説明

3相回転電機及びその製造方法

【課題】 分割コアを有するステータコイルの冷却性能の向上を図り、ステータの部品点数を低減可能な3相回転電機を提供する。
【解決手段】 本発明の3相回転電機は、ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された分割コアに集中巻き方式により巻線が巻装されている3相回転電機において、ボビンは、周方向に配される3つのボビンを一単位として、中央に位置するボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され、3個の分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、3個の分割コアには、ボビンユニットが軸方向両端から装着されており、ボビンユニットは、隣接するボビンユニットと内周側端部でシールされて、3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコイルの冷却性能の向上を図った3相回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
分割コアを有するステータコイルの冷却性能の向上を狙った発明として、例えば、特許文献1に記載の固定子構造が知られている。特許文献1に記載の固定子構造は、樹脂モールドされたコイル端部にバスバーを結線し、バスバーに冷却油を吹き付けてコイル端部を冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−89456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、コイル端部に結線されたバスバーを冷却するものであり、コイル端部を局所的に冷却するに留まり、ステータコイル全体の冷却は十分でなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、分割コアを有するステータコイルの冷却性能の向上を図り、ステータの部品点数を低減可能な3相回転電機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の3相回転電機は、ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線が巻装されている3相回転電機において、前記ボビンは、前記周方向に配される3つのボビンを一単位として、中央に位置するボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され、3個の前記分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、前記3個の分割コアには、前記ボビンユニットが軸方向両端から装着されており、前記ボビンユニットは、隣接するボビンユニットと内周側端部でシールされて、3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の3相回転電機は、請求項1に記載の3相回転電機において、前記冷却路に冷却媒体を圧送可能な冷却媒体供給カバーで前記軸線方向一端側が覆われている。
【0008】
請求項3に記載の3相回転電機は、請求項2に記載の3相回転電機において、前記冷却媒体供給カバーは、前記冷却路に対向して形成され前記冷却路に前記冷却媒体を吐出可能な開口部と、前記ステータコア側に突出して形成され前記ボビンの内周側鍔部および外周側鍔部と嵌合する突起部と、を有する。
【0009】
請求項4に記載の3相回転電機は、請求項3に記載の3相回転電機において、前記開口部には、前記冷却媒体を導入する配管が配設されている。
【0010】
請求項5に記載の3相回転電機は、請求項3に記載の3相回転電機において、前記突起部と前記ボビンの内周側鍔部との間および前記突起部と前記ボビンの外周側鍔部との間には、それぞれシール部材が配設されている。
【0011】
請求項6に記載の3相回転電機は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の3相回転電機において、前記冷却路に供給される冷却媒体の供給側から排出側にかけて、前記冷却路における前記巻線の相間距離が徐々に短くなっている。
【0012】
請求項7に記載の3相回転電機の製造方法は、ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線を巻装する3相回転電機の製造方法において、前記ボビンは、前記周方向に配される3つのボビンを一単位として、中央に位置するボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され、3個の前記分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、前記3個の分割コアに前記ボビンユニットを軸方向両端から装着する組立て工程と、前記3個の分割コアに装着された前記ボビンユニットの内周側側面を軸方向視においてΔ形状にして前記巻線を巻装する巻装工程と、前記巻線が巻装されたボビンユニットを前記周方向に沿わせて、隣接するボビンユニット同士を内周側端部でシールする封止工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の3相回転電機の製造方法は、ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線を巻装する3相回転電機の製造方法において、前記ボビンは、前記周方向に配される3つのボビンを一単位として、各ボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され内周側側面が軸方向視においてΔ形状を呈し、3個の前記分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、前記3個の分割コアに前記ボビンユニットを軸方向両端から装着する組立て工程と、前記3個の分割コアに装着された前記ボビンユニットに前記巻線を巻装する巻装工程と、前記巻線の巻装後に前記Δ形状の頂点のひとつを切開する切開工程と、前記Δ形状の頂点のひとつが切開されたボビンユニットを前記周方向に沿わせて、隣接するボビンユニット同士を内周側端部でシールする封止工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の3相回転電機は、ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線が巻装されている3相回転電機において、前記分割コアの隣接する前記ボビン間は、前記ボビンの内周側端部でシールされており、3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の3相回転電機によれば、ボビンユニットは、隣接するボビンユニットと内周側端部でシールされて3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されているので、3相の巻線間に冷却媒体を流通させて、ステータのうち最も発熱量が多い巻線を直接冷却することができる。