説明

乗用型田植機

【課題】 苗の植え付けを行いながら液状の肥料を田面に供給するように構成された乗用型田植機において、施肥ポンプを適切に駆動しながら、一つの水田に供給する液状の肥料の総量が設定量に維持されるように構成する。
【解決手段】 前進の動力を下手側に伝達し後進の動力を遮断する一方向伝動機構を介して、変速装置の動力を苗植付装置への植付伝動系に分岐させ、植付伝動系における一方向伝動機構と苗植付装置との間に植付変速機構を備える。植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から施肥伝動系88,89を分岐させ、施肥伝動系88,89を施肥ポンプに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の植え付けを行いながら液状の肥料を田面に供給するように構成された乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機では、例えば特許文献1に開示されているように、苗の植え付けを行いながら液状の肥料を田面に供給するように構成されたものがある。特許文献1では、液状の肥料を貯留する肥料タンク(特許文献1の図1及び図8の21,31)、肥料タンクの液状の肥料を圧送する施肥ポンプ(特許文献1の図8の23,33)、及び施肥ポンプからの液状の肥料を田面に供給する施肥ノズル(特許文献1の図1及び図8の22,32)を備えている。
【0003】
特許文献1では、ミッションケース(特許文献1の図5の70)から伝動軸(特許文献1の図5の75,7)が延出されて、伝動軸が苗植付装置に接続されており、エンジン(特許文献1の図8のE)の動力が、ミッションケースから伝動軸を介して苗植付装置に伝達されている。この場合、特許文献1では伝動軸(特許文献1の図5の75)から、伝動系(特許文献1の図5の81)が分岐されて施肥ポンプに接続されており、苗植付装置に伝達される動力が分岐して施肥ポンプに伝達されて、施肥ポンプが駆動される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−233216号公報(図1,5,8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗用型田植機では植付変速機構を備えることによって、エンジンの動力が植付変速機構から伝動軸を介して苗植付装置に伝達されるように構成したものがあり、植付変速機構により苗植付装置に伝達される動力を変速することにより、苗植付装置による苗の植付間隔(機体の作業走行速度に対する苗植付装置の植付速度の比)を変更することができる。
【0006】
前述のような乗用型田植機において、苗植付装置への伝動軸から分岐した動力を施肥ポンプに伝達するように構成すると、植付変速機構により苗植付装置に伝達される動力を変速して、苗植付装置による苗の植付間隔を変更すれば、施肥ポンプに伝達される動力も変速されることになり、施肥ポンプから圧送される液状の肥料の量が変化する。これに対して液状の肥料では、苗植付装置による苗の植付間隔に関係なく、一つの水田に供給する液状の肥料の総量が設定量になるようにする方法が一般的なので、前述のように苗植付装置による苗の植付間隔の変更に伴って施肥ポンプに伝達される動力が変速されると、一つの水田に供給する液状の肥料の総量が変化することになる。
本発明は苗の植え付けを行いながら液状の肥料を田面に供給するように構成された乗用型田植機において、施肥ポンプを適切に駆動しながら、一つの水田に供給する液状の肥料の総量が設定量に維持されるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型田植機において次のように構成することにある。
エンジンの動力を変速装置に伝達して、変速装置の動力を前輪及び後輪への走行伝動系に分岐させる。前進の動力を下手側に伝達し後進の動力を遮断する一方向伝動機構を介して、変速装置の動力を苗植付装置への植付伝動系に分岐させ、植付伝動系における一方向伝動機構と苗植付装置との間に植付変速機構を備える。液状の肥料を貯留する肥料タンクと、肥料タンクの液状の肥料を圧送する施肥ポンプと、施肥ポンプからの液状の肥料を田面に供給する施肥ノズルとを備える。植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から施肥伝動系を分岐させ、施肥伝動系を施肥ポンプに接続する。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、エンジンの動力が変速装置に伝達され、変速装置の動力が前輪及び後輪への走行伝動系と、苗植付装置への植付伝動系とに分岐されており、植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から、施肥伝動系が分岐されて施肥ポンプに接続されている。この場合、変速装置の動力が走行伝動系に伝達されるのに加えて、走行伝動系に伝達される動力に同調する動力が、植付伝動系における一方向伝動機構から植付変速機構まで伝達され、植付変速機構で変速された動力が苗植付装置に伝達されるのであり、植付変速機構によって苗植付装置による苗の植付間隔が変更される。
【0009】
これにより、本発明の第1特徴によると、植付変速機構で変速された動力が施肥ポンプに伝達されることはなく、走行伝動系に伝達される動力に同調する動力が施肥ポンプに伝達されることになる。このように走行伝動系に伝達される動力に同調する動力が施肥ポンプに伝達されると、変速装置により走行伝動系に伝達される動力が変速されても、施肥ポンプに伝達される動力も同調するので(機体の走行速度が速くなれば、施肥ポンプから液状の肥料を田面に供給する速度が速くなり、機体の走行速度が遅くなれば、施肥ポンプから液状の肥料を田面に供給する速度が遅くなる)、変速装置により走行伝動系に伝達される動力が変速されても、一つの水田に供給する液状の肥料の総量は変化しない。
【0010】
