ディスクブレーキ
【課題】 パッド戻しばねを取付部材等に対して弾性的に係合させることにより、その付勢力を安定化して摩擦パッドの引摺り等を抑えるようにする。
【解決手段】 ディスクDの両側を跨ぐキャリパ5を取付部材1によって支持し、取付部材1の各腕部3はパッドガイド部3Aを介して摩擦パッド7を摺動可能に支持する。また、摩擦パッド7の裏金8にはパッド戻しばね11を設け、その先端係合部17を腕部3またはパッドガイドスプリング10に対して弾性的に係合させる。これにより、パッド戻しばね11から摩擦パッド7に加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、摩擦パッド7の引摺り等を低減させることができる。
【解決手段】 ディスクDの両側を跨ぐキャリパ5を取付部材1によって支持し、取付部材1の各腕部3はパッドガイド部3Aを介して摩擦パッド7を摺動可能に支持する。また、摩擦パッド7の裏金8にはパッド戻しばね11を設け、その先端係合部17を腕部3またはパッドガイドスプリング10に対して弾性的に係合させる。これにより、パッド戻しばね11から摩擦パッド7に加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、摩擦パッド7の引摺り等を低減させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に制動力を付与するのに好適に用いられるディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両に用いられるディスクブレーキとしては、ブレーキ操作を解除したときにディスクに対して摩擦パッドの引摺り等が生じるのを防止するため、パッド戻しばねを用いる構成としたものが知られている。
【0003】
この種の従来技術によるディスクブレーキは、ディスクの周方向に間隔をおいて軸方向に伸長する一対の腕部を有し該各腕部にパッドガイド部が形成された取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持されたキャリパと、前記取付部材の各腕部により軸方向に摺動可能に支持され該キャリパによりディスクの両面側に押圧される一対の摩擦パッドと、ばね性を有する金属材料により形成され前記摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢するパッド戻しばねとから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−2432号公報
【0005】
ここで、パッド戻しばねは、摩擦パッドに取付けられた取付部と、該取付部に一体に設けられ摩擦パッドの裏面側でディスクから離れる方向に延びる第1の延設部と、該第1の延設部の先端側をディスクに向けて略U字状に曲返すことによりディスクに近づく方向に延びる第2の延設部と、該第2の延設部の先端側に設けられ取付部材の外側面に弾性的に当接する当接部とから構成されている。
【0006】
そして、ディスクブレーキの操作時には、外部からのブレーキ液がキャリパに供給されると、キャリパは各摩擦パッドをパッド戻しばねに抗してディスクの両面側に押圧する。これにより、摩擦パッドはディスクに向けて軸方向に摺動変位し、ディスクに摺接して制動力を与える。また、このときパッド戻しばねは、取付部材側に当接する第2の延設部が摩擦パッド側に取付けられた第1の延設部に対して拡開するように弾性変形した状態となる。
【0007】
一方、ブレーキ操作を解除したときには、キャリパ等がディスクから離れる方向に変位すると、各摩擦パッドもパッド戻しばねの付勢力によってディスクから離れる方向に変位する。この場合、パッド戻しばねは、第1,第2の延設部が拡開した弾性変形状態から閉じるように復元しつつ、摩擦パッドをディスクから引離す構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術では、略U字状に形成したパッド戻しばねのうち第1の延設部側を摩擦パッドに取付け、第2の延設部側を取付部材の外面側に当接させることにより、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢する構成としている。
【0009】
しかし、第2の延設部の先端側に設けられた当接部は、単に取付部材の外面側に当接しているに過ぎないため、摩擦パッドの摺動変位に応じてパッド戻しばねが弾性変形するときには、この当接部が取付部材の外面側に沿って滑るように移動することがあり、これによりブレーキを操作、解除する度にパッド戻しばねの当接位置が取付部材に対して変化する場合がある。
【0010】
この結果、ブレーキ操作を解除するときには、パッド戻しばねの弾性変形量にばらつきが生じたり、パッド戻しばねと取付部材との間の摩擦抵抗力等が変動したりすることがあるため、摩擦パッドをディスクから引離そうとするパッド戻しばねの付勢力が不安定となる虞れがある。
【0011】
このため、従来技術では、パッド戻しばねを取付けているにも拘らず、その不安定な動作が原因でブレーキ操作の解除時に摩擦パッドがディスクから十分に離れない場合があるため、ディスクへの引摺り等によって摩擦パッドの早期摩耗や異音等が生じ易くなり、ディスクブレーキとしての耐久性、品質を向上させるのが難しいという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、パッド戻しばねから摩擦パッドに加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、摩擦パッドの引摺り等を確実に防止できると共に、耐久性や品質を向上できるようにしたディスクブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために本発明は、ディスクの周方向に間隔をおいて軸方向に伸長する一対の腕部を有し該各腕部にパッドガイド部が形成された取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持されたキャリパと、取付部材の各腕部により軸方向に摺動可能に支持され該キャリパによりディスクの両面側に押圧される一対の摩擦パッドと、該各摩擦パッドを取付部材の各パッドガイド部に沿って案内するために各腕部にそれぞれ取付けられたパッドガイドスプリングと、ばね性を有する金属材料により形成され摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢するパッド戻しばねとからなるディスクブレーキに適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記パッド戻しばねを、前記摩擦パッドに取付けられた取付部と、該取付部に一体に設けられ前記摩擦パッドの裏面側に位置して前記ディスクから離れる方向に延びる第1の延設部と、該第1の延設部の先端側を前記ディスクに向けて曲返すことにより前記ディスクに近づく方向に延びる第2の延設部と、該第2の延設部の先端側に設けられ前記取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合する先端係合部とにより構成したことにある。
【0015】
このように構成することにより、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢でき、ブレーキ操作の解除時には、この付勢力によって摩擦パッドをディスクから引離すことができる。また、パッド戻しばねが大きく弾性変形する場合でも、その先端係合部を取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合させることができ、これらの係合位置がパッド戻しばねの弾性変形時または復元時にずれるのを防ぐことができる。
【0016】
また、請求項2の発明では、前記先端係合部を、前記取付部材またはパッドガイドスプリングに突当たる突当部と、該突当部の先端側から屈曲して前記取付部材のパッドガイド部内に係合可能に挿入された係合爪部とから構成している。
【0017】
これにより、例えばパッド戻しばねの先端係合部が取付部材等に対して位置ずれしようとするときには、その係合爪部を取付部材のパッドガイド部等に係合させることができ、これによって突当部の位置ずれを防止することができる。
【0018】
さらに、請求項3の発明では、前記取付部と第1の延設部との間には、前記摩擦パッドの裏面側に位置して弾性変形可能な折曲げ部を設けている。
【0019】
