関係等も、各個人により様々である。よって、特許文献1の構成では、中敷の使用者に適切な大きさ及び形状の第1ないし第3のパッドを選択又は製作することが困難であるとともに、それらを前記3つのアーチの位置に合わせて適切な位置に配置することも困難であるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2の構成では、前記3つのアーチを中敷にうまく写し取って成形することができない場合があることや、中敷をオーブン等の加熱手段により所定温度まで加熱した後に使用者が足趾を載せることができる温度として踏圧をかけて成形し、さらに放冷して型を固定する必要があるため、前記加熱手段が必要であるとともに、比較的長い製作時間が必要になるという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献3の構成では、三次元スキャナが必要になるため、該装置を導入するためのコストがかかることや製作時間が長くなるという問題がある。
【0009】
さらにまた、これら以外の上記構成についても、大掛かりな装置が必要になるためコストが嵩むことや製作時間が長くなること等の問題がある。また、従来のアーチサポート機能を持たせた靴の中敷では、使用者のアーチをサポートする部分の硬さ並びに厚さ及び大きさを使用者の好み又は障害に応じて調整をすることが困難であるという問題もある。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、使用者の足裏のアーチにフィットするとともに使用者の好み又は障害に応じたアーチサポート機能を有する靴の中敷並びにサンダル及びスリッパの足底を簡易かつ迅速に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る靴の中敷は、前記課題解決のために、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、該シリコーンゴムに踏圧をかけることにより前記アーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、前記上板と前記下板とを接着又は粘着させて挟持してなるものである。
【0012】
ここで、前記靴の中敷において、第2趾ないし第5趾の下側の前記足底板の上面を、第1趾の下側の前記足底板の上面よりも段落ちさせてなると好ましい。
【0013】
また、本発明に係る靴の中敷の製造方法は、前記課題解決のために、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程とを備えてなるものである。
【0014】
さらに、本発明に係る靴の中敷の製造方法は、前記課題解決のために、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、下面の接着又は粘着層に剥離紙が付いた状態の両面テープの上面の接着又は粘着層を、前記上板の下面に貼着する工程と、前記3つのアーチの位置と異なる前記剥離紙の一部を剥がし、該剥離紙が剥がされた前記両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着する工程と、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程と、前記シリコーンゴムの硬化後に、前記剥離紙を剥がして前記上板と前記下板とを貼着する工程とを備えてなるものである。
【0015】
本発明に係るサンダル又はスリッパの足底は、前記課題解決のために、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、該シリコーンゴムに踏圧をかけることにより前記アーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、前記上板と前記下板とを接着又は粘着させて挟持してなるものである。
【0016】
ここで、前記サンダル及びスリッパの足底において、第2趾ないし第5趾の下側の前記足底板の上面を、第1趾の下側の前記足底板の上面よりも段落ちさせてなると好ましい。
【0017】
また、本発明に係るサンダル又はスリッパの足底の製造方法は、前記課題解決のために、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底の製造方法であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程とを備えてなるものである。
