説明

インバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法

【課題】比較的簡単な回路構成で、入力開閉器の投入時の突入電流を実用上問題とならない程度に低減することが可能なインバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法を提供する。
【解決手段】 交流電源に入力開閉器1を介して接続された入力変圧器2と、入力変圧器2の2次巻線に接続された回生機能付コンバータ3と、直流コンデンサ4と、インバータ5と、コンバータ制御部10とで構成する。コンバータ制御部10は、装置を運転状態から停止するとき、インバータ5が停止し、入力開閉器1が開放した状態で、入力変圧器2の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を入力変圧器2の2次巻線に与えるように回生機能付コンバータ10を所定時間制御し、この所定時間の終了時の所定の期間における所定の電圧を、入力変圧器2の2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力変圧器の突入電流を低減させるようにしたインバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に入力側にコンバータを有するインバータ装置は、交流電源から入力開閉器及び入力変圧器を介して給電されることが多い。そして、入力開閉器を投入してインバータ装置を起動するとき、入力変圧器に突入電流が流れる場合がある。この突入電流は、交流電源の容量がインバータ装置の容量に対して十分大きい場合は問題となることは少ないが、電源容量が小さい場合には交流電源に擾乱を与えることになり好ましくない。
【0003】
このため、起動時に入力変圧器の2次側を、PWMコンバータを運転することによって励磁し、入力変圧器の1次側に交流電源と同位相、同電圧の交流電圧を発生させた状態で入力開閉器を投入し、突入電流を抑制する提案が為されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−350900号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された手法によれば、前回運転停止時に入力変圧器に偏って残留していた磁束を消去することは勿論、入力開閉器の投入時の突入電流をほぼゼロとすることが可能となる。しかしながら、入力変圧器の1次側に交流電源と同位相、同電圧の交流電圧を発生させるための制御回路が複雑となるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、比較的簡単な回路構成で、入力開閉器の投入時の突入電流を実用上問題とならない程度に低減することが可能なインバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の発明であるインバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法は、交流電源に入力開閉器を介して接続された入力変圧器と、この入力変圧器の2次巻線に接続された回生機能付コンバータと、この回生機能付コンバータの直流出力電圧を平滑する直流コンデンサと、この直流コンデンサに印加される電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記回生機能付コンバータを制御するコンバータ制御部とを具備したインバータ装置において、装置を運転状態から停止するとき、前記インバータを停止し、前記入力開閉器を開放させ、入力変圧器の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を2次巻線に与えるように回生機能付コンバータを所定時間制御し、この所定時間の終了時の所定の期間における残留磁束を消磁するための電圧を、2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧としたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の第2の発明であるインバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法は、交流電源に入力開閉器を介して接続された入力変圧器と、この入力変圧器の2次巻線に接続された回生機能付コンバータと、この回生機能付コンバータの直流出力電圧を平滑する直流コンデンサと、この直流コンデンサに印加される電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記回生機能付コンバータを制御するコンバータ制御部と、前記直流コンデンサを初期充電するための初期充電回路とを具備したインバータ装置において、装置を停止状態から起動するとき、初期充電回路によって初期充電したあと、入力変圧器の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を2次巻線に与えるように回生機能付コンバータを制御し、所定時間経過後に入力開閉器を投入して装置を起動すると共に、この所定時間の終了時の所定の期間における残留磁束を消磁するための所定の電圧を、2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、比較的簡単な回路構成で、入力開閉器の投入時の突入電流を実用上問題とならない程度に低減することが可能なインバータ装置及び当該装置用入力変圧器の突入電流低減方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係るインバータ装置の回路構成図。
【図2】本発明の実施例1に係るインバータ装置の入力変圧器の消磁動作のフローチャート。
【図3】本発明の実施例2に係るインバータ装置の回路構成図。
