説明

ブレーキ装置

【課題】ブレーキ装置において、部品点数を増加させずに、駆動部材であるピストンの挙動を安定させる。
【解決手段】Z方向に進退移動するピストンの脚部32,32には、傾斜面部50a,50bが形成され、Y方向に進退移動する押棒40には、傾斜面部50a,50bに接触する出力ローラ60a,60bが設けられている。傾斜面部50a,50bは、(+)X向きの力を受ける第一規制面53と、(−)X向きの力を受ける第二規制面54とが形成され、出力ローラ60a,60bには、第一規制面53に接触する第一対応面63と、第二規制面54に接触する第二対応面64とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪等の制動対象に制動力を加えるブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に制動力を加えるブレーキ装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1に記載されたブレーキ装置は、空気圧を駆動力として受けて進退移動するピストンと、このピストンの進退移動により進退移動する押棒と、押棒の進退移動により移動して制動対象に接触する制動子と、押棒に設けられている2個の出力ローラと、ピストンや押棒等を収納するハウジングに設けられている2個の反力受けローラと、を備えている。
【0004】
ピストンは、このピストンの進退移動方向に伸びている二つの脚部を有し、この脚部に進退移動方向に対して傾斜した傾斜面が形成されている。各傾斜面には、押棒に設けられている出力ローラの外周面がそれぞれ接触している。押棒は、ピストンの移動により、ピストンの傾斜面に接している出力ローラから押付力を受けて移動し、制動子を移動させる。ピストンは、出力ローラを介して押棒に押付力を加えることで、押棒側から反力を受ける。この反力により、ピストンの傾斜面が出力ローラから遠ざかる方向へ逃げないようにするため、ハウジングには、出力ローラを介して押棒からピストンに作用する反力を受ける反力支持部が設けられ、この反力支持部に、ピストンの各傾斜面と反対側の面に接する前述の反力受けローラが設けられている。すなわち、ピストンの脚部の先端側は、押棒の進退方向において、出力ローラと反力受けローラとに挟まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許6,397,986号 図1、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、ピストンの脚部の先端側は、前述したように、反力受けローラにより、出力ローラから遠ざかる向き、言い換えると押棒の退行向きへの移動が規制されている。しなしながら、押棒の進退方向とピストンの進退方向とに垂直な方向の移動に対して、この脚部の先端側は何ら拘束されていない。このため、この脚部の先端部側は、傾いたり捩れたりして、その挙動が安定せず、この脚部の先端側に形成されている傾斜面が出力ローラに片当りする等で、駆動部材であるピストンの押付力を効率良く、従動部材である押棒に伝達することができない、という問題点がある。
【0007】
そこで、脚部の先端側の挙動を安定させるため、ピストンの進退方向に伸び、脚部に摺接する脚部ガイドをハウジングに設ける方法が考えられる。しかしながら、この方法では、部品点数が増加する上に、脚部が他の部位と摺接する面積が増え、結果として、ピストンの押付力を効率良く押棒に伝達することができない。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目し、部品点数を増やさずに、駆動部材の挙動を安定させて、駆動部材の押付力を効率よく従動部材に伝達することができるブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するための第一のブレーキ装置に係る発明は、
駆動力に応じて進退移動する駆動部材と、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に進退移動する従動部材と、該従動部材の進退移動により移動して制動対象に接触する制動子と、を備えているブレーキ装置において、
前記駆動部材と前記従動部材とのうち、一方の部材は、他方の部材に接触する接触部を有し、他方の部材は、該接触部に接触して、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に該従動部材を進退移動させる傾斜面部を有し、前記傾斜面部は、前記駆動部材の前記進退移動の方向と前記従動部材の前記進退移動の方向とを含む面に対して垂直な移動規制方向のうちの一方の向きの力を受ける第一規制面と、他方の向きの力を受ける第二規制面とを有し、前記接触部は、前記第一規制面に接触する第一対応面と、前記第二規制面に接触する第二対応面とを有している、ことを特徴とする。
【0010】
駆動部材は、進退移動過程で、駆動部材の傾斜面部又は接触部が従動部材の接触部又は傾斜面部に接触して、従動部材を進退移動させる。この際、傾斜面部の第一規制面と接触部の第一対応面とが接触し、且つ傾斜面部の第二規制面と接触部の第二対応面とが接触しているため、駆動部材の傾斜面部又は接触部は、移動規制方向の一方の向き及び他方の向きへの移動が規制される。よって、本発明では、駆動部材に摺接するガイド等を別途設けなくても、駆動部材の傾斜面部又は接触部の傾きや捩れを防ぐことができ、駆動部材の押付力を効率よく従動部材に伝達することができる。
【0011】
ここで、前記一方の部材は、前記傾斜面部に接触する前記接触部としてのローラと、該ローラを回転可能に且つ前記移動規制方向への移動不能に支持する部材本体と、を有している、ことが好ましい。このように、接触部として回転可能なローラを用いると、駆動部材と従動部材との間に作用する摩擦力を抑えることができ、結果として、駆動部材の押付力を効率よく従動部材に伝達することができる。
【0012】
また、前記傾斜面部は、前記移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの進行向きに傾斜している前記第一規制面と、該移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向きに傾斜している前記第二規制面と、を有していてもよい。
【0013】
また、前記接触部は、第一接触部と、該第一接触部と離れている第二接触部とを有し、前記第一接触部には前記第一対応面が形成され、前記第二接触部には前記第二対応面が形成され、前記傾斜面部は、前記第一対応面と接触する前記第一規制面が形成されている第一傾斜面部と、該第一傾斜面部と離れ且つ前記第二対応面と接触する前記第二規制面が形成されている第二傾斜面部とを有していてもよい。
【0014】
また、前記傾斜面部は、前記移動規制方向に垂直な前記第一規制面及び前記第二規制面と、該移動規制方向に広がっている主接触面と、が形成され、前記接触部は、前記第一規制面に接触する前記第一対応面と、前記第二規制面に接触する前記第二対応面とが形成されていると共に、前記主接触面に接触する主接触対応面が形成されていてもよい。
【0015】
さらに、以上の第一のブレーキ装置では、前記接触部と前記傾斜面部とのうち、少なくとも一方の面であって他方に接触する面には、潤滑性の向上と硬度の向上と耐摩耗性の向上とのうち、少なくとも一つを目的とする表面処理が施されている、ことが好ましい。
【0016】
このように、接触部又は傾斜面部に、潤滑性の向上を目的とする表面処理を施した場合、各ローラとその接触面との間に働く摩擦力を低減されることができる。また、接触部又は傾斜面部に、硬度や耐摩耗性の向上を目的とする表面処理を施した場合でも、変形や磨耗による接触面積の増加、さらに位置決め精度の低下等を防ぐことができる結果、各ローラとその接触面との間に働く摩擦力を低減することができる。
【0017】
また、以上の第一のブレーキ装置では、前記駆動部材の進退移動の方向のうちの進行向き側の進行側端部と、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向き側の退行側端部と、のうちの一方の端部に、前記接触部が設けられ、他方の端部に前記傾斜面部が形成されている、ことが好ましい。
【0018】
このように、従動部材の退行側端部に、接触部又は傾斜面部を設けると、従動部材である押棒の中間部分に接触部としての出力ローラを設けて、この押棒の両端部を支持するよりも、二つの支持部間の距離を短くすることができ、従動部材の長さを短くすることができる。さらに、従動部材の中間部分に出力ローラを設けていないため、従動部材の左右に出力ローラを設けてバランスをとる必要性がなく、接触部としてのローラの数量及び配置の自由度を高めることができる。
【0019】
前記問題点を解決するための第二のブレーキ装置に係る発明は、
