説明

バッテリークーラー

【課題】バッテリーセルユニットに容易に組み付けることが可能なバッテリークーラーの提供を目的とする。
【解決手段】
本発明に係るバッテリークーラー10は、全体が矩形板状をなすヘッダー11の下面に、冷却パック40Aを内側に備えたパック体40が複数並べて取り付けられた構成をなしている。そして、ヘッダー11の流入側連結パイプ12Aからヘッダー11内に流入した冷却水が、冷却パック40Aの内部を通過して流出側パイプ12Bから排出されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリーセルを隙間をあけて並んだ状態に固定してなるバッテリーセルユニットに装着され、内部を流れる冷媒によってバッテリーセルユニットを冷却可能なバッテリークーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバッテリークーラーとして、ラジエターの冷却水を通水可能な冷却パックにて、複数のバッテリーセルを収容するバッテリーケースとバッテリーセルとの間の隙間を埋めたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−73908号公報([0011]〜[0014]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のバッテリークーラーでは、既存のバッテリーセルユニットへ組み付ける場合には、バッテリーセルをバッテリーケースから取り外す必要があり、手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、バッテリーセルユニットに容易に組み付けることが可能なバッテリークーラーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るバッテリークーラーは、3つ以上の複数のバッテリーセルを隙間を空けて並んだ状態に固定してなるバッテリーセルユニットに装着されると共に車両に備えた冷媒循環装置に接続され、その冷媒循環装置からの冷媒が内部を流れてバッテリーセルユニットを冷却可能なバッテリークーラーにおいて、2枚重ねにした防水シートの外縁部を直接又はマチを挟んで間接的に接合してなり、バッテリーセル間の別々の隙間に分けて収容される複数の冷却パックと、バッテリーセルユニットの一側面に対向配置され、そのバッテリーセルユニットとの対向面に複数の冷却パックの一端部が固定されたヘッダーとを備え、ヘッダーに、冷媒循環装置から冷媒が供給される基幹流入路と、冷媒循環装置へと冷媒を排出する基幹流出路とを設けると共に、各冷却パックの一端部に、基幹流入路と冷却パック内とを連通した流入接続路と、基幹流出路と冷却パック内とを連通した流出接続路とを備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のバッテリークーラーにおいて、冷却パックは、2枚重ねにした防水シートの外縁部を直に接合してなるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のバッテリークーラーにおいて、防水シートは、1対の樹脂層で金属層を挟んでなる積層シートであるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載のバッテリークーラーにおいて、冷却パックの外側を覆う蓄熱材を備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載のバッテリークーラーにおいて、冷却パックのうちヘッダー側の一端部からヘッダーから離れた他端寄り位置に亘って、冷却パックを構成する2枚重ねの防水シートの幅方向の中央部分を互いに接合して中央仕切部を形成し、その中央仕切部の両側に流入接続路と流出接続路とを分けて配置したところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1の請求項に記載のバッテリークーラーにおいて、ヘッダーに、バッテリーセルユニットとの対向方向で扁平でかつバッテリーセルの並び方向に延びた箱体壁と、箱体壁の内部空間から基幹流入路及び基幹流出路を含む複数の分割領域に仕切る仕切壁とを備えて、基幹流入路及び基幹流出路が、箱体壁の幅方向で横並びになって長手方向に延びかつかつ互いに隔絶された状態に形成され、箱体壁のうちバッテリーセルユニットとの対向面には、基幹流入路に連通した複数の流入分岐接続パイプと、基幹流出路に連通した流出分岐接続パイプとが突出形成され、冷却パックの一端部には、冷却パックを構成する2枚重ねの各防水シートから突出した突片の側縁部同士を接合してなり