【図4】本発明の実施例2に係るインバータ装置の入力変圧器の消磁動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例1に係るインバータ装置を図1及び図2を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例1に係るインバータ装置の回路構成図である。交流電源は入力開閉器1を介して入力変圧器2の1次巻線に接続されている。入力変圧器2の2次巻線はコンバータ3の交流入力となり、コンバータ3の直流出力電圧は平滑用の直流コンデンサ4で平滑され、インバータ5の入力となる。インバータ5の交流出力で交流電動機6を駆動している。インバータ5はインバータ制御器7によって制御され、インバータ制御器7は全体の運転シーケンスを制御する運転制御器8からの指令で動作している。インバータ制御器7は交流電動機6の速度制御や電流制御を行うのが普通であるが、これらを行うために必要なフィードバック用の検出器を含め、詳細の図示を省略している。
【0014】
コンバータ3は直流電力を交流に変換して回生動作を行うことが可能な回生可能コンバータであり、コンバータ制御器10によって制御されている。コンバータ制御器10は全体の運転シーケンスを制御する運転制御器8からの指令で動作している。コンバータ制御器10は、通常の運転時にコンバータ3を制御するための通常制御器11と、インバータ装置の停止時に入力変圧器2の残留磁束を消磁するための消磁制御器12を備えており、これらの2つの制御器の出力を切替器13で切替え、PWM制御器14を介して制御パルスを出力する構成となっている。通常制御器11は直流電圧制御や交流入力の力率制御を行うのが普通であるが、これらを行うために必要なフィードバック用の検出器を含め、詳細の図示を省略している。
【0015】
この実施例1においては、装置を停止するとき、コンデンサ4が蓄えている残留電圧を利用して入力変圧器2の残留磁束を低減する。この詳細動作について、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0016】
まず、インバータ装置停止指令が運転制御器8から与えられ(ステップST1)、これに基づいてインバータ5が運転停止すると共に、入力開閉器1が開放する(ステップST2)。次に、切替器12は、通常制御器13側から消磁制御器14側に選択を切替える(ステプST3)。この時点で、直流コンデンサ4の両端には充分な残留電圧が残っているので、この残留電圧を利用し、コンバータ3が所定の交流電圧、周波数を出力するように消磁制御器14を所定時間の間制御する(ステップST4)。そして、上記所定時間が経過したとき、コンバータ3を停止する(ステップST5)。以上におけるステップST4の制御は、入力変圧器2の残留磁束を低減するためのものであるので、まず入力変圧器2の2次巻線の定格電圧、定格周波数以下の一定の電圧、周波数を与え、時間の経過とともに電圧及び周波数を低減させ、最終的には定格電圧よりも充分小さい電圧(例えば定格電圧の1%)を与えるようにする。このように消磁制御器14をプログラミングしておけば、このステップ4の動作において、入力変圧器2の内部磁束は、ステップST2で開閉器1を開放したときの残留磁束の状態から、磁化曲線のループが次第に確実に小さくなっていくので、残留磁束を実用上問題のない程度まで低減可能である。このように、ステップST4において、上記のように時間とともに電圧及び周波数を低減させると効果的な消磁制御が可能となるが、必ずしもこのようにする必要はなく、上記所定時間内の最終の所定の期間おいて上記所定の電圧が定格電圧より充分低い電圧(例えば10%以下)であれば、ある程度の消磁制御が可能となる。また、周波数を極端に低減すると磁化曲線の1回のループを描く時間が長くなるので、直流コンデンサ4の電荷の放電時間等を考慮して低減の度合いを決めることが好ましい。
【実施例2】
【0017】
図3は本発明の実施例2に係るインバータ装置のブロック構成図である。この実施例2の各部について、図1の本発明の実施例1に係るインバータ装置の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、起動時に運転制御器8Aの指令によって動作する初期充電回路20を追加した点である。
【0018】
この実施例2においては、装置を起動するとき、初期充電回路によってコンデンサ4を充電したあと入力変圧器2の残留磁束を低減する。この詳細動作について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
まず、インバータ装置起動指令が運転制御器8Aから与えられ(ステップST10)、これに基づいて初期充電回路20が動作し、コンデンサ4を充電する(ステップST11)。この初期充電の完了を例えばタイマーなどによって確認したあと、切替器12は、通常制御器13側から消磁制御器14側に選択を切替える(ステップST3)。そしてコンバータ3が所定の交流電圧、周波数を出力するように消磁制御器14を所定時間の間制御する(ステップST4)。上記におけるステップST3及びステップST4は実施例1で説明した内容と同一である。ただし、この実施例2においては、主回路の交流電源とは異なる電源から初期充電を行う構成とすれば、コンデンサ4の放電時間を考慮する必要がない。ステップST4の消磁制御が終了した段階で入力開閉器1を投入する(ステップST12)。ステップST4の消磁制御が適切に行われていれば、ステップST12において突入電流は抑制される。そして、切替器12は、消磁制御器14側から通常制御器13側に選択を切替える(ステプST13)。この状態でコンバータ3を通常運転し、インバータ5を運転する(ステップST14)ことによってインバータ装置の起動動作は完了する。
【0020】
以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0021】