また、隣接するボビンユニットの内周側端部はシールされているので、巻線から抜熱した冷却媒体がロータ側へ流出することを防止できる。そのため、冷却媒体によるロータへの伝熱及びロータの摩擦損失を低減することができる。
【0016】
ボビンユニットは、周方向に隣接する3つのボビンが一体に形成されているので、中央に位置するボビンと隣接するボビンとの内周側端部にシール部材を設ける必要がなく、冷却媒体の流路が拡大されて冷却性能が向上する。また、3つのボビンの内周側端部をそれぞれシール部材によってシールする場合と比べて、シール部材の使用量を1/3に低減することができる。さらに、3つのボビンが一体形成されているので、ステータの部品点数を低減させることができる。よって、部品点数の低減による信頼性の向上及びコストダウンを図ることができる。
【0017】
請求項2に記載の3相回転電機によれば、3相回転電機の軸線方向一端側が冷却媒体供給カバーで覆われており、冷却媒体供給カバーを介して、冷却路に冷却媒体を圧送することができる。そのため、別途、冷却媒体を供給する供給路を設ける必要がなく、作業工数の低減および3相回転電機の小型化を図ることができる。
【0018】
請求項3に記載の3相回転電機によれば、冷却媒体供給カバーは、ボビンの内周側鍔部および外周側鍔部と嵌合する突起部を有している。そのため、ボビンと冷却媒体供給カバーとを突起部で嵌合させることにより、冷却媒体供給カバーの開口部から吐出された冷却媒体がロータ側やステータハウジング側へ流出することを防止できる。
【0019】
請求項4に記載の3相回転電機によれば、冷却媒体供給カバーの開口部には、冷却媒体を導入する配管が配設されている。そのため、冷却媒体供給カバーに配設される配管を介して、冷却路に冷却媒体を圧送することができる。
【0020】
請求項5に記載の3相回転電機によれば、突起部とボビンの内周側鍔部との間および突起部とボビンの外周側鍔部との間には、それぞれシール部材が配設されている。そのため、ボビンと冷却媒体供給カバーとの嵌合部分のシール性が高まり、冷却媒体の流出防止効果を高めることができる。
【0021】
一般的に、「抜熱量は、熱交換面積と温度差に比例し、(理論上)流速の平方根に比例する。」ことが知られている。冷却媒体の供給側では、冷却媒体の排出側と比べて、巻線と冷却媒体との温度差が大きく冷却効率は高い。そのため、冷却媒体の流速を排出側と比べて低速にしても、十分な抜熱量を確保することができる。一方、冷却媒体の排出側では、巻線からの抜熱にしたがって冷却媒体の温度が上昇して、巻線と冷却媒体との温度差は小さくなり、冷却効率は低下する。そのため、冷却媒体の流速を供給側と比べて高速にして、必要な抜熱量を確保する必要がある。
【0022】
請求項6に記載の3相回転電機によれば、冷却路に供給される冷却媒体の供給側から排出側にかけて、冷却路における巻線の相間距離が徐々に短くなっているので、冷却媒体の供給側の流速と比べて、冷却媒体の排出側の流速を高速にすることができる。したがって、冷却媒体の供給側から排出側にかけて、冷却媒体の流速を徐々に速くして、巻線からの抜熱量を均一化することができる。
【0023】
請求項7に記載の3相回転電機の製造方法によれば、3個の分割コアに装着されたボビンユニットの内周側側面を軸方向視においてΔ形状にして巻線を巻装するので、巻装していないボビンが干渉せず、作業効率が向上する。また、Δ形状にして巻装することにより、2相分又は3相分の巻線を同時に巻装することもできる。
【0024】
請求項8に記載の3相回転電機の製造方法によれば、周方向に配される3つのボビンを一単位として、各ボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され内周側側面が軸方向視においてΔ形状を呈するボビンユニットを用いて巻線の巻回しを行い、巻装後にΔ形状の頂点のひとつを切開するので、巻装前にボビンユニットの周方向両端の内周側端部同士を当接させてΔ形状にする必要がなく、作業効率が向上する。また、分割コアとボビンユニットの組立ても容易である。
【0025】
請求項9に記載の3相回転電機によれば、分割コアの隣接するボビン間は、ボビンの内周側端部でシールされており、3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されている。そのため、3相の巻線間に冷却媒体を流通させて、ステータのうち最も発熱量が多い巻線を直接冷却することができる。また、隣接するボビン間は、ボビンの内周側端部でシールされているので、巻線から抜熱した冷却媒体がロータ側へ流出することを防止できる。そのため、冷却媒体によるロータへの伝熱及びロータの摩擦損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ステータの一部を模式的に示す斜視図である。
【図2】ボビン及び分割コアの構成を模式的に示す図であり、(a)は第1ボビンの斜視図、(b)は分割コアの斜視図、(c)は第2ボビンの斜視図である。
【図3】ボビンユニットの構成を模式的に示す図であり、(a)は第1ボビンユニットの斜視図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(a)のB部拡大図、(d)は第2ボビンユニットの斜視図である。
【図4】ステータの組立て工程の一部を説明する図であり、(a)は第2ボビンユニットの斜視図、(b)は第2ボビンユニットに分割コアを装着した状態を示す斜視図である。
