説明

フローティングキャリパ型ディスクブレーキ

【課題】 製造コストの低減を図ると共に、サポート3aの耐久性の向上を図る。
【解決手段】 サポート3aを、ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19の両端部に結合する一対のトルク受け部材20a、20bとから構成する。これら各トルク受け部材20a、20bのインナ側端面に形成したインナ側突部25の先端部で、インナ側取付部材19の第一の通孔22、22を通じてこのインナ側取付部材19の側面から突出させた部分をかしめ広げる事で、インナ側取付部材19に各トルク受け部材20a、20bをかしめ固定する。この状態で、インナ側取付部材19の、第一の通孔22、22の近傍に存在する段部36の内側面と、各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部の外側面76とを密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係るフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、自動車等の車両の制動を行なう為に利用する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の制動を行なう為のディスクブレーキとして従来から、サポートに対しキャリパを軸方向の変位を自在に支持すると共に、このキャリパのうち、ロータに関して片側のみにシリンダ及びピストンを設けたフローティングキャリパ型のものが、従来から広く知られ、実際に広く使用されている。
【0003】
このフローティングキャリパ型のものは、キャリパの保持方法及び摺動方法の違いにより種々の構造があるが、例えば、現在主流となっているピンスライド型と呼ばれる構造は、サポートに対しキャリパを、案内ピンにより変位自在に支持している。図34〜35は、この様なピンスライド型の構造のうちの特許文献1に記載されたものを示している。このピンスライド型のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、制動時には、車輪(図示せず)と共に回転するロータ1に対しキャリパ2を変位させる。車両への組み付け状態では、このロータ1の一側に隣接させる状態で設けるサポート3を、取付孔4を介して車体(図示せず)に固定する。又、このサポート3に上記キャリパ2を、上記ロータ1の軸方向に変位可能に支持している。
【0004】
この為に、上記ロータ1の回転方向に関する上記キャリパ2の幅方向両端部に一対の案内ピン5を、同じく上記サポート3の両端部に一対の案内孔6を、それぞれ上記ロータ1の中心軸に対し平行に設けている。そして、上記両案内ピン5を上記両案内孔6内に、軸方向の摺動自在に挿入している。これら両案内ピン5の基端部外周面と上記両案内孔6の開口部との間には、防塵用のブーツ7、7を設けている。
【0005】
又、上記サポート3の、上記ロータ1の周方向に離隔した両端部に、回入側、回出側両係合部8、9を、それぞれ設けている。これら各係合部8、9は、上記ロータ1の外周部を図34の上下方向に跨ぐ様に先端がU字形に屈曲しており、これら両係合部8、9にパッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11の両端部を、上記ロータ1の軸方向に摺動可能に係合させている。又、上記パッド10a、10bを跨ぐ様に、シリンダ部12と爪部13とを有するキャリパ2を配置している。又、このシリンダ部12に、インナ側(車両の幅方向内側で図34の上側)のパッド10aを上記ロータ1に対し押圧するピストン14を、液密に嵌装している。
【0006】
制動を行なう場合には、上記シリンダ部12内に圧油を送り込み、上記ピストン14により上記インナ側のパッド10aのライニング15を、上記ロータ1の内側面に、図34の上から下に押し付ける。すると、この押し付け力の反作用として上記キャリパ2が、上記両案内ピン5と上記両案内孔6との摺動に基づいて、図34の上方に変位し、上記爪部13がアウタ側(車両の幅方向外側で図34の下側)のパッド10bのライニング15を、上記ロータ1の外側面に押し付ける。この結果、このロータ1が内外両側面側から強く挟持されて、制動が行なわれる。
【0007】
上述の図34〜35に示した構造の場合には、サポート3が、ロータ1の外周部をこのロータ1の軸方向両側に跨ぐ形状となっている。この様なサポート3は、鋳造等により一体に造る場合にかなり複雑な形状になり、このサポート3の一部に機械加工を施す作業が発生する。即ち、このサポート3のインナ、アウタ両側には、上記各パッド10a、10bの両端部を係合させる為の係止部75を形成する必要があり、これら各係止部75を構成する部分に機械加工を施す必要がある。但し、上述の従来構造の場合には、サポート3の形状が複雑である為、この機械加工を施す作業が相当に手間がかかり、ディスクブレーキ全体のコストが嵩む原因となっている。
【0008】
これに対して、サポートを、ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材と、このインナ側取付部材のアウタ側に結合するトルク受け部材とにより構成し、これらインナ側取付部材とトルク受け部材とを、溶接やボルト等の締結手段により結合する事も考えられる。サポートをこの様に構成した場合には、比較的単純な形状を有する小型のトルク受け部材の一部に各パッドを係合させる部分を設ければ良く、機械加工を施す作業を容易に行なえる可能性がある。但し、インナ側取付部材とトルク受け部材とを溶接により結合する場合には、接合作業が面倒になる。又、締結手段により結合する場合には、部品点数が増える。この為、この様な構造の場合には、未だ製造コストの低減を図れると言った改良の余地がある。
【0009】
又、この様にインナ側取付部材とトルク受け部材とを溶接や締結手段により結合する構造の場合、制動時にパッドからトルク受け部材に大きな制動トルクが加わった場合に、この制動トルクが、溶接による接合部や締結手段を介して上記インナ側取付部材に受けられる。この為、制動時に上記接合部や締結手段に過大な力が加わる可能性があり、未だサポートの耐久性の向上を図れると言った改良の余地がある。
尚、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1の他に、特許文献2〜5がある。
【0010】
【特許文献1】特開平3−194224号公報
【特許文献2】特開昭54−156972号公報
【特許文献3】実開昭54−30180号公報
【特許文献4】特開2001−193769号公報
【特許文献5】実開昭57−165830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、上述の様な事情に鑑みて、製造コストの低減を図ると共に、サポートの耐久性の向上を図るべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、従来から知られているフローティングキャリパ型ディスクブレーキと同様に、サポートと、一対のパッドと、キャリパとを備える。
このうちのサポートは、車輪と共に回転するロータに隣接して車体に固定される。
又、上記一対のパッドは、このロータの軸方向両側に配置されると共に、上記サポートによりこのロータの軸方向への移動可能に案内されている。
又、上記キャリパは、上記ロータと一対のパッドとを跨ぐブリッジ部の一方に設けられた爪部と、このブリッジ部の他方に設けられてピストンが嵌装されるシリンダ部とを有する。
そして、このピストンの押し出しに伴い、上記一対のパッドを上記ロータの側面に押圧して制動を行なう。
