説明

3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体およびその製造方法

【課題】医農薬およびそれらの合成中間体として有用な3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン類の簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類を環化させ、式(1)


(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基等を示す。nは、1または2を示す。)で表される3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンおよびその誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン類は、医農薬およびそれらの合成中間体として工業的に有用である。例えば、5−クロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンが、パーキンソン病治療薬の合成中間体として有用であることが特許文献1に記載されている。3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン類の製造法として、アニリン類から多段階の工程を経て得られるイサチン類に(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリドを用いてフッ素化する方法が開示されている(例えば特許文献1および2参照)。一方、本発明の(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類を環化させる一段階の製造方法は、これまでに報告が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−506738.
【特許文献2】特開2006−515012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医農薬およびそれらの合成中間体として工業的に有用な、新規な3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体およびそのアニリン類を原料とした簡便かつ効率の良い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類を環化させることにより、一段階で新規な3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体が得られ、3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体を簡便かつ効率良く製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、一般式(1a)
【0007】
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R2aは、シアノ基、(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基または(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基を示す。)で表されることを特徴とする3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体に関するものである。また本発明は、一般式(2)
【0008】
【化2】

(式中、Rは、前記と同じ内容を示す。Rは、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、または(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基を示す。nは、1または2を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類を環化させることを特徴とする一般式(1)
【0009】
【化3】

(式中、R、Rおよびnは、前記と同じ内容を示す。)で表される3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体の製造方法に関するものである。さらに本発明は、一般式(3)
【0010】
【化4】

(式中、R、Rおよびnは、前記と同じ内容を示す。)で表されるアニリン類と、一般式(4)
【0011】
【化5】

(式中、Xは臭素原子またはヨウ素原子を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるジフルオロ酢酸エステル類を、一般式(5)
【0012】
【化6】

(式中、R4aおよびR4bは、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるスルホキシド類、鉄化合物および過酸化物の存在下に反応させ、次いで環化させることを特徴とする一般式(1)
【0013】
【化7】

(式中、R、Rおよびnは、前記と同じ内容を示す。)で表される3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、医農薬およびそれらの合成中間体として有用な3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン類を簡便な方法で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。はじめに本発明の3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体(1a)の置換基RおよびR2aについて説明する。
【0016】
で示される炭素数1から4のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。
【0017】
2aで示される(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、sec−ブチルカルボニル基、ピバロイル基等が例示できる。
【0018】
2aで示される(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が例示できる。
【0019】
2aは、Rに全て包含される。従って、一般式(1a)で表される3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体は、一般式(1)で表される3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体に全て包含される。
【0020】
次に、3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体(1a)の製造方法について詳細に述べる。原料の(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2a)の製造方法に特に限定はないが、一般式(3a)
【0021】
【化5】

(式中、RおよびR2aは、前記と同じ内容を示す。)で表されるアニリン類とジフルオロ酢酸アルキル類(4)を、スルホキシド類(5)、鉄化合物および過酸化物の存在下で反応させて製造することができる(工程1a−1)。
【0022】
【化6】

(式中、R、R2a、RおよびXは、前記と同じ内容を示す。)
(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2a)は、全て(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)に包含される。また、アニリン類(3a)は、全てアニリン類(3)に包含される。
【0023】
ジフルオロ酢酸エステル類(4)、スルホキシド類(5)、鉄化合物、過酸化物や反応条件等は、後述する(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)の製造方法と同様である。
【0024】
3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1a)は、工程1a−1で得た(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類(2a)を環化することにより製造することができる(工程1a−2)。
【0025】
【化7】

(式中、R、R、nおよびRは、前記と同じ内容を示す。)
(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2a)は、全て(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)に包含される。
【0026】
反応条件等は、後述する3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体(1)の製造方法と同様である。
【0027】
また、3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1a)は、工程1a−1の後に(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2a)を単離せずに、次いで環化することにより製造することもできる(工程1a−3)。
【0028】
【化8】

(式中、R、R2a、RおよびXは、前記と同じ内容を示す。)
アニリン類(3a)は、全てアニリン類(3)に包含される。また、3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1a)は、全て3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1)に包含される。
【0029】
ジフルオロ酢酸エステル類(4)、スルホキシド類(5)、鉄化合物、過酸化物や反応条件等は、後述する3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体(1)の製造方法と同様である。
【0030】
次に、3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1)の製造方法について詳細に述べる。原料の(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類(2)の製造方法に特に限定はないが、アニリン類(3)とジフルオロ酢酸アルキル類(4)を、スルホキシド類(5)、鉄化合物および過酸化物の存在下で反応させて製造することができる(工程1−1)。(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類(2)は、RがR2aで、nが1であることを除けば、あることを除けば、工程1−1と同様の方法により製造することができる(工程1a−1)。
【0031】
【化9】