【図5】ステータの組立て工程及び巻装工程を説明する図であり、(a)は第1ボビンユニットの斜視図、(b)は第1ボビンユニットを装着した状態を示す斜視図、(c)は1相分の巻線が巻装された状態を示す斜視図である。
【図6】巻装後の状態を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)のC部拡大図である。
【図7】ステータの一部を模式的に示す上面図である。
【図8】3相電動機の一例を示す断面図である。
【図9】第2実施形態に係り、冷却路を説明する径方向視断面図である。
【図10】第3実施形態に係り、ステータの一部を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態について共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより重複する説明を省略する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0028】
(1)第1実施形態
<3相回転電機の構成>
図1は、ステータの一部を模式的に示す斜視図である。図2は、ボビン及び分割コアの構成を模式的に示す図であり、(a)は第1ボビンの斜視図、(b)は分割コアの斜視図、(c)は第2ボビンの斜視図である。図3は、ボビンユニットの構成を模式的に示す図であり、(a)は第1ボビンユニットの斜視図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(a)のB部拡大図、(d)は第2ボビンユニットの斜視図である。
【0029】
本実施形態の3相回転電機は、ステータコア10が回転軸Xの周方向に分割されている分割コア11を有するステータ1と、ステータ1と同軸に対向して配される図示しないロータと、を備えており、集中巻き方式により巻線20が分割コア11に巻装されている。図1では、説明の便宜上、3個の分割コア11、11、11が図示されている。実際の3相回転電機は、3相を構成する3個の分割コア11、11、11を一単位として、分割コア11が回転軸Xの周方向に円環状に配されている。本明細書では、図1に示す一単位分の分割コア11から構成されるステータをステータユニット1Uという。
【0030】
分割コア11は、電磁鋼板からなるコアシートを軸方向に複数枚積層して形成されている。図2(b)に示すように、分割コア11は、円周方向に延在するヨーク部12と、ヨーク部12の内周側側面から回転軸X方向に突出して磁極を形成するティース部13と、を有している。ティース部13の先端部には、図示しないロータの外周面と対向可能な周方向に幅広の対向部131が形成されている。
【0031】
巻線20は、断面円形状の丸線が用いられ、導体表面がエナメル被覆などの絶縁層で保護されている。丸線以外にも断面多角形状の角線など、種々の断面形状の細線を用いることができる。細線を複数本並列に配列した並列細線を用いることもできる。
【0032】
分割コア11は、第1ボビン30及び第2ボビン40によって軸方向両端から狭持されている。第1ボビン30及び第2ボビン40は、樹脂などの絶縁材料からなり、射出成型によって形成されている。本明細書において、「ボビン」とは、ステータコア10と巻線20とを電気的に絶縁する絶縁部材をいい、インシュレータと呼称されることもある。図2(a)に示すように、第1ボビン30は、巻線20が巻回される胴部31と、胴部31の内周側側面に軸方向に延在する内周側鍔部32と、胴部31の外周側側面に軸方向に延在する外周側鍔部33と、を有している。内周側鍔部32及び外周側鍔部33は、胴部31と一体に形成されており、それぞれ対向している。第1ボビン30には、凹部が設けられており、軸方向からティース部13に被装可能になっている。以下、内周側鍔部32の周方向端部を単に第1ボビン30の内周側端部34、34という。また、外周側鍔部33の周方向端部を単に第1ボビン30の外周側端部35、35という。
【0033】
同図(c)に示すように、第2ボビン40は、ティース部13を周方向から狭持可能なコア狭持部41と、コア狭持部41と軸方向に一体に形成されてティース部13を支持可能なコア支持部42と、を有している。コア狭持部41は、内周側端部が周方向に折り曲げられて内周側折曲部411、411が形成され、外周側端部は周方向に折り曲げられて外周側折曲部412、412が形成されている。内周側折曲部411、411は、分割コア11の対向部131と当接可能になっており、外周側折曲部412、412は、分割コア11のヨーク部12と当接可能になっている。コア支持部42は、周方向側端部が軸方向に延在して側面支持部421、421が形成されている。側面支持部421、421は、内周側折曲部411、411とそれぞれ接合されている。以下、側面支持部421、421の周方向端部を単に第2ボビン40の内周側端部43、43という。また、外周側折曲部412、412の周方向端部を単に第2ボビン40の外周側端部44、44という。
【0034】
3個の分割コア11、11、11の軸方向一端側には、図3(a)に示すように、周方向に配される3つの第1ボビン30、30、30を一単位として第1ボビンユニット50が構成されている。第1ボビンユニット50は、中央に位置する第1ボビン30の内周側両端部34、34が、隣接する第1ボビン30の内周側端部34とそれぞれ屈曲可能に一体に形成されて第1屈曲部36、36になっている。中央に位置する第1ボビン30の外周側両端部35、35は、隣接する第1ボビン30の外周側端部35とそれぞれ当接可能になっている。同図(b)に示すように、第1屈曲部36は、外周方向に開口する薄肉の第1凹部361を有しており、周方向両端に位置する第1ボビン30、30は、第1屈曲部36、36を支点にしてそれぞれ内周側に回転可能になっている。同図(c)に示すように、周方向両端の内周側端部34、34は、周方向に開口する薄肉の第2凹部341をそれぞれ有している。
【0035】
