説明

リンギングチョークコンバータ

【課題】帰還不能になった場合においても、二次側主巻線の電圧の上昇を抑制することができるリンギングチョークコンバータを提供する。
【解決手段】一次側主巻線Np、二次側主巻線Nsおよび補助巻線NaからなるトランスTと、制御端子が一次側主巻線Npの一端および補助巻線Naの一端に接続されたスイッチング素子1と、二次側主巻線Nsに接続された整流平滑回路2および電圧検出回路4と、スイッチング素子1のオン/オフを制御するフィードバック制御回路5と、カソードが補助巻線Naの一端に接続されたダイオード17と、アノードがダイオード17のアノードに接続され、カソードがスイッチング素子1の制御端子に接続されたツェナーダイオード18と、一端がダイオード17とツェナーダイオード18の接続部に接続され、他端が補助巻線Naの他端に接続されたコンデンサ19と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンギングチョークコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭用電化製品や事務機器をはじめとする電子機器の電源部には、一般的に高効率で低消費電力化に対するニーズに応え得るスイッチング電源装置が多用されている。
その中でも、リンギングチョークコンバータは絶縁型コンバータであるとともに自励式でその基本動作がシンプルであることから、様々な電子機器の電源部に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来のリンギングチョークコンバータの一例を示す回路図である。図3のリンギングチョークコンバータ200は、一次側主巻線Npおよび二次側主巻線Ns、並びに補助巻線(ゲート駆動巻線)NaからなるトランスT(なおトランスTについては、黒丸印が付された側を一端(巻き始め)側、黒丸印が付された側と反対側を他端(巻き終わり)側とする。以下同じ。)と、一次側主巻線Npに直列接続されたNチャネル型MOSFET(以下、単に「FET」)1と、二次側主巻線Nsに接続された整流平滑回路2と、整流平滑回路2の出力端と電圧検出回路4との間に接続されたツェナーダイオード3と、整流平滑回路2の出力側でツェナーダイオード3の両端に接続された電圧検出回路4と、電圧検出回路4により検出された電圧に基づいてFET1のオン/オフを制御するフィードバック制御回路5と、補助巻線Naに接続された過電流検出回路6と、一次側主巻線Npに接続されたスナバ回路7とを備えている。
【0004】
リンギングチョークコンバータ200では、FET1がオン、ターンオフ、オフ、ターンオンの4つの状態を繰り返すことで、自励発振が行われる。なお、ターンオフとは、FET1がオン状態からオフ状態に移るまでの状態のことをいい、ターンオンとは、FET1がオフ状態からオン状態に移るまでの状態のことをいう。
【0005】
リンギングチョークコンバータ200の概略動作を説明すると、まず、入力電圧が起動抵抗8を介してFET1のゲート−ソース間に印加され、FET1がターンオンする。
【0006】
FET1がターンオンすると、トランスTの一次側主巻線Npに入力電圧が印加され、一次側主巻線NpおよびFET1のドレイン−ソース間にドレイン電流が流れる。
このとき、補助巻線Naは一次側主巻線Npと同極性であるため、一次側主巻線Npとの巻数比に応じた比例電圧が補助巻線Naに誘起される。この電圧は、抵抗12およびコンデンサ11を介してFET1のゲート−ソース間に印加され、FET1は急速にオンする。
【0007】
一方、二次側主巻線Nsは一次側主巻線Npと極性が逆極性になっているので、整流平滑回路2の整流ダイオードに逆電圧が印加される。このため、二次側主巻線Nsに電流は流れず、トランスT(一次側主巻線Np)にエネルギーが蓄積される。
【0008】
FET1のオン期間に、フィードバック制御回路5のNPN型トランジスタ9がオンすると、FET1のゲート−ソース間は実質的にショートされた状態になるので(なお、過電流検出回路6の微小抵抗13の抵抗値はごく小さいので無視している。)、FET1はターンオフし、その後オフする。
【0009】
FET1がオフすると、一次側主巻線Npにドレイン電流が流れなくなり、トランスTに逆起電力が発生して、すべての巻線Np、Ns、Naの極性が反転する。これにより、整流平滑回路2の整流ダイオードに順電圧が印加され、一次側主巻線Npに蓄積されたエネルギーが二次側主巻線Nsから放出される(二次側主巻線Nsから電流が流れる)。
また、FET1のオフ期間に、コンデンサ11は、一端側(FET1のゲート側)が正極性となるように充電される。
【0010】
トランスTに蓄積されたエネルギーがすべて放出されると、すべての巻線Np、Ns、Naの電圧は0になる。そして、FET1のオフ期間に充電されたコンデンサ11が放電することにより、FET1のゲート−ソース間の電圧が上昇し、FET1が再びターンオンする。
リンギングチョークコンバータ200は、以上の動作を繰り返して自励発振を行っている。
【0011】