特に、本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いては、上記サポートが、上記ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材と、このインナ側取付部材の上記ロータの周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材とを備える。又、これら各トルク受け部材のインナ側面に形成されたインナ側突部を、上記インナ側取付部材の上記ロータの周方向両端部に形成された第一の通孔に挿通させ、上記各インナ側突部の先端部でこれら第一の通孔を通じて上記インナ側取付部材のインナ側面から突出させた部分をかしめ広げる事により、上記各トルク受け部材を上記インナ側取付部材にかしめ固定した状態で、上記インナ側取付部材の、上記各第一の通孔の近傍に存在する幅方向中央側の側面を、上記各トルク受け部材の側面に密着させている。
【発明の効果】
【0013】
上述の様に構成する本発明のフローティングキャリパ型ディスクブレーキによれば、インナ側取付部材を、平板状の(ロータの軸方向に形状が変化しない)単純な形状を有する構造とする事ができると共に、トルク受け部材も単純な形状を有する構造とする事ができる為、インナ側取付部材との結合部や、各パッドから制動トルクを受ける部分に機械加工を施す作業を容易に行なえる。又、トルク受け部材を小部品とする事ができる為、このトルク受け部材を圧造により成形する事も容易に行なえる。この様にトルク受け部材を圧造により成形する場合には、トルク受け部材を構成する素材に切削加工を施す事により、このトルク受け部材を成形する場合よりも、コストをより低減できる。この結果、本発明によれば、ディスクブレーキ全体のコスト低減を図れる。
【0014】
又、本発明の場合には、各トルク受け部材とインナ側取付部材とを、インナ側突部の先端部でこのインナ側取付部材の第一の通孔から突出させた部分をかしめ広げる事によりかしめ固定している。この為、各トルク受け部材とインナ側取付部材とを結合する為に、ねじ等の締結部材を使用したり、溶接等の接合手段を使用せずに済み、短時間で且つ安価に、上記各トルク受け部材とインナ側取付部材とを結合できる。
【0015】
又、かしめ作業に伴って上記インナ側取付部材の第一の通孔の周辺部は、その肉が広がる様に変形する為、上記インナ側取付部材の、上記各第一の通孔の近傍に存在する幅方向中央側の側面と、各トルク受け部材の側面とを密着させ、互いに押し付け合う様にできる。この為、制動時に各パッドに加わった制動トルクの少なくとも一部は、各トルク受け部材のインナ側突部を介さずに、上記インナ側取付部材の各第一の通孔の近傍に存在する幅方向中央側の側面とトルク受け部材の側面との接触部を介して、上記インナ側取付部材に伝達される様になる。この結果、制動時に於けるインナ側突部に設けたかしめ部に加わる負担を軽減でき、サポートの強度を十分に確保でき、このサポートの耐久性向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、上記サポートを、上記ロータよりもアウタ側に外れた位置に配置されるアウタ側補強部材を備えたものとする。又、上記各トルク受け部材のアウタ側面に形成されたアウタ側突部を、上記アウタ側補強部材の上記ロータの周方向両端部に形成された第二の通孔に挿通させ、上記各アウタ側突部の先端部でこれら第二の通孔を通じて上記アウタ側補強部材のアウタ側面から突出させた部分をかしめ広げる事により、上記各トルク受け部材に上記アウタ側補強部材をかしめ固定する。
このより好ましい構成によれば、サポートの強度をより高くできると共に、各トルク受け部材にアウタ側補強部材を結合する為に、ねじ等の締結部材を使用したり、溶接等の接合手段を使用せずに済み、短時間で且つ安価に、上記各トルク受け部材とアウタ側補強部材とを結合できる。
【0017】
より好ましくは、請求項3に記載した様に、キャリパを、このキャリパと一対のパッドとの間に設けた支持手段により、各パッドに対するロータの軸方向への移動を可能にしつつ、サポートに対する係脱を可能に各パッドに支持する。
【0018】
このより好ましい構成の場合、各パッドをサポートに支持する事により、前述の図34〜35に示した従来構造の場合と異なり、サポートに対しキャリパをロータの軸方向に移動可能とする為に、このキャリパに結合した案内ピンとサポートに形成した案内孔とを摺動させる構造とする必要がなくなる。この為、上記案内ピンをこのキャリパに結合する為にボルトを使用したり、キャリパにこのボルトを挿通する為の通孔を形成したり、サポートに上記案内孔を形成する必要がなくなり、更に軽量で、且つ安価な構造を得られる。特に、案内孔を形成する場合には、この案内孔の内周面を精度良く加工すると言った手間がかかる加工作業が必要になるが、請求項3に記載した構成によれば、この様な作業が不要となる。
【0019】
又、より好ましくは、上記支持手段を、一対のパッドとの係合により、上記ロータの径方向外側への移動を規制された保持部材と、上記キャリパのブリッジ部に上記ロータの径方向に貫通する状態で設けられた開口部に挿通させたこの保持部材に係合して、上記キャリパの上記ロータの径方向への移動を規制する係止部材とにより構成する。
このより好ましい構成によれば、キャリパを各パッドに対しロータの軸方向への移動可能に案内する為に、このキャリパや各パッドに案内ピン挿通用の孔部を形成せずに済み、コストの低減をより図り易くなる。
【0020】
又、より好ましくは、請求項4に記載した様に、上記トルク受け部材に装着したパッドクリップにより、キャリパにロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与する。
このより好ましい構成によれば、サポートに対する各パッドのがたつきを抑える機能を有するパッドクリップにより、キャリパのがたつきを抑える事ができる。この為、このキャリパのがたつきを抑える為に、ホールドスプリング等、上記パッドクリップとは別の部材を設ける必要がなくなり、部品点数の削減を図れる。又、パッドクリップは、従来から行なわれている方法と同様の方法により、サポートにキャリパを組み付ける以前に、このサポートに容易に取り付ける事ができる。又、サポートにキャリパを組み付ける場合には、このキャリパを、サポートに装着したパッドクリップに弾力に抗して押し付けつつサポートに組み付ければ良く、このパッドクリップが脱落しない様に手で押さえる等を特に考慮する必要がない。この為、組み付け性の向上を図れる。
【0021】
又、より好ましくは、請求項5に記載した様に、上記キャリパの、ロータの周方向に関する両端部に一対の弾性部材を、このロータの外周を跨ぐ状態でこのキャリパに対し脱着自在に係止する。これと共に、これら各弾性部材をサポートに弾性的に押し付ける事により、これら各弾性部材により上記キャリパに、上記ロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与する。
このより好ましい構成によれば、各弾性部材によりキャリパのがたつきを抑える事ができると共に、ディスクブレーキの制動時でも、キャリパと弾性部材とを互いに摺接させずに済む。この為、キャリパのがたつきを抑える為に弾性部材の一部をこのキャリパに押し付けつつ摺接させる場合と異なり、この弾性部材の摺接用の加工面をキャリパに設ける必要がなくなる為、この加工面を精度良く仕上げると言った余計な加工作業が不要になる。しかも、上記キャリパに係止した弾性部材を線材製とした場合には、これら各弾性部材とサポートとの摺接部を線状にでき、サポートに対するキャリパの、ロータの軸方向への変位をより円滑に行なえる。
【実施例1】
【0022】
