説明

二次電池システム

【課題】拘束圧力による発電要素の過度なストレスを回避し、二次電池の耐久性や信頼性等に優れた二次電池システムを提供する。
【解決手段】正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を備える二次電池システムであって、前記発電要素は、該発電要素を収容する密閉容器内に充填される流体によって加圧可能であり、充電及び放電を所定時間行う充放電時と、充電及び放電のいずれも所定時間行わない非充放電時及び充電を所定時間連続して行う連続充電時とで、前記流体によって前記発電要素に加えられる圧力を変更することを特徴とする二次電池システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池において、電池の基本構造である発電要素(単電池)は、通常、正極と、負極と、これら正極及び負極の間に介在する電解質とを有している。二次電池は、所望の起電力や電流密度を得るべく、複数の発電要素が電気的に接続されることがある。
発電要素における正極、電解質、及び負極の密着性等は、二次電池の諸特性、例えば、エネルギー密度、容量、電流密度、サイクル特性等に大きく影響するため、発電要素の積層方向には、通常、拘束圧力が付与され、発電要素に変形や膨張が生じても、正極、電解質及び負極の密着性が維持されるような技術が提案されている。また、複数の発電要素を積層し、電気的に接続した二次電池においても、複数の発電要素間の密着性は、これら発電要素間の電気的接続に大きな影響を及ぼす場合があるため、発電要素を積層する積層方向に、拘束圧力を付与することが行われている。
【0003】
上記のような拘束圧力の付与を行う二次電池としては、例えば、特許文献1及び2に記載された技術が挙げられる。
例えば、特許文献1には、対向平面を有する外形の二次電池を、充放電状態においては対向平面を加圧し、充放電しない状態においては充放電状態よりも加圧力を弱くする二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−9989号公報
【特許文献2】特開2001−35523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発電要素には、使用状況によって、膨張や変形が生じるため、上記拘束圧力により発電要素にストレスが加えられる場合がある。特許文献1のように、充放電しない状態において、充放電状態よりも加圧力を弱くすることで、上記ストレスを緩和することが可能である。
しかしながら、二次電池のさらなる耐久性や信頼性の向上のためには、特許文献1に記載の技術は充分とはいえない。
【0006】
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、拘束圧力による発電要素の過度なストレスを回避し、耐久性や信頼性等に優れた二次電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二次電池システムは、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を備える二次電池システムであって、
前記発電要素は、該発電要素を収容する密閉容器内に充填される流体によって加圧可能であり、
充電及び放電を所定時間行う充放電時と、充電及び放電のいずれも所定時間行わない非充放電時及び充電を所定時間連続して行う連続充電時とで、前記流体によって前記発電要素に加えられる圧力を変更することを特徴とする。
【0008】
本発明では、非充放電時に加えて、体積変化の大きな連続充電時において、充放電時と異なる拘束圧力を発電要素に負荷することで、非充電時及び連続充電時に、発電要素に過度なストレスが加わることを回避し、電池使用の耐用年数や信頼性を向上させることができる。
【0009】
本発明の二次電池システムにおいて、前記非充電時及び前記連続充電時における前記圧力は、前記充放電時における前記圧力よりも低くすることが好ましい。
【0010】
また、本発明の二次電池システムは、前記圧力を低下させた前記非充電時及び前記連続充電時において、前記発電要素に前記電解質を補充する、電解質量調整手段を有する形態とすることができる。このような電解質量調整手段により、拘束圧力低下に伴う、電解質と正極及び負極との接触性(密着性)の低下を回避し、正極−負極間のイオン伝導性を維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、拘束圧力による発電要素の過度なストレスを回避し、二次電池の耐久性や信頼性等を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の二次電池システムにおける二次電池の一形態例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の二次電池システムにおける拘束圧力の制御フローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の二次電池システムは、正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を備える二次電池システムであって、
