位相連続光周波数偏移変調器、位相連続光周波数偏移変調方法
【課題】 任意の変移量・変調度を有するCPFSK変調を実現する。
【解決手段】
光周波数偏移変調器(2)と、前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)により解決される。
【解決手段】
光周波数偏移変調器(2)と、前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)により解決される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器などに関する。
【背景技術】
【0002】
マッハツェンダー変調器は、光情報通信などの分野で盛んに用いられている。そして、発明者らは、マッハツェンダー変調器を組み合わせた光単側波帯(SSB:Single Side Band)変調器や光周波数偏移(FSK:Frequency Shift Keying)変調器(光周波数シフトキーイング変調器ともよぶ)を開発してきた。光SSB変調器を利用した光FSK変調方法については、例えば、下記非特許文献1に記載されている。
【0003】
光FSK変調を実現するためには、半導体レーザに対する直接変調方式と外部から変調を加える外部変調方式とによるものがある。直接変調方式による光FSK変調信号によれば、位相連続光FSK変調信号を得ることができる。しかし、変調速度が低く、しかも広帯域動作は困難である。
【0004】
一方、リチウムニオブ基板を用いた光変調器による単SSB変調器型光変調器は、外部変調方式により光FSK変調を実現するので、数10Gbpsの高速変調を可能とする。しかし、外部変調方式による光FSK変調信号は、上側波帯信号(USB信号:Upper Side Band信号)と下側波帯信号(LSB信号:Lower Side Band信号)とを切り換える際に光位相が連続でなくなるという問題がある。そして、周波数を切り換える際に、光強度が過渡的に振動し、高周波を発生するという問題があった。また、現在、実用化されている光通信技術では、光の強度に変調をかけ情報を伝達するが、高速・高密度・長距離光伝送を行うためには、光の位相や周波数に情報を乗せることが必要となる。さらに、光伝送信号の低電力化を図るためには、コヒーレント光復調技術を適用した高感度受信が不可欠である。しかしながら、従来の光FSK変調器を用いた場合は、コヒーレント変調方式を採用できないので、USB信号とLSB信号とが重なることを避けるために、広帯域な光周波数占有領域が必要になるという問題があった。
【0005】
一方、光最小偏移変調(MSK:Minimum Shift Keying)は、無線を利用したデジタル通信の分野では有名な変調方式である。MSK変調方式の特徴は、変調スペクトルにおける主要ローブが差分位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)方式のものよりもコンパクトであり、より高周波数成分の付近のサイドローブは大きく減衰することである。そのようなコンパクトなスペクトルは、潜在的に良好な分散耐性を与えるので、長距離伝送に非常に有利である。しかしながら、MSK変調方式は、無線通信においてはその有効性が実証されているものの、光通信においては、実践的な外部変調による高速変調が実現されていない。
【0006】
【非特許文献1】T. Kawanishi and M. Izutsu, “Optical FSK modulator using an integrated light wave circuit consisting of four optical phase modulator”, CPT 2004 G-2, Tokyo Japan, 14-16 Jan.2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外部変調方式によっても位相が連続な光FSK変調(CPFSK:Continuous Phase Frequency Shift Keying)信号を得ることができる光変調方法を提供することを目的とする。本発明は、光周波数占有帯域を節約できる外部変調方式による光FSK変調方法を提供することを目的とする。本発明は、リターントゥゼロ(RZ:return to zero)−位相連続FSK(CPFSK)信号を得ることができる外部変調方式による光FSK変調方法を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、光初期位相制御法を適用することにより、任意の変移量・変調度を有する光CPFSK変調を実現することを目的とする。この結果、最小偏移変調(MSK)方式と呼ばれる変調方式を高速に実現することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基本的には、これまで確立してきた光SSB変調器や光FSK変調器と同様の構成をもつ変調器を用いて、正弦波クロック信号とベースバンド信号との位相差Δφを制御することにより、位相連続FSK変調を達成し、更に変調器に入力される入力光の位相を制御することにより、任意の変移量・変調度を有するCPFSK変調を実現するものである。
【0010】