(式中、R、R、n、RおよびXは、前記と同じ内容を示す。)
原料のアニリン類(3)に特に制限はなく、市販品さらには既知の方法で製造することができる化合物を使用することができる。具体的には、Rで示される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。また、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、sec−ブチルカルボニル基、ピバロイル基等の(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基が例示できる。
【0032】
このようなアニリン類(3)としては、さらに具体的には、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−sec−ブチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、N−メチル−o−トルイジン、N−メチル−m−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、4−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、4−プロピルアニリン、2−tert−ブチルアニリン、4−ブチルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、2,5−ジ−tert−ブチルアニリン、3,5−ジ−tert−ブチルアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、2−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2−ブロモ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−2−クロロアニリン、4−ブロモ−3−クロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2−ブロモ−4−フルオロアニリン、2−ブロモ−5−フルオロアニリン、4−ブロモ−2−フルオロアニリン、4−ブロモ−3−フルオロアニリン、2−ブロモ−4−フルオロアニリン、3−クロロ−2−フルオロアニリン、3−クロロ−4−フルオロアニリン、4−クロロ−2−フルオロアニリン、5−クロロ−2−フルオロアニリン、3−クロロ−2−メチルアニリン、4−クロロ−2−メチルアニリン、4−クロロ−3−メチルアニリン、5−クロロ−2−メチルアニリン、2−ブロモ−4−メチルアニリン、4−ブロモ−2−エチルアニリン、2−アミノベンゾニトリル、3−アミノベンゾニトリル、4−アミノベンゾニトリル、5−アミノ−2−フルオロベンゾニトリル、o−アミノ安息香酸エチル、m−アミノ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸エチル、2−アミノ−5−クロロ安息香酸エチル、4−アミノ−2−クロロ安息香酸エチル、4−(N−メチル)アミノ安息香酸エチル、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン等が例示できる。
【0033】
ジフルオロ酢酸エステル類(4)のRで示される炭素数1〜4のアルキル基は直鎖状または分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が例示できる。入手容易な点で、エチル基が好ましい。また、Xは収率が良く入手容易な点で、臭素原子またはヨウ素原子が望ましく、臭素原子がさらに好ましい。
【0034】
ジフルオロ酢酸エステル類(4)の使用量に特に制限はなく、化学量論以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0035】
工程1−1は、スルホキシド類(5)の存在下に反応を行うことが必須である。スルホキシド類(5)のR4aおよびR4bで示される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示できる。収率が良い点で、メチル基がさらに好ましい。スルホキシド類(5)の添加量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対して1等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0036】
工程1−1は、有機溶媒中で行なうことができる。用いることができる溶媒としては、スルホキシド類(5)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸、トリフルオロ酢酸、tert−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いてもよい。収率が良い点で、スルホキシド類(5)とアセトンまたはスルホキシド類(5)と水の混合溶媒を用いることが好ましい。溶媒の使用量に制限はない。
【0037】
工程1−1は、鉄化合物の存在下に反応を行うことが必須である。本発明で用いることができる鉄化合物としては、収率が良い点で鉄(II)塩が好ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)等の無機酸塩、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)等の有機酸塩、ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(II)等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、工程1−1は過酸化物の存在下で行うため、鉄粉末、鉄(0)塩または鉄(I)塩を用いても系内で鉄(II)塩が発生するので、これを用いることもできる。収率が良い点で塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)またはフェロセンを用いることが好ましく、フェロセンがさらに好ましい。鉄化合物の使用量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対していわゆる触媒量でもよく、好ましくは、アニリン誘導体(3)に対して0.05〜1等量添加することにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0038】
工程1−1は、反応条件や原料の反応性によって、適宜、酸の存在下に行っても良い。用いることのできる酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で硫酸または酢酸を用いることが望ましい。酸の使用量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対していわゆる触媒量でもよく、好ましくは、アニリン誘導体(3)に対して0.05〜2等量添加することにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0039】
工程1−1は、過酸化物の存在下に反応を行うことが必須である。本発明で用いることができる過酸化物としては、具体的には、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシド、過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体を用いることが好ましく、過酸化水素がさらに好ましい。
【0040】
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3〜70重量%であれば良いが、市販の30重量%をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、水で希釈して10〜35重量%とすることが好ましい。
【0041】
過酸化物の使用量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対していわゆる触媒量でも良く、好ましくは、アニリン誘導体(3)に対して0.1〜5等量添加することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0042】
反応温度は0℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃から60℃が好ましい。反応時間に特に制限はない。
【0043】
反応を密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性ガスでもよいが、空気中でも充分に進行する。
【0044】
(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0045】
3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1)は、工程1−1で得た(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類(2)を環化することにより製造することができる(工程1−2)。3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1a)は、RがR2aで、nが1であることを除けば、工程1−2と同様の方法により製造することができる(工程1a−2)。
【0046】
【化10】

