説明

コンバイン

【課題】刈始めに際し、方向自動制御による操向クラッチ出力が手動操作による操向クラッチ出力に重なることを回避し、出力の重複によってオペレータの操作フィーリングが低下するという問題を解消する。
【解決手段】刈取穀稈を分草するデバイダ8と、刈取穀稈に対するデバイダ8の位置を検出する方向センサ18と、方向センサ18の検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御部21とを備えるコンバイン1において、方向センサ18の位置よりも下流の穀稈搬送経路で搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサ(扱深メインセンサ17)を備え、該搬送穀稈検出センサのONを方向自動制御の開始条件とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方向センサの検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御手段を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
方向センサの検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御手段を備えるコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照)。方向センサは、刈取穀稈を分草するデバイダの後方近傍に設けられており、刈取穀稈との接触により、刈取穀稈に対するデバイダの位置を検出している。そして、方向自動制御手段は、方向センサの検出信号に応じて左右の操向クラッチを選択的に入り/切りすることにより、機体を刈取穀稈の条列に沿って自動的に走行させるようになっている。
【特許文献1】特許第3372796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のコンバインでは、刈始めに際し、方向センサの信号変化(OFF→ON)に基づいて方向自動制御を開始している。しかしながら、刈始めは、通常、オペレータによる操向クラッチの手動操作に基づいて機体の走行方向が調整されるので、方向自動制御による操向クラッチ出力が手動操作による操向クラッチ出力に重なり、オペレータの操作フィーリングを低下させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、刈取穀稈を分草するデバイダと、刈取穀稈に対するデバイダの位置を検出する方向センサと、方向センサの検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御手段とを備えるコンバインにおいて、前記方向センサ位置よりも下流の穀稈搬送経路で搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサを備え、該搬送穀稈検出センサのONを方向自動制御の開始条件とすることを特徴とする。このようにすると、刈始めに際し、方向自動制御による操向クラッチ出力が手動操作による操向クラッチ出力に重なることを回避できるので、出力の重複によってオペレータの操作フィーリングが低下するという問題を解消することができる。
また、前記方向自動制御手段は、前記搬送穀稈検出センサがONしてから所定時間経過後又は所定距離走行後に方向自動制御を開始することを特徴とする。このようにすると、搬送穀稈検出センサがONしてから方向自動制御を開始するまでの時間設定や走行距離設定に基づいて方向自動制御の開始タイミングを容易に最適化することができる。
また、前記搬送穀稈検出センサは、扱深自動制御の開始条件用として設けられる扱深メインセンサであることを特徴とする。このようにすると、扱深メインセンサを兼用できるので、搬送穀稈検出センサを追加することなく、本発明の実施が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、穀稈を刈取る前処理部2と、刈取穀稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別済みの穀粒を貯溜する穀粒タンク4と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5と、各種の操作具が配設される操作部6と、機体を走行させる走行部7とを備えて構成されている。走行部7は、左右一対のクローラ走行体からなり、各クローラ走行体の動力供給経路に介設された左右一対の操向クラッチ(図示せず)を手動又は自動で入り/切り操作することにより、機体の操向(方向修正や旋回)が行われるようになっている。
【0006】
前処理部2は、刈取穀稈を分草するデバイダ8と、分草された刈取穀稈を引き起す引起し装置9と、刈取穀稈の株元を切断する刈刃装置10と、刈取穀稈を後方に向けて搬送する穀稈搬送装置11と、穀稈搬送装置11の終端まで搬送された刈取穀稈を受け継いで脱穀部3まで搬送する扱深搬送装置12とを備えて構成されている。扱深搬送装置12は、刈取穀稈の株元側を搬送する株元搬送チェン13と、刈取穀稈の穂先側を搬送する穂先搬送体14とを並設して構成されるだけでなく、装置全体が搬送終端側(又は搬送始端側)を支点として上下方向に回動自在となっており、図示しない扱深モータの駆動に基づいて強制的に上下回動されるようになっている。