【0018】
さらに、本発明に係るサンダル又はスリッパの足底の製造方法は、前記課題解決のために、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底の製造方法であって、下面の接着又は粘着層に剥離紙が付いた状態の両面テープの上面の接着又は粘着層を、前記上板の下面に貼着する工程と、前記3つのアーチの位置と異なる前記剥離紙の一部を剥がし、該剥離紙が剥がされた前記両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着する工程と、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程と、前記シリコーンゴムの硬化後に、前記剥離紙を剥がして前記上板と前記下板とを貼着する工程とを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る靴の中敷は、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、該シリコーンゴムに踏圧をかけることにより前記アーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、前記上板と前記下板とを接着又は粘着させて挟持してなるので、手早く簡易に特別な機械も使わずにトリミングを行うことができるため、どのような靴に対しても、その中底に合わせて使用することができる。また、簡素な構成により、簡易かつ迅速に製作され、使用者の足裏のアーチにフィットするアーチサポート機能を有する靴の中敷を得ることができる。さらに、前記2液型シリコーンゴムの硬化剤の種類及び/又は量を変えることにより、硬化後の硬さ並びに厚さ及び大きさを調節することができるため、使用者の好み又は障害に応じた前記アーチサポート体を容易に形成することができる。
【0020】
また、前記靴の中敷において、第2趾ないし第5趾の下側の前記足底板の上面を、第1趾の下側の前記足底板の上面よりも段落ちさせてなると、前記効果に加えて、第2趾ないし第5趾を伸展させて趾腹での接地面積を増やすことができるため、前記アーチサポート体によるアーチサポート機能により足の骨格を正しい位置として足裏を伸展させる効果と相俟って、足趾の可動性が向上するためハンマー足趾(槌趾)及び外反母趾の予防や治療に効果がある。その上、足趾が伸展して把握力が向上することにより、足部の安定性及びバランス機能が向上するため運動性が向上するとともに、新陳代謝が促進されるため健康及び美容面の効果もある。
【0021】
さらに、本発明に係る靴の中敷の製造方法は、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程とを備えてなるので、高価かつ大掛かりな装置を用いずに極めて簡単に、使用者の目の前で、その足裏のアーチにフィットするアーチサポート機能を有する靴の中敷の製作を完了して、直ちに使用者に供することが可能になる。また、靴の中敷の作り替えも迅速にかつ容易に行うことができる。
【0022】
さらにまた、本発明に係る靴の中敷の製造方法は、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、下面の接着又は粘着層に剥離紙が付いた状態の両面テープの上面の接着又は粘着層を、前記上板の下面に貼着する工程と、前記3つのアーチの位置と異なる前記剥離紙の一部を剥がし、該剥離紙が剥がされた前記両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着する工程と、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程と、前記シリコーンゴムの硬化後に、前記剥離紙を剥がして前記上板と前記下板とを貼着する工程とを備えてなるので、高価かつ大掛かりな装置を用いずに極めて簡単に、使用者の目の前で、その足裏のアーチにフィットするアーチサポート機能を有する靴の中敷の製作を完了して、直ちに使用者に供することが可能になる。また、靴の中敷の作り替えも迅速にかつ容易に行うことができる。その上、前記両面テープの使用により、適量を計量して接着剤等を容器から出す等の煩わしさがなく、余分な接着剤等が上板と下板との間からはみ出ることもないため、容易かつ確実に、さらに見た目も綺麗な靴の中敷を製作することができる。