3個の分割コア11、11、11の軸方向他端側には、同図(d)に示すように、周方向に配される3つの第2ボビン40、40、40を一単位として第2ボビンユニット60が構成されている。第2ボビンユニット60は、中央に位置する第2ボビン40の内周側両端部43、43が、隣接する第2ボビン40の内周側端部43とそれぞれ屈曲可能に一体に形成されて第2屈曲部45、45になっている。中央に位置する第2ボビン40の外周側両端部44、44は、隣接する第2ボビン40の外周側端部44とそれぞれ当接可能になっている。第2屈曲部45は、第1屈曲部36と同形状の外周方向に開口する薄肉の第3凹部を有しており、周方向両端に位置する第2ボビン40、40は、第2屈曲部45、45を支点にしてそれぞれ内周側に回転可能になっている。周方向両端の内周側端部43、43は、第2凹部341と同形状の周方向に開口する薄肉の第4凹部をそれぞれ有している。
【0036】
<3相回転電機の製造方法>
次に、既述の分割コア11、第1ボビンユニット50、第2ボビンユニット60及び巻線20を用いて、3相回転電機のステータ1を製造する方法を詳述する。本実施形態の3相回転電機の製造方法は、組立て工程、巻装工程及び封止工程を有しており、この順にステータ1の製造が行われる。図4は、ステータの組立て工程の一部を説明する図であり、(a)は第2ボビンユニットの斜視図、(b)は第2ボビンユニットに分割コアを装着した状態を示す斜視図である。図5は、ステータの組立て工程及び巻装工程を説明する図であり、(a)は第1ボビンユニットの斜視図、(b)は第1ボビンユニットを装着した状態を示す斜視図、(c)は1相分の巻線が巻装された状態を示す斜視図である。図6は、巻装後の状態を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は(b)のC部拡大図である。
【0037】
(組立て工程)
組立て工程は、3個の分割コア11、11、11に第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60を軸方向両端からそれぞれ装着する工程である。まず、図4(a)に示すように、第2ボビンユニット60の周方向両端に位置する第2ボビン40、40を第2屈曲部45、45を支点にして、それぞれ内周側に回転させる。そして、周方向両端の内周側端部43、43同士を当接させる。この状態で同図(b)に示すように、第2ボビンユニット60に3個の分割コア11、11、11を装着する。
【0038】
次に、図5(a)に示すように、第1ボビンユニット50の周方向両端に位置する第1ボビン30、30を第1屈曲部36、36を支点にして、それぞれ内周側に回転させる。そして、周方向両端の内周側端部34、34同士を当接させる。この状態で上述の3個の分割コア11、11、11に第1ボビンユニット50を装着する。このとき、第1ボビンユニット50の内周側端部34、34の当接部37と第2ボビンユニット60の内周側端部43、43の当接部46とが同一直線上に揃うようにする。同図(b)は、3個の分割コア11、11、11に第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60が軸方向両端からそれぞれ装着された状態を示している。
【0039】
本実施形態では、第2ボビンユニット60に3個の分割コア11、11、11を装着した後に第1ボビンユニット50を装着しているが、第1ボビンユニット50に3個の分割コア11、11、11を装着した後に第2ボビンユニット60を装着しても良い。また、3個の分割コア11、11、11を第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60で狭持した後に、内周側端部34、34同士及び内周側端部43、43同士をそれぞれ当接させて同図(b)の状態にすることもできる。
【0040】
(巻装工程)
巻装工程は、図5(b)に示すように、3個の分割コア11、11、11に装着された第1ボビンユニット50の内周側側面321、321、321を軸方向視においてΔ形状にして巻線20を巻装する工程である。同図(c)に示すように、1相分の巻回し後に次の相の巻回しを行い3相分の巻線20を巻装しても良く、2相分又は3相分を同時に巻装することもできる。図6は、3相分の巻線20が巻装された状態を示している。
【0041】
同図(b)及び(c)に示すように、本工程は、第1ボビンユニット50の内周側側面321、321、321を軸方向視においてΔ形状にして巻装することに特徴がある。第1屈曲部36、36及び当接部37は、Δ形状の頂点になる。Δ形状にして巻装することにより、巻装していない他の第1ボビン30、30が干渉せず、作業効率が向上する。また、Δ形状にして巻装することにより、2相分又は3相分の巻線20を同時に巻装することもできる。なお、内周側側面321は周方向に湾曲しており、正確にはΔ形状とは言えないが、本明細書では、説明の便宜上、Δ形状と称する。
【0042】
第1ボビンユニット50の内周側側面321、321、321を軸方向視においてΔ形状にすると、それと対をなす第2ボビンユニット60の内周側側面もΔ形状になる。したがって、巻装工程は、第2ボビンユニット60の内周側側面を軸方向視においてΔ形状にして巻線20を巻装する工程でもある。この場合の内周側側面は、内周側折曲部411、411及び側面支持部421、421によって周方向に形成される面をいう。
【0043】
(封止工程)
封止工程は、巻線20が巻装された第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60を周方向に沿わせて、隣接する第1ボビンユニット50同士及び第2ボビンユニット60同士を内周側端部でそれぞれシールする工程である。図6(b)、(c)に示すように、3相分の巻線20が巻装された状態において、当接部37に隣接する第1ボビン30、30を第1屈曲部36、36を支点にして、第1屈曲部36の開口部を狭める方向にそれぞれ回転させる。内周側側面321、321、321が同一円周上に配されるまで回転させると、図1に示すステータユニット1Uの状態になる。なお、既述のとおり、第2ボビンユニット60の当接部46に隣接する第2ボビン40、40を回転させても同じことである。この場合は、第2ボビン40、40を第2屈曲部45の開口部を狭める方向に回転させる。
【0044】