前記発電要素は、該発電要素を収容する密閉容器内に充填される流体によって加圧可能であり、
充電及び放電を所定時間行う充放電時と、充電及び放電のいずれも所定時間行わない非充放電時及び充電を所定時間連続して行う連続充電時とで、前記流体によって前記発電要素に加えられる圧力を変更することを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の二次電池システムについて、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は本発明の二次電池システムにおける二次電池の一形態例を示す断面模式図である。
図1において、二次電池100は、複数の発電要素2と、発電要素2を収容する可撓性外装体1と有している。可撓性外装体1に収容された複数の発電要素2は、積層されて直列接続されている。各発電要素2は、正極3と、負極4と、正極3及び負極4との間に介在する電解質5とを有している。積層された発電要素2群には、正極端子6及び負極端子7が、一方の末端に位置する発電要素2の正極3と、他方の末端に位置する発電要素2の負極4とに設けられている。
【0015】
図示していないが、発電要素2を収容した可撓性外装体1は、密閉容器内に収容されており、発電要素2は、可撓性外装体1を介して、該密閉容器内に充填される流体によって、加圧することができる。すなわち、密閉容器内の流体圧を調整することで、発電要素に負荷する圧力を調整することができる。
【0016】
発電要素は、通常、発電要素の固定のため、発電要素の各層間の電子伝導性やイオン伝導性のため、積層した発電要素間の電子伝導性やイオン伝導性のため、等の種々の観点から、その積層方向に加圧されて拘束される。
発電要素は、電池の使用環境や使用状況、例えば、充放電による活物質の体積膨張によって積層方向に膨張することがあり、その結果、拘束圧力が上昇して過度な圧力がかかってしまうことがある。また、充放電による活物質の体積膨張の程度は、充放電深度によって異なるため、拘束圧力の上昇具合は充放電深度によって異なる。発明者はこの知見に基づき、二次電池の使用状況に応じて(充放電深度に応じて)、発電要素の拘束圧力を制御、管理することで、発電要素に過度な圧力がかかり、その結果生じる発電要素の劣化を抑制できることに着目した。そして、特に、長時間にわたる連続した充電によって、活物質が大きく膨張し、発電要素に過度な圧力が負荷されることに着目し、連続充電時の拘束圧力を制御、管理することが、二次電池の長寿命化や信頼性の向上に大きな効果を奏することを見い出した。
さらに、本発明者は、発電要素に均一な拘束圧力をかけるには、発電要素の周囲の流体圧により、発電要素を加圧することが効果的であるという知見を得た。均一な拘束圧力をかけることは、二次電池における電子伝導性、イオン伝導性、サイクル特性等の諸特性において重要である
【0017】
そこで、本発明の二次電池システムでは、発電要素を流体による加圧で拘束すると共に、流体による拘束圧力Pを、二次電池の使用状況に応じて変更させることによって、二次電池の電子伝導性、イオン伝導性、サイクル特性等に加えて、耐久性及び信頼性を向上可能とした。具体的には、充電及び放電を所定時間以上連続して行う充放電時における拘束圧力P1と、充電のみを所定時間以上連続して行う連続充電時における拘束圧力P2及び充電と放電の両方を所定時間以上行わない非充放電時における拘束圧力P3と、を変更する。
【0018】
尚、本発明において、「所定時間」とは、特定の時間を規定するものではなく、電池の種類、容量、用途に応じて、適宜設定することができる。例えば、充電時の体積膨張が大きい活物質を用いた二次電池の場合は、連続充電時の所定時間を、充電時の体積膨張が小さい活物質を用いた場合の二次電池と比較して短く設定することができるし、また、連続使用時間が長い用途の二次電池の場合には、充放電時の所定時間を長く設定することができる。
また、充放電時を規定する所定時間、連続充電時を規定する所定時間、及び、非充放電時を規定する所定時間は、それぞれ独立に設定され、各所定時間が異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、充放電時の所定時間における、充電と放電のサイクル数や、1サイクルにおける充電時間及び放電時間は特に限定されない。
【0019】
また、本発明において、流体により発電要素に加えられる拘束圧力P1、P2、及びP3とは、ある一点の圧力の値を指す場合の他、幅を持った範囲の値を指す場合もある。また、本発明において、「充放電時と、連続充電時及び非充放電時とで、圧力を変更する」とは、充放電時の拘束圧力P1と連続充電時の拘束圧力P2とが異なるように、且つ、充放電時の拘束圧力P1と非充電時の拘束圧力P3とが異なるように、拘束圧力を変更する、という意味であり、P2とP3は異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0020】
