説明

コンバイン

【課題】刈取作業工程の終端において扱深調節搬送装置を所定深扱位置に設定することにより、刈り終わり時に穀稈の株元寄りを挟持して稈こぼれを防止したスムーズな搬送を行うコンバインを提供する。
【解決手段】刈取穀稈を前処理部2に備えた扱深調節搬送装置55で扱深調節しながら脱穀装置に搬送供給するコンバインにおいて、前記扱深調節搬送装置55を設定スイッチの操作に基づき、現在の扱深位置を基準として所定量深扱側へ移動する構成とし、上記設定スイッチの操作により所定量深扱側へ移動したのちに、再度設定スイッチを操作しても、扱深調節搬送装置55が所定量深扱側へ移動しないように規制する規制手段を設けると共に、前処理部2に搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサ70を設け、前記搬送穀稈検出センサ70がOFFからONになると、前記規制手段による規制を解除させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り終わり時等に扱深調節搬送装置を深扱側へ移動させることができるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場枕地で刈取作業を終了して機体を次工程位置に方向転換させるとき、最後に刈取られた穀稈の挟持搬送が不安定になり、刈取部及び脱穀部の搬送途中又は受継部で穀稈が脱落し易い不具合がある。そこで、刈取部の穀稈掻込み位置に穀稈センサを設けて刈取作業の終了を検出し、刈取作業終了時に深扱側に扱深さモータを自動的に動作させるように構成したものは既に公知である(例えば、特許文献1参照。)。
そして、このコンバインは刈取作業再開時に、記憶しておいた前回の扱深位置に扱深さモータを自動的に戻す構成としている。
【特許文献1】特開平10−56850号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のものは、自動的に深扱になって最終搬送穀稈の株元側を挟持させるから、穀稈搬送挟持力の急激な低下を防いで穀稈の脱落を容易に低減することができると共に、刈取作業再開時に自動的に浅扱になって前回の扱深位置に戻るから、深扱側に大きく移動した状態のままで刈り始めることを防止する利点がある。
然しながら、扱深調節を行う縦搬送チェンより前で刈取穀稈の有無を正確に検出するための複数の(6条刈りでは3個)穀稈センサを必要とすること、及び扱深位置を常に記憶させるためにポテンショメータ等が必要になるので、構造が複雑で高価になる等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明によるコンバインは、第1に、刈取穀稈を前処理部2に備えた扱深調節搬送装置55で扱深調節しながら脱穀装置7に搬送供給するコンバインにおいて、前記扱深調節搬送装置55を設定スイッチ12sの操作に基づき、現在の扱深位置を基準として所定量深扱側へ移動する構成とし、上記設定スイッチ12sの操作により所定量深扱側へ移動したのちに、再度設定スイッチ12sを操作しても、扱深調節搬送装置55が所定量深扱側へ移動しないように規制する規制手段71を設けると共に、前処理部2に搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサ70を設け、前記搬送穀稈検出センサ70がOFFからONになると、前記規制手段71による規制を解除させる構成としたことを特徴としている。
第2に、前処理部2の搬送速度を走行機体1の走行速度に連係させて、走行が停止すると前処理部2の搬送も停止すると共に、走行速度が速くなるほど前処理部2の搬送速度も速くなるように構成し、且つ操縦部4に設けた強制掻込スイッチの操作に基づき、前処理部2の搬送速度を走行機体1の走行速度に関係なく一定に保持するように構成したコンバインで、前記強制掻込スイッチと設定スイッチ12sとを兼用させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
上記構成を備えたコンバインは次のような効果を奏することができる。刈取作業終了時に、設定スイッチの操作によって、扱深調節搬送装置の深扱側への過剰移動を規制しながら、所定量深扱側へ簡単に移動することができるので、最終搬送穀稈の株元側を挟持して稈こぼれを防止したスムーズな搬送を行うと共に、装置を安価に構成することができる。
また刈取作業再開時に、扱深調節搬送装置は所定量深扱側となった状態を保持しているから、刈り始めの挟持搬送が不安定な状態でも稈こぼれなくスムーズに搬送することができ、また扱深調節搬送装置の深扱側への過剰移動を規制するので、次工程での扱深調節搬送装置の扱深自動制御を刈り始めに深扱側に位置される影響を少なくし精度よく行うことができる。
