説明

スピーカまたはイヤホーンまたはヘッドホーン。

【課題】電気エネルギーを音響エネルギーに変換する音響再生系において、単位電力あたりの駆動力の改善が限界に達している。
【解決手段】駆動力を生むに必要な、電流を流すボイスコイルと磁束密度を確保する磁気ギャップの組を同心円状あるいは配列状に、多数設けることで、2009年現在、スピーカ生産に使われている技術の範囲内で、単位電力あたり得られる駆動力を際限なく改善できる。

【発明の詳細な説明】
【用語の定義】
【0001】
請求項を含む全文を通じ、{}内部の内容は{}の外の内容に優先して意味を持つものとする。
【技術分野】
【0002】
電気エネルギーを音響エネルギーに変換する装置の設計製造技術。
【背景技術】
【0003】
スピーカのエネルギー変換効率を上げるための磁気ギャップの高磁束密度化。
高磁束密度(例えば1.3テスラを超えて2テスラに至る)で飽和しない素材。
スピーカの振動板の{軽量化と高剛性化}の相矛盾する課題の解決のための{素材技術や複合材料技術や構造設計技術}。
{円や楕円}形状の{パイプ形状の磁性体}の半径軸方向に着磁する技術。
ボイスコイルの総線長と電気抵抗の比を上げる工夫。
ボイスコイルの許容電流を上げる工夫。
【課題を解決するための手段】
【0004】
問題は、{スピーカやイヤホーンやヘッドホーン}に使われる{電気エネルギーを音響エネルギーに変換する機能}の変換効率の低さにある。
例えば直径が50mm程度の小さいコーンスピーカの場合そのエネルギー変換効率は0.1%程度である場合も少なくない。大きな直径のコーンスピーカでも、特別な設計をしない限り、1%以上のエネルギー変換効率を得ることは難しい。
一般に、直径の大きなスピーカの変換効率が小さなものより高いと言われているのは、中低音の帯域における変換効率である。大きなスピーカの場合、高音域ではボイスコイルの駆動力に対して、振動を伝達する構造物の質量が大きくなり、その変換効率は極めて低い。
【0005】
この問題を解決する方法の一つとして、ボイスコイルが横切る磁気ギャップの磁束密度を大幅に大きくする方法が考えられる。しかし、通常の磁性体ではせいぜい1.3テスラ程度の磁束密度が飽和限界である。また、極めて特殊な磁性材料でも2テスラ程度が限界である。
{超伝導を利用して高い磁束密度を得る方法}などは、実現性はあるものの、一般コンシューマ商品に採用できるものではない。
一方、ボイスコイルの性能面の改善では、{ボイスコイルの温度を下げて超伝導状態を得ること}で大きな駆動力を発生する方法などは、実現性はあるものの、一般コンシューマ商品に採用できるものではない。
【0006】
本案発明は小さい直径のスピーカであっても、大きい直径のスピーカであっても再生しようとする全帯域で、際限なく駆動力を高める方法に関する。そして、{使う材料や構造や設計技術}が{従来の方法を応用できる範囲}にあって、その製造方法は容易である。
【0007】
[図1]は本案発明の一実施例の原理説明図である。
2個の{同心円の{ボイスコイルと磁気ギャップ}}を使った場合を示す。(a)、(b)の図の内、(b)の図は円形状の側面の断面を示し、(a)の図は下の図のA−A’断面である。
本案発明の本質は任意の複数のボイスコイルを設けることにある。
1は閉磁路を得るための磁性体。1Aと1Bは{着磁されている{第1磁石と第2磁石}}の影響を受けてそれぞれ{S極とN極}に磁化される。2は音響エネルギーを放射する振動板。3は第1ボイスコイルを支える第1ボビンで、これは振動板に固定されている。4は第1ボイスコイル。5は第1磁石であって、記号{NとS}はパイプ状の磁石の{内側がS極}で{外側がN極}であることを示す。6は第2ボイスコイルを支えるための第2ボビンで、これは振動板に固定されている。7は第2ボイスコイル。8は第2磁石であって、記号{NとS}はパイプ状の磁石の{内側がS極}で{外側がN極}であることを示す。{第1磁石と第2磁石}は共に半径方向に着磁されている。
【0008】
第1ボイスコイルと第2ボイスコイルは電気的に{並列または直列}に接続されていて、第1ボイスコイルと第2ボイスコイルの双方には{同じ電圧または同じ電流}が供給される。
【0009】
第1ボイスコイルの
線長をL1、抵抗をR1、横切る磁束密度をB1、電流をI1、電圧をE1、駆動力をF1、消費電力をP1、とし、
第2ボイスコイルの
線長をL2、抵抗をR2、横切る磁束密度をB2、電流をI2、電圧をE2、駆動力をF2、消費電力をP2、とし、
第1ボイスコイルと第2ボイスコイルの
{両者が生む総合駆動力をF}、
{両者が消費する電力をP}
とし、振動板が動かないよう、固定されている場合の{駆動力と消費電力}は以下のとおりとなる。
【0010】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【0011】
【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【数13】

