説明

フィルム外装型蓄電装置及びその製造方法

【課題】 フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面に配置される外部接続用端子の位置ずれの発生或いは該位置ずれによる不具合の発生を抑止するフィルム外装型蓄電装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明によって提供されるフィルム外装型蓄電装置は、正極及び負極を有する電極体ユニットと、内部に該電極体ユニットを収容する空間が形成されたフィルム外装体2と、該電極体ユニットと電気的に接続し且つ該フィルム外装体2を構成する外装フィルム10,20同士の融着面12,22を通って一端が外部に露出する少なくとも一つの外部接続用端子30とを備えたフィルム外装型蓄電装置であって、前記融着面12,22において、前記外部接続用端子30の周囲に絶縁性硬質材料Bが分散して存在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム外装型の蓄電装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフィルム等の封止用フィルム同士を熱融着等により接合して形成されるフィルム外装体の内部に電極体ユニットを収容して密閉した構造のいわゆるフィルム外装型蓄電装置が種々の分野で使用されている。
かかるフィルム外装型蓄電装置の典型的なものとして、一方の端部がフィルム外装体内部の電極体ユニットに接続された正極側及び負極側の外部接続用端子(例えば薄板形状の端子)であってその他端側はフィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面(封止面)を通って外部に引き出された外部接続用端子を備える蓄電装置が挙げられる。
このような形態の蓄電装置において外部接続用端子とフィルム外装体(融着面)との間の密閉性を確保する工夫が従来行われている。例えば、特許文献1及び2には、フィルム外装体(封止面)と接する表面に接着性を向上させるための多孔質膜が形成された外部接続用端子を備えた電池が記載されている。また、特許文献3には、タブ(外部接続用端子の別称)を封止するためにタブ周囲に配置した樹脂の延伸方向をタブ引き出し方向とは異なるようにして応力に対する耐性向上を図った電池が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−84993号公報
【特許文献2】特開2002−25535号公報
【特許文献3】特開2004−31097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような形態のフィルム外装型蓄電装置を構築する場合、フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面(封止面)の所定の位置に上記外部接続用端子を正しく配置することは難しく、位置ずれが発生しやすい。しかし、かかる外部接続用端子の位置ずれがあると、外部接続用端子と外装フィルム(典型的には高融点樹脂製の外面層と熱融着性樹脂製の融着層との間にアルミニウム等の箔から成る導電性バリア層を有する三層構造ラミネートフィルム)とを融着させる融着層の厚さ(即ち端子と外装フィルムとの間の距離)に不均一が生じ得、延いてはフィルム外装体の密閉性の低下、更には融着層の欠失部分における短絡(例えば三層構造ラミネートフィルムの金属バリア層と端子との接触)を招く虞もあり好ましくない。このため、位置ずれが発生しないように慎重に端子を外装フィルム上に配置する必要があるものの、過度の慎重さは当該蓄電装置の製造効率を低下させる要因ともなっていた。
【0005】
そこで本発明は、かかるフィルム外装型蓄電装置に関する上記課題を解決すべく創出されたものであり、フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面に配置される外部接続用端子(リード端子ともいう)の位置ずれの発生を防止し或いは位置ずれによる不具合の発生を防止し、効率よくフィルム外装型蓄電装置を製造し得る方法を提供することを一つの目的とする。また、そのような製造方法によって得られるフィルム外装型蓄電装置の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される蓄電装置は、正極及び負極を有する電極体ユニットと、内部に該電極体ユニットを収容する空間が形成されたフィルム外装体と、該電極体ユニットと電気的に接続し且つ該フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面を通って一端が外部に露出する少なくとも一つの外部接続用端子と、を備えたフィルム外装型蓄電装置である。そして、前記融着面において、前記外部接続用端子の周囲に絶縁性硬質材料が分散して存在することを特徴とする蓄電装置である。
