説明

スイッチングユニット

【課題】 小型化と放熱性の向上が可能なスイッチングユニットを提供する。
【解決手段】 スイッチングユニット10は、ケーシング20で包囲され、回路基板11とバスバー回路12とを密着させた回路基板11側の表面にスイッチングデバイス13を実装したユニット本体15を有すると共に、ユニット本体15からケーシング20の外側へ延出する接続端子12Aを備え、さらに、ユニット本体15の実装面との反対側には絶縁被覆30で覆われた放熱板25が密着されている。これにより、スイッチングユニット10は、複雑な回路を回路基板11で形成すると共に、入出力を行う回路と接続端子12Aとをバスバー回路11で一体に形成して、内部の回路のための構造を小型化でき、さらに、放熱板25が絶縁被覆30で覆われているので、ユニット本体15と放熱板25との間の短絡を確実に防いで、放熱板25を用いた放熱を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流のオン/オフを制御可能なスイッチングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチングユニットとして、例えば特許文献1に示すものがある。このものは、例えば、自動車のバッテリー等の電源とヘッドランプ等の各電子装置との間に配されて電流のオン/オフを切り替えることにより各電子装置の制御を行うものである。また、これらのスイッチングユニットは、外部との接続を行うための接続端子を備え、メンテナンス等のため着脱可能なものとして用いられている。
【特許文献1】特開2002−324478公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、自動車に要求される快適性・安全性等は高まる一方であり、これらの要求を満たすために自動車に搭載される電子装置の数は増加する傾向にある。そうすると、増加した電子装置を制御するためのリレー等のスイッチングユニットの数も増加してその分、スペースを要してしまうという問題があった。さらに、着脱可能なスイッチングユニットの場合、搭載箇所が外部に露出している等、着脱可能な箇所に設置しなければならない等、その配設箇所が制限されてしまうので、スペース上の問題はより顕著になってしまう。これらの問題から、スイッチングユニットをできるだけ小型化したいという要望があった。
また、自動車に搭載される電子装置の数が増加すると車両全体で消費する電力量も増加し、単純に小型化した場合、発熱密度が上昇して熱がこもり、電子装置に悪影響を及ぼす恐れもあった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化と放熱性の向上が可能なスイッチングユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え、前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体に延設されると共に絶縁被覆を介して前記回路体に密着された放熱手段を有するところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ケーシングには前記放熱手段を外部に露出する開口部を有するところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記ケーシングが一体にモールド成形されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
スイッチングユニットの内部に回路基板とバスバー回路とを備えるので、バスバー回路で形成した場合大型化してしまうような複雑な回路を回路基板で形成すると共に、入出力を行う回路と接続端子とをバスバー回路で一体に形成するので、スイッチングユニットの内部の回路のための構造を小型化できる。
また、スイッチングユニットには絶縁被覆を介して回路体に密着された放熱手段を備えるので、回路体で生じた熱を放熱手段を介して外部に放出させることができる。
これにより、本発明では、スイッチングデバイス全体を小型化しつつ、その放熱性の向上が可能となる。
【0009】
<請求項2の発明>
放熱手段が開口部から外部に露出するので、放熱性を一層向上させることが可能となる。
【0010】
<請求項3の発明>
ケーシングを樹脂で一体にモールド成型することにより、製造工程が短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。
スイッチングユニット10は、図1,2に示すように、ケーシング20で包囲されたユニット本体(本発明の「回路体」に相当する)15を有し、ユニット本体15からケーシング20の外側へ延出する接続端子12Aが相手側接続端子(図示なし)と接続することで電気接続箱(図示なし)等に着脱可能に装着されるようになっている。
【0012】
ユニット本体15は、回路基板11とバスバー回路12とを絶縁物を介して密着させた回路基板11側の表面にスイッチングデバイス13を実装してなるものである(図2参照)。
スイッチングデバイス13は、電流のオン/オフを制御可能なものであって、本実施形態では半導体スイッチング素子を用いており、特に本実施形態では、半導体デバイス中にパワーMOSFET部と、過熱保護機能或いはPWM信号発振部等を有する制御部とをワンチップ上に配設したものを用いている。
【0013】
回路基板11は、図1に示すように、略方形状の絶縁基板上にスクリーン印刷等で導電路が形成された印刷回路を備え、その所定箇所には貫通孔11Aが穿設されている。スイッチングデバイス13或いは他の抵抗その他の回路基板11の表面に実装された電子素子は、この貫通孔11Aを介して次述のバスバー回路12に直接端子を接続させるようになっている(図2参照)。また、本実施形態では回路基板11の片側(図1の右側)にスイッチングデバイス13を実装すると共に、その反対側(図1の左側)に(詳細には図示しないが)制御系の回路を配設している。
【0014】