(式中、R、R、nおよびRは、前記と同じ内容を示す。)
原料の(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)に特に制限はなく、市販品さらには既知の方法で製造することができる化合物を使用することができる。具体的には、Rで示される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。また、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、sec−ブチルカルボニル基、ピバロイル基等の(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基が例示できる。
【0047】
このような(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)としては、さらに具体的には、(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸メチル、(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸イソプロピル、(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸ブチル、(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸−tert−ブチル、(2−N−メチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−N−エチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−N−ブチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−N−sec−ブチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(3−メチル−2−N−メチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(4−メチル−2−N−メチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(5−メチル−2−N−メチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−メチル−2−N−メチルアミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−エチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−エチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−エチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−エチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−プロピルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−プロピルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−tert−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−tert−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−ブロモフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−ブロモフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブロモフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−ブロモフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−ブロモ−5−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブロモ−3−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブロモ−4−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−アミノ−3−ブロモ−2−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−ブロモ−5−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−ブロモ−6−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブロモ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブロモ−4−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−アミノ−3−ブロモ−2−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−ブロモ−5−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−クロロ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−クロロ−5−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−アミノ−2−クロロ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−クロロ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−クロロ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−クロロ−3−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−クロロ−3−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−クロロ−4−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−アミノ−3−クロロ−2−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−クロロ−3−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−ブロモ−3−エチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−シアノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−シアノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−シアノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−シアノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−アミノ−2−シアノ−3−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−シアノ−5−フルオロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−エトキシカルボニルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−エトキシカルボニルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−6−エトキシカルボニルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−5−エトキシカルボニルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−3−エトキシカルボニル−5−クロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−アミノ−4−クロロ−5−エトキシカルボニルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(6−アミノ−2−クロロ−3−エトキシカルボニル)ジフルオロ酢酸エチル、(2−N−メチルアミノ−5−エトキシカルボニルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(3−アセチル−2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(4−アセチル−2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル、(5−アセチル−2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル等が例示できる。
【0048】
工程1−2は、有機溶媒中で行なうことができる。用いることができる溶媒としては、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、水、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸、トリフルオロ酢酸、tert−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いてもよい。収率が良い点で、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。溶媒の使用量に特に制限はない。
【0049】
反応温度は0℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃から60℃が望ましい。反応時間に特に制限はない。
【0050】
また、工程1−2では、反応条件や原料の反応性によって、適宜、酸または塩基の存在下に行っても良い。用いることができる酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルオロホウ酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸、過酸化水素、過酢酸等の過酸化物、酸性を示すイオン交換樹脂等を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良く、取り扱い易い点で硫酸、塩酸またはトリフルオロ酢酸を用いることが望ましい。酸の使用量に特に制限はないが、(2−アミノアリール)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)に対して1等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0051】
また、用いることのできる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ピリジン等の有機塩基や、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基を例示することができる。収率が良い点で、トリエチルアミンまたは炭酸カリウムが望ましい。塩基の使用量に特に制限はないが、(2−アミノアリール)ジフルオロ酢酸エステル類(2)に対して1等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0052】
収率の点で、酸または塩基の存在下に反応を行うことが望ましい。
【0053】
反応後の溶液から3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン類(1)を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【0054】
また、工程1−2の後に(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)を単離せずに、次いで環化することにより製造することもできる(工程1−3)。3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体(1a)は、RがR2aで、nが1であることを除けば、工程1−3と同様の方法により製造することができる(工程1a−3)。
【0055】
【化11】