図1〜17は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施例1を示している。これら各図のうち、図1〜5、15はフローティングキャリパ型ディスクブレーキの完成品の状態を、図6〜14はこのディスクブレーキの組立途中の状態を、それぞれ示している。本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキは、サポート3aと、一対のパッド10a、10bと、キャリパ2aとを備える。このうちのキャリパ2aは、車輪と共に回転するロータ1と一対のパッド10a、10bとを跨ぐブリッジ部17の一方に設けられた爪部13と、このブリッジ部17の他方に設けられてピストン14が嵌装されるシリンダ部12とを有する。又、上記両パッド10a、10bは、ロータ1の軸方向両側に配置した状態で、上記サポート3aに、このロータ1の軸方向(図2の左右方向、図3〜5、15〜17の表裏方向)の摺動を可能に案内支持している。
【0023】
特に、本実施例の場合には、上記サポート3aを、図6〜10に詳示する様に構成している。即ち、このサポート3aは、上記ロータ1よりもロータ1の軸方向でインナ側(車両の幅方向中央側で、図1、2、6、8、11〜14の右側、図3、5、7、9、15の表側、図4、16、17の裏側、図10の下側)に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19とは別の部材である、一対のトルク受け部材20a、20bとを備え、上記インナ側取付部材19のロータ1の周方向両端部にこれら両トルク受け部材20a、20bを結合固定している。このうちのインナ側取付部材19は、一定の厚さを有する鋼板等の金属板を略U字形の平板状に形成したもので、下端部に一対の取付孔4、4を、上記ロータ1の軸方向に貫通する状態で形成している。上記インナ側取付部材19は、これら一対の取付孔4、4を介して、上記ロータ1に隣接して車体に固定される。
【0024】
又、上記インナ側取付部材19の、上記ロータ1の周方向両端部に一対の結合用腕部21、21を設けている。そして、これら結合用腕部21、21の先端部に、上記ロータ1の中心軸に対し平行な一対の第一の通孔22、22を形成している。これら各第一の通孔22、22は、ロータ1の直径方向に関してこのロータ1の外周縁よりも外側に外れた位置に形成している。
【0025】
一方、上記各トルク受け部材20a、20bは、図6〜7に詳示する様に、鋼等の金属により造ったもので、これら各トルク受け部材20a、20b同士で互いに対向する内側に設けた、ロータ1の軸方向(図6の左右方向、図7の表裏方向)に長いアンカ部23a、23bと、このアンカ部23a、23bの長さ方向に関して中間部からアウタ寄り(車両の幅方向外寄りで、図1、2、6、8、11〜14の左寄り、図3、5、7、9、15の裏寄り、図4、16、17の表寄り、図10の上寄り)に亙る部分で、各トルク受け部材20a、20b同士で互いに離れる側の外側に一体成形する状態で連結した腕部24a、24bとを備える。又、これら腕部24a、24bのインナ側面(図6の右側面、図7の表側面)にインナ側突部25、25を、ロータ1の軸方向に突出形成する状態で設けている。
【0026】
又、上記各アンカ部23a、23bは、ロータ1の径方向に関する外端部である、上端部に設けた断面L字形の第一部分26と、この第一部分26のアウタ側端部でロータ1の径方向に関する内側である、下側に突出させた第二部分27とを備える。又、この第二部分27の下端部(ロータ1の径方向内端部)に、相手トルク受け部材20b(又は20a)側に突出させ、その先端部をロータ1の径方向外側に向け屈曲させて成る、断面L字形の引きアンカ部28を設けている。又、上記第一部分26の上端部に、相手トルク受け部材20b(又は20a)側に突出させた係止突部29を、長さ方向全長に亙り設けている。この構成により、上記各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部の内側に、ロータ1の径方向に離隔した互いにほぼ平行な第一、第二の内壁面30、31と、ロータ1の周方向に離隔した互いにほぼ平行な第三、第四の内壁面32、33とを有する第一の凹溝34、34が形成される。又、上記各腕部24a、24bのインナ側端部の下側面に、ロータ1の外周縁部との隙間を保っている段部35を形成している。
【0027】
それぞれが上述の様に構成する各トルク受け部材20a、20bは、次の様にして前記インナ側取付部材19に結合し、サポート3aを構成する。先ず、図9〜10に示す様に、このインナ側取付部材19の各結合用腕部21の先端部に形成した各第一の通孔22に、上記各トルク受け部材20a、20b(トルク受け部材20bに就いては図2、3、6、8等参照)に設けたインナ側突部25を挿入する。言い換えれば、各第一の通孔22と各インナ側突部25とを凹凸係合させる。これと共に、各結合用腕部21の先端部の内側面(インナ側取付部材19の幅方向中央側となる面で、図9〜10の右側面)に形成した断面L字形の段部36の内側に、上記各トルク受け部材20a、20bに設けたアンカ部23a、23bのインナ側端部(図9の表側端部、図10の下端部)を進入させる。この状態で、上記段部36の上記各第一の通孔22の近傍に存在する幅方向中央側の側面である、内側面(図9〜10の右側面)と、上記各アンカ部23a、23bのインナ側端部の外側面76との間には微小な隙間を設けるか、緩く接触させる。そしてこの状態で、上記インナ側突部25の先端部で上記各第一の通孔22を通じて上記インナ側取付部材19のインナ側面よりも突出させた部分をかしめ広げる事で、かしめ部65(図2、3)を形成する事により、上記各トルク受け部材20a、20bと上記インナ側取付部材19とをかしめ固定している。又、この様にかしめ固定した状態で、このインナ側取付部材19の先端部に設けた段部36の内側面を、上記各アンカ部23a、23bのインナ側端部の外側面76に押し付け、これら内側面と外側面とを密着させている。
【0028】
この様に上記各トルク受け部材20a、20bと上記インナ側取付部材19とをかしめ固定する作業は、次の様にして行なう。先ず、図9〜10に示した状態で、各トルク受け部材20a、20bのアンカ部23a、23bのインナ側端部(図9の表側端部、図10の下端部)の、パッド10a、10bを配置する側の内側面77に治具(図示せず)を突き当てる。そして、上記インナ側突部25、25の先端部で上記各第一の通孔22から突出させた部分に押圧治具(図示せず)を押し付ける事により、この部分にかしめ部65(図2、3参照)を形成する。この様にしてかしめ部65を形成する為、各トルク受け部材20a、20bの各パッド10a、10bから制動トルクを受ける面である、内側面77の位置決め精度を良好に確保できる。又、かしめ作業に伴って前記各結合用腕部21の先端部で第一の通孔22の周辺部は広がる様に変形する。この為、上記各トルク受け部材20a、20bの内側面77に治具を突き当てる事と相俟って、上記各結合用腕部21の先端部で広がる様に変形した部分の内側面である、第一の通孔22の近傍に存在する段部36の内側面と、各トルク受け部材20a、20bを構成するアンカ部23a、23bのインナ側端部の外側面76とが密着しつつ、互いに押し付け合う様になる。
【0029】
又、この状態で、各アンカ部23a、23bのインナ側端部の断面L字形の内面と、上記各段部36の下方に連続する断面L字形の第二の段部37の内側面及び上面とにより、断面略コ字形の一対の第二の凹溝38、38(図3、15)を構成している。これら各第二の凹溝38、38は、ロータ1の径方向外端側に位置する第一の内壁面42と、この第一の内壁面42とほぼ平行な第二の内壁面である、上記第二の段部37の上面と、これら第一の内壁面42と第二の段部37の上面とにより挟まれた第三の内壁面44とを有する。そして、上記各第二の凹溝38、38に、インナ側のパッド10aを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合部である、略T字形の係合突部39、39を係合自在としている。
