説明

駆動機構

【課題】線状動力伝達部材の張力を調整できるとともに、構成の単純化及び小型化を実現する駆動機構を提供することにある。
【解決手段】駆動機構10では、駆動部であるアクチュエータ部31と一体に形成される流体給排部であるパイプ32の雄ねじ部33の一部と基端側壁部60の雌ねじ部64とが螺合することにより、アクチュエータ部31及びパイプ32が基端側壁部60に固定される状態で支持される。すなわち、流体給排部であるパイプ32が駆動部被支持部となっている。また、駆動部被支持部であるパイプ32の雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置が調整可能となっている。雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置を調整することにより、ワイヤ20のプーリ23に対する張力が調整される。すなわち、駆動部被支持部であるパイプ32に設けられる雄ねじ部33が線状張力伝達部材であるワイヤ20の張力を調整する張力調整部となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ等の線状動力伝達部材の張力によって関節部を駆動する駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、ワイヤの張力によって関節部を駆動する駆動機構が内視鏡に用いられた構成が示されている。図18は、駆動手段であるアクチュエータ101を示す。アクチュエータ101は駆動部であるアクチュエータ部102を備える。アクチュエータ部102は流体圧人工筋であり、アクチュエータ部102の内部の圧力に応じて伸縮可能となっている。アクチュエータ部102は、駆動部支持部材であるアクチュエータ保持部材103によって支持されている。アクチュエータ保持部材103の先端部及び基端部には、それぞれ先端側環状端部103A及び基端側環状端部103Bが設けられている。アクチュエータ部102の先端部及び基端部は、それぞれ先端側口金部材104A及び基端側口金部材104Bに連結されている。先端側口金部材104Aは、先端側環状端部103Aの内部に長手方向にスライド自在に挿入されている。基端側口金部材104Bは、基端側環状端部103Bに嵌合され、止めねじ105によって固定されている。すなわち、基端側環状端部103Bが駆動部であるアクチュエータ部102を支持するアクチュエータ支持部となり、基端側口金部材104Bが基端側環状端部103Bに固定される駆動部被支持部となっている。先端側口金部材104Aの先端には、ワイヤ107の一端が接続されている。ワイヤ107の他端は、可撓管部の先端側に配設される湾曲部に形成されるワイヤガイドに挿通案内され、湾曲部の先端側に配設される先端硬性部の関節部に接続されている。
【0003】
駆動機構100では、加圧空気がアクチュエータ部102に供給されると、アクチュエータ部102は径方向については膨張し、長手方向については基端面が固定された状態で基端側に収縮する。これにより、ワイヤ107が基端方向に引張り動作され、先端硬性部が牽引される。この牽引力、すなわちワイヤ107の張力が湾曲部に伝達され、湾曲部が湾曲するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−170931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
関節部を線状動力伝達部材の張力によって駆動する駆動機構では、関節部を所望の駆動範囲で適切に駆動できるように初期時に線状動力伝達部材の張力を調整する要望があるまた、使用に伴い動力伝達部材の伸び、弛み等により変化した張力を調整する場合がある。
【0006】
しかし、上記特許文献1の駆動機構100では、駆動部であるアクチュエータ部102の基端側がアクチュエータ保持部材103の基端側環状端部103Bに固定されていることから、関節部を駆動するワイヤ107の張力を調整することができない。また、張力を調整するための張力調整部を駆動手段とは別に設けると、駆動機構の構成が複雑になるとともに大型化してしまう。
【0007】
本発明は上記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、線状動力伝達部材の張力を調整できるとともに、構成の単純化及び小型化を実現する駆動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、駆動部を備える駆動手段と、前記駆動手段を支持する駆動部支持部と、前記駆動部に一端部が接続される線状動力伝達部材と、前記線状動力伝達部材の他端部が接続されるとともに、前記線状動力伝達部材の張力によって駆動される関節部と、を備える駆動機構において、前記駆動手段は、前記駆動部に連結されるとともに、前記駆動手段支持部材に固定される駆動部被支持部を備え、前記駆動部被支持部には、前記線状動力伝達部材の張力を調整する張力調整部が設けられていることを特徴とする駆動機構である。
【0009】
そして請求項1の発明の駆動機構では、駆動部支持部に固定される駆動部被支持部に、線状張力伝達部材の張力を調整する張力調整部が設けられている。これにより、関節部を駆動する線状張力伝達部材の張力の張力調整部を備えるとともに、構成の単純化及び小型化を実現する駆動機構を提供することができる。
【0010】
請求項2の発明は、前記張力調整部又は前記駆動部支持部のいずれか一方は、前記駆動部被支持部に長手方向に沿って形成される雄ねじ部であり、他方は、前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部であることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構である。
【0011】
そして請求項2の発明の駆動機構では、雄ねじ部の雌ねじ部との螺合位置を調整することで線状動力伝達部材の張力の調整が可能であるため、簡単な構成の張力調整部を提供することができる。
【0012】