駆動力に応じて進退移動する駆動部材と、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に進退移動する従動部材と、該従動部材の進退移動により移動して制動対象に接触する制動子と、該従動部材から該駆動部材に作用する反力を受ける反力支持部と、を備えているブレーキ装置において、
前記駆動部材と前記従動部材とのうちの一方には、他方の部材に接触に接触して、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に該従動部材を進退移動させる傾斜面部を有し、
前記反力支持部材と前記駆動部材とのそれぞれは、互いに接触し合う接触部を有し、
前記反力支持部材の前記接触部と前記駆動部材の前記接触部とのうち、一方の部材の接触部は、前記駆動部材の前記進退移動の方向と前記従動部材の前記進退移動の方向とを含む面に対して垂直な移動規制方向のうちの一方の向きの力を受ける第一規制面と、他方の向きの力を受ける第二規制面とを有し、
前記反力支持部材の前記接触部と前記駆動部材の前記接触部とのうち、他方の部材の接触部は、前記第一規制面に接触する第一対応面と、前記第二規制面に接触する第二対応面とを有している、ことを特徴とする。
【0020】
駆動部材の接触部は、進退移動過程で、反力支持部の接触部に接触する。この際、一方の部材の接触部の第一規制面は、他方の部材の接触部の第一対応面に接触し、一方の部材の接触部の第二規制面は、他方の部材の接触部の第二対応面に接触するため、駆動部材は、移動規制方向の一方の向き及び他方の向への移動が規制される。よって、本発明では、駆動部材に摺接するガイド等を別途設けなくても、駆動部材の傾斜面部又は接触部の傾きや捩れを防ぐことができ、駆動部材の押付力を効率よく従動部材に伝達することができる。
【0021】
ここで、第二のブレーキ装置における前記他方の部材は、前記他方の部材に接触する前記接触部としての反力受け用ローラと、該反力受け用ローラを回転可能に且つ前記移動規制方向への移動不能に支持する部材本体と、を有していることが好ましい。
【0022】
また、第二のブレーキ装置における、前記駆動部材の進退移動の方向のうちの進行向き側の進行側端部と、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向き側の退行側端部と、のうちの一方の端部に、前記傾斜面部が形成され、他方の端部に、該傾斜面部に接触する出力ローラが回転可能に設けられている、ことが好ましい。
【0023】
このように、従動部材の退行側端部に、出力ローラ又は傾斜面部を設けると、従動部材である押棒の中間部分に出力ローラを設けて、この押棒の両端部を支持するよりも、二つの支持部間の距離を短くすることができ、従動部材の長さを短くすることができる。さらに、従動部材の中間部分に出力ローラを設けていないため、従動部材の左右に出力ローラを設けてバランスをとる必要性がなく、出力ローラの数量及び配置の自由度を高めることができる。
【0024】
また、前記第二のブレーキ装置における、前記一方の部材の前記接触部は、前記移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向きに傾斜している前記第一規制面と、該移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの進行向きに傾斜している前記第二規制面と、を有していてもよい。
【0025】
また、前記第二のブレーキ装置における、前記一方の部材の前記接触部は、第一接触部と、該第一接触部と離れている第二接触部とを有し、前記第一接触部には前記第一規制面が形成され、前記第二接触部には前記第二規制面が形成され、前記他方の部材の前記接触部は、前記第一規制面と接触する前記第一対応面が形成されている第一接触部と、該第一接触部と離れ且つ前記第二規制面と接触する前記第二対応面が形成されている第二接触部とを有していてもよい。
【0026】
また、前記第二のブレーキ装置における、前記一方の部材の前記接触部は、前記移動規制方向に垂直な前記第一規制面及び前記第二規制面と、該移動方向に広がっている主接触面と、が形成され、前記他方の部材の前記接触部は、前記第一規制面に接触する前記第一対応面と、前記第二規制面に接触する前記第二対応面とが形成されていると共に、前記主接触面に接触する主接触対応面が形成されていてもよい。
【0027】
さらに、以上の第二のブレーキ装置では、前記一方の部材の前記接触部と前記他方の部材の前記接触部とのうち、少なくとも一方の接触部の面であって他方の接触部に接触する面には、潤滑性の向上と硬度の向上と耐摩耗性の向上とのうち、少なくとも一つを目的とする表面処理が施されている、ことが好ましい。このように、接触部に表面処理を施すと、両接触部間に働く摩擦力を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、駆動部材に摺接するガイドを別途設けなくても、駆動部材の進退移動過程での挙動を抑えることができ、駆動部材の押付力を効率よく従動部材に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る第一実施形態におけるブレーキ装置の要部切欠き側面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態の変形例1におけるブレーキ装置の要部切欠き平面図である。
【図5】本発明に係る第一実施形態の変形例2におけるブレーキ装置の要部切欠き平面図である。
【図6】本発明に係る第一実施形態の変形例3におけるブレーキ装置の要部切欠き平面図である。
【図7】本発明に係る第一実施形態の変形例4におけるブレーキ装置の要部切欠き平面図である。
【図8】本発明に係る第二実施形態におけるブレーキ装置の要部切欠き側面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線断面図ある。
【図10】本発明に係る第二実施形態の変形例におけるブレーキ装置の要部切欠き平面図である。
【図11】本発明に係る各実施形態の変形例におけるローラの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るブレーキ装置の各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
「第一実施形態」
まず、本発明に係る第一実施形態としてのブレーキ装置について、図1〜図3を用いて説明する。
【0032】
本実施形態のブレーキ装置は、鉄道車両用のブレーキ装置である。このブレーキ装置は、図1に示すように、制動対象である車輪の踏面Sに接して、車輪に制動力を加えるブレーキシュー(制動子)10と、このブレーキシュー10を車輪に対して遠近方向に移動させる駆動ユニット20と、ブレーキシュー10を移動可能に支えるハンガー15と、を備えている。
【0033】
駆動ユニット20は、空気圧による駆動力に応じて進退移動するピストン(駆動部材)30と、進行方向に移動したピストン30を図1に示す元の位置に復帰させるコイルバネ29と、ピストン30の進退移動により車輪に対する遠近方向に進退移動する押棒(従動部材の本体)40と、押棒40に回転可能に設けられている一対の出力ローラ60(従動部材の接触部)及び一対のガイドローラ69(図3)と、ピストン30が押棒40を押す押付力に対する反力を受けるための一対の反力受け用ローラ65と、これらを収納するハウジング21と、を備えている。
【0034】
ここで、本実施形態では、押棒40の進退方向は、ピストン30の進退移動方向に対して垂直である。また、以下の説明の都合上、押棒40の進退方向をY方向、ピストン30の進退方向をZ方向、Y方向及びZ方向に対して垂直な方向をX方向とする。なお、本実施形態では、押棒40の進退方向は、ピストン30の進退方向に対して垂直であるが、押棒40の進退方向とピストン30の進退方向とは、異なっていれば垂直でなくてもよい。
【0035】
ピストン30は、空気圧を受ける受圧部31と、この受圧部31からピストン30の進退方向のうちの進行向き((+)Z)側に伸びている脚部32と、を有している。受圧部31は、ハウジング21内を仕切って、この受圧部31を基準としてハウジング21内の(−)Z側に空気室22を形成する。この受圧部31の外周には、空気室22の気密性を確保するためにOリングやパッキン等が設けられている。ハウジング21には、空気室22に対する空気の出入口23が形成されている。
【0036】
ピストン30の受圧部31であって、このピストン30の進行向き側である(+)Z側の面には、コイルバネ29の一方の端部が取り付けられている。また、ハウジング21には、ピストン30の受圧部31を基準にして、(+)Z側にバネ支持板26が設けられており、このバネ支持板26に、コイルバネ29の他方の端部が取り付けられている。
【0037】