本発明の第1特徴によると、植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から、施肥伝動系が分岐されて施肥ポンプに接続されている。これにより、変速装置側において走行伝動系に伝達される動力が前進状態及び後進状態に変速されても、前進の動力が一方向伝動機構を介して施肥ポンプに伝達され、後進の動力が一方向伝動機構で遮断されて施肥ポンプに伝達されないのであり、後進の動力により施肥ポンプが逆方向に駆動されて破損すると言うような状態は生じない。
【0011】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、苗の植え付けを行いながら液状の肥料を田面に供給するように構成された乗用型田植機において、走行伝動系に伝達される動力に同調する動力が施肥ポンプに伝達されるように構成することにより、苗植付装置による苗の植付間隔の変更に関係なく、一つの水田に供給する液状の肥料の総量が設定量に維持されるようになり、乗用型田植機の液状の肥料の供給性能を向上させることができた。本発明の第1特徴によると、後進の動力により施肥ポンプが逆方向に駆動されて破損すると言うような状態は生じないので、施肥ポンプの保護と言う面でも有利なものとなった。
【0012】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型田植機において次のように構成することにある。
一方向伝動機構及び植付変速機構をミッションケースの内部に備え、施肥伝動系の一部である施肥出力軸をミッションケースの内部から外部に突出するように備える。植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から施肥出力軸に動力を減速して伝達する減速機構を、ミッションケースの内部に備える。
【0013】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
一般に施肥ポンプの駆動速度は比較的低いものなので、前項[I]に記載のように、走行伝動系に伝達される動力に同調する動力が施肥ポンプに伝達されるように構成する場合に、施肥ポンプに伝達される動力を減速する必要がある。
【0014】
本発明の第2特徴によると、一方向伝動機構及び植付変速機構をミッションケースの内部に備えて、施肥伝動系の一部である施肥出力軸をミッションケースの内部から外部に突出するように備えており、植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から、減速機構を介して動力を施肥出力軸に伝達するように構成している。この場合、減速機構をミッションケースの内部に備えており、前述の減速機構をミッションケースの外部に備える必要がない(ミッションケースの外部に減速機構を備える必要が生じても、ミッションケースの内部の減速機構で既に減速されているので、ミッションケースの外部の減速機構を小型のもの(減速比の小さなもの)に構成することが可能になる)。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、施肥ポンプに伝達される動力を減速する場合、減速機構をミッションケースの内部に備えることにより、施肥伝動系のコンパクト化と言う面で有利なものとなった。
【0016】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の乗用型田植機において次のように構成することにある。
施肥出力軸を取付可能な軸支持部をミッションケースに備えて、ミッションケースの軸支持部を開口加工することにより、施肥出力軸をミッションケースの内部から外部に突出するように支持可能に構成する。
【0017】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
乗用型田植機では、前項[I][II]に記載のような肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えた型式と、肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えない型式の2型式を生産することが多い。
【0018】
本発明の第3特徴によると、一方向伝動機構及び植付変速機構をミッションケースの内部に備えた乗用型田植機において、肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えた型式では、ミッションケースの軸支持部を開口加工して、施肥出力軸をミッションケースの内部から外部に突出するように支持し、植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から、動力を減速機構及び施肥出力軸(施肥伝動系)を介して施肥ポンプに伝達するように構成すればよい。
【0019】
本発明の第3特徴によると、肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えない型式では、ミッションケースの軸支持部をそのままにして開口加工せず、施肥出力軸を備えなければよい。
この場合、最初からミッションケースの軸支持部を開口しておき、肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えない型式では、ミッションケースの軸支持部を蓋部材で塞ぐように構成すると、ミッションケースの軸支持部(蓋部材)から潤滑油が漏れる可能性がある。これに対して、本発明の第3特徴によると、肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えない型式において、ミッションケースの軸支持部に開口加工していないので、ミッションケースの軸支持部から潤滑油が漏れると言うようなことはない
【0020】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、ミッションケースの軸支持部により、肥料タンク、施肥ポンプ及び施肥ノズルを備えた型式と備えない型式とを、適切に生産することができるようになって、乗用型田植機の生産性を向上させることができた。
【0021】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第2又は第3特徴の乗用型田植機において次のように構成することにある。