請求項3の発明は、前記張力調整部は、さらに前記駆動部被支持部の駆動部と反対側に連結された状態で設けられる少なくとも1つの継足し部材を備え、前記継足し部には、前記雌ねじ部と螺合するとともに、前記雄ねじ部とともに長手方向に沿って前記線状動力伝達部材の前記張力調整部を構成する継足し雄ねじ部を備えることを特徴とする請求項2に記載の駆動機構である。
【0013】
そして請求項3の発明の駆動機構では、雄ねじ部及び継足し雄ねじ部が、線状張力伝達部材の張力を調整する張力調整部となっている。これにより、駆動部被支持部の雄ねじ部だけでは調整量が足らない場合でも、線状動力伝達部材の張力の調整することができ、調整量を大きく取ることができる。また、継ぎ足す継足し部材の数によって調整量を変えることが可能となり、汎用性を高めることができる。
【0014】
請求項4の発明は、さらに前記駆動部被支持部の前記駆動部支持部での固定位置を保持する保持ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構である。
【0015】
そして請求項4の発明の駆動機構では、保持ユニットによって、駆動部被支持部の駆動部支持部の固定位置が保持されている。これにより、線状動力伝達部材の張力が調整された状態を保持することができる。
【0016】
請求項5の発明は、前記駆動部被支持部には、前記線状動力伝達部材の張力を調整する際に用いられる調整治具と係合する被係合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構である。
【0017】
そして請求項5の発明の駆動機構では、調整治具が駆動部被支持部に設けられる被係合部と係合した状態で駆動被支持部を回転することにより、駆動部被支持部の駆動部支持部での固定位置を調整することが可能となっている。このため、調整治具を用いて容易に駆動被支持部を回転させることが可能である。これにより、容易に線状動力伝達部材の張力を調整することができる。
【0018】
請求項6の発明は、前記駆動部は、内部に流体を給排することで長手方向に伸縮する流体圧人工筋であり、前記駆動部被支持部は、前記流体圧人工筋への流体給排部であることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構である。
【0019】
そして請求項6の発明の駆動機構では、駆動部が流体圧人工筋であり、張力調整部を備える駆動部被支持部が流体圧人工筋への流体給排部となっている。これにより、駆動機構が小型化され、細径の管内に駆動手段を収納することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、線状動力伝達部材の張力を調整できるとともに、構成の単純化及び小型化を実現する駆動機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る駆動機構を備えるマニピュレータの構成を示す斜視図。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る把持駆動機構の構成を示す説明図。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る把持関節部及び把持動作部の構成を示す斜視図。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る把持関節部及び把持動作部の構成を示す縦断面図。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る把持関節部及び把持動作部の構成を示す横断面図。
【図6】図6は、第1の実施形態に係る張力検出手段の構成を示す斜視図。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る張力検出手段の構成を示す断面図。
【図8】図8は、第1の実施形態に係るアクチュエータの構成を示す断面図。
【図9】図9は、第1の実施形態に係る先端側壁部の構成を示す断面図。
【図10】図10は、図9の10−10線断面図。
【図11】図11は、第1の実施形態に係る基端側壁部の構成を示す断面図。
【図12】図12は、図11の12−12線断面図。
【図13】図13は、第1の実施形態の第1の変形例に係るパイプの構成を示す斜視図。
【図14】図14は、第1の実施形態の第2の変形例に係るパイプの構成を示す斜視図。
【図15】図15は、第1の実施形態の第3の変形例に係るパイプの構成を示す斜視図。
【図16】図16は、第1の実施形態の第3の変形例に係る処置具の、(A)は一例を示す斜視図、(B)は(A)とは別の例を示す斜視図。
【図17】図17は、第1の実施形態の第4の変形例に係るパイプ及び継足しパイプの構成を示す断面図。
【図18】図18は、従来例のアクチュエータの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図12を参照して説明する。図1は、本実施形態の駆動機構10を備えるマニピュレータ1を示す図である。ここで、マニピュレータ1は、軟性又は半軟性のものである。図1に示すように、マニピュレータ1は、細長い管状部2と、管状部2の先端側に設けられる作業部3と、を有する。
【0023】
管状部2の径は、15mm以下(10mm程度であることが好ましい。)に形成されている。管状部2は、作業部3の基端側に設けられる硬性部4と、硬性部4の基端側に設けられるとともに可撓性を有する可撓部5と、を有する。可撓部5は、例えば金属細線が埋設された樹脂体等の可撓性を有する部材で形成されている。可撓部5の長手方向についての長さは、硬性部4の長手方向の長さに比べ極端に長く、その長さは300mm程度となっている。
【0024】
マニピュレータ1の作業部3は3自由度であり、それぞれ把持、回転、屈曲動作を行うための把持関節部7A、回転関節部7B、屈曲関節部7Cの3つの関節部が先端側から順次に設けられている。関節部7A、7B、7Cの先端側の部位が、それぞれ把持、回転、屈曲動作を行う把持動作部8A、回転動作部8B、屈曲動作部8Cとなっている。マニピュレータ1は、それぞれ把持動作部8A、回転動作部8B、屈曲動作部8Cで動作を行うために、把持駆動機構10A、回転駆動機構、屈曲駆動機構の3つの独立した駆動機構10を備える。