図7は、ステータの一部を模式的に示す上面図である。同図は、2つのステータユニット1U、1Uが周方向に配されている状態を示している。周方向に隣接する2つの第1ボビンユニット50、50は、内周側端部34、34でシール部材70によってシールされている。第1ボビンユニット50と同様に、周方向に隣接する2つの第2ボビンユニット60、60は、内周側端部43、43でシール部材70によってシールされている。シール部材70は、ステータ1をステータハウジングに焼きばめ又は圧入固定するときに、第1ボビンユニット50の内周側端部34、34及び第2ボビンユニット60の内周側端部43、43によってそれぞれ挟み込まれる。シール部材70は、内周側端部34及び内周側端部43の形状に合わせた形状にする。本実施形態では、内周側端部34、34同士又は内周側端部43、43同士をそれぞれ当接させると、軸方向視の断面形状が円形となるので、環状のシール部材を用いている。シール部材70は、例えば、ゴムなどの絶縁材を用いることができる。内周側端部34及び内周側端部43は、同一形状であり軸線方向に連通している。そのため、シール部材70は、第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60の軸線方向に亘って一体に形成されているが、別体に形成することもできる。
【0045】
本実施形態では、3相の巻線20、20間に軸線方向に延びる冷却路71が形成されている。冷却路71は、3相の巻線20、20間に軸線方向に設けられているので、3相の巻線20、20間に冷却媒体を流通させて、ステータ1のうち最も発熱量が多い巻線20を直接冷却することができる。また、第1ボビンユニット50の周方向両端の内周側端部34、34及び第2ボビンユニット60の周方向両端の内周側端部43、43は、シール部材70によってシールされているので、巻線20から抜熱した冷却媒体がロータ側へ流出することを防止できる。そのため、冷却媒体によるロータへの伝熱及びロータの摩擦損失を低減することができる。
【0046】
第1ボビンユニット50は、周方向に隣接する3つの第1ボビン30、30、30が一体に形成されているので、中央に位置する第1ボビン30と隣接する第1ボビン30、30との内周側端部(第1屈曲部36、36)にシール部材70を設ける必要がない。よって、3つの第1ボビン30、30、30の内周側端部をそれぞれシール部材70によってシールする場合と比べて、シール部材70の使用量を1/3に低減することができる。また、第1屈曲部36、36は軸方向に連通しているので、冷却媒体の流路となり、冷却媒体の流路が拡大されて冷却性能が向上する。さらに、3つの第1ボビン30、30、30が一体形成されているので、ステータ1の部品点数を低減させることができる。よって、部品点数の低減による信頼性の向上及びコストダウンを図ることができる。以上のことは、第2ボビンユニット60についても同様に言える。
【0047】
(変形形態)
本変形形態では、第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60の代わりに第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61を用いる。第1ボビンユニット51は、周方向に配される3つの第1ボビン30、30、30を一単位として、各第1ボビン30の内周側両端部34、34が隣接する第1ボビン30の内周側端部34と屈曲可能に一体に形成され、内周側側面321、321、321が軸方向視においてΔ形状を呈している。屈曲部は、既述の第1屈曲部36と同形状であり、第1屈曲部36、36、36がΔ形状の頂点になる。同様に、第2ボビンユニット61は、周方向に配される3つの第2ボビン40、40、40を一単位として、各第2ボビン40の内周側両端部43、43が隣接する第2ボビン40の内周側端部43と屈曲可能に一体に形成され、内周側側面が軸方向視においてΔ形状を呈している。屈曲部は、既述の第2屈曲部45と同形状であり、第2屈曲部45、45、45がΔ形状の頂点になる。第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61は、第1ボビンユニット50及び第2ボビンユニット60と同様に、3個の分割コア11、11、11に軸方向両端から装着可能になっている。
【0048】
組立て工程は、3個の分割コア11、11、11に第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61を軸方向両端から装着する工程である。巻装工程は、3個の分割コア11、11、11に装着された第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61に巻線20を巻装する工程である。既述の実施形態と同様、装着及び巻装の順序は問わない。
【0049】
本変形形態では、巻線20の巻装後にΔ形状の頂点のひとつを切開する切開工程を有する。切開工程では、第1ボビンユニット51のΔ形状の頂点である第1屈曲部36、36、36のひとつを軸方向に切開する。同様に、第2ボビンユニット61のΔ形状の頂点である第2屈曲部45、45、45のひとつを軸方向に切開する。これにより、第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61を展開して周方向に沿わせることができる。
【0050】
本変形形態では、内周側側面が軸方向視においてΔ形状を呈する第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61を用いて巻線20の巻回しを行い、巻装後にΔ形状の頂点のひとつを切開するので、巻装前に周方向両端の内周側端部34、34同士及び周方向両端の内周側端部43、43同士をそれぞれ当接させてΔ形状にする必要がなく、作業効率が向上する。また、3個の分割コア11、11、11、第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61の組立ても容易である。
【0051】
封止工程は、Δ形状の頂点のひとつが切開された第1ボビンユニット51及び第2ボビンユニット61を周方向に沿わせて、隣接する第1ボビンユニット51同士及び第2ボビンユニット61同士を内周側端部でそれぞれシールする工程である。シール箇所及びシール部材は、既述の実施形態と同様である。
【0052】
<3相回転電機>