施肥ポンプに動力を伝動及び遮断自在な施肥クラッチを施肥出力軸に備える。
【0022】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第2又は第3特徴と同様に前項[I]〜[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
乗用型田植機では、苗植付装置による苗の植え付けを行いながら、施肥ノズルによる液状の肥料の田面への供給を行うので、両者は同時に作動を開始し、同時に作動を停止する必要がある。
【0023】
この場合、乗用型田植機では、苗植付装置に動力を伝動及び遮断自在な植付クラッチをミッションケースに備えたものが多くあるので、本発明の第4特徴のように、施肥ポンプに動力を伝動及び遮断自在な施肥クラッチを、ミッションケースに支持される施肥出力軸に備えることによって、植付クラッチと施肥クラッチとが互いに接近したものになる。これにより、苗植付装置による苗の植え付けと、施肥ノズルによる液状の肥料の田面への供給とが、同時に作動を開始し、同時に作動を停止するように、植付クラッチと施肥クラッチとを連係することが比較的容易に行えるようになる。
【0024】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第2又は第3特徴と同様に前項[I]〜[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、植付クラッチと施肥クラッチとを連係することが比較的容易に行えるようになって、構造の簡素化の面で有利なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[1]
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた機体の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3の後部に6条植型式の苗植付装置5が支持されて、乗用型田植機が構成されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、苗植付装置5は、伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された植付ケース7、植付ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、接地フロート9及び苗のせ台10等を備えて構成されている。これにより、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース7が回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
【0027】
[2]
次に、ミッションケース17における右及び左の前輪1、右及び左の後輪2への伝動構造について説明する。
図1に示すように、機体の前部にミッションケース17が固定され、ミッションケース17の前部に連結された支持フレーム18にエンジン19が支持されている。ミッションケース17の右及び左の横側部に右及び左の前車軸ケース20が連結されており、右及び左の前輪1が右及び左の前車軸ケース20の縦軸芯周りに操向自在に支持されている。
【0028】
図4及び図7に示すように、ミッションケース17の左の横側部における上部の前部に静油圧式無段変速装置21(変速装置に相当)が連結されており、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝動ベルト86を介して伝達されている。静油圧式無段変速装置21は中立停止位置を備え、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されている。図7及び図8に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸2bがミッションケース17の内部に入り込んで、略同じ高さになるように前後(静油圧式無段変速装置21の入力軸21aが前側で、静油圧式無段変速装置21の出力軸2bが後側)に配置されており、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aがミッションケース17の前部の上部に位置してミッションケース17の前の壁部17aに近接している。
【0029】
図7及び図8に示すように、伝動軸22がベアリング23を介して回転自在にミッションケース17に支持されて、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bと伝動軸22とがスプライン構造により接続されている。伝動軸22に低速ギヤ24及び高速ギヤ25が固定されており、伝動軸22と平行に配置された伝動軸26に、シフトギヤ27がスプライン構造にて伝動軸26と一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これにより、シフトギヤ27をスライド操作して低速ギヤ24及び高速ギヤ25に咬合させることにより、伝動軸22の動力が高低2段に変速されて伝動軸26に伝達される。
【0030】
図7及び図8に示すように、ミッションケース17、右及び左の前車軸ケース20に亘って一対の伝動軸28が突き合わせて配置されて、一対の伝動軸28の間にデフ機構29が備えられており、デフ機構29のケース29aがベアリング33を介して回転自在にミッションケース17に支持されている。伝動軸26に伝動ギヤ30が固定されており、デフ機構29のケース29aに固定された伝動ギヤ31が伝動ギヤ30に咬合している。
【0031】
図7に示すように、円筒部材32がキー構造により一方の伝動軸28に一体回転及びスライド自在に外嵌されており、円筒部材32をスライド操作する操作軸41、及び操作軸41に連係されたデフロックペダル(図示せず)が備えられている。これにより、デフロックペダルを踏み操作すると、操作軸41が回転操作され、円筒部材32がスライド操作されてデフ機構29のケース29aの端部に咬合するのであり、円筒部材32をデフ機構29のケース29aの端部に咬合させることによって、デフ機構29をロック状態とすることができる。