【0025】
図2は、把持動作部8Aで把持動作を行うための把持駆動機構10Aを示す図である。図2に示すように、把持駆動機構10Aは、把持動作を行う把持動作部8Aと、把持動作部8Aに接続される把持関節部7Aと、を備える。把持関節部7Aには、硬性部4の内部に設けられる線状動力伝達部材である2本のワイヤ20が接続されている。それぞれのワイヤ20の基端部は、可撓部5の内部に設けられる駆動手段であるアクチュエータ30に接続されている。アクチュエータ30は、駆動部であるアクチュエータ部31を備える。アクチュエータ部31の基端部は、ウレタンチューブ等の可撓性を有するチューブ11を介してマニピュレータ1の外部に設けられる空気圧力源である電空レギュレータ12に接続されている。
【0026】
電空レギュレータ12からアクチュエータ部31に加圧空気を供給、又は、アクチュエータ部31から加圧空気を排出することにより、アクチュエータ部31の内部の圧力は調整される。それぞれのアクチュエータ部31の圧力が調整されることにより、アクチュエータ30に接続されるワイヤ20は先端側に押出し動作、又は、基端側に引張り動作され、長手方向へ移動する。ワイヤ20の長手方向への移動により、後述するように把持関節部7Aが駆動され、把持動作部8Aが把持動作を行うようになっている。
【0027】
それぞれのワイヤ20が関節部7A、7B、7Cに接続される接続部の近傍には、ワイヤ20の張力を検出するための張力検出手段13と、ワイヤ20の長手方向への移動量を検出するための位置センサ等の位置検出手段14と、が設けられている。張力検出手段13は信号線15によりストレインアンプ等のセンサ用アンプ16に接続され、センサ用アンプ16からそれぞれのワイヤ20の張力情報が制御手段であるコントローラ17に入力される。また、位置検出手段14からコントローラ17へ、それぞれのワイヤ20の位置情報が入力される。コントローラ17に入力される張力情報及び位置情報に基づいて操作手段であるマスタコントローラ18で操作を行うことにより、アクチュエータ部31の圧力調整指令がコントローラ17から電空レギュレータ12に送られる。空圧調整指令に基づいて電空レギュレータ12がアクチュエータ部31の圧力を調整することにより、それぞれのワイヤ20の張力及び長手方向への移動量が調整されるようになっている。
【0028】
なお、回転動作部8B、屈曲動作部8Cでそれぞれ回転、屈曲動作を行うための回転駆動機構、屈曲駆動機構は把持駆動機構10Aと同一の構成をしている。したがって、それぞれの関節部7A、7B、7Cに2本ずつワイヤ20が接続されるため、管状部2の硬性部4の内部には6本のワイヤ20が設けられている。また、それぞれのワイヤ20の基端部にアクチュエータ30が接続されるため、管状部2の可撓部5の内部には6本のアクチュエータ30が設けられている。
【0029】
図3乃至図5は把持関節部7A及び把持動作部8Aの構成を示す図である。図3乃至図5に示すように、把持動作部8Aは、一対の把持部21と、この一対の把持部21のうちの一方である第1の把持部21Aが固定される筐体22と、を備える。筐体22の先端部では、他方の把持部21である第2の把持部21Bが第1の把持部21Aに対して開閉可能に保持されている。第2の把持部21Bの基端部には、把持関節部7Aであるプーリ23が第2の把持部21Bと一体に設けられている。プーリ23は回転軸23Aを中心に有し、回転軸23Aでプーリ23が筐体22に回転可能に取り付けられている。また、プーリ23の外周面には、プーリ23の周方向に沿って形成される2つの溝23Bがプーリ23の軸方向に並んで設けられている。それぞれの溝23Bには、1本のワイヤ20が接続されている。
【0030】
プーリ23の基端側には、管状部2にワイヤ20を案内する2つの案内用プーリ25が上下方向に並んで設けられている。案内用プーリ25は、プーリ23と同様に、回転軸25Aを中心に有し、回転軸25Aで案内用プーリ25が筐体22に回転可能に取り付けられている。また、案内用プーリ25の外周面には、プーリ23と同様に、案内用プーリ25の周方向に沿って形成される2つの溝25Bが案内用プーリ25の軸方向に並んで設けられている。それぞれの溝25Bで、1本のワイヤ20が案内されるようになっている。
【0031】
プーリ23に接続される2本のワイヤ20のうち一方である第1のワイヤ20Aは、管状部2から案内用プーリ25によって2つの案内用プーリ25の間に位置する筐体22の略中心を案内されて、プーリ23の一方の溝23Bに上側から掛け渡される。そして、第1の把持部21Aの基端部の図4中で下部外壁に設けられる第1の留め部26Aで固定される。これにより、第1のワイヤ20Aがプーリ23に接続される。同様に、他方のワイヤ20である第2のワイヤ20Bは、管状部2から案内用プーリ25によって2つの案内用プーリ25の間に位置する筐体22の略中心を案内されて、プーリ23の他方の溝23Bに下側から掛け渡される。そして、第2の把持部21Bの基端部の図4中で上部外壁に設けられる第2の留め部26Bで固定される。これにより、第2のワイヤ20Bがプーリ23に接続される。
【0032】
このような構成にすることにより、拮抗型に配置された2本のワイヤ20のうちの一方である第1のワイヤ20Aを基端側に引張り、他方の第2のワイヤ20Bが先端側を押出すことにより、プーリ23は一方向に回転する。すなわち、プーリ23に接続される2本のワイヤ20が長手方向について逆平行に移動することにより、プーリ23はワイヤ20の張力により駆動される。プーリ23が一方向に回転することにより、第2の把持部21Bが第1の把持部21Aに対して開閉動作を行い、把持動作部8Aが把持動作を行うようになっている。
【0033】
また、案内用プーリ25によってワイヤ20が筐体22の略中心を案内されることにより、ワイヤ20が回転、屈曲動作の影響を受けないようになっている。
【0034】
なお、回転動作部8B、屈曲動作部8Cは把持動作部8Aと略同一の構成をしていて、拮抗型に配置された2本のワイヤ20が長手方向について逆平行に移動することにより、回転関節部7B、屈曲関節部7Cであるプーリ23が駆動する。これにより、回転動作部8B、屈曲動作部8Cが回転、屈曲動作を行うようになっている。