【数14】

【0012】
説明を簡単にするために、
【数15】

【数16】

【数17】

【数18】

【数19】

とすると、
【0013】
【数20】

【数21】

【数22】

【数23】

【数24】

【数25】

となる。
{数24または数25}は{{第1ボイスコイルと第2ボイスコイル}が{並列または直列}の場合}}の単位電力消費あたりの駆動力の大きさを表す。
【0014】
ボイスコイルが第1ボイスコイルだけの場合も、単位電力消費あたりの駆動力は{数24または数25}で表現される。
【0015】
第1ボイスコイルだけの場合の{電力消費をPa、駆動力をFa、電圧をEa}とし、これを{ケースA}とし
{第1ボイスコイルと第2ボイスコイルが並列の場合}の{総電力消費をPb、駆動力をFb、電圧をEb}とし、これを{ケースB}とし、
{第1ボイスコイルと第2ボイスコイルが直列の場合}の{総電力消費をPc、総駆動力をFc、電流をIc}とし、これを{ケースC}とすると、
【0016】
【数26】

【数27】

【数28】

【数29】

【数30】

【数31】

【0017】
ケースAとケースBの消費電力を等しくすると、
【数32】

【数33】

【0018】
となり、{ケースAとケースBの消費電力が等しい場合}のEaとEbの関係は
【数34】

となる。
【0019】
そして、ケースAとケースBの消費電力が等しい場合の駆動力Fbは
【数35】

となる。
【0020】
ケースAとケースCの消費電力を等しくすると、
【数36】

【数37】

となり、{ケースAとケースCの消費電力が等しい場合}のIaとIcの関係は
【数38】

となる。
【0021】
そして、ケースAとケースCの消費電力が等しい場合の駆動力Fcは
【数39】

となる
【0022】
即ち、図1の実施例の{2個のボイスコイルによる総合駆動力}は{同じ消費電力の条件下}で従来の場合のルート2倍となる。
以上の{計算による説明}は{ボイスコイルが固定されている振動板}が{動かないという条件}での計算ではあるが、ボイスコイルが振動している場合でも{単位電力消費あたりの駆動力の改善}または{単位駆動力あたりの消費電力の改善}が成り立つことは明らかである。
【0023】
上記の説明は{同条件のボイスコイル}が2個の場合であるが、4個の場合では{単位電力消費あたりの駆動力}は2倍となり、8個の場合は2*(ルート2)倍となる。
【0024】
したがって、例えば、従来では
{{10Wのパワアンプ}と{10Wのボイスコイルの放熱条件}が必要であった再生システム}が{本案発明による同条件のボイスコイルを4個設ける}ことで、同じパワ条件ならば、2倍の駆動力を得ることができる。あるいは、{5Wのパワアンプ}と{5Wのボイスコイルの放熱条件}で同じ駆動力を得ることができる。
【0025】
従来の方法は{ボイスコイルが一個の場合}でも{巻き線を多層に設ける}ことで、変換効率の若干の改善はできるものの、{磁気ギャップを広げなければならない}などのネガティブなファクターに阻まれて、その結果、{トレードオフ関係にあるファクター相互間}には、おのずから、最適な状態が存在する、その最適な状態から脱却するには、{{高磁束密度や超伝導}などの課題をクリアーしなければならない}とされていた。しかし、本案発明の手法を用いることで、従来の技術だけで、変換効率を数倍程度に上げることが簡単に達成できる。特に、同じ駆動力で消費電力を小さくできることは、{携帯用や電池駆動}の再生装置に組み込む上で、大きなメリットとなる。
音響商品の市場では{小型化かつ高性能化}が商品評価の大きなファクターとなっていることから、本案発明の手法が極めて有効であることが明らかである。
【0026】
[図2]は図1の{ボイスコイルの配線}の一実施例の原理説明図である。