押棒40の進退方向のうちの進行向き((+)Y)側の端部である進行側端部41には、X方向に貫通し且つZ方向に長い長孔42が形成されている。また、押棒40の退行向き((−)Y)側の端部である退行側端部43には、出力ローラ60及びガイドローラ69(図3)が設けられている。さらに、押棒40の退行向き((−)Y)側であって、(+)Z側には、Y方向に伸びるキー溝44が設けられている。ハウジング21には、この押棒40が貫通する貫通孔27が形成され、この貫通孔27に、この押棒40の進行向き((+)Y)側をY方向に摺動可能に支持する滑り軸受け28が設けられている。また、ハウジング21内には、押棒40のキー溝44をY方向に摺動可能に支持する押棒ガイドキー81が設けられている。
【0038】
脚部32は、押棒40の進行向き((+)Y)側、つまり、出力ローラ60側に、ピストン30の進退方向(Z方向)に対して傾斜し、且つ(−)Z側に向かうに連れて(+)Y側に向かう傾斜面部50が形成されている。この傾斜面部50に、出力ローラ60の外周面が接触する。傾斜面部50には、ピストン30の進行向き((+)Z)への移動過程で先に出力ローラ60に接触する先接触傾斜面51と、次に出力ローラ60に接触する後接触傾斜面52とがある。先接触傾斜面51と後接触傾斜面52とは、傾斜角度が異なっており、具体的に、ピストン30の退行向き((−)Z向き)に対する角度が、後接触傾斜面52よりも先接触傾斜面51の方が大きい、言い換えると、押棒40の進行向き((+)Y向き)に対する角度が、後接触傾斜面52よりも先接触傾斜面51の方が小さい。
【0039】
脚部32は、押棒40の退行向き((−)Y)側に、ピストン30の進退方向(Z方向)と実質的に平行な反力伝達面55が形成されている。この反力伝達面55に、反力受け用ローラ65の外周面が接触する。この反力受け用ローラ65は、ハウジング21に固定されている反力支持台(反力支持部材)82に回転可能に設けられている。
【0040】
この反力受け用ローラ65、さらに、以上で説明した出力ローラ60及びガイドローラ69は、いずれも転がり軸受けである。転がり軸受けである各ローラ60.65.69は、いずれも、その内輪がX方向に伸びる回転軸に固定され、X方向へ移動できないようになっている。
【0041】
ハウジング21の(+)Y側の外面には、ブラケット70が固定されている。ブレーキシュー10を支えるハンガー15の両端部には、X方向に伸びる回転軸15a,15bが設けられている。このハンガー15の一方の端部(以下、基端部とする)の回転軸15aは、ブラケット70に回転可能に設けられ、他方の端部(以下、揺動端部とする)の回転軸15bは、ブレーキシュー10の貫通孔11及び押棒40の進行側端部41に形成されている長孔42に入れられている。ブラケット70とハンガー15とは、図示されていないバネにより連結されている。このバネは、ハンガー15の揺動端部に係合しているブレーキシュー10を車輪から遠ざける方向に付勢する役目を担っている。
【0042】
前述したように、出力ローラ60は、押棒40の退行側端部43に回転可能に設けられている。この出力ローラ60としては、図2及び図3に示すように、第一出力ローラ60aと第二出力ローラ60bとがある。第一出力ローラ60aは、押棒40を基準にして、(+)X側に設けられ、第二出力ローラ60bは、押棒40を基準にして、(−)X側に設けられている。第一出力ローラ60aの(+)X側、及び第二出力ローラ60bの(−)X側には、それぞれ、ガイドローラ69,69が設けられている。これら出力ローラ60a,60bとガイドローラ69,69とは、X方向に伸びる同一の仮想軸を中心として回転可能である。すなわち、出力ローラ60a,60bの回転軸とガイドローラ69,69の回転軸とは、いずれもX方向に伸び、且つ同芯である。
【0043】
ハウジング21には、押棒40の進退方向(Y方向)に伸び、各ガイドローラ69,69が転がるガイドレール89,89が固定されている。また、ハウジング21に固定されている反力支持台82には、反力受け用ローラ65が回転可能に設けられている。この反力受け用ローラ65としては、第一反力受け用ローラ65aと第二反力受け用ローラ65bとがある。第一反力受け用ローラ65aは、第一出力ローラ60aと対向する位置に設けられ、第二反力受け用ローラ65bは、第二出力ローラ60bと対向する位置に設けられている。これら2つの反力受け用ローラ65a,65bも、X方向に伸びる同一の仮想軸を中心として回転可能である。
【0044】
ピストン30の脚部32,32も、出力ローラ60a,60bや反力受け用ローラ65a,65bと同様に、2つ設けられている。傾斜面部50としては、2つの脚部32,32のうち、一方の脚部32に形成されている第一傾斜面部50aと、他方のくさい部32に形成されている第二傾斜面部50bとがある。第一傾斜面部50aは第一出力ローラ60aの外周面と接触し、第二傾斜面部50bは第二出力ローラ60bと接触する。また、2つの脚部32,32の各反力伝達面55a,55bは、X方向に並んでいる2つの反力受け用ローラ65a,65bと接触する。
【0045】
各傾斜面部50a,50bは、Y方向とZ方向とを含むYZ面に対して垂直な移動規制方向、つまりX方向のうちの(+)X向き成分を有する力を受ける第一規制面53と、(−)X向き成分を有する力を受ける第二規制面54とを有している。この第一規制面53は、傾斜面部50a,50b中の(−)X側に位置し、(+)X側に向かうに連れて、押棒40の進行向き((+)Y向き)に傾斜している。また、第二規制面54は、傾斜面部50a,50b中の(+)X側に位置し、(+)X側に向かうに連れて、押棒40の退行向き((−)Y向き)に傾斜している。従って、各傾斜面部50a,50bは、X方向の中央部分が(+)Y側に突出している。
【0046】
なお、各傾斜面部50a,50bは、いずれも、第一規制面53及び第二規制面54を有すると共に、前述の先接触傾斜面51及び後接触傾斜面52を有しており、先接触傾斜面51及び後接触傾斜面52のそれぞれが第一規制面53及び第二規制面54を有している。
【0047】
各出力ローラ60a.60bの外周には、各傾斜面部50a,50bの第一規制面53に接触する第一対応面63と、各傾斜面部50a,50bの第二規制面54に接触する第二対応面64とが形成されている。この結果、各出力ローラ60a.60bの外周面は、X方向の中央部分が(+)Y側に突出している傾斜面部50a,50bの形状に合うよう、X方向の中央部分が、各出力ローラ60a.60bの回転軸に近づく向きに凹んでいる。
【0048】
本実施形態の各ローラの外周面と、各ローラの外周面が接触する接触面とのうち、少なくとも一方の面には、潤滑性の向上と硬度の向上と耐摩耗性の向上とのうち、少なくとも一つを目的とする表面処理が施されている。具体的には、潤滑性の向上を目的とする表面処理としては、Mo系の潤滑性の高いコーティング処理や、Mo系潤滑剤の塗布処理等がある。また、硬度の向上を目的とする表面処理としては、高周波焼入れ処理や真空焼入れ処理等がある。これら高周波焼入れ処理や真空焼入れ処理では、対象物が熱変形するため、焼入れ処理後に対象物を機械加工して、対象物の寸法を目的の寸法にすることが好ましい。また、耐摩耗性の向上を目的とする表面処理としては、TiN系のコーティング処理等がある。
【0049】
以上のように、各ローラの外周面又はその接触面に、潤滑性の向上を目的とする表面処理を施した場合、各ローラとその接触面との間の摩擦力の増加を防ぐことができる。また、各ローラの外周面又はその接触面に、硬度や耐摩耗性の向上を目的とする表面処理を施した場合でも、変形や磨耗による接触面積の増加、さらに位置決め精度の低下等を防ぐことができる結果、各ローラとその接触面との間の摩擦力の増加を防ぐことができる。
【0050】
なお、各ローラの外周面と、その接触面とのうち、一方の面に、潤滑性の向上と硬度の向上と耐摩耗性の向上とのうちの一つを目的とする表面処理を施した場合、他方の面にも、同じ表面処理を施してもよいが、他の目的の表面処理を施してもよい。また、以下で、説明する実施形態及び変形例においても、各ローラの外周面や、各ローラの外周面が接触する接触面に対して、以上と同様の表面処理を施すことが好ましい。
【0051】
次に、本実施形態のブレーキ装置の動作について説明する。
【0052】
ここで、ブレーキシュー10は、図1に示すように、最も(−)Y側に、つまり退避位置に位置しているとする。この際、ピストン30も、最も(−)Z側の退避位置に位置して、空気室22の容積が最小になっている。また、押棒40も、最も(−)Y側に退避位置に位置し、この押棒40に設けられている出力ローラ60が、ピストン30の傾斜面部50のうちの先接触傾斜面51に接触している。
【0053】
ブレーキシュー10で車輪に制動力を加える際には、ハウジング21の空気出入口23からハウジング21の空気室22内に空気を流入させる。この結果、この空気圧をピストン30の受圧部31が受けて、ピストン30は、図1に示すように、コイルバネ29を縮めながら、進行向き((+)Z側)に移動し、空気室22が広がる。