【0030】
更に、上記各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部に設けた第一の凹溝34、34に、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合部である、略T字形の係合突部39、39を係合自在としている。そして、上記アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた上記係合突部39、39の、パッド10bの幅方向中央側面と、前記各引きアンカ部28、28の先端部内側面である、第四の内壁面33、33とを、ロータ1の周方向に対向させる。
【0031】
上述の様に構成するサポート3aには一対のパッドクリップ40、40を、上記各第一、第二の凹溝34、38の内面と、各トルク受け部材20a、20bのこれら各凹溝34、38同士の間部分とを覆う様に装着している。上記各パッドクリップ40、40は、図8、15に詳示する様に、ステンレス鋼板等の、良好な耐食性及び弾性を有する金属板により一体に造っている。これら各パッドクリップ40、40は、非制動時に上記各パッド10a、10bがサポート3aに対しがたつくのを抑える役目を有すると共に、これら各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11と上記サポート3aとの摺動部が錆び付くのを防止する機能を有する。又、各パッドクリップ40、40の上端部に、押圧用弾性部41、41を設けている。これら各押圧用弾性部41、41は、各パッドクリップ40、40をサポート3aに装着した状態で、各トルク受け部材20a、20bの上面からその基端部が上方に延出する。この様な各押圧用弾性部41、41は、各トルク受け部材20a、20bの上面に押し付け可能な3本の脚部46、46と、これら各脚部46、46の先端部同士を連結する押圧片47、47とを備える。このうちの各脚部46、46は、上記パッドクリップ40、40の本体部48、48の上端部で装着側(各パッドクリップ40、40同士で互いに離れる側で、図15の右側)に向け曲がった部分にそれぞれの基端部を連結しており、それぞれが装着側に伸びた部分の中間部をU字形に折り返し、反装着側(各パッドクリップ40、40同士で互いに近づく側で、図15の左側)に伸びた部分の先端寄り部分を、ロータ1の径方向内側である下側且つ反装着側に向け折り曲げている。又、上記押圧片47、47は、各トルク受け部材20a、20bの全長よりも長い断面S字形で、上記各脚部46、46の先端部同士を連結している。
【0032】
この様な各パッドクリップ40、40は、サポート3aに、前記各第一、第二の凹溝34、38の内面と、各トルク受け部材20a、20bのこれら各凹溝34、38同士の間部分とを覆う様に装着する。又、この状態で、上記各押圧用弾性部41、41の各脚部46、46の下面を各トルク受け部材20a、20bの上面に押し付けると共に、各脚部46、46の先端寄り部分及び押圧片47を、各トルク受け部材20a、20bの上端部内側面(図15の左側面)から内方(図15の左方)に突出させる。これら各押圧片47は、後述する様に、サポート3aにキャリパ2aを、各トルク受け部材20a、20bの間部分に配置する様に支持した状態で、キャリパ2aの幅方向両側面及びこの両側面に設けた段部49、49の下面に弾性的に押し付ける。
【0033】
又、各パッドクリップ40、40のインナ側端部で、上記各第二の凹溝38、38の内面を覆うロータ1の径方向内端寄り(下端寄り)部分の先端部に、ロータ1の径方向外側(上側)に向け折り曲げた折り曲げ部50を設けている。そして、各パッドクリップ40、40をサポート3aに装着した状態で、各パッド10a、10bのプレッシャプレート11、11の両端部に設けた係合突部39、39を、上記各第一、第二の凹溝34、38に、上記各パッドクリップ40、40を介して、上記ロータ1の軸方向への移動を可能に係合自在としている。
【0034】
又、上記サポート3aは、前記インナ側取付部材19に設けた取付孔4、4に挿通した図示しないボルトにより、やはり図示しない懸架装置を構成するナックルに結合固定する。これにより、上記サポート3aは、ロータ1に隣接して車体に固定される。又、この状態で、このサポート3aは、このロータ1の外周部を、図2の左右方向に跨ぐ様に配置される。
【0035】
又、前記キャリパ2aは、上記サポート3aに支持した各パッド10a、10bに対し、これらキャリパ2aと各パッド10a、10bとの間に設けた支持手段51により、上記ロータ1の軸方向への移動を可能に支持している。この支持手段51は、金属板を断面略コ字形に曲げ形成すると共に、下方に開口する両端縁部を互いに近づく方向に曲げ形成する事により造った保持部材52と、この保持部材52の内側に挿通自在な係止部材である、ロックプレート53とから成る。そして、上記各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11の幅方向中央部に設けた断面略T字形の突部54を、上記保持部材52に、ロータ1の軸方向への相対移動を可能に内嵌している。又、この保持部材52を構成する底板部55の中央部に、ロータ1の軸方向に長い長孔56を形成している。又、保持部材52の開口端縁部に設けた一対の折り曲げ片74、74により、各パッド10a、10bの突部54の先端部が保持部材52の内側からロータ1の径方向内側に抜け出る事を阻止している。
【0036】
又、保持部材52に上記各プレッシャプレート11の突部54を内嵌した状態で、キャリパ2aのブリッジ部17の中央部に形成した透孔57内に保持部材52を、ロータ1の径方向に関して内方から外方に向け挿通させている。そして、この保持部材52の底板部55寄り部分を、ブリッジ部17の外面で上記透孔57の開口端軸方向両側部分に設けた溝部58の底面及び段部59の上面から外側に突出させている。そして、上記保持部材52のこの外側に突出させた部分の内側に、ブリッジ部17の外面に載置した上記ロックプレート53を、ロータ1の軸方向に挿入している。このロックプレート53は、金属板製で、図14に詳示する様に、本体部60と、本体部60の幅方向両側縁の長さ方向一端寄り部分(図14の左端寄り部分)に同方向に曲げ形成した一対の腕部61、61と、この本体部60の長さ方向一端縁(図14の左端縁)に設けた断面L字形の折り曲げ片62とを備える。又、本体部60の中央部に形成したロータ1の軸方向に長いコ字形の切り欠き63の内側部分の先端部をロータ1の径方向外側に曲げ形成する事により、係止突部64を設けている。
【0037】
そして、ブリッジ部17の外面の溝部58の底面及び段部59の上面から突出させた、保持部材52の底板部55寄り部分の内側にロックプレート53をロータ1の軸方向(図14の左右方向)に挿入している。又、この状態で、このロックプレート53の長さ方向両端部を、上記溝部58の底面及び段部59の上面に掛け渡している。即ち、上記本体部60の先端部下面をこの段部59の上面に当接させると共に、上記折り曲げ片62を上記溝部58の底面に当接させている。この構成により、ロックプレート53は、キャリパ2aに対し、ロータ1の径方向内方(図14の下方)への移動を規制されると共に、保持部材52に係合される。
【0038】