【0023】
本発明に係るサンダル又はスリッパの足底は、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、該シリコーンゴムに踏圧をかけることにより前記アーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、前記上板と前記下板とを接着又は粘着させて挟持してなるので、簡素な構成により、簡易かつ迅速に製作され、使用者の足裏のアーチにフィットするアーチサポート機能を有するサンダル又はスリッパの足底を得ることができる。さらに、前記2液型シリコーンゴムの硬化剤の種類及び/又は量を変えることにより、硬化後の硬さ並びに厚さ及び大きさを調節することができるため、使用者の好み又は障害に応じた前記アーチサポート体を容易に形成することができる。
【0024】
また、前記サンダル及びスリッパの足底において、第2趾ないし第5趾の下側の前記足底板の上面を、第1趾の下側の前記足底板の上面よりも段落ちさせてなると、前記効果に加えて、第2趾ないし第5趾を伸展させて趾腹での接地面積を増やすことができるため、前記アーチサポート体によるアーチサポート機能により足の骨格を正しい位置として足裏を伸展させる効果と相俟って、足趾の可動性が向上するためハンマー足趾(槌趾)及び外反母趾の予防や治療に効果がある。その上、足趾が伸展して把握力が向上することにより、足部の安定性及びバランス機能が向上するため運動性が向上するとともに、新陳代謝が促進されるため健康及び美容面の効果もある。
【0025】
さらに、本発明に係るサンダル又はスリッパの足底の製造方法は、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底の製造方法であって、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程とを備えてなるので、高価かつ大掛かりな装置を用いずに極めて簡単に、使用者の目の前で、その足裏のアーチにフィットするアーチサポート機能を有するサンダル又はスリッパの製作を完了して、直ちに使用者に供することが可能になる。
【0026】
さらにまた、本発明に係るサンダル又はスリッパの足底の製造方法は、足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底の製造方法であって、下面の接着又は粘着層に剥離紙が付いた状態の両面テープの上面の接着又は粘着層を、前記上板の下面に貼着する工程と、前記3つのアーチの位置と異なる前記剥離紙の一部を剥がし、該剥離紙が剥がされた前記両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着する工程と、前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程と、前記シリコーンゴムの硬化後に、前記剥離紙を剥がして前記上板と前記下板とを貼着する工程とを備えてなるので、高価かつ大掛かりな装置を用いずに極めて簡単に、使用者の目の前で、その足裏のアーチにフィットするアーチサポート機能を有するサンダル又はスリッパの製作を完了して、直ちに使用者に供することが可能になる。その上、前記両面テープの使用により、適量を計量して接着剤等を容器から出す等の煩わしさがなく、余分な接着剤等が上板と下板との間からはみ出ることもないため、容易かつ確実に、さらに見た目も綺麗なサンダル又はスリッパを製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、以下の説明においては、左足用の靴の中敷1及びサンダル11を例として説明するが、右足用についても同様の構成である。
【0028】
実施の形態1.
図1〜図3は、本発明の実施の形態1に係る靴の中敷1を示す説明図であり、図1(a)は外形を示す平面図、図1(b)は同じく斜視図、図2は分解斜視図、図3はアーチサポート体5A,5B,5Cの成形方法を示す側面図である。
【0029】