また、リンギングチョークコンバータ200では、電圧検出回路4やフィードバック制御回路5が正常に動作している場合(以下、帰還可能という。)、何らかの要因で二次側主巻線Nsの電圧が上昇すると、電圧検出回路4がこの上昇を検出するとともにフィードバック制御回路5がFET1のスイッチング動作を制御することで、一次側主巻線Npに流れるドレイン電流を制限して、二次側主巻線Nsの電圧の安定化(過電圧保護)を行っている。
【0012】
具体的には、二次側主巻線Nsの電圧が上昇すると、電圧検出回路4のシャントレギュレータ14のリファレンス端子電圧が上昇して、シャントレギュレータ14のカソード電流が増加する。同時にフォトカプラの発光素子(LED)15に流れる順電流が増加し、フォトカプラの受光素子(フォトトランジスタ)16に流れるコレクタ電流も増加する。コレクタ電流が増加するにより、NPN型トランジスタ9のベース電流が増加してNPN型トランジスタ9がオンする。NPN型トランジスタ9がオンすると、FET1のゲート−ソース間の電圧が低下して、一次側主巻線Npに流れるドレイン電流が減少する。その結果、トランスTに蓄積されるエネルギーが減少して、二次側主巻線Nsの電圧が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−197360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、従来のリンギングチョークコンバータ200では、故障等により電圧検出回路4やフィードバック制御回路5が正常に動作しなくなった場合(以下、帰還不能という。)、FET1によるドライブ量が増加し、二次側主巻線Nsの電圧は上昇する傾向にある。
二次側主巻線Nsの電圧が上昇すると、ツェナーダイオード3がショートし、過電流検出回路6が過電流状態を検出する。その結果、過電流保護動作モードに移行し、出力電圧が低下する。このため、二次側主巻線Nsの電圧が急激に上昇し易い状況となり、ツェナーダイオード3をはじめとするトランス二次側部品のサイズアップ等、コストアップに繋がる対策が必要となっていた。
【0015】
また、従来のリンギングチョークコンバータ200では、ツェナーダイオード3の耐電圧が低い場合に、二次側主巻線Nsの電圧が上昇し過大な電圧が発生すると、トランス二次側で過電圧保護することができず、ツェナーダイオード3がオープン破損してしまい、電圧検出回路4に過大な電圧が印加されてしまうおそれがあった。
【0016】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、帰還不能になった場合においても、二次側主巻線の電圧の上昇を抑制することができるリンギングチョークコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るリンギングチョークコンバータは、一次側主巻線および二次側主巻線、並びに補助巻線からなるトランスと、補助巻線から供給される電圧により駆動されることで、直流入力電圧をスイッチングして二次側主巻線に交流電圧を誘起させるスイッチング素子と、交流電圧を整流、平滑して直流出力電圧として出力する整流平滑回路と、直流出力電圧を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路により検出された電圧に基づいてスイッチング素子のオン/オフを制御するフィードバック制御回路と、を備えたリンギングチョークコンバータであって、スイッチング素子の制御端子が一次側主巻線の一端に導通可能に接続されるとともに、スイッチング素子の電流路の一端が一次側主巻線の他端に導通可能に接続され、スイッチング素子の電流路の他端が補助巻線の他端に導通可能に接続され、カソードが補助巻線の一端に接続されたダイオードと、アノードがダイオードのアノードに接続され、カソードがスイッチング素子の制御端子に接続されたツェナーダイオードと、一端がダイオードとツェナーダイオードとの接続部に接続され、他端がスイッチング素子の電流路の他端に接続されたコンデンサと、をさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、スイッチング素子のオフ期間では、コンデンサがマイナス方向(スイッチング素子の電流路の他端側がプラス)に充電されている。ここで、トランス一次側から二次側への帰還が不能になると、二次側主巻線の電圧が上昇し、これに伴ってコンデンサの充電電圧も上昇する。そして、コンデンサの充電電圧がツェナーダイオードのツェナー電圧(降伏電圧)を超えると、ツェナーダイオードが導通する。その結果、スイッチング素子の制御端子の電圧が引き抜かれて、一次側主巻線に対するドライブ量が減少する。これにより、二次側主巻線の電圧の上昇を抑制することができる。
【0019】
本発明に係るリンギングチョークコンバータにおいて、上記スイッチング素子として、FETとすることができ、該FETのオフ期間中に、補助巻線の他端からダイオードを介して補助巻線の一端に向かって流れる電流によりコンデンサが充電され、FETがターンオンしたときにコンデンサの充電電圧がツェナーダイオードのツェナー電圧を超えていた場合、ツェナーダイオードが導通し、FETのゲート電圧の上昇が抑制されるように構成することが好ましい。