本発明の基本概念をより具体的に説明すると、本発明は、前記Δφを所定の位相差、例えばπ/4+nπ(nは整数)とすれば、USB信号とLSB信号との間の位相が連続になり、更にベースバンド信号に同期させて前記入力光の位相を制御すれば、前記ベースバンド信号の切り替え(USB信号とLSB信号との切り替え)の際に光FSK変調器において発生する位相ギャップを補償することができ、これにより位相が連続すると共に任意の変移量・変調度を有する光FSK信号を得ることができるという知見に基づくものである。すなわち、正弦波クロック信号とベースバンド信号との位相差Δφを所定の位相差、例えばπ/4+nπ(nは整数)となるように制御しても、周波数偏移量によっては(特に光MSK変調を実現する場合には)、ベースバンド信号の切り替えの際に、位相差Δφに誤差として位相ギャップδφが生じてしまう(例えば「Δφ=π/4+nπ」と制御しても、条件によっては、「Δφ=π/4+nπ+δφ」となってしまう。)。そこで、この位相ギャップを入力光の位相制御により補償しようとするものである。
【0011】
また、本発明によれば、光位相情報を検出できるので、USB信号とLSB信号とが重なってもよく、これにより光周波数占有帯域を節約できる。よって、変調帯域幅が狭くても、適切に復調することができることになる。
【0012】
なお、光FSK信号に強度変調を加え、USB信号とLSB信号との過渡期の出力強度を小さくするように制御することにより、RZ−CPFSK信号を得ることもできる。
【0013】
本発明に係る位相連続光周波数偏移変調器としては、例えば、
光周波数偏移変調器(2)と、
前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、
前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、
を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の光SSB変調器や光FSK変調器を用いても、位相が連続したFSK変調信号を得ることができるので、光情報通信に好適に用いることができる。さらに、本発明により得られる位相連続FSK信号では、高周波成分が抑圧されているので、波長分割多重通信などに好適に応用されることが期待される。また、光位相検波によるコヒーレント復調を用いるので、差動増幅により受信感度が増大することになる。
【0015】
本発明によれば、初期位相制御という新しい手法を従来の光SSB変調器や光FSK変調器に適用することにより、任意の変調度を持つCPFSK変調信号を得ることができるので、光情報通信に好適に用いることができる。特に、最小変移変調(MSK)方式と呼ばれる光周波数利用効率良い光変調方式を実現することが出来る。そのため、波長分割多重の多重密度の向上されるため、従来の強度変調方式や位相変調方式に比べ伝送容量の拡大が期待できる。また、光伝送路中の波長分散や非線形現象などの擾乱要素に強く、伝送距離の拡大や、伝送信号の低電力化も期待できる。
【0016】
本発明によれば、非常に狭帯域な占有帯域で十分であるため、高い周波数利用効率となり、例えば大容量伝送に有利となる。また、高い分散耐力であるため、例えば長距離伝送に有利となる。また、位相変調(PSK)方式に比べて高域成分の抑圧度が大きく、例えば隣接チャネルへのクロストークを抑制することができる。さらに、定包絡線変調であるため、高い非線形耐力を有し、例えば長距離伝送に有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<基本構造>
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態を説明する。図1は、本発明の実施態様にかかる任意の周波数偏移を有する位相連続変調が実現可能な位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器の基本的構成を示す概略構成図である。図2は、図1における光FSK変調器及び電源系の一例を示す概略構成図である。これらの図に示すように、本実施形態にかかる位相連続光周波数偏移変調器(1)は、光周波数偏移変調器(2)と、前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)、例えばクロック信号の位相と次の式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、レーザ光源(10)から前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させたエンコードデータにより当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)とを具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)である。
【0018】
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
【0019】