これにより、パッド戻しばねには、第1,第2の延設部間に設けられた折曲げ部位を含めて弾性変形可能な複数の折曲げ部を設けることができ、例えば1個の折曲げ部が劣化等によって十分に復元しなくなった場合でも、他の折曲げ部によってパッド戻しばねの付勢力を補償することができる。
【0020】
また、請求項4の発明では、前記第2の延設部は、前記ディスクの軸方向に対して斜めに傾いた状態で延びる構成としている。
【0021】
これにより、例えばパッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから離れる方向(軸方向)に付勢しつつ、パッドガイド部から離れる方向(ディスクの接線方向)等にも付勢でき、摩擦パッドをパッドガイド部内で円滑に摺動させることができると同時に制動時等に摩擦パッドがパッドガイド部に当たって音(クロンク音)が出ることも防止できる。
【発明の効果】
【0022】
上述した通り、請求項1の発明によれば、パッド戻しばねを、取付部、第1,第2の延設部および先端係合部によって構成したので、ブレーキ操作の解除時には、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから確実に引離すことができる。また、パッド戻しばねが大きく弾性変形する場合でも、先端係合部を取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合させることができ、これらの係合位置がパッド戻しばねの弾性変形時または復元時にずれるのを確実に防止できると共に、両者の係合状態を安定して保持することができる。これにより、パッド戻しばねから摩擦パッドに加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドの引摺り等を確実に防止できると共に、摩擦パッドの早期摩耗、引摺りによる騒音等を抑えてディスクブレーキとしての耐久性や品質を向上させることができる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、先端係合部を突当部と係合爪部から構成したので、パッド戻しばねが大きく弾性変形する場合でも、係合爪部を取付部材またはパッドガイドスプリングに対して係合させつつ、これらの部材に対して突当部を弾性的に突当てることができ、この突当て位置がパッド戻しばねの弾性変形時または復元時にずれるのを確実に防止することができる。
【0024】
さらに、請求項3の発明によれば、取付部と第1の延設部との間には弾性変形可能な折曲げ部を設ける構成としたので、仮りに各折曲げ部のうち一部の折曲げ部が劣化等によって十分に復元しなくなった場合でも、他の折曲げ部によってパッド戻しばねの付勢力を補償でき、その寿命を延ばすことができる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、第2の延設部を前記ディスクの軸方向に対して斜めに傾いた状態で延びる構成としたので、パッド戻しばねは、摩擦パッドをディスクから引離す方向だけでなく、腕部のパッドガイド部から離す方向にも付勢することができる。これにより、ブレーキの操作時および解除時には、パッドガイド部内での摩擦パッドの摺動抵抗を低減でき、摩擦パッドを円滑に摺動変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるディスクブレーキを示す正面図である。
【図2】取付部材とキャリパの一部を破断して示すディスクブレーキの平面図である。
【図3】パッドガイド部の近傍を示す図1中の要部拡大図である。
【図4】パッド戻しばね等を示す図2中の要部拡大断面図である。
【図5】パッド戻しばねを拡大して示す斜視図である。
【図6】摩耗警報部材等を図1中の矢示VI−VI方向からみたディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図7】ブレーキの操作時に摩擦パッドがディスクに押圧された状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】ブレーキの組立時に摩擦パッド、パッド戻しばね等を取付部材に組付けた状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図13】図12中のパッド戻しばねの先端係合部を拡大して示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態によるディスクブレーキを、図1ないし図13に従って詳細に説明する。ここで、図1ないし図8は本発明による第1の実施の形態を示している。
【0028】
1は自動車の車輪近傍で車両の非回転部分に取付けられる取付部材で、該取付部材1は車輪と共に図1中の矢示A方向に回転するディスクDのインナ側に配設されている。そして、取付部材1は、図2および図3に示す如く車両の非回転部分に固定される固定部2と、該固定部2に一体形成され、ディスクDの周方向に離間してディスクDの外周側を跨ぐように軸方向に延びた一対の腕部3,3と、該各腕部3を連結した連結部4等とから構成されている。そして、各腕部3には、ディスクDの軸方向に延びる凹溝状のパッドガイド部3Aがそれぞれ設けられている。
【0029】
5は取付部材1の各腕部3に一対の摺動ピン6,6(一方のみ図示)等を介して摺動可能に支持されたキャリパで、該キャリパ5は、図2に示す如くディスクDのインナ側に配設されたインナ脚部5Aと、該インナ脚部5AからディスクDの外周を跨いでアウタ側に延設されたブリッジ部5Bと、該ブリッジ部5Bの先端側から径方向内向きに屈曲して延び、ディスクDのアウタ側に配設されたアウタ爪部5C等とからなり、全体として断面略コ字状に形成されている。また、インナ脚部5A内にはピストン(図示せず)が摺動可能に挿嵌されている。
【0030】
7,7はディスクDの両面側に位置してキャリパ5との間に配設されたインナ側,アウタ側の摩擦パッドで、該各摩擦パッド7は、ディスクDの周方向に延びる略扇形の平板状に形成された裏金8と、該裏金8の表面側に固着され、ディスクDと対面するライニング9とから構成されている。
【0031】
ここで、裏金8の両端側には、図3、図4に示す如く、後述のパッドガイドスプリング10を介して各腕部3のパッドガイド部3Aに摺動可能に支持された略四角形状の耳部8A,8Aが一体形成されている。また、各耳部8Aの近傍に位置して裏金8の裏面側には、後述するパッド戻しばね11、摩耗警報部材19用のかしめ突起8B,8Bが突設されている。
【0032】
そして、摩擦パッド7は、運転者がブレーキを操作すると、裏金8の各耳部8Aがパッドガイドスプリング10を介して腕部3のパッドガイド部3A内で摺動し、例えば図4に示す制動解除位置から図7に示す制動位置へとパッドガイド部3Aに沿って軸方向に摺動変位することにより、ディスクDに摺接して制動力を与える構成となっている。
【0033】
10,10は摩擦パッド7を左,右の腕部3のパッドガイド部3Aに沿って軸方向に案内する左,右のパッドガイドスプリングで、該各パッドガイドスプリング10は、図3に示す如く、例えばばね性を有する金属板等からなり、各腕部3に取付けられている。そして、パッドガイドスプリング10は、ディスクDの径方向外側に位置する外側端部10Aと、径方向内側に位置する内側端部10Bと、これらの端部10A,10B間で腕部3のパッドガイド部3Aに沿って略矩形状に屈曲した屈曲部10Cとを一体形成することにより構成されている。
【0034】
11,11は各摩擦パッド7の裏金8に設けられたパッド戻しばねで、該各パッド戻しばね11は、図4および図5に示す如く、例えばばね性を有する金属板等をプレス加工することにより一体形成され、裏金8の各耳部8AのうちディスクDの回転方向入口側の耳部8Aに固着されると共に、後述の取付部12、第1の延設部14、第2の延設部16、先端係合部17等によって構成されている。
【0035】
12は裏金8の耳部8Aに取付けられた取付部で、該取付部12は耳部8Aの外側面に沿って略コ字状に折曲げられ、耳部8Aを板厚方向で弾性的に挟持している。また、取付部12には摩擦パッド7の裏面側に位置して取付穴12Aが設けられ、該取付穴12Aは裏金8のかしめ突起8Bにかしめ固定されている。また、取付部12と延設部14との間には、例えば2個の角隅部をもって略コ字状に折曲げられた折曲げ部13が設けられている。
【0036】
14は折曲げ部13を介して取付部12に一体形成された第1の延設部で、該延設部14はディスクDから離れる方向へと斜めに延びている。また、延設部14の先端側には、延設部16との間に位置して略V字状の折曲げ部15が設けられている。