2はプリント配線振動板。4は第1ボイスコイル。7は第2ボイスコイル。9と10はそれぞれボイスコイルに電流を流す端子。{11と12}はそれぞれ、第1ボイスコイルと上記端子{9、10}とを接続するプリント配線。{13と14}はそれぞれ、第2ボイスコイルと上記端子{9、10}を接続するプリント配線。図1の例では{第1ボイスコイルと第2ボイスコイル}の接続は並列の場合を示す。図はボイスコイルが2個の場合の例であるが、多数の場合はオウリント配線による接続が不可欠である。
【0027】
[図3]は図1の一実施例の{第1磁石と第2磁石}を説明するもので、図1の補足説明図である。図1の{第1磁石と第2磁石}はいずれもパイプ形状であって、半径方向に着磁されている。いずれも内側がS極で、外側がN極であるが、いずれがNとSかは本案発明の本質ではない。また、パイプ状の磁石の製造方法についても本案発明の本質とするところではない。
しかし、パイプ状の磁性体の{内側と外側}に{着磁をし、磁極を設ける}ことは簡単ではないことから、{図1の実施例の製造方法}が難しくないことを説明する必要から、その手法の一例を示すものである。
図3は、全体として、同心円状にある径が異なる2種類のパイプ状の磁石を配置している状態の断面を示す。
【0028】
{51、52、53、54、55、56、57、58}はそれぞれが、{円形パイプを8等分された磁性体}を{それぞれ別個に着磁}して組み合わせたものである。図3の手法で製造された磁気ギャップのスピーカは、2009年現在、市場に存在する。
【0029】
[図4]は本案発明の一実施例の原理説明図である。
図は、4個の帯状の磁気ギャップを使った場合を示す。(a)、(b)の図の内、(a)の図は平面図で配列状の原理構造を示し、(b)の図は上の図のA−A’断面である。
本案発明の本質は任意の複数のボイスコイルを設けることにある。
1は閉磁路を得るための磁性体。1Aと1Bは{着磁されている{第1磁石と第2磁石と第3磁石と第4磁石と第5磁石}}の影響を受けてそれぞれ{S極とN極}に磁化されている。2は音響エネルギーを放射する振動板。{3、6、9、12、15}は、それぞれ、図中{左がN極、右がS極}に着磁された{第1磁石、第2磁石、第3磁石、第4磁石、第5磁石}。{4、7、10、13}はそれぞれ、ボイスコイルを支える{第1ボビン、第2ボビン、第3ボビン、第4ボビン}で、これらは振動板に固定されている。{5、8、11、14}はそれぞれ{第1ボイスコイル、第2ボイスコイル、第3ボイスコイル、第4ボイスコイル}である。{第1と第2と第3と第4}のそれぞれのボイスコイルは電気的に{並列または直列または直並列}に接続されている。
【0030】
長円状の振動板を持つスピーカは、市場では、2009年現在、よく見かける。このような振動板の場合、振動板全体を均一に駆動することは難しい。局部に集中された駆動部が発生する駆動力を振動板全体に均一に伝達することは、長円状の振動板にとって、大きな課題である。そのために、軽くて、剛性が高い材料や構造の研究や開発が進んでいる。しかし、日々改善されているものの、軽いことと剛性が高いことの二つのファクターは相矛盾する課題にあることには変わりはない。本案発明によって、このような{相矛盾する課題}を{従来の製造技術で解消する}ことを可能とする。
【0031】
{磁石や磁性体}を図4のように配列することは可能である。
振動板に図4のように板状のボビンを固定し、このボビン上に導体を設けることも可能である。このボビン上の導体に電流を流すことも可能である。
{市場ではネオジウムと呼ばれる強磁性材料}で作られた{厚みの薄い磁石のピース}は既に販売されているが、{この磁石のピースを薄くする}ことで、{駆動力を生むボイスコイル}を、振動板上に、{高密度に、しかも均一に}設けることが可能となる。
【0033】
{数35、数39}が示すように、同一振動板上に複数のボイスコイルを設けることで、{ボイスコイルが静止している状態}ではあるが、単位電力消費あたりの駆動力を大幅に増加させることができる。
さらに、{軽くて剛性が高い}という相矛盾する課題に挑むことなく{極めて普通の材料}を使って{{トタンスヂューサーとしての効率が高く}、{強力な駆動力で}、{駆動力が振動板全体に均等に分布している}}理想に近いスピーカを具現化できる。
【0034】