(式中、R、R、n、RおよびXは、前記と同じ内容を示す。)
原料のアニリン類(3)に特に制限はなく、市販品さらには既知の方法で製造することができる化合物を使用することができる。具体的には、Rで示される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が例示できる。また、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、sec−ブチルカルボニル基、ピバロイル基等の(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基が例示できる。
【0056】
このようなアニリン類(3)としては、さらに具体的には、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−sec−ブチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、N−メチル−o−トルイジン、N−メチル−m−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、4−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、4−プロピルアニリン、2−tert−ブチルアニリン、4−ブチルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、2,5−ジ−tert−ブチルアニリン、3,5−ジ−tert−ブチルアニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、2−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2−ブロモ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−2−クロロアニリン、4−ブロモ−3−クロロアニリン、2,4−ジクロロアニリン、2−ブロモ−4−フルオロアニリン、2−ブロモ−5−フルオロアニリン、4−ブロモ−2−フルオロアニリン、4−ブロモ−3−フルオロアニリン、2−ブロモ−4−フルオロアニリン、3−クロロ−2−フルオロアニリン、3−クロロ−4−フルオロアニリン、4−クロロ−2−フルオロアニリン、5−クロロ−2−フルオロアニリン、3−クロロ−2−メチルアニリン、4−クロロ−2−メチルアニリン、4−クロロ−3−メチルアニリン、5−クロロ−2−メチルアニリン、2−ブロモ−4−メチルアニリン、4−ブロモ−2−エチルアニリン、2−アミノベンゾニトリル、3−アミノベンゾニトリル、4−アミノベンゾニトリル、5−アミノ−2−フルオロベンゾニトリル、o−アミノ安息香酸エチル、m−アミノ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸エチル、2−アミノ−5−クロロ安息香酸エチル、4−アミノ−2−クロロ安息香酸エチル、4−(N−メチル)アミノ安息香酸エチル、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン等が例示できる。
【0057】
ジフルオロ酢酸エステル類(4)のRで示される炭素数1〜4のアルキル基は直鎖状または分岐状のいずれでもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が例示できる。入手容易な点で、エチル基が好ましい。また、Xは収率が良く入手容易な点で、臭素原子またはヨウ素原子が望ましく、臭素原子がさらに好ましい。
【0058】
ジフルオロ酢酸エステル類(4)の使用量に特に制限はなく、化学量論以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0059】
工程1−3は、スルホキシド類(5)の存在下に反応を行うことが必須である。スルホキシド類(5)のR4aおよびR4bで示される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示できる。収率が良い点で、メチル基がさらに好ましい。スルホキシド類(5)の添加量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対して1等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0060】
工程1−3は、有機溶媒中で行なうことができる。用いることができる溶媒としては、スルホキシド類(5)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸、トリフルオロ酢酸、tert−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルプロピレン尿素等を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いてもよい。収率が良い点で、スルホキシド類(5)とアセトンまたはスルホキシド類(5)と水の混合溶媒を用いることが好ましい。溶媒の使用量に制限はない。
【0061】
工程1−1は、鉄化合物の存在下に反応を行うことが必須である。本発明で用いることができる鉄化合物としては、収率が良い点で鉄(II)塩が好ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)等の無機酸塩、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)等の有機酸塩、ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)、フェロセン、ビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(II)等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、工程1−3は過酸化物の存在下で行うため、鉄粉末、鉄(0)塩または鉄(I)塩を用いても系内で鉄(II)塩が発生するので、これを用いることもできる。収率が良い点で塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、臭化鉄(II)またはフェロセンを用いることが好ましく、フェロセンがさらに好ましい。鉄化合物の使用量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対していわゆる触媒量でもよく、好ましくは、アニリン誘導体(3)に対して0.05〜1等量添加することにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0062】
工程1−3は、反応条件や原料の反応性によって、適宜、酸の存在下に行っても良い。用いることのできる酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で硫酸または酢酸を用いることが望ましい。酸の使用量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対していわゆる触媒量でもよく、好ましくは、アニリン誘導体(3)に対して0.05〜2等量添加することにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0063】
工程1−1は、過酸化物の存在下に反応を行うことが必須である。本発明で用いることができる過酸化物としては、具体的には、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシド、過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体を用いることが好ましく、過酸化水素がさらに好ましい。
【0064】
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3〜70重量%であれば良いが、市販の30重量%をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、水で希釈して10〜35重量%とすることが好ましい。
【0065】
過酸化物の使用量に特に制限はなく、アニリン誘導体(3)に対していわゆる触媒量でも良く、好ましくは、アニリン誘導体(3)に対して0.1〜5等量添加することにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0066】
また、工程1−2では、反応条件や原料の反応性によって、適宜、酸または塩基を反応の途中で加えてもよい。用いることができる酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルオロホウ酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸、過酸化水素、過酢酸等の過酸化物、酸性を示すイオン交換樹脂等を例示することができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良く、取り扱い易い点で硫酸、塩酸またはトリフルオロ酢酸を用いることが望ましい。酸の使用量に特に制限はないが、(2−アミノアリール)ジフルオロ酢酸アルキル類(2)に対して1等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0067】
また、用いることのできる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ピリジン等の有機塩基や、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基を例示することができる。収率が良い点で、トリエチルアミンまたは炭酸カリウムが望ましい。塩基の使用量に特に制限はないが、(2−アミノアリール)ジフルオロ酢酸エステル類(2)に対して1等量以上用いることにより、収率良く目的物を得ることができる。
【0068】
収率の点で、反応の途中で酸を加えることが好ましい。
【0069】
反応温度は0℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃から60℃が好ましい。反応時間に特に制限はない。
【0070】
反応を密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性ガスでもよいが、空気中でも充分に進行する。
【0071】
反応後の溶液から3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン類(1)を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【実施例】
【0072】
次に本発明を実施例および参考例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例−1
【0073】
【化12】