【0020】
本発明に係るリンギングチョークコンバータにおいて、上記ツェナーダイオードのツェナー電圧は、電圧検出回路およびフィードバック制御回路による帰還動作が正常に行われているときのスイッチング素子の制御端子とダイオードのアノード間の電位差より大きな値に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、帰還不能になった場合においても、二次側主巻線の電圧の上昇を抑制することができるリンギングチョークコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るリンギングチョークコンバータの回路図である。
【図2】帰還不能時における本発明に係るリンギングチョークコンバータと従来のリンギングチョークコンバータの出力電圧波形図であって、(a)は入力電圧100V、出力電流0A時の波形図、(b)は入力電圧100V、出力電流0.1A時の波形図である。
【図3】従来のリンギングチョークコンバータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るリンギングチョークコンバータの好ましい実施形態について説明する。
【0024】
[回路構成]
図1に、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100を示す。同図に示すように、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100は、図3に示す従来のリンギングチョークコンバータ200に、以下に説明するダイオード17と、ツェナーダイオード18と、コンデンサ19とが追加されたものである。
なお、図1に示す構成の説明に関し、図3の説明で使用した箇所と同一箇所については同一の参照符号を用いるものとする。
【0025】
本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100は、一次側主巻線Npおよび二次側主巻線Ns、並びに補助巻線NaからなるトランスTと、トランスTの一次側主巻線Npに直列接続されたスイッチング素子1と、トランスTの二次側主巻線Nsに接続された整流平滑回路2と、整流平滑回路2の出力端と電圧検出回路4との間に接続されたツェナーダイオード3と、整流平滑回路2の出力側でツェナーダイオード3の両端に接続された電圧検出回路4と、トランス二次側電圧を一次側にフィードバックしてスイッチング素子1のオン/オフを制御するフィードバック制御回路5と、トランスTの補助巻線Naに接続された過電流検出回路6と、トランスTの一次側主巻線Npに接続されたスナバ回路7とを備えている。
スイッチング素子1は、補助巻線Naから供給される電圧により駆動されることで、直流入力電圧をスイッチングして二次側主巻線Nsに交流電圧を誘起する。整流平滑回路2は、誘起された交流電圧を整流、平滑して直流出力電圧として出力する。電圧検出回路4は、直流出力電圧を検出する。フィードバック制御回路5は、電圧検出回路4により検出された電圧に基づいてスイッチング素子1のオン/オフを制御する。電圧検出回路4は、シャントレギュレータ14と電圧検出用抵抗に並列接続されたフォトカプラの発光素子(LED)15を含む。また、フィードバック制御回路5は、フォトカプラの受光素子(フォトトランジスタ)16と、増幅回路として機能するNPN型トランジスタ9を含む。
なお、本実施形態では、直流の入力電圧が供給される入力端子の一端が一次側主巻線Npの一端(図1中、黒丸印が付された側)に接続され、他端が補助巻線Naの他端(図1中、黒丸印が付された側と反対側)に接続されている。
【0026】
また、本実施形態では、スイッチング素子1として、FETが用いられている。FET1のゲート(制御端子)は、起動抵抗8を介して一次側主巻線Npの一端に接続されるとともにコンデンサ11と抵抗12とが直列接続された回路を介して補助巻線Naの一端(図1中、黒丸印が付された側)にも接続されている。FET1のドレイン(電流路の一端)は、一次側主巻線Npの他端(図1中、黒丸印が付された側と反対側)に接続され、ソース(電流路の他端)は、電流検出用の微小抵抗13を介して補助巻線Naの他端に接続されている。
【0027】
さらに、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100は、ダイオード17と、ツェナーダイオード18と、コンデンサ19とを備えている。
ダイオード17は、アノードがツェナーダイオード18のアノードに接続され、カソードが補助巻線Naの一端に接続されている。ツェナーダイオード18は、カソードがFET1のゲートに接続されている。そして、コンデンサ19は、一端がダイオード17とツェナーダイオード18との接続部に接続され、他端がFET1のソースに接続されている。
【0028】
[動作]
続いて、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100の過電圧保護の動作について、帰還可能の場合と帰還不能の場合に分けて説明する。
なお、自励発振に関する基本動作については従来のリンギングチョークコンバータ200と同じであるため説明を省略する。