なお、本明細書において「蓄電装置」とは、所定の電気エネルギーを取り出し得る一又は二以上の蓄電要素(典型的には電池、或いはキャパシタ)を備える装置をいい、特定の蓄電機構に限定されない。リチウム一次電池その他の一次電池、ニッケル水素二次電池、リチウム二次電池その他の二次電池のような電池、或いは、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)は、ここでいう蓄電装置に包含される典型例である。
また、本明細書において「電極体ユニット」とは、少なくとも一つずつの正極及び負極を含み、電池又はキャパシタ(蓄電要素)の主体をなす構造体をいう。
【0007】
かかる構成の蓄電装置では、上記絶縁性硬質材料が外部接続用端子の周囲に分散して存在することにより、当該端子と外装フィルムとの直接的な接触(典型的には融着面を構成する融着層を介さない金属製端子と外装フィルム本体との接触をいう。以下同じ。)を防止することができる。これにより、端子と外装フィルムとの短絡(例えば上記三層構造ラミネートフィルム中の金属製バリア層と外部接続用端子との直接接触による短絡)を未然に防止することができる。
【0008】
ここで開示される蓄電装置の好ましい一つの態様は、前記外部接続用端子表面の少なくとも前記融着面に対向する部分には、前記外装フィルムの融着面と融着可能な樹脂層が形成されており、該樹脂層中に前記絶縁性硬質材料が分散して存在することを特徴とする。
かかる構成によると、前記樹脂層の存在によって、外部接続用端子と該端子に近接する外装フィルムとの融着がより強固となり得る。また、樹脂層に分散された状態で含まれる絶縁性硬質材料により、端子と外装フィルムとの直接的な接触を防止することができる。このため、本態様の蓄電装置によると、フィルム外装体の高い密閉性が実現され、上記位置ずれに伴う不具合(短絡等)の発生を防止することができる。
【0009】
ここで開示される蓄電装置の好ましい他の一つの態様では、前記絶縁性硬質材料が平均粒径10μm以上100μm以下のセラミックビーズである。
かかる構成の硬質材料は本発明の目的を実現する分散材として好適である。本態様の蓄電装置によるとフィルム外装体の高い密閉性と上記位置ずれに起因する不具合(短絡等)の発生防止とを共に高レベルに実現することができる。
【0010】
また、本発明によって提供される蓄電装置製造方法は、正極及び負極を有する電極体ユニットと、内部に該電極体ユニットを収容するフィルム外装体と、該電極体ユニットに電気的に接続し且つ該フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面を通って一端が外部に露出する少なくとも一つの外部接続用端子とを備えたフィルム外装型蓄電装置を製造する方法である。
この方法は、前記電極体ユニット及び外部接続用端子を用意する工程と、前記外部接続用端子を前記電極体ユニットと電気的に接続する工程と、前記外部接続用端子と電気的に接続された電極体ユニットを内部に収容した状態のフィルム外装体を構築する工程とを包含する。そして、該フィルム外装体構築工程において、前記外部接続用端子の一部が該フィルム外装体を構成する相互に融着可能な対向する二つの外装フィルムの融着面間に挟まれ且つ該端子の一端が外装体の外部に露出するように該端子と外装フィルムとを配置し、該二つの外装フィルムの融着面間に挟まれた端子の周囲に絶縁性硬質材料を分散させた状態で該二つの外装フィルムを相互に融着することを包含する。
かかる構成の製造方法によると、二つの外装フィルムの融着面(即ち融着可能な面)間に挟まれた端子の周囲に上記絶縁性硬質材料を分散させることにより、フィルム外装体を構築する過程において、位置ずれによる外部接続用端子と外装フィルムとの直接的な接触を防止することができる。これにより、端子と外装フィルムとの短絡(例えば上記三層構造ラミネートフィルムの金属製バリア層と外部接続用端子との直接接触による短絡)を未然に防止することができる。このため、外部接続用端子の位置ずれの修正等、煩雑な操作を行うことなく、フィルム外装型蓄電装置を効率よく製造することができる。
【0011】
ここで開示されるフィルム外装型蓄電装置製造方法の好ましい一つの態様では、前記外部接続用端子として、前記二つの外装フィルム間に挟まれる部分の表面に前記外装フィルムの融着面と融着可能な樹脂層であって前記絶縁性硬質材料が分散して存在する樹脂層を備えた外部接続用端子を使用する。
かかる構成の外部接続用端子を使用すると、前記樹脂層の存在によって、該端子と該端子に近接する外装フィルムとの融着をより強固且つ容易に行うことができる。また、樹脂層に分散された状態で含まれる絶縁性硬質材料により、外部接続用端子と外装フィルムとの直接的な接触を容易に防止することができる。このため、本態様の方法によると、上記外部接続用端子の位置ずれに過度の注意を払うことなく、高い密閉性が実現され上記位置ずれに伴う不具合(短絡等)の発生を未然に防止しつつフィルム外装型蓄電装置を効率よく製造することができる。