アルゴン雰囲気下で、2,4−ジクロロアニリン(162mg、1.00mmol)、フェロセン(19mg、0.10mmol)、ジメチルスルホキシド(5.0mL)およびブロモジフルオロ酢酸エチル(385μL、3.00mmol)を混合した後、混合物に30%過酸化水素水(0.2mL)を加えた。室温で3時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色油状の(2−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチルを得た(125mg、収率44%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.22(3H,t,J=7.1Hz),4.33(2H,q,J=7.1Hz),5.43(2H,brs),7.28−7.31(1H,m),7.63−7.66(1H,m).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ13.7,64.0,113.0(t,JCF=251.8Hz),117.0(t,JCF=24.3Hz),119.7,120.7,124.8(t,JCF=8.8Hz),131.8,141.1(t,JCF=2.9Hz),162.6(t,JCF=34.5Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−103.1.
MS(m/z):283[M]
実施例−2
【0074】
【化13】

アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル(213mg、0.750mmol)および硫酸のジメチルスルホキシド溶液(1.0mol/L、1.5mL)を混合した。室温で12時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンを得た(176mg、収率99%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ7.80−7.83(1H,m),7.86−7.89(1H,m),11.83(1H,brs).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ110.5(t,JCF=250.9Hz),117.1,122.1(t,JCF=23.5Hz),124.2,128.1,133.5,139.8(t,JCF=7.5Hz),165.7(t,JCF=29.1Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−110.6.
MS(m/z):237[M]
実施例−3
【0075】
【化14】

アルゴン雰囲気下で、2,4−ジクロロアニリン(162mg、1.00mmol)、フェロセン(19mg、0.10mmol)、ジメチルスルホキシド(5.0mL)およびブロモジフルオロ酢酸エチル(385μL、3.00mmol)を混合した後、混合物に30%過酸化水素水(0.2mL)を加えた。室温で12時間撹拌した。この混合物に、硫酸のジメチルスルホキシド溶液(1.0mol/L、2.0mL)を加え、さらに室温で24時間撹拌した。その後、生成物を酢酸エチルに抽出し、濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンを得た(164mg、収率69%)。
実施例−4
【0076】
ブロモジフルオロ酢酸エチルをヨードジフルオロ酢酸エチル(294μL、2.00mmol)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、19F−NMRにより5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率46%)。
実施例−5
【0077】
フェロセンを硫酸鉄(II)水溶液(1.0mol/L、0.3mL)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、19F−NMRにより5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率50%)。
実施例−6
【0078】
30%過酸化酸素水溶液を過酸化水素−尿素複合体(188mg、2.00mmol)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、19F−NMRにより5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率56%)。
実施例−7
【0079】
反応を空気中で行った以外は実施例−3と同じ操作を行い、19F−NMRにより5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率45%)。
実施例−8
【0080】
ジメチルスルホキシドをジメチルスルホキシド(2.0mL)とアセトン(4.0mL)の混合溶媒に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、19F−NMRにより5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率30%)。
実施例−9
【0081】
ジメチルスルホキシドをジメチルスルホキシド(4.0mL)とN,N−ジメチルホルムアミド(2.0mL)の混合溶媒に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、19F−NMRにより5,7−ジクロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率47%)。
実施例−10
【0082】
【化15】