、流入分岐接続パイプ及び流出分岐接続パイプの外側にそれぞれ挿入した状態で固定された流入側連結チューブ及び流出側連結チューブが設けられたところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載のバッテリークーラーにおいて、基幹流入路には、その最も上流側の流入分岐接続パイプの連絡口が位置した部分を、その上流側及び下流側に比べて幅広にして中間幅広部が形成され、その中間幅広部の幅方向の中央に連絡口が配置されると共に、連絡口の上流側隣に、連絡口から離れるに従って幅狭になった先細り突部が設けられたところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載のバッテリークーラーにおいて、箱体壁からバッテリーセルユニットに向かって突出した複数の係止爪を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
[請求項1の発明]
請求項1の発明に係るバッテリークーラーによれば、冷却パックを他端側からバッテリーセルの間に挿入することで、既存のバッテリーセルユニットであってもバッテリーセルを取り外すことなく組み付けることが可能になる。また、複数の冷却パックの一端部がヘッダーのバッテリーセルユニットとの対向面に固定されているので、複数の冷却パックを同時にバッテリーセル間に挿入することができる。このように、本発明によれば、バッテリークーラーをバッテリーセルユニットに容易に組み付けることが可能になる。
【0015】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、冷却パックの厚さを薄くして、バッテリーセル間に挿入しやすくすることが可能になる。
【0016】
[請求項3の発明]
請求項3の発明では、防水シートが、1対の樹脂層で金属層を挟んでなる積層シートであるので、冷却パック内に冷媒を満たさない状態であっても、冷却パックの形状をシート状に保持することができる。これにより、バッテリーセル間へ冷却パックを挿入しやすくすることができる。
【0017】
[請求項4の発明]
請求項4の発明では、蓄熱材によってバッテリーセルの温度を適正な温度範囲に維持することが可能になる。
【0018】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、流入接続路から冷却パック内に流入した冷媒は、冷却パックの他端側へ向かって流れた後、折り返して一端側へ戻るように流れるので、冷却パックの内部全体に冷媒を流すこと可能になり、バッテリーセルの冷却効率の向上が図られる。
【0019】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、箱体壁に形成された流入分岐接続パイプと流出分岐接続パイプに冷却パックの流入側連結チューブと流出側連結チューブを挿入することで、基幹流入路内の冷媒を冷却パック内へ供給し、冷却パックから流出した冷媒を基幹流出路へ排出することができる。
【0020】
[請求項7の発明]
請求項7の発明では、冷媒循環装置から基幹流入路に供給された冷媒は、最も上流側の流入分岐接続パイプの連絡口に到達する前に先細り突部との衝突によって流速が遅くなる。これにより、基幹流入路を流れる冷媒が流入分岐接続パイプの連絡口を通って冷却パック内に流れやすくすることが可能になる。
【0021】
[請求項8の発明]
請求項8の発明では、複数の係止爪によってバッテリークーラーをバッテリーセルユニットに組み付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】バッテリークーラーの斜視図
【図2】ヘッダーの分解斜視図
【図3】(A)ヘッダーベースの平断面図、(B)ヘッダーベースのA−A断面図
【図4】冷却パックの正面図
【図5】(A)図4におけるB−B断面図、(B)図5(A)におけるC−D部分拡大断面図
【図6】冷媒循環装置の概略構成図
【図7】(A)非通水時のバッテリークーラー及びバッテリーセルユニットの側断面図、(B)通水時のバッテリークーラー及びバッテリーセルユニットの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図7を用いて説明する。図1に示すように、バッテリークーラー10は、全体が矩形板状をなすヘッダー11の下面に、複数のパック体40の上端部が並べて取り付けられた構成をなしている。
【0024】
ヘッダー11は、樹脂の射出成形品であって、扁平な箱体壁30の長手方向の一端面から流入メイン接続パイプ12Aと流出メイン接続パイプ12Bを突出して備えている。また、箱体壁30の下端部には、下方に突出した係止爪16Kが長手方向に沿って複数設けられている。