すなわち、本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器(1)は、周波数切り換えのタイミングを制御し、USB信号とLSB信号とを切り換えるのみならず、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)Δφを所定の位相差となるように、例えば上記式(I)のように制御すると共に、光FSK変調器(2)に入力される入力光の位相をベースバンド信号(6)に同期させて制御することにより、任意の変移量・変調度を有するCPFSK変調を可能とするものである。
【0020】
<基本動作>
なお、図2の光周波数偏移変調器(2)が光FSK変調器として機能すること及びその動作については、たとえば上記非特許文献1に記載されるとおりである。図3は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)を説明するための概念図である。図3(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)のパルスを示す概念図であり、図3(B)は従来の光周波数偏移変調(FSK)のパルスを示す概念図である。図3(B)に示すように、従来の外部変調方式による光FSK変調信号は、USB信号とLSB信号との連続部分の位相が不連続であった。本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器における光周波数偏移変調器(2)では、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)Δφを例えば上記式(I)のように制御することにより、USB信号とLSB信号とを切り換える際の位相の不連続が解消される。本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器における電源系(8)は、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)を制御するので、上記のような位相連続周波数偏移変調が可能となる。
【0021】
すなわち、ベースバンド信号(6)を切り換えることによりUSB信号からLSB信号へ、またはLSB信号からUSB信号へ光信号を切り換えても、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)Δφが例えば上記式(I)のように制御されているので、切り替え前後で光信号の位相がずれなくなる。
【0022】
上述する光周波数偏移変調器(2)と電源系(8)との組み合わせでは、同期制御技術(同期変調法)を用いることにより、光位相連続周波数偏移(CPFSK)変調と呼ばれる外部変調による高速変調が実現された。この同期制御技術が提案されるまでは、レーザダイオード(LD)に対する直接変調が、光CPFSK信号を発生させるための唯一の方法であり[K. Iwashita and T. Matsumoto, J. Lightwave. Technol., LT-5, 854-856(1987)],[B. Wedding et al., ECOC’03., Th1.5.5(2003)]、したがって、変調速度は、LDの反応によって制限されていた。また、LDにおける熱の結合効果により、CPFSK信号の低周波成分は低下してしまうという問題があった。同期制御技術はこの問題を解決する有効な手段である。
【0023】
一方、上述する同期制御技術で得られる光CPFSK変調信号の偏移量・変調度には制限がある。すなわち、このCPFSK変調においては、利用できる最小のゼロトゥピーク周波数偏移は、最低に見積もってもB/2である(BはCPFSK信号のビットレートを示す。)。すなわち、CPFSK変調のための構成は、例えばSSB変調技術に基づいた周波数シフトキーイング(FSK)変調器を使用し、当該変調器は選択的にUSB信号またはLSB信号を生成する[T. Kawanishi et al., OFC’04., PDP16(2004)]。FSK変調器は、正弦波クロック信号とベースバンド信号により駆動され、FSK信号の周波数偏移とビットレートは、それぞれ、正弦波クロック信号(4,5)のクロック周波数f0と、ベースバンド信号(6)のビットレートBにより決定される。このクロック周波数f0とビットレートBが下記式(II)にしたがってCPFSK変調器に同期して入力されるならば、下記詳細に説明する初期位相制御がなくとも、CPFSK変調が達成できる。
【0024】
クロック周波数f0=nB/2、Δφ=±2π/4B ・・・(II)
【0025】
ここで、nは整数であり、Δφは前記クロック信号とベースバンド信号との間の遅延量である。しかしながら、この場合に得られる最小の周波数偏移はf0=B/2である。このように、同期制御技術で得られる光CPFSK変調信号の偏移量・変調度に制限がある理由は、同期制御技術では、光位相が一致した場合にのみ周波数切り替えが許されるためであり、変調度(周波数偏移量)は1以上に限定され、0.5のMSK変調は行えない。
【0026】
そこで、より狭いB/4の周波数偏移を実現しMSK変調方式を実現するため、次に、上述したCPFSK変調とともに用いる初期位相制御について説明する。具体的には、例えば、周波数切り替えのタイミングで光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光の光初期位相を制御し、位相連続性を確保するようにする。