図1に示すように、靴の中敷1は、足底板2を形成する上下方向に隣接する上板3と下板4とを備えており、例えば、上板3は衝撃吸収材、下板4は牛床革等のコシがあり通気性に富む素材であり、このような二層構造の足底板2は、トリミングを容易に行うことができるため、どのような靴に対しても、その中底に合わせて使用することができる。また、上板3と下板4との間には、後述するアーチサポート体5A,5B,5Cが、使用者の足Lの裏の3つのアーチである、横アーチA1、内側縦アーチA2及び外側縦アーチA3に合わせて設けられているため、中敷1は、前記3つのアーチA1,A2及びA3をサポートする機能を有する。なお、アーチサポート体は、前記3つのアーチA1,A2及びA3に対応する3箇所に設けられるのが望ましいが、必ずしも3箇所に設ける必要はなく、前記3つのアーチA1,A2及びA3の中の少なくとも1つのアーチをサポートするものであればよい。
【0030】
次に、本発明の実施の形態1に係る靴の中敷1の製造方法について、図2及び図3を用いて説明する。まず、靴の中底に合わせた形状とした前記上板3及び下板4並びに両面テープ6を用意しておく。なお、両面テープ6は、必ずしも靴の中底に合わせた形状(上板3及び下板4に合わせて形状)でなくてもよい。
【0031】
次に、接着又は粘着手段である両面テープ6の上面の剥離紙を剥がし、下面の接着又は粘着層6Bに剥離紙7が付いた状態の両面テープ6の上面の接着又は粘着層6Aを上板3の下面に合わせて貼着し、上板3と両面テープ6とを一体化する(工程A)。
次に、前記3つのアーチの位置と異なる剥離紙7の一部(図2では足先部分)を剥がし、該剥離紙が剥がされた両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着し、上板3及び下板4の前記一部(足先部分)を、図3に示すように位置決め固定する(工程B)。
次に、下板4の上面の、前記3つのアーチA1、A2及びA3に略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合し、硬化前の2液型液状シリコーンゴム5a,5b,5cを載置する(工程C)。
なお、上記工程AないしCの順序は、上記に限定されず、どのような順序に行ってもよい。
【0032】
次に、図3に示すように、下板4に上板3を重ね合わせるように、上板3の上側から使用者がその足Lにより踏圧をかけることにより、前記硬化前の2液型液状シリコーンゴム5a,5b,5cを使用者の足裏の3つのアーチA1,A2,A3の形状に合わせて成形する(工程D)。
次に、所定時間が経過すると、前記シリコーンゴムが硬化して、前記アーチA1,A2,A3に対応する位置に、横アーチサポート体5A、内側縦アーチサポート体5B及び外側縦アーチサポート体5Cが形成されるため、剥離紙7を剥がして上板3と下板4とを貼着する(工程E)。
以上の工程により、図1に示すような、前記アーチサポート体5A,5B及び5Cを上板3と下板4とで挟持して一体化した靴の中敷1を容易に製造することができる。
【0033】
なお、上記のように上板3と下板4とを貼着する手段は両面テープに限定されず、接着剤又は粘着剤等を用いてもよい。ただし、上記のように両面テープを用いれば、適量を計量して接着剤等を容器から出す必要がなく、余分な接着剤等が上板3と下板4との間からはみ出ることもないため、容易かつ確実に、さらに見た目も綺麗な靴の中敷1を製作することができる。また、上記工程Eのようにシリコーンゴムの硬化後に上板3と下板4とを貼着するのではなく、上記工程Dの成形工程と同時に上板3と下板4とを貼着してもよい。
【0034】
上記液状シリコーンゴムは、2液型であるので、主剤と硬化剤との混合と同時に硬化反応が進み、加熱をしなくても室温で表面及び内部が硬化する。そして、硬化剤の種類及び/又は量を変えることにより、硬化時間並びに硬化後の硬さ並びに厚さ及び大きさを調節することができる。例えば硬化時間を5分程度の短時間とすること並びに使用者の好み又は障害に応じた硬化後の硬さ並びに厚さ及び大きさとすることも容易である。なお、縮合型及び付加型の液状シリコーンゴムを使用することができるが、付加型の液状シリコーンゴムを使用すれば、加熱することにより、さらに硬化を早めることができる。また、シリコーンゴムは、収縮率が小さく寸法安定性に優れているため、硬化後に、アーチサポート体5A,5B,5Cの形状が小さくなってアーチサポート機能が損なわれることもない。
【0035】
以上のような構成の実施の形態1に係る靴の中敷1及びその製造方法によれば、高価かつ大掛かりな装置を用いずに極めて簡単に、使用者の目の前で、その足裏のアーチにフィットするとともに使用者の好み又は障害に応じたアーチサポート機能を有する靴の中敷1の製作を完了して、直ちに使用者に供することが可能になる。また、靴の中敷1の作り替えも迅速にかつ容易に行うことができる。
【0036】
実施の形態2.