【0032】
図7に示すように、ミッションケース17の後部に走行出力軸34が備えられて後向きに突出しており、デフ機構29のケース29aに固定されたベベルギヤ35が、走行出力軸34に備えられたベベルギヤ36に咬合している。図1に示すように、右及び左の後輪2を支持する後車軸ケース37が備えられて、走行出力軸34と後車軸ケース37の入力軸(図示せず)とに亘って伝動軸38が接続されている。
これにより、図1及び図7に示すように、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの動力が、伝動軸22,26、デフ機構29、伝動軸28を介して右及び左の前輪1に伝達され、デフ機構29のケース29a、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に伝達される。
【0033】
図7に示すように、ミッションケース17の内部の壁部と走行出力軸34との間に複数の摩擦板39が備えられ、円盤状の操作部材40が走行出力軸34に相対回転自在に外嵌されており、操作部材40をスライド操作する操作軸42、及び操作軸42に連係されたブレーキペダル(図示せず)が備えられ、ブレーキペダルと静油圧式無段変速装置21とが機械的に連係されている。これにより、ブレーキペダルを踏み操作すると、静油圧式無段変速装置21が中立停止位置に操作されて、操作軸42が回転操作され、操作部材40がスライド操作されて、操作部材40が摩擦板39を押圧し、走行出力軸34に制動が掛かる。走行出力軸34に制動が掛かると、デフ機構29及び伝動軸28を介して右及び左の前輪1に制動が掛かるのであり、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に制動が掛かる。
【0034】
[3]
次に、ミッションケース17における苗植付装置5への伝動構造について説明する。
図7に示すように、円筒状の伝動ギヤ43がワンウェイクラッチ44(一方向伝動機構に相当)を介して伝動軸22に外嵌されており、ワンウェイクラッチ44により静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの前進の動力が伝動ギヤ43に伝達され、ワンウェイクラッチ44により静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの後進の動力が伝動ギヤ43に伝達されないように構成されている。
【0035】
図7及び図10に示すように、伝動ギヤ45及び6枚の伝動ギヤ46が一体で回転するように互いに連結されて、伝動ギヤ45及び6枚の伝動ギヤ46が伝動軸26に相対回転自在に外嵌されており、伝動ギヤ43,45が咬合している。伝動軸26と平行に配置された伝動軸47に6枚の変速ギヤ48が相対回転自在に外嵌されて、6枚の伝動ギヤ46及び変速ギヤ48の各々が咬合しており、6枚の変速ギヤ48のうちの一つの変速ギヤ48を選択して伝動軸47に連結及び連結解除自在な操作ロッド49が備えられている。以上のように、6枚の伝動ギヤ46及び変速ギヤ48及び操作ロッド49等により、植付変速機構50が構成されており、操作ロッド49により6枚の変速ギヤ48のうちの一つの変速ギヤ48を選択して伝動軸47に連結することによって、伝動軸26の動力が6段に変速されて伝動軸47に伝達される。
【0036】
図4及び図10に示すように、ミッションケース17の後部の上部に出力軸51が備えられて後向きに突出しており、出力軸51に相対回転自在に外嵌されたベベルギヤ52が伝動軸47に固定されたベベルギヤ53に咬合している。シフト部材54がスプライン構造により出力軸51と一体回転及びスライド自在に外嵌され、シフト部材54をベベルギヤ52との咬合側に付勢するバネ55が備えられて、シフト部材54をベベルギヤ52から離し操作する操作ロッド56が備えられており、伝動軸47の動力を出力軸51に伝動及び遮断自在な植付クラッチ57が構成されている。図1に示すように、出力軸51と苗植付装置5の入力軸(図示せず)とに亘って、伝動軸58が接続されている。
【0037】
これにより、図1,7,10に示すように、伝動軸26の動力が、植付変速機構50、ベベルギヤ52,53、植付クラッチ57、出力軸51及び伝動軸58を介して苗植付装置5に伝達される。植付変速機構50により苗植付装置5(伝動軸47)に伝達される動力を変速することにより、苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付間隔(機体の作業走行速度に対する苗植付装置5(植付アーム8)の植付速度の比)を変更することができる。
【0038】
[4]
次に、ミッションケース17における油圧ポンプ59の伝動構造について説明する。
図7,8,9に示すように、ミッションケース17の右の横側部における上部の前部に油圧ポンプ59が連結されており、油圧ポンプ59の入力軸59aがミッションケース17の内部に入り込んでいる。静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと油圧ポンプ59の入力軸59aとが同芯状に配置されており、油圧ポンプ59の入力軸59aがミッションケース17の前部の上部に位置してミッションケース17の前の壁部17aに近接している。
【0039】
図7,8,9に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと油圧ポンプ59の入力軸59aとに亘って駆動軸60が配置されており、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと駆動軸60とが円筒状の連結部材61を介してスプライン構造により接続され、油圧ポンプ59の入力軸59aと駆動軸60とが円筒状の連結部材62を介してスプライン構造により接続されている。これにより、駆動軸60がミッションケース17の内部に左右方向に沿って配置され、ミッションケース17の前の壁部17aに沿って配置される状態となる。これにより、前項[2]に記載のように、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝達され、駆動軸60を介して油圧ポンプ59に伝達されて、油圧ポンプ59が駆動される。