[図5]は図4の4個のボイスコイルを並列に接続する例を示す。
2はプリント配線振動板。
{5、8、11、14}はそれぞれ、図4の{第1、第2、第3、第4}のボイスコイル。{16と17}はそれぞれボイスコイルに電流を流すための接続端子。{18、19}はそれぞれのボイスコイルと端子{16、17}を接続する配線である。
【0035】
[図6]は図4の4個のボイスコイルを直列に接続する例を示す。
2はプリント配線振動板。
{5、8、11、14}はそれぞれ、図4の{第1、第2、第3、第4}のボイスコイル。{16と17}はそれぞれボイスコイルに電流を流すための接続端子。{18、19、20、21}はそれぞれのボイスコイルと端子{16、17}を接続する配線である。
【0036】
図4の形状の場合、ボビン上に設けたボイスコイルは{1本の線}が最も簡素であるが、インピーダンスがあまりにも小さくなり、実応用上使い難いことから、インピーダンスを高くする目的で、{複数線で直列接続ができる}よう、構成する。全てのボイスコイルの駆動力は同じ方向でなければならないことから、これらの複数のボイスコイルを直列接続するための配線方法については、配線による熱損失が小さくなるよう設計されなければならない。その方法の一つとして、{磁気ギャップが4個の場合}では、磁気ギャップのN極とS極の並びが左右対称となるように構成することによって、{左右のボイスコイル1本ごと}を交互に直列接続することによって、ボイスコイル間の配線長さを短くできる。その結果、配線による熱損失を軽減することができる。多数のボイスコイルの配線方法は、プリント配線振動板を用いることで、自由に設計できる。プリント配線振動板は{ボイスコイルが多い本案発明のスピーカ}を設計する上で重要な役割を持つ。
【0037】
[図7]は本案発明の一実施例の原理説明図である。
図は、4個の{帯状でジグザグ状の磁気ギャップ}を使った場合を示す。上下の図の内、上の図は配列状の原理構造を示し、下の図は上の図のA−A’断面である。
本案発明の本質は任意の複数のボイスコイルを設けることにある。
1は閉磁路を得るための磁性体。1Aと1Bは{着磁されている{第1磁石と第2磁石と第3磁石}}の影響を受けてそれぞれ{S極とN極}に磁化されている。2は音響エネルギーを放射する振動板。{3、6、9、12}はそれぞれ、ボイスコイルを支える{第1ボビン、第2ボビン、第3ボビン、第4ボビン}で、これらは振動板に固定されている。{5、8、11}は、それぞれ、図中{左がN極、右がS極}に着磁された{第1磁石、第2磁石、第3磁石}。{4、7、10、13}は{第1ボイスコイル、第2ボイスコイル、第3ボイスコイル、第4ボイスコイル}である。
{第1と第2と第3と第4}のそれぞれのボイスコイルは電気的に{並列または直列または直並列}に接続される。
【0038】
図7の図4と異なる点はボイスコイルが生むの駆動力によって生じる、ボビンの垂直方向の耐力を、図4では支柱構造で対応しているが、図7ではボビンを折り曲げる構造で対応している。ボイスコイルの配線については、図4に対応する図5または図6と同様であり、プリント配線は不可欠である。
【0039】
[図8]は本案発明の一実施例の原理説明図である。
同一形状の{{A、B、C、D}の4個の{磁気ギャップとボビンとボイスコイル}}と1枚の振動板を組み合わせた説明図である。{1A、1B、1C、1D}はそれぞれNの磁極。{2A、2B、2C、2D}はそれぞれボビン。{3A、3B、3C、3D}はそれぞれボイスコイル。{4A、4B、4C、4D}はそれぞれSの磁極。5はプリント配線振動板である。4個のボイスコイルはプリント配線振動板によって接続されている。発明の本質であるところの{単位電力消費あたりの駆動力の大幅な改善}を達成するための条件として、振動板全体が同じ振動をし、かつ、各ボイスコイルが受け持つ駆動力の総和が振動板全体に伝わっていることが必要である。図8の場合はボイスコイルを高密度に設けることはできないことから、{比較的高い剛性}のプリント配線振動板が必要である。
【0040】
