説明

ロボットアーム及びロボットアームの制御方法

【課題】ロボットアームの軌道に障害物がある場合でも、迅速に障害物を退避し、タスクを効率よく実行する。
【解決手段】ハンド部5と、複数の関節11,12,13と、ハンド部5及び関節11,12,13とを連結する複数の連結部14,15,16,17とを有するロボットアーム1であって、ハンド部5が物体を把持して移動する工程と、関節13に備えられたひじあて部6が障害物を押圧する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム及びそのロボットアームの制御方法にかかわり、特に複数の関節を備えたロボットアームの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンクとリンクとを関節にて接続した腕を形成し、腕の先端にハンドが設置されたロボットアームが広く活用されている。そして、ロボットアームはハンドが物体を把持して移動することにより、物体の移動や組み立てる作業に用いられている。
【0003】
移動する予定の物体と該物体を移動するときに障害となる障害物がある状況におけるロボットアームの制御方法が特許文献1に開示されている。これによると、ロボットアームの把持対象となる目標物が障害物に隠れている状況となっている。そして、ロボットアームは物体を把持する物体把持機構を備えている。このとき、ロボットアームは物体把持機構を用いて障害物を邪魔にならない位置まで退避する。次に、ロボットは目標物を認識し目標物を移動していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アーム先端に備えられた物体把持機構を用いて障害物の退避を行うときには多くのステップを行うことになる。詳細には、まず、ロボットは障害物を把持できる位置まで物体把持機構を移動させる。次に、ロボットは物体把持機構に障害物を把持させる。続いて、ロボットは障害物を退避位置まで移動し、障害物を解放する。次に、ロボットは物体把持機構を移動対象物の位置まで戻す。以上のように多くのステップを行う必要があった。つまり、退避作業に多くのステップが行われていた。そこで、作業効率の良いロボットアームの制御方法が求められていた。
【0006】
物体把持機構で障害物を把持して移動することにより障害物の退避を行う。このとき、障害物の大きさや重さが所定の値を超えていた場合には物体把持機構で把持できないことがある。そこで、物体把持機構では把持不可能な重量の物体も移動して生産性良く作業するロボットアームの制御方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかるロボットアームの制御方法は、複数の連結部が関節にて接続されたロボットアームを制御するロボットアームの制御方法であって、前記ロボットアームはハンド部を有し、前記ハンド部が物体を把持して移動する工程と、前記関節または前記連結部を作用点として物体を移動する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、ハンド部が物体を移動する工程と、関節または連結部を作用点として物体を移動する工程とを有している。ハンド部は物体を把持するので、物体の位置を精度良く認識して移動することができる。一方、ハンド部はロボットアームの端に位置しているので、ハンド部を移動するには大きなトルクが必要となる。従って、物体の重量が重いときにはハンド部を用いて物体を移動するトルクでロボットアームを駆動できないときがある。
【0010】
関節または連結部はロボットアームの中間地点に位置するので、ハンド部よりも小さなトルクで物体を移動することができる。また、ハンド部では把持不可能な重量の物体も移動できる。従って、関節または連結部を作用点としてすることにより、作業を中断することなく作業を進行することができる。その結果、作業効率良く作業することができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例に記載のロボットアームの制御方法は、前記ハンド部を作用点として物体を移動するタスクと、前記関節または前記連結部を作用点として物体を移動するタスクと、を評価し、前記評価の結果に基づいて、いずれのタスクを実行するかを決定することが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、ハンド部を作用点として物体を移動するタスクと、関節または連結部を作用点として物体を移動するタスクとを評価している。尚、タスクはある作業を行うときの一連の工程を意味する。該評価結果に基づいて実行するタスクを決定するため、より効率の良いタスクを選択して実行することができる。従って、作業効率に優れたロボットアームを提供することができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例に記載のロボットアームの制御方法は、前記ハンド部で第1の物体を把持しつつ、前記関節または前記連結部を作用点として、第2の物体を移動することが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、ハンド部で第1の物体を把持しつつ、関節または連結部を作用点として、第2の物体を移動する。これにより、第1の物体の移動を中断することなく、第2の物体を移動させることができる。ハンド部で第1の物体を把持しているときに、第2の物体を移動させる必要があることがある。このとき、ハンド部にて第2の物体を移動する方法がある。まず、把持していた第1の物体をハンド部から解放する。次に、ハンド部が第2の物体のある場所へ移動し第2の物体を把持する。続いてハンド部が第2の物体を移動し、第2の物体を解放する。次に、ハンド部が第1の物体のある場所へ移動し第1の物体を把持する。
【0015】
この方法に比べて、本適用例では少ない工程で作業することができる。従って、簡単に作業を完了させることができる為、生産性良く作業することができる。
【0016】
[適用例4]上記適用例に記載のロボットアームの制御方法は、前記タスクの実行時間をロボットアームの動作シミュレーションによって算出し、前記実行時間に基づいて、いずれのタスクを実行するかを決定することが好ましい。
【0017】
本適用例によれば、ハンド部を作用点として物体を移動した場合のタスク実行時間と、関節または連結部を作用点として物体を移動した場合のタスク実行時間とをシミュレーションによって算出している。このとき、ハンド部及びロボットアームの仕様が考慮される。該算出結果に基づいていずれのタスクを実行するかを決定するため、より効率の良いタスクを実行することができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例に記載のロボットアームの制御方法では、前記動作シミュレーションは複数の前記関節を移動する前記実行時間を算出し、各前記タスクにおいて前記関節を移動する前記実行時間のうち最も長く時間のかかる前記実行時間を比較して、いずれのタスクを実行するかを決定することが好ましい。