【0027】
光MSK変調(f0=B/4)を実現するためには、CPFSK変調器に直列的に接続される初期位相制御器(9)により、ベースバンド信号(6)に対して光位相をビット同期させて制御する。光FSK変調器(2)において発生する位相ギャップを初期位相制御器(9)が補償することにより、任意の周波数偏移を有する位相連続変調が得られる。初期位相制御器(9)は、入力光の位相を下記式(III)で示す補正量δφ(t)だけずらして、ベースバンド信号(6,27)の切り替えの際に光周波数偏移変調器(2,24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップδφ(t)を補償する。
δφ(t)={(2kπf0/B+φ0)mod 2π} ・・・(III)
ここで、kは整数、f0は正弦波クロック信号の周波数、Bはベースバンド信号のビット速度、φ0は初期位相である。なお、「mod」関数は、剰余演算を示し、(2kπf0/B+φ0)を2πで割った余りがδφ(t)となる。
【0028】
詳細に説明すると、ベースバンド信号(6)を切り換えることによりUSB信号からLSB信号へ、またはLSB信号からUSB信号へ光信号を切り換えると、光周波数偏移変調器(2,24)では、上式(III)に依存する位相ギャップδφ(t)が発生する。したがって、ベースバンド信号を切り換える際には、この発生することが予め分かっている位相ギャップδφ(t)を打ち消すように、初期位相制御器(9)において入力光の位相をδφ(t)だけずらして、光周波数偏移変調器(2,24)に入力するようにする。
【0029】
ここで、上記式(III)において、f0=B/4の場合には、φ0+π/2,φ0+π,φ0+3π/2,φ0+2πの4つの位相状態の変調データからなることが分かり、初期位相制御器はこの4つのデータに基づいて制御される。しかし、MSK変調の場合、上記式(III)に基づく初期位相制御は、下記条件[1]から条件[4]を全て満たすようなエンコードデータに従って単純化される。
条件[1]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記正弦波クロック信号の位相と上式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号を前記光周波数偏移変調器の電極(7,23)に印加する。
条件[2]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[3]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが同じ場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[4]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが異なる場合には、前記入力光の位相をπ変化させる。
ここで、kは条件[1]から[4]全てにおいて偶数であるか、又は条件[1]から[4]全てにおいて奇数である。
【0030】
詳細に説明すると、MSK変調の場合、f0=B/4であるから、δφ(t)={(kπ/2+φ0)mod 2π}となり、2回のベースバンド信号の印加に対して1回の位相ギャップが生じうる。すなわち、例えば、偶数回目の信号印加で位相ギャップが発生しないとすると、奇数回目の信号印加で位相ギャップが発生する場合がある。この奇数回目において位相ギャップが発生する場合とは、ベースバンド信号を切り換えた場合(LSB信号、USB信号間の相互の切り換え)である。そしてこのとき生じる位相ギャップはπである。したがって、偶数回目の信号印加では、位相ギャップδφが生じないのであるから、入力光の位相を制御することなく、上式(I)に基づく制御のみで十分に位相連続性が実現できる(条件[1]、[2])。一方、奇数回目の信号印加では、ベースバンド信号を切り換えたときに位相ギャップπが発生するので、ベースバンド信号を切り換えない場合には入力光の位相を制御せず、ベースバンド信号を切り換える場合には入力光の位相πだけずらす制御をすることにより、位相連続性が実現できる(条件[3]、[4])。
【0031】
<基本構成>
同図に示すように、本実施形態にかかる位相連続光周波数偏移変調器(1)は、CPFSK変調のための構成部分(2,8)と、初期位相制御のための構成部分(9)との2つの部分を有する。本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器(1)における、光周波数偏移変調器(2)、電源系(8)、及び位相制御器(9)は、光情報通信の分野において用いられる公知のものを適宜利用することができる。
【0032】
<初期位相制御器>
初期位相制御器としては、公知の位相制御器を適宜利用することができる。例えば、特許公報(特開平8−79174号)の図2に示されているような、LiNbO3結晶からなる光導波路に上下面を挟むように2つの電極を設け、電極間に数Vの電圧を印加して結晶の屈折率を制御し、等価的に光路長を変化させ、位相を制御するように構成した位相制御器などを用いることができる。
【0033】