2,4−ジクロロアニリンを2−ブロモ−4−メチルアニリン125μL(1.00mmol)に換えた以外は実施例−1と同じ操作を行い、淡黄色油状の(2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチルを得た(123mg、収率40%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.21(3H,t,J=7.1Hz),2.20(3H,s),4.31(2H,q,J=7.1Hz),4.96(2H,brs),7.13−7.16(1H,m),7.46−7.49(1H,m).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ13.8,19.5,63.7,110.6,113.8(t,JCF=250.6Hz),116.4(t,JCF=23.5Hz),126.1(t,JCF=8.1Hz),127.1,136.0,140.3(t,JCF=2.9Hz),163.2(t,JCF=34.8Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−102.6.
MS(m/z):307[M]
実施例−11
【0083】
【化16】

アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル(62mg、0.20mmol)、ジメチルスルホキシド(0.4mL)および塩酸のジメチルスルホキシド溶液(1.0mol/L、0.6mL)を混合した。室温で12時間撹拌後、生成物に酢酸エチルした。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンを得た(37mg、収率70%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ2.29(3H,s),7.51(1H,s),7.57(1H,s),11.42(1H,brs)
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ20.1,103.8,111.4(t,JCF=249.5Hz),121.0(t,JCF=23.1Hz),124.7,135.1,136.9,139.6(t,JCF=7.6Hz),166.0(t,JCF=29.3Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−110.1.
MS(m/z):261[M]
実施例−12
【0084】
【化17】

アルゴン雰囲気下で、2−ブロモ−4−メチルアニリン(125μL、1.00mmol)、フェロセン(19mg、0.10mmol)、ジメチルスルホキシド(5.0mL)およびブロモジフルオロ酢酸エチル(385μL、3.0mmol)を混合した後、混合物に30%過酸化水素水(0.2mL)を加えた。室温で12時間撹拌した。この混合物に、硫酸のジメチルスルホキシド溶液(1.0mol/L、2.0mL)を加え、さらに室温で24時間撹拌した。その後、生成物を酢酸エチルに抽出し、た。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンを得た(197mg、収率75%)。
実施例−13
【0085】
フェロセンを硫酸鉄(II)水溶液(1.0mol/L、0.3mL)に換えた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率40%)。
実施例−14
【0086】
フェロセンを硫酸鉄(II)アンモニウム水溶液(1.0mol/L、0.3mL)に換えた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率12%)。
実施例−15
【0087】
フェロセンをテトラフルオロホウ酸鉄(II)水溶液(1.0mol/L、0.3mL)に換えた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率29%)。
実施例−16
【0088】
フェロセンを塩化鉄(II)水溶液(1.0mol/L、0.3mL)に換えた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率11%)。
実施例−17
【0089】
フェロセンを臭化鉄(II)水溶液(1.0mol/L、0.3mL)に換えた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率15%)。
実施例−18
【0090】
フェロセンを鉄粉末(17mg、0.30mmol)に換え、硫酸(1.0mol/L、1.0mL)ジメチルスルホキシド溶液(4.0mL)を用いた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率16%)。
実施例−19
【0091】
フェロセンをビス(アセチルアセトナト)鉄(II)(76mg、0.30mmol)に換えた以外は実施例−12と同じ操作を行い、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率18%)。
実施例−20
【0092】
【化18】

2,4−ジクロロアニリンをp−アミノ安息香酸エチル165mg(1.00mmol)に換えた以外は実施例−1と同じ操作を行い、淡黄色固体の3−エトキシカルボニルジフルオロメチル安息香酸エチルを得た(110mg、収率38%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.23(3H,t,J=7.1Hz),1.27(3H,t,J=7.1Hz),4.23(2H,q,J=7.1Hz),4.33(2H,q,J=7.1Hz),6.08(2H,brs),6.81−6.85(1H,m),7.74−7.81(2H,m).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ13.8,14.4,60.3,63.7,112.9(t,JCF=24.1Hz),114.3(t,JCF=250.3Hz),116.5,116.7,128.4(t,JCF=8.2Hz),133.2,150.4,163.2(t,JCF=35.0Hz),165.2.
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−103.0.
MS(m/z):287[M]
実施例−21
【0093】
【化19】

アルゴン雰囲気下で、3−エトキシカルボニルジフルオロメチル安息香酸エチル(58mg(0.20mmol)、ジメチルスルホキシド(0.4mL)、硫酸のジメチルスルホキシド溶液(1.0mol/L、0.6mL)を混合した。室温で12時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の3,3−ジフルオロ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボン酸エチルを得た(46mg、収率95%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.31(3H,t,J=7.1Hz),4.30(2H,q,J=7.1Hz),7.09−7.13(1H,m),8.10−8.14(2H,m),11.59(2H,brs).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ14.2,61.1,110.7(t,JCF=249.5Hz),112.1,119.6(t,JCF=23.1Hz),125.1,125.6,135.9,147.0(t,JCF=7.3Hz),164.7,166.1(t,JCF=29.4Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−111.6.
MS(m/z):241[M]
実施例−22
【0094】
【化20】