図8は、3相電動機の一例を示す断面図である。図8に示す3相電動機は、ハイブリッド車両の車輪駆動用の3相同期モータであり、既述のステータ1及びロータ2をモータハウジング3に内蔵した状態で、モータカバー4(本発明の「冷却媒体供給カバー」に相当)により封止されている。3相電動機の一端側は、図示しない車両のトランスミッションに接続され、3相電動機の他端側は、図示しないエンジンの出力軸に係脱可能に接続されている。
【0053】
ステータ1は、ステータハウジング100を介してボルト300でモータハウジング3に固定されている。ステータ1は、既述のステータユニット1Uが回転軸Xの周方向に円環状に配されており、隣接するステータユニット1Uは、内周側端部同士がシール部材70によってシールされている。ステータ1は、同相の巻線20が相毎にそれぞれ直列接続されており、直列接続された巻線20の一端側はY結線されている。直列接続された巻線20の他端側は、図示しないインバータを介して車両バッテリに接続されている。車両バッテリの電力は、インバータによって3相交流に変換された後、3相電動機に供給されてロータ2を駆動することができる。3相電動機によって発電された電力は、インバータを介して車両バッテリに充電される。なお、同図では、冷却媒体が3相の巻線20間を軸線方向(同図に示す矢印D方向)に流れることを明示するために、ステータ1は、模式的に示されている。
【0054】
ステータ1の径方向内周側には、ステータ1と所定のギャップを保持して対向するロータ2が配されている。ロータ2は、複数の積層鋼板から形成されており、ロータ2の円周上には、複数の界磁極用マグネットが設けられている。ロータ2は、シャフト5と同軸に回転可能に固定されており、シャフト5は、軸受500、500を介してモータハウジング3及びモータカバー4に支承されている。モータカバー4は、ボルト300でモータハウジング3に固定されている。図示しない車両バッテリからインバータを介して、巻線20に対して三相の交流電流が供給されることにより、ステータ1において回転磁界が発生し、回転磁界に起因する吸引力又は反発力によって、ステータ1に対してロータ2が回転する。
【0055】
モータカバー4には、冷却媒体を吐出可能な配管400(本発明の「配管」に相当)が軸方向Xに突出して形成されており、配管400は、ポンプ6の吐出口600に接続されている。ポンプ6の吸入口601は、配管401によりリザーバ7に接続されている。リザーバ7には、ステータ1の巻線20を冷却可能な冷却媒体が貯蔵されている。冷却媒体は、例えば、油や空気、窒素などの冷却剤を用いることができる。なお、同図では、ポンプ6及びリザーバ7は、3相電動機と別体に記載されているが、実際には、ポンプ6は3相電動機と一体化されており、リザーバ7はモータハウジング3内に形成されている。
【0056】
第2ボビンユニット60の軸方向端部は、ゴム製のオーリング8、8を介してモータカバー4に接続さており、ポンプ6から吐出された冷却媒体がロータ2側やステータハウジング100側に漏れ出さないように接続部分が密閉されている。第2ボビンユニット60の軸方向端部は、本発明の「内周側鍔部および外周側鍔部」に相当し、オーリング8、8は、本発明の「シール部材」に相当する。また、同図に示すように、モータカバー4のうちステータ1側に突出している部分は、本発明の「突起部」に相当する。ポンプ6から吐出された冷却媒体は、配管400に導入されて配管400の開口部402(本発明の「開口部」に相当)からステータ1の巻線20に向けて吐出される。冷却媒体は、3相の巻線20間を矢印D方向に流れて、図示しない配管を経由してリザーバ7に排出される。冷却媒体は、3相の巻線20間を通過するときに3相電動機の駆動によって巻線20に生じた熱を抜熱する。
【0057】
本実施形態の3相電動機は、隣接するステータユニット1Uの内周側端部同士がシール部材70によってシールされているので、3相の巻線20間を矢印D方向に流れる冷却媒体がロータ2側に流出することを防止できる。そのため、冷却媒体によるロータ2への伝熱及びロータ2の摩擦損失を低減することができる。なお、ロータ2側への冷却媒体の流出をより抑制するため、冷却媒体の排出側にも、モータカバー4と同様のカバーを配置してもよい。
【0058】
(2)第2実施形態
本実施形態は、第1実施形態と比べて、3相の巻線20間に形成される冷却路71の形態が異なる。具体的には、冷却路71に供給される冷却媒体の供給側から排出側にかけて、冷却路71における巻線20の相間距離が徐々に短くなっており、冷却路71は、冷却媒体の供給側と比べて、冷却媒体の排出側の流路が狭くなっている。第1実施形態と共通する箇所には、共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。
【0059】
図9は、冷却路を説明する径方向視断面図である。同図は、2相分の分割コア11、11を軸線方向に切断して、巻線20、20間に形成される冷却路71を模式的に示したものである。同図では、冷却媒体の供給側を矢印D1方向で示し、冷却媒体の排出側を矢印D2方向で示している。よって、冷却媒体は、矢印D1方向側から矢印D2方向側(つまり矢印D方向)に供給される。また、巻線20、20の熱交換面と冷却媒体との境界を境界層BL1、BL2とする。なお、説明の便宜上、巻線20、20は、それぞれ第1ボビン30および第2ボビン40に3重に巻回されているものとし、巻回し状態を3重の円環で示している。
【0060】
同図に示すように、第1ボビン30および第2ボビン40において、巻線20が巻回される部分の肉厚は、冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)が最も薄肉になっており、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)にかけて徐々に厚肉になっている。具体的には、第2ボビン40のコア狭持部41において、巻線20が巻回される部分の肉厚は、コア支持部42と接続される部分が最も薄肉になっており、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)にかけて徐々に厚肉になっている。軸線方向において、コア狭持部41の肉厚が最も薄肉の部分(コア支持部42と接続される部分)の周方向長を最小周方向長L1とする。
【0061】