具体的な駆動例としては、これらの位相制御器を初期位相制御器(2)として適用し、たとえば、図示しないコンピュータなどの制御装置により、電源系(8)と初期位相制御器(2)とを電気的に接続する。各種信号をコンピュータの入力装置・出力装置から入力・出力し、CPUなどの演算手段により、メインメモリ中の制御プログラムから受けた指令、メモリなどの記憶手段から読み出された記憶情報などに基づいて、電源系(8)におけるベースバンド信号(6)を元に、上式(III)に基づいた位相制御や、上記条件[1]から条件[4]を満たすような位相制御に基づくエンコードデータにより、所定の動作を行うようにすればよい。
【0034】
<光周波数偏移変調器>
図4は、図1における光FSK変調器及び電源系の他の例を示す概略構成図である。図4に示されるとおり、他の例に係る光FSK変調器(24)及び電源系(28)は、第1のサブマッハツェンダー導波路(12:MZA)と、第2のサブマッハツェンダー導波路(13:MZB)と、前記第1のサブマッハツェンダー導波路及び前記第2のサブマッハツェンダー導波路とを含み、光の入力部(14)と、変調された光の出力部(15)とを具備するメインマッハツェンダー導波路(16:MZC)と、前記第1のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(17,18)に印加される電圧を調整するための第1のサブマッハツェンダー電極(19:電極A)と、前記第2のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(20,21)に印加される電圧を調整するための第2のサブマッハツェンダー電極(22:電極B)と、メインマッハツェンダー導波路に印加される電圧を調整するためのメインマッハツェンダー電極(23:電極C)とを具備する光周波数偏移変調器(24)と、前記第1のサブマッハツェンダー電極及び前記第2のサブマッハツェンダー電極に位相がπ/2異なる正弦波クロック信号(25,26)を印加するとともに、前記メインマッハツェンダー電極に、前記第1のサブマッハツェンダー電極又は前記第2のサブマッハツェンダー電極に印加される前記正弦波クロック信号の位相と所定の位相差、例えば次の式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(27)を印加するための電源系(28)と、からなる。
【0035】
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・・・・(I)
【0036】
そして、前記光周波数偏移変調器(24)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(27)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(24)において発生する位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)を、この光FSK変調器(28)に直列的に接続し、電源系(28)と接続することにより、本実施形態に係る任意の周波数偏移を有する位相連続変調が実現可能な位相連続光周波数偏移変調器が作製できる。
【0037】
以下、光周波数偏移変調器(光FSK変調器)について説明する。光FSK変調器を構成するそれぞれのマッハツェンダー導波路は、例えば、略六角形状の導波路(これが2つのアームを構成する)を具備し、並列する2つの位相変調器を具備するようにして構成される。図4に示される光FSK変調器は、第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と、第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)と、メインマッハツェンダー導波路(MZC)とを含む。メインマッハツェンダー導波路(MZC)は、MZA及びMZBをその両アームとして具備するマッハツェンダー導波路である。
【0038】
通常、マッハツェンダー導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は、光を伝播することができるものであれば、特に限定されない。例えば、LN基板上に、Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし、シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO2)導波路を形成しても良い。また、InPやGaAs基板上にInGaAsP、GaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を用いても良い。基板として、XカットZ軸伝搬となるように切り出されたニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)が好ましい。これは大きな電気光学効果を利用できるため低電力駆動が可能であり、かつ優れた応答速度が得られるためである。この基板のXカット面(YZ面)の表面に光導波路が形成され、導波光はZ軸(光学軸)に沿って伝搬することとなる。Xカット以外のニオブ酸リチウム基板を用いても良い。また、基板として、電気光学効果を有する三方晶系、六方晶系といった一軸性結晶、又は結晶の点群がC3V、C3、D3、C3h、D3hである材料を用いることができる。これらの材料は、電界の印加によって屈折率変化が伝搬光のモードによって異符号となるような屈折率調整機能を有する。具体例としては、ニオブ酸リチウムの他に、タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)、β−BaB2O4(略称BBO)、LiIO3等を用いることができる。