図4〜図6は、本発明の実施の形態2に係る靴の中敷1を示す説明図であり、図4は外形を示す平面図、図5は分解斜視図、図6はアーチサポート体5A,5B,5Cの成形方法を示す側面図であり、実施の形態1の図1〜図3と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0037】
実施の形態2の実施の形態1との主な相違点は、図4及び図5に示すように、例えば衝撃吸収材である上板3の第2趾ないし第5趾F2〜F5の下側の部分を無くして切欠き3Aを形成しており、第2趾ないし第5趾F2〜F5の下側の足底板2の上面を、第1趾(拇指)F1の下側の足底板2の上面よりも段落ちさせ、段落部10を形成している点である。
【0038】
このような段落部10を形成することにより、第2趾ないし第5趾F2〜F5を伸展させて趾腹での接地面積を増やすことができるため、アーチサポート体5A,5B,5Cによるアーチサポート機能により足の骨格を正しい位置に整える効果と相俟って、足趾の可動性が向上するためハンマー足趾(槌趾)及び外反母趾の予防や治療に効果がある。また、足趾が伸展して把握力が向上することにより、足部の安定性及びバランス機能が向上するため運動性が向上するとともに、新陳代謝が促進されるため健康及び美容面の効果もある。
【0039】
次に、本発明の実施の形態2に係る靴の中敷1の製造方法について、図5及び図6を用いて説明する。まず、靴の中底に合わせた形状とした、例えば牛床革等のコシがあり通気性に富む素材である下板4、豚革又はスウェード等の滑りにくく通気性に富む素材である被覆シート9及び両面テープ6、並びに、前記切欠き3Aが形成された上板3に合わせた形状とした、接着又は粘着手段である両面テープ8を用意しておく。なお、両面テープ8は、必ずしも上板3に合わせた形状でなくてもよく、上板3と後述する被覆シート9とを貼着し、使用時にずれないようにすることができればよい。
【0040】
次に、両面テープ8の下面の接着又は粘着層8Bを上板3の上面に合わせて貼着し、両面テープ8の上面の接着又は粘着層8Aを被覆シート9の下面に貼着し、被覆シート9、両面テープ8、上板3及び両面テープ6を一体化する(工程A')。この状態では、上板3には切欠き3Aがあるため、この切欠き3A部において露出している両面テープ6の上面の接着又は粘着層6Aに被覆シート9の下面が貼着され、前記のような段落部10(図4参照。)が形成される。
【0041】
前記工程A'は、実施の形態1の工程Aに相当するものであり、以下の工程は、実施の形態1の工程BないしEと同様である。また、上記工程A'における両面テープ8による上板3と被覆シート9との貼着は、使用者がその足Lにより踏圧をかけることにより、硬化前の2液型液状シリコーンゴム5a,5b,5cを使用者の足裏の3つのアーチA1,A2,A3の形状に合わせて成形する工程(工程D)及び前記シリコーンゴムが硬化して、前記アーチA1,A2,A3に対応する位置に、横アーチサポート体5A、内側縦アーチサポート体5B及び外側縦アーチサポート体5Cが形成された後に剥離紙7を剥がして上板3と下板4とを貼着する工程(工程E)の後に行ってもよい。
【0042】
なお、上記のように上板3と被覆シート9とを貼着する手段は両面テープに限定されず、接着剤又は粘着剤等を用いてもよい。ただし、上記のように両面テープを用いれば、適量を計量して接着剤等を容器から出す必要がなく、余分な接着剤等が上板3と被覆シート9との間からはみ出ることもないため、容易かつ確実に、さらに見た目も綺麗な靴の中敷1を製作することができる。
【0043】
以上のような構成の実施の形態2に係る靴の中敷1及びその製造方法によっても、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。また、段落部10が形成されていることから、前記のとおりのハンマー足趾(槌趾)及び外反母趾の予防又は治療効果等を奏する。
【0044】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係るサンダル11を示す斜視図であり、実施の形態2の図4〜図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。図において、サンダル11の足底12は、実施の形態2の足底板2と同様の構成からなり、足裏の3つのアーチである、横アーチA1、内側縦アーチA2及び外側縦アーチA3をサポートするアーチサポート体5A,5B及び5Cが実施の形態1及び2と同様に形成され、第2趾ないし第5趾F2〜F5の下側の足底板2の上面を、第1趾(拇指)F1の下側の足底板2の上面よりも段落ちさせてなる、段落部10が実施の形態2と同様に形成されている。
【0045】
なお、足底板2である被覆シート9、上板3及び下板4には、ストラップ14を取り付けるための穴が所定位置に形成される。また、足底板2の下板4をソール13と一体とする構成としてもよい。さらに、サンダル11ではなく、スリッパに前記アーチサポート体5A,5B及び5C及び段落部10を設けてもよい。
【0046】
以上のようなサンダル11又はスリッパによっても、実施の形態2と同様の作用効果を奏する。その上、実施の形態1及び2のような靴の中で使用される中敷1ではなく、足趾が圧迫されずにより伸展しやすいため、前記ハンマー足趾(槌趾)及び外反母趾の予防又は治療効果等がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係る靴の中敷の外形図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る靴の中敷の分解斜視図である。