【0054】
ピストン30が(+)Z側に移動すると、このピストン30の傾斜面部50に接触している出力ローラ60は回転しつつ、傾斜面50から、この傾斜面50に対して垂直な方向の押付力、言い換えると、(+)Y向きの成分力を有する押付力を受ける。この(+)Y向きの成分力により、ピストン30の脚部32は、出力ローラ60から(+)Y向きの成分力に対する反力を受け、(−)Y側へ逃げようとする。そこで、本実施形態では、脚部32の傾斜面50と反対側に、反力伝達面55を形成し、この反力伝達面55に反力受け用ローラ65を接触させて、出力ローラ60からの反力を受けさせ、脚部32が(−)Y側へ逃げるのを防いでいる。
【0055】
出力ローラ60が取り付けられている押棒40は、出力ローラ60から押付力を受けて、押棒ガイドキー81及びガイドレール89にガイドされつつ、押棒40の進行向き((+)Y側)に移動する。なお、押棒ガイドキー81は、ピストン30から押棒40が受ける(+)Z向きの力、及び(±)X方向の力を支持し、ガイドレール89は、ピストン30から押棒40を介してガイドローラ69が受ける(+)Z向きの力、及びY方向に平行な押棒40の中心軸回りのモーメント力を支持する。
【0056】
この押棒40の(+)Y側への移動により、この押棒40の進行側端部41の長孔42に入っているハンガー15の揺動端部の回転軸15bは、ブラケット70に設けられているバネ(図示されていない)を縮めながら、ハンガー15の基端部を中心に回転し、車輪に近づく方向へ移動する。この際、ハンガー15の揺動端部の回転軸15bは、押棒40の進行側端部41の長孔42内において、Y方向には相対移動しないものの、Z方向に相対移動する。このハンガー15の揺動端部の移動により、ハンガー15の揺動端の回転軸15bに係合しているブレーキシュー10は、車輪に近づく(+)Y側の移動へ移動し、車輪の踏面Sと接触して、車輪に対して制動力を加える。
【0057】
出力ローラ60は、ピストン30の進行向き((+)Z側)への移動過程で、ピストン30の後接触傾斜面52より先に先接触傾斜面51に接触する。この先接触傾斜面51は、前述したように、押棒40の押棒40の進行向き((+)Y向き)に対する角度が後接触傾斜面52よりも小さいため、ピストン30の一定移動量に対して、後接触傾斜面52よりも、押棒40を大きく移動させることができる。
【0058】
出力ローラ60は、続いて、ピストン30の後接触傾斜面52に接触する。この後接触傾斜面52は、押棒40の進行向き((+)Y向き)に対する角度が先接触傾斜面51よりも大きいため、ピストン30の一定移動量に対して、先接触傾斜面51より、押棒40を大きく移動させないものの、この先接触傾斜面52から受ける(+)Y向きの成分力が大きくなり、押棒40に対する(+)Y向きの押付力を大きくすることができる。
【0059】
従って、押棒40は、移動前半では大きく移動し、移動後半では、ブレーキシュー10への押付力が大きくなる。
【0060】
ところで、ピストン30の脚部32は、Y方向において、出力ローラ60と反力受け用ローラ65とに挟まれ、この反力受け用ローラ65により、ピストン30のZ方向への移動過程で、(−)Y側への移動が規制されている。また、この脚部32の傾斜面部50には、Y方向の成分を含む方向に広がっている第一規制面53及び第二規制面54が形成されており、各規制面53.54が出力ローラ60の対応面63,64に接触している。しかも、この対応面63,64も、傾斜面部50の第一規制面53及び第二規制面54と同様に、Y方向の成分を含む方向に広がっている。さらに、この出力ローラ60は、前述したように、X方向の移動が規制されている。従って、脚部32は、ピストン30のZ方向への移動過程で、出力ローラ60の対応面63,64により、Y方向に垂直なX方向への移動が規制されることになる。
【0061】
すなわち、ピストン30の脚部32は、反力受け用ローラ65により、(−)Y側への移動が規制され、出力ローラ60により、X方向の一方側及び他方側への移動が規制されている。従って、本実施形態では、ピストン30のZ方向への移動過程で、このピストン30の脚部32が、X方向に伸びるX軸やY方向に伸びるY軸に対して傾いたり、Z方向に伸びるZ軸回りに捩れたりするのを防ぐことができる。
【0062】
車輪に加えている制動力を解除する際には、ハウジング21の空気出入口23からハウジング21の空気室22内の空気を流出させる。すると、空気圧で縮んでいたコイルバネ29が伸び、ピストン30は、退行向き((−)Z側)に移動し、元の退避位置、つまり、図1に示す位置に戻る。この結果、押棒40は、ピストン30からY方向の力を受けなくなるため、ブラケット70に設けられている、縮んでいたバネ(図示されていない)が伸び、ブレーキシュー10、ハンガー15及び押棒40は、退行向き((−)Y側)に移動し、元の退避位置、つまり、図1に示す位置に戻る。
【0063】
以上のように、本実施形態では、ピストン30の押付力を押棒40に伝達するにあたり、転がり軸受けである出力ローラ60を介在させているので、ピストン30と押棒40との間の摩擦は、滑り摩擦ではなく転がり摩擦になり、ピストン30の押付力を効率良く押棒40に伝達することができる。また、本実施形態では、各ローラの外周面とその接触面とのうち、少なくとも一方に表面処理を施しているので、各ローラの外周面とその接触面との間の摩擦力が小さくなるので、この点からも、ピストン30の押付力をより効率良く押棒40に伝達することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、前述したように、ピストン30のZ方向への移動過程で、このピストン30の脚部32が、X方向に伸びるX軸やY方向に伸びるY軸に対して傾いたり、Z方向に伸びるZ軸回りに捩れたりするのを防ぐことができる。よって、本実施形態では、脚部ガイド等の部品を追加することなく、脚部32が傾いたり捩れたりするのを防ぐことができるので、この点からも、ピストン30の押付力をより効率良く押棒40に伝達することができる。
【0065】
また、本実施形態では、出力ローラ60を押棒40の退行側端部43に設けているので、押棒の中間部分に出力ローラを設けて、この押棒の両端部を支持するよりも、押棒40の二つの支持部間、つまり、滑り軸受け28と押棒ガイドキー81との間の距離を少なくとも出力ローラ60の外径分短くすることができる。この結果、押棒40の長さを短くでき、ブレーキ装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、出力ローラ60を押棒40の退行側端部43に設けているので、押棒の中間部分の両側に出力ローラを設けているよりも、各種ローラの数量及び配置の自由度を高めることができる。すなわち、本実施形態では、押棒40の(±)X方向のそれぞれに出力ローラ60,60を設け、各出力ローラ60,60に対向するように反力受け用ローラ65,65を設けているが、これらの各ローラ60,65は、以上で説明した数量及び配置でなくても構わない。そこで、本実施形態に対して各ローラの数量及び配置を変えた変形例について、後述の変形例4で説明する。
【0067】
「第一実施形態の変形例1」
次に、図4を用いて、以上で説明した第一実施形態の変形例1について説明する。
【0068】
本変形例1は、上記第一実施形態がピストンの各傾斜面部50a,50bに第一規制面53及び第二規制面54を形成したものであるのに対して、ピストンの反力伝達面(接触部)55c,55dに第一規制面56及び第二規制面57を形成したものである。
【0069】
このように、本変形例1では、ピストンの反力伝達面55c,55dに第一規制面56及び第二規制面57を形成しているので、ピストンの傾斜面部50c,50dは、X方向において平坦であり、この傾斜面部50c,50dに接触する出力ローラ60c,60dの外周面もX方向において平坦である。
【0070】
反力伝達面55c,55dの第一規制面56は、(+)X向き成分を有する力を受けるため、反力伝達面55c,55d中の(−)X側に位置し、(+)X側に向かうに連れて、押棒40の退行向き((−)Y向き)に傾斜している。また、第二規制面57は、(−)X向き成分を有する力を受けるため、反力伝達面55c,55d中の(+)X側に位置し、(+)X側に向かうに連れて、押棒40の進行向き((+)Y)に傾斜している。従って、各反力伝達面55c,55dは、X方向の中央部分が(−)Y側に突出している。
【0071】
反力伝達面55c,55dに接触する反力受け用ローラ65c,65dの外周には、反力伝達面55c,55dの第一規制面56に接触する第一対応面66と、反力伝達面55c,55dの第二規制面57に接触する第二対応面67とが形成されている。この結果、各反力受け用ローラ65c,65dの外周面は、X方向の中央部分が(−)Y側に突出している反力伝達面55c,55dの形状に合うよう、X方向の中央部分が、反力受け用ローラ65c,65dの回転軸に近づく向きに凹んでいる。