【0039】
基板の大きさは、所定の導波路を形成できる大きさであれば、特に限定されない。各導波路の幅、長さ、及び深さも本実施形態のモジュールがその機能を発揮しうる程度のものであれば特に限定されない。各導波路の幅としては、たとえば1〜20マイクロメートル程度、好ましくは5〜10マイクロメートル程度があげられる。また、導波路の深さ(厚さ)として、10nm〜1マイクロメートルがあげられ、好ましくは50nm〜200nmである。
【0040】
第1のバイアス調整電極(電極A)は、MZAを構成する2つのアーム(Path1及びPath3)間のバイアス電圧を制御することにより、MZAの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。一方、第2のバイアス調整電極(電極B)は、MZBを構成する2つのアーム(Path2及びPath4)間のバイアス電圧を制御することにより、MZBの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。電極A及び電極Bは、好ましくは通常直流または低周波用電極である。ここで低周波用電極における「低周波」とは、例えば、0Hz〜500MHzの周波数を意味する。なお、この信号源の出力には位相変調器が設けられ、出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0041】
第1の変調電極(電極A)は、MZAを構成する2つのアームにラジオ周波数(RF)信号を入力するための電極である。一方、第2の変調電極(電極B)は、MZBを構成する2つのアームにRF信号を入力するための電極である。電極A、及び電極Bとしては、進行波型電極または共振型電極が挙げられ、好ましくは共振型電極である。
【0042】
電極A、及び電極Bは、好ましくは高周波電気信号源と接続される。高周波電気信号源は、電極A及び電極Bへ伝達される信号を制御するためのデバイスであり、公知の高周波電気信号源を採用できる。電極A及び電極Bに入力される高周波信号の周波数(fm)として、例えば1GHz〜100GHzがあげられる。高周波電気信号源の出力としては、一定の周波数を有する正弦波があげられる。なお、この高周波電気信号源の出力には位相変調器が設けられ、出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0043】
電極A及び電極Bは、たとえば金、白金などによって構成される。電極A及び電極Bの幅としては、1μm〜10μmが挙げられ、具体的には5μmが挙げられる。電極A及び電極Bの長さとしては、変調信号の波長の(fm)の0.1倍〜0.9倍が挙げられ、0.18〜0.22倍、又は0.67倍〜0.70倍が挙げられ、より好ましくは、変調信号の共振点より20〜25%短いものである。このような長さとすることで、スタブ電極との合成インピーダンスが適度な領域に留まるからである。より具体的なRFA電極、及びRFB電極の長さとしては、3250μmがあげられる。以下では、共振型電極と、進行波型電極について説明する。
【0044】
共振型光電極(共振型光変調器)は、変調信号の共振を用いて変調を行う電極である。共振型電極としては公知のものを採用でき、例えば特開2002−268025号公報、「川西哲也、及川哲、井筒雅之、"平面構造共振型光変調器"、信学技報、TECHNICAL REPORT OF IEICE、IQE2001-3(2001-05)」に記載のものを採用できる。
【0045】
進行波型電極(進行波型光変調器)は、光波と電気信号を同方向に導波させ導波している間に光を変調する電極(変調器)である(例えば、西原浩、春名正光、栖原敏明著、「光集積回路」(改訂増補版)オーム社、119頁〜120頁)。進行波型電極は公知のものを採用でき、例えば、特開平11−295674号公報、特開平11−295674号公報、特開2002−169133号公報、特開2002−40381号公報、特開2000−267056号公報、特開2000−471159号公報、特開平10−133159号公報などに開示されたものを用いることができる。
【0046】
進行波型電極として、好ましくは、いわゆる対称型の接地電極配置(進行波型の信号電極の両側に、少なくとも一対の接地電極が設けられているもの)を採用するものである。このように、信号電極を挟んで接地電極を対称に配置することによって、信号電極から出力される高周波は、信号電極の左右に配置された接地電極に印加されやすくなるので、高周波の基板側への放射を抑圧できる。
【0047】
電極A及び電極Bは、RF信号用の電極と、DC信号用の電極とを兼ねたものでもよいし、別々に設けられていてもよい。
【0048】