【0029】
(帰還可能の場合)
本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100では、二次側主巻線Nsに発生する電圧が上昇すると、電圧検出回路4がこの上昇を検出するとともにフィードバック制御回路5がFET1のスイッチング動作を制御することで、二次側主巻線Nsの電圧を制限する過電圧保護が行われている。
【0030】
具体的には、FET1のオフ期間に発生する二次側主巻線Nsの電圧が上昇すると、電圧検出回路4のシャントレギュレータ14のリファレンス端子電圧が上昇して、シャントレギュレータ14のカソード電流が増加する。同時にフォトカプラの発光素子15に流れる順電流が増加し、FET1のオン期間にフォトカプラの受光素子16に流れるコレクタ電流も増加する。コレクタ電流が増加することにより、NPN型トランジスタ9のベース電流が増加してNPN型トランジスタ9がターンオンする。NPN型トランジスタ9がターンオンすると、FET1のゲート−ソース間の電圧が低下して、一次側主巻線Npに流れるドレイン電流が減少する。その結果、トランスTに蓄積されるエネルギーが減少して、二次側主巻線Nsの電圧が低下する。
なお、ツェナーダイオード18のツェナー電圧は、電圧検出回路4およびフィードバック制御回路5が正常に動作して出力電圧が安定している場合、該ツェナーダイオード18がオンしないような値に設定されている。すなわち、ツェナーダイオード18のツェナー電圧は、電圧検出回路4およびフィードバック制御回路18による帰還動作が正常に行われているときの前記スイッチング素子の制御端子と前記ダイオードのアノード間の電位差より大きな値に設定されている
【0031】
(帰還不能の場合)
一方、故障等により電圧検出回路4やフィードバック制御回路5が帰還不能になった場合、FET1のオフ期間に発生する二次側主巻線Nsの電圧は上昇する傾向にある。
また、FET1のオフ期間は、補助巻線Naの一端が負極性となり、他端が正極性となるので、補助巻線Naの他端から微小抵抗13およびダイオード17を介して補助巻線Naの一端に向かって電流が流れ、この電流によりコンデンサ19が充電される。
このため、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100では、二次側主巻線Nsの電圧が上昇すると、補助巻線Naの電圧が上昇してコンデンサ19の充電電圧も上昇する。コンデンサ19の充電電圧(一端側の電圧)は、ツェナーダイオード18のアノード側に印加される。
ここで、ツェナーダイオード18の両端電圧がツェナー電圧を超えると、ツェナーダイオード18がオン(導通)する。
【0032】
ツェナーダイオード18がオン状態でFET1がターンオンすると、ダイオード17を介して補助巻線Naの一端側から他端側に向けて電流が流れるとともに、コンデンサ11に充電された電荷が放電されることで、コンデンサ11からも、ツェナーダイオード18、ダイオード17を介して補助巻線Naに電流が流れ込む。その結果、FET1のゲート電圧が引き抜かれ、ゲート電圧の上昇が抑制される。これにより、オン時の巻線ドライブ量が減少し、二次側主巻線Nsの電圧の上昇が制限される。
【0033】
以上のように、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100によれば、電圧検出回路4やフィードバック制御回路5に異常が発生する等して帰還不能となった場合においても、二次側主巻線Nsの電圧の上昇を制限することができる。このため、ツェナーダイオード3の耐電圧が低い場合であっても、大きい電力のものを使わないでトランス二次側の過電圧保護を安定して行うことができる。
【0034】
また、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100によれば、二次側主巻線Nsの電圧の上昇を制限することができるので、整流平滑回路2の出力端に接続されたツェナーダイオード3や電圧検出回路4に過大な電圧が印加されてしまうのを防ぐことができる。
これにより、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100によれば、ツェナーダイオード3や、電圧検出回路4を構成する電子部品として比較的耐電圧の低い安価のものを採用することができるので、コストを抑えることができる。
【0035】
[出力電圧の比較]
図2に、帰還不能になった場合における本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100の出力電圧と、従来のリンギングチョークコンバータ200の出力電圧とを比較した結果を示す。同図において、(a)は入力電圧と出力電流の条件をAC100V/0Aとした場合の出力電圧波形図、(b)は入力電圧と出力電流の条件をAC100V/0.1Aとした場合の出力電圧波形図であり、実線で示した波形図が本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100の波形図であり、破線で示した波形図が従来のリンギングチョークコンバータ200の波形図である。