【0072】
以上のように、本変形例1では、脚部32の反力伝達面55c,55dには、X方向に垂直なY方向の成分を含む方向に広がっている第一規制面56及び第二規制面57が形成されており、各規制面56.57が反力受け用ローラ65c,65dの対応面66,67に接触している。しかも、この反力受け用ローラ65c,65dは、第一実施形態と同様に、X方向の移動が規制されている。従って、脚部32は、ピストンのZ方向への移動過程で、反力受け用ローラ65c,65dの対応面66,67により、X方向への移動が規制されることになる。
【0073】
従って、本変形例1でも、第一実施形態と同様、脚部ガイド等の部品を追加することなく、ピストンの移動過程で、このピストンの脚部32が傾いたり捩れたりするのを防ぐことができる。
【0074】
ところで、第一実施形態では、進退移動する押棒40に設けられている出力ローラ60a,60bにより、脚部32からX方向の成分を有する力を受けることになるため、この押棒40には、この押棒40の進退方向であるY方向に垂直なX方向の力を受けてしまう。一方、本変形例1では、ハウジング21に固定されている反力支持台82に設けられている反力受け用ローラ65c,65dにより、脚部32からX方向の成分を有する力を受けているため、押棒40には、第一実施形態のように、押棒40の進退方向であるY方向に垂直なX方向の力を受けることはない。よって、本変形例1では、第一実施形態よりも、押棒40を移動させる負荷が少なくて済み、ピストンの押付力をより効率良く押棒40に伝達することができる。
【0075】
「第一実施形態の変形例2」
次に、図5を用いて、以上で説明した第一実施形態の変形例2について説明する。
【0076】
先に説明した変形例1が、各反力伝達面55e,55fのそれぞれに第一規制面56及び第二規制面57を形成したものであるのに対して、本変形例2は、第一反力伝達面(接触部)55eに第一規制面56eを形成し、第二反力伝達面(接触部)55fに第二規制面57fを形成したものである。
【0077】
このため、本変形例2でも、変形例1と同様に、ピストンの傾斜面部50c,50dは、X方向において平坦であり、この傾斜面部50c,50dに接触する出力ローラ60c,60dの外周面もX方向において平坦である。
【0078】
2つの脚部32,32のうちの一方の脚部32に形成されている第一反力伝達面55eの第一規制面56eは、(−)X向き成分を有する力を受けるため、(−)X側に向かうに連れて、押棒40の退行向き((−)Y向き)に傾斜している。また、2つの脚部32,32のうちの他方の脚部32に形成されている第二反力伝達面55fの第二規制面57fは、(+)X向き成分を有する力を受けるため、(−)X側に向かうに連れて、押棒40の進行向き((+)Y)に傾斜している。
【0079】
なお、本変形例2において、第一反力伝達面55eは、第一規制面56eと第二規制面57fとのうち、第一規制面56eのみを含み、この面が、反力伝達面として機能と第一規制面としての機能とを担っている。また、第二反力伝達面55fは、第一規制面56eと第二規制面57fとのうち、第二規制面57fのみを含み、この面が反力伝達面として機能と第二規制面としての機能とを担っている。
【0080】
第一反力伝達面55e(=第一規制面56e)に接触する第一反力受け用ローラ65eの外周は、この面55e(56e)に接触する第一対応面66eが形成されている。また、第二反力伝達面55f(=第二規制面57f)に接触する第二反力受け用ローラ65fの外周は、この面55f(57f)に接触する第二対応面67fが形成されている。このように、各反力受け用ローラ65e,65fは、X方向に対して傾斜している各反力伝達面55e,55f(=規制面56e,57f)に接触する対応面66e,67fを有しているため、X方向に伸びている回転軸を含む断面形状が台形状を成している。言い換えると、各反力受け用ローラ65e,65fの外周面は、X方向に伸びている回転軸に対して傾斜している。
【0081】
従って、本変形例2では、ピストンの脚部32,32の(+)X向きの移動に関しては、第一反力受け用ローラ65eにより規制され、脚部32,32の(−)X向きの移動に関しては、第二反力受け用ローラ65fにより規制される。このため、ピストンの脚部32,32は、ピストンのZ方向への移動過程で、反力受け用ローラ65e,65fにより、X方向への移動が規制されることになる。
【0082】
よって、本変形例2でも、第一実施形態と同様、脚部ガイド等の部品を追加することなく、ピストンの移動過程で、このピストンの脚部32が傾いたり捩れたりするのを防ぐことができる。
【0083】
また、本変形例2では、変形例1と同様、ハウジング21に固定されている反力支持台82と脚部32との関係で、脚部32のX方向の移動を規制しているため、第一実施形態よりも、押棒40を移動させる負荷が少なくて済み、ピストンの押付力をより効率良く押棒40に伝達することができる。
【0084】
なお、本変形例2は、第一実施形態の各脚部32,32の各反力伝達面55a,55bと各反力受け用ローラ65a,65bを変更したものであるが、第一実施形態の各脚部32,32の各傾斜面部50a,50bと各出力ローラ60a,60bを本変形例2と同様に変更してもよい。
【0085】
「第一実施形態の変形例3」
次に、図6を用いて、以上で説明した第一実施形態の変形例3について説明する。
【0086】
先に説明した変形例2は、各反力受け用ローラ65e,65fの外周面をX方向に伸びている回転軸に対して傾斜させたものであるが、本変形例3は、各反力受けローラ65g,65hの回転軸68をX方向に対して傾けたものである。
すなわち、本変形例3の各反力受けローラ65g,65hは、円筒状を成しているものの、その回転軸68をX方向に対して傾けることにより、各反力受けローラ65g,65hの外周面を、各脚部32,32の、X方向に対して傾いている各反力伝達面55e,55fと接触させている。このため、円筒状を成している各反力受けローラ65g,65hの外周面は、各反力伝達面55e,55fと接触する対応面66g,67hとなる。
【0087】
以上、本変形例3においても、変形例2と同様に、ピストンの脚部32,32の(+)X向きの移動を、第一反力受け用ローラ65gにより規制し、脚部32,32の(−)X向きの移動を、第二反力受け用ローラ65hにより規制しているので、基本的に変形例2と同様の効果を得ることができる。
【0088】
なお、本変形例3は、第一実施形態の各脚部32,32の各反力伝達面55a,55bと各反力受け用ローラ65a,65bを変更したものであるが、第一実施形態の各脚部32,32の各傾斜面部50a,50bと各出力ローラ60a,60bを本変形例3と同様に変更してもよい。
【0089】
「第一実施形態の変形例4」
次に、図7を用いて、以上で説明した第一実施形態の変形例4について説明する。なお、図7は、押棒40iや出力ローラ60i等を(−)Z側から(+)Z側に向かって見た状態を示している。
【0090】
本変形例4は、前述したように、第一実施形態の各ローラの数量や配置を変えた変形例である。本変形例4では、押棒40iの退行側端部43iであって、押棒40iの中心軸Cr上に1つの出力ローラ60iを設け、この出力ローラ60iの数量に合わせて、ピストンの脚部32iを1つとし、この脚部32iの(±)X側のそれぞれに反力受け用ローラ65i,65jを設けている。なお、押棒40iの中心軸Crとは、ここでは、押棒40iのX方向における中点を通り、この押棒40iの進退方向(Y方向)に平行な軸のことである。
【0091】
各反力受け用ローラ65i,65jの(−)Y側で、各反力受け用ローラ65i,65jと対向する位置には、反力支持部82i,82jがハウジング21に一体形成されている。各反力支持部82i,82jには、反力受け用ローラ65i,65jの外周面と接する反力受け面(接触部)85i.85jが形成されている。
【0092】
各反力支持部82i,82jの反力受け面85i.85jには、(+)X向き成分を有する力を受ける第一規制面86と、(−)X向き成分を有する力を受ける第二規制面87とが形成されている。この第一規制面86は、反力受け面85i,85j中の(−)X側に位置し、(−)X側に向かうに連れて、押棒40の後退向き((−)Y向き)に傾斜している。また、第二規制面54は、反力受け面85i,85j中の(+)X側に位置し、(−)X側に向かうに連れて、押棒40の進行向き((+)Y向き)に傾斜している。従って、反力受け面85i,85jは、X方向の中央部分が(+)Y側に突出している。
【0093】
各反力受け用ローラ65i,65jの外周には、各反力受け面85i,85jの第一規制面86に接触する第一対応面66と、各反力受け面85i,85jの第二規制面87に接触する第二対応面67とが形成されている。この結果、各反力受け用ローラ65i,65jの外周面は、X方向の中央部分が(+)Y側に突出している反力受け面85i,85jの形状に合うよう、X方向の中央部分が、各反力受け面85i,85jの回転軸に近づく向きに凹んでいる。