【0040】
図7,8,9に示すように、ミッションケース17の内部に潤滑油が満たされて、ミッションケース17がオイルバス化されており、ミッションケース17のオイルレベルは静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bよりも少し上側に設定されている。静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bよりも低い位置に、伝動軸26,47及び植付変速機構50、出力軸51、デフ機構29及び伝動軸28、右及び左の前車軸ケース20、走行出力軸34が配置されている。後述する[5]に記載のように、油圧式のパワーステアリング機構63がミッションケース17の前部の上部に連結されており、上部に開口部76aを備えたブリーザパイプ76がパワーステアリング機構63の前側に備えられ、オイルレベルゲージ77がパワーステアリング機構63の後側に備えられている。
【0041】
図7,8,9に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bを囲むボス部17b,17cがミッションケース17に備えられ、油圧ポンプ59の入力軸59aを囲むボス部17dがミッションケース17に備えられており、ミッションケース17のボス部17bの内周部に一対の半円状の切欠き部17eが形成されている。
【0042】
これにより、図7,8,9に示すように、駆動軸60がミッションケース17の潤滑油に入った状態となっており、駆動軸60と連結部材61,62とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。ミッションケース17の潤滑油がベアリング23を通ってミッションケース17のボス部17cの内部に入り込み、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bと伝動軸22とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。
【0043】
図7,8,9に示すように、ミッションケース17の潤滑油がミッションケース17の切欠き部17e、及びミッションケース17のボス部17bと連結部材61との間の隙間を通って、ミッションケース17のボス部17bの内部に入り込み、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと連結部材61とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。ミッションケース17の潤滑油がミッションケース17のボス部17dと連結部材62との間の隙間を通って、ミッションケース17のボス部17dの内部に入り込み、油圧ポンプ59の入力軸59aと連結部材62とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。
【0044】
[5]
次に、右及び左の前輪1の操向構造について説明する。
図7,8,9に示すように、油圧式のパワーステアリング機構63がミッションケース17の前部の上部に連結されており、ミッションケース17及びパワーステアリング機構63の上側に操縦ハンドル64(図1及び図2参照)が備えられて、パワーステアリング機構63と操縦ハンドル64とがステアリング軸(図示せず)を介して連動連結されている。
【0045】
図7,8,9に示すように、ミッションケース17の前の壁部17aに沿って、ステアリング軸65がミッションケース17の前の壁部17aと駆動軸60との間に上下方向に通して配置されており、ミッションケース17の内部において、左右方向に沿って配置され駆動軸60と、上下方向に沿って配置されたステアリング軸65とが交差する状態となっている。
【0046】
図8及び図9に示すように、ステアリング軸65の下部にギヤ65aが形成されて、ステアリング軸65の下部がベアリング66を介して回転自在にミッションケース17に支持されている。ステアリング軸65の上部にボス部65bがスプライン構造により接続されて、ステアリング軸65のボス部65bがブッシュ67を介してミッションケース17のボス部17fに回転自在に支持されており、パワーステアリング機構63の出力軸63aとステアリング軸65のボス部65bとがスプライン構造により接続されている。
【0047】
図8に示すように、ミッションケース17の下部に操向軸68が回転自在に支持され、操向軸68の上部に固定されたギヤ68aがステアリング軸65のギヤ65aに咬合しており、操向軸68の下部に固定された操向部材68bと右及び左の前輪1とに亘ってタイロッド(図示せず)が接続されている。これにより、操縦ハンドル64を操作すると、パワーステアリング機構63を介してステアリング軸65が回転操作され、操向軸68の操向部材68bが揺動操作されて、右及び左の前輪1が操向操作される。
【0048】
図9に示すように、ミッションケース17の右の横側部における下部の前部にフィルター70が連結されて、ミッションケース17の右の壁部17iに形成された内部油路17gが、フィルター70から油圧ポンプ59に亘って接続されている。油圧ポンプ59とパワーステアリング機構63とに亘って油圧配管71が接続されており、油圧シリンダ4(図1及び図2参照)に作動油を給排操作する制御弁(図示せず)と、パワーステアリング機構63とに亘って油圧配管72が接続されている。
【0049】
これにより、図9に示すように、ミッションケース17の潤滑油が作動油として吸入口(図示せず)からフィルター70に吸入され、フィルター70からミッションケース17の内部油路17gを介して油圧ポンプ59に供給される。油圧ポンプ59の作動油が油圧配管71を介してパワーステアリング機構63に供給され、油圧配管72を介して制御弁に供給されるのであり、制御弁からミッションケース17に戻される。