更に、ロックプレート53に形成した係止突部64を、保持部材52に形成した長孔56に係合させる事により、上記ロックプレート53が保持部材52の内側からロータ1の軸方向に不用意に抜け出す事を阻止している。ロックプレート53を保持部材52の内側から取り出す場合には、このロックプレート53の係止突部64の先端部を、ロータ1の径方向内側に弾性変形させ、長孔56内から抜け出させた状態で、保持部材52の内側から上記ロックプレート53をロータ1の軸方向に引き抜く。この様にロックプレート53を保持部材52から引き抜く事により、サポート3aに対しキャリパ2aを、ロータ1の径方向外側(図14の上方)に取り外す事が可能になる。この様に、キャリパ2aは、上記保持部材52とロックプレート53とから成る支持手段51により、各パッド10a、10bに対するロータ1の軸方向への移動を可能にしつつ、上記サポート3aに対する係脱を可能に上記各パッド10a、10bに支持される。
【0039】
又、この状態では、サポート3aに装着したパッドクリップ40、40の先端部に設けた押圧片47の先端寄り部分が、上記キャリパ2aの幅方向両側面に設けた段部49の下面に、ロータ1の径方向外側に弾性的に押し付けられる。更に、上記押圧片47の更に先端寄り部分が、上記キャリパ2aのロータ1の周方向側面にこの周方向に弾性的に押し付けられる。そして、この構成により、上記押圧片47がキャリパ2aに、上方且つロータ1の周方向に向いた弾力を付与する。この結果、キャリパ2aは、サポート3aに対しロータ1の径方向外側に弾性的に引き上げられると共に、キャリパ2aに載置したロックプレート53と保持部材52との係合、及び、この保持部材52と各プレッシャプレート11の幅方向中央部に設けた突部54との係合により、キャリパ2aのロータ1の径方向への変位が規制される。又、この状態で、各パッド10a、10bのプレッシャプレート11の両端部に設けた各係合突部39、39の上側面が、各パッドクリップ40、40を介して、各第一、第二の凹溝34、38の第一の内壁面30、42に弾性的に押し付けられる。そして、各パッド10a、10bがサポート3aに対し、ロータ1の軸方向へ移動する事が可能となる。又、この状態で、各パッド10a、10bのプレッシャプレート11に設けた係合突部39、39の、ロータ1の径方向内側面(下側面)と、第一の凹溝34を構成する第二の内壁面31、及び、第二の凹溝38を構成する第二の段部37の上面を覆うパッドクリップ40、40の上側面との間には、僅かな隙間が存在する。この構成により、キャリパ2aはサポート3a及び各パッド10a、10bに対し、ロータ1の軸方向への移動を可能にがたつきなく支持される。
【0040】
上述の様に構成する本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキの場合、インナ側取付部材19を、平板状の(ロータ1の軸方向に形状が変化しない)単純な形状を有する構造とする事ができると共に、各トルク受け部材20a、20bも単純な形状を有する構造とする事ができる為、インナ側取付部材19との結合部や、各パッド10a、10bから制動トルクを受ける部分に機械加工を施す作業を容易に行なえる。又、各トルク受け部材20a、20bを小部品とする事ができる為、これら各トルク受け部材20a、20bを圧造により成形する事も容易に行なえる。この様に各トルク受け部材20a、20bを圧造により成形する場合には、本実施例の場合と異なり、各トルク受け部材を一部に切削加工を施す事により造る場合よりも、コストをより低減できる。この結果、本発明によれば、ディスクブレーキ全体のコスト低減を図れる。
【0041】
又、本実施例の場合には、各トルク受け部材20a、20bとインナ側取付部材19とを、インナ側突部25、25の先端部でこのインナ側取付部材19の第一の通孔22から突出させた部分をかしめ広げる事によりかしめ固定している。この為、各トルク受け部材20a、20bとインナ側取付部材19とを結合する為に、ねじ等の締結部材を使用したり、溶接等の接合手段を使用せずに済み、短時間で且つ安価に、上記各トルク受け部材20a、20bとインナ側取付部材19とを結合できる。
【0042】
又、かしめ作業に伴って上記インナ側取付部材19の第一の通孔22の周辺部は、広がる様に変形する為、上記インナ側取付部材19の、上記各第一の通孔22の近傍に存在する段部36の内側面と、各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部の外側面76とを密着させ、互いに押し付け合う様にできる。この為、制動時に各パッド10a、10bに加わった制動トルクの少なくとも一部は、各トルク受け部材20a、20bのインナ側突部25、25を介さずに、上記インナ側取付部材19の各第一の通孔22の近傍に存在する段部36の内側面と各トルク受け部材20a、20bのインナ側端部の外側面76との接触部を介して、上記インナ側取付部材19に伝達される様になる。この結果、制動時に於けるインナ側突部25、25に設けたかしめ部65、65に加わる負担を軽減でき、サポート3aの強度を十分に確保でき、このサポート3aの耐久性向上を図れる。
【0043】
又、本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキの制動時には、アウタ側のパッド10bにロータ1から加わる制動トルクが、車両の前進時にロータ1の回転方向(図2〜5、16、17に矢印ロで示す方向)前側となる回出側のトルク受け部材20aでサポート3aに受けられるだけでなく、ロータ1の回転方向後側となる回入側のトルク受け部材20bででも、上記制動トルクがサポート3aに受けられる。即ち、車両の前進時に、制動すべく各パッド10a、10bがロータ1の両側面に押し付けられると、各パッド10a、10bがロータ1の回転方向に引き摺られる。そして、上記制動トルクが比較的小さい場合には、図16に略示する様に、上記各パッド10a、10bのプレッシャプレート11の他端部(図3の左端部、図4、16の右端部)に設けた係合突部39のロータ1の回転方向前側面が、上記回出側のトルク受け部材20aの第一、第二の凹溝34、38(第二の凹溝38に就いては図3、4、15参照)の、ロータ1の回転方向前側面となる第三の内壁面32、44(第三の内壁面44に就いては図3、4、15参照)に押し付けられる。そして、上記回入側、回出側の各トルク受け部材20a、20bのうち、回出側のトルク受け部材20aだけで、上記制動トルクがサポート3aに受けられる。この際、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の一端部(図16の左端部)に設けた係合突部39のロータ1の回転方向前側面と、上記回入側のトルク受け部材20bに設けた引きアンカ部28の内面である第四の内壁面33との間には、僅かな隙間dが存在する。
【0044】
これに対して、上記制動トルクが比較的大きくなると、図17に略示する様に、上記各パッド10a、10bのプレッシャプレート11の他端部(図3の左端部、図4、17の右端部)に設けた係合突部39のロータの回転方向前側面が、上記回出側のトルク受け部材20aに設けた第一、第二の凹溝34、38(第二の凹溝38に就いては図3、4、15参照)の第三の内壁面32、44(第三の内壁面44に就いては図3、4、15参照)に、強い力で押し付けられる。この結果、サポート3aの回出側部分が大きく変形し、各パッド10a、10bがロータ1の回転方向前側に大きく移動する。この結果、これら各パッド10a、10bのうち、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の一端部(図17の左端部)に設けた係合突部39のロータの回転方向前側面が、上記回入側のトルク受け部材20bに設けた引きアンカ部28の先端部の内面である、第四の内壁面33に押し付けられる。そして、回入側、回出側のトルク受け部材20a、20bのうち、回出側のトルク受け部材20aで制動トルクが受けられるだけでなく、回入側のトルク受け部材20bの引きアンカ部28ででも、この制動トルクがサポート3aに受けられる。
【0045】