【0012】
ここで開示されるフィルム外装型蓄電装置製造方法の好ましい他の一つの態様では、前記硬質材料が平均粒径10μm以上100μm以下のセラミックビーズである。
かかる構成の硬質材料は本発明の目的を実現する分散材として好適であり、本態様の蓄電装置製造方法によるとフィルム外装体の高い密閉性と位置ずれに伴う不具合(短絡等)の発生防止とを共に実現しつつ効率よくフィルム外装型蓄電装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば絶縁性硬質材料の種類と形状)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば電極体ユニットの構成や電解質の種類、外装フィルムの接着方法その他フィルム外装体の構築方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
本発明によって提供されるフィルム外装型蓄電装置としては、フィルム外装体から外方に引き出された少なくとも一つ(典型的には一対又は二対以上の正極端子及び負極端子)の外部接続用端子(リード端子)とフィルム外装体を構成する二つの外装フィルム(物理的に二枚の別個独立した外装フィルムである必要はなく融着面を挟んで対向する二つの外装フィルム部分をいう。)との間に適当な絶縁性硬質材料を分散状態で有するものであればよく、蓄電装置の種類、電極体ユニットの性状等に特に制限はない。
本発明が適用される典型的なものに、種々のフィルム外装型電池(一次電池、二次電池)が挙げられる。蓄電装置内に収容される電極体ユニットは一つに限られず、二以上の電極体ユニットが一つのフィルム外装体に収容されたもの(典型的には組電池)でもよい。
ここで開示されるフィルム外装型電池その他の蓄電装置に搭載される電極体ユニットは、所定の電力を貯蔵及び放出し得る蓄電素子構成要素(或いは発電素子構成要素ともいえる)たり得るものであれば特に限定されない。典型的な蓄電素子としては、種々の形態の一次電池(例えばリチウム一次電池、マンガン電池)、二次電池(例えばリチウム二次電池、ニッケル水素電池)、或いはキャパシタ(例えば電気二重層キャパシタ)を挙げることができる。例えば、リチウム二次電池等で使用されるような、シート形状の正極及び負極をセパレータとともに捲回して成る電極体ユニット又はシート形状の正極、負極及びセパレータを複数積層して成る電極体ユニットは、ここで開示されるフィルム外装型蓄電装置(フィルム外装型電池)を構成する電極体ユニットの好ましい一典型例である。フィルム外装型蓄電装置の電極体ユニットの形状やサイズには特に制限はなく、所望の形態、サイズをとり得る。
また、外部の電気回路と接続するための外部接続用端子は、種々の形態をとり得る。例えば、電極体ユニットを構成するアルミニウム製正極及び銅製負極に、それぞれ、薄板形状のアルミニウム製外部接続用正極端子及び銅製外部接続用負極端子が接続される。
【0015】
本発明のフィルム外装型蓄電装置のフィルム外装体それ自体を構成する外装フィルム(即ちフィルム外装体を構成する封止用フィルム)としては、この種のフィルム外装型蓄電装置(例えば二次電池)の外装体を構成するものであれば特に限定することなく用いることができる。例えば、リチウム二次電池等のフィルム外装体を構成するものとして従来広く使用されているラミネートフィルムが挙げられる。好ましくは高融点樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)系樹脂)から構成された外面(保護)層と、金属箔(例えばアルミニウム、スチール)から構成されたバリア層(ガスや水分を遮断するバリア層)と、熱融着性樹脂(比較的低融点である樹脂、例えばエチレンビニルアセテート、或いはポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂)から構成された融着層との三層構造を有するラミネートフィルムを好適に用いることができる。このような三層構造ラミネートフィルムは、適当な加熱圧着手段(例えばヒートプレス機)を使用することによって、それら融着層同士を容易に融着(接着)することができる。
【0016】
次に、本発明に係る絶縁性硬質材料について説明する。絶縁性硬質材料としては、二つの外装フィルム間の融着面において分散状態を維持しつつ、外部接続用端子と外装フィルム(典型的には三層構造ラミネートフィルム)との直接的な接触(例えば三層構造ラミネートフィルムの金属製バリア層と端子との接触)を防止し得る種々の形状・材質のものを使用することができる。