拘束圧力P1と拘束圧力P2との大小関係は限定されないが、上記したように、通常、連続充電時には、発電要素が大きく体積膨張する傾向があることから、拘束圧力P2は拘束圧力P1よりも低い(P1>P2)ことが好ましく、特に、拘束圧力P1が幅を持った範囲として設定されている場合には、拘束圧力P1の下限値P1minより低い(P1min>P2)ことが好ましい。発電要素の体積膨張により増加する、発電要素にかかる圧力を緩和することができるからである。発電要素の体積膨張率は、使用する活物質やその他の発電要素構成材料により異なってくるため、具体的な拘束圧力P2の値は、発電要素の構成材料等に応じて、適宜設定することが好ましい。
また、拘束圧力P1と拘束圧力P3との大小関係は限定されないが、一般的には、非充電時、すなわち、二次電池を長時間使用しない時まで、充放電時のような拘束圧力を付与すると、発電要素にストレスを生じさせる傾向があることから、拘束圧力P3は拘束圧力P1よりも低い(P1>P3)ことが好ましく、特に、拘束圧力P1が幅を持った範囲として設定されている場合には、拘束圧力P1の下限値P1minより低い(P1min>P3)ことが好ましい。拘束圧力に起因する発電要素のストレスを緩和することができるからである。具体的な拘束圧力P3の値は、拘束圧力P1の値等に応じて、適宜設定すればよい。
【0021】
図2は、本発明の二次電池システムにおいて、流体により発電要素にかけられる拘束圧力の制御フローチャートの一例を示すものである。本発明の二次電池システムにおける上記拘束圧力の制御は、図2に示すフローに限定されない。また、図2のフローにおいて、ステップの順序を変更することもできる。
【0022】
まず、二次電池の充放電時、発電要素には拘束圧力P1がかけられている(ステップS1)。
【0023】
次に、二次電池の充電及び放電(充放電)を所定時間以上連続して行うかどうかを判断し(ステップS2)、行う場合には、引き続き拘束圧力P1がかけられる(ステップS3)。一方、充放電を所定時間以上連続して行わない場合には、さらに、充電を所定時間以上連続して行うかどうかを判断する(ステップS4)。
ステップS2を実行するタイミングは、特に限定されず、例えば、所定時間毎に、又は、充電深度が所定値以下に低下した時、又は、充電及び放電を行わない状態が所定時間以上続いた時等が挙げられる。
また、ステップS2において、充放電を所定時間以上連続して行うかどうかの判断基準は、特に限定されず、例えば、二次電池を搭載した機器等のメインスイッチが切れる等、二次電池からの出力信号がある一定時間以上なければ充放電を所定時間以上行うと判断し、上記一定時間内に信号があれば充放電を所定時間以上行わないと判断することができる。
【0024】
続いて、ステップS4において、充電を所定時間以上連続して行う、すなわち、連続充電する、と判断した場合には、発電要素の拘束圧力をP1からP2に変更する(ステップS5)。上記したように、連続充電時の拘束圧力P2は、充放電時の拘束圧力P1よりも低いことが好ましく、特に拘束圧力P1の下限値P1minより低いことが好ましい。
一方、ステップS4において、充電を所定時間以上連続して行わないと判断した場合には、二次電池の充電及び放電を所定時間以上行わない、すなわち、二次電池を非充放電状態(保管状態)にする、と判断し、発電要素の拘束圧力をP1からP3に変更する(ステップS6)。上記したように、非充放電時の拘束圧力P3は、充放電時の拘束圧力P1よりも低いことが好ましく、特に拘束圧力P1の下限値P1minより低いことが好ましい。
ステップS4において、充電を所定時間以上連続して行うかどうかの判断基準は特に限定されず、例えば、外部電源からの二次電池への入力信号があれば連続充電すると判断し、外部電源からの二次電池への入力信号がなければ連続充電しないと判断することができる。
【0025】
ステップS5及びステップS6に続く、ステップS7では、ステップS2同様、二次電池の充電及び放電を所定時間以上行うか、すなわち、二次電池が使用状態であるか(又は二次電池が使用状態となるか)を判断する。充放電を所定時間以上行うと判断した場合には、発電要素の拘束圧力をP2からP1へ、又は、P3からP1へ、変更する(ステップS3)。一方、充放電を所定時間以上行わないと判断した場合には、再度、ステップS4の判断を実行する。
ステップ7を実行するタイミングは、特に限定されず、例えば、所定時間毎に、又は、充電深度が所定値以上に上昇した時、又は、放電状態が所定時間以上続いた時等が挙げられる。
ステップS7において、充電及び放電を所定時間以上連続して行うかどうかの判断基準は特に限定されず、例えば、ステップS2に同様にして判断することができる。
【0026】