【0094】
従って、本変形例4では、ピストンの脚部32iのX方向の移動に関して、各反力受け面85i,85jにより規制される。
【0095】
以上、本変形例4で例示するように、出力ローラ60iを押棒40iの退行側端部43iに設けることを前提にすることで、押棒40iの中心軸Cr上に1つの出力ローラ60iを設けることができ、この1つの出力ローラ60iにより、ピストンからの押付力を(±)X方向でのバランスを崩すことなく、ピストンからの押付力を押棒40iに伝達することができる。このように、出力ローラ60iを一つにすることができる結果、この出力ローラ60iの外周面に接触するピストンの脚部32iも一つにすることができる。
【0096】
したがって、本変形例4では、第一実施形態よりも、出力ローラ及び脚部の数量を少なくすることができ、ブレーキ装置の更なる小型・軽量化を図ることができる。
【0097】
また、本変形例4では、前述したように、ピストンの脚部32iのX方向の移動に関して、各反力受け面85i,85jにより規制されるので、第一実施形態等と同様、脚部ガイド等の部品を追加することなく、ピストンの移動過程で、このピストンの脚部32iが傾いたり捩れたりするのを防ぐことができる。
【0098】
また、本変形例4では、ハウジング21に形成されている反力受け面85i.85jにより、脚部32iからX方向の成分を有する力を受けているため、以上の各変形例1〜3と同様、第一実施形態よりも、押棒40iを移動させる負荷が少なくて済み、ピストンの押付力をより効率良く押棒40iに伝達することができる。
【0099】
なお、第一実施形態や以上の各変形例1〜3では、反力受け用ローラ65a,65bをハウジング21に固定されている反力支持台82に設けたが、本変形例4では、反力受け用ローラ65i,65jを脚部32iに設けている。すなわち、脚部と反力支持部(又は反力支持台)との間に配置される反力受け用ローラは、脚部側に設けても、反力支持部(又は反力支持台)側に設けてもよい。
【0100】
また、本変形例4では、反力支持部82i,82jと反力受け用ローラ65i,65jとの関係で、脚部32iのX方向の移動を規制しているが、第一実施形態と同様に、脚部と出力ローラとの関係で、脚部のX方向の移動を規制するようにしてもよい。
【0101】
さらに、本変形例4において、各反力受け面85i.85j及び各反力受け用ローラ65i,65jの形状等として、変形例2の各反力伝達面55e,55f及び各反力受け用ローラ65e,65fの形状等を採用してもよいし、変形例3の各反力伝達面55e,55f及び各反力受け用ローラ65g,65hの形状等を採用してもよい。
【0102】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る第二実施形態としてのブレーキ装置について、図8及び図9を用いて説明する。
【0103】
本実施形態は、図8に示すように、出力ローラ60k及び反力受け用ローラ65kをピストンの脚部32kに設け、押棒40kに傾斜面部50kを形成したもので、その他の構成に関しては、基本的に第一実施形態と同様である。
【0104】
ピストンの脚部32kの(+)Y側部分には、出力ローラ60kが回転可能に設けられ、この脚部32kの(−)Y側部分には、反力受け用ローラ65kが回転可能に設けられている。この反力受け用ローラ65kの(−)Y側であって、この反力受け用ローラ65kと対向する位置に、反力支持部82kがハウジング21と一体形成されている。この反力支持部82kには、ピストンの進退方向(Z方向)と実質的に平行で、反力受け用ローラ65kの外周面と接する反力受け面85kが形成されている。
【0105】
押棒40kの傾斜面部50kは、第一実施形態の出力ローラ60と同様に、押棒40kの退行側端部43kに設けられている。この傾斜面部50kも、第一実施形態と同様、ピストン30の進退方向(Z方向)に対して傾斜し、且つ(−)Z側に向かうに連れて(+)Y側に向かう。さらに、この傾斜面部50kは、第一実施形態と同様、ピストンの進行向き((+)Z向き)への移動過程で先に出力ローラ60kに接触する先接触傾斜面51kと、次に出力ローラ60kに接触する後接触傾斜面52kとがある。この先接触傾斜面部51kも、第一実施形態と同様、ピストンの退行向き((−)Z向き)に対する角度が、後接触傾斜面部52kよりも大きい。
【0106】
傾斜面部50kが形成されている退行側端部43kの(+)Z側には、Y方向に伸びるキー溝45kが設けられている。ハウジング21には、このキー溝45kをY方向に摺動可能に支持する第二押棒ガイドキー89kが設けられている。なお、図9に示すように、押棒40kの本体に設けられているキー溝44は、第一実施形態と同様に、ハウジング21に設けられている第一押棒ガイドキー81により摺動可能に支持されている。
【0107】
図9に示すように、出力ローラ60k,60kは、脚部32kの(±)X方向のそれぞれの側に、設けられている。また、反力受け用ローラ65kも、同図中に示されていないが、脚部32kの(±)X方向のそれぞれの側に、設けられている。さらに、反力支持部82kも、同図中に示されていないが、2つの反力受け用ローラ65kの数量に合わせて、ハウジング21に2つ形成されている。
【0108】
押棒40kの傾斜面部50k,50k、及びこの傾斜面部50k,50kが形成されている退行側端部43k,43kは、2つの出力ローラ60k,65kの数量に合わせて、2つ設けられている。従って、押棒40の退行側端部43k,43kを支持する第二押棒ガイド溝89k,89kも、ハウジング21に2つ形成されている。
【0109】
押棒40kの傾斜面部50kには、(+)X向き成分を有する力を受ける第一規制面53kと、(−)X向き成分を有する力を受ける第二規制面54kとが形成されている。この第一規制面53kは、傾斜面部50k中の(−)X側に位置し、(−)X側に向かうに連れて、押棒40の進行向き((+)Y向き)に傾斜している。また、第二規制面54kは、傾斜面部50kb中の(+)X側に位置し、(−)X側に向かうに連れて、押棒40の退行向き((−)Y向き)に傾斜している。従って、各傾斜面部50a,50bは、X方向の中央部分が(−)Y側に突出している。
【0110】
出力ローラ60kの外周には、傾斜面部50kの第一規制面53kに接触する第一対応面63kと、傾斜面部50kの第二規制面54kに接触する第二対応面64kとが形成されている。この結果、出力ローラ60kの外周面は、X方向の中央部分が(−)Y側に突出している傾斜面部50kの形状に合うよう、X方向の中央部分が、出力ローラ60kの回転軸に近づく向きに凹んでいる。
【0111】
このため、本実施形態では、ピストンの脚部32kのX方向の移動を、押棒40kの傾斜面部50kで規制することができる。よって、本実施形態でも、第一実施形態と同様、脚部ガイド等の部品を追加することなく、ピストンの移動過程で、このピストンの脚部32kが傾いたり捩れたりするのを防ぐことができる。
【0112】
また、本実施形態では、ピストンの押付力を押棒40kに伝達するにあたり、第一実施形態と同様に、転がり軸受けである出力ローラ60kを介在させているので、ピストンの押付力を効率良く押棒40kに伝達することができる。
【0113】
また、本実施形態では、第一実施形態の出力ローラ60と同様、押棒40kの退行側端部43kに傾斜面部50kを設けているので、押棒40kの二つの支持部間、つまり、滑り軸受け28と押棒ガイドキー81,89kとの間の距離を短くすることができる。この結果、押棒40kの長さを短くでき、ブレーキ装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0114】
さらに、本実施形態では、第一実施形態の出力ローラ60と同様、出力ローラ60kを押棒40bの退行側端部43bに配置しているので、各種ローラの数量及び配置の自由度を高めることができる。すなわち、本実施形態では、ピストンの脚部32kの(±)X方向のそれぞれに出力ローラ60k,60kを設け、各出力ローラ60k,60kに対向するように反力受け用ローラ65k,65kを設けているが、これらの各ローラ60k,65kは、以上で説明した数量及び配置でなくても構わない。そこで、本実施形態に対して各ローラの数量及び配置を変えた変形例について、後述の第二実施形態の変形例で説明する。
【0115】
なお、本実施形態では、ピストンの脚部32kと押棒40kとの関係で、脚部32kのX方向の移動を規制しているが、第一実施形態の変形例1〜4と同様に、ピストンの脚部32kとハウジング21の反力支持部82kとの関係で、脚部32kのX方向の移動を規制するようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、二つの出力ローラ60k,60kのそれぞれに第一対応面63k,64kを形成しているが、第一実施形態の変形例2,3の反力受け用ローラと同様に、二つの出力ローラ60k,60kのうちの一方の出力ローラ60kに第一対応面を形成し、他方の出力ローラ60kに第二対応面を形成してもよい。