【0019】
本適用例によれば、各タスクにおいて各関節を移動する実行時間を算出している。そして、各関節を移動する実行時間のうち最も長くかかる実行時間を比較している。従って、各タスクのどちらが短い時間で実行できるかを確実に決定することができる。
【0020】
[適用例6]本適用例にかかるロボットアームは、ハンド部と、複数の関節と、前記ハンド部と前記関節とを連結し前記関節同士を連結する連結部と、前記関節または前記連結部に位置し物体を押圧するひじあて部と、を有し、前記ひじあて部の形状は前記物体が押圧される方向に移動する形状となっていることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、関節または連結部にひじあて部が位置している。そして、ひじあて部は物体の動きを限定するので、物体が押圧される方向に移動する。つまり、物体がひじあて部から離れにくくなる形状となっている。従って、物体がひじあて部から外れることによる作業を実施する必要がなくなる。その結果、タスクを効率良く実行することができる。従って、作業効率に優れたロボットアームを提供することができる。
【0022】
[適用例7]上記適用例に記載のロボットアームでは、前記ひじあて部は、物体の動きを限定するガイド部材を備えることが好ましい。
【0023】
本適用例によれば、ひじあて部には物体の動きを限定するためのガイド部材を備えている。従って、物体が所望の軌道からずれ難くなる。その結果、物体を押圧する方向に確実に移動させることができる。
【0024】
[適用例8]上記適用例に記載のロボットアームは、前記ひじあて部には前記ガイド部材の角度を変化させるアクチュエーターが設けられていることが好ましい。
【0025】
本適用例によれば、ガイド部材の角度を制御できる。従って、物体を押圧する方向に物体が移動するようにひじあて部の形状を適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施例にかかわるロボット制御システムを示す概略構成図。
【図2】ロボットアームを示す模式側面図。
【図3】ひじあて部を示す要部模式平面図。
【図4】ロボットアームを制御する制御部のブロック図。
【図5】ロボットアームの制御方法を説明するための模式図。
【図6】ロボットアームの制御方法を説明するための模式図。
【図7】ロボットアームの制御方法を説明するための模式図。
【図8】対象物を目標位置に移動する作業のフロー図。
【図9】ハンド部とひじあて部とによる退避作業を説明するための図。
【図10】第2の実施例にかかわる対象物を目標位置に移動する作業のフロー図。
【図11】動作時間の演算方法を説明するための図。
【図12】第3の実施例にかかわる対象物を目標位置に移動する作業のフロー図。
【図13】第4の実施例にかかわる対象物を目標位置に移動する作業のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、ハンド部、関節、連結部や移動対象物等の各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部品の尺度を実際とは異ならせて図示している。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態では、ロボットアームのハンド部よりもひじあて部を優先して用いて障害物を退避する特徴的な制御方法の例について、図1〜図9に従って、説明する。
【0029】
(ロボットアーム)
図1は、ロボット制御システムを示す概略構成図である。図2は、ロボットアームを示す模式側面図である。まず、ロボットアーム1の概略構成について図1及び図2に従って説明する。ロボットアーム1は土台9を備えている。土台9上には連結部14、関節11、連結部15、関節12、連結部16、関節13、連結部17、ハンド部5がこの順に接続して配置されている。ロボットアーム1は天吊型であり、土台9が天井に設置されている。そして、連結部14〜17は天井から地上に向かって配置された形態となっている。
【0030】
連結部14〜17は関節11〜13と交互に連結して配置されている。連結部14〜17は人間にたとえると肩と肘を連結する部分や肘と手首とを連結する部分と同じ役割を果たしている。関節12は連結部15と連結部16の間にあり、連結部15及び連結部16の長軸と関節12の回転軸が一致している。これにより、連結部15の長手方向と連結部16の長手方向とは常に平行となっている。関節11及び関節13は連結部14と連結部17とがなす角度を変化させる機能を有している。
【0031】
ハンド部5は角柱状の一対の指部5aを備えている。指部5aは平行移動することにより指部5aの間に物体を挟んで把持する機能を備えている。各関節11,12,13及びハンド部5は内部にはモーターやエンコーダー等からなるアクチュエーター111,121,131,501をそれぞれ備えている。ロボットアーム1は制御部2と電気的に接続されている。詳細には制御部2はロボットアーム1の周辺に配置され、制御部2とロボットアーム1の間及び制御部2とハンド部5との間はロボットアーム1内部に設置された信号線で結ばれている。そして、制御部2は関節11〜13及びハンド部5が内蔵するモーターを駆動する。さらに、関節11〜13及びハンド部5が内蔵するエンコーダーの出力信号を入力して制御部2はロボットアーム1の姿勢を検出する。ロボットアーム1は、制御部2からの制御信号を受けて物体を把持する動作を行う。
【0032】
関節13にはひじあて部6が設置されている。ひじあて部6は物体を押圧して移動させるために設けられたものである。制御部2から受けた制御信号に応じて、関節11〜関節13の角度が変化することによりひじあて部6の位置が変化する。そして、ロボットアーム1は物体にひじあて部6を押圧して物体を移動させることができる。また、ひじあて部6のうち物体と接触する面は滑りにくく磨耗し難い方が良い。従って、ひじあて部6以外の構成要素よりも摩擦抵抗が大きく耐磨耗性のある素材で構成されていることが好ましい。例えば、本体部6aが物体と接触する場所の素材にはゴムやウレタン等の弾性素材を用いることができる。
【0033】
ロボットアーム1の動作範囲には作業台3が設置されている。作業台3のロボットアーム1側の面は作業面3aであり、ロボットアーム1が作業する面となっている。作業面3aは平らに形成され、作業面3aに物体としての対象物4が設置されている。作業面3aは対象物4や障害物等の物体を滑らせて移動することができる面となっている。対象物4は、特に限定されないが、ハンド部5で把持可能な構造をしている。本実施形態では分かりやすくするため長方形としている。ハンド部5は作業面3aにて対象物4を把持し移動する作業を行う。
【0034】
作業台3の上方にはカメラ8が設置されている。カメラ8の撮像範囲には作業面3aの全面及び、その周辺が視野に入るように設定されている。制御部2とカメラ8とは図示しない信号線にて接続されている。そして、カメラ8は撮影した画像を制御部2に出力する。