本発明の二次電池システムは、拘束圧力を、拘束圧力P2又は拘束圧力P3に低下させた際に、発電要素に電解質を補充する電解質量調整手段を有していてもよい。拘束圧力を低下させた際にも、電解質と正極及び負極との接触性(密着性)を維持し、正極−負極間のイオン伝導性を確保することができる。特に、連続充電時の場合には、充電の効率が低下するのを抑えることができる。また、電解質として、電解液を用いた場合には、電解質の流動性及び毛管力により浸透性が高いことから、電解質量調整手段により得られる上記電解質の補充による効果が特に高い。
具体的な電解質量調整手段としては、例えば、図1に示すような、発電要素2の電解質5領域に連通する空間8が挙げられる。空間8は、拘束圧力がP1からP2又はP3に低下した際に、空間8内に収容されていた電解液が自然と発電要素2の電解質3の領域に移動し、電解質を補充することができる。このような空間8は、拘束圧力がP2からP1へ又はP3からP1へ上昇した際に、拘束圧力P1による加圧によって発電要素の電解質領域から押し出された電解液を回収することもできる。
また、空間8は、電池より発生したガスを逃がす場としても用いることが可能である。
尚、電解質量調整手段は、上記構成に限定されない。
【0027】
以下、本発明の二次電池システムにおける二次電池の構成について説明する。
[発電要素]
発電要素は、正極と、電解質と、負極と、がこの順で積層された構造を有する。本発明において、「発電要素の積層方向」とは、発電要素を構成する、これら正極、電解質及び負極の積層方向を意味する。
本発明の二次電池システムにおいて、発電要素は、二次電池の種類や用途によって、様々な構成をとり得る。例えば、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル金属水素化物電池、リチウムイオン電池、金属空気電池(例えば、リチウム空気電池、ナトリウム空気電池、カリウム空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池等)等の空気電池、等の様々な種類の二次電池を用いることができる。
活物質や電解質等の発電要素を構成する材料として、二次電池の充放電深度による体積変化の大きいものを用いる場合、本発明により得られる既述の効果は特に大きくなるといえる。そのため、本発明は、例えば、充放電深度による体積変化に起因して電池劣化が著しいために、電池材料としての使用が制限されている材料を使用可能とし、電池性能(例えば、エネルギー密度等)の向上に貢献することも期待できる。
以下、リチウムイオン電池を例に本発明の二次電池システムに使用可能な二次電池を説明するが、本発明において二次電池は以下の構成に限定されるものではない。
(正極)
正極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を少なくとも含む正極層を備え、必要に応じて、該正極層の集電を行う正極集電体も備えていてもよいものである。正極において、通常、正極層と正極集電体は、電解質側から、正極層、正極集電体の順に積層される。
【0028】
正極層は、少なくとも正極活物質を含み、正極の反応場となる。
正極活物質としては、例えば、LiO、Li、LiCoO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiVO、LiCrO、LiMn、LiCoMnO、LiNiMn、LiNi0.5Mn1.5、LiCoPO、LiMnPO、LiFePO等を挙げることができる。正極層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましい。
【0029】
正極層は、必要に応じて、電解質、導電助剤、バインダー等を適宜含有していてもよい。
電解質としては、例えば、酸化物固体電解質や硫化固体電解質等の無機固体電解質の他、電解質ゲル等を用いることができる。具体的には、後述する電解質において説明する固体電解質や電解質ゲル等を挙げることができる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛等の導電性炭素材料が挙げられる。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダー成分、及び、スチレンブタジエンゴム等のゴム系バインダー成分等を挙げることができる。正極層におけるバインダー成分の含有量は、正極活物質等を安定に固定化できれば、より少ないことが好ましい。
【0030】
また、正極層の厚さは、リチウムイオン電池の構成によって大きく異なるものであり、適宜決定すればよい。
【0031】
正極集電体は、正極層の集電を行うものであり、所望の導電性(電子伝導性)を有する材料を含有する。
正極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅等の金属材料、カーボンファイバー、カーボンペーパー等のカーボン材料、窒化チタン等の高電子伝導性セラミックス材料等が挙げられる。
正極集電体は、多孔質構造を有していてもよいし、緻密構造を有していてもよく、例えば、箔状、板状、メッシュ状等が挙げられる。また、外装体が正極集電体としての機能を有していてもよい。