2,4−ジクロロアニリンをp−アミノ安息香酸エチル(165mg、1.00mmol)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、淡黄色固体の3,3−ジフルオロ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボン酸エチルを得た(140mg、収率58%)。
実施例−23
【0095】
【化21】

2,4−ジクロロアニリンをp−アミノアセトフェノン(135mg、1.00mmol)に換えた以外は実施例−1と同じ操作を行い、淡黄色固体の(2−アミノ−5−アセチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチルを得た(80mg、収率31%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.23(3H,t,J=7.1Hz),2.43(3H,s),4.32(2H,q,J=7.1Hz),6.11(2H,brs),6.80−6.85(1H,m),7.77−7.84(2H,m).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ13.8,26.0,63.7,112.9(t,JCF=24.1Hz),114.3(t,JCF=250.3Hz),116.2,125.0,127.6(t,JCF=8.0Hz),132.8,150.5,163.3(t,JCF=35.1Hz),195.0.
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−102.8.
MS(m/z):257[M]
実施例−24
【0096】
【化22】

アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−5−アセチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル77mg(0.30mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(1.5mL)、トリフルオロ酢酸(115μL、1.50mmol)を混合した。室温で12時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の5−アセチル−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンを得た(62mg、収率98%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ2.55(3H,s),7.08(1H,d,J=8.3Hz),8.11(1H,d,J=8.3Hz),8.19(1H,s),11.57(1H,brs).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ26.7,110.9(t,JCF=249.5Hz),112.0,119.6(t,JCF=23.0Hz),125.2,132.5,135.1,146.9(t,JCF=7.3Hz),166.3(t,JCF=29.4Hz),196.1.
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−111.5.
MS(m/z):211[M]
実施例−25
【0097】
【化23】

2,4−ジクロロアニリンをp−アミノアセトフェノン(135mg、1.00mmol)、に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、淡黄色固体の5−アセチル−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンを得た(91mg、収率43%)。
実施例−26
【0098】
【化24】

2,4−ジクロロアニリンを4−アミノベンゾニトリル(118mg、1.00mmol)に換えた以外は実施例−1と同じ操作を行い、淡黄色油状の(2−アミノ−4−シアノフェニル)ジフルオロ酢酸エチルを得た(65mg、収率27%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ1.22(3H,t,J=7.1Hz),4.32(2H,q,J=7.1Hz),6.24(2H,brs),6.84−6.89(1H,m),7.55−7.62(2H,m).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ13.8,63.9,96.8,113.6(t,JCF=250.9Hz),113.7(t,JCF=24.4Hz),117.2,119.5,131.3(t,JCF=8.4Hz),135.5,150.162.8(t,JCF=34.8Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−103.1.
MS(m/z):240[M]
実施例−27
【0099】
【化25】

アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−4−シアノフェニル)ジフルオロ酢酸エチル(120mg、0.500mmol)、ジメチルスルホキシド(2.0mL)およびトリフルオロ酢酸(115μL、1.50mmol)を混合した。室温で12時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、無色固体の3,3−ジフルオロ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリルを得た(88mg、収率91%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ7.13(1H,d,J=8.3Hz),7.97(1H,d,J=8.3Hz),8.25(1H,s),11.68(1H,brs).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ105.9,110.2(t,JCF=250.3Hz),113.1,118.4,120.3(t,JCF=23.3Hz),129.3,139.3,147.0(t,JCF=7.3Hz),165.8(t,JCF=29.2Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−111.8.
MS(m/z):194[M]
実施例−28
【0100】
【化26】

2,4−ジクロロアニリンを4−アミノベンゾニトリル(118mg、1.00mmol)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、無色固体の3,3−ジフルオロ−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−カルボニトリルを得た(87mg、収率45%)。
実施例−29
【0101】
【化27】

2,4−ジクロロアニリンをN−メチル−p−トルイジン(126μL、1.00mmol)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、無色固体の3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−1,5−ジメチルインドール−2−オンを得た(75mg、収率38%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ2.32(3H,s),3.14(3H,s),7.10(1H,d,J=8.0Hz),7.41(1H,d,J=8.0Hz),7.51(1H,s).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ20.4,26.4,110.6,111.5(t,JCF=248.0Hz),118.9(t,JCF=22.6Hz),124.9,133.6,134.4,141.7(t,JCF=7.4Hz),164.4(t,JCF=30.0Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−111.2.
MS(m/z):197[M]
実施例−30
【0102】
【化28】