【0037】
そして、パッド戻しばね11は、図4に示す如く摩擦パッド7が制動解除位置にあるときに、折曲げ部13,15が拡開するように小さく弾性変形した状態を保持し、摩擦パッド7をディスクDから離れる方向に付勢している。また、摩擦パッド7がブレーキ操作によって制動位置へと摺動変位したときには、図7に示す如くパッド戻しばね11が大きく弾性変形した状態となる。これにより、ブレーキ操作の解除時には、摩擦パッド7がパッド戻しばね11の復元力によってディスクDから引離され、制動解除位置へと戻る。
【0038】
16は延設部14の先端側をディスクDに向けて曲返すことにより形成された第2の延設部で、該延設部16は、図4に示す如くディスクDに向けて斜めに延び、摩擦パッド7が制動解除位置にあるときには、ディスクDの軸方向に対して例えば10〜45°程度の予め定められた角度αだけ傾いた状態を保持している。これにより、パッド戻しばね11は、摩擦パッド7を腕部3のパッドガイド部3Aから離れる方向(ディスクDの接線方向)にも付勢している。
【0039】
17は延設部16の先端側を延設部14側に折曲げることによって形成された略L字状の先端係合部で、該先端係合部17は、腕部3のパッドガイド部3A近傍またはパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cに対してディスクDと反対側から弾性的に突当たる突当部17Aと、該突当部17Aの先端側をディスクDに向けて折曲げることにより形成され、パッドガイド部3A内に位置して裏金8の耳部8Aとパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cとの間に係合可能に挿入された係合爪部17Bとにより構成されている。
【0040】
そして、パッド戻しばね11が大きく弾性変形したときには、係合爪部17Bがパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cに引掛かり、これによってパッド戻しばね11が大きく弾性変形する制動時、およびパッド戻しばね11が復元する制動解除時には、突当部17Aが腕部3またはパッドガイドスプリング10に対して位置ずれするのを防止する構成となっている。
【0041】
また、後述するディスクブレーキの組立作業で摩擦パッド7が図8に示す仮止め位置にあるときには、パッド戻しばね11が摩擦パッド7に付勢力を与えない自由長状態を保持し、このときディスクDのほぼ接線方向に対して裏金8の耳部8Aとパッド戻しばね11の係合爪部17Bとの間に形成される寸法L1 は、裏金8の耳部8Aとパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cとの間に形成される寸法L2 よりも小さくなるように予め定められている(L1 <L2 )。
【0042】
18は摩擦パッド7の裏金8に設けられた摩耗警報部材で、該摩耗警報部材18は、図6に示す如く略U字状をなす長尺な金属片等からなり、ディスクDの回転方向出口側の耳部8Aに配置されている。また、摩耗警報部材18は基端側がかしめ突起8Bに固定され、先端側がディスクDの表面と一定の間隔をもって対面している。そして、摩耗警報部材18は、例えばライニング9が設計上の許容量等を越えて摩耗後退したときに、ディスクDに摺接することによって異音を発生し、運転者に警報を発するものである。
【0043】
本実施の形態によるディスクブレーキは上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0044】
まず、ディスクブレーキの組立時には、インナ側,アウタ側の摩擦パッド7にパッド戻しばね11等を取付けた後に、これらの摩擦パッド7を取付部材1に対して図8中の仮止め位置に取付ける。そして、キャリパ5を取付部材1に組付け、これによって各摩擦パッド7を図4中の制動解除位置に保持する。
【0045】
次に、ブレーキの操作時には、外部からブレーキ液が供給されることによりキャリパ5のインナ脚部5A内でピストンが摺動変位し、このピストンはインナ側の摩擦パッド7をディスクDに押圧する。また、このときキャリパ5はディスクからの反力により取付部材1に対してインナ側に変位し、アウタ爪部5Cによってアウタ側の摩擦パッド7をディスクDに押圧する。これにより、各摩擦パッド7はパッド戻しばね11に抗して腕部3のパッドガイド部3A内で摺動変位し、ディスクDの両面に摺接して制動力を与える。
【0046】
この場合、摩擦パッド7の変位量が小さいときには、パッド戻しばね11の延設部16に対して長さ方向に近い方向の外力が加わるため、パッド戻しばね11は、まず折曲げ部13が拡開するように弾性変形する。そして、摩擦パッド7の変位量がある程度大きくなると、延設部16の厚さ方向に加わる外力も増大するため、折曲げ部15が拡開するように弾性変形する。
【0047】
次に、ブレーキ操作を解除したときには、キャリパ5のピストン、アウタ爪部5C等がディスクDから離れる方向に変位すると、各摩擦パッド7もパッド戻しばね11の付勢力によってディスクDから離れる方向に変位する。この場合、パッド戻しばね11は、折曲げ部13,15が弾性変形した状態から閉じるように復元しつつ、摩擦パッド7をディスクDから引離す。
【0048】
かくして、本実施の形態では、パッド戻しばね11を、取付部12、延設部14,16、先端係合部17等によって構成したので、パッド戻しばね11を用いて摩擦パッド7をディスクDから離れる方向へと安定的に付勢でき、ブレーキ操作の解除時には、この付勢力によって摩擦パッド7をディスクDから確実に引離すことができる。
【0049】
また、パッド戻しばね11が大きく弾性変形する場合でも、先端係合部17の係合爪部17Bをパッドガイドスプリング10に対して引掛けつつ、突当部17Aを取付部材1等に対して弾性的に突当てることができ、これらの突当て位置がパッド戻しばね11の弾性変形時または復元時にずれるのを確実に防止できると共に、両者の突当て状態を安定して保持することができる。
【0050】
これにより、パッド戻しばね11から摩擦パッド7に加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、パッド戻しばね11を用いて摩擦パッド7の引摺り等を確実に防止できると共に、摩擦パッド7の早期摩耗、引摺りによる騒音等を抑えてディスクブレーキとしての耐久性や品質を向上させることができる。
【0051】
また、パッド戻しばね11には、例えば2個の折曲げ部13,15を設けたので、仮りに折曲げ部13,15のうち一方の折曲げ部が劣化等によって十分に復元しなくなった場合でも、他方の折曲げ部によってパッド戻しばね11の付勢力を補償でき、その寿命を延ばすことができる。
【0052】
さらに、延設部16を角度αだけ傾けた状態でディスクDに向けて延設したので、パッド戻しばね11は、摩擦パッド7をディスクDから引離す方向だけでなく、腕部3のパッドガイド部3Aから離す方向にも付勢することができる。これにより、ブレーキの操作時および解除時には、パッドガイド部3A内での摩擦パッド7の摺動抵抗を低減でき、摩擦パッド7を円滑に摺動変位させることができる。
【0053】
また、パッド戻しばね11が自由長状態となっているときには、裏金8とパッド戻しばね11との間の寸法L1 を、裏金8とパッドガイドスプリング10との間の寸法L2 よりも小さく形成したので、摩擦パッド7を仮止め位置に取付けるときには、パット戻しばね11を弾性変形させることなく、その係合爪部17Bを自由長状態のまま裏金8とパッドガイドスプリング10との間に容易に挿入でき、ディスクブレーキの組立作業を効率よく行うことができる。
【0054】
次に、図9は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0055】
21は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね21は、第1の実施の形態とほぼ同様に、裏金8のかしめ突起8Bに取付けられた取付部22と、折曲げ部23と、第1の延設部24と、折曲げ部25と、第2の延設部26と、先端係合部27等によって構成されている。
【0056】
しかし、取付部22は、裏金8のかしめ突起8Bに対して摩耗警報部材19と一緒にかしめ固定されている。また、先端係合部27は、摩擦パッド7から離れる方向へと略L字状に屈曲して形成され、腕部3に突設された突起部28に対して弾性的に係合しつつ突当てられている。