【0035】
図3は、ひじあて部を示す要部模式平面図であり、ひじあて部6を土台9側から見た図である。図3(a)〜図3(c)は、ガイド部材の角度を変化させた様子を示している。図3(a)はガイド部材が閉じた状態を示し、図3(b)はガイド部材の開き具合が中間の状態を示している。図3(c)はガイド部材21が開いた状態を示している。
【0036】
ひじあて部6は長方形の板状の本体部6aを備えている。該本体部6aの両端にガイド部材21が設置されている。ひじあて部6は本体部6aと隣接してアクチュエーター601を備えており、該アクチュエーター601とガイド部材21とが接続されている。そして、アクチュエーター601はガイド部材21の角度を変化させることが可能になっている。ロボットアーム1が物体をひじあて部6に押し当てて移動する。このとき、制御部2は物体の姿勢や形状に応じてガイド部材21を変化させる。これにより、移動させる物体22がひじあて部6から外れるのを防ぐことが可能となっている。従って、ひじあて部6は物体の動きを規制することができる。
【0037】
ひじあて部6の形状は本体部6aの面とガイド部材21の2面とからなる3面が連なっている。ひじあて部6は3つの面に囲まれた場所に物体22が位置するように、移動する。従って、ガイド部材21の形状は物体22が押圧される方向に移動する形状となっている。
【0038】
図4は、ロボットアームを制御する制御部のブロック図である。図4に示すように、制御部2は中央制御部201と各種制御プログラムや一時データが記憶されるメモリー202を備えている。メモリー202に記憶された各種制御プログラムに従って中央制御部201が動作することにより、各種の機能の制御処理が実行される。
【0039】
制御部2は図示しないインターフェイスを備え、カメラ8、ロボットアーム1、ハンド部5、ひじあて部6はインターフェイスを介して制御部2と接続されている。カメラ8は撮像した画像を画像信号801に変換して制御部2に出力する。ハンド部5はアクチュエーター501を備え、アクチュエーター501を駆動して指部5aの間隔を変更する。ひじあて部6はアクチュエーター601を備え、アクチュエーター601を駆動してガイド部材21の角度を変える。
【0040】
制御部2が行う機能を詳しく分割すると主な機能を実施する機能部として、制御部2はハンド動作計画部203、画像入力部204、オブジェクト認識部205、アーム制御部206を有する。さらに、制御部2はハンド優先軌道計画部207、ひじあて優先軌道計画部208、ハンド制御部209、ガイド角度制御部210の機能部を有する。
【0041】
ハンド動作計画部203はハンド部5に与える制御信号の計画及び生成する処理を行う部である。画像入力部204は、カメラ8が撮影した画像信号801を入力し、オブジェクト認識部205に画像信号801を出力する部である。オブジェクト認識部205は、画像信号801の中からロボットアームのタスク実行に必要な対象物や障害物、ドライバーやドリル等の工具の存在や位置を認識する部である。アーム制御部206はアームを制御する信号を関節11,12,13に備えられたアクチュエーター111,121,131に出力し、ロボットアーム1の姿勢制御を行う部である。ハンド優先軌道計画部207はハンド部5で物体を把持して移動する軌道を計画する部である。ひじあて優先軌道計画部208はひじあて部6を用いて物体を移動する軌道を計画する部である。ひじあて優先軌道計画部208は、オブジェクト認識部205の認識結果を用いて、アームの軌道を計画する。ハンド制御部209はハンド部5に制御信号を出力し、ハンド部5のアクチュエーター501を制御する部である。ガイド角度制御部210は一対のガイド部材21がなす角度を制御する部である。
【0042】
(ロボットアームの制御方法)
図5〜図7はロボットアームの制御方法を説明するための模式図である。本実施形態では、図5に示すように、作業台3に載っている対象物4を作業台3上の目標位置4aに移動する作業の例を説明する。以後、この作業をタスクAと称す。図6に示すように、作業台3上には対象物4と障害物7とが載置されている。タスクAにて対象物4を目標値に移動する軌道の途中に障害物7が位置している。図7に示すように、ロボットアーム1は障害物7を退避目標位置7aに退避する作業も行う。以後、障害物7を退避させる作業をタスクBと称す。
【0043】
図8は対象物を目標位置に移動する作業のフロー図である。次に、タスクA及びタスクBの流れを詳しく説明する。図8に示すように、タスクAが開始される。ステップS101は画像取得ステップである。画像入力部204がカメラ8に対して画像取得命令を出力する。そして、カメラ8は作業台3の周辺を斜め上からみた画像を撮影する。次のステップS102は対象物認識ステップである。画像信号801がカメラ8からオブジェクト認識部205に出力される。そして、オブジェクト認識部205は対象物4の位置、大きさ、姿勢を認識する。次のステップS103は対象物認識したかを判断するステップである。オブジェクト認識部205は対象物4を認識できたか否かを判定する。オブジェクト認識部205が対象物4を認識できたと判定した場合にはステップS104に移行する。オブジェクト認識部205が認識できなかった場合には、ステップS120に移行する。ステップS120はエラー処理ステップである。エラーメッセージ表示等のエラー処理を行なう。そして、タスクAは終了する。
【0044】
ステップS104は対象物を目標位置へ移動するためのハンド優先軌道計画処理ステップである。ハンド優先軌道計画部207がアーム先端に備えられたハンド部5を使って対象物4を目標位置4aに移動する軌道を計画する。次のステップS105は対象物の現在位置から目標位置までの間に障害物ありかを判断するステップである。中央制御部201はハンド優先軌道計画部207が計画した軌道の途中に障害物7が位置するか否かを判定する。このとき、中央制御部201は、カメラ8が取得した画像を用いて判定する。軌道の途中に障害物7が存在しないと中央制御部201が判定した場合にはステップS106に移行する。一方、軌道の途中に障害物7が存在すると中央制御部201が判定した場合はステップS112に移行して障害物7を退避させるタスクBが開始される。
【0045】
次のステップS106は対象物を把持するためのハンド部の動作計画処理ステップである。ハンド動作計画部203は、ハンド部5が対象物4を把持する動作の動作計画処理を行う。次のステップS107はハンド部で対象物を把持可能かを判断するステップである。ステップS106に作成した動作計画において対象物4をハンド部5が把持できるか否かを判定する。把持できないと判定された場合には、ステップS120に移行し、エラー処理の後タスクAを終了する。一方、ステップS107において対象物4をハンド部5で把持できると判定された場合にはステップS108に移行する。
【0046】