【0035】
図8はワイヤ20の基端部が接続されるアクチュエータ30の構成を示す図である。図8に示すように、アクチュエータ30は、細径で管状の駆動部であるアクチュエータ部31を備える。アクチュエータ部31は、伸縮しにくい細径部材36を網状に編んだ網状体を樹脂体等に埋設した可撓性を有する部材で形成されている。アクチュエータ部31は、径が10mm程度で長さが300mm程度の可撓部5に合わせて、径が1.5mm程度で長さが300mm程度に作成されている。これにより、6本のアクチュエータ30が可撓部5に収納されるようになっている。アクチュエータ部31の先端面31Bは閉塞されていて、先端面31Bにワイヤ20の基端部が接続されている。
【0036】
アクチュエータ部31の基端側には、アクチュエータ部31の内部に加圧空気を供給及び排出する流体給排部であるパイプ32がアクチュエータ部31と一体に設けられている。パイプ32の基端部は、前述したチューブ11を介して電空レギュレータ12に接続されている。パイプ32の基端部の外周面には、雄ねじ部33が長手方向に所望の長さを有して設けられている。それぞれのアクチュエータ部31は、長手方向について略全長にわたって肉薄のSUSパイプ又はコイルパイプ等の可撓性を有する金属製の筒状体34に収納されている。
【0037】
図2に示すように、管状部2の可撓部5の先端側及び基端側には、それぞれ管状部2の内部を長手方向に垂直な方向に閉塞するとともに所望の厚さを有する先端側支持部材である先端側壁部50及び基端側支持部材である基端側壁部60が、設けられている。筒状体34は、先端側壁部50及び基端側壁部60により支持されている。アクチュエータ部31及びパイプ32は、基端側壁部60により支持されている。
【0038】
図9及び図10は、先端側壁部50の構成を示す図である。図9及び図10に示すように、先端側壁部50には、長手方向に貫通する6つの先端側筒状体支持部である先端側貫通孔51が設けられている。6つの先端側貫通孔51の径は、筒状体34の径と略同一であり、上下方向に所定間隔を有して左右対称に3つずつ形成されている。それぞれの先端側貫通孔51には、1本の筒状体34の先端部を挿入され、圧着、半田付け、接着剤等で固定されている。これにより、筒状体34の先端部は先端側壁部50に固定される状態で支持され、筒状体34の先端方向への移動が規制される。
【0039】
図11及び図12は、基端側壁部60の構成を示す図である。図11及び図12に示すように、基端側壁部60には、先端側壁部50と同様に、上下方向に所定間隔を有して左右対称に3つずつ長手方向に貫通する6つの基端側貫通孔61が設けられている。基端側貫通孔61は、先端側の部位に設けられる基端側筒状体支持部である筒状体用孔62と、基端側の部位に設けられる駆動部用孔63と、を備える。
【0040】
基端側筒状体支持部である筒状体用孔62の径は、筒状体34の径と略同一である。それぞれの筒状体用孔62には、1本の筒状体34の基端部を挿入され、圧着、半田付け、接着剤等で固定されている。これにより、筒状体34の基端部は基端側壁部60に固定される状態で支持され、筒状体34の基端方向への移動が規制される。
【0041】
基端側壁部60の駆動部用孔63と接する面には、雌ねじ部64が長手方向に所望の長さを有して設けられている。雌ねじ部64の長手方向の長さは、パイプ32の雄ねじ部33の長手方向の長さより短くなっている。アクチュエータ部31と一体的に連結されて形成されるパイプ32の雄ねじ部33の一部と基端側壁部60の雌ねじ部64とが螺合することにより、アクチュエータ部31及びパイプ32が基端側壁部60に固定される状態で支持される。つまり、基端側壁部60の雌ねじ部64は、駆動部被支持部であるパイプ32の雄ねじ部33の一部と螺合する駆動部支持部となっている。これにより、アクチュエータ部31及びパイプ32の基端方向への移動が規制される。
【0042】
このような構成にすることにより、アクチュエータ部31は基端側への移動が規制され、筒状体34は先端側及び基端側への移動が規制される。このため、アクチュエータ部31は、内部の圧力の変化に応じて基端面31Aを固定端、先端面31Bを自由端として固定される筒状体34の内部で長手方向に伸縮可能ないわゆる流体圧人工筋となっている。すなわち、電空レギュレータ12から加圧空気がアクチュエータ部31に供給されると、アクチュエータ部31は径方向については膨張し、長手方向については基端面31Aが固定された状態で基端側に収縮する。これにより、アクチュエータ部31の先端面31Bに接続されるワイヤ20が基端方向に引張り動作される(図8の矢印A)。逆に、アクチュエータ部31から加圧空気が排出されると、アクチュエータ部31は径方向については圧縮され、長手方向については先端側に膨張する。これにより、アクチュエータ部31の先端面31Bに接続されるワイヤ20が先端方向に押出し動作される(図8の矢印B)。アクチュエータ部31の内部の圧力を調整して、拮抗型に配置された2本のワイヤ20を長手方向について逆平行に移動動作させることにより、前述したようにプーリ23はワイヤ20の張力により駆動される。すなわち、関節部7A、7B、7Cであるプーリ23は、ワイヤ20の基端部に接続されるアクチュエータ30のアクチュエータ部31により駆動制御されている。
【0043】
また、先端部及び基端部が固定された可撓性を有する筒状体34の内部にアクチュエータ部31が収容されている。このため、可撓部5が湾曲した際に、アクチュエータ部31が可撓部5内で筒状体34と一体に撓むことが可能となっている。
【0044】
さらに、アクチュエータ部31が基端側壁部60に確実に支持されているため、マニピュレータ1として必要な10〜20N程度の力量及び10〜20mm程度の変位を、0.1〜0.6MPa程度のアクチュエータ部31の内部圧力で実現可能となっている。ここで、マニピュレータ1の力量及び変位は、細径部材36の網角、アクチュエータ部31の径等のパラメータを調整することにより変化する。
【0045】