【0025】
詳細には、ヘッダー11は、図2に示すように、ヘッダーベース13の上面をヘッダーカバー14で覆ってなる。ヘッダーベース13は、底部を構成する矩形状のベース壁15と、ベース壁15の外縁部から上方に向かって起立した外周壁16と、外周壁16で囲まれる空間をヘッダー11の短手方向で二分する区画壁17とを備えている。なお、ベース壁15と外周壁16とヘッダーカバー14とで上述の箱体壁30が形成されている。
【0026】
ベース壁15の下面には、長手方向に沿った複数位置に、流入分岐接続パイプ18と流出分岐接続パイプ19が1対ずつ設けられている。流入分岐接続パイプ18及び流出分岐接続パイプ19は、ベース壁15を貫通してベース壁15の上面で開口し、その開口は、区画壁17を挟んで対称に配置されている。そして、ベース壁15の上面からは、外周壁16で囲まれた空間を、流入分岐接続パイプ18,18の開口を含むように分割する流入側包囲壁20と、流出分岐接続パイプ19,19の開口を含むように分割する流出側包囲壁21とが起立している。そして、流入側包囲壁20で囲まれた空間が流入メイン接続パイプ12Aに連通して、本発明の基幹流入路22を形成し、流出側包囲壁21に囲まれた空間が流出メイン接続パイプ12Bに連通して、本発明の基幹流出路23を形成している。なお、流入側包囲壁20及び流出側包囲壁21が本発明の「仕切壁」に相当する。
【0027】
図3(A)に示すように、流入分岐接続パイプ18及び流出分岐接続パイプ19は、ベース壁15の他端側、即ち、流入メイン接続パイプ12A及び流出メイン接続パイプ12Bと反対側(図3(A)における下側)と、長手方向の中間位置よりも一端寄り位置とに配置されている。以下、1対の流入分岐接続パイプ18,18を区別して呼ぶときは、一端側の流入分岐接続パイプ18を第1流入分岐接続パイプ18Aと、他端側の流入分岐接続パイプ18を第2流入分岐接続パイプ18Bと呼ぶことにする。また、流出分岐接続パイプ19についても同様に、一端側の流出分岐接続パイプ19を第1流出分岐接続パイプ19Aと、他端側の流出分岐接続パイプ19を第2流出分岐接続パイプ19Bと呼ぶことにする。
【0028】
基幹流入路22は、流入メイン接続パイプ12Aの中心軸に対して左右対称をなし、ヘッダー11の長手方向に沿って延びている。詳細には、基幹流入路22は、流入メイン接続パイプ12Aと第1流入分岐接続パイプ18Aとに挟まれた部分が、流入メイン接続パイプ12Aから離れるに従って幅方向(即ち、ヘッダー11の短手方向)に広がり、第1流入分岐接続パイプ18Aが配置された部分で、若干幅狭になって、第1流入分岐接続パイプ18Aよりも他端側(図3(A)の下側)の部分では、幅が均一になっている。
【0029】
また、図3(B)に示すように、基幹流入路22は、流入メイン接続パイプ12Aと第1流入分岐接続パイプ18Aとに挟まれる部分では、下流側へ向かうにつれて、即ち、第1流入分岐接続パイプ18A側に近づくにつれて、底面が上るように傾斜して深さ方向の厚さが小さくなっていき、第1流入分岐接続パイプ18Aより下流側の部分では、深さ方向の厚さが均一になっている。
【0030】
基幹流出路23は、基幹流入路22と平行に延び、基幹流入路22と同形状をなしている。即ち、第1流出分岐接続パイプ19Aより一端側が三角形状に幅が変化し、他端側が均一幅になっている(図3(A)参照)。また、流出メイン接続パイプ12Bと第1流出分岐接続パイプ19Aとに挟まれる部分では、第1流出分岐接続パイプ19Aへ近づくにつれて、深さ方向の厚さが小さくなっていき、第1流出分岐接続パイプ19Aより上流側(即ち、流出メイン接続パイプ12Bから離れる側)の部分では、深さ方向の厚さが均一になっている。
【0031】
図3(B)に示すように、基幹流入路22内のうち第1流入分岐接続パイプ18Aよりも流入メイン接続パイプ12A側には、ベース壁15の上面から突出した先細り突部24が備えられている。先細り突部24は、上方から見た断面形状が三角形状をなし、第1流入分岐接続パイプ18Aに隣接して配置されている(図3(A)参照)。
【0032】
図4に示すように、パック体40は、縦長矩形状をなし、上端部から上方に向かって延びた流入側連結チューブ41と流出側連結チューブ42とを横並びにして備えている。流入側連結チューブ41の先端部は、ヘッダー11の流入分岐接続パイプ18に挿入した状態で固定され、流出側連結チューブ42の先端部は、ヘッダー11の流出分岐接続パイプ19に挿入した状態で固定されている。そして、流入側連結チューブ41の内側が本発明の流入接続路43になっていて、流出側連結チューブ42の内側が本発明の流出接続路44になっている。