ステップS108は対象物を把持可能な位置まで、ハンド部を移動するステップである。ステップS104で計画した軌道計画及びステップS106で計画したハンド部の動作計画に従ってハンド制御部209及びアーム制御部206が対象物4を目標位置4aまで移動する制御を行う。具体的には、ハンド優先軌道計画部207によって計画された関節角度または関節の角速度のパラメーターに応じてアーム制御部206を通じて関節11,12,13に対応したアクチュエーター111,121,131を動かし、各関節11,12,13の角度を制御する。この制御により、対象物4を把持できる位置までハンド部5を移動する。次のステップS109は対象物を把持するステップである。ハンド動作計画部203によって計画されたハンド部の動作計画に従ってハンド制御部209がアクチュエーター501を駆動する。これによりハンド部5が対象物4を把持する。
【0047】
次のステップS110は対象物を所定の高さまで上昇させ、目標位置まで移動するステップである。アーム制御部206が各関節11,12,13の角度を制御することにより対象物4を把持したハンド部5を上昇させる。次に、アーム制御部206がアクチュエーター111,121,131を駆動して対象物4を目標位置4aの上側まで移動する。次のステップS111は対象物を作業台まで下降させ、解放するステップである。アーム制御部206はハンド部5を下降させる。続いて、ハンド制御部209は目標位置4aにて指部5aの間を開くことにより対象物4を解放する。以上の動作により、タスクAが終了する。
【0048】
タスクBのステップS112は障害物を退避するためのひじあて優先軌道計画処理ステップである。ひじあて優先軌道計画部208は障害物7を退避目標位置7aに移動する軌道計画処理を行なう。退避目標位置7aは、対象物4が目標位置4aに移動させる軌道上になく、障害物7が軌道を干渉しない場所となっている。ひじあて優先軌道計画部208はアームの中間部に設置されたひじあて部6を作用点として障害物を退避させる軌道計画処理を行う。つまり、ひじあて部6が障害物7を押して移動させる計画をひじあて優先軌道計画部208が作成する。
【0049】
関節11及び関節12の角度を変えることで、アーム制御部206はひじあて部6の位置を制御できる。軌道計画ではアーム制御部206がひじあて部6を障害物7の近くに移動させた後、ひじあて部6を障害物7に接触させる。続いて、ひじあて部6が障害物7を押して障害物7を退避目標位置7aに退避させる。この軌道計画ではハンド部5が作業台3に衝突しないように、アーム制御部206が関節11,12,13の角度を制御する。
【0050】
次のステップS113は、障害物はひじあて部の移動により退避可能かを判断するステップである。ステップS112で作成した軌道計画において障害物を退避させる軌道が計画できたか否かを判定する。ここで軌道が計画できたと判定する場合にはステップS114に移行する。障害物7を移動させる軌道が計画できなかったと判定する場合にはステップS115に移行する。
【0051】
次のステップS114はひじあて部を作用点とした、障害物の退避制御ステップである。アーム制御部206はアクチュエーター111,121,131を駆動することによりひじあて部6を作用点として障害物7を押して移動させる退避動作を行う。このとき、ガイド角度制御部210は一対のガイド部材21がなす角度を制御する。これにより、ガイド部材21は障害物7の動きを限定し、障害物7が押圧された方向へ移動するようにガイド部材21が誘導する。そして、ハンド部5は障害物7を移動させたい軌道に沿って移動させる。その後、タスクBを終了してステップS119に移行する。
【0052】
ステップS115は障害物を逃避するためのハンド優先軌道計画処理ステップである。ハンド部5を用いて障害物7を退避目標位置7aに移動させる計画をハンド優先軌道計画部207が計画する。次のステップS116は障害物を把持するためのハンド動作計画処理ステップである。ハンド部5を障害物7に移動させて把持させる計画をハンド動作計画部203が計画する。
【0053】
次のステップS117は、障害物はハンド部により退避可能かを判断するステップである。ハンド優先軌道計画部207及びハンド動作計画部203の両方で実現可能な計画を立てられたか否かを中央制御部201が判定する。計画を立てられたと判定された場合は、ステップS118に移行する。計画を立てられなかったと判定された場合は、ステップS121に移行する。ステップS121はエラー処理ステップである。エラーメッセージ表示等のエラー処理を行なう。その後、タスクB及びタスクAは終了する。
【0054】
ステップS118はハンド部を作用点とした障害物の退避制御ステップである。制御部2はハンド部5を作用点としてタスクBを実行する制御を行う。具体的には、アーム制御部206は障害物7を把持できる位置までハンド部5を移動する。そして、ハンド制御部209がハンド部5に障害物7を把持させて上昇させる。続いて、アーム制御部206が障害物7を把持したハンド部5を退避目標位置7aの上側に移動させる。次にアーム制御部206がハンド部5を下降させた後、ハンド制御部209が障害物7を解放する動作が行われる。以上の動作により、ロボットアーム1は障害物7を退避目標位置7aに退避する。
【0055】
次のステップS119は対象物を目標位置へ移動するためのハンド優先軌道計画処理ステップである。ハンド優先軌道計画部207がアーム先端に備えられたハンド部5を使って対象物4を目標位置4aに移動する軌道を計画する。次に、ステップS106に移行する。以降の処理は、障害物が存在しない場合の処理と同様である。
【0056】
(比較例)
図9はハンド部とひじあて部とによる退避作業を説明するための図である。図9に示すように、ハンド部5を用いて障害物7を退避目標位置7aに退避させるときには7つのステップが行われる。まず、ハンド部5で障害物7を把持可能な位置までハンド部5を移動させる。次に、ハンド部5での把持動作を行う。続いて、ハンド部5の上昇動作を行う。続いて、ハンド部5の平行移動動作を行う。次に、ハンド部5の下降動作を行う。続いて、ハンド部5の解放動作を行う。次に、対象物4を把持可能な位置までハンド部5を移動する。
【0057】
一方、ひじあて部6を用いて障害物7を退避目標位置7aに退避させるときには3つのステップが行われる。まず、ひじあて部6で障害物7を押圧可能な位置までひじあて部6を移動する。次に、ひじあて部6での押圧動作を行う。続いて、対象物4を把持可能な位置までハンド部5を移動する。
【0058】
ひじあて部6を用いた退避作業はハンド部5を用いた退避作業より4つのステップを削減することができる。そのステップは、ハンド部5での把持動作、ハンド部5の上昇動作、ハンド部5の下降動作、ハンド部5の解放動作である。従って、ひじあて部6で障害物7を退避した場合は、ハンド部5で障害物7を退避した場合に比べて作業にかかるステップ数が少なく、効率よく作業を実行できる。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、対象物4を移動させる軌道上に障害物7があることを認識した場合には、ハンド部5を用いて障害物7を退避する作業を行っていた。しかし、ハンド部5で把持できる物体の重さ及び大きさには制約がある。所定の重さ及び重さを超える障害物7は退避することが不可能であり、ロボットアーム1による作業を中断せざるを得なかった。ひじあて部6は、連結部14〜連結部17の中間部に位置する関節13に備えられている。従って、ひじあて部6はハンド部5よりも大きな力で障害物7を移動させることができる。また、ひじあて部6は、把持ではなく押圧により障害物7を移動させるため、障害物7の大きさの制約を受け難い。従って、ハンド部5が把持可能な大きさより大きな物体を移動することが可能である。その結果、ロボットアーム1は重いまたは大きな障害物7を退避させることができる。