分散させ易いという観点からは微細なビーズ形状(特に球形状ビーズ)のものが好ましく、外装フィルム同士の熱融着時にも影響され難いという観点からは耐熱性の高い樹脂製(例えば融点が300度以上)或いはセラミック製のものが好ましい。例えば、アルミナ、ジルコニア、耐熱性シリカ、窒化珪素、炭化珪素、サイアロン等のセラミック製或いはポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、アラミド等の耐熱性高分子製の絶縁性硬質材料が特に好ましい。これら材質から成るビーズ状硬質材料を使用する場合、その粒径は蓄電装置及び/又は外部接続用端子のサイズや形状によって異なり得るが、例えば端子の厚さが1〜3mm程度である場合、絶縁性硬質材料の平均粒径は10〜100μm程度が好ましく、20〜50μm程度が特に好ましい。平均粒径が100μmよりも大きすぎると、外装フィルムの融着面において当該硬質材料による凹凸が生じるため、外観が悪くなる。他方、平均粒径が10μmよりも小さすぎると所望する効果を奏し得ない。
【0017】
このような硬質材料を相互に融着可能な外装フィルム同士の融着面(具体的には実際に融着される前の表面)に配置する手段は種々あり得る。例えば、外装フィルムの融着面に当該硬質材料を分散した状態で含む液剤を付与(例えば吹き付け或いは塗布)することができる。
好ましくは、外部接続用端子における外装フィルム融着面と対向する表面に、該融着面と融着可能な樹脂層(タブ樹脂とも呼称される。)であって適当な絶縁性硬質材料を分散した状態で含む樹脂層を形成しておく。かかる樹脂層は、一般的な射出成形法、押出成形法によって金属製端子の表面に容易に形成することができる。或いは、端子の表面(好ましくは凹み)に溶融樹脂を単に流し込むことによっても容易に形成することができる。
このような樹脂層付き外部接続用端子を用いることによって、外装フィルムの融着面と外部接続用端子の樹脂層(タブ樹脂)とを融着(典型的には熱融着)したときに該融着樹脂層中(即ち端子の周囲)に絶縁性硬質材料を好適に分散した状態で配置することができる(後述の実施例参照)。
なお、樹脂層を構成する樹脂(タブ樹脂)の種類は、対応する外装フィルム(融着面)側の構成樹脂の種類によって適宜異なり得るが、当該外装フィルム(融着面)側の構成樹脂と同様の樹脂が好ましい。例えば外装フィルムの融着面がポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で構成されている場合、外部接続用端子の樹脂層(タブ樹脂)も同じポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で構成されていることが好ましい。
【0018】
而して、かかる硬質材料が融着時に外部接続用端子の周囲に分散・配置されている結果、外部接続用端子が所定位置から多少ずれて配置された場合であっても当該硬質材料の介在により外装フィルム(典型的には三層構造ラミネートフィルム)と外部接続用端子との直接的な接触を防止し、短絡等の不具合が発生することを未然に防止することができる。
かかる外部接続用端子の樹脂層(タブ樹脂)に含まれる硬質材料(例えば耐熱性樹脂又はセラミック製のビーズ)の含有率は特に限定されないが、外部接続用端子の位置ずれに伴う不具合の発生防止とフィルム外装体周縁部における高い密閉性の確保という観点からは、樹脂層全体(体積比率)の1〜50vol%程度が硬質材料であることが好ましく、5〜30vol%程度であることが特に好ましい。
【0019】
ここで開示される蓄電装置は、上述の絶縁性硬質材料(分散材)を用いること以外、従来公知の製法によって製造することができる。即ち、所望する性状の電極体ユニットと外部接続用端子とを用意し、それら外部接続用端子及び電極体ユニットを電気的に接続し、得られた外部接続用端子付き電極体ユニットが内部に収容された状態のフィルム外装体を構築する。このとき、適当な絶縁性硬質材料が周囲に分散した状態の外部接続用端子を対向する二つの外装フィルム間に挟み込み、当該対向する二つのフィルムを互いに融着させる。これにより、上記位置ずれに因る不具合の発生を未然に防止した本発明に係るフィルム外装型蓄電装置を得ることができる。
【0020】
以下、本発明に関する好適な一実施例を図1〜図3を参照しつつ説明するが、本発明をかかる図面に示すものに限定することを意図したものではない。
【0021】
本実施例はフィルム外装型蓄電装置1の一典型例として、フィルム外装型リチウム二次電池を示したものである。図1は本実施例に係るフィルム外装型蓄電装置1の概略を模式的に示す斜視図である。図2は、フィルム外装体2を取り除いた状態の斜視図である。
図1及び図2に示すように、本実施例に係るフィルム外装型蓄電装置1は、大まかにいって、扁平なフィルム外装体2と、当該フィルム外装体2の内部に収容される扁平形状の電極体ユニット4と、該電極体ユニット4に電気的に接続された一対の薄板状外部接続用端子である正極リード端子30及び負極リード端子40とから構成されている。
【0022】