【0033】
図5(A)に示すように、パック体40は、冷却パック40Aの外側に蓄熱材54を備えた構造になっている。具体的には、冷却パック40Aを外側から覆う樹脂製(例えば、ナイロン樹脂製)のパックカバー53,53を備え、冷却パック40Aとパックカバー53との間に形成された密閉空間に、蓄熱材54が充填されている。蓄熱材54は、15度〜45度に融点を持つ材料で構成されている。
【0034】
冷却パック40Aの内部には、冷媒が通過可能なパック内流路45が形成されている。具体的には、図4に示すように、パック内流路45は、流入接続路43に連通してパック体40の下端寄り位置まで延びたパック内流入路46と、流出接続路44に連通してパック体40の下端寄り位置まで延びたパック内流出路47とで構成され、パック内流入路46とパック内流出路47の下端部同士が連絡している。即ち、パック内流路45は、パック体40の上端部から下端部へ延びた後、折り返して上端に延びたU字状になっている。
【0035】
図5(A)に示すように、冷却パック40Aは、2枚重ねにした防水シート50,50の外縁部を接合してなる。防水シート50は、図5(B)に拡大して示すように、金属層51を1対の樹脂層52で挟んでなる積層シートになっている。そして、2枚の防水シート50のうち外側に露出した樹脂層52同士を溶着することで、2枚の防水シート50が接合されている。なお、本実施形態では、金属層51はアルミで構成され、樹脂層52はポリエチレン樹脂で構成されている。
【0036】
また、2枚の防止シート50,50は、流入側連結チューブ41と流出側連結チューブ42との中間位置から下端寄り位置に亘って溶着され、その接合された部分が上述のパック内流入路46とパック内流出路47とを仕切る中央仕切部48(図4参照)になっている。
【0037】
また、図5(B)に示すように、防水シート50の外縁部では、外側の樹脂層52に上述したパックカバー53が直に溶着されている。なお、図示はしないが、各防水シート50の一端部には、樹脂製の突片が1対ずつ備えられ、それら突片の側縁部同士を接合することで、上述の流入側連結チューブ41と流出側連結チューブ42とが形成されるようになっている。。
【0038】
バッテリークーラー10の構造に関する説明は以上である。
さて、本実施形態のバッテリークーラー10は、図6に示すように、電気自動車の車両90に積載されたモータ94を冷却するための冷媒循環装置95に接続される。冷媒循環装置95は、ラジエター91の冷却水(以下、単に「水」という)を循環させる冷媒循環路93を備え、冷媒循環路93にモータ94が接続されている。そして、この冷媒循環路93に、ヘッダー11の流入メイン接続パイプ12Aと流出メイン接続パイプ12Bとが接続可能になっている。なお、冷媒循環路93には、冷媒循環路93内で水を循環させるポンプ96が設けられている。
【0039】
図7(A)に示すように、バッテリークーラー10は、冷却対象であるバッテリーセル81を複数備えたバッテリーセルユニット80に装着される。具体的には、バッテリーセルユニット80は、バッテリーケース82内に複数のバッテリーセル81を隙間を空けて並んだ状態に固定して備え、バッテリークーラー10のヘッダー11がバッテリーケース82に固定されることでバッテリークーラー10がバッテリーセルユニット80に組み付けられている。
【0040】
以下、バッテリークーラー10のバッテリーセルユニット80への組み付けについて説明する。バッテリークーラー10をバッテリーセルユニット80に組み付けるには、まず、バッテリークーラー10に水を流さない状態で、パック体40を他端側、即ち、ヘッダー11と反対側からバッテリーセル81の間に挿入する。ここで、図7(A)に示すように、非通水の状態では、パック体40の厚さは、隣り合うバッテリーセル81同士の間隔よりも小さくなっているので、パック体40の挿入がスムーズに行える。具体的には、バッテリーセル81同士の間隔は、約3mmになっていて、非通水時のパック体40の厚さは、約2mmになっている。
【0041】
また、バッテリーセルユニット80には、例えば、4つのバッテリーセル81が等間隔に配置され、バッテリークーラー10に備えた2つのパック体40,40の間隔は、隣接するバッテリーセル二個分の長さよりも若干大きくなっている。そして、一方のパック体40が一端側から数えて1番目のバッテリーセル81と2番目のバッテリーセル81との間に挿入され、他方のパック体40が3番目のバッテリーセル81と4番目のバッテリーセル81との間に挿入される。
【0042】