【0050】
図8及び図9に示すように、ミッションケース17の内部において、静油圧式無段変速装置21からオーバーフローした作動油を排出する配管73から延出され、配管73がミッションケース17の左の壁部17jの内面に沿って、駆動軸60と伝動軸26との間を下方に延出され後方に延出されて、左の前車軸ケース20に接続されている。ミッションケース17の左の壁部17jの内面にコ字状の受け部17hが一体的に形成されて、配管73がミッションケース17の受け部17hに入れ込まれており、ボルト74及び座金75により配管73が固定されている。
これにより、図7,8,9に示すように、静油圧式無段変速装置21からオーバーフローした作動油が配管73を介して左の前車軸ケース20に戻されるのであり、左の前車軸ケース20の作動油がベアリング33を通ってミッションケース17の内部に戻る。
【0051】
[6]
次に、第1及び第2施肥ノズル82,83による液状の肥料の田面への供給について説明する。
図1,2,3に示すように、エンジン19を覆うボンネット12の下部の右及び左横側に、畦から運転座席11への乗降用のステップ13が備えられて、支持フレーム18から支持フレーム110が右及び左の横外側に延出されており、予備苗のせ台14aを備えた支持フレーム14が、右及び左のステップ13の横外側に位置するように支持フレーム110に固定されている。右及び左の支持フレーム14に支持フレーム15が横外側に向けて固定されており、液状の肥料を貯留する肥料タンク16,69が右及び左の支持フレーム15に固定されている。
【0052】
図1,2,3,5に示すように、右及び左の肥料タンク16,69の前部に、蓋部16a,69aが後部支点周りに開閉自在に備えられ、平面視コ字状のフレーム16b,69bが備えられている。図13及び図14に示すように、右及び左の肥料タンク16,69の前部の横軸芯P2周りにピン112が回転自在に支持されて、ピン112に固定されたブラケット112aにフレーム16b,69bがスライド自在に挿入されており、フレーム16b,69bとピン112のブラケット112aとの間にバネ113が備えられている。
【0053】
図13の実線及び図14に示す状態は、右及び左の肥料タンク16,69の前部に固定されたブラケット16d,69dに、フレーム16b,69bの端部を挿入した状態であり、ピン112のブラケット112a及び右及び左の肥料タンク16,69のブラケット16d,69dにより、フレーム16b,69bが図13の実線及び図14に示す状態に固定された状態である。これにより、肥料缶(図示せず)をフレーム16b,69bに載せながら、右及び左の肥料タンク16,69の蓋部16a,69aを開けて、右及び左の肥料タンク16,69に液状の肥料を補給する。図13の実線及び図14に示す状態からフレーム16b,69bを紙面左方にスライドさせて、フレーム16b,69bの端部を右及び左の肥料タンク16,69のブラケット16d,69dから抜くことにより、フレーム16b,69bをピン112と一緒に横軸芯P2周りに下方に向けることができる(図5の実線及び図13の二点鎖線参照)。
【0054】
図3及び図5に示すように、右及び左の肥料タンク16,69の内部に前後方向に沿って駆動軸78が回転自在に支持され、駆動軸78に攪拌羽根78aが固定されており、駆動軸78を回転駆動する電動モータ79が右及び左の肥料タンク16,69の後部に備えられている。これによって、電動モータ79により駆動軸78を回転駆動し、液状の肥料を攪拌することによって、液状の肥料の固化を防止している。
【0055】
図1,3,4,5に示すように、左の支持フレーム14(左の肥料タンク16)の下部に、6個の施肥ポンプ80が左右方向に向いた状態で前後方向に並べて連結されて固定されており、左の肥料タンク16の後部の下部から延出された出口パイプ16cが、最後部の施肥ポンプ80に接続されている(6個の施肥ポンプ80は内部で互いに連通している)。右の支持フレーム14(右の肥料タンク69)の下部に、3個の施肥ポンプ81が左右方向に向いた状態で前後方向に並べて連結されて固定されており、右の肥料タンク69の後部の下部から延出された出口パイプ69cが、最後部の施肥ポンプ81に接続されている(3個の施肥料ポンプ81は内部で互いに連通している)。
【0056】
図1及び図4に示すように、植付アーム8による6つの植付条の各々に6つのパイプ状の第1施肥ノズル82が備えられ、第1施肥ノズル82の出口が植付条の横側の田面内の浅い位置に配置されている。6つの植付条に対し、3つのパイプ状の第2施肥ノズル83(6つの植付条の1条及び2条用、3条及び4条用、5条及び6条用)が備えられ、第2施肥ノズル83の出口が、植付条の間の田面から第1施肥ノズル82の出口よりも深い位置に配置されている。6つの施肥ポンプ80と6つの第1施肥ノズル82との各々がホース84によって接続され、3つの施肥ポンプ81と3つの第2施肥ノズル83の各々とがホース85によって接続されている。
【0057】
以上の構造により、図1及び図4に示すように、苗植付装置5による苗の植え付けに伴って施肥ポンプ80,81が駆動されて、左の肥料タンク16の液状の肥料が施肥ポンプ80、ホース84及び第1施肥ノズル82を介して、植付条の横側の田面内の浅い位置に供給され、右の肥料タンク69の液状の肥料が施肥ポンプ81、ホース85及び第2施肥ノズル83を介して、植付条の間の田面内の深い位置に供給される。
【0058】
[7]
次に、施肥ポンプ80,81の駆動構造について説明する。
図11及び図12に示すように、ミッションケース17の内部において、ミッションケース17の右及び左の壁部17i,17jの伝動軸26の近くに、ベアリング受け部17k,17m(軸支持部に相当)が形成されている。図12に示す状態は、ミッションケース17のベアリング受け部17k,17mを開口加工していない状態で、ミッションケース17のベアリング受け部17k,17mに何も支持させない状態であり、右及び左の肥料タンク16,69、施肥ポンプ80,81、ホース84,85、第1及び第2施肥ノズル82,83を備えない型式である。
【0059】