【0060】
(2)本実施形態によれば、ひじあて部6が障害物7を押圧して移動させている。ハンド部5を用いて障害物7を退避する場合、把持及びその解放を行うための作業を行う必要があった。ひじあて部6で退避する場合は、それらの作業を省略することができるため、タスクを効率よく実行できる。
【0061】
(3)本実施形態によれば、関節13にひじあて部6が位置している。そして、ひじあて部6は物体の動きを限定するので、障害物7が押圧される方向に移動する。つまり、障害物7がひじあて部6から離れにくくなる形状となっている。従って、障害物7がひじあて部6から外れることによる付加作業を実施する必要がなくなる為、作業を効率良く行うことができる。
【0062】
(4)本実施形態によれば、ひじあて部6は障害物7の動きを限定するためのガイド部材21を備えている。そして、障害物7の大きさや形状に合わせて、1対のガイド部材21がなす角度をガイド角度制御部210が制御している。従って、障害物7が所望の軌道からずれ難くなる。その結果、障害物7を押圧する方向に確実に移動させることができる。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、ロボットアーム1の制御方法の一実施形態について図10の対象物を目標位置に移動する作業のフロー図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、障害物7を退避する作業をハンド部5を用いて行った方が速いか、ひじあて部6を用いて行った方が速いかを評価して、早く退避できる方を選択する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0064】
図10において、ステップS201〜ステップS203、ステップS220は第1の実施形態におけるステップS101〜ステップS103、ステップS120と同じステップであり説明を省略する。さらに、ステップS204〜ステップS211は第1の実施形態におけるステップS104〜ステップS111と同じステップであり説明を省略する。
【0065】
ステップS205において、対象物4を目標位置4aまで移動させる軌道に障害物7が存在した場合はステップS212に移行する。ステップS212は障害物を退避するためのひじあて優先軌道計画処理ステップである。ひじあて優先軌道計画部208がひじあて部6を用いて障害物7を退避目標位置7aまで退避する軌道を計画する。次のステップS213は障害物を退避するためのハンド優先軌道計画処理ステップである。ハンド優先軌道計画部207がハンド部5を用いて障害物7を退避目標位置7aまで退避する軌道を計画する。次のステップS214は障害物を把持するためのハンド動作計画処理ステップである。ハンド動作計画部203が障害物7をハンド部5で把持する動作の計画を立てる。
【0066】
次のステップS215は、障害物はハンド部とひじあて部の両方で退避可能かを判断するステップである。ステップS212〜ステップS214を行った結果、障害物7をハンド部5を用いる計画とひじあて部6を用いる計画との両方で障害物7を退避可能かどうかを中央制御部201が判定する。その結果、両方の計画の少なくとも一方の計画が退避不可と判定された場合は、ステップS219に移行する。一方、ステップS215において障害物7の退避にハンド部5を用いる計画とひじあて部6を用いる計画の両方の計画とも退避可能と判定された場合は、ステップS216に移行する。
【0067】
次のステップS219は、障害物はハンド部とひじあて部のいずれかで退避可能かを判断するステップである。中央制御部201はいずれかの手段で退避可能かどうかを判定する。YESと判定した場合は、ステップS220に移行し、NOと判定した場合は、ステップS222に移行する。ステップS222はエラー処理ステップである。エラーメッセージ表示等のエラー処理を行なう。そして、タスクA及びタスクBは終了する。ステップS220はハンド部及びひじあて部のうち、退避可能な方を作用点とした、障害物の退避制御ステップである。制御部2は退避可能な方法を用いた障害物の退避制御を行う。
【0068】
ステップS216はひじあて部を用いた方が、退避時間が短いかを判断するステップである。中央制御部201はハンド部5で障害物7を退避した場合にかかる時間と、ひじあて部6で障害物7を退避した場合にかかる時間とを比較する。ひじあて部6を用いた方の退避時間が短いと判定した場合はステップS217に移行する。ハンド部5を用いた方の退避時間が短いと判定した場合はステップS218に移行する。
【0069】
ステップS217はひじあて部を作用点とした障害物の退避制御ステップである。アーム制御部206はアクチュエーター111,121,131を駆動することによりひじあて部6を作用点として障害物7を押して移動させる退避動作を行う。次にステップS221に移行する。ステップS218はハンド部を作用点とした障害物の退避制御ステップである。制御部2はハンド部5を作用点として障害物7を移動させる障害物退避制御を行う。次にステップS221に移行する。
【0070】
以上の制御より障害物7は対象物4の移動に干渉しない退避目標位置7aに退避されたため、引き続き、ステップS221から対象物4を移動するステップを行う。この移動ステップは第1の実施形態におけるステップS119以降と同じであり、説明を省略する。
【0071】
尚、ハンド部5とひじあて部6をそれぞれ用いて退避制御を行った場合にかかる時間は、ハンド部5及び、ひじあて部6の初期位置と、障害物7の位置及び退避目標位置7aに依存する。第1の実施形態の場合と同様にひじあて部6を用いたほうが、作業を構成するステップ数が少ないため、より短い時間で退避作業を完了できる確率が高い。
【0072】
ステップS212〜ステップS214においてハンド優先軌道計画部207及びひじあて優先軌道計画部208は退避制御をシミュレーションする。そして、退避に必要な時間を求める演算を行う。各関節11,12,13の仕様として、動作可能な最大角速度及び最大角加速度が決まっている。それらの情報と各関節11,12,13に要求される角度変化量とから各関節11,12,13を回転させる制御にかかる時間が求められる。
【0073】
図11は動作時間の演算方法を説明するための図である。図11(a)、図11(b)、図11(c)はそれぞれ関節11、関節12、関節13の例を示している。図11を用いて各関節における最大の角速度及び角加速度で動かした場合にかかる時間を求める方法を説明する。