【0057】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、パッド戻しばね21を摩耗警報部材19と一緒に取付ける構成としたので、ディスクDの回転方向出口側にもパッド戻しばね21を配置でき、摩擦パッド7に与える戻し方向の付勢力をより安定化することができる。
【0058】
また、先端係合部27を腕部3の突起部28に弾性的に係合させることにより、腕部3のパッドガイド部3Aと摩擦パッド7の裏金8との間に形成される隙間が小さい場合でも、パッド戻しばね21の係合部位を確保することができる。
【0059】
次に、図10は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0060】
31は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね31は、第1の実施の形態とほぼ同様に、取付部32、折曲げ部33、第1の延設部34、折曲げ部35、第2の延設部36、先端係合部37等からなり、先端係合部37は、突当部37Aと、係合爪部37Bとによって構成されている。
【0061】
しかし、先端係合部37は、突当部37Aがパッドガイド部3Aの近傍に位置して腕部3Aの外側面に突当てられ、係合爪部37Bがパッドガイド部3A内に位置して腕部3とパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cとの間に係合可能に挿入されている。
【0062】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、係合爪部37Bを腕部3とパッドガイドスプリング10との間に挿入することにより、その係合状態をより安定化することができる。
【0063】
次に、図11は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0064】
41は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね41は、第1の実施の形態とほぼ同様に、取付部42、折曲げ部43、第1の延設部44、折曲げ部45、第2の延設部46、先端係合部47等によって構成されている。
【0065】
しかし、先端係合部47は、摩擦パッド7から離れる方向へと略L字状に屈曲して形成され、パッドガイドスプリング48に突設された突起部48Aに対して弾性的に係合しつつ突当てられている。
【0066】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、パッドガイドスプリング48に突起部48Aを設けるだけで、パッド戻しばね41の係合部位を確保することができる。
【0067】
次に、図12および図13は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0068】
51は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね51は、第1の実施の形態とほぼ同様に、取付部52、折曲げ部53、第1の延設部54、折曲げ部55、第2の延設部56、先端係合部57等によって構成されている。
【0069】
しかし、折曲げ部53は取付部52よりも摩擦パッド7の端部側に配置され、外向きに略U字状をなして屈曲している。また、先端係合部57は、図13に示す如く三つ又状に分岐して形成され、中央の突当部57Aが腕部3の外側面に突当てられると共に、左,右の係合爪部57Bが腕部3のパッドガイド部3A内に挿入された状態でパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cに係合している。
【0070】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、先端係合部57を三つ又状に形成し、突当部57Aを腕部3に突当てると共に、左,右の係合爪部57Bをパッドガイド部3A内でパッドガイドスプリング10に係合させる構成としたので、取付部材1側に対して先端係合部57の係合状態をより安定化することができる。
【0071】
なお、前記各実施の形態では、裏金8のかしめ突起8Bにパッド戻しばね11,21,31,41,51をかしめ固定する構成としたが、本発明はこれに限らず、裏金8の耳部8Aに取付穴、取付溝等からなるばね取付部を設け、このばね取付部にパッド戻しばね11,21,31,41,51を取付ける構成としてもよい。
【0072】
また、前記各実施の形態では、パッド戻しばね11,21,31,41,51の取付部12,22,32,42,52と第1の延設部14,24,34,44,54との間に例えば2個の角隅部を有する略コ字状の折曲げ部13,23,33,43または略U字状の折曲げ部53を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、取付部と第1の延設部との間に3個以上の折曲げ部を設ける構成としてもよい。
【0073】
また、前記各実施の形態では、パッド戻しばね11,21,31,41,51の取付部12,22,32,42,52を裏金8の裏面側にかしめ固定する構成としたが、腕部3と対向する裏金8の耳部8Aの側面側にかしめ固定する構成としてもよく、耳部8Aの表面側にかしめ固定する構成としてもよい。
【0074】
また、前記第1,第3,第4の実施の形態では、パッド戻しばね11,31,41の取付部12,32,42を略コ字状に形成し、取付部12,32,42によって裏金8の耳部8Aを弾性的に挟持するものとしたが、必ずしも耳部8Aを挟持する必要はなく、例えば裏金8の裏面側にかしめ固定のみによって取り付ける構成としてもよい。
【0075】
また、第4の実施の形態におけるパッドガイドスプリング48の突起部48Aと取付部材1の腕部3との間には隙間が形成されていてもよい。
【0076】
さらに、前記各実施の形態では、自動車用のディスクブレーキを例に挙げて述べたが、本発明はこれに限らず、例えば自動二輪車等からなる他の車両にも適用し得るものである。
【符号の説明】
【0077】
D ディスク
1 取付部材
3 腕部
3A パッドガイド部
5 キャリパ
7 摩擦パッド
10,48 パッドガイドスプリング
11,21,31,41,51 パッド戻しばね
12,22,32,42,52 取付部
13,23,33,43,53 折曲げ部
14,24,34,44,54 第1の延設部
16,26,36,46,56 第2の延設部
17,27,37,47,57 先端係合部
17A,37A,57A 突当部
17B,37B,57B 係合爪部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に制動力を付与するのに好適に用いられるディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両に用いられるディスクブレーキとしては、ブレーキ操作を解除したときにディスクに対して摩擦パッドの引摺り等が生じるのを防止するため、パッド戻しばねを用いる構成としたものが知られている。
【0003】
この種の従来技術によるディスクブレーキは、ディスクの周方向に間隔をおいて軸方向に伸長する一対の腕部を有し該各腕部にパッドガイド部が形成された取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持されたキャリパと、前記取付部材の各腕部により軸方向に摺動可能に支持され該キャリパによりディスクの両面側に押圧される一対の摩擦パッドと、ばね性を有する金属材料により形成され前記摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢するパッド戻しばねとから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−2432号公報
【0005】
ここで、パッド戻しばねは、摩擦パッドに取付けられた取付部と、該取付部に一体に設けられ摩擦パッドの裏面側でディスクから離れる方向に延びる第1の延設部と、該第1の延設部の先端側をディスクに向けて略U字状に曲返すことによりディスクに近づく方向に延びる第2の延設部と、該第2の延設部の先端側に設けられ取付部材の外側面に弾性的に当接する当接部とから構成されている。
【0006】