[図9]は{図8の実施例}の{プリント配線振動板のボイスコイルの配線}の一例で、4個のボイスコイルを並列接続する場合を示す。{3A、3B、3C、3D}はそれぞれボイスコイル。{6,7}はそれぞれ、4個のボイスコイルに電流を流すための端子。{8、9}はそれぞれボイスコイルと端子{6、7}を接続するプリント配線である。
【0041】
[図10]は本案発明の一実施例の原理説明図である。
図10中(a)は平面図、(b)、(c)(d)は側面図である。同じ付番は同じものである。
本案発明によって、ボイスコイルの駆動力を大幅に改善できることから、その駆動力でもって、{テコの構造を利用して振幅を増幅する}一例を示す。大きな{振動振幅と面積の積}が必要なのは低音域である。1は{磁気ギャップを作るための磁性体}で、フレームに固定されている。2は第1振動板である。第1振動板は、本案発明の方法による{大きな駆動力}で振動する。3は第2振動板。
【0042】
4は{第1振動板が振り子運動をする}よう、{{第2振動板との接合部付近で蝶番の役割を持っていて}、{折り曲げが自由}}な、第1自在継ぎ手である。第1自在継ぎ手は、実際の設計においては、エッジの機能と共用される。自在継ぎ手は、{第2振動板の折り曲げ方向の振り子運動には自由}であるが、{第1振動板の振動方向の運動についてはフレームに固定}されている。5は第2振動板と対称に配置された第3振動板。6は第1自在継ぎ手と対称に配置された第2自在継ぎ手。{7と8}はそれぞれ、{第1振動板の往復振動の動力を、第2振動板に伝え、第2振動板がその動力を受けて、第1自在継ぎ手を軸に、振り子運動をさせる機能を持つ}ところの、第1駆動力伝達ピースである。{9と10}はそれぞれ、{第1振動板の往復振動の動力を、第3振動板に伝え、第3振動板がその動力を受けて、第2自在継ぎ手を軸に、振り子運動をさせる機能を持つ}ところの、第2駆動力伝達ピースである。
【0043】
図(b)は第1振動板が静止している状態を示す。
11は、第1振動板の駆動力が第1動力伝達ピースを介して第2振動板に伝わる場所を示す。12は、第1振動板の駆動力が第1動力伝達ピースを介して第3振動板に伝わる場所を示す。
【0044】
図(c)は第1振動板が{矢印13の方向に動いた場合}の{第2振動板と第3振動板}の動きの様子を示す。場所11は{第2振動板の中間位置}に、場所12は{第3振動板の中間位置}にあることから、第2振動板と第3振動板の両端の振幅は第1振動板の振幅よりも大きくなる。{132、133}はその運動方向を示す。{第2振動板と第3振動板}の役割は、低音域に機能させることであることから、全帯域の振動を受け持つ場合に比べ、第2振動板と第3振動板の質量は、大きくても差し支えがない。従って、{第2振動板と第3振動板}の剛性を{その質量を増加できる分}、高くすることができる。
【0045】
図(d)は第1振動板が{矢印14の方向に動いた場合}の{第2振動板と第3振動板}の動きの様子を示す。{142、143}はその運動方向を示す。
【0046】
図10は自在継ぎ手を用いて第2振動板と第3振動板を振り子運動させるものであるが、一般的に、{振幅と面積の積}の大きさが低音の音量を生む要因になることから、自在継ぎ手を設けずに、第2振動板と第3振動板が平行運動する構造でも強力な低音再生を得ることができる。また、振り子運動と平行運動の両者が混在した運動をする構造でも強力な低音再生を得ることができる。
実際の設計では、{第2振動板と第3振動板を支えるエッジの{形状や材質}の選択}や{駆動力伝達ピースの{形状や材質}の選択}によって、{振り子運動と平行運動}を適度に混在させて、最適な低音再生を得る。
【0047】
低音を強調する目的で一般に使われているロードホーンやパッシブラジエータなどは空気振動を通じて振動エネルギーが伝達されることと、共振を使って特定の周波数を中心に低音強調されるので、低音全体にわたり、一様に強調されるわけではない。しかし、図10の手法は{第1振動板}と{第2振動板と第3振動板}が機械的な連結によって同相で駆動されることから、共振を利用する必要がない。従って、原理的に、一部の周波数帯域ではなく、低音全域で一様に低音強調が可能となる。