なお、先端側筒状体支持部、基端側筒状体支持部及び駆動部支持部の構成は前述した構成に限られない。例えば、先端側壁部50の外周面から先端側貫通孔51まで貫通するねじ孔を形成し、ねじ孔にねじを挿通して筒状体34を先端側壁部50に固定する構成でもよく、基端側筒状体支持部及び駆動部支持部についても同様である。また、基端側筒状体支持部である筒状体用孔62と駆動部支持部である雌ねじ部64は同一の部材である基端側壁部60に一体に形成されているが、別体に形成してもよい。
【0046】
図6及び図7は、関節部7A、7B、7Cに2本ずつ接続される6本のワイヤ20に設けられる張力検出手段13の構成を示す図である。図6及び図7に示すように、張力検出手段13は、ワイヤ20を拘束する直方体形状の拘束部材40と、拘束部材40に取り付けられる検出部材である歪ゲージ41と、を備える。拘束部材40はジュラコン、金属、樹脂等の部材から形成されている。ここで、拘束部材40の長手方向に対して平行な4つの側面のうちのいずれか1つの面を第1の面40Aとし、第1の面40Aに平行な面を第2の面40Bとする。拘束部材40の長手方向に対して垂直な2つの面を、それぞれ第3の面40C、第4の面40Dとする。また、拘束部材40の長手方向に対して平行で、かつ、第1の面40A及び第2の面40Bに対して垂直な2つ側面のうちいずれか1つの面を第5の面40Eとする。
【0047】
拘束部材40の第1の面40Aには、拘束部である円弧状の溝42が長手方向に第1の面40Aの全長にわたって(第3の面40Cから第4の面40Dまで)形成されている。ワイヤ20は溝42に挿通されるとともに、溝42でワイヤ20の長手方向の移動が拘束されている。図6に示すように、拘束部材40の溝42の幅t0は、ワイヤ20の拘束部材40で拘束されていない部分の径d0より小さく形成されている。これにより、ワイヤ20を溝42内に挿入することにより、拘束部である溝42でワイヤ20を拘束可能なとなっている。溝42の深さd1は、拘束部材40の第1の面40Aから第1の面40Aに平行な第2の面40Bまでの距離d2の略半分となっている。
【0048】
また、第1の面40Aに平行に切断した断面において、拘束部である溝42は、第3の面40Cと第4の面40Dとの間(長手方向について拘束部材40の両端間)を結ぶ直線から外れた非直線形状である円弧状に形成されている。このため、図7に示すように、拘束部材40の第3の面40Cと第4の面40Dとの間の距離S0より、拘束部である溝42に拘束されているワイヤ20の長さL0の方が長くなっている。すなわち、長手方向について拘束部材40の両端の間の距離S0より、拘束部である溝42に拘束されているワイヤ20の長さL0の方が長くなっている。
【0049】
長手方向に対して平行で、かつ、第1の面40Aに垂直な拘束部材40の第5の面40Eには歪ゲージ41が取り付けられている。歪ゲージ41は、信号線15を介してセンサ用アンプ16に接続されている(図2参照)。
【0050】
このような構成にすることにより、第3の面40Cと第4の面40Dとの間の距離S0より、拘束部である溝42に拘束されているワイヤ20の長さL0が長くなるため、ワイヤ20に生じる張力が拘束部材40に作用する。これにより、拘束部材40は変形し、拘束部材40の歪ゲージ41が取り付けられる第5の面40Eに垂直な方向に歪むことになる。この歪量を歪ゲージ41で検出することで、ワイヤ20の張力、すなわちプーリ23の力量を検出するようになっている。
【0051】
なお、拘束部材40は円柱形状に形成してもよい。この場合、ワイヤ20の軸方向に平行な円柱の側面に拘束部である溝42を形成し、拘束部材40の外周面の溝42から拘束部材40の周方向に略90°離れた位置に歪ゲージ41が取り付けられる。
【0052】
また、駆動機構10には、ワイヤ20の張力を調整するための張力調整機構が設けられている。張力調整機構は、パイプ32の雄ねじ部33と、基端側壁部60の雌ねじ部64と、から構成されている。前述のようにパイプ32の雄ねじ部33の長手方向の長さは、基端側壁部60の雌ねじ部64の長手方向の長さより長くなっている。このため、パイプ32の雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置が調整可能となっている。雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置を調整することにより、アクチュエータ部31を含めたワイヤ20のプーリ23に対する張力が調整される。すなわち、駆動部被支持部であるパイプ32に設けられる雄ねじ部33がワイヤ20の張力を調整する張力調整部となっている。ここで、アクチュエータ部31の張力も考慮したのは、アクチュエータ部31は、アクチュエータ部31の長手方向の長さの10%に相当する長さだけ長手方向に伸縮するため、伸縮量を考慮する必要があるからである。
【0053】
なお、本実施形態ではワイヤ20の張力調整機構は、パイプ32に設けられる雄ねじ部33と、基端側壁部60に設けられる雌ねじ部64と、から構成されるが、パイプ32に雌ねじ部を設け、基端側壁部60に雄ねじ部を設け、雄ねじ部と雌ねじ部との螺合位置を調整することにより、ワイヤ20の張力を調整してもよい。また、張力調整機構は雄ねじ部と雌ねじ部との螺合位置を調整する構成に限られず、駆動部を支持するための駆動部支持部に固定される駆動部被支持部が、張力調整部を備える構成であればよい。
【0054】
図11に示すように、パイプ32の雄ねじ部33の基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置の基端側には、ナット90が設けられている。ナット90の内周面には、パイプ32の雄ねじ部23と螺合する雌ねじ部91が設けられている。雌ねじ部91がパイプ32の雄ねじ部32と螺合することにより、ナット90は基端側壁部60の基端面に突き当たった状態でパイプ32に締め付けられる。
【0055】