そして、ディスクブレーキの操作時には、外部からのブレーキ液がキャリパに供給されると、キャリパは各摩擦パッドをパッド戻しばねに抗してディスクの両面側に押圧する。これにより、摩擦パッドはディスクに向けて軸方向に摺動変位し、ディスクに摺接して制動力を与える。また、このときパッド戻しばねは、取付部材側に当接する第2の延設部が摩擦パッド側に取付けられた第1の延設部に対して拡開するように弾性変形した状態となる。
【0007】
一方、ブレーキ操作を解除したときには、キャリパ等がディスクから離れる方向に変位すると、各摩擦パッドもパッド戻しばねの付勢力によってディスクから離れる方向に変位する。この場合、パッド戻しばねは、第1,第2の延設部が拡開した弾性変形状態から閉じるように復元しつつ、摩擦パッドをディスクから引離す構成となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術では、略U字状に形成したパッド戻しばねのうち第1の延設部側を摩擦パッドに取付け、第2の延設部側を取付部材の外面側に当接させることにより、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢する構成としている。
【0009】
しかし、第2の延設部の先端側に設けられた当接部は、単に取付部材の外面側に当接しているに過ぎないため、摩擦パッドの摺動変位に応じてパッド戻しばねが弾性変形するときには、この当接部が取付部材の外面側に沿って滑るように移動することがあり、これによりブレーキを操作、解除する度にパッド戻しばねの当接位置が取付部材に対して変化する場合がある。
【0010】
この結果、ブレーキ操作を解除するときには、パッド戻しばねの弾性変形量にばらつきが生じたり、パッド戻しばねと取付部材との間の摩擦抵抗力等が変動したりすることがあるため、摩擦パッドをディスクから引離そうとするパッド戻しばねの付勢力が不安定となる虞れがある。
【0011】
このため、従来技術では、パッド戻しばねを取付けているにも拘らず、その不安定な動作が原因でブレーキ操作の解除時に摩擦パッドがディスクから十分に離れない場合があるため、ディスクへの引摺り等によって摩擦パッドの早期摩耗や異音等が生じ易くなり、ディスクブレーキとしての耐久性、品質を向上させるのが難しいという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、パッド戻しばねから摩擦パッドに加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、摩擦パッドの引摺り等を確実に防止できると共に、耐久性や品質を向上できるようにしたディスクブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために本発明は、ディスクの周方向に間隔をおいて軸方向に伸長する一対の腕部を有し該各腕部にパッドガイド部が形成された取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持されたキャリパと、取付部材の各腕部により軸方向に摺動可能に支持され該キャリパによりディスクの両面側に押圧される一対の摩擦パッドと、該各摩擦パッドを取付部材の各パッドガイド部に沿って案内するために各腕部にそれぞれ取付けられたパッドガイドスプリングと、ばね性を有する金属材料により形成され摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢するパッド戻しばねとからなるディスクブレーキに適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記パッド戻しばねを、前記摩擦パッドに取付けられた取付部と、該取付部に一体に設けられ前記摩擦パッドの裏面側に位置して前記ディスクから離れる方向に延びる第1の延設部と、該第1の延設部の先端側を前記ディスクに向けて曲返すことにより前記ディスクに近づく方向に延びる第2の延設部と、該第2の延設部の先端側に設けられ前記取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合する先端係合部とにより構成したことにある。
【0015】
このように構成することにより、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢でき、ブレーキ操作の解除時には、この付勢力によって摩擦パッドをディスクから引離すことができる。また、パッド戻しばねが大きく弾性変形する場合でも、その先端係合部を取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合させることができ、これらの係合位置がパッド戻しばねの弾性変形時または復元時にずれるのを防ぐことができる。
【0016】
また、請求項2の発明では、前記先端係合部を、前記取付部材またはパッドガイドスプリングに突当たる突当部と、該突当部の先端側から屈曲して前記取付部材のパッドガイド部内に係合可能に挿入された係合爪部とから構成している。
【0017】
これにより、例えばパッド戻しばねの先端係合部が取付部材等に対して位置ずれしようとするときには、その係合爪部を取付部材のパッドガイド部等に係合させることができ、これによって突当部の位置ずれを防止することができる。
【0018】
さらに、請求項3の発明では、前記取付部と第1の延設部との間には、前記摩擦パッドの裏面側に位置して弾性変形可能な折曲げ部を設けている。
【0019】
これにより、パッド戻しばねには、第1,第2の延設部間に設けられた折曲げ部位を含めて弾性変形可能な複数の折曲げ部を設けることができ、例えば1個の折曲げ部が劣化等によって十分に復元しなくなった場合でも、他の折曲げ部によってパッド戻しばねの付勢力を補償することができる。
【0020】
また、請求項4の発明では、前記第2の延設部は、前記ディスクの軸方向に対して斜めに傾いた状態で延びる構成としている。
【0021】
これにより、例えばパッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから離れる方向(軸方向)に付勢しつつ、パッドガイド部から離れる方向(ディスクの接線方向)等にも付勢でき、摩擦パッドをパッドガイド部内で円滑に摺動させることができると同時に制動時等に摩擦パッドがパッドガイド部に当たって音(クロンク音)が出ることも防止できる。
【発明の効果】
【0022】
上述した通り、請求項1の発明によれば、パッド戻しばねを、取付部、第1,第2の延設部および先端係合部によって構成したので、ブレーキ操作の解除時には、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドをディスクから確実に引離すことができる。また、パッド戻しばねが大きく弾性変形する場合でも、先端係合部を取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合させることができ、これらの係合位置がパッド戻しばねの弾性変形時または復元時にずれるのを確実に防止できると共に、両者の係合状態を安定して保持することができる。これにより、パッド戻しばねから摩擦パッドに加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、パッド戻しばねを用いて摩擦パッドの引摺り等を確実に防止できると共に、摩擦パッドの早期摩耗、引摺りによる騒音等を抑えてディスクブレーキとしての耐久性や品質を向上させることができる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、先端係合部を突当部と係合爪部から構成したので、パッド戻しばねが大きく弾性変形する場合でも、係合爪部を取付部材またはパッドガイドスプリングに対して係合させつつ、これらの部材に対して突当部を弾性的に突当てることができ、この突当て位置がパッド戻しばねの弾性変形時または復元時にずれるのを確実に防止することができる。
【0024】
さらに、請求項3の発明によれば、取付部と第1の延設部との間には弾性変形可能な折曲げ部を設ける構成としたので、仮りに各折曲げ部のうち一部の折曲げ部が劣化等によって十分に復元しなくなった場合でも、他の折曲げ部によってパッド戻しばねの付勢力を補償でき、その寿命を延ばすことができる。
【0025】
また、請求項4の発明によれば、第2の延設部を前記ディスクの軸方向に対して斜めに傾いた状態で延びる構成としたので、パッド戻しばねは、摩擦パッドをディスクから引離す方向だけでなく、腕部のパッドガイド部から離す方向にも付勢することができる。これにより、ブレーキの操作時および解除時には、パッドガイド部内での摩擦パッドの摺動抵抗を低減でき、摩擦パッドを円滑に摺動変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるディスクブレーキを示す正面図である。