【0074】
各図において縦軸は角速度を示し、図中上側が下側より大きな角速度となっている。横軸は時間の推移を示し、時間は図中左側から右側へ推移する。図11(a)において第1角速度推移線30は関節11が回転する角速度の推移を示す線である。第1角速度推移線30が示すようにロボットアーム1が移動を開始した直後から関節11は角速度が上昇している。そして、アクチュエーター111の最大角速度となったときから関節11は等角速度にて回転する。次に、目標とする角度に近づいたとき関節11は角速度を減速している。そして、関節11が回転を開始してから終了するまでの時間を第1経過時間30aとする。第1経過時間30aの間で第1角速度推移線30を積分して算出される角度が関節11の回転角度となる。
【0075】
図11(b)において第2角速度推移線31は関節12が回転する角速度の推移を示す線である。第2角速度推移線31は第1角速度推移線30と同様に推移している。そして、関節12が回転を開始してから終了するまでの時間を第2経過時間31aとする。図11(c)において第3角速度推移線32は関節13が回転する角速度の推移を示す線である。第3角速度推移線32は第1角速度推移線30と同様に推移している。そして、関節13が回転を開始してから終了するまでの時間を第3経過時間32aとする。
【0076】
アーム制御部206はアクチュエーター111,121,131を同時に駆動させる。従って、第1角速度推移線30〜第3角速度推移線32は同時に上昇する。そして、ハンド部5を目標位置に移動させる制御にかかる時間は、各関節が角度変化にかかる時間うち最大となる時間である。つまり、第1経過時間30a、第2経過時間31a、第3経過時間32aのうち最大の値が目標位置への移動にかかる時間となる。
【0077】
同様の時間計算をハンド動作計画部203も行う。ハンド動作計画部203はハンド部5による把持に必要な時間を計算する。ハンド動作計画部203、ハンド優先軌道計画部207、ひじあて優先軌道計画部208はこれらの各制御に必要な時間を積算して、ハンド部5を用いて障害物を退避した場合にかかる時間と、ひじあて部6を用いて障害物を退避した場合にかかる時間とを求める。次に、中央制御部201がハンド部5を用いるときの時間とひじあて部6を用いるときの時間とを比較し、移動にかかる時間が短い方法を選択することができる。
【0078】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
【0079】
(1)本実施形態によれば、ハンド部5を用いて障害物7を退避した場合の作業にかかる時間と、ひじあて部6を用いて障害物7を退避した場合の作業にかかる時間とをあらかじめシミュレーションにより計算している。次に、シミュレーションの結果を比較している。そして、アーム先端部に備えられたハンド部5を用いて障害物7を退避した方が速いか、アーム中間部に備えられたひじあて部6を用いて障害物を退避した方が速いかをあらかじめ判断している。より短い時間で終了する方法を選択して、障害物を退避する作業を実行している。従って、より短い時間で効率よく障害物7の退避作業を終了させることができる。つまり、タスクを効率よく実行することができる。
【0080】
(2)本実施形態によれば、ハンド部5を用いて障害物7を退避した場合の作業と、ひじあて部6を用いて障害物7を退避した場合の各タスクにおいて関節11、関節12、関節13を移動する実行時間を算出している。そして、各関節を移動する実行時間のうち最も長くかかる実行時間を比較している。従って、各タスクのどちらが短い時間で実行できるかを確実に決定することができる。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、ロボットアーム1の制御方法の一実施形態について図12の対象物を目標位置に移動する作業のフロー図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、対象物4をハンド部で把持した後に、対象物4を把持しながら、ひじあて部6を作用点として障害物7を退避する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0082】
図12に示すように、対象物4を目標位置4aに移動するタスクAが開始される。ステップS301は画像取得ステップである。中央制御部201がカメラ8に対して画像取得命令を出力する。そして、カメラ8は作業台3の周辺を斜め上からみた画像を撮影する。次のステップS302は対象物認識ステップである。画像信号801がカメラ8からオブジェクト認識部205に出力される。そして、オブジェクト認識部205は対象物4の位置、大きさ、姿勢を認識する。
【0083】
次のステップS303は対象物認識したかを判断するステップである。オブジェクト認識部205は対象物4を認識できたか否かを判定する。オブジェクト認識部205が認識できなかった場合には、ステップS316に移行する。ステップS316はエラー処理ステップである。エラーメッセージ表示等のエラー処理を行なう。そして、タスクAは終了する。
【0084】
ステップS303でオブジェクト認識部205が対象物4を認識できたと判定した場合にはステップS304に移行する。ステップS304は対象物を目標位置へ移動するためのハンド優先軌道計画処理ステップである。ハンド優先軌道計画部207がアーム先端に備えられたハンド部5を使って対象物4を目標位置4aに移動する軌道を計画する。
【0085】
次のステップS305は対象物を把持するためのハンド部の動作計画処理ステップである。ハンド動作計画部203がハンド部5の動作計画を作成する処理を行う。次のステップS306はハンド部で対象物を把持可能かを判断するステップである。ステップS305の動作計画において対象物4をハンド部5が把持できるか否かを判定する。把持できないと判定された場合には、ステップS316に移行し、エラー処理の後タスクAを終了する。一方、ステップS306において対象物4をハンド部5で把持できると判定された場合にはステップS307に移行する。
【0086】
ステップS307は対象物を把持可能な位置まで、ハンド部を移動するステップである。ステップS304で計画した軌道計画及びステップS305で計画したハンド部の動作計画に従ってハンド制御部209及びアーム制御部206が対象物4を目標位置4aまで移動する制御を行う。具体的には、ハンド優先軌道計画部207によって計画された関節角度または関節の角速度のパラメーターに応じてアーム制御部206を通じて関節11,12,13に対応したアクチュエーター111,121,131を動かし、各関節11,12,13の角度を制御する。この制御により、対象物4を把持できる位置までハンド部5を移動する。次のステップS308は対象物を把持するステップである。ハンド動作計画部203によって計画されたハンド部の動作計画に従ってハンド制御部209がアクチュエーター501を駆動する。これによりハンド部5が対象物4を把持する。