例えば、実施例における交流電動機6は必ずしも電動機である必要はない。またコンバータ3にダイオードコンバータを並列に設けた構成であっても良い。また、インバータ5は3レベルインバータであっても良い。この場合は、入力変圧器2の2次巻線を2個設け、コンバータ3を正、負2台の構成とするのが普通である。
【符号の説明】
【0022】
1 入力開閉器
2 入力変圧器
3 コンバータ
4 直流コンデンサ
5 インバータ
6 交流電動機
7 インバータ制御器
8、8A 運転制御器
10 コンバータ制御器
11 PWM制御器
12 切替器
13 通常制御器
14 消磁制御器
20 初期充電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に入力開閉器を介して接続された入力変圧器と、
この入力変圧器の2次巻線に接続された回生機能付コンバータと、
この回生機能付コンバータの直流出力電圧を平滑する直流コンデンサと、
この直流コンデンサに印加される電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記回生機能付コンバータを制御するコンバータ制御部と
を具備したインバータ装置において、
前記コンバータ制御部は、
装置を運転状態から停止するとき、
前記インバータが停止し、前記入力開閉器が開放した状態で、前記入力変圧器の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を前記2次巻線に与えるように前記回生機能付コンバータを所定時間制御すると共に、
前記所定時間の終了時の所定の期間における前記所定の電圧を、前記2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧としたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
交流電源に入力開閉器を介して接続された入力変圧器と、
この入力変圧器の2次巻線に接続された回生機能付コンバータと、
この回生機能付コンバータの直流出力電圧を平滑する直流コンデンサと、
この直流コンデンサに印加される電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記回生機能付コンバータを制御するコンバータ制御部と、
前記直流コンデンサを初期充電するための初期充電回路と
を具備したインバータ装置において、
装置を停止状態から起動するとき、前記初期充電回路によって初期充電したあと、
前記コンバータ制御部は、
前記入力変圧器の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を前記2次巻線に与えるように前記回生機能付コンバータを制御し、
所定時間経過後に前記入力開閉器を投入して装置を起動すると共に、
前記所定時間の終了時の所定の期間における前記所定の電圧を、前記2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧としたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項3】
残留磁束を消磁するための前記所定の電圧及び所定の周波数は、前記所定時間の時間の経過とともに低減させるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
交流電源に入力開閉器を介して接続された入力変圧器と、
この入力変圧器の2次巻線に接続された回生機能付コンバータと、
この回生機能付コンバータの直流出力電圧を平滑する直流コンデンサと、
この直流コンデンサに印加される電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記回生機能付コンバータを制御するコンバータ制御部と
を具備したインバータ装置において、
装置を運転状態から停止するとき、
前記インバータを停止し、前記入力開閉器を開放させ、入力変圧器の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を2次巻線に与えるように回生機能付コンバータを所定時間制御し、この所定時間の終了時の所定の期間における残留磁束を消磁するための電圧を、2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧としたことを特徴とするインバータ装置用入力変圧器の突入電流低減方法。
【請求項5】
交流電源に入力開閉器を介して接続された入力変圧器と、
この入力変圧器の2次巻線に接続された回生機能付コンバータと、
この回生機能付コンバータの直流出力電圧を平滑する直流コンデンサと、
この直流コンデンサに印加される電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記回生機能付コンバータを制御するコンバータ制御部と、
前記直流コンデンサを初期充電するための初期充電回路と
を具備したインバータ装置において、
装置を停止状態から起動するとき、初期充電回路によって初期充電したあと、入力変圧器の残留磁束を消磁するための所定の電圧、周波数を2次巻線に与えるように回生機能付コンバータを制御し、所定時間経過後に入力開閉器を投入して装置を起動すると共に、この
所定時間の終了時の所定の期間における残留磁束を消磁するための所定の電圧を、2次巻線の定格電圧に比べて充分低い電圧としたことを特徴とするインバータ装置用入力変圧器の突入電流低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−59153(P2013−59153A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194800(P2011−194800)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】