バッテリーセル81の間へのパック体40の挿入が完了すると、ヘッダー11の係止爪16K(図1及び図2参照)がバッテリーケース82の上端部と係止し、バッテリークーラー10がバッテリーセルユニット80に対して固定される。以上が、バッテリークーラー10のバッテリーセルユニット80への組み付けについての説明である。
【0043】
さて、冷媒循環路93(図6参照)からヘッダー11の流入メイン接続パイプ12Aを通って基幹流入路22(図3(A)参照)に水が流れると、流入側連結チューブ41を通って冷却パック40A内へと水が流れ、パック内流路45を通った水が、流出側連結チューブ42から基幹流出路23を通って冷媒循環路93へ排出される。このとき、冷媒循環路93から基幹流入路22に供給された水は、第1流入分岐接続パイプ18A(図3(A)参照)に到達する前に先細り突部24との衝突によって流速が遅くなる。これにより、基幹流入路22を流れる水が第1流入分岐接続パイプ18Aを通って冷却パック40A内に流れやすくなる。
【0044】
バッテリークーラー10への通水後、バッテリーセル81の温度が上昇すると、蓄熱材54が融解し、パック体40が冷却パック40A内の水圧によって膨張する。その結果、図7(B)に示すように、パック体40がバッテリーセル81に密着する。このとき、全てのバッテリーセル81がパック体40の片面と密着し、これにより、全てのバッテリーセル81についてバランスよく冷却することが可能になる。なお、バッテリーセル81自体が熱によって膨張する場合であっても、パック体40はバッテリーセル81の形状に合わせて密着が可能である。
【0045】
また、バッテリーセル81を冷却する際、蓄熱材54の液体−固体間の状態変化に熱量が使用されるので、バッテリーセル81は、蓄熱材54の融点付近の温度に維持されやすくなる。ここで、蓄熱材54の融点は、バッテリーセル81が安定して性能を発揮しやすい温度(15〜45度)とほぼ一致するので、バッテリーセル81を適正な温度範囲に維持することが可能になる。
【0046】
バッテリーセル81が冷却されて、パック体40全体の温度が低くなると、蓄熱材54が固化し、パック体40は、非通水時であってもバッテリーセル81に密着した状態を保持する。これにより、次にバッテリーセル81の温度が上昇した場合には、蓄熱材54の融解を待たなくてもパック体40がバッテリーセル81に密着しているのでバッテリーセル81を直ちに冷却することが可能になる。
【0047】
バッテリークーラー10の動作に関する説明は以上である。次に、バッテリークーラー10の作用効果について説明する。
【0048】
本実施形態のバッテリークーラー10によれば、パック体40(冷却パック40A)を下端側からバッテリーセル81の間に挿入することで、バッテリーセルユニット80からバッテリーセル81を取り外すことなくバッテリーユニット80に組み付けることができる。また、複数のパック体40の一端部がヘッダー11のバッテリーセルユニット80との対向面に共通して固定されているので、複数のパック体40を同時にバッテリーセル81間に挿入することができる。このように、本実施形態によれば、バッテリークーラー10をバッテリーセルユニット80に容易に組み付けることが可能になる。
【0049】
また、冷却パック40Aが、金属層51を1対の樹脂層52で挟んだ積層シートを2枚重ねにして接合してなるので、冷却パック40A内に水を満たさない状態であっても、冷却パック40Aをシート状に保持することが可能になる。これにより、パック体40(冷却パック40A)をバッテリーセル81間に挿入しやすくなり、組み付け作業が容易になる。
【0050】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0051】
(1)上記実施形態のバッテリークーラー10では、冷却パック40Aの外側に蓄熱材54を備えた構成であったが、蓄熱材54を備えない構成であってもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、ヘッダー11に取り付けられたパック体40の数が2つであったが、バッテリーセル81の数に応じて適宜変更されてもよく、3つ以上であってもよい。
【0053】
(3)上記実施形態の冷却パック40Aは、2枚重ねにした防水シート50の外縁部を直接接合した構成であったが、2枚の防水シート50の外縁部をマチを挟んで間接的に接合した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 バッテリークーラー
11 ヘッダー
18 流入分岐接続パイプ
19 流出分岐接続パイプ
20 流入側包囲壁(仕切壁)
21 流出側包囲壁(仕切壁)
22 基幹流入路
23 基幹流出路