【図2】取付部材とキャリパの一部を破断して示すディスクブレーキの平面図である。
【図3】パッドガイド部の近傍を示す図1中の要部拡大図である。
【図4】パッド戻しばね等を示す図2中の要部拡大断面図である。
【図5】パッド戻しばねを拡大して示す斜視図である。
【図6】摩耗警報部材等を図1中の矢示VI−VI方向からみたディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図7】ブレーキの操作時に摩擦パッドがディスクに押圧された状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】ブレーキの組立時に摩擦パッド、パッド戻しばね等を取付部材に組付けた状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第5の実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばね等を示す要部拡大断面図である。
【図13】図12中のパッド戻しばねの先端係合部を拡大して示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態によるディスクブレーキを、図1ないし図13に従って詳細に説明する。ここで、図1ないし図8は本発明による第1の実施の形態を示している。
【0028】
1は自動車の車輪近傍で車両の非回転部分に取付けられる取付部材で、該取付部材1は車輪と共に図1中の矢示A方向に回転するディスクDのインナ側に配設されている。そして、取付部材1は、図2および図3に示す如く車両の非回転部分に固定される固定部2と、該固定部2に一体形成され、ディスクDの周方向に離間してディスクDの外周側を跨ぐように軸方向に延びた一対の腕部3,3と、該各腕部3を連結した連結部4等とから構成されている。そして、各腕部3には、ディスクDの軸方向に延びる凹溝状のパッドガイド部3Aがそれぞれ設けられている。
【0029】
5は取付部材1の各腕部3に一対の摺動ピン6,6(一方のみ図示)等を介して摺動可能に支持されたキャリパで、該キャリパ5は、図2に示す如くディスクDのインナ側に配設されたインナ脚部5Aと、該インナ脚部5AからディスクDの外周を跨いでアウタ側に延設されたブリッジ部5Bと、該ブリッジ部5Bの先端側から径方向内向きに屈曲して延び、ディスクDのアウタ側に配設されたアウタ爪部5C等とからなり、全体として断面略コ字状に形成されている。また、インナ脚部5A内にはピストン(図示せず)が摺動可能に挿嵌されている。
【0030】
7,7はディスクDの両面側に位置してキャリパ5との間に配設されたインナ側,アウタ側の摩擦パッドで、該各摩擦パッド7は、ディスクDの周方向に延びる略扇形の平板状に形成された裏金8と、該裏金8の表面側に固着され、ディスクDと対面するライニング9とから構成されている。
【0031】
ここで、裏金8の両端側には、図3、図4に示す如く、後述のパッドガイドスプリング10を介して各腕部3のパッドガイド部3Aに摺動可能に支持された略四角形状の耳部8A,8Aが一体形成されている。また、各耳部8Aの近傍に位置して裏金8の裏面側には、後述するパッド戻しばね11、摩耗警報部材19用のかしめ突起8B,8Bが突設されている。
【0032】
そして、摩擦パッド7は、運転者がブレーキを操作すると、裏金8の各耳部8Aがパッドガイドスプリング10を介して腕部3のパッドガイド部3A内で摺動し、例えば図4に示す制動解除位置から図7に示す制動位置へとパッドガイド部3Aに沿って軸方向に摺動変位することにより、ディスクDに摺接して制動力を与える構成となっている。
【0033】
10,10は摩擦パッド7を左,右の腕部3のパッドガイド部3Aに沿って軸方向に案内する左,右のパッドガイドスプリングで、該各パッドガイドスプリング10は、図3に示す如く、例えばばね性を有する金属板等からなり、各腕部3に取付けられている。そして、パッドガイドスプリング10は、ディスクDの径方向外側に位置する外側端部10Aと、径方向内側に位置する内側端部10Bと、これらの端部10A,10B間で腕部3のパッドガイド部3Aに沿って略矩形状に屈曲した屈曲部10Cとを一体形成することにより構成されている。
【0034】
11,11は各摩擦パッド7の裏金8に設けられたパッド戻しばねで、該各パッド戻しばね11は、図4および図5に示す如く、例えばばね性を有する金属板等をプレス加工することにより一体形成され、裏金8の各耳部8AのうちディスクDの回転方向入口側の耳部8Aに固着されると共に、後述の取付部12、第1の延設部14、第2の延設部16、先端係合部17等によって構成されている。
【0035】
12は裏金8の耳部8Aに取付けられた取付部で、該取付部12は耳部8Aの外側面に沿って略コ字状に折曲げられ、耳部8Aを板厚方向で弾性的に挟持している。また、取付部12には摩擦パッド7の裏面側に位置して取付穴12Aが設けられ、該取付穴12Aは裏金8のかしめ突起8Bにかしめ固定されている。また、取付部12と延設部14との間には、例えば2個の角隅部をもって略コ字状に折曲げられた折曲げ部13が設けられている。
【0036】
14は折曲げ部13を介して取付部12に一体形成された第1の延設部で、該延設部14はディスクDから離れる方向へと斜めに延びている。また、延設部14の先端側には、延設部16との間に位置して略V字状の折曲げ部15が設けられている。
【0037】
そして、パッド戻しばね11は、図4に示す如く摩擦パッド7が制動解除位置にあるときに、折曲げ部13,15が拡開するように小さく弾性変形した状態を保持し、摩擦パッド7をディスクDから離れる方向に付勢している。また、摩擦パッド7がブレーキ操作によって制動位置へと摺動変位したときには、図7に示す如くパッド戻しばね11が大きく弾性変形した状態となる。これにより、ブレーキ操作の解除時には、摩擦パッド7がパッド戻しばね11の復元力によってディスクDから引離され、制動解除位置へと戻る。
【0038】
16は延設部14の先端側をディスクDに向けて曲返すことにより形成された第2の延設部で、該延設部16は、図4に示す如くディスクDに向けて斜めに延び、摩擦パッド7が制動解除位置にあるときには、ディスクDの軸方向に対して例えば10〜45°程度の予め定められた角度αだけ傾いた状態を保持している。これにより、パッド戻しばね11は、摩擦パッド7を腕部3のパッドガイド部3Aから離れる方向(ディスクDの接線方向)にも付勢している。
【0039】
17は延設部16の先端側を延設部14側に折曲げることによって形成された略L字状の先端係合部で、該先端係合部17は、腕部3のパッドガイド部3A近傍またはパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cに対してディスクDと反対側から弾性的に突当たる突当部17Aと、該突当部17Aの先端側をディスクDに向けて折曲げることにより形成され、パッドガイド部3A内に位置して裏金8の耳部8Aとパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cとの間に係合可能に挿入された係合爪部17Bとにより構成されている。
【0040】
そして、パッド戻しばね11が大きく弾性変形したときには、係合爪部17Bがパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cに引掛かり、これによってパッド戻しばね11が大きく弾性変形する制動時、およびパッド戻しばね11が復元する制動解除時には、突当部17Aが腕部3またはパッドガイドスプリング10に対して位置ずれするのを防止する構成となっている。
【0041】
また、後述するディスクブレーキの組立作業で摩擦パッド7が図8に示す仮止め位置にあるときには、パッド戻しばね11が摩擦パッド7に付勢力を与えない自由長状態を保持し、このときディスクDのほぼ接線方向に対して裏金8の耳部8Aとパッド戻しばね11の係合爪部17Bとの間に形成される寸法L1 は、裏金8の耳部8Aとパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cとの間に形成される寸法L2 よりも小さくなるように予め定められている(L1 <L2 )。
【0042】