【0117】
さらに、本実施形態では、ピストンの脚部32k側に反力受け用ローラ65kを設けたが、第一実施形態及びその変形例1〜3と同様に、反力支持部32k側に反力受け用ローラ65kを設けてもよい。
【0118】
「第二実施形態の変形例」
次に、図10を用いて、以上で説明した第二実施形態の変形例1について説明する。なお、図10は、押棒40mや出力ローラ60m等を(−)Z側から(+)Z側に向かって見た状態を示している。
【0119】
本変形例は、前述したように、第二実施形態の各ローラの数量や配置を変えた変形例である。本変形例では、押棒40mの退行側端部43mであって、押棒40mの中心軸Cr上に1つの傾斜面部50m形成し、この傾斜面部50mの数量に合わせて、ピストンの脚部32mに一つの出力ローラ60mを設けると共に、この出力ローラ60mの(±)X方向のそれぞれに反力受け用ローラ65m,65mを設けている。
【0120】
ピストンの脚部32mは、X方向に伸びる回転軸35mを有している。この回転軸35mに、1つの出力ローラ60m及び2つの反力受け用ローラ65m,65mが設けられている。本変形例では、反力受け用ローラ65m,65mの数量が第二実施形態と同じ2つであるため、本変形例でも、ハウジング21に2つの反力支持部82m,82mが形成されている。
【0121】
押棒40mの傾斜面部50mには、(+)X向き成分を有する力を受ける第一規制面53mと、(−)X向き成分を有する力を受ける第二規制面54mとが形成されている。この第一規制面53mは、傾斜面部50m中の(−)X側に位置し、(−)X側に向かうに連れて、押棒40mの進行向き((+)Y向き)に傾斜している。また、第二規制面54mは、傾斜面部50m中の(+)X側に位置し、(−)X側に向かうに連れて、押棒40mの退行向き((−)Y向き)に傾斜している。従って、この傾斜面部50mは、X方向の中央部分が(−)Y側に突出している。
【0122】
出力ローラ60mの外周には、傾斜面部50mの第一規制面53mに接触する第一対応面63mと、傾斜面部50mの第二規制面54mに接触する第二対応面64mとが形成されている。この結果、出力ローラ60mの外周面は、X方向の中央部分が(−)Y側に突出している傾斜面部50mの形状に合うよう、X方向の中央部分が、出力ローラ60mの回転軸35mに近づく向きに凹んでいる。
【0123】
このため、本変形例では、ピストンの脚部32mのX方向の移動を、押棒40mの傾斜面部50mで規制することができる。よって、本変形例でも、第一実施形態と同様、脚部ガイド等の部品を追加することなく、ピストンの移動過程で、このピストンの脚部32mが傾いたり捩れたりするのを防ぐことができる。
【0124】
以上、本変形例で例示するように、傾斜面部50mを押棒40mの退行側端部43mに設けることを前提にすることで、押棒40mの中心軸Cr上に1つの傾斜面部50mを設けることができると共に、ピストンの中心軸上に1つの出力ローラ60mを設けることができ、この一つの傾斜面部50m及び一つの出力ローラ60mにより、ピストンからの押付力を(±)X方向でのバランスを崩すことなく、ピストンからの押付力を押棒40mに伝達することができる。なお、ピストンの中心軸とは、ここでは、ピストンのX方向における中点を通り、このピストンの進退方向(Z方向)に平行な軸であって、押棒40mの中心軸Crと交わる軸のことである。
【0125】
したがって、本変形例では、第二実施形態よりも、出力ローラ及び傾斜面の数量を少なくすることができ、ブレーキ装置の更なる小型・軽量化を図ることができる。
【0126】
なお、本変形例では、脚部32mに設けた出力ローラ60mと押棒40mとの関係で、脚部32mのX方向の移動を規制しているが、第一実施形態の変形例1〜4と同様に、脚部32mと反力支持部32mとの関係で、脚部32mのX方向の移動を規制するようにしてもよい。
【0127】
また、本変形例では、脚部32mに反力受け用ローラ65mを設けたが、反力支持部82m側に反力受け用ローラmを設けてもよい。
【0128】
「ローラの変形例」
次に、図11を用いて、以上で説明した各種ローラの変形例について説明する。
【0129】
以上の各実施形態及び各変形例で、脚部のX方向の移動を規制するローラは、基本的に、回転軸が伸びている方向において、中心側に近づくに連れて徐々に回転軸に近づく傾斜面で、第一対応面及び第二対応面を形成している。これに対して、本変形例では、移動規制方向であるX方向に伸びているローラ90の回転軸95に対して垂直な面で、第一対応面93及び第二対応面94を形成している。
【0130】
本変形例のローラ90は、以上のように、回転軸95に対して垂直な面な第一対応面9及び第二対応面94の他に、第一対応面93と第二対応面94との間に位置し、回転軸95に対して平行な主接触対応面91を有している。すなわち、本変形例のローラ90の断面形状は、回転軸95が伸びている方向(X方向)における中央部が、この回転軸95に近づく向きに矩形状に凹んでいる。
【0131】
一方、このローラ90の外周に接触する面100には、このローラ90の第一対応面93に接触する第一規制面103と、ローラ90の第二対応面94に接触する第二規制面104と、ローラ90の主接触対応面91に接触する主接触面101とが形成されている。
【0132】
第一規制面103及び第二規制面104は、ローラ90の第一対応面93及び第二対応面94と同様に、移動規制方向であるX方向に対して垂直な面である。また、主接触面101は、ローラ90の主接触対応面91と同様に、X方向に平行な面である。
【0133】
本変形例で、移動規制方向であるX方向に垂直な面である第一規制面103、第二規制面104、第一対応面93及び第二対応面94は、いずれも、ローラ90が接触面100に対して相対的にX方向に移動するのを防ぐガイドとして機能する。なお、接触面100の第一規制面103とローラ90の第一対応面93との間、及び接触面100の第二規制面104とローラ90の第二対応面94との間は、いずれも僅かな隙間があり、ローラ90のX方向への僅かな移動により、第一規制面103と第一対応面93とが接触、又は、第二規制面104と第二対応面94とが接触することになる。また、本変形例で、移動規制方向であるX方向に平行な面である主接触面101及び主接触対応面91は、ローラ90から接触面100への押付力、又は接触面100からローラ90への押付力を伝達する面として機能する。
【0134】
以上、本変形例のローラ90と接触面100でも、ローラ90が接触面100に対して相対的にX方向へ移動するのを防ぐことができる。但し、本変形例では、ローラ90の第一対応面93と第二対応面94との間の間隔寸法、及び面100の第一規制面103と第二規制面104との間の間隔寸法を極めて正確に管理する必要があるため、先に説明したローラやその接触面の方が製造コストの面から好ましい。
【0135】
なお、本変形例のローラ90の断面形状は、回転軸95が伸びている方向(X方向)における中央部が、この回転軸95に近づく向きに矩形状に凹んでいるが、円弧状に凹んでいてもよい。この場合、このローラの外周面に接触する接触面は、ローラの回転軸に近づく向き円弧状に突出することになる。この円弧状の接触面のうち、ローラの回転軸に最も近い点を基準にして、X方向の一方の側が第一規制面を成し、X方向の他方の側が第二規制面を成すことになる。また、ローラの外周面のうち、ローラの回転軸に最も近い点を基準にして、X方向の一方の側が第一対応面を成し、X方向の他方の側が第二対応面を成すことになる。
【0136】
また、以上の各実施形態や各変形例では、ローラの回転軸に近づく向きにローラの外周を凹ませ、接触面を突出させているが、逆に、ローラの回転軸から遠ざかる向きにローラの外周を突出させ、接触面を凹ませてもよい。
【符号の説明】
【0137】