【0007】
本実施形態のコンバイン1では、扱深搬送装置12の上下回動位置制御(扱深モータ制御)に基づいて、脱穀部3における刈取穀稈の扱深さを自動調整する扱深自動制御が行われるようになっている。具体的に説明すると、扱深搬送装置12には、稈長方向に所定間隔を存して二つの扱深センサ15、16が設けられており、株元側の扱深センサ15がONで、かつ、穂先側の扱深センサ16がOFFの状態を維持するように、扱深搬送装置12の回動位置が自動制御される。これにより、扱深搬送装置12による刈取穀稈の挟持位置が穂先を基準として一定になるので、刈取穀稈の稈長変化に拘わらず脱穀部3における扱深さが一定となる。ただし、刈取穀稈の穂先位置を検出する扱深センサ15、16の検出信号だけでは、搬送穀稈の有無を正確に判断できないため、搬送穀稈の株元側を検出する扱深メインセンサ(搬送穀稈検出センサ)17を別途設け、該扱深メインセンサ17のONを扱深自動制御の開始条件としている。
【0008】
さらに、コンバイン1は、方向センサ18の検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御手段を備えている。図1及び図2に示すように、方向センサ18は、所定のデバイダ8の後方近傍に設けられており、刈取穀稈との接触により、刈取穀稈に対するデバイダ8の位置を検出している。具体的に説明すると、方向センサ18は、左右両側方に突出する前後揺動自在なセンサバー19L、19Rと、刈取穀稈との接触に伴う各センサバー19L、19Rの揺動を検出するスイッチ20L、20Rとを備えて構成されている。そして、方向自動制御手段は、方向センサ18の検出信号に応じて左右の操向クラッチを選択的に入り/切りすることにより、機体を刈取穀稈の条列に沿って自動的に走行させるようになっている。例えば、スイッチ20L、20RがいずれもON又はいずれもOFFのときは、左右の操向クラッチを入り(直進)、左スイッチ20LのみがONのときは、右操向クラッチを切り(右操向)、右スイッチ20RのみがONのときは、左操向クラッチを切りとする(左操向)。
【0009】
従来、方向自動制御は、刈始めに際し、方向センサ18の信号変化(OFF→ON)に基づいて開始されるようになっていたが、刈始めは、通常、オペレータによる操向クラッチの手動操作に基づいて機体の走行方向が調整されるので、方向自動制御による操向クラッチ出力が手動操作による操向クラッチ出力に重なり、オペレータの操作フィーリングを低下させるという問題があった。
【0010】
本発明のコンバイン1は、このような問題を解消するために、方向センサ18の位置よりも下流の穀稈搬送経路で搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサ(扱深メインセンサ17)を備え、該搬送穀稈検出センサのONを方向自動制御の開始条件とする。これにより、刈始めに際し、方向自動制御による操向クラッチ出力が手動操作による操向クラッチ出力に重なることを回避できるので、出力の重複によってオペレータの操作フィーリングが低下するという問題を解消することができる。
【0011】
また、方向自動制御は、搬送穀稈検出センサがONしてから所定時間経過後又は所定距離走行後に開始することが好ましい。その理由は、搬送穀稈検出センサがONしてから方向自動制御を開始するまでの時間設定や走行距離設定に基づいて方向自動制御の開始タイミングを容易に最適化することができるからである。
【0012】
また、搬送穀稈検出センサは、扱深自動制御の開始条件用として設けられる扱深メインセンサ17であることが好ましい。その理由は、扱深メインセンサ17を兼用することで、搬送穀稈検出センサを別途追加することなく、本発明の実施が可能になるからである。
【0013】
次に、上記のような方向自動制御手段を実現する方向自動制御部の構成及び制御手順について、図3及び図4を参照して説明する。図3に示すように、コンバイン1には、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAMなどを含む。)を用いて構成される方向自動制御部(方向自動制御手段)21が設けられている。方向自動制御部21の入力側には、前述した方向センサ18(スイッチ20L、20R)、扱深メインセンサ17の他に、作業状況やオペレータの好みに応じて方向自動制御をON/OFF設定する方向自動スイッチ22、機体の後進を検出する後進検出スイッチ23、機体の走行を検出する走行検出センサ24、オペレータによる手動の操向操作を検出する操向手動スイッチ25L、25Rなどが接続されており、また、方向自動制御部21の出力側には、操向クラッチ(油圧クラッチ)を入り/切りさせる操向クラッチバルブ(電磁バルブ)26L、26R、方向自動制御のON/OFF状態を表示する方向自動ランプ27などが接続されている。
【0014】