バスバー回路12は、金属平板を打抜いて形成された複数本のバスバーによって所定回路形状に形成されてなるものである(図1の破線参照)。バスバー回路12は全体形状が回路基板11と同様の略方形状をなしており、回路基板11のほぼ全体に亘る領域をバスバー回路12で支持することでユニット本体15の強度を確保できるようになっている。
さらに、バスバー回路12を構成するバスバーには、ユニット本体15から延出する接続端子12Aが一体に形成されており、この接続端子12Aによって、図示しない電気接続箱等の相手側接続端子と嵌合可能となっている。尚、本実施形態では、図1に示すように、5本の接続端子12Aを備えているが、これらのうち図1における左側の3本が制御系端子として用いられ右側の2端子が電力系端子として用いられている。また、制御系端子(図1の左側3本の端子)の先端部はプレス加工によって電力系端子(図1の右側2本の端子)よりも薄く形成されている。
【0015】
ケーシング20は、全体略直方体形状をなし、本体21のうち上記の接続端子12Aを導出する側(図2の左側)の面の下側部分を別体の蓋体22で閉塞可能となっている。
蓋体22は接続端子12Aを導出する箇所に溝部22Aが形成されており、この溝部22Aに接続端子12Aを嵌め込むことでケーシング20から接続端子12Aを隙間なく導出できるようになっている(図3参照)。
また、ケーシング20にはユニット本体15に取付けられた放熱板25に対応する箇所(図2の下側)の面が開口部20Aをなしており、この開口部20Aから放熱板25を外部に露出させることで放熱性を高めるようになっている。
【0016】
さて、本実施形態ではユニット本体15の下側に図2に示すように放熱板(本発明の「放熱手段」に相当する)25を備える。放熱板25はアルミ製の金属板でユニット本体15のバスバーの下面に接着剤(例えばシリコーン系接着剤若しくはエポキシ系接着剤)又は接着シート(例えば絶縁シートの両面に接着剤を塗布して接着性をもたせたもの)からなる絶縁被覆30により接着し、かつ絶縁されている。
特に、本実施形態では、ユニット本体15と放熱板25との間のみでなく、接続端子12Aの延出方向に面する放熱板25の先端面にも絶縁被覆30が配設されている(図2参照)。この絶縁被覆30は上記の接着剤又は接着シートをそのまま延設してもよく、他の絶縁シート等を貼り付けて形成したものであってもよい。これにより、接続端子12Aの基端部分と放熱板25との間で短絡が生ずることを防ぐことができるようになっている。
そして、放熱板25はユニット本体15で生じた熱をバスバー回路12を介して伝熱させて、外部へ放出するようになっている。これらの接着剤はアルミナフィラー等熱伝導性の高い材料を含有したものを用いることでより伝熱性を向上させることが可能となる。
【0017】
上記のように構成されたスイッチングユニット10は図示しない電気接続箱に対して着脱可能に組みつけられて、制御系端子から所定の電気信号を受け取てスイッチングデバイス13を動作させることにより、電力系端子の入力側から入力された電流を適宜調整して電力系端子の出力側から出力し電子装置(図示なし)を動作させる。
ここで接続端子12Aに電流が流れた場合でも、放熱板25は絶縁被覆30で覆われているので、接続端子12Aの基端部との間に短絡等が生ずることなく、確実に電流の制御をすることができる。
尚、電気接続箱(図示なし)のメンテナンス時等において、スイッチングユニット10は抜脱可能であり、必要に応じて交換されて使用できるようになっている。
【0018】
このように、本実施形態のスイッチングユニット10によれば、スイッチングユニット10の内部に回路基板11とバスバー回路12とを備えている。これにより、バスバー回路12で形成した場合大型化してしまうような制御系回路等の複雑な回路を回路基板11で形成すると共に、入出力を行う回路と接続端子12Aとをバスバー回路11で一体に形成するので、スイッチングユニット10の内部の回路のための構造を小型化できる。
また、スイッチングユニット10には放熱板が絶縁被覆30で覆われているので、接続端子12Aの基端部と放熱板25との間の絶縁を確実に図ることができ、ユニット本体15と放熱板25とを近付けて小型化を図る構成としても、ユニット本体15と放熱板25との間の短絡を確実に防いで、放熱板25を用いた放熱を行うことができる。
これにより、スイッチングユニット10全体を小型化しつつ、その放熱性の向上が可能となる。特に、バスバーのような平板状の金属導電路のみで回路形成するものよりも、格段に高密度化を図ることができる。
【0019】
また、本実施形態では、スイッチングユニット10は、バスバー回路12がスイッチングデバイス13や回路基板11上で生ずる熱を効率よく放熱板25に伝えることができるので、放熱性に優れ、さらに、放熱板25がケーシング20の開口部から外部に露出されているので、放熱性が一層向上できる。
【0020】
また、ユニット本体15に関し、例えば製造工程における放熱板25の取り付け前の工程において、回路基板11のみでは強度が不十分となるが、本実施形態のユニット本体15では、回路基板12のほぼ全面に亘り、バスバー回路12が貼り付けられているので、ユニット本体15のみでも十分な強度を確保できる。
【0021】
また、本実施形態ではスイッチングデバイス13に半導体スイッチング素子を用いたのでいわゆるメカリレーにおいて、接点のオン/オフ時に発生する動作音が生じないので、静音化が図れる。
【0022】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4によって説明する。
本実施形態のスイッチングユニット10Aは、ケーシング20がモールド成形によって一体に形成された点が上記実施形態1と相違するものであるが、他の同様の構成については同様の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、上記実施形態1におけるケーシング20の本体21と蓋体22とをモールド成型で一体成型すると共に、ケーシング20を構成する樹脂にアルミナ等のフィラーを添加した樹脂を用いることで、ケーシング20全体の放熱性を高めることができる。
