説明

コンデンサ内蔵多層配線基板

【課題】冷熱サイクルにおけるクラックの発生を効果的に防止することができるとともに、EIA規格で定められているような温度特性と静電容量を有するチップコンデンサを内蔵する多層配線基板を提供する。
【解決手段】複数のセラミック絶縁層1が積層されたセラミック絶縁基板の内部の空海内に、ビア導体11を介して接続されたコンデンサ7を内蔵してなり、前記セラミック絶縁層1と前記コンデンサ7とが、間隙を有して離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサを内蔵したコンデンサ内蔵多層配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化時代を迎え、情報通信技術が急速に発達し、それに伴い、半導体素子に代表される各種電気素子の高速化、大型化が図られ、半導体素子を収容するパッケージにおいても、信号の伝送損失を低減し、より高速の信号を伝送する上で、配線層の低抵抗化と絶縁基板の低誘電率化が求められており、また、パッケージに電源ノイズを抑制するためにコンデンサを内蔵したものが提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−326472号公報
【特許文献2】特開2002−76637号公報
【特許文献3】特開2009−194096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された多層配線基板では、内蔵されているチップコンデンサがセラミック絶縁層により挟持された構造となっている、すなわち、チップコンデンサがセラミック絶縁層と接していることから、チップ型のコンデンサとセラミック絶縁層との間で冷熱サイクルにおいてクラックが発生しやすいという問題があった。また、チップコンデンサをセラミック絶縁層で挟持された構造にしようとすると、多層配線基板を製造する際の同時焼成においてチップコンデンサの材料とセラミック絶縁層の材料との間で反応が起きるために、これまで、EIA規格で定められているような温度特性と静電容量とを有するチップコンデンサを多層配線基板に内蔵したものは得られていなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、冷熱サイクルにおけるクラックの発生を効果的に防止することができるとともに、EIA規格で定められているような温度特性と静電容量とを有するチップコンデンサを内蔵するコンデンサ内蔵多層配線基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンデンサ内蔵多層配線基板は、複数のセラミック絶縁層が積層されたセラミック絶縁基板の内部の空間内にビア導体を介して接続されたコンデンサを内蔵してなり、前記セラミック絶縁層と前記コンデンサとが間隙を有して離間していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷熱サイクルにおけるクラックの発生を効果的に防止することができるとともに、EIA規格で定められているような温度特性と静電容量とを有するチップコンデンサを内蔵するコンデンサ内蔵多層配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板の構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板の構造を説明するための断面図である。本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板は、複数のセラミック絶縁層1と導体層3とが積層された絶縁基板5の内部の空間内にコンデンサ7を内蔵しており、絶縁層1とコンデンサ7とが、絶縁層1の主面1aとコンデンサ7の主面7aとの間に間隙9を有しつつ、ビア導体11を介して接続されていることを特徴とする。
【0010】
これにより、多層配線基板の内部にコンデンサ7を内蔵しても、内蔵したコンデンサ7と多層配線基板との間に冷熱サイクルにおけるクラックの発生を効果的に防止することができるとともに、内蔵したコンデンサ7は、EIA規格で定められているような温度特性と静電容量とを発現できるものとなる。
【0011】
本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板を構成するセラミック絶縁層1は、アルミナを主成分とするセラミックスまたは無機フィラーを含むガラスセラミックスが適用される。
【0012】
本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板において貫通導体および配線導体を構成する導体層は、セラミック絶縁層1がアルミナを主成分とするセラミックスの場合には、タングステンやモリブデンが好適であり、セラミック絶縁層1がガラスセラミックスの場合には、銅または銀などを主成分とする低抵抗の導体材料が好適である。
【0013】
本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板に内蔵されるコンデンサ7は、例えば、EIA規格で定められているような温度特性と静電容量とを発現できるチップ型のコンデンサ7を適用することができる。
【0014】
本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板では、このようにEIA規格で定められているような温度特性と静電容量を発現できるチップ型のコンデンサ7をセラミック絶縁層1により構成される多層配線基板の内部に内蔵したものとすることができるために、種々の静電容量、温度特性およびDC(直流電圧)、AC(交流電圧)依存性を有する機能を多層配線基板を形成することができる。
【0015】
本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板は、上述したように、セラミック絶縁層1とコンデンサ7とが、セラミック絶縁層1の主面とコンデンサ7の主面との間に間隙9を有しつつ、ビア導体11を介して接続されている構成となっているが、多層配線基板を構成するセラミック絶縁層1の主面1aとコンデンサ7の主面7aとが接する面積が少ないために、多層配線基板が半導体素子の駆動により冷熱サイクルを受けた場合にもセラミック絶縁層1およびコンデンサ7のそれぞれの熱膨張係数差に起因する応力が直接コンデンサ7に影響することが少ないために、実用時においても内蔵されたコンデンサ7は本来の誘電特性を損なうことなく安定した特性を発現できるものとなる。