このような構成にすることにより、ナット90によって基端側壁部60のパイプ32に対する長手方向の移動が規制される。このため、駆動部被支持部であるパイプ32の駆動部支持部である雌ねじ部64での固定位置が保持されている。すなわち、ナット90は、パイプ32の雄ねじ部33と基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を保持する保持ユニットとなっている。これにより、ワイヤ20の張力が調整された状態が保持される。
【0056】
なお、パイプ32の雄ねじ部33と基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を保持する保持ユニットは1つのナット90に限られるものではない。例えば、前述したように基端側筒状体支持部である筒状体用孔62と駆動部支持部である雌ねじ部64とを別体に形成し、駆動部支持部の先端側及び基端側からナット90でパイプ82を締め付けることにより、螺合位置を保持してもよい。また、保持ユニットの個数は複数であってもよい。また、保持ユニットとしては、ナット90に限るものではなく螺合位置を保持できる構造であればよい。さらに、例えばアクチュエータの力量が小さい場合で螺合のみで螺合位置を保持可能であれば、保持ユニットを設けなくてもよい。
【0057】
次に、本実施形態に係る駆動機構10の作用について説明する。本実施形態に係るマニピュレータ1では、駆動部であるアクチュエータ部31と一体に形成される流体給排部であるパイプ32の雄ねじ部33の一部と基端側壁部60の雌ねじ部64とが螺合することにより、アクチュエータ部31及びパイプ32が基端側壁部60に固定される状態で支持される。すなわち、流体給排部であるパイプ32が駆動部被支持部となっている。これにより、アクチュエータ部31及びパイプ32の基端方向への移動が規制されている。
【0058】
そして、アクチュエータ部31は、内部の圧力の変化に応じて基端面31Aを固定端、先端面31Bを自由端として固定される筒状体34の内部で長手方向に伸縮可能ないわゆる流体圧人工筋となっている。すなわち、電空レギュレータ12から加圧空気がパイプ32を通ってアクチュエータ部31に供給されると、アクチュエータ部31は径方向については膨張し、長手方向については基端面31Aが固定された状態で基端側に収縮する。これにより、アクチュエータ部31の先端面31Bに接続されるワイヤ20が基端方向に引張り動作される(図8の矢印A)。逆に、アクチュエータ部31から加圧空気が排出されると、アクチュエータ部31は径方向については圧縮され、長手方向については先端側に膨張する。これにより、アクチュエータ部31の先端面31Bに接続されるワイヤ20が先端方向に押出し動作される(図8の矢印B)。アクチュエータ部31の内部の圧力を調整して、拮抗型に配置された2本のワイヤ20を長手方向について逆平行に移動動作させることにより、プーリ23はワイヤ20の張力により駆動される。すなわち、関節部7A、7B、7Cであるプーリ23は、ワイヤ20の基端部に接続されるアクチュエータ30のアクチュエータ部31により駆動制御されている。
【0059】
また、駆動機構10にはワイヤ20の張力調整機構が設けられている。駆動部被支持部であるパイプ32の雄ねじ部33の駆動部支持部である雌ねじ部64との螺合位置が調整可能となっている。雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置を調整することにより、アクチュエータ部31を含めたワイヤ20のプーリ23に対する張力が調整される。すなわち、駆動部被支持部であるパイプ32に設けられる雄ねじ部33が線状動力伝達部材であるワイヤ20の張力を調整する張力調整部となっている。
【0060】
例えば把持駆動機構10Aにおいて、第2の把持部21Bの所望の回動範囲、すなわち把持関節部7Aであるプーリ23の所望の駆動範囲で、第1の把持部21Aと第2の把持部21Bとで適切に把持動作を行うために、初期時に以下の調整を行う。
【0061】
まず、2本のワイヤ20が接続されるアクチュエータ部31の駆動部被支持部であるパイプ32の雄ねじ部33を基端側壁部60の対応する雌ねじ部64と螺合する。螺合の際、プーリ23の所望の駆動範囲において、例えば第2の把持部21Bの第1の把持部21Aに対する位置が0°と90°の際にそれぞれのワイヤ20が弛まないように、すなわちアクチュエータ部31を含めたワイヤ20のプーリ23に対する張力が生じるように、それぞれの螺合位置を長手方向について調整する。さらに、螺合位置を長手方向について調整することにより、アクチュエータ部31を含めたワイヤ20のプーリ23に対する張力も変化する。これにより、第1の把持部21Aと第2の把持部21Bとで適切に把持動作を行うようになっている。ここで、アクチュエータ部31の張力も考慮したのは、アクチュエータ部31は、アクチュエータ部31の長手方向の長さの10%に相当する長さだけ長手方向に伸縮するため、伸縮量を考慮する必要があるからである。
【0062】
なお、マニピュレータ1は張力検出手段13を備えていることから、張力検出手段13によってそれぞれのワイヤ20の張力を検出しながら張力を調整することが可能である。これにより、適切な張力の調整が可能となっている。
【0063】
また、マニピュレータ1を使用していくと、ワイヤ20が伸びること等が原因でプーリ23の駆動範囲が変化し、第1の把持部21Aと第2の把持部21Bとでの把持動作が適切にできなくなることがある。この場合も、パイプ32の雄ねじ部33の基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を調整することにより、第1の把持部21Aと第2の把持部21Bで適切に把持動作を行うように張力を調整する。この際も、張力検出手段13によってそれぞれのワイヤ20の張力を検出しながら張力を調整することが可能である。これにより、適切な張力の調整が可能となっている。ここで、アクチュエータ部31の張力も考慮したのは、アクチュエータ部31は、アクチュエータ部31の長手方向の長さの10%に相当する長さだけ長手方向に伸縮するため、伸縮量を考慮する必要があるからである。
【0064】