この結果、上記制動トルクを、回出側と回入側との両トルク受け部材20a、20bで分担して受け持つ事ができ、上記サポート3aの一部に集中して過大な制動トルクが加わる事を防止でき、このサポート3aの変形を十分に抑える事ができる。しかも、本実施例の様に、各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部同士を連結する補強部を設けない場合でも、サポート3aの変形を抑える事ができる為、サポート3aの変形を抑えつつ軽量化を図る事が可能になる。
【0046】
しかも、本実施例の場合には、サポート3aを、ロータ1よりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材19と、このインナ側取付部材19のロータ1の周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材20a、20bとから構成している。又、これら各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部に引きアンカ部28、28を、それぞれ設けている。この為、各トルク受け部材20a、20bを小部品とする事ができ、これら各トルク受け部材20a、20bが引きアンカ部28、28を有する複雑な形状となるのにも拘らず、引き抜き、押し出し成形等による異形成形により、上記各引きアンカ部28、28を形成する作業を行ない易くなる。これに対して、本実施例の場合と異なり、一体形状の大型のサポートの一部に引きアンカ部を形成する場合には、切削加工により引きアンカ部を形成する必要があり、加工時間が長くなるだけでなく、狭い空間に切削工具の刃先を入れなければならず、加工作業が面倒になる。本実施例の場合には、この様な不都合をなくせる。この結果、本実施例によれば、安価且つ軽量な構造で、制動時のサポート3aの変形を十分に抑える事ができる。
【0047】
又、本実施例の場合には、キャリパ2aと一対のパッド10a、10bとの間に設けた、保持部材52とロックプレート53とから成る支持手段51により、各パッド10a、10bに対するキャリパ2aのロータ1の軸方向への移動を可能にしつつ、このキャリパ2aを、サポート3aに対する係脱を可能にこれら各パッド10a、10bに支持している。この為、本実施例の様に、各パッド10a、10bをサポート3aに支持する事により、前述の図34〜35に示した従来構造の場合と異なり、サポートに対しキャリパをロータの軸方向に移動可能とする為に、キャリパに結合した案内ピンとサポートに形成した案内孔とを摺動させる構造とする必要がなくなる。この為、上記案内ピンをキャリパに結合する為にボルトを使用したり、キャリパにこのボルトを挿通する為の通孔を形成したり、サポートに上記案内孔を形成する必要がなくなり、更に軽量で、且つ安価な構造を得られる。
【0048】
特に、本実施例の場合には、上記保持部材52が、一対のパッド10a、10bとの係合により、上記ロータ1の径方向外側への移動を規制されている。これと共に、上記ロックプレート53は、上記キャリパ2aのブリッジ部17に上記ロータ1の径方向に貫通する状態で設けられた透孔57に挿通させた保持部材52の底板部55寄り部分に係合させて、上記キャリパ2aの、上記ロータ1の径方向への移動を規制している。この為、上記各パッド10a、10bに対してキャリパ2aを、このロータ1の軸方向への移動可能に案内する為に、このキャリパ2aや各パッド10a、10bに案内ピン挿通用の孔部を形成せずに済み、コストの低減をより図り易くなる。
【0049】
又、本実施例の場合には、上記各トルク受け部材20a、20bを覆う状態でこれら各トルク受け部材20a、20bに装着したパッドクリップ40、40により、キャリパ2aにロータ1の径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与している。この為、サポート3aに対する各パッド10a、10bのがたつきを抑える機能を有する上記パッドクリップ40、40により、キャリパ2aのがたつきを抑える事ができる。この為、このキャリパ2aのがたつきを抑える為に、ホールドスプリング等、上記パッドクリップ40、40とは別の部材を設ける必要がなくなり、部品点数の削減を図れる。又、パッドクリップ40、40は、従来から行なわれている方法と同様の方法により、サポート3aにキャリパ2aを組み付ける以前に、このサポート3aに容易に取り付ける事ができる。又、サポート3aにキャリパ2aを組み付ける場合には、このキャリパ2aを、サポート3aに装着したパッドクリップ40、40に弾力に抗して押し付けつつサポート3aに組み付ければ良く、これらパッドクリップ40、40が脱落しない様に手で押さえる等の余計な配慮を、特に考慮する必要がない。この為、組み付け性の向上を図れる。
【実施例2】
【0050】
次に、図18〜25は、請求項1〜4に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例の場合には、サポート3bが、ロータ1(図2〜5参照)よりもアウタ側(図18〜20、22〜25の表側、図21の上側)に外れた位置に配置されるアウタ側補強部材78を備える。そして、一対のトルク受け部材20a、20bのアウタ側端部同士を、上記アウタ側補強部材78により連結している。このアウタ側補強部材78は、図19に詳示する様に、一定の厚さを有する鋼板等の金属板を曲げ形成する事により一体に造ったもので、一端寄り部分(図19の裏寄り部分)のロータ1の周方向に関する両端部に、一対の結合用腕部79、79を設けている。又、これら各結合用腕部79、79の先端部(上端部)に、ロータ1の中心軸に対し平行な一対の第二の通孔80、80を形成している。これら各第二の通孔80、80は、ロータ1の直径方向に関してこのロータ1の外周縁よりも外側に外れた位置に形成している。又、上記アウタ側補強部材78の各結合用腕部79、79の内側面(サポート3bの幅方向中央側となる面)の上端寄り部分に段部81、81を、それぞれ形成している。又、上記アウタ側補強部材78の他端部(図19の表側端部)に、ロータ1の外径側にU字形に曲げ加工する事により、補強部82を設けている。
【0051】
一方、本実施例の場合には、上記各トルク受け部材20a、20bに設けたアンカ部23a、23bのアウタ側端部に、上述の実施例1の場合と異なり、引きアンカ部28を有する第二部分27(図1等参照)を設けていない。この為、上記各アンカ部23a、23bは、長さ方向全長に亙り、断面L字形に形成される。又、上記各トルク受け部材20a、20bに設けた腕部24a、24bのアウタ側面で、上記アウタ側補強部材78に設けた各第二の通孔80、80と整合する部分にアウタ側突部83、83を、ロータ1の軸方向に突出形成する状態で設けている。そしてインナ側取付部材19に上記各トルク受け部材20a、20bを、これら各トルク受け部材20a、20bに設けたインナ側突部25によりかしめ固定した状態で、これら各トルク受け部材20a、20bのアウタ側突部83、83を、上記アウタ側補強部材78に設けた第二の通孔80、80に挿通させる。この状態で、このアウタ側補強部材78の各結合用腕部79、79の上端寄り部分に設けた段部81、81の内側に、上記各トルク受け部材20a、20bを構成するアンカ部23a、23bのアウタ側端部を進入させる。そして、上記各アウタ側突部83、83のアウタ側端部で、上記アウタ側補強部材78の第二の通孔80、80を通じてこのアウタ側補強部材78のアウタ側面よりも突出させた部分をかしめ広げる事で、かしめ部84、84を形成する事により、上記アウタ側補強部材78と上記アウタ側補強部材78とをかしめ固定している。又、この状態で、上記アウタ側補強部材78の上端寄り部分に設けた段部81、81の内側面(サポート3bの幅方向中央側の面)を、上記各アンカ部23a、23bのアウタ側端部の外側面85、85に押し付け、これら内側面と外側面とを密着させている。