第1ボビン30の胴部31において、巻線20が巻回される部分の肉厚は、コア狭持部41と接続される部分が最も薄肉になっており、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)にかけて徐々に厚肉になっている。軸線方向において、胴部31の肉厚が最も厚肉の部分の周方向長を最大周方向長L2とする。このように、第1ボビン30および第2ボビン40において、巻線20が巻回される部分の肉厚が徐変されているので、最大周方向長L2は、最小周方向長L1と比べて長くなっている。よって、第1ボビン30および第2ボビン40に巻線20を巻装すると、冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)の冷却路71における巻線20、20の相間距離G1は、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)の冷却路71における巻線20、20の相間距離G2と比べて大きくなる。
【0062】
一般的に、「抜熱量は、熱交換面積と温度差に比例し、(理論上)流速の平方根に比例する。」ことが知られている。冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)では、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)と比べて、巻線20、20と冷却媒体との温度差が大きく冷却効率は高い。そのため、冷却媒体の流速を排出側(矢印D2方向側)と比べて低速にしても、十分な抜熱量を確保することができる。一方、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)では、巻線20、20からの抜熱にしたがって冷却媒体の温度が上昇して、巻線20、20と冷却媒体との温度差は小さくなり、冷却効率は低下する。そのため、冷却媒体の流速を供給側(矢印D1方向側)と比べて高速にして、必要な抜熱量を確保する必要がある。
【0063】
本実施形態では、冷却路71に供給される冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)から排出側(矢印D2方向側)にかけて、冷却路71における巻線20、20の相間距離G1、G2が徐々に短くなっているので、冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)の流速と比べて、冷却媒体の排出側(矢印D2方向側)の流速を高速にすることができる。したがって、冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)から排出側(矢印D2方向側)にかけて、冷却媒体の流速を徐々に速くして、巻線20、20からの抜熱量を均一化することができる。
【0064】
なお、冷却路71の流路抵抗や冷却媒体の粘性等により、境界層BL1、BL2の厚さが変化し、必要な冷却媒体の流速も変化する。そのため、冷却路71の流路抵抗や冷却媒体の粘性等を考慮して、冷却路71における巻線20、20の相間距離G1、G2を予め導出しておくと好適である。冷却路71における巻線20、20の相間距離G1、G2の導出方法は限定されない。例えば、公知の対流伝熱シミュレーション、実機による測定等によって、導出することができる。
【0065】
また、冷却路71における巻線20、20の相間距離G1、G2を可変する方法は、限定されない。例えば、冷却媒体の供給側(矢印D1方向側)と排出側(矢印D2方向側)とにおいて、巻線20の巻回し方法を変更することによって、冷却路71における巻線20、20の相間距離G1、G2を可変することもできる。また、巻線20の巻回し方法の変更と併せて、第1ボビン30および第2ボビン40において、巻線20が巻回される部分の肉厚を徐変することもできる。
【0066】
(3)第3実施形態
本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態と比べて、第1ボビンユニット50および第2ボビンユニット60が構成されていない点で異なる。そのため、隣接する第1ボビン30間は、第1ボビン30の内周側端部34でそれぞれシールされており、隣接する第2ボビン40間は、第2ボビン40の内周側端部43でそれぞれシールされている。第1実施形態および第2実施形態と共通する箇所には、共通の符号を付して対応させることにより、重複する説明を省略する。
【0067】
図10は、ステータの一部を模式的に示す上面図である。同図は、2つのステータユニット1U、1Uに相当する6つの第1ボビン30が周方向に配されている状態を示している。周方向に隣接する第1ボビン30間は、第1ボビン30の内周側端部34でシール部材70によってそれぞれシールされている。同様に、周方向に隣接する第2ボビン40間は、第2ボビン40の内周側端部43でシール部材70によってそれぞれシールされている。シール部材70は、ステータ1をステータハウジングに焼きばめ又は圧入固定する際に、第1ボビン30の内周側端部34、34および第2ボビン40の内周側端部43、43によってそれぞれ挟み込まれる。シール部材70の材質および形状等は、第1実施形態および第2実施形態と同様である。
【0068】
本実施形態では、第1実施形態および第2実施形態と同様に、3相の巻線20、20間に軸線方向に延びる冷却路71が形成されている。そのため、3相の巻線20、20間に冷却媒体を流通させて、ステータ1のうち最も発熱量が多い巻線20を直接冷却することができる。また、隣接する第1ボビン30間は、第1ボビン30の内周側端部34でシールされており、隣接する第2ボビン40間は、第2ボビン40の内周側端部43でシールされている。そのため、巻線20から抜熱した冷却媒体がロータ側へ流出することを防止でき、冷却媒体によるロータへの伝熱およびロータの摩擦損失を低減することができる。
【0069】
本実施形態における3相回転電機の製造方法は、組立て工程、巻装工程および封止工程を有しており、この順にステータ1の製造が行われる。組立て工程では、1個の分割コア11に第1ボビン30および第2ボビン40を軸方向両端から装着する。巻装工程では、分割コア11に装着された第1ボビン30および第2ボビン40に巻線20を巻装する。封止工程では、巻線20が巻装された第1ボビン30および第2ボビン40を周方向に沿わせて、隣接する第1ボビン30同士を内周側端部34でシールして、隣接する第2ボビン40同士を内周側端部43でシールする。なお、巻装工程では、3つの第1ボビン30、30、30の内周側側面321、321、321が軸方向視においてΔ形状になるように第1ボビン30、30、30を固定して、巻線20を巻装することもできる。この場合、第2ボビン40についても同様である。