【0048】
図10の方法は、第1振動板の振幅が小さくても、第2振動板と第3振動板の振幅を大きくすることができることから、駆動力を発生させるボイスコイルと磁気ギャップの幅を大きく取る必要がない。磁気ギャップとボイスコイルの幅は低音再生に必要なファクターであって中高音再生には必要でないファクターである。従って、振動板の駆動力が大きいことに起因して可能となる図10の手法は、強力な低音再生にとって理想的な手法の一つである。
【発明の効果】
【0049】
以上の説明のとおり、音響振動板の駆動力の大幅な改善が可能となる。
その結果、電気エネルギーから音響エネルギーへの変換効率の著しい改善が可能となる。その結果、従来と比べ、同じインピーダンスと同じ熱損失の条件では再生能力の優れたスピーカを作ることができる。あるいは、従来と比べ、大幅に小さい熱損失で、同じ再生能力のスピーカを作ることができる。
さらに、ボイスコイルを振動板に一様に張り巡らすことにより、{振動板の分割振動を押さえなければならない}という課題を大幅に改善できる。その結果。振動板の{材質や構造}の洗濯範囲が極めて広くなり、設計しやすくなる。
多数のボイスコイルの配線はプリント配線によって自在に配線できる。
良質の再生特性を得ることが難しいとされている長円型のスピーカでも極めて良好な再生特性を得ることができるので、設計の自由度が広がり、デザインを優先した形状設計にも対応できるようになる。
小さい面積で大きな駆動力を得ることができることから、駆動力を持たない振動板に駆動力を直接伝達することで、共振を利用した低音再生よりも良好な特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
高効率スピーカ
高性能スピーカ
高性能イヤホーン
高性能ヘッドホーン
細長型で強力なしかも良好な特性の低音再生ができるスピーカ
【実施例】
【0051】
上記に同じ
【産業上の利用可能性】
【0052】
ポータブル型の商品に組み込まれたスピーカの消費電力を大幅に減らすことができることから、より小さい電力増幅器で電池持続時間の長い再生装置を作ることが可能となる。
変換効率の高い{電気−音響}変換機能は、換言すると、電気系と振動系の相互結合度が高い{電気−音響}変換系、と言える。相互結合度が高い{スピーカやヘッドホーンやイヤホーン}は騒音キャンセラに適していることから、高性能の騒音キャンセラを作ることが可能となる。変換効率だけでなく、駆動力を振動板面に一様に分布させることができることから、この点でも、高性能の騒音キャンセラに向いていると言える。
外観デザインを重視した薄型の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの音響再生にも、細長型の高性能スピーカを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本案発明の一実施例の原理説明図
【図2】本案発明の一実施例の原理説明図
【図3】パイプ状の磁性体の半径方向の着磁
【図4】本案発明の一実施例の原理説明図
【図5】本案発明の一実施例の原理説明図
【図6】本案発明の一実施例の原理説明図
【図7】本案発明の一実施例の原理説明図
【図8】本案発明の一実施例の原理説明図
【図9】本案発明の一実施例の原理説明図
【図10】本案発明の一実施例の原理説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
{円形または楕円形または直線またはジグザグまたは曲線}状の、{電流を流したボイスコイルが駆動力を得るに必要な高磁束密度}の磁気ギャップを磁気ギャップとし、
{磁気ギャップの磁束を横切るように電流を流すところのボイスコイル}をボイスコイルとし、
ボイスコイルを支えるボビンをボビンとし、
{ボビンに固定されたボイスコイル}に{電流を流すことで生じる駆動力}によって{音響エネルギーを放射する振動板}を振動板とし、