【0052】
この様に各トルク受け部材20a、20bとアウタ側補強部材78とをかしめ固定する作業は、上記各トルク受け部材20a、20bとインナ側取付部材19とをかしめ固定する場合と同様にして行なう。この為、各トルク受け部材20a、20bの各パッド10a、10bから制動トルクを受ける面である、アンカ部23a、23bの内側面77の位置決め精度を良好に確保できる。又、上記アウタ側補強部材78の各結合用腕部79、79の先端部で広がる様に変形した部分の内側面である、第二の通孔80、80の近傍に存在する段部81、81の内側面と、各トルク受け部材20a、20bを構成するアンカ部23a、23bのアウタ側端部の外側面85、85とが密着しつつ、互いに押し付け合う様になる。
【0053】
又、この状態で、各アンカ部23a、23bのアウタ側端部の断面L字形の内面と、上記アウタ側補強部材78の各段部81、81の下方に連続する断面L字形の第二の段部86、86の内側面及び上面とにより、断面略コ字形の一対の第一の凹溝87、87(図20等)を構成している。これら各第一の凹溝87、87は、ロータ1の径方向外端側に位置する第一の内壁面88と、この第一の内壁面88とほぼ平行な第二の内壁面である、上記第二の段部86の上面と、これら第一の内壁面88と第二の段部86の上面とにより挟まれた第三の内壁面89とを有する。そして、上記各第一の凹溝87、87に、アウタ側のパッド10bを構成するプレッシャプレート11の両端部に設けた係合部である、略T字形の係合突部39、39を、サポート3bに装着したパッドクリップ40、40を介して係合自在としている。
【0054】
上述の様に構成する本実施例の場合には、各トルク受け部材20a、20bのアウタ側端部同士を連結するアウタ側補強部材78を設けている為、サポート3bの強度をより高くできると共に、各トルク受け部材20a、20bにアウタ側補強部材78を結合する為に、ねじ等の締結部材を使用したり、溶接等の接合手段を使用せずに済み、短時間で且つ安価に、上記各トルク受け部材20a、20bとアウタ側補強部材78とを結合できる。 その他の構成及び作用に就いては、上述の実施例1の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
尚、本実施例の場合には、インナ側取付部材19に各トルク受け部材20a、20bをかしめ固定した後に、これら各トルク受け部材20a、20bにアウタ側補強部材78を結合固定している。但し、本実施例の場合と異なり、各トルク受け部材20a、20bにアウタ側補強部材78を結合固定した後に、インナ側取付部材19を結合固定する事もできる。
【実施例3】
【0055】
次に、図26〜33は、請求項1、3、5に対応する、本発明の実施例3を示している。本実施例の場合には、上述の各実施例の場合と異なり、サポート3aを構成する各トルク受け部材20a、20bに装着したパッドクリップ40a、40aに、押圧用弾性部41(図1等参照)を設けていない。その代わりに本実施例の場合には、キャリパ2aの幅方向(図26、29、31〜33の左右方向、図27の上下方向)両端部の下側面に、図30に詳示する様な一対の押圧用スプリング68、68を装着し、これら各押圧用スプリング68、68をサポート3aに弾性的に押し付けている。これら各押圧用スプリング68、68は、ばね鋼等の金属製の線材製で、直線状の基部69と、この基部69の両端に連結した一対の脚部70、70と、これら各脚部70、70の一端にそれぞれの基端を連結した略U字形の押圧部71、71とから成る。このうちの各脚部70、70は、上記基部69の両端に連結してハ字形に広がった後、この基部69の長さ方向と直交する方向(図30の下方)に向け湾曲している。又、上記各押圧部71、71の両端は互いにハ字形に広がっており、先端部は上記基部69側(図30の上側)に向いている。
【0056】
そして、図27、32に示す様に、上記キャリパ2aの幅方向(図27の上下方向)両端部下側面の、ロータ1を跨ぐ両側位置(図27の左右方向両側位置)に形成した係止孔72、72に、上記各押圧用スプリング68、68の両端部を、このロータ1の外周を跨ぐ状態で脱着自在に係止している。この状態で、上記基部69、69は、上記キャリパ2aの幅方向両側面から側方に突出している。
【0057】
この様に押圧用スプリング68、68を係止したキャリパ2aは、次の様にしてサポート3aに支持する。即ち、このキャリパ2aに係止した押圧用スプリング68、68の基部69、69を、サポート3aを構成する各トルク受け部材20a、20bのアンカ部23a、23bの上面に形成した段部73、73の上面、及び、これら各段部73、73の内側面(キャリパ2a側の面)に弾性的に押し付けつつ係止する。この為、これら各押圧用スプリング68、68は、自由状態から撓んだ状態になる。そして、これら各押圧用スプリング68、68の押圧部71、71の先端寄り部分により、上記各係止孔72、72に、キャリパ2aの幅方向中央側に向いた弾力を付与する。又、上記押圧部71、71の中間部により、上記キャリパ2aの下側面で係止孔72、72の開口周辺部を、上方に弾性的に押圧する。そして、上記各押圧用スプリング68、68により上記キャリパ2aに、上記ロータ1の径方向外側(上側)且つ周方向に向いた弾力を付与する。又、各パッド10a、10bを構成するプレッシャプレート11、11に設けた突部54(図4、5、11〜13等参照)に嵌合させた保持部材52の、底板部55寄り部分で、上記キャリパ2aの透孔57から外方に突出させた部分の内側に、ロックプレート53を挿通させ、このキャリパ2aが各パッド10a、10bに対しロータ1の径方向外側へ移動する事を阻止する。
【0058】
上述の様に構成する本実施例のフローティングキャリパ型ディスクブレーキによれば、各押圧用スプリング68、68によりキャリパ2aのがたつきを抑える事ができると共に、ディスクブレーキの制動時でも、キャリパ2aと各押圧用スプリング68、68とを互いに摺接させずに済む。この為、キャリパ2aのがたつきを抑える為にパッドスプリング等の弾性部材の一部をこのキャリパ2aに押し付けつつ摺接させる場合と異なり、キャリパ2aにこの弾性部材の摺接用の加工面を設ける必要がなくなり、この加工面を精度良く仕上げると言った余計な加工作業が不要になる。しかも、本実施例の様に、上記各押圧用スプリング68、68を線材製とした場合には、これら各押圧用スプリング68、68の基部69、69とトルク受け部材20a、20bの段部73、73の上面及び内側面との摺接部が線状となる為、この摺接部の面積を小さくできる。この為、サポート3aに対するキャリパ2aの、ロータ1の軸方向への変位をより円滑に行なえる。
その他の構成及び作用に就いては、前述の図1〜17に示した実施例1の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
尚、本実施例に於いて、各押圧用スプリング68、68は、キャリパ2aに、ロータ1の径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与できるものであれば良く、その押圧部の位置等を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例1のディスクブレーキを、ロータを省略した状態で示す斜視図。
【図2】実施例1のディスクブレーキをロータの外径側から見た図。
【図3】図2の右方から見た図。
【図4】同A−A断面図。
【図5】同B−B断面図。
【図6】サポートの分解斜視図。
【図7】図6の右側のトルク受け部材をインナ側から見た図。
【図8】サポートにパッドクリップを装着する状態を示す斜視図。
【図9】サポートを構成すべく、インナ側取付部材の第一の通孔にトルク受け部材のインナ側突部を挿入した状態を示す、図3のC部拡大相当図。