正極集電体の厚さは特に限定されない。
【0032】
正極の製造方法は、特に限定されない。例えば、正極活物質と、その他任意成分とを混合した正極材料を用いて形成することができる。具体的には、正極集電体の表面に、溶媒を含む正極材料を、圧延又は塗布して成形し、必要に応じて、乾燥処理、加圧処理、加熱処理等を施すことで正極層と正極集電体とが積層した正極を作製することができる。或いは、溶媒を含む正極材料を圧延又は塗布して成形し、必要に応じて、乾燥処理、加圧処理、加熱処理等を施した正極層を、正極集電体を重ね合わせ、適宜、加圧や加熱等を行うことで、正極層と正極集電体とが積層した正極を作製することができる。
正極材料に用いる溶媒としては、揮発性を有していれば特に限定されず、適宜選択することができる。具体的には、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。正極材料の乾燥が容易になることから、沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。
正極材料を塗布する方法は特に限定されず、ドクターブレード法、インクジェット法、スプレー法等の一般的な方法を用いることができる。
【0033】
(電解質)
電解質は、正極と負極との間でリチウムイオン(伝導イオン)を伝導できれば、特に限定されず、電解液でもよいし、固体電解質でもよいが、電解液を用いた場合、拘束流体による拘束圧力によって、漏液し、電圧降下が生じるおそれがあるため、固体状の電解質を用いることが好ましい。
固体状の電解質としては、例えば、電解液をゲル化したもの、無機固体電解質、有機固体電解質等を用いることができる。電解液のゲル化の方法としては、例えば、非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加する方法が挙げられる。
【0034】
電解液としては、非水系電解液や水系電解液が挙げられる。非水系電解液は、支持電解質塩及び非水溶媒を含有する。
非水溶媒としては、特に限定されず、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、イソプロピオメチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコージジエチルエーテル、アセトニトリル(AcN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエトキシエタン、ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)等が挙げられる。
【0035】
また、イオン性液体を非水溶媒として用いることもできる。イオン性液体としては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:TMPA−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:PP13−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:P13−TFSA]、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:P14−TFSA]、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:DEME−TFSA]等の脂肪族4級アンモニウム塩;1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート[略称:EMIBF]、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:EMITFSA]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムブロマイド[略称:AEImBr]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[略称:AEImBF]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:AEImTFSA]、1,3−ジアリルイミダゾリウムブロマイド[略称:AAImBr]、1,3−ジアリルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[略称:AAImBF]、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:AAImTFSA]等のアルキルイミダゾリウム4級塩等が挙げられる。
【0036】
支持電解質塩は、非水溶媒に対して溶解性を有し、リチウムイオン伝導性を発現するものであればよい。例えば、リチウムイオン電池の支持電解質塩としては、リチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiOH、LiCl、LiNO、LiSO等の無機リチウム塩や、CHCOLi、リチウムビスオキサレートボレート(略称 LiBOB)、LiN(CFSO(略称 LiTFSA)、LiN(CSO(略称 LiBETA)、LiN(CFSO)(CSO)等の有機リチウム塩を挙げることができる。