図8及び図11に示す状態は、右及び左の肥料タンク16,69、施肥ポンプ80,81、ホース84,85、第1及び第2施肥ノズル82,83を備えた型式である。ミッションケース17のベアリング受け部17kが開口加工されて、ベアリング87を介して第1施肥出力軸88が回転自在に支持されており、第1施肥出力軸88がミッションケース17の右の壁部17iから外部に突出している。第1施肥出力軸88に伝動ギヤ90(減速機構に相当)が固定されて、植付変速機構50の最も小径の伝動ギヤ46に伝動ギヤ90が咬合している。
【0060】
図4及び図11に示すように、ミッションケース17のベアリング受け部17kの外部を覆うように、支持ケース91がミッションケース17の右の壁部17iに固定され、第1施肥出力軸88と同芯状で相対回転自在に、第2施肥出力軸89が支持ケース91に回転自在に支持されている。シフト部材92がスプライン構造にて第2施肥出力軸89と一体回転及びスライド自在に外嵌されており、シフト部材92を第1施肥出力軸88への咬合側に付勢するバネ93、シフト部材92を第1施肥出力軸88から離間操作する操作軸94が備えられて、第1施肥出力軸88とシフト部材92との間で施肥クラッチ95が構成されている。ミッションケース17の右の壁部17iの外部に凸部17nが形成されており、操作軸94がミッションケース17の凸部17nに接当することにより、操作軸94が支持ケース91から抜けない。
【0061】
図3及び図4に示すように、複数段に変速自在な変速機構96が右のステップ13の下部に固定され、右及び左のステップ13の下部に亘って1本の伝動軸97が支持フレーム18に回転自在に支持されており、第2施肥出力軸89に固定された出力スプロケット89aと、変速機構96の入力スプロケット96aとに亘って伝動チェーン98が巻回されて、伝動軸97に固定された入力スプロケット97aと、変速機構96の出力スプロケット96bとに亘って伝動チェーン99が巻回されている。
【0062】
図6に示すように、施肥ポンプ80,81は、液状の肥料を圧送するローター100、ローター100に接続された駆動軸101、駆動軸101に相対回転自在に外嵌された一対の伝動スプロケット102、キー構造にて駆動軸101に一体回転及びスライド自在に外嵌されたシフト部材103、シフト部材103を伝動スプロケット102への咬合側に付勢するバネ104、シフト部材103を伝動スプロケット102から離間操作する操作アーム105等を備えて構成されている。
【0063】
図6に示すように、液状の肥料が施肥ポンプ80,81の内部におけるローター100の紙面左側の部屋に入り込み、ローター100の回転により液状の肥料が施肥ポンプ80,81の内部におけるローター100の紙面右側の部屋に圧送され、プラグ106からホース84,85に圧送される。この場合、施肥ポンプ80,81の上側にプラグ106を接続していることにより、施肥ポンプ80,81の内部におけるローター100の紙面右側の部屋に空気が滞留しかけても、空気がプラグ106からホース84,85に圧送され易くなる。
【0064】
図3,4,6に示すように、伝動軸97の左の端部に出力スプロケット97bが固定されて、一つの施肥ポンプ80の伝動スプロケット102と、伝動軸97の出力スプロケット97bとに亘って伝動チェーン107が巻回されており、各々隣接する施肥ポンプ80の伝動スプロケット102に亘って伝動チェーン108が巻回されている。伝動軸97の右の端部の近傍に伝動軸109が回転自在に支持され、伝動軸97の右の端部に固定された伝動ギヤ97cと伝動軸109に固定された伝動ギヤ109aとが咬合しており、伝動軸109に固定された出力スプロケット109bと、一つの施肥ポンプ81の伝動スプロケット102とに亘って伝動チェーン107が巻回されており、各々隣接する施肥ポンプ81の伝動スプロケット102に亘って伝動チェーン108が巻回されている。
【0065】
以上の構造により、図7及び図10に示すように、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21、伝動軸22,26、デフ機構29、伝動軸28を介して右及び左の前輪1に伝達され、デフ機構29のケース29a、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に伝達される。静油圧式無段変速装置21の前進の動力がワンウェイクラッチ44、伝動ギヤ43,45、植付変速機構50(伝動ギヤ46,48)、ベベルギヤ52,53、植付クラッチ57、出力軸51及び伝動軸58を介して苗植付装置5に伝達される。
【0066】
図4,7,10,11に示すように、ワンウェイクラッチ44と植付変速機構50(伝動ギヤ46)との間の動力(植付変速機構50において操作ロッド49により伝動軸26の動力が6段に変速されて伝動軸47に伝達される前の動力)が、伝動ギヤ90、第1施肥出力軸88、施肥クラッチ95、第2施肥出力軸89、伝動チェーン98、変速機構96、伝動チェーン99、伝動軸97、伝動チェーン107,108を介して施肥ポンプ80,81に伝達される。
【0067】
図4,6,11に示すように、変速機構96を操作することによって、施肥ポンプ80,81の駆動速度を変速して、施肥ポンプ80,81による液状の肥料の圧送量を変更することができる。操作軸94によりシフト部材92を第1施肥出力軸88から離間操作して、施肥クラッチ95を遮断状態に操作することにより、全ての施肥ポンプ80,81を停止させることができるのであり、操作アーム105によりシフト部材103を伝動スプロケット102から離間操作することにより、所望の施肥ポンプ80,81を停止させることができる。
【0068】
この場合、図4,10,11に示すように、植付クラッチ57(操作ロッド56)と施肥クラッチ95(操作軸94)とが互いに接近したものとなっており、操作ロッド56と操作軸84とが連係リンク(図示せず)により機械的に連係されている。これにより、操作ロッド56により植付クラッチ57が伝動状態に操作されると、これに連動して操作軸94により施肥クラッチ95が伝動状態に操作され、操作ロッド56により植付クラッチ57が遮断状態に操作されると、これに連動して操作軸94により施肥クラッチ95が遮断状態に操作される。