フィルム外装体2は、この種の一般的なフィルム外装型扁平電池と同様、重ね合わされた二つの外装フィルム10,20によって構成される。本実施例に係る外装フィルム10,20は従来の一般的な三層構造ラミネートフィルムである。即ち、この外装フィルム10,20は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の外面層(保護層)と、ポリプロピレン樹脂(融点100〜200℃)から構成される薄い融着層12,22と、当該外面相と融着層12,22との間に存在するアルミニウム箔から成るバリア層と、の三層構造で構成される。
外装フィルム10,20の中央部には、融着層12,22側からみて凹部3が形成されている。この凹部3が向かい合うようにして二つの外装フィルム10,20(融着層12,22側)を重ね合わせることによって、フィルム外装体2の内側に電極体ユニット収容空間が形成される。そして、重ね合わせた二つの外装用フィルム10,20の周縁部分10A,20Aを一般的な加熱手段(例えばヒートプレス機)を用いて熱融着し、当該周縁部分10A,20Aを封止することによって、図1に示すような電極体ユニット4を内部に収容した状態のフィルム外装体2が構築される。
【0023】
図2に示すように本実施例に係る電極体ユニット4は、アルミニウム製正極シート(正極)6と銅製負極シート(負極)8をセパレータと共に積層し、さらに当該正極シート6と負極シート8とをややずらしつつ捲回して作製される一般的な捲回型電極体ユニット4である。かかる捲回型電極体ユニット4の捲回方向に対する横方向において、上記のようにややずらしつつ捲回された結果として、正極シート6及び負極シート8の端の一部がそれぞれ捲回コア部分7(即ち正極シート6と負極シート8とセパレータとが密に捲回されて成る素子を構成する主要部分)から外方にはみ出ている。かかるはみ出し部分36,46には、正極リード端子30及び負極リード端子40がそれぞれ別方向に延びるようにして種々の接合手段(ここでは超音波接合)によって電気的(通電可能)に接続されている。なお、正極リード端子30はアルミニウム製であり、厚さ約1mmの薄板形状に成形されている。他方、負極リード端子30は銅製であり、正極と同様、厚さ約1mmの薄板形状に成形されている。
【0024】
図2に示すように、これら正負極リード端子30,40の表面の一部分であって、上記フィルム外装体2の電極体ユニット収容空間に電極ユニット4が収容された際の上記フィルム周縁部分10A,20Aに配置される部分には、樹脂層(タブ樹脂)32,42が一般的な射出成形法によって予め形成されている。本実施例に係る樹脂層32,42は、上記外装フィルム10,20の融着層12,22と同様、ポリプロピレン樹脂を主体として構成されている。そして、該樹脂中には平均粒径が約20μmのアルミナ製ビーズBが分散した状態で混入されている。本実施例では、該アルミナビーズBの含有率は、樹脂層(タブ樹脂)32,42全体の凡そ20vol%である。
【0025】
而して、図1中のIII−III線断面図(模式図)である図3に示すように、フィルム外装体2を構築する際、これら正負極リード端子30,40の樹脂層32,42が対向する二つの外装フィルム10,20の周縁部分10A,20A(即ち外装フィルム融着面12,22の間)に挟まれた状態で、当該重ね合わせた二つの外装用フィルム10,20の周縁部分10A,20Aを一般的な加熱手段(例えばヒートプレス機)を用いて熱融着する。これにより、正負極リード端子30,40の樹脂層32,42を構成するポリプロピレン樹脂と外装フィルム10,20の融着面12,22を構成するポリプロピレン樹脂とが溶融するとともに融着し、結果、フィルム外装体2周縁部の封止が成される。
このとき、正負極リード端子30,40の樹脂層32,42には、上述のアクリルビーズBが分散しているため、熱融着する際に正負極リード端子30,40の位置ずれが生じた場合であっても当該ビーズBの介在によって正負極リード端子30,40と外装フィルム10,20との直接的な接触、具体的には加熱により溶融した状態の融着層を介さない金属製バリア層(即ち短絡を起こし得る導電層)との接触を防止することができる。
【0026】