非水電解質において、非水溶媒に対する支持電解質塩の含有量は、特に限定されないが、例えば、非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内であることが好ましい。
【0037】
水系電解液は、支持電解質塩及び水を含有する。支持電解質塩は、水に対して溶解性を有し、リチウムイオン伝導性を発現するものであれば特に限定されず、例えば、LiOH、LiCl、LiNO、LiSO、CHCOOLi等のリチウム塩を用いることができる。
【0038】
電解液をゲル化して用いる場合、例えば、上記したようなポリマーと電解液とを混合した後、該混合液を基材上に流延塗布、乾燥し、基材から剥離した後、切断することで、ゲル状電解質膜を作製することができる。
【0039】
固体電解質としては、例えば、無機固体電解質が挙げられる。尚、無機固体電解質としては、ガラス、結晶、ガラスセラミックスのいずれでもよい。これら固体電解質を用いる場合、例えば、固体電解質を圧延又は固体電解質を溶媒と混合したスラリーを塗布、乾燥することによって、固体電解質層を作製することができる。
無機固体電解質としては、例えば、硫化物系固体電解質や酸化物系固体電解質が挙げられる。
【0040】
硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P化合物、LiS−SiS化合物、LiS−GeS化合物等を挙げることができる。尚、LiS−P化合物は、LiS及びPを用いた硫化物固体電解質材料を意味し、LiS及びPの比率は特に限定されない。その他の化合物についても同様である。
【0041】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li(XはB、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb及びSeよりなる群から選択される少なくとも1種であり、YはTi、Zr、Ge、In、Ga、Sn及びAlよりなる群から選択される少なくとも1種であり、a〜eは、0.5<a<5.0、0≦b<2.98、0.5≦c<3.0、0.02<d≦3.0、2.0<b+d<4.0、3.0<e≦12.0の関係を満たす)で表されるNASICON型酸化物;LiLa1−xTiO等で表されるペロブスカイト型酸化物(Li−La−Ti−O系ペロブスカイト型酸化物);LiXO−LiYO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiAO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、AはMo及びSから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiZO(XはSi、Ge及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、ZはAl、Ga及びCrから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiBXO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、BはCa及びZnから選ばれる少なくとも1種である)、並びに、LiDO−LiYO(DはB、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)等のLISICON型酸化物;Li3+x2−v12(A、G、MおよびBは金属カチオンであり、)で表されるガーネット型酸化物等が挙げられる。
【0042】
(負極)
負極は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を含有する負極層を備え、必要に応じて、負極層の集電を行う負極集電体を備えていてもよい。
リチウムイオン電池の負極活物質としては、例えば、金属リチウム;リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等のリチウム合金;スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等の金属酸化物;スズ硫化物、チタン硫化物等の金属硫化物;リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等の金属窒化物;並びにグラファイト等の炭素材料等を挙げることができる。
【0043】