2,4−ジクロロアニリンを4−クロロアニリン(128mg、1.00mmol)に換えた以外は実施例−3と同じ操作を行い、淡黄色固体の5−クロロ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オンを得た(102mg、収率50%)。
H−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ6.98−7.02(1H,m),7.55−7.59(1H,m),7.81−7.84(1H,m),11.31(1H,brs).
13C−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ110.8(t,JCF=250.0Hz),113.7,121.0(t,JCF=23.0Hz),125.3,127.5,134.2,141.6(t,JCF=7.6Hz),165.6(t,JCF=29.2Hz).
19F−NMR(重ジメチルスルホキシド):δ−111.4.
MS(m/z):203[M]
実施例−31
【0103】
アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル156mg(0.550mmol)、ジクロロメタン(3.0mL)、トリエチルアミン(0.50mL、3.6mmol)を混合した。室温で12時間撹拌後、生成物を酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の5,7−ジクロロ−2−オキソ−3,3−ジフルオロインドリンを得た(128mg、収率98%)。
実施例−32
【0104】
アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルフェニル)ジフルオロ酢酸エチル(77mg、0.25mmol)、ジクロロメタン(2.0mL)およびトリエチルアミン(0.50mL、3.6mmol)を混合した。室温で6時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の5−メチル−7−ブロモ−2−オキソ−3,3−ジフルオロインドリンを得た(53mg、収率81%)。
実施例−33
【0105】
アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル(85mg、0.30mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(3.0mL)および炭酸カリウム(124mg、0.900mmol)を混合した。室温で24時間撹拌後、生成物を酢酸エチルに抽出した。有機層を濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、淡黄色固体の5,7−ジクロロ−2−オキソ−3,3−ジフルオロインドリンを得た(70mg、収率98%)。
実施例−29
【0106】
アルゴン雰囲気下で、(2−アミノ−3,5−ジクロロフェニル)ジフルオロ酢酸エチル(85mg、0.30mmol)およびジメチルスルホキシド(1.0mL)を加えた。100℃で4時間撹拌後、19F−NMRにより7−ブロモ−3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロ−5−メチルインドール−2−オンの生成を確認した(NMR収率17%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1a)
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R2aは、シアノ基、(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基または(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基を示す。)で表されることを特徴とする3,3−ジフルオロ−2,3−ジヒドロインドール−2−オン誘導体。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、または(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基を示す。nは、1または2を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類を環化させることを特徴とする一般式(1)
【化3】

(式中、R、Rおよびnは、前記と同じ内容を示す。)で表される3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、または(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基を示す。nは、1または2を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される(2−アミノフェニル)ジフルオロ酢酸エステル類を、一般式(3)
【化5】

(式中、R、Rおよびnは、前記と同じ内容を示す。)で表されるアニリン類と、一般式(4)
【化6】

(式中、Xは臭素原子またはヨウ素原子を示す。Rは、前記と同じ内容を示す。)で表されるジフルオロ酢酸エステル類を、一般式(5)
【化7】

(式中、R4aおよびR4bは、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるスルホキシド類、鉄化合物および過酸化物の存在下に反応させて得ることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
4aおよびR4bが、メチル基である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、フェロセン、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、鉄粉またはビス(アセチルアセトナト)鉄(II)である請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
過酸化物が、過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体またはtert−ブチルペルオキシドである請求項3から5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(3)
【化8】

(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。Rは、同一または相異なって、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、(炭素数1〜4のアルキル)カルボニル基、または(炭素数1〜4のアルコキシ)カルボニル基を示す。nは、1または2を示す。)で表されるアニリン類と、一般式(4)
【化9】

(式中、Xは臭素原子またはヨウ素原子を示す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるジフルオロ酢酸エステル類を、一般式(5)
【化10】

(式中、R4aおよびR4bは、各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるスルホキシド類、鉄化合物および過酸化物の存在下に反応させ、次いで環化させることを特徴とする一般式(1)
【化11】

(式中、R、Rおよびnは、前記と同じ内容を示す。)で表される3,3−ジフルオロインドリン−2−オン誘導体の製造方法。
【請求項8】
4aおよびR4bが、メチル基である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
鉄化合物が、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、フェロセン、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、鉄粉またはビス(アセチルアセトナト)鉄(II)である請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
過酸化物が、過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体またはtert−ブチルペルオキシドである請求項7から9のいずれかに記載の製造方法。















【公開番号】特開2011−207774(P2011−207774A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74275(P2010−74275)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】