第3のRF電極(電極C)は、MZA及びMZBのバイアス電圧を制御することによりMZA及びMZBを伝播する光の位相を制御するための電極である。第3の電極(RFC電極)は、進行波型の電極であることが好ましい。電極Cの切り換え速度が、光FSK変調器のデータ速度になるので、電極Cを進行波型電極とすることで高速の切り換え(USB信号とLSB信号との切り換え)が可能となるからである。
【0049】
光FSK変調器は、符号切り換えを高速で実現するために、光SSB変調器の電極Cに相当する電極をRF(ラジオ周波数)電極、又はバイアス調整電極とRF電極とに置き換えたものであるが、本実施形態ではバイアス調整電極のものを用いることもできる。RF電極のみを用いるものとしては、RF電極がDC信号とRF信号とを混合して供給する給電回路(バイアス回路)と連結されているものが挙げられる。RF電極として、好ましくは、高速スイッチングに対応した進行波型電極を用いることができる。ここで、RF電極とは、RF周波数の入出力に対応した電極である。FSK変調器においても、電極Cの信号電圧の位相や振幅を切り換えることで、上側波成分と下側波成分とを切り換えて出力できる。
【0050】
光FSK変調器の動作は、光SSB変調器の動作と同様である。光SSB変調器の動作は、たとえば、「川西哲也、井筒雅之、"光SSB変調器を用いた光周波数シフター"、信学技報、TECHNICAL REPORT OF IEICE、OCS2002-49、PS2002-33、OFT2002-30(2002-08)」、「日隅ら、Xカットリチウムニオブ光SSB変調器、エレクトロンレター、vol. 37、515-516 (2001).」などに詳しく報告されている。すなわち、光SSB変調器によれば、所定量周波数がプラスにシフトした上側波帯(USB)信号、及び下側波帯(LSB)信号を得ることができる。
【0051】
光FSK変調器の動作を以下に説明する。並列する4つの光位相変調器に位相が90°ずつ異なる正弦波RF信号を入力する。また、光に関してもそれぞれの位相差が90°となるようにバイアス電圧DCA電極、DCB電極、RFC電極を調整する。すると、RF信号の周波数分だけ周波数がシフトした光が出力される。周波数シフトの方向(減少/増加)は、RFC電極に印加する信号の電圧値又は位相を調整することにより選択できる。すなわち、図4に示される光FSK変調器では、各位相変調器で、電気・光とも90°ずつの位相差をもつこととなる。なお、基板として、X−カット基板を用いるとRF信号用電極RFA電極、及びRFB電極に位相が90°異なる正弦波を供給するだけで、4つの位相変調器でそれぞれ位相が0°、90°、180°、270°のRF信号の変調を実現できる(日隅ら、Xカットリチウムニオブ光SSB変調器、エレクトロンレター、vol. 37、515-516 (2001).)。
【0052】
図5は、図4における光FSK変調器の各点での光スペクトルの概念図である。図中の黒い矢印は光を表す。図4のそれぞれのMZ構造部分において電極A、電極Bのバイアス電圧を2つのPath(パス1とパス3、パス2とパス4)での光の位相差が180°となるように調整する(図5の領域A及び領域Bを参照)。電極Cのバイアス電圧を、2つのMZ構造部分の光位相差が90°となるように調整する。図4のP点、及びQ点においては、それぞれ両側波帯が存在する(図5の領域C及び領域Dを参照)。しかしながら、P点とQ点とでは、下側波帯光の位相が逆である。このため、これらの光を合波した出力光では、上側波成分のみが含まれる(図5の領域Eを参照)。
【0053】
一方、電極Cのバイアス電圧を、2つのMZ構造部分の光位相差が270°となるように調整すると、下側波成分のみが出力される。したがって、電極Cの信号(又は2つのアームに印加される信号の位相)を切り換えることで、上側波成分と下側波成分とを切り換えて出力できる。電極Cとして、RF周波数に対応した進行波型電極を用いると、上記の周波数シフトを高速に行うことができる。
【0054】
光導波路の形成方法としては、チタン拡散法等の内拡散法やプロトン交換法など公知の形成方法を利用できる。すなわち、上記光FSK変調器は、例えば以下のようにして製造できる。まず、ニオブ酸リチウムのウエハー上に、フォトリソグラフィー法によって、チタンをパターニングし、熱拡散法によってチタンを拡散させ、光導波路を形成する。この際の条件は、チタンの厚さを100〜2000オングストロームとし、拡散温度を500〜2000℃とし、拡散時間を10〜40時間としすればよい。基板の主面に、二酸化珪素の絶縁バッファ層(厚さ0.5〜2μm)を形成する。次いで、これらの上に厚さ15〜30μmの金属メッキからなる電極を形成する。次いでウエハーを切断する。このようして、チタン拡散導波路が形成された光変調器が形成される。
【0055】
光FSK変調器は、たとえば以下のようにして製造できる。まず基板上に導波路を形成する。導波路は、ニオブ酸リチウム基板表面に、プロトン交換法やチタン熱拡散法を施すことにより設けることができる。例えば、フォトリソグラフィー技術によってLN基板上に数マイクロメートル程度のTi金属のストライプを、LN基板上に列をなした状態で作製する。その後、LN基板を1000℃近辺の高温にさらしてTi金属を当該基板内部に拡散させる。このようにすれば、LN基板上に導波路を形成できる。
【0056】