【0070】
(4)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。例えば、周方向に配される2つのボビンを一単位として、分割コアの軸方向両端にそれぞれボビンユニットを構成することも可能である。
【0071】
ロータは、永久磁石を用いたものであっても、巻線を用いたものであっても良い。永久磁石形のロータは、巻線の発熱による温度上昇が生じないので、ロータの温度保護が不要となる。また、3相回転電機は、直流機、同期機又は誘導機のいずれであっても良い。直流励磁の場合は、励磁電流により磁力調整が可能であり、交流励磁の場合は、周波数により速度制御をすることができる。誘導機の場合は、巻線に接続する抵抗値により始動特性を変えることもできる。
【0072】
ロータは、ステータの内周側にロータを配置するインナーロータであっても、ステータの外周側にロータを配置するアウターロータであっても良い。インナーロータは慣性モーメントが小さく、3相回転電機の速度制御が容易である。アウターロータは、逆に慣性モーメントが大きく、駆動トルクも大きくできるので、定速度運転に優れる。
【符号の説明】
【0073】
1:ステータ
2:ロータ
10:ステータコア 11:分割コア
20:巻線
30:第1ボビン 40:第2ボビン
50:第1ボビンユニット 60:第2ボビンユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線が巻装されている3相回転電機において、
前記ボビンは、前記周方向に配される3つのボビンを一単位として、中央に位置するボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され、3個の前記分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、
前記3個の分割コアには、前記ボビンユニットが軸方向両端から装着されており、前記ボビンユニットは、隣接するボビンユニットと内周側端部でシールされて、3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されていることを特徴とする3相回転電機。
【請求項2】
前記冷却路に冷却媒体を圧送可能な冷却媒体供給カバーで前記軸線方向一端側が覆われている請求項1に記載の3相回転電機。
【請求項3】
前記冷却媒体供給カバーは、前記冷却路に対向して形成され前記冷却路に前記冷却媒体を吐出可能な開口部と、前記ステータコア側に突出して形成され前記ボビンの内周側鍔部および外周側鍔部と嵌合する突起部と、を有する請求項2に記載の3相回転電機。
【請求項4】
前記開口部には、前記冷却媒体を導入する配管が配設されている請求項3に記載の3相回転電機。
【請求項5】
前記突起部と前記ボビンの内周側鍔部との間および前記突起部と前記ボビンの外周側鍔部との間には、それぞれシール部材が配設されている請求項3に記載の3相回転電機。
【請求項6】
前記冷却路に供給される冷却媒体の供給側から排出側にかけて、前記冷却路における前記巻線の相間距離が徐々に短くなっている請求項1〜5のいずれか一項に記載の3相回転電機。
【請求項7】
ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線を巻装する3相回転電機の製造方法において、
前記ボビンは、前記周方向に配される3つのボビンを一単位として、中央に位置するボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され、3個の前記分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、
前記3個の分割コアに前記ボビンユニットを軸方向両端から装着する組立て工程と、
前記3個の分割コアに装着された前記ボビンユニットの内周側側面を軸方向視においてΔ形状にして前記巻線を巻装する巻装工程と、
前記巻線が巻装されたボビンユニットを前記周方向に沿わせて、隣接するボビンユニット同士を内周側端部でシールする封止工程と、
を有することを特徴とする3相回転電機の製造方法。
【請求項8】
ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線を巻装する3相回転電機の製造方法において、
前記ボビンは、前記周方向に配される3つのボビンを一単位として、各ボビンの内周側両端部が隣接するボビンの内周側端部と屈曲可能に一体に形成され内周側側面が軸方向視においてΔ形状を呈し、3個の前記分割コアに軸方向両端から装着可能に軸方向で分割されたボビンユニットとして構成され、
前記3個の分割コアに前記ボビンユニットを軸方向両端から装着する組立て工程と、
前記3個の分割コアに装着された前記ボビンユニットに前記巻線を巻装する巻装工程と、
前記巻線の巻装後に前記Δ形状の頂点のひとつを切開する切開工程と、
前記Δ形状の頂点のひとつが切開されたボビンユニットを前記周方向に沿わせて、隣接するボビンユニット同士を内周側端部でシールする封止工程と、
を有することを特徴とする3相回転電機の製造方法。
【請求項9】
ステータコアが回転軸の周方向に分割されている分割コアを有するステータと、前記ステータと同軸に対向して配されるロータと、を備え、絶縁材料からなるボビンが装着された前記分割コアに集中巻き方式により巻線が巻装されている3相回転電機において、
前記分割コアの隣接する前記ボビン間は、前記ボビンの内周側端部でシールされており、3相の巻線間に軸線方向に延びる冷却路が形成されていることを特徴とする3相回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−70595(P2013−70595A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152077(P2012−152077)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】