18は摩擦パッド7の裏金8に設けられた摩耗警報部材で、該摩耗警報部材18は、図6に示す如く略U字状をなす長尺な金属片等からなり、ディスクDの回転方向出口側の耳部8Aに配置されている。また、摩耗警報部材18は基端側がかしめ突起8Bに固定され、先端側がディスクDの表面と一定の間隔をもって対面している。そして、摩耗警報部材18は、例えばライニング9が設計上の許容量等を越えて摩耗後退したときに、ディスクDに摺接することによって異音を発生し、運転者に警報を発するものである。
【0043】
本実施の形態によるディスクブレーキは上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0044】
まず、ディスクブレーキの組立時には、インナ側,アウタ側の摩擦パッド7にパッド戻しばね11等を取付けた後に、これらの摩擦パッド7を取付部材1に対して図8中の仮止め位置に取付ける。そして、キャリパ5を取付部材1に組付け、これによって各摩擦パッド7を図4中の制動解除位置に保持する。
【0045】
次に、ブレーキの操作時には、外部からブレーキ液が供給されることによりキャリパ5のインナ脚部5A内でピストンが摺動変位し、このピストンはインナ側の摩擦パッド7をディスクDに押圧する。また、このときキャリパ5はディスクからの反力により取付部材1に対してインナ側に変位し、アウタ爪部5Cによってアウタ側の摩擦パッド7をディスクDに押圧する。これにより、各摩擦パッド7はパッド戻しばね11に抗して腕部3のパッドガイド部3A内で摺動変位し、ディスクDの両面に摺接して制動力を与える。
【0046】
この場合、摩擦パッド7の変位量が小さいときには、パッド戻しばね11の延設部16に対して長さ方向に近い方向の外力が加わるため、パッド戻しばね11は、まず折曲げ部13が拡開するように弾性変形する。そして、摩擦パッド7の変位量がある程度大きくなると、延設部16の厚さ方向に加わる外力も増大するため、折曲げ部15が拡開するように弾性変形する。
【0047】
次に、ブレーキ操作を解除したときには、キャリパ5のピストン、アウタ爪部5C等がディスクDから離れる方向に変位すると、各摩擦パッド7もパッド戻しばね11の付勢力によってディスクDから離れる方向に変位する。この場合、パッド戻しばね11は、折曲げ部13,15が弾性変形した状態から閉じるように復元しつつ、摩擦パッド7をディスクDから引離す。
【0048】
かくして、本実施の形態では、パッド戻しばね11を、取付部12、延設部14,16、先端係合部17等によって構成したので、パッド戻しばね11を用いて摩擦パッド7をディスクDから離れる方向へと安定的に付勢でき、ブレーキ操作の解除時には、この付勢力によって摩擦パッド7をディスクDから確実に引離すことができる。
【0049】
また、パッド戻しばね11が大きく弾性変形する場合でも、先端係合部17の係合爪部17Bをパッドガイドスプリング10に対して引掛けつつ、突当部17Aを取付部材1等に対して弾性的に突当てることができ、これらの突当て位置がパッド戻しばね11の弾性変形時または復元時にずれるのを確実に防止できると共に、両者の突当て状態を安定して保持することができる。
【0050】
これにより、パッド戻しばね11から摩擦パッド7に加わる戻し方向の付勢力を安定化でき、パッド戻しばね11を用いて摩擦パッド7の引摺り等を確実に防止できると共に、摩擦パッド7の早期摩耗、引摺りによる騒音等を抑えてディスクブレーキとしての耐久性や品質を向上させることができる。
【0051】
また、パッド戻しばね11には、例えば2個の折曲げ部13,15を設けたので、仮りに折曲げ部13,15のうち一方の折曲げ部が劣化等によって十分に復元しなくなった場合でも、他方の折曲げ部によってパッド戻しばね11の付勢力を補償でき、その寿命を延ばすことができる。
【0052】
さらに、延設部16を角度αだけ傾けた状態でディスクDに向けて延設したので、パッド戻しばね11は、摩擦パッド7をディスクDから引離す方向だけでなく、腕部3のパッドガイド部3Aから離す方向にも付勢することができる。これにより、ブレーキの操作時および解除時には、パッドガイド部3A内での摩擦パッド7の摺動抵抗を低減でき、摩擦パッド7を円滑に摺動変位させることができる。
【0053】
また、パッド戻しばね11が自由長状態となっているときには、裏金8とパッド戻しばね11との間の寸法L1 を、裏金8とパッドガイドスプリング10との間の寸法L2 よりも小さく形成したので、摩擦パッド7を仮止め位置に取付けるときには、パット戻しばね11を弾性変形させることなく、その係合爪部17Bを自由長状態のまま裏金8とパッドガイドスプリング10との間に容易に挿入でき、ディスクブレーキの組立作業を効率よく行うことができる。
【0054】
次に、図9は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0055】
21は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね21は、第1の実施の形態とほぼ同様に、裏金8のかしめ突起8Bに取付けられた取付部22と、折曲げ部23と、第1の延設部24と、折曲げ部25と、第2の延設部26と、先端係合部27等によって構成されている。
【0056】
しかし、取付部22は、裏金8のかしめ突起8Bに対して摩耗警報部材19と一緒にかしめ固定されている。また、先端係合部27は、摩擦パッド7から離れる方向へと略L字状に屈曲して形成され、腕部3に突設された突起部28に対して弾性的に係合しつつ突当てられている。
【0057】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、パッド戻しばね21を摩耗警報部材19と一緒に取付ける構成としたので、ディスクDの回転方向出口側にもパッド戻しばね21を配置でき、摩擦パッド7に与える戻し方向の付勢力をより安定化することができる。
【0058】
また、先端係合部27を腕部3の突起部28に弾性的に係合させることにより、腕部3のパッドガイド部3Aと摩擦パッド7の裏金8との間に形成される隙間が小さい場合でも、パッド戻しばね21の係合部位を確保することができる。
【0059】
次に、図10は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0060】
31は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね31は、第1の実施の形態とほぼ同様に、取付部32、折曲げ部33、第1の延設部34、折曲げ部35、第2の延設部36、先端係合部37等からなり、先端係合部37は、突当部37Aと、係合爪部37Bとによって構成されている。
【0061】
しかし、先端係合部37は、突当部37Aがパッドガイド部3Aの近傍に位置して腕部3Aの外側面に突当てられ、係合爪部37Bがパッドガイド部3A内に位置して腕部3とパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cとの間に係合可能に挿入されている。
【0062】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、係合爪部37Bを腕部3とパッドガイドスプリング10との間に挿入することにより、その係合状態をより安定化することができる。
【0063】
次に、図11は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0064】
41は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね41は、第1の実施の形態とほぼ同様に、取付部42、折曲げ部43、第1の延設部44、折曲げ部45、第2の延設部46、先端係合部47等によって構成されている。
【0065】
しかし、先端係合部47は、摩擦パッド7から離れる方向へと略L字状に屈曲して形成され、パッドガイドスプリング48に突設された突起部48Aに対して弾性的に係合しつつ突当てられている。
【0066】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、パッドガイドスプリング48に突起部48Aを設けるだけで、パッド戻しばね41の係合部位を確保することができる。
【0067】
次に、図12および図13は本発明による第5の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0068】