さらに、ナット90によって基端側壁部60のパイプ32に対する長手方向の移動が規制される。このため、駆動部被支持部であるパイプ32の駆動部支持部である雌ねじ部64での固定位置が保持されている。すなわち、ナット90は、パイプ32の雄ねじ部33と基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を保持する保持ユニットとなっている。これにより、ワイヤ20の張力が調整された状態が保持される。
【0065】
そこで、上記構成の駆動機構10では以下の効果を奏する。すなわち、本実施形態の駆動機構10では、駆動部被支持部であるパイプ32の雄ねじ部33の駆動部支持部である雌ねじ部64との螺合位置が調整可能となっている。雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置を調整することにより、アクチュエータ部31を含めたワイヤ20のプーリ23に対する張力が調整される。駆動部被支持部であるパイプ32に設けられる雄ねじ部33が線状動力伝達部材であるワイヤ20の張力を調整する張力調整部となっていることにより、関節部であるプーリ23を駆動するワイヤ20の張力の張力調整部を備えるとともに、構成の単純化及び小型化を実現する駆動機構10を提供することができる。また、雄ねじ部33の雌ねじ部64との螺合位置を調整することでワイヤ20の張力の調整が可能であるため、簡単な構成の張力調整部を提供することができる。
【0066】
また、駆動機構10では、ナット90によって基端側壁部60のパイプ32に対する長手方向の移動が規制される。このため、駆動部被支持部であるパイプ32の駆動部支持部である雌ねじ部64での固定位置、すなわちパイプ32の雄ねじ部33と基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置が保持されている。これにより、ワイヤ20の張力が調整された状態を保持することができる。
【0067】
さらに、駆動機構10では、駆動部であるアクチュエータ部31が流体圧人工筋であり、駆動部被支持部であるとともに張力調整部を備えるパイプ32がアクチュエータ部31への流体給排部となっている。これにより、駆動機構10が小型化され、駆動手段であるアクチュエータ30を細径の管内に収納することができる。
【0068】
次に、本発明の第1の実施形態の第1乃至第3の変形例について図13乃至図16(A)(B)を参照して説明する。第1乃至第3の変形例では第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0069】
図13は、第1の変形例の駆動部被支持部であるパイプ32の構成を示す図である。図13に示すように、本変形例のパイプ32の円殻状の基端面32Aには、パイプ32の周方向に略180°離れた位置に2つの切込み70が設けられている。切込み70には、調整治具であるマイナスドライバー71のマイナス形状の先端が係合する。すなわち、切込み70はマイナスドライバー71と係合する被係合部となっている。このような構成にすることにより、マイナスドライバー71と切込み70とが係合した状態でパイプ32を回転することによって、パイプ32の雄ねじ部33の基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を調整することが可能となっている。
【0070】
図14は、第2の変形例の駆動部被支持部であるパイプ32の構成を示す図である。図14に示すように、本変形例のパイプ32では、基端の開口部73の長手方向に垂直な断面形状が六角形形状に形成されている。開口部73には、調整治具である六角レンチ74の六角形形状の先端が係合する。すなわち、開口部73は六角レンチ74と係合する被係合部となっている。このような構成にすることにより、六角レンチ74と開口部73とが係合した状態でパイプ32を回転することによって、パイプ32の雄ねじ部33の基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を調整することが可能となっている。
【0071】
図15は、第3の変形例の駆動部被支持部であるパイプ32の構成を示す図である。図15に示すように、本変形例のパイプ32の基端部には、パイプ32の外周面より外側に向けて突出する突出部75が設けられている。図16(A)(B)は、本変形例の調整治具76を示す図である。図16(A)(B)に示すように、調整治具76には、パイプ32の突出部75に引っ掛けられる引掛り部77が設けられている。すなわち、突出部75が調整治具76と係合する被係合部となっている。このような構成にすることにより、調整治具76の引掛り部77が突出部75に引っ掛けられた状態でパイプ32を回転することによって、パイプ32の雄ねじ部33の基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を調整することが可能となっている。
【0072】
以上の第1乃至第3の変形例では、調整治具が駆動部被支持部であるパイプ32に設けられる被係合部と係合した状態でパイプ32を回転することにより、駆動部被支持部であるパイプ32の駆動部支持部である雌ねじ部64での固定位置、すなわちパイプ32の雄ねじ部33の基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置を調整することが可能となっている。このため、調整治具を用いて容易にパイプ32を回転させることが可能である。これにより、容易にワイヤ20の張力を調整することができる。
【0073】
次に、本発明の第1の実施形態の第4の変形例について図17を参照して説明する。第4の変形例では第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0074】
図17は、第4の変形例の駆動被支持部であるパイプ32及び継足しパイプ80の構成を示す図である。図17に示すように、パイプ32の外周面には、雄ねじ部33がパイプ32の基端から長手方向に沿って設けられている。パイプ32の内周面には、雌ねじ部81がパイプ32の基端から長手方向に沿って設けられている。
【0075】