10:ブレーキシュー(制動子)、15:ハンガー、20:駆動ユニット、21:ハウジング、22:空気室、23:空気出入口、28:滑り軸受け、29:コイルバネ、30:ピストン(駆動部材)、31:受圧部、32,32i,32k,32m:脚部、40,40i,40k,40m:押棒(従動部材又は従動部材の本体)、41:押棒の進行側端部、43,43i,43k,43m:押棒の退行側端部、44,45k:キー溝、50,50k,50m:傾斜面部、50a,50c:第一傾斜面部、50b,50d:第二傾斜面部、51,51k:先接触傾斜面、52,52k:後接触傾斜面、53,53k,53m,56,56e,86,103:第一規制面、54,54k,54m,57,57f,87,104:第二規制面、55,55a,55b,55c,55d,55e.55f:反力伝達面、60,60a.60b.60c,60d,60i,60k,60m:出力ローラ、63,63k,63m,66,66e,66g,86,93:第一対応面、64,64k,64m,67,67f,67h,87,94:第二対応面、65.65a,65b.65c,65d,65e,65f,65g,65h,65i,65j,65k,65m:反力受け用ローラ、70:ブラケット、81,89:押棒ガイドキー、82:反力支持台、82j,82k.82m:反力支持部,91:主接触対応面,101:主接触面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力に応じて進退移動する駆動部材と、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に進退移動する従動部材と、該従動部材の進退移動により移動して制動対象に接触する制動子と、を備えているブレーキ装置において、
前記駆動部材と前記従動部材とのうち、一方の部材は、他方の部材に接触する接触部を有し、他方の部材は、該接触部に接触して、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に該従動部材を進退移動させる傾斜面部を有し、
前記傾斜面部は、前記駆動部材の前記進退移動の方向と前記従動部材の前記進退移動の方向とを含む面に対して垂直な移動規制方向のうちの一方の向きの力を受ける第一規制面と、他方の向きの力を受ける第二規制面とを有し、
前記接触部は、前記第一規制面に接触する第一対応面と、前記第二規制面に接触する第二対応面とを有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ装置において、
前記一方の部材は、前記傾斜面部に接触する前記接触部としてのローラと、該ローラを回転可能に且つ前記移動規制方向への移動不能に支持する部材本体と、を有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブレーキ装置において、
前記傾斜面部は、前記移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの進行向きに傾斜している前記第一規制面と、該移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向きに傾斜している前記第二規制面と、を有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記接触部は、第一接触部と、該第一接触部と離れている第二接触部とを有し、
前記第一接触部には前記第一対応面が形成され、前記第二接触部には前記第二対応面が形成され、
前記傾斜面部は、前記第一対応面と接触する前記第一規制面が形成されている第一傾斜面部と、該第一傾斜面部と離れ且つ前記第二対応面と接触する前記第二規制面が形成されている第二傾斜面部とを有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1又は2のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記傾斜面部は、前記移動規制方向に垂直な前記第一規制面及び前記第二規制面と、該移動規制方向に広がっている主接触面と、が形成され、
前記接触部は、前記第一規制面に接触する前記第一対応面と、前記第二規制面に接触する前記第二対応面とが形成されていると共に、前記主接触面に接触する主接触対応面が形成されている、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記接触部と前記傾斜面部とのうち、少なくとも一方の面であって他方に接触する面には、潤滑性の向上と硬度の向上と耐摩耗性の向上とのうち、少なくとも一つを目的とする表面処理が施されている、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記駆動部材の進退移動の方向のうちの進行向き側の進行側端部と、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向き側の退行側端部と、のうちの一方の端部に、前記接触部が設けられ、他方の端部に前記傾斜面部が形成されている、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項8】
駆動力に応じて進退移動する駆動部材と、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に進退移動する従動部材と、該従動部材の進退移動により移動して制動対象に接触する制動子と、該従動部材から該駆動部材に作用する反力を受ける反力支持部と、を備えているブレーキ装置において、
前記駆動部材と前記従動部材とのうちの一方は、他方に接触に接触して、該駆動部材の進退移動により、該進退移動の方向と異なる方向に該従動部材を進退移動させる傾斜面部を有し、
前記反力支持部材と前記駆動部材とのそれぞれは、互いに接触し合う接触部を有し、
前記反力支持部材の前記接触部と前記駆動部材の前記接触部とのうち、一方の部材の接触部は、前記駆動部材の前記進退移動の方向と前記従動部材の前記進退移動の方向とを含む面に対して垂直な移動規制方向のうちの一方の向きの力を受ける第一規制面と、他方の向きの力を受ける第二規制面とを有し、
前記反力支持部材の前記接触部と前記駆動部材の前記接触部とのうち、他方の部材の接触部は、前記第一規制面に接触する第一対応面と、前記第二規制面に接触する第二対応面とを有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のブレーキ装置において、
前記他方の部材は、前記他方の部材に接触する前記接触部としての反力受け用ローラと、該反力受け用ローラを回転可能に且つ前記移動規制方向への移動不能に支持する部材本体と、を有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のブレーキ装置において、
前記駆動部材の進退移動の方向のうちの進行向き側の進行側端部と、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向き側の退行側端部と、のうちの一方の端部に、前記傾斜面部が形成され、他方の端部に、該傾斜面部に接触する出力ローラが回転可能に設けられている、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記一方の部材の前記接触部は、前記移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの退行向きに傾斜している前記第一規制面と、該移動規制方向のうちの一方に向かうに連れて、前記従動部材の進退移動の方向のうちの進行向きに傾斜している前記第二規制面と、を有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記一方の部材の前記接触部は、第一規制接触部と、該第一規制接触部と離れている第二規制接触部とを有し、
前記第一規制接触部には前記第一規制面が形成され、前記第二規制接触部には前記第二規制面が形成され、
前記他方の部材の前記接触部は、前記第一規制面と接触する前記第一対応面が形成されている第一対応接触部と、該第一接触部と離れ且つ前記第二規制面と接触する前記第二対応面が形成されている第二対応接触部とを有している、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項13】
請求項8から10のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記一方の部材の前記接触部は、前記移動規制方向に垂直な前記第一規制面及び前記第二規制面と、該移動方向に広がっている主接触面と、が形成され、
前記他方の部材の前記接触部は、前記第一規制面に接触する前記第一対応面と、前記第二規制面に接触する前記第二対応面とが形成されていると共に、前記主接触面に接触する主接触対応面が形成されている、
ことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載のブレーキ装置において、
前記一方の部材の前記接触部と前記他方の部材の前記接触部とのうち、少なくとも一方の接触部の面であって他方の接触部に接触する面には、潤滑性の向上と硬度の向上と耐摩耗性の向上とのうち、少なくとも一つを目的とする表面処理が施されている、
ことを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−137481(P2011−137481A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296039(P2009−296039)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】