図4に示すように、方向自動制御部21は、まず、手動操作に応じて左右の操向クラッチを入り/切りする手動制御を行う(S1)。手動制御が終わったら、手動操作の有無を判断し(S2)、該判断結果が有りのときは、方向自動制御の実行が回避される。一方、手動操作が無いときは、方向自動スイッチ22のON/OFFを判断し(S3)、該判断結果がONの場合は、方向自動ランプ27を点灯させると共に(S4)、方向自動制御の各種開始条件を判断する。本実施形態における方向自動制御の開始条件は、機体の前進走行と、扱深メインセンサ17のONであり、機体の前進走行は、走行検出センサ24の検出信号に基づく機体の走行判断(S5)と、後進検出スイッチ23の検出信号に基づく機体の非後進判断(S6)とにより行われる。
【0015】
機体が前進走行状態の場合は、扱深メインセンサ17のON/OFFを判断し(S7)、該判断結果がOFFの場合は、刈取開始フラグをリセットする(S8)。一方、扱深メインセンサ17がONと判断した場合は、前回の扱深メインセンサ17のON/OFFを判断し(S9)、前回の扱深メインセンサ17がOFFの場合は、開始遅延タイマ及び刈取開始フラグをセットする(S10、S11)。その後、刈取開始フラグのセット値及び開始遅延タイマの終了を判断し(S12、S13)、いずれの条件も満たした時点で方向自動制御を開始する。方向自動制御は、前述したように、方向センサ18における左右のスイッチ20L、20RのON/OFFを判断し(S14〜S16)、右スイッチ20RがONで、かつ、左スイッチ20LがOFFの場合に、左操向クラッチの切り出力を行い(S17)、右スイッチ20RがOFFで、かつ、左スイッチ20LがONの場合に、右操向クラッチの切り出力を行うというものである(S18)。
【0016】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、刈取穀稈を分草するデバイダ8と、刈取穀稈に対するデバイダ8の位置を検出する方向センサ18と、方向センサ18の検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御部21とを備えるコンバイン1において、方向センサ18の位置よりも下流の穀稈搬送経路で搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサ(扱深メインセンサ17)を備え、該搬送穀稈検出センサのONを方向自動制御の開始条件とするので、刈始めに際し、方向自動制御による操向クラッチ出力が手動操作による操向クラッチ出力に重なることを回避でき、その結果、出力の重複によってオペレータの操作フィーリングが低下するという問題を解消することができる。
【0017】
また、方向自動制御部21は、搬送穀稈検出センサがONしてから所定時間経過後(又は所定距離走行後)に方向自動制御を開始するので、搬送穀稈検出センサがONしてから方向自動制御を開始するまでの時間設定(又は走行距離設定)に基づいて方向自動制御の開始タイミングを容易に最適化することができる。
【0018】
また、搬送穀稈検出センサは、扱深自動制御の開始条件用として設けられる扱深メインセンサ17であるため、扱深メインセンサ17の兼用化により、搬送穀稈検出センサを追加することなく、本発明の実施が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】コンバインの概略側面図である。
【図2】方向自動制御の説明図である。
【図3】方向自動制御部の入出力を示すブロック図である。
【図4】方向自動制御の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀部
7 走行部
8 デバイダ
12 扱深搬送装置
17 扱深メインセンサ
18 方向センサ
21 方向自動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈を分草するデバイダと、刈取穀稈に対するデバイダの位置を検出する方向センサと、方向センサの検出信号に応じて機体の走行方向を自動的に制御する方向自動制御手段とを備えるコンバインにおいて、
前記方向センサ位置よりも下流の穀稈搬送経路で搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサを備え、該搬送穀稈検出センサのONを方向自動制御の開始条件とすることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記方向自動制御手段は、前記搬送穀稈検出センサがONしてから所定時間経過後又は所定距離走行後に方向自動制御を開始することを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記搬送穀稈検出センサは、扱深自動制御の開始条件用として設けられる扱深メインセンサであることを特徴とする請求項1又は2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−43253(P2008−43253A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222167(P2006−222167)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】