パイプ32の基端側には、継足し部材である継足しパイプ80がパイプ32に連結された状態で設けられている。継足しパイプ80は、先端側に設けられる第1の円筒部83と、基端側に設けられる第2の円筒部84と、から構成されている。第1の円筒部83の径はパイプ32の径より小径であり、第2の円筒部84の径はパイプ32の径と同一となっている。第1の円筒部83の外周面には、パイプ32の雌ねじ部81と螺合する連結雄ねじ部85が長手方向に沿って設けられている。パイプ32の雌ねじ部81と継足しパイプ80の連結雄ねじ部85とが螺合することにより、パイプ32に継足しパイプ80が連結される。第2の円筒部84の外周面には、継足し雄ねじ部87が第2の円筒部の先端から長手方向に沿って設けられている。継足し雄ねじ部87は、基端側壁部60の雌ねじ部64と螺合するようになっている。
【0076】
このような構成にすることにより、パイプ32に継足しパイプ80を連結した際、基端側壁部60の雌ねじ部64と螺合するパイプ32の雄ねじ部33及び継足しパイプ80の継足し雄ねじ部87が長手方向について連続的に形成される。このため、パイプ32の雄ねじ部33及び継足しパイプ80の継足し雄ねじ部87の範囲内で、基端側壁部60の雌ねじ部64との螺合位置が調整可能となる。すなわち、雄ねじ部33及び継足し雄ねじ部87が、ワイヤ20の張力を調整する張力調整部となる。これにより、パイプ32の雄ねじ部33だけでは調整量が足らない場合でも、ワイヤ20の張力の調整することができる。また、継足し雄ねじ部87が張力調整部となることにより、調整量を大きく取ることができる。
【0077】
また、継足しパイプ80の内周面に、パイプ32と同様の雌ねじ部81を設け、基端側にさらに別の継足しパイプ80を連結してもよい。これにより、継ぎ足す継足しパイプ80の数によって調整量を変えることが可能となり、汎用性を高めることができる。
【0078】
なお、本実施形態の駆動機構10はワイヤ20の張力及び長手方向への移動量をそれぞれ検出する張力検出手段13及び位置検出手段14を備えるが、必ずしも備える必要はない。
【0079】
また、駆動機構10の駆動部であるアクチュエータ部31は流体圧人工筋となっているが、例えば長手方向に伸縮する線状又は棒状の形状記憶合金部材等の長手方向に伸縮する部材であればよい。この場合、形状記憶合金部材の径を流体圧人工筋の膨張範囲より小さくすることにより、アクチュエータ部31を収納する管状部2の径を小さくすることが可能となる。
【0080】
また、駆動機構10では、先端部で関節部であるプーリ23に接続され、基端部がアクチュエータ部31に接続される線状動力伝達部材としてワイヤ20が用いられたが、アクチュエータ部31を前述した形状記憶合金部材から形成されるワイヤ(SMAワイヤ)として、SMAワイヤの先端部を関節部に接続してもよい。
【0081】
さらに、本実施形態では駆動機構10を軟性又は半軟性のマニピュレータ1に用いた場合について説明したが、管状部2が剛性を有する硬性マニピュレータに用いられてもよい。また、例えば内視鏡の湾曲駆動機構等のように、関節部を線状動力伝達部材の張力により駆動する駆動する駆動機構を備える装置であれば、駆動機構10を用いることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
7A,7B,7C…関節部、 8A,8B,8C…動作部、 10…駆動機構、 11…チューブ、 12…電空レギュレータ、 20…ワイヤ、 23…プーリ、 30…アクチュエータ、 31…アクチュエータ部、 31A…先端面、 31B…基端面、 32…パイプ、 33…雄ねじ部、 34…筒状体、 60…基端側壁部、 63…駆動部用孔、 64…雌ねじ部、 90…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を備える駆動手段と、
前記駆動手段を支持する駆動部支持部と、
前記駆動部に一端部が接続される線状動力伝達部材と、
前記線状動力伝達部材の他端部が接続されるとともに、前記線状動力伝達部材の張力によって駆動される関節部と、
を備える駆動機構において、
前記駆動手段は、前記駆動部に連結されるとともに、前記駆動部支持部に固定される駆動部被支持部を備え、
前記駆動部被支持部には、前記線状動力伝達部材の張力を調整する張力調整部が設けられていることを特徴とする駆動機構。
【請求項2】
前記張力調整部又は前記駆動部支持部のいずれか一方は、前記駆動部被支持部に長手方向に沿って形成される雄ねじ部であり、
他方は、前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部であることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
前記張力調整部は、さらに前記駆動部被支持部の駆動部と反対側に連結された状態で設けられる少なくとも1つの継足し部材を備え、
前記継足し部材には、前記雌ねじ部と螺合するとともに、前記雄ねじ部とともに長手方向に沿って前記線状動力伝達部材の前記張力調整部を構成する継足し雄ねじ部を備えることを特徴とする請求項2に記載の駆動機構。
【請求項4】
さらに前記駆動部被支持部の前記駆動部支持部での固定位置を保持する保持ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構。
【請求項5】
前記駆動部被支持部には、前記線状動力伝達部材の張力を調整する際に用いられる調整治具と係合する被係合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構。
【請求項6】
前記駆動部は、内部に流体を給排することで長手方向に伸縮する流体圧人工筋であり、
前記駆動部被支持部は、前記流体圧人工筋への流体給排部であることを特徴とする請求項1に記載の駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−221329(P2010−221329A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70736(P2009−70736)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】