51は本実施の形態によるディスクブレーキのパッド戻しばねで、該パッド戻しばね51は、第1の実施の形態とほぼ同様に、取付部52、折曲げ部53、第1の延設部54、折曲げ部55、第2の延設部56、先端係合部57等によって構成されている。
【0069】
しかし、折曲げ部53は取付部52よりも摩擦パッド7の端部側に配置され、外向きに略U字状をなして屈曲している。また、先端係合部57は、図13に示す如く三つ又状に分岐して形成され、中央の突当部57Aが腕部3の外側面に突当てられると共に、左,右の係合爪部57Bが腕部3のパッドガイド部3A内に挿入された状態でパッドガイドスプリング10の屈曲部10Cに係合している。
【0070】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、先端係合部57を三つ又状に形成し、突当部57Aを腕部3に突当てると共に、左,右の係合爪部57Bをパッドガイド部3A内でパッドガイドスプリング10に係合させる構成としたので、取付部材1側に対して先端係合部57の係合状態をより安定化することができる。
【0071】
なお、前記各実施の形態では、裏金8のかしめ突起8Bにパッド戻しばね11,21,31,41,51をかしめ固定する構成としたが、本発明はこれに限らず、裏金8の耳部8Aに取付穴、取付溝等からなるばね取付部を設け、このばね取付部にパッド戻しばね11,21,31,41,51を取付ける構成としてもよい。
【0072】
また、前記各実施の形態では、パッド戻しばね11,21,31,41,51の取付部12,22,32,42,52と第1の延設部14,24,34,44,54との間に例えば2個の角隅部を有する略コ字状の折曲げ部13,23,33,43または略U字状の折曲げ部53を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、取付部と第1の延設部との間に3個以上の折曲げ部を設ける構成としてもよい。
【0073】
また、前記各実施の形態では、パッド戻しばね11,21,31,41,51の取付部12,22,32,42,52を裏金8の裏面側にかしめ固定する構成としたが、腕部3と対向する裏金8の耳部8Aの側面側にかしめ固定する構成としてもよく、耳部8Aの表面側にかしめ固定する構成としてもよい。
【0074】
また、前記第1,第3,第4の実施の形態では、パッド戻しばね11,31,41の取付部12,32,42を略コ字状に形成し、取付部12,32,42によって裏金8の耳部8Aを弾性的に挟持するものとしたが、必ずしも耳部8Aを挟持する必要はなく、例えば裏金8の裏面側にかしめ固定のみによって取り付ける構成としてもよい。
【0075】
また、第4の実施の形態におけるパッドガイドスプリング48の突起部48Aと取付部材1の腕部3との間には隙間が形成されていてもよい。
【0076】
さらに、前記各実施の形態では、自動車用のディスクブレーキを例に挙げて述べたが、本発明はこれに限らず、例えば自動二輪車等からなる他の車両にも適用し得るものである。
【符号の説明】
【0077】
D ディスク
1 取付部材
3 腕部
3A パッドガイド部
5 キャリパ
7 摩擦パッド
10,48 パッドガイドスプリング
11,21,31,41,51 パッド戻しばね
12,22,32,42,52 取付部
13,23,33,43,53 折曲げ部
14,24,34,44,54 第1の延設部
16,26,36,46,56 第2の延設部
17,27,37,47,57 先端係合部
17A,37A,57A 突当部
17B,37B,57B 係合爪部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの周方向に間隔をおいて軸方向に伸長する一対の腕部を有し該各腕部にパッドガイド部が形成された取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持されたキャリパと、前記取付部材の各腕部により軸方向に摺動可能に支持され該キャリパによりディスクの両面側に押圧される一対の摩擦パッドと、該各摩擦パッドを前記取付部材の各パッドガイド部に沿って案内するために前記各腕部にそれぞれ取付けられたパッドガイドスプリングと、ばね性を有する金属材料により形成され前記摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢するパッド戻しばねとからなるディスクブレーキにおいて、
前記パッド戻しばねは、前記摩擦パッドに取付けられた取付部と、該取付部に一体に設けられ前記摩擦パッドの裏面側に位置して前記ディスクから離れる方向に延びる第1の延設部と、該第1の延設部の先端側を前記ディスクに向けて曲返すことにより前記ディスクに近づく方向に延びる第2の延設部と、該第2の延設部の先端側に設けられ前記取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合する先端係合部とにより構成したことを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記先端係合部は、前記取付部材またはパッドガイドスプリングに突当たる突当部と、該突当部の先端側から屈曲して前記取付部材のパッドガイド部内に係合可能に挿入された係合爪部とから構成してなる請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記取付部と第1の延設部との間には、前記摩擦パッドの裏面側に位置して弾性変形可能な折曲げ部を設けてなる請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記第2の延設部は、前記ディスクの軸方向に対して斜めに傾いた状態で延びる構成としてなる請求項1,2または3に記載のディスクブレーキ。
【請求項1】
ディスクの周方向に間隔をおいて軸方向に伸長する一対の腕部を有し該各腕部にパッドガイド部が形成された取付部材と、該取付部材の各腕部に摺動可能に支持されたキャリパと、前記取付部材の各腕部により軸方向に摺動可能に支持され該キャリパによりディスクの両面側に押圧される一対の摩擦パッドと、該各摩擦パッドを前記取付部材の各パッドガイド部に沿って案内するために前記各腕部にそれぞれ取付けられたパッドガイドスプリングと、ばね性を有する金属材料により形成され前記摩擦パッドをディスクから離れる方向に付勢するパッド戻しばねとからなるディスクブレーキにおいて、
前記パッド戻しばねは、前記摩擦パッドに取付けられた取付部と、該取付部に一体に設けられ前記摩擦パッドの裏面側に位置して前記ディスクから離れる方向に延びる第1の延設部と、該第1の延設部の先端側を前記ディスクに向けて曲返すことにより前記ディスクに近づく方向に延びる第2の延設部と、該第2の延設部の先端側に設けられ前記取付部材またはパッドガイドスプリングに対して弾性的に係合する先端係合部とにより構成したことを特徴とするディスクブレーキ。
【請求項2】
前記先端係合部は、前記取付部材またはパッドガイドスプリングに突当たる突当部と、該突当部の先端側から屈曲して前記取付部材のパッドガイド部内に係合可能に挿入された係合爪部とから構成してなる請求項1に記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
前記取付部と第1の延設部との間には、前記摩擦パッドの裏面側に位置して弾性変形可能な折曲げ部を設けてなる請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
前記第2の延設部は、前記ディスクの軸方向に対して斜めに傾いた状態で延びる構成としてなる請求項1,2または3に記載のディスクブレーキ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−63014(P2012−63014A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253653(P2011−253653)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2008−144624(P2008−144624)の分割
【原出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2008−144624(P2008−144624)の分割
【原出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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