また上記強制掻込スイッチと設定スイッチとを兼用したことにより、スイッチ構造を簡潔で安価な構成にすることができると共に、例えば、走行停止状態で前処理部に残った搬送穀稈を強制掻込スイッチを操作して搬送処理するときに、扱深調節搬送装置を深扱側へ移動することができるから、最終搬送穀稈の株元側を挟持して稈こぼれを防止したスムーズな搬送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図面において符号1はコンバインの走行機体であり、該走行機体1は前部に前処理部2を昇降自在に設け、後方の左右に藁処理装置付の脱穀装置3と操縦部4を配置し、該操縦部4の後部にエンジン及びグレンタンクを設けている。また走行機体1の下部には左右のクローラよりなる走行装置9,9を夫々備えている。
【0007】
そして、上記操縦部4は左側に、後述(図3,図5,図7参照)する操作部材としての操作ボタン12を有する把持部13aを備えた主変速レバー13が設けられ、該主変速レバー13の側方には副変速レバー14が設けられていて、これらの主,副変速レバー13,14の組合わせ変速操作により、走行機体1の変速操作を行うように構成されている。
また主変速レバー13に設置される操作ボタン(操作部材)12は、指押し操作によって把持部13aに内装される設定スイッチ12sをONとOFFに切り換え操作することができる。該設定スイッチ12sは、扱深調節搬送装置55を扱深側へ移動操作するもので、この実施形態においては後述する強制掻込スイッチを兼用する構成にしている。
【0008】
先ず、コンバインの動力伝動系統について図4を参照し説明する。エンジン5の駆動軸5aには出力取出し用の複数の駆動プーリが取付けられており、エンジン5からの駆動力は、一方の駆動プーリを介して走行用HST(走行変速装置)17の入力軸17aに伝達する走行伝動系Aと、他方の駆動プーリを介し作業入力軸18から前処理伝動系Bと脱穀伝動系Cに伝達するように分岐して出力される。またエンジン5の駆動軸5aから別の駆動プーリを介しグレンタンク6の穀粒搬送入力軸6aを駆動している。
【0009】
また上記走行用HST17を備える走行トランスミッション19から左右の走行装置9,9用の駆動力が夫々変速出力されて、コンバイン直進時の変速走行及び左右方向への操向を行うことができる。
走行伝動系Aは、走行用HST17の入力軸17aとエンジン駆動軸5aの間にベルトテンションクラッチ構造を成す走行クラッチ20を有し、前処理伝動系Bと脱穀伝動系Cは作業入力軸18と駆動軸5aの間に前記のものと同様な機構からなる作業クラッチ21を備えている。
【0010】
前処理伝動系Bへの駆動力は、作業入力軸18を介して作業機トランスミッション25を構成する作業機HST(前処理変速装置)26の入力軸27に伝達され、上記作業機トランスミッション25からの駆動力は、前処理部2への伝動系Dと、脱穀フィードチェン28への伝動系Eとに分岐して出力されるようになっている。
【0011】
上記作業機トランスミッション25は、前処理部2への駆動力出力用の前処理出力軸29と脱穀フィードチェン28への駆動力出力用のフィードチェン出力軸30の2つの出力軸を有して構成されていると共に、上記脱穀フィードチェン28はフィードチェン出力軸30の端部側に設けられたスプロケット31を介して駆動され、また、扱胴32は作業入力軸18からベルト伝動される扱胴入力軸33から減速伝動機構を介して駆動される。
【0012】
一方、前処理部2は、刈刃装置35,引起装置36,穀稈掻込搬送装置37,扱深調節搬送装置55等を備え、前処理部2への駆動力の伝動は、前処理部2側の駆動力の前処理入力軸40に前処理出力軸29からベルトテンションクラッチ構造からなる刈取クラッチ41を介して行われる。上記前処理入力軸40に駆動力を入力する前処理部2への伝動系Dは、上記各機構が該駆動力の回転数(速度)に応じた駆動速度によって駆動される構造となっている。そして、前処理入力軸40への駆動力の伝動を断接するテンションクラッチ構造の刈取クラッチ41が備えられ、操縦部4に設けた作業機レバー42の図示していない刈取クラッチスイッチの入り切り操作で動力の断接を行うようになっている。
【0013】
次に、上記走行伝動系Aと、前処理部2への伝動系D及び脱穀フィードチェン28への伝動系Eを含む前処理伝動系Bの制御構成について説明する。先ず、各伝動系A,B(C,D,E)に駆動力を出力するエンジン駆動軸5aには、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサS1が取付けられており、該駆動軸5aから走行トランスミッション19の走行用HST17に伝動される。