【0087】
次のステップS309は対象物の現在位置から目標位置までの間に障害物ありかを判断するステップである。中央制御部201はハンド優先軌道計画部207が計画した軌道の途中に障害物7が位置するか否かを判定する。このとき、中央制御部201は、カメラ8が取得した画像を用いて判定する。軌道の途中に障害物7が存在しないと中央制御部201が判定した場合にはステップS310に移行する。一方、軌道の途中に障害物7が存在すると判定された場合はステップS312に移行して障害物7を退避させるタスクBが開始される。
【0088】
ステップS310は対象物を所定の高さまで上昇させ、目標位置まで移動するステップである。アーム制御部206が各関節11,12,13の角度を制御することにより対象物4を把持したハンド部5を上昇させる。次に、アーム制御部206がアクチュエーター111,121,131を駆動して対象物4を目標位置4aの上側まで移動する。次のステップS311は対象物を作業台まで下降させ、解放するステップである。アーム制御部206はハンド部5を下降させる。続いて、ハンド制御部209は目標位置4aにて指部5aの間を開くことにより対象物4を解放する。以上の動作により、タスクAが終了する。
【0089】
タスクBのステップS312は障害物を退避するためのひじあて優先軌道計画処理ステップである。ひじあて優先軌道計画部208はひじあて部6を作用点として障害物7を退避目標位置7aに移動する軌道計画処理を行なう。
【0090】
次のステップS313は対象物及びアームを作業台に衝突させずに障害物を退避可能かを判断するステップである。中央制御部201は、対象物4とロボットアーム1を作業台3に衝突させることなく、障害物7を退避目標位置7aまで退避可能かどうかを判定する。退避可能と判定した場合は、ステップS314に移行する。退避不可と判定した場合は、ステップS317に移行する。ステップS317はエラー処理ステップである。エラーメッセージ表示等のエラー処理を行なう。その後、タスクB及びタスクAは終了する。
【0091】
ステップS314はひじあて部を作用点とした、障害物の退避制御ステップである。アーム制御部206はアクチュエーター111,121,131を駆動することによりひじあて部6を作用点として障害物7を押して移動させる退避動作を行う。このとき、ステップS312で計画された軌道に従って、退避動作を行う。その後、タスクBを終了してステップS315に移行する。
【0092】
次のステップS315は対象物を目標位置へ移動するためのハンド優先軌道計画処理ステップである。ハンド優先軌道計画部207がアーム先端に備えられたハンド部5を使って対象物4を目標位置4aに移動する軌道を計画する。次に、ステップS310に移行する。以降の処理は、障害物が存在しない場合の処理と同じ処理となる。
【0093】
次のステップS310は対象物を所定の高さまで上昇させ、目標位置まで移動するステップである。アーム制御部206が各関節11,12,13の角度を制御することにより対象物4を把持したハンド部5を上昇させる。次に、アーム制御部206がアクチュエーター111,121,131を駆動して対象物4を目標位置4aの上側まで移動する。次のステップS311は対象物を作業台まで下降させ、解放するステップである。アーム制御部206はハンド部5を下降させる。続いて、ハンド制御部209は目標位置4aにて指部5aの間を開くことにより対象物4を解放する。以上の動作により、タスクAが終了する。
【0094】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、対象物4を把持している途中で軌道上に障害物7を発見したとき、対象物4を把持しながら障害物7をひじあて部にて退避する制御を行っている。この方法は、一旦対象物4を解放した後にハンド部5を用いて障害物7を退避し、再度対象物4を把持する方法と比べて、少ない数のステップで対象物の移動を行うことが出来る。その結果、生産性よく作業を実行することができる。
【0095】
(第4の実施形態)
次に、ロボットアーム1の制御方法の一実施形態について図13の対象物を目標位置に移動する作業のフロー図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、ガイド角度制御部210がガイド部材21の角度を制御する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0096】
本実施形態においては、第1の実施形態のステップS101〜ステップS111、ステップS119〜ステップS121に対応するステップは同じであり説明を省略する。そして、障害物を退避する作業であるタスクBのみを説明する。図13に示すように、まず、障害物7を退避目標位置7aに移動するタスクBが開始されると、ステップS401が行われる。ステップS401は画像取得ステップである。画像入力部204がカメラ8に対して画像取得命令を出力する。そして、カメラ8は作業台3の周辺を斜め上からみた画像を撮影する。次のステップS402は障害物認識ステップである。画像信号801がカメラ8からオブジェクト認識部205に出力される。そして、オブジェクト認識部205は障害物7の位置、大きさ、姿勢を認識する。次のステップS403は障害物認識したかを判断するステップである。オブジェクト認識部205は障害物7を認識できたか否かを判定する。オブジェクト認識部205が認識できなかった場合には、タスクBを終了する。障害物7を認識できたと判定された場合には、ステップS404に移行する。
【0097】
ステップS404は障害物を退避位置へ移動するためのひじあて優先軌道計画処理ステップである。ひじあて優先軌道計画部208はひじあて部6を作用点として障害物7を退避目標位置7aに移動する軌道計画処理を行なう。次のステップS405はひじあて部で対象物を退避可能かを判断するステップである。中央制御部201はひじあて部6を使って障害物7を退避する計画が立てられたか否かを判定する。その結果、退避する計画が立てられなかったと判定された場合は、ステップS408に移行する。ステップS408はエラー処理ステップである。エラーメッセージ表示等のエラー処理を行なう。その後、タスクBは終了する。障害物7を退避する計画が立てられたと判定された場合は、ステップS406に移行する。
【0098】
次のステップS406は障害物の大きさに応じて、ガイド部材21の角度を制御するステップである。ステップS402で認識した障害物の大きさ、形状に従って、ガイド角度制御部210がひじあて部6に供えられたガイド部材21の角度を制御する。
【0099】
ここで、障害物7がひじあて部6に接触する面の幅に応じてガイド角度制御部210はガイド部材21の角度を制御する。図3(c)に示すように、障害物7の幅がひじあて部6の幅よりも広い場合はガイド部材21が最も開いた状態にする。図3(a)に示すように、逆に障害物7の幅が狭い場合はガイド部材21が閉じた状態にする。図3(b)に示すように、障害物7の幅がそれらの中間の場合はガイド部材21の角度も中間の状態となるように制御を行う。また、障害物7がひじあて部6に接触する面が十分広く、かつ曲面の場合は、ひじあて部6と障害物7が接触する面積ができるだけ広くなるよう、ガイド部材21の角度を制御する。これにより、ひじあて部6の形状は障害物7が押圧される方向に移動する形状となる。