【図10】図9のD−D断面図。
【図11】パッドクリップを装着したサポートにパッドを組み付ける状態を示す斜視図。
【図12】サポートに支持した各パッドに保持部材を嵌合させる状態を示す斜視図。
【図13】サポート及び各パッドにキャリパを組み付ける状態を示す斜視図。
【図14】サポート及び各パッドにキャリパを組み付けた後に、保持部材にロックプレートを挿入する状態を示す斜視図。
【図15】図3のE部拡大図。
【図16】制動トルクが比較的小さい制動時に、アウタ側のパッドからサポートに制動トルクが受けられる状態を示す略断面図。
【図17】制動トルクが比較的大きい制動時に、アウタ側のパッドからサポートに制動トルクが受けられる状態を示す略断面図。
【図18】本発明の実施例2のディスクブレーキを、ロータを省略して示す斜視図。
【図19】実施例2のディスクブレーキを構成するサポートの分解斜視図。
【図20】サポートにパッドクリップを装着する状態を示す斜視図。
【図21】サポートを構成すべく、インナ側取付部材の第一の通孔にトルク受け部材のインナ側突部を、アウタ側補強部材の第二の通孔にトルク受け部材のアウタ側突部を、それぞれ挿入した状態を示す、図10と同様の図。
【図22】パッドクリップを装着したサポートにパッドを組み付ける状態を示す斜視図。
【図23】サポートに支持した各パッドに保持部材を嵌合させる状態を示す斜視図。
【図24】サポート及び各パッドにキャリパを組み付ける状態を示す斜視図。
【図25】サポート及び各パッドにキャリパを組み付けた後に、保持部材にロックプレートを挿入する状態を示す斜視図。
【図26】本発明の実施例3のディスクブレーキを、ロータを省略して示す斜視図。
【図27】図26のロータの径方向内側から見た図。
【図28】図27の上方から見た図。
【図29】図28の左方から見た図。
【図30】実施例3で使用する一対の押圧用スプリングを示す斜視図。
【図31】同じくキャリパに押圧用スプリングを係止した状態を、ロータの外径側から見た斜視図。
【図32】同じくロータの径方向内側から見た斜視図。
【図33】同じくサポートにキャリパを支持した後に、保持部材にロックプレートを挿入する状態を示す斜視図。
【図34】従来構造の1例を示すロータの外径側から見た図。
【図35】図34の左半部を下方から見た図。
【符号の説明】
【0060】
1 ロータ
2、2a キャリパ
3、3a、3b サポート
4 取付孔
5 案内ピン
6 案内孔
7 ベローズ
8 回入側係合部
9 回出側係合部
10a、10b パッド
11 プレッシャプレート
12 シリンダ部
13 爪部
14 ピストン
15 ライニング
17 ブリッジ部
18 補強部
19 インナ側取付部材
20a、20b トルク受け部材
21 結合用腕部
22 第一の通孔
23a、23b アンカ部
24a、24b 腕部
25 インナ側突部
26 第一部分
27 第二部分
28 引きアンカ部
29 係止突部
30 第一の内壁面
31 第二の内壁面
32 第三の内壁面
33 第四の内壁面
34 第一の凹溝
35 段部
36 段部
37 第二の段部
38 第二の凹溝
39 係合突部
40、40a パッドクリップ
41 押圧用弾性部
42 第一の内壁面
44 第三の内壁面
46 脚部
47 押圧片
48 本体部
49 段部
50 折り曲げ部
51 支持手段
52 保持部材
53 ロックプレート
54 突部
55 底板部
56 長孔
57 透孔
58 溝部
59 段部
60 本体部
61 腕部
62 折り曲げ片
63 切り欠き
64 係止突部
65 かしめ部
68 押圧用スプリング
69 基部
70 脚部
71 押圧部
72 係止孔
73 段部
74 折り曲げ片
75 係止部
76 外側面
77 内側面
78 アウタ側補強部材
79 結合用腕部
80 第二の通孔
81 段部
82 補強部
83 アウタ側突部
84 かしめ部
85 外側面
86 第二の段部
87 第一の凹溝
88 第一の内壁面
89 第三の内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するロータに隣接して車体に固定されるサポートと、このロータの軸方向両側に配置されると共に、このサポートによりこのロータの軸方向への移動可能に案内された一対のパッドと、キャリパとを備え、このキャリパは、上記ロータと一対のパッドとを跨ぐブリッジ部の一方に設けられた爪部と、このブリッジ部の他方に設けられてピストンが嵌装されるシリンダ部とを有するものであり、このピストンの押し出しに伴い、上記一対のパッドを上記ロータの側面に押圧して制動を行なうフローティングキャリパ型ディスクブレーキに於いて、
上記サポートが、上記ロータよりもインナ側に外れた位置に配置されるインナ側取付部材と、このインナ側取付部材の上記ロータの周方向両端部に結合された一対のトルク受け部材とを備えており、これら各トルク受け部材のインナ側面に形成されたインナ側突部を、上記インナ側取付部材の上記ロータの周方向両端部に形成された第一の通孔に挿通させ、上記各インナ側突部の先端部でこれら第一の通孔を通じて上記インナ側取付部材のインナ側面から突出させた部分をかしめ広げる事により、上記各トルク受け部材を上記インナ側取付部材にかしめ固定した状態で、上記インナ側取付部材の、上記各第一の通孔の近傍に存在する幅方向中央側の側面を、上記各トルク受け部材の側面に密着させている事を特徴とするフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項2】
サポートが、ロータよりもアウタ側に外れた位置に配置されるアウタ側補強部材を備えており、各トルク受け部材のアウタ側面に形成されたアウタ側突部を、上記アウタ側補強部材の上記ロータの周方向両端部に形成された第二の通孔に挿通させ、上記各アウタ側突部の先端部でこれら第二の通孔を通じて上記アウタ側補強部材のアウタ側面から突出させた部分をかしめ広げる事により、上記各トルク受け部材に上記アウタ側補強部材をかしめ固定している、請求項1に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項3】
キャリパを、このキャリパと一対のパッドとの間に設けた支持手段により、各パッドに対するロータの軸方向への移動を可能にしつつ、サポートに対する係脱を可能に各パッドに支持している、請求項1又は請求項2に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項4】
トルク受け部材に装着したパッドクリップにより、キャリパにロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与している、請求項1〜3のうち、何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。
【請求項5】
キャリパの、ロータの周方向に関する両端部に一対の弾性部材を、このロータの外周を跨ぐ状態でこのキャリパに対し脱着自在に係止すると共に、これら各弾性部材をサポートに弾性的に押し付ける事により、これら各弾性部材により上記キャリパに、上記ロータの径方向外側且つ周方向に向いた弾力を付与している、請求項1〜3のうち、何れか1項に記載したフローティングキャリパ型ディスクブレーキ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate


【公開番号】特開2007−10072(P2007−10072A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193356(P2005−193356)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】