【0014】
そして、走行伝動系Aに設けた主変速レバー13の操作により走行用HST17の回転速度が変速され、走行用HST17からの駆動力が副変速機構43を介して副変速出力軸44から左右の走行装置9,9に伝動されて、走行機体1の走行速度の変速が行われるが、上記副変速出力軸44にはトランスミッション回転検出センサS2が取付けられて、上記副変速出力軸44の回転数(走行速度)を検出するようになっている。また主変速レバー13の基端部には、該主変速レバー13の切替位置を検出する主変速ポテンショメータP1が設けられている。
【0015】
また前処理伝動系Bを構成する作業機HST26のトラニオン軸(図示せず)には、斜板角を操作して上記作業機HST26の変速操作を行うアクチュエータとしてのモータM1が取付けられていると共に、作業機トランスミッション25の前処理出力軸29には、該前処理出力軸29の回転数(前処理回転数)を検出する前処理回転検出センサS3が設けられており、更に、刈取クラッチ41には、該刈取クラッチ41の入り切りを操作する前処理クラッチモータM2が設けられており、該前処理クラッチモータM2による刈取クラッチ41の入り切りを制御するように構成されている。
【0016】
前記主変速レバー13に設けた設定スイッチ(強制掻込スイッチ)12sと、トランスミッション回転検出センサS2及び前処理回転検出センサS3とは、夫々が制御部に連結されており、制御部を介して上記作業機HST26の変速操作を行うモータM1を制御して前処理部2の駆動速度制御、即ち前処理駆動制御を行うようになっている。この前処理部駆動制御は、前処理部2の駆動速度を走行機体1の走行速度に連係させて、走行が停止すると前処理部2の駆動も停止し、走行速度が速くなるほど前処理部2の駆動速度も速くなるように構成すると共に、前記設定スイッチ12sをONにすると前処理部2の駆動速度を走行機体1の走行速度に関係なく一定速度に保持するように構成されている。
【0017】
従って、刈取走行中は前処理部2の駆動速度が走行速度に同調して変速制御されて、走行速度に見合った速度で駆動されるから、円滑な刈取収穫作業を可能とするものである。
また上記設定スイッチ12sを入れると、刈取作業1工程毎の刈り終わり時に機体停止状態になった場合でも前処理部2は駆動されるので、機体停止時に前処理部2に残留する穀稈を強制的に掻込み、扱深調節搬送装置55を介し脱穀装置3に搬送供給することができる。
【0018】
次に図1〜図3を参照しコンバインの前処理部2について説明する。この前処理部2は刈取フレーム45に従来のものと同様の配置構造によって、4条分の植立穀稈を分草する分草体50及び前記引起装置36と、分草引き起こしされた起立穀稈を刈り取る刈刃装置35、及び刈り取られた穀稈を中央部に掻き寄せて後方送りをする上下段の穂先側掻込搬送体51,株元側掻込搬送体52からなる穀稈掻込搬送装置37、該穀稈掻込搬送装置37から刈取られた穀稈をまとめて後方送りする穀稈縦搬送体53と、該穀稈縦搬送体53から搬送される穀稈を扱深調節自在に引き継いで脱穀フィードチェン28に搬送する扱深調節搬送装置55等から構成される。
【0019】
上記各装置を支持する刈取フレーム45は、該刈取フレーム45から後方に向けて一体的に延出される前処理部伝動ケース57の後部を、走行機体1の前部に立設される支柱58の軸支部59に回動可能に軸支している。そして、前処理部伝動ケース57の中途部を走行機体1側に設けた油圧シリンダ60に連結して支持し、油圧シリンダ60の伸縮作動によって前処理部2を軸支部59を支点に昇降回動することができる。
【0020】
また軸支部59に軸支される前記前処理入力軸40から前処理部伝動ケース57内の伝動軸を介し、引起装置36及び穀稈掻込搬送装置37等を駆動することができる。そして、扱深調節搬送装置55は前処理入力軸40の左端に回動自在に設けられる伝動軸筒61に支持されて伝動されると共に、扱深調節モータM3の駆動によって前処理入力軸40を支点に上下回動することができる。
【0021】
図示例の扱深調節搬送装置55は、伝動軸筒61に設けた穂側搬送体62と株側搬送体63とからなり、両者の上方に左右一対の穂側掻込搬送体65,66を平面視でハ字状に設けている。上記左側の穂側掻込搬送体65は伝動軸筒61から上方に立設され逆U字状の伝動軸筒67に支持されて伝動され、且つ右側の穂側掻込搬送体66は穂側搬送体62の前部に支持されて伝動される。
【0022】