【0100】
ガイド部材21の角度を変更する制御は、ガイド角度制御部210がひじあて部6に備えられたアクチュエーター601を駆動することで実施される。尚、このガイド部材21の角度制御は障害物7の姿勢がぶれて、計画した退避軌道から障害物7が外れてしまうことを防止するためにおこなわれる。一対のガイド部材21のなす角度は図3に示した3パターンに限定されない。障害物7を規制する効果が得られる範囲で、一対のガイド部材21のなす角度を制御しても良い。次のステップS407は障害物を退避するステップである。ステップS404にて計画した軌道に従って、アーム制御部206が各関節11,12,13を制御し、障害物7を退避する制御を行う。以上で、タスクBが終了する。
【0101】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、障害物7の形状や大きさに応じて、ひじあて部6に備えられたガイド部材21の角度を制御するようにした。これにより、障害物7がひじあて部6から外れるような動きをガイド部材21によって抑えることができる。また、障害物7とひじあて部6の接触面積が増加するようにガイド角度制御部210がガイド部材21の角度を制御している。これにより、ひじあて部6から障害物7が離れてしまう確率を下げることができる。その結果、作業を中断したり、同一の障害物7を繰り返して退避する作業を行うことを防止することができる為、タスクを効率よく実行できる。
【0102】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良等を加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0103】
(変形例1)
第1の実施形態では、障害物7を退避する際の作用点として、ひじあて部6を用いた。障害物7を退避する際の作用点はこの場所に限らない。ハンド部5以外のロボットアームの任意の点を作用点として、障害物7を押圧してもよい。特に、平面をもつ障害物7に対しては、連結部16,17等の側面を作用点とすると、障害物7との接触面積を広くとることができるため、障害物の姿勢を安定させることができる。また、連結部16,17等の側面を作用点とした場合、障害物7の平面の法線方向に力がかかるように押圧することで、連結部16,17等の側面で滑りを抑えた移動が可能となる。つまり、ひじあて部6を備えないロボットアームでも、アームの中間部を作用点として物体を押圧することで、物体を移動するタスクを効率よく実行できる。この内容は第2の実施形態及び第3の実施形態にも適用することができる。
【0104】
(変形例2)
第1の実施形態では、タスクの開始直後にカメラ8で撮影した1つの画像に基づいて、タスクA及びタスクBの実行可否を判断した。撮影するタイミングはこれに限らない。ハンド部5で対象物4を把持、移動する作業を進めながら、カメラ8で撮影した画像に基づいて、随時把持動作や軌道計画を修正するステップを有するフローとしても良い。対象物4や障害物7の変化に応じて対応することができる。
【0105】
(変形例3)
第1の実施形態では、ひじあて部6は関節13に設置されたが、他の場所に設置しても良い。さらに、2つ以上のひじあて部6を設置してもよい。ロボットアーム1の動作範囲や障害物7の位置する場所に合わせて設置してもよい。障害物7を退避させやすくすることができる。
【0106】
(変形例4)
第1の実施形態では、ガイド部材21は1対の形態としたが、ガイド部材の1方を固定にして他方のみ可動させるようにしても良い。ガイド部材の制御を容易にすることができる。また、ガイド部材21は3つ以上の部材からなっていても良い。ガイド部材21は退避させる障害物7の形状にあわせた形状や数の構成にしても良い。これにより、障害物7を退避させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0107】
1…ロボットアーム、4…物体としての対象物、5…ハンド部、6…ひじあて部、11,12,13…関節、14,15,16,17…連結部、21…ガイド部材、22…物体、601…アクチュエーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連結部が関節にて接続されたロボットアームを制御するロボットアームの制御方法であって、
前記ロボットアームはハンド部を有し、前記ハンド部が物体を把持して移動する工程と、
前記関節または前記連結部を作用点として物体を移動する工程と、を有することを特徴とするロボットアームの制御方法。
【請求項2】
前記ハンド部を作用点として物体を移動するタスクと、前記関節または前記連結部を作用点として物体を移動するタスクと、を評価し、前記評価の結果に基づいて、いずれのタスクを実行するかを決定することを特徴とする、請求項1に記載のロボットアームの制御方法。
【請求項3】
前記ハンド部で第1の物体を把持しつつ、前記関節または前記連結部を作用点として、第2の物体を移動することを特徴とする、請求項1に記載のロボットアームの制御方法。
【請求項4】
前記タスクの実行時間をロボットアームの動作シミュレーションによって算出し、前記実行時間に基づいて、いずれのタスクを実行するかを決定することを特徴とする、請求項2に記載のロボットアームの制御方法。
【請求項5】
前記動作シミュレーションは複数の前記関節を移動する前記実行時間を算出し、各前記タスクにおいて前記関節を移動する前記実行時間のうち最も長く時間のかかる前記実行時間を比較して、いずれのタスクを実行するかを決定することを特徴とする、請求項4に記載のロボットアームの制御方法。
【請求項6】
ハンド部と、複数の関節と、前記ハンド部と前記関節とを連結し前記関節同士を連結する連結部と、前記関節または前記連結部に位置し物体を押圧するひじあて部と、を有し、前記ひじあて部の形状は前記物体が押圧される方向に移動する形状となっていることを特徴とするロボットアーム。
【請求項7】
前記ひじあて部は、物体の動きを限定するガイド部材を備えることを特徴とする請求項6に記載のロボットアーム。
【請求項8】
前記ひじあて部には前記ガイド部材の角度を変化させるアクチュエーターが設けられていることを特徴とする請求項7に記載のロボットアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−125890(P2012−125890A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280191(P2010−280191)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】