【図3】アーチサポート体の成形方法を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る靴の中敷の外形を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る靴の中敷の分解斜視図である。
【図6】アーチサポート体の成形方法を示す側面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係るサンダルを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 靴の中敷
2 足底板
3 上板
3A 切欠き
4 下板
5a,5b,5c 硬化前の2液型液状シリコーンゴム
5A,5B,5C アーチサポート体(成形硬化後の2液型液状シリコーンゴム)
6 接着又は粘着手段(両面テープ)
6A,6B 接着又は粘着層
7 剥離紙
8 接着又は粘着手段(両面テープ)
8A,8B 接着又は粘着層
9 被覆シート
10 段落部
11 サンダル
12 足底
13 ソール
14 ストラップ
L 足
F1 第1趾(拇指)
F2 第2趾
F3 第3趾
F4 第4趾
F5 第5趾
A1 横アーチ
A2 内側縦アーチ
A3 外側縦アーチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷であって、
前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、該シリコーンゴムに踏圧をかけることにより前記アーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、前記上板と前記下板とを接着又は粘着させて挟持してなる靴の中敷。
【請求項2】
第2趾ないし第5趾の下側の前記足底板の上面を、第1趾の下側の前記足底板の上面よりも段落ちさせてなる請求項1記載の靴の中敷。
【請求項3】
足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、
前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、
前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程とを備えてなる靴の中敷の製造方法。
【請求項4】
足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えた靴の中敷の製造方法であって、
下面の接着又は粘着層に剥離紙が付いた状態の両面テープの上面の接着又は粘着層を、前記上板の下面に貼着する工程と、
前記3つのアーチの位置と異なる前記剥離紙の一部を剥がし、該剥離紙が剥がされた前記両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着する工程と、
前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、
前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程と、
前記シリコーンゴムの硬化後に、前記剥離紙を剥がして前記上板と前記下板とを貼着する工程とを備えてなる靴の中敷の製造方法。
【請求項5】
足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底であって、
前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置し、該シリコーンゴムに踏圧をかけることにより前記アーチの形状に合わせて成形し硬化させてなるアーチサポート体を、前記上板と前記下板とを接着又は粘着させて挟持してなるサンダル又はスリッパの足底。
【請求項6】
第2趾ないし第5趾の下側の前記足底板の上面を、第1趾の下側の前記足底板の上面よりも段落ちさせてなる請求項5記載のサンダル又はスリッパの足底。
【請求項7】
足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底の製造方法であって、
前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、
前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程とを備えてなるサンダル又はスリッパの足底の製造方法。
【請求項8】
足裏の3つのアーチの中の少なくとも1つのアーチをサポートする、足底板を形成する上下方向に隣接する上板と下板とを備えたサンダル又はスリッパの足底の製造方法であって、
下面の接着又は粘着層に剥離紙が付いた状態の両面テープの上面の接着又は粘着層を、前記上板の下面に貼着する工程と、
前記3つのアーチの位置と異なる前記剥離紙の一部を剥がし、該剥離紙が剥がされた前記両面テープの下面の接着又は粘着層を前記下板の上面の一部と合わせて貼着する工程と、
前記下板の上面の、前記アーチに略対応する位置に、2液型液状シリコーンゴムの主剤と硬化剤とを混合して載置する工程と、
前記下板に前記上板を重ね合わせるように、前記上板の上側から踏圧をかけることにより前記下板上に載置されたシリコーンゴムを前記アーチの形状に合わせて成形する工程と、
前記シリコーンゴムの硬化後に、前記剥離紙を剥がして前記上板と前記下板とを貼着する工程とを備えてなるサンダル又はスリッパの足底の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−48863(P2008−48863A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227279(P2006−227279)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(506288302)
【出願人】(505469447)
【Fターム(参考)】