24 先細り突部
30 箱体壁
40 パック体
40A 冷却パック
41 流入側連結チューブ
42 流出側連結チューブ
43 流入接続路
44 流出接続路
48 中央仕切部
50 防水シート
51 金属層
52 樹脂層
54 蓄熱材
80 バッテリーセルユニット
81 バッテリーセル
90 車両
95 冷媒循環装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上の複数のバッテリーセルを隙間を空けて並んだ状態に固定してなるバッテリーセルユニットに装着されると共に車両に備えた冷媒循環装置に接続され、その冷媒循環装置からの冷媒が内部を流れて前記バッテリーセルユニットを冷却可能なバッテリークーラーにおいて、
2枚重ねにした防水シートの外縁部を直接又はマチを挟んで間接的に接合してなり、前記バッテリーセル間の別々の隙間に分けて収容される複数の冷却パックと、
前記バッテリーセルユニットの一側面に対向配置され、そのバッテリーセルユニットとの対向面に前記複数の冷却パックの一端部が固定されたヘッダーとを備え、
前記ヘッダーに、前記冷媒循環装置から冷媒が供給される基幹流入路と、前記冷媒循環装置へと冷媒を排出する基幹流出路とを設けると共に、各前記冷却パックの一端部に前記基幹流入路と前記冷却パック内とを連通した流入接続路と、前記基幹流出路と前記冷却パック内とを連通した流出接続路とを備えたことを特徴とするバッテリークーラー。
【請求項2】
前記冷却パックは、2枚重ねにした防水シートの外縁部を直に接合してなることを特徴とする請求項1に記載のバッテリークーラー。
【請求項3】
前記防水シートは、1対の樹脂層で金属層を挟んだ積層シートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリークーラー。
【請求項4】
前記冷却パックの外側を覆う蓄熱材を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1の請求項に記載のバッテリークーラー。
【請求項5】
前記冷却パックのうち前記ヘッダー側の一端部から前記ヘッダーから離れた他端寄り位置に亘って、前記冷却パックを構成する前記2枚重ねの前記防水シートにおける幅方向の中央部分を互いに接合して中央仕切部を形成し、その中央仕切部の両側に前記流入接続路と前記流出接続路を分けて配置したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載のバッテリークーラー。
【請求項6】
前記ヘッダーに、前記バッテリーセルユニットとの対向方向で扁平でかつ前記バッテリーセルの並び方向に延びた箱体壁と、前記箱体壁の内部空間から前記基幹流入路及び前記基幹流出路を含む複数の分割領域に仕切る仕切壁とを備えて、前記基幹流入路及び前記基幹流出路が、前記箱体壁の幅方向で横並びになって長手方向に延びかつかつ互いに隔絶された状態に形成され、
前記箱体壁のうち前記バッテリーセルユニットとの対向面には、前記基幹流入路に連通した複数の流入分岐接続パイプと、前記基幹流出路に連通した流出分岐接続パイプとが突出形成され、
前記冷却パックの一端部には、前記冷却パックを構成する前記2枚重ねの各前記防水シートから突出した突片の側縁部同士を接合してなり、前記流入分岐接続パイプ及び前記流出分岐接続パイプの外側にそれぞれ挿入した状態で固定された流入側連結チューブ及び流出側連結チューブが設けられたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載のバッテリークーラー。
【請求項7】
前記基幹流入路には、その最も上流側の前記流入分岐接続パイプの連絡口が位置した部分を、その上流側及び下流側に比べて幅広にして中間幅広部が形成され、その中間幅広部の幅方向の中央に前記連絡口が配置されると共に、前記連絡口の上流側隣に、前記連絡口から離れるに従って幅狭になった先細り突部が設けられたことを特徴とする請求項6に記載のバッテリークーラー。
【請求項8】
前記箱体壁から前記バッテリーセルユニットに向かって突出した複数の係止爪を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載のバッテリークーラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−89341(P2013−89341A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226475(P2011−226475)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】