上記伝動軸筒67の中途部には穂側搬送体62の上方で穂先搬送経路に臨む穀稈長さを検出する稈長センサ68を取付支持し、該稈長センサ68の稈長検出信号によって扱深調節モータM3を回転制御し、扱深調節搬送装置55による扱深調節を適正に行うようにしている。尚、実施形態による稈長センサ68は上下一対のセンサ片の間隔を80ミリ程度に定め、且つ1パルスの制御信号毎の扱深調節量を40ミリ程度に設定しインチング作動によって扱深自動制御を行うようにしている。また扱深自動制御は、稈長センサ68の搬送上手側で穂側搬送体62の近傍寄りに設けられる搬送穀稈検出センサ70が、操縦部4に設置される扱深さ自動スイッチ69をOFFからONに切り換える操作された状態において行われ、搬送穀稈検出センサ70は扱深調節搬送装置55による挟持穀稈の有りを検出したときONとなり、無しを検出したときOFFになる。
【0023】
次に、図5で示す扱深自動制御に関連する各センサ及びスイッチ類の入出力ブロック図について説明する。コンバインの操縦部4に設置されるマイコン等からなる制御部(規制手段)71には、入力側に前記搬送穀稈検出センサ(扱深さメインセンサ)70と、前記設定スイッチ(強制掻込スイッチ)12sと、扱深調節の自動制御と手動操作のモードを切り換える扱深さ自動スイッチ69と、図示しない刈取クラッチスイッチとを接続している。また制御部71の出力側には扱深さモータM3と搬送HST駆動モータM1とを接続し、出力信号に基づきそれぞれ正逆回転させることができる。これにより制御部71は扱深調節搬送装置55を後述するように制御する規制手段を構成している。
【0024】
次に、図6で示す扱深自動制御のフローチャートについて説明する。扱深自動制御において、先ず扱深さメインセンサ70のON/OFF判断ステップに進み、扱深さメインセンサ70がONの場合は、前回の扱深さメインセンサ70のON/OFF判断ステップに進む。そして、前回の扱深さメインセンサ70がONの場合は、扱深さ自動スイッチ69のON/OFF判断ステップに進み、OFFの場合は終了フラグ(規制)をリセットしてから、扱深さ自動スイッチ69のON/OFF判断ステップに進む。
【0025】
扱深さ自動スイッチ69がONの場合は刈取クラッチ41の入り/切りの判断ステップに進み、刈取クラッチ41が入りの場合は終了フラグ(規制)のセット/リセットの判断ステップに進み、終了フラグがリセットされている場合は設定スイッチ(強制掻込スイッチ)12sのON/OFF判断ステップに進む。強制掻込スイッチ12sがONの場合は前回の強制掻込スイッチ12sのON/OFF判断ステップに進み、前回の強制掻込スイッチ12sがONの場合は遅延タイマの終了/未終了の判断ステップに進み、OFFの場合は遅延タイマをセットしてから遅延タイマの終了/未終了の判断ステップに進む。
遅延タイマが終了の場合は深扱出力タイマをセットしてから出力タイマの終了/未終了の判断ステップに進み、出力タイマが未終了の場合は扱深さモータM3へ深扱出力を行い、出力タイマが終了の場合は終了フラグ(規制)をセットする。
【0026】
以上のように構成されるコンバインの刈取作業において、前処理部2で刈取られた穀稈は、扱深さメインセンサ70による搬送穀稈検出結果、及び稈長センサ68による稈長検出結果に基づく扱深自動制御によって適正に扱深調節されながら脱穀装置3で脱穀処理される。
また刈取走行中は、前処理部2の搬送速度が走行速度に同調して変速され、走行速度に見合った速度で駆動されるから、穀稈の刈取収穫作業を円滑に行うことができる。
また刈取作業工程の刈り終わり時に、設定スイッチ12sをON操作すると、前処理部2が走行速度に関係なく一定速度に保持されて駆動し、刈り終わり時に機体の走行速度を減速させても穀稈をスムーズに搬送することができる。また設定スイッチ12sのON操作に基づき、前記前処理部2の一定速度駆動への切り換えと同時に扱深調節搬送装置55が現在の扱深位置を基準として所定量深扱側へ移動する。
【0027】
これによりコンバインは、工程終端で穂先がばらけ易い穀稈に対し、扱深調節搬送装置55を所定量深扱側とした状態で株元寄りを確実に挟持すると共に、工程終端で走行を停止させても前処理部2を駆動するので、挟持した穀稈を脱穀装置3に乱れを防止した状態でスムーズに供給することができる。
従って、畦近傍の穀稈を刈取る場合の刈り終わり時に、前処理部2を上昇させながら前進し刈取る刈り上げ操作を行う場合でも、短稈状態で刈取られた穀稈を所定深扱位置の深扱状態で乱れの少ない株元寄りを掻き込み挟持して搬送し、刈り終わり時に薄い搬送穀稈層になるために生じ易い稈こぼれを防止した搬送をスムーズ行い、適正な扱深長さで脱穀装置3に供給することができる。
【0028】