【0069】
図2,4,6に示すように、6つの植付条において、1条及び2条用の植付アーム8を停止させる第1少数条クラッチ(図示せず)、3条及び4条用の植付アーム8を停止させる第2少数条クラッチ(図示せず)、5条及び6条用の植付アーム8を停止させる第3少数条クラッチ(図示せず)が備えられている。第1少数条クラッチとこれに対応する施肥ポンプ80,81(操作アーム105)、第2少数条クラッチとこれに対応する施肥ポンプ80,81(操作アーム105)、第3少数条クラッチとこれに対応する施肥ポンプ80,81(操作アーム105)の各々が、ワイヤ111により機械的に連係されている。これにより、第1,2,3少数条クラッチが伝動状態に操作されると、これに対応する施肥ポンプ80,81(操作アーム105)が伝動状態に操作され、第1,2,3少数条クラッチが遮断状態に操作されると、これに対応する施肥ポンプ80,81(操作アーム105)が遮断状態に操作される。
【0070】
例えば1日の作業を開始する場合、ホース84,85や第1及び第2施肥ノズル82,83に液状の肥料が充填されていないと、苗の植え付けを開始した際に、これと同時に第1及び第2施肥ノズル82,83から田面に液状の肥料が供給されず、少し遅れて田面に液状の肥料が供給されるような状態になることがある。
この乗用型田植機では、図3及び図4に示す伝動軸97を手動で回転駆動可能な手動ハンドル(図示せず)が備えられている。これにより、変速機構96を中立位置に操作した状態で手動ハンドルにより伝動軸97を回転駆動することにより、施肥ポンプ80,81を駆動して、ホース84,85や第1及び第2施肥ノズル82,83に液状の肥料が充填させておくことができる。
【0071】
[発明の実施の別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、静油圧式無段変速装置21に代えて、複数段の前進位置と後進位置とを備えた有段変速型式の変速装置を使用したり、複数段の変速位置を備えた変速装置と前後進切換装置とを直列に配置して変速装置を構成してもよい。
【0072】
電動モータ79により駆動軸78を回転駆動を常時行うのではなく、右及び左の肥料タンク16,69の蓋部16a,69aを開き操作すると電動モータ79が作動し、右及び左の肥料タンク16,69の蓋部16a,69aを閉じ操作すると電動モータ79が停止するように構成してもよい。右及び左の肥料タンク16,69の蓋部16a,69aを開き操作すると電動モータ79が作動し、設定時間の経過後に電動モータ79が自動的に停止するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】乗用型田植機の全体正面図
【図4】施肥ポンプへの施肥伝動系を示す概略図
【図5】左の肥料タンク及び施肥ポンプの付近の側面図
【図6】左の肥料タンクの下側の施肥ポンプの付近の縦断正面図
【図7】ミッションケースの横断平面図
【図8】ミッションケースの前部の縦断側面図
【図9】ミッションケースの前部の縦断正面図
【図10】ミッションケースの出力軸の付近の横断平面図
【図11】ミッションケースの第1及び第2施肥出力軸の付近の横断平面図
【図12】右及び左の肥料タンク、施肥ポンプ、ホース、第1及び第2施肥ノズルを備えない型式において、ミッションケースのベアリング受け部を開口加工していない状態で、ミッションケースのベアリング受け部に何も支持させない状態を示すミッションケースの横断平面図
【図13】右及び左の肥料タンクの前部の側面図
【図14】右及び左の肥料タンクの前部の平面図
【符号の説明】
【0074】
1 前輪
2 後輪
5 苗植付装置
17 ミッションケース
17k ミッションケースの軸支持部
19 エンジン
21 変速装置
44 一方向伝動機構
50 植付変速機構
80,81 施肥ポンプ
88,89 施肥出力軸
90 減速機構
95 施肥クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を変速装置に伝達して、前記変速装置の動力を前輪及び後輪への走行伝動系に分岐させ、
前進の動力を下手側に伝達し後進の動力を遮断する一方向伝動機構を介して、前記変速装置の動力を苗植付装置への植付伝動系に分岐させ、前記植付伝動系における一方向伝動機構と苗植付装置との間に植付変速機構を備えると共に、
液状の肥料を貯留する肥料タンクと、前記肥料タンクの液状の肥料を圧送する施肥ポンプと、前記施肥ポンプからの液状の肥料を田面に供給する施肥ノズルとを備えて、
前記植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から施肥伝動系を分岐させ、前記施肥伝動系を施肥ポンプに接続してある乗用型田植機。
【請求項2】
前記一方向伝動機構及び植付変速機構をミッションケースの内部に備え、前記施肥伝動系の一部である施肥出力軸をミッションケースの内部から外部に突出するように備えると共に、
前記植付伝動系における一方向伝動機構と植付変速機構との間の部分から施肥出力軸に動力を減速して伝達する減速機構を、前記ミッションケースの内部に備えてある請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
前記施肥出力軸を取付可能な軸支持部をミッションケースに備えて、前記ミッションケースの軸支持部を開口加工することにより、前記施肥出力軸をミッションケースの内部から外部に突出するように支持可能に構成してある請求項2に記載の乗用型田植機。
【請求項4】
前記施肥ポンプに動力を伝動及び遮断自在な施肥クラッチを施肥出力軸に備えてある請求項2又は3に記載の乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−82507(P2007−82507A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278253(P2005−278253)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】