本実施例では、フィルム外装体2の一部において図示しない電解質注入路を確保しつつ、当該部分以外の周縁部分10A,20Aを先ず熱融着する。そして、当該電解質注入路の開口部分(即ち注入口)から電極体ユニット収容空間内に所定のリチウム二次電池用電解質を注入する。電解質の注入後、電解質注入路の部分を熱融着等によって閉塞する。これにより、フィルム外装型蓄電装置1が製造される。なお、かかる電解質注入路の形成及び電解質注入プロセスは、従来のフィルム外装型リチウム二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。なお、ここで注入される電解質は従来からリチウム二次電池の電解質として使用されるものであれば特に制限なく使用し得、本発明を特徴付けるものではない。典型的には液状(例えば非水電解液)或いはゲル状であるポリマー電解質を用いる。例えば、ジエチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒(例えばDEC:ECが7:3の質量比である混合溶媒)にリチウム塩として1mol/LのLiPFを溶解した非水電解液を好適に使用することができる。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記各実施例ではリチウム二次電池について説明したが、本発明は種々のフィルム外装型蓄電装置、例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の種類の二次電池や電気二重層キャパシタ等の各種蓄電素子にも適用することができる。電極ユニットを構成する活物質、集電体および端子ならびにセパレータ等の材質や電解液の組成等は蓄電素子の種類に応じて適当に決定され得る。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例に係るフィルム外装型蓄電装置(リチウム二次電池)を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1に示す蓄電装置のフィルム外装体を除いた状態を模式的に示した斜視図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 フィルム外装型蓄電装置(リチウム二次電池)
2 フィルム外装体
4 電極体ユニット
10,20 外装フィルム(ラミネートフィルム)
30,40 リード端子
32,42 樹脂層(タブ樹脂)
B アルミナ製ビーズ(絶縁性硬質材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有する電極体ユニットと、内部に該電極体ユニットを収容する空間が形成されたフィルム外装体と、該電極体ユニットと電気的に接続し且つ該フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面を通って一端が外部に露出する少なくとも一つの外部接続用端子と、を備えたフィルム外装型蓄電装置であって、
前記融着面において、前記外部接続用端子の周囲に絶縁性硬質材料が分散して存在することを特徴とする、フィルム外装型蓄電装置。
【請求項2】
前記外部接続用端子表面の少なくとも前記融着面に対向する部分には、前記外装フィルムの融着面と融着可能な樹脂層が形成されており、該樹脂層中に前記絶縁性硬質材料が分散して存在する、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記硬質材料が平均粒径10μm以上100μm以下のセラミックビーズである、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
正極及び負極を有する電極体ユニットと、内部に該電極体ユニットを収容するフィルム外装体と、該電極体ユニットに電気的に接続し且つ該フィルム外装体を構成する外装フィルム同士の融着面を通って一部が外部に露出する少なくとも一つの外部接続用端子とを備えたフィルム外装型蓄電装置を製造する方法であって、以下の工程:
前記電極体ユニット及び外部接続用端子を用意する工程;
前記外部接続用端子を前記電極体ユニットと電気的に接続する工程;及び
前記外部接続用端子と電気的に接続された電極体ユニットを内部に収容した状態のフィルム外装体を構築する工程、ここで前記外部接続用端子の一部が該フィルム外装体を構成する相互に融着可能な対向する二つの外装フィルムの融着面間に挟まれ且つ該端子の一端が外装体の外部に露出するように該端子と外装フィルムとを配置し、該二つの外装フィルムの融着面間に挟まれた端子の周囲に絶縁性硬質材料を分散させた状態で該二つの外装フィルムを相互に融着する;
を包含する方法。
【請求項5】
前記外部接続用端子として、前記二つの外装フィルム間に挟まれる部分の表面に前記外装フィルムの融着面と融着可能な樹脂層であって前記絶縁性硬質材料が分散して存在する樹脂層を備えた外部接続用端子を使用する、請求項4に記載の蓄電装置製造方法。
【請求項6】
前記硬質材料が平均粒径10μm以上100μm以下のセラミックビーズである、請求項4又は5に記載の蓄電装置製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−18766(P2007−18766A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196447(P2005−196447)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】