負極層は、少なくとも負極活物質を含有してればよいが、必要に応じて、負極活物質を固定化する結着材を含有していてもよい。例えば、負極活物質として箔状の金属や合金を用いる場合には、負極層を負極活物質のみを含有する形態とすることができるが、粉末状の負極活物質を用いる場合には、負極層を負極活物質と結着材を含有する形態とすることができる。また、負極層は、導電性材料や電解質を含有していてもよい。結着材、導電性材料、電解質の種類、使用量等については、上述した正極層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0044】
負極集電体は、負極層の集電を行うものであり、所望の導電性(電子伝導性)を有する材料を含有する。
負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、及びメッシュ状等が挙げられる。また、外装体が負極集電体としての機能を有していてもよい。
【0045】
負極の製造方法は特に限定されない。例えば、箔状の負極活物質と負極集電体とを重ね合わせて加圧する方法が挙げられる。また、別の方法として、負極活物質と結着材とを含有する負極材料を調製し、該負極材料を基材上又は負極集電体上に塗布又は圧延し、乾燥する方法を挙げることができる。
【0046】
発電要素は、上記のような正極、電解質、及び負極を積層したものであり、二次電池には、一つの発電要素のみが搭載されてもよいし、電気的に接続(直列接続又は並列接続)された複数の発電要素が搭載されてもよい。
1つ又は複数の発電要素は、例えば、可撓性外装体に収容することができる。可撓性外装体とは、可撓性外装体の内部に収容された発電要素に、可撓性外装体の外部からの流体による圧力を伝達し、発電要素を拘束できるものである。可撓性フィルムは、上記のように圧力を伝達できるものであれば特に限定されず、典型例として、ラミネートフィルムが挙げられる。ラミネートフィルムとしては、種々の電池の外装体として利用されているものから適宜選択して用いることが可能であり、例えば、アルミ層の一方の表面(外装体の外部側)に、耐衝撃性や材料補強を目的とした樹脂層(例えば、ポリエチレンテレフタレートやナイロン等)、が設けられ、他方の表面(外装体の内部)には、外装体の密封を目的とした接着層(例えば、ポリオレフィン製)が設けられたものが挙げられる。
【0047】
可撓性外装体の内部のガス雰囲気は特に限定されず、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気等にすることができる。尚、上記ガス雰囲気は、上記構成のリチウムイオン電池以外の電池の場合には、電池の性質に合わせて適宜選択すればよく、例えば、酸素含有ガス雰囲気にしてもよい。
【0048】
発電要素又は発電要素を収容した可撓性外装体は、発電要素に拘束圧力をかけるための流体圧下に置かれる。例えば、流体(拘束流体)が充填され、内圧が調整された密閉容器内に収容される。1つの密閉容器内に収容される、発電要素又は発電要素を収容した可撓性外装体は、一つであっても複数であってもよい。また、密閉容器内に複数の発電要素を収容する場合、これら発電要素は電気的に接続されていてもよい。
発電要素を拘束する流体(拘束流体)は、発電要素を拘束することができればよく、気体の他、液体も用いることができ、通常、常圧以上とする。拘束流体の圧力は、常圧(すなわち、大気圧)以上であることが好ましく、特に0.05MPa〜1MPa程度であることが好ましい。
拘束流体の種類は、特に限定されず、例えば、気体としては、空気(大気)、酸素、窒素、アルゴン、二酸化炭素等を用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…可撓性外装体
2…発電要素
3…正極
4…負極
5…電解質
6…正極端子
7…負極端子
8…空間
100…二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する電解質を有する発電要素を備える二次電池システムであって、
前記発電要素は、該発電要素を収容する密閉容器内に充填される流体によって加圧可能であり、
充電及び放電を所定時間行う充放電時と、充電及び放電のいずれも所定時間行わない非充放電時及び充電を所定時間連続して行う連続充電時とで、前記流体によって前記発電要素に加えられる圧力を変更することを特徴とする二次電池システム。
【請求項2】
前記非充電時及び前記連続充電時における前記圧力が、前記充放電時における前記圧力よりも低い、請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項3】
前記圧力を低下させた前記非充電時及び前記連続充電時において、前記発電要素に前記電解質を補充する、電解質量調整手段を有する、請求項2に記載の二次電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−45556(P2013−45556A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181521(P2011−181521)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】