そして、扱深調節搬送装置55は設定スイッチ12sの操作に基づき、現在の扱深位置を基準として所定量深扱側へ移動する構成において、一度所定量深扱側へ移動したのちに前記設定スイッチ12sを操作しても、扱深調節搬送装置55が所定量深扱側へ移動しないように規制する規制手段71を備えているので、例えば操作ボタン12が2度押し等の誤操作された場合でも、設定スイッチ12sは扱深さメインセンサ70が再度ONにならない限り、扱深調節搬送装置55の深扱側移動は無効にされるので、1工程内の刈取作業中において上記機能は1回のみ有効となり、扱深調節搬送装置55を誤操作によって過剰に深扱側移動させないものである。
また扱深調節搬送装置55は通常刈取作業が行われる現在扱深位置から、先端部分で50ミリ程度だけ深扱移動させた所定深扱位置に設定されるので、前記出力タイマ時間が終了したのち行われる扱深自動制御において、1回のインチング作動で40ミリ程度浅扱側に復帰するため、通常の刈取作業への復帰作動を速やかに行うことができる等の特徴がある。
【0029】
さらに、主変速レバー13に設置する設定スイッチ12sは、前記強制掻込スイッチを兼用しているので、頻繁に把持する主変速レバー13の把持部13aのスペースを利用して設置される一つの操作ボタン12を操作するだけで、前処理部2の一定速度駆動への切換操作及び扱深調節搬送装置55の所定量深扱側への移動操作を同時で簡単に行うことができると共に、スイッチ構造を簡潔で廉価な構成とすることができる等の利点がある。
尚、実施形態のコンバインは、指押し操作する操作ボタン12の操作によって設定スイッチ12sをON/OFFに切り換える方式としたが、これに限ることなく、前記操作ボタン12を足踏み操作するペダルに替えてもよい。また設定スイッチ12sを、強制掻込スイッチ以外のスイッチと兼用したり、扱深調節搬送装置55を所定量深扱側へ移動させる専用のスイッチとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンバインの前処理部2の構成を示す要部の構成を示す側面図である。
【図2】図1の扱深調節搬送装置が扱深自動制御によって浅扱状態に作動された状態を示す側面図である。
【図3】前処理部の平面図である。
【図4】動力伝動系統図である。
【図5】各センサ及びスイッチ類の入出力ブロック図である。
【図6】扱深自動制御のフローチャートである。
【図7】操作ボタンを備えた主変速レバーの正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 走行機体
2 前処理部
3 脱穀装置
12 操作ボタン(深扱操作具)
12s 設定スイッチ(強制掻込スイッチ)
13主変速レバー
55 扱深調節搬送装置
68 稈長センサ
69 扱深さ自動スイッチ
70 搬送穀稈検出センサ(扱深さメインセンサ)
71 規制手段(制御部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈を前処理部(2)に備えた扱深調節搬送装置(55)で扱深調節しながら脱穀装置(7)搬送供給するコンバインにおいて、前記扱深調節搬送装置(55)を設定スイッチ(12s)の操作に基づき、現在の扱深位置を基準として所定量深扱側へ移動する構成とし、上記設定スイッチ(12s)の操作により所定量深扱側へ移動したのちに、再度設定スイッチ(12s)を操作しても、扱深調節搬送装置(55)が所定量深扱側へ移動しないように規制する規制手段(71)を設けると共に、前処理部(2)に搬送穀稈を検出する搬送穀稈検出センサ(70)を設け、前記搬送穀稈検出センサ(70)がOFFからONになると、前記規制手段(71)による規制を解除させる構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前処理部(2)の搬送速度を走行機体(1)の走行速度に連係させて、走行が停止すると前処理部(2)の搬送も停止すると共に、走行速度が速くなるほど前処理部(2)の搬送速度も速くなるように構成し、且つ操縦部(4)に設けた強制掻込スイッチの操作に基づき、前処理部(2)の搬送速度を走行機体(1)の走行速度に関係なく一定に保持するように構成したコンバインで、前記強制掻込スイッチと設定スイッチ(12s)とを兼用させることを特徴とする請求項1記載のコンバイン。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−61527(P2008−61527A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240479(P2006−240479)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】