なお、図2では、時刻t1において帰還不能に陥ったものとする。
【0036】
図2に示す出力電圧波形の比較から、入力電圧と出力電流の条件をAC100V/0Aとした場合も、入力電圧と出力電流の条件をAC100V/0.1Aとした場合もともに、帰還不能になった場合における本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100の出力電圧のピーク値V1が、帰還不能になった場合における従来のリンギングチョークコンバータ200の出力電圧のピーク値V2よりも低くなっていることが分かる。
【0037】
これは、本実施形態に係るリンギングチョークコンバータ100では、帰還不能になった場合、補助巻線Naの電圧が上昇するとともにコンデンサ19の充電電圧も上昇してツェナーダイオード18がオンすることにより、FET1のゲート−ソース間の電圧の上昇が制限されて、一次側主巻線Npに流れるドレイン電流が制限され、その結果、一次側主巻線Npに蓄積されるエネルギーが制限されたためである。
【0038】
以上、本発明に係るリンギングチョークコンバータの好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。
【0039】
例えば、上記実施形態では、スイッチング素子としてNチャネル型MOSFETを採用したが、同等の機能を果たすものであれば特に限定されない。
【0040】
また、上記実施形態では、フィードバック制御回路5や電圧検出回路4として、図1に示した構成を採用したが、これらの構成に限定されず、種々の公知の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 リンギングチョークコンバータ
1 Nチャネル型MOSFET(スイッチング素子)
2 整流平滑回路
3 ツェナーダイオード
4 電圧検出回路
5 フィードバック制御回路
6 過電流検出回路
7 スナバ回路
8 起動抵抗
9 NPN型トランジスタ
10、12 抵抗
11 コンデンサ
13 微小抵抗
14 シャントレギュレータ
15 LED(フォトカプラの発光素子)
16 フォトトランジスタ(フォトカプラの受光素子)
17 ダイオード
18 ツェナーダイオード
19 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側主巻線および二次側主巻線、並びに補助巻線からなるトランスと、
前記補助巻線から供給される電圧により駆動されることで、直流入力電圧をスイッチングして前記二次側主巻線に交流電圧を誘起させるスイッチング素子と、
前記交流電圧を整流、平滑して直流出力電圧として出力する整流平滑回路と、
前記直流出力電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路により検出された電圧に基づいて前記スイッチング素子のオン/オフを制御するフィードバック制御回路と、
を備えたリンギングチョークコンバータであって、
前記スイッチング素子の制御端子が前記一次側主巻線の一端に導通可能に接続されるとともに、前記スイッチング素子の電流路の一端が前記一次側主巻線の他端に導通可能に接続され、前記スイッチング素子の電流路の他端が前記補助巻線の他端に導通可能に接続され、
カソードが前記補助巻線の一端に接続されたダイオードと、
アノードが前記ダイオードのアノードに接続され、カソードが前記スイッチング素子の制御端子に接続されたツェナーダイオードと、
一端が前記ダイオードと前記ツェナーダイオードとの接続部に接続され、他端が前記スイッチング素子の電流路の他端に接続されたコンデンサと、
をさらに備えたことを特徴とするリンギングチョークコンバータ。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、FETであり、
前記FETのオフ期間中に、前記補助巻線の他端から前記ダイオードを介して前記補助巻線の一端に向かって流れる電流により前記コンデンサが充電され、前記FETがターンオンしたときに前記コンデンサの充電電圧が前記ツェナーダイオードのツェナー電圧を超えていた場合、
前記ツェナーダイオードが導通し、前記FETのゲート電圧の上昇が抑制されることを特徴とする請求項1に記載のリンギングチョークコンバータ。
【請求項3】
前記ツェナーダイオードのツェナー電圧は、前記電圧検出回路および前記フィードバック制御回路による帰還動作が正常に行われているときの前記スイッチング素子の制御端子と前記ダイオードのアノード間の電位差より大きな値に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリンギングチョークコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−138984(P2012−138984A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287934(P2010−287934)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】