複数の{磁気ギャップとボビンとボイスコイル}を{同心円または同心楕円または配列}状に設けることを第1の特徴とし、
{上記、複数のボイスコイル}が{一つの振動板}に固定されていることを第2の特徴とし、
上記複数のボイスコイルが電気的に{並列または直列または直並列}に接続されていることを第3の特徴とし、
上記{第1と第2と第3}の特徴を有するスピーカまたはイヤホーンまたはヘッドホーン。
【請求項2】
{プリント配線構造である振動板}かまたは{プリント配線板またはプリント配線フィルムが貼られている振動板}をプリント配線振動板とし、
請求項1に定義する{同心円または同心楕円または配列}状に設けた{複数のボビン}を一つのプリント配線振動板に固定したことを第4の特徴とし、
{上記複数のボビンに固定された各ボイスコイル}がプリント配線振動板の配線回路によって{並列または直列または直並列}に接続されていることを第5の特徴とし、
上記{第4と第5}の特徴を有するスピーカまたはイヤホーンまたはヘッドホーン。
【請求項3】
請求項1に定義する{第1と第2と第3}の特徴を有するところの、電気エネルギーを音響エネルギーに変換するエレメントをドライバとし、
ドライバを支える構造物をフレームとし、
上記ドライバの振動板を第1振動板とし、
第1振動板とは独立した別の振動板を第2振動板とし、
上記第2振動板とは対称に配置された振動板を第3振動板とし、
第2振動板と第3振動板が第1振動板を中心とする対称位置に配置されていることを第6の特徴とし、
{第1振動板の運動を第2振動板に伝える構造物}または{第1振動板の運動を第2振動板に伝える構造物}を駆動力伝達ピースとし、
{1個または複数個}の駆動力伝達ピースを有することを第7の特徴とし、
{第1振動板の運動}が駆動力伝達ピースを伝わって、{第2振動板と第3振動板}を振動させる構造であることを第8の特徴とし、
第2振動板と第3振動板が一体となったドーナッツ形状であるケースも含めて、{第6と第7と第8}の特徴を有するスピーカ。
【請求項4】
請求項1に定義する{第1と第2と第3}の特徴を有するところの、電気エネルギーを音響エネルギーに変換するエレメントをドライバとし、
ドライバを支える構造物をフレームとし、
上記ドライバの振動板を第1振動板とし、
第1振動板とは独立した別の振動板を第2振動板とし、
上記第2振動板とは対称に配置された振動板を第3振動板とし、
第2振動板と第3振動板が第1振動板を中心とする対称位置に配置されていることを第9の特徴とし、
第2振動板と第3振動板の第1振動板に近い一辺を回転軸とし、
{回転軸}もしくは{回転軸辺の近傍にある実際の回転軸}がフレームに対して{回転運動もしくは折れ曲がり運動}をする構造であることを第10の特徴とし、
{回転軸}もしくは{回転軸辺の近傍にある実際の回転軸}が{振動板が音響エネルギーを放射する方向}には、フレーム対して固定されていることを第11の特徴とし、
第2振動板と第3振動板の回転軸辺を除く他の3辺を自由振動辺とし、
{第1振動板の運動を第2振動板に伝える構造物}または{第1振動板の運動を第2振動板に伝える構造物}を駆動力伝達ピースとし、
{1個または複数個}の駆動力伝達ピースを有することを第12の特徴とし、
{第1振動板の運動}が駆動力伝達ピースを伝わって、{回転軸辺もしくは回転軸辺の近傍の軸}を回転軸として{第2振動板と第3振動板}の自由振動辺を振動させる構造であることを第13の特徴とし、
第2振動板と第3振動板が一体となったドーナッツ形状であるケースも含めて、{第9と第10と第11と第12と第13}の特徴を有するスピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−213250(P2010−213250A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90500(P2009−90500)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(392004015)
【Fターム(参考)】