【0023】
このように、本実施形態のスイッチングユニット10Aは、ケーシング20を樹脂でモールド成形によって一体成型することにより、製造工程が短縮できるので、製造効率の向上が可能となる。
【0024】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図5ないし図10によって説明する。
本実施形態のスイッチングユニット10Bは、放熱板25をケーシング20に内包させる構成である点が上記実施形態1と相違するものであるが、他の同様の構成については同様の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態に係るケーシング20は本体21が蓋体22Fを取り付ける箇所以外全て壁面を有するものであると共に、本体21の接続端子12Aを導出する側(図5の左側)の面全体を蓋体22Fで閉塞するようになっている。
蓋体22Fは接続端子12Aをケーシング20外部へ導出可能なように、各接続端子12Aの配設箇所に挿通孔24が穿設されている(図8,10参照)。この挿通孔24は接続端子12Aを隙間なく挿通可能となるように接続端子12Aの外形とほぼ同様の形状に穿設されている(図7参照)。そしてケーシング20は、蓋体22Fを組付けることによりユニット本体15の全周を包囲可能となるものである。これにより、防塵性・防水性の向上が可能となる。
また、ケーシング20の本体21の内壁には図8,9に示すように放熱板25に対応させて溝23が形成されている。ユニット本体15をケーシング20に組付ける場合には、放熱板25をこの溝23に嵌め入れてスライドさせながら挿入することで、ユニット本体15の位置決めが容易になり、組付け作業が円滑になされる。
このように、本実施形態のスイッチングユニット10Bによれば、防塵性・防水性が向上すると共に、組付け性が向上する。
【0025】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では絶縁被覆30が放熱板25とユニット本体15との間と放熱板25の接続端子12Aの延出方向に面する放熱板25の先端面とを覆うものであったが、これに限らず、例えば、放熱板25の外周面を全て覆うようなものであってもよい。
(2)上記実施形態ではスイッチングユニット10,10A,10Bはスイッチングデバイス13に半導体スイッチング素子を実装するものであったが、これに限らず、例えばIC等を実装するものであってもよい。
(3)上記実施形態において、制御系回路にIC、マイコン等を実装するものであってもよい。
(4)上記実施形態2において、ケーシング20のモールド成形が放熱手段(放熱板)の1面をスイッチングユニットの壁面とした構造であったが、これに限らず、例えば放熱板の全面をモールド樹脂にて内包する構造であってもよく、また放熱板の多面を壁面とした構造であってもよい。
(5)上記実施形態3において、ケーシング20の内壁のうち、放熱板25が当接する内壁を他よりも薄肉とするものであってもよい。これにより、放熱性が向上できる。
(6)上記実施形態において、さらに放熱面積を増加するため放熱板に放熱フィン等の放熱手段を追加する構造のものであってもよい。
(7)上記実施形態ではスイッチングデバイス13に半導体スイッチング素子を用いるものであったが、これに限らず、ベアチップ等を実装するものであってもよい。
(8)上記実施形態ではケーシング20が樹脂製のものであったが、例えば金属製のものであってもよい。この場合、例えば、金属製ケーシングの表面に絶縁被膜を形成する等してケーシングとユニット本体との間の絶縁を図る構成とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態1のスイッチングユニットの平断面図
【図2】X−X’におけるスイッチングユニットの縦断面図
【図3】スイッチングユニットの端子金具導出方向から見た平面図
【図4】実施形態2のスイッチングユニットの縦断面図
【図5】実施形態3のスイッチングユニットの平断面図
【図6】Y−Y’におけるスイッチングユニットの縦断面図
【図7】スイッチングユニットの接続端子導出方向から見た平面図
【図8】スイッチングユニットの分解断面図
【図9】ケーシングの本体の開口部側から見た平面図
【図10】蓋体の本体と対向する側スイッチングユニットの分解断面図
【符号の説明】
【0027】
10…スイッチングユニット
11…回路基板
12…バスバー回路
12A…接続端子
13…スイッチングデバイス
15…ユニット本体(回路体)
20…ケーシング
20A…開口部
25…放熱板(放熱手段)
30…絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、
絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路とを有し、これらの双方に対して前記スイッチングデバイスが接続されてなる回路体を、ケーシングに収容して備え、
前記バスバー回路の端部に前記接続端子が一体に延設されると共に
絶縁被覆を介して前記回路体に密着された放熱手段を有することを特徴とするスイッチングユニット。
【請求項2】
前記ケーシングには前記放熱手段を外部に露出する開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のスイッチングユニット。
【請求項3】
前記ケーシングが一体にモールド成形されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスイッチングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−310556(P2006−310556A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131540(P2005−131540)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】