【0016】
この場合、多層配線基板が半導体素子の駆動により冷熱サイクルを受けたときに、セラミック絶縁層1およびコンデンサ7のそれぞれの熱膨張係数差に起因する応力が、セラミック絶縁層1とコンデンサ7とを接続するビア導体11に集中することから、ビア導体11は、それ自体の剛性を小さくしたものが好適である。このためビア導体11は、アスペクト比が2以上、特に3以上ある柱状体、ビア導体11の上下を貫通する空洞を有する円筒状、機械的強度を損なわない限りにビア導体11を構成する金属粒子の粒界にボイドを有するもの、針状の金属粒子が絡まり焼結したものなどを適用することができる。
【0017】
内蔵するコンデンサ7の外部電極7aは、多層配線基板の間隙9においてビア導体11を介してセラミック絶縁層1とインダクタンスをできるだけ小さくするように接続できる
ように配置されていることが望ましく、例えば、コンデンサ7の上下面に形成されているのがよい。コンデンサ7の上下面に外部電極7aを形成した構造にすると、ビア導体11によって上下面から挟持できるので、間隙9においてコンデンサを安定させることができる。
【0018】
また、本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板では、内蔵されたコンデンサ7が、図1に示すように、コンデンサ7の上側および下側に位置するセラミック絶縁層1との間で複数のビア導体11により接続されていることが好ましい。コンデンサ7を、その上側および下側に位置するセラミック絶縁層1との間で複数のビア導体11により接続されている構造にすると、コンデンサ7を強固に保持することできるとともに、一部のビア導体11で電気的な接続が断線状態になった場合にも他のビア導体11が電流をバイパスしてくれるからである。この場合、コンデンサ7の上側および下側に位置するセラミック絶縁層1との間で複数のビア導体11は等間隔であることが望ましい。
【0019】
また、本実施形態のコンデンサ内蔵多層配線基板では、コンデンサ7の電磁界分布を安定させることができるという理由からコンデンサ7の主面においてもその周縁部に等間隔に形成されていることが望ましく、とりわけ、ビア導体11がコンデンサの主面にプラス極およびマイナス極となるビア導体11が格子状に配列されていることがより望ましい。
【0020】
次に、本実施形態のコンデンサ内蔵配線基板を製造する方法について説明する。
【0021】
まず、セラミック絶縁層1となるグリーンシートを作製する。ホウケイ酸ガラス粉末とアルミナ粉末またはシリカ粉末などの無機フィラーとの混合物に、アクリル樹脂などの有機バインダーと可塑剤、溶剤を加えスラリーを作製し、ドクターブレードによりシート状に成形し、グリーンシートを作製する。
【0022】
次に、このグリーンシートにNCパンチや金型、レーザー加工機などにより貫通孔を形成し、銅、銀、金などの低抵抗金属からなるペーストを充填せしめ、貫通導体を形成する。また、同様に低抵抗金属からなるペーストにより配線パターンを形成する。
【0023】
次に、貫通導体および配線パターンを形成したグリーンシートのうち一部のグリーンシートには金型等によりコンデンサ7が入るほどの貫通部を形成したものも作製する。
【0024】
次に、これら貫通導体および配線パターンを形成したグリーンシートおよび貫通導体および配線パターンを有するとともに貫通部を有するグリーンシートを所定枚数積層圧着して図1に示す構造の未焼成の積層体を形成する。
【0025】
この場合、貫通部にコンデンサを設置する場合には、コンデンサ7の上下面にビア導体11を形成しておいたものをグリーンシートの表面に形成した配線パターンの接続部に適合するように設置する。次に、コンデンサ7およびビア導体11以外の間隙に高粘度の有機バインダを注入する。間隙に有機バインダを注入するのは、積層時の変形を防止するとともに、焼成後にセラミック絶縁層1の主面とコンデンサ7の主面との間に部分的に間隙9を形成するためである。
【0026】
次に、こうして作製した積層体を上下から加圧するなどして積層体のX−Y方向が焼成時に収縮しないようにして焼成を行う。こうして得られたコンデンサ内蔵多層配線基板はセラミック絶縁層1とコンデンサ7とが、セラミック絶縁層1の主面とコンデンサ7の主面との間に部分的に間隙9を有しつつ、ビア導体11を介して接続されている状態となっている。
【0027】
そして、ビア導体11として、金属粒子の粒界にボイドを有するように形成した銅を主成分とするビア導体を用いて上記の製法により、サイズが1005型でありEIA規格のX5Rを有するコンデンサを用いてコンデンサ内蔵多層配線基板を作製し評価したところ、冷熱サイクルにおいてもセラミック絶縁層と内蔵したコンデンサとの界面においてクラックの発生が無く、かつ内蔵したチップ型のコンデンサは内蔵前に測定した特性を有するものとなっていた。
【符号の説明】
【0028】
1・・・セラミック絶縁層
3・・・導体層
5・・・セラミック絶縁基板
7・・・コンデンサ
9・・・間隙
11・・ビア導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック絶縁層が積層されたセラミック絶縁基板の内部の空間内に、ビア導体を介して接続されたコンデンサを内蔵してなり、前記セラミック絶縁層と前記コンデンサとが、間隙を有して離間していることを特徴とするコンデンサ内蔵多層配線基板。


【図1】
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【公開番号】特開2012−79801(P2012−79801A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221580(P2010−221580)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】