また、電極は上記と同様にして製造できる。例えば、電極を形成するため、光導波路の形成と同様にフォトリソグラフィー技術によって、同一幅で形成した多数の導波路の両脇に対して電極間ギャップが1マイクロメートル〜50マイクロメートル程度になるように形成することができる。
【0057】
なお、シリコン基板を用いる場合は、たとえば以下のようにして製造できる。シリコン(Si)基板上に火炎堆積法によって二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする下部クラッド層を堆積し、次に、二酸化ゲルマニウム(GeO2)をドーパントとして添加した二酸化シリコン(SiO2)を主成分とするコア層を堆積する。その後、電気炉で透明ガラス化する。次に、エッチングして光導波路部分を作製し、再び二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする上部クラッド層を堆積する。そして、薄膜ヒータ型熱光学強度変調器及び薄膜ヒータ型熱光学位相変調器を上部クラッド層に形成する。
【0058】
図6は、図1における光FSK変調器の他の例を示す概略構成図である。光FSK変調器以外の構成は先に説明したものを適宜用いることができる。図6に示す光FSK変調器(41)は、光変調器(42)とフィルタリング手段である光フィルタ(43)により構成されている。そして、光変調器により、DSB−SC信号(USB信号とLSB信号とからなる信号)を得て、光フィルタにより、DSB−SC信号中のUSB信号又はLSB信号のいずれかを透過させ、USB信号又はLSB信号を含む光SSB信号又は光FSK信号を得るものである。
【0059】
光変調器(42)として、強度変調器(DSB信号を得ることができる)、位相変調器、又はDSB−SC変調器(キャリア信号を抑え、USB信号とLSB信号とからなる光信号をえることができる)などを適宜用いることとができる。
【0060】
光フィルタ(43)として、公知の光フィルタを用いることができるが、好ましくは、USB信号又はLSB信号を透過できるフィルタである。このような光フィルタとして、マッハツェンダー型導波路の片方のアームに遅延を与える遅延器を具備し、印加電圧を制御することにより、高速に透過する光信号の中心周波数を制御できるものがあげられる。
【0061】
<電源系>
そして、電源系(28)は、例えば図示しないコンピュータなどの制御系につながれてもよい。電源系(28)は、高周波電源などの電源(29)と、前記電源と連結された周波数変調器(30)と、前記電源と連結された位相変調器(31)と、前記電源と連結されたパルスパターンジェネレータ(32)とを具備する。
【0062】
電源(29)は、光FSK変調器(24)に電気信号を与えるためのデバイスであり、公知の高周波電気信号源などを採用できる。高周波周波数としては、例えば1GHz〜100GHzが挙げられる。高周波電気信号源の出力としては、一定の周波数を有する正弦波があげられる。
【0063】
周波数変調器(30)として、公知の周波数変調器を用いることができる。位相変調器(31)として、公知の位相変調器を用いることができる。パルスパターンジェネレータ(32)として、公知のパルスパターンジェネレータを用いることができる。パルスパターンジェネレータは、伝送データ信号を生成することのできる装置であれば特に限定されず公知のデータ信号生成装置を用いることができる。これらは、たとえば、図示しないコンピュータなどの制御装置と電気的に連結されており、各種信号がコンピュータの入力装置・出力装置から入力・出力され、CPUなどの演算手段が、メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け、メモリなどの記憶手段に記憶された情報を読み出して、所定の動作を行うようにすればよい。
【0064】
<電源系の動作例>
電源から発生したクロック信号(33)は、前記周波数変調器(30)により周波数が半分の整数倍(例えば、1倍、2倍、又は3倍など)のクロック信号(25)に変換され、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記第1のサブマッハツェンダー電極(19)又は前記第2のサブマッハツェンダー電極(22)に印加される。また、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記位相変調器(31)によりその位相がπ/2+mπ(mは、整数を示す。)だけ変調され、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)とは位相がπ/2異なるクロック信号(26)として、残りのサブマッハツェンダー電極(22又は19)に印加される。すなわち、サブマッハツェンダー電極(22又は19)には、位相がπ/2ずれた信号が印加されることとなる。これにより、ベースバンド信号(27)を変化させることにより、USB信号とLSB信号とを出力できることとなる。なお、サブマッハツェンダー導波路に導入されるクロック信号(25,26)は、伝送するデータ信号から、たとえばクロック抽出回路を用いて抽出した信号など、伝送するデータ信号から抽出したものを用いても良い。具体的には、前記パルスパターンジェネレータ(32)と連結されたクロック抽出回路を具備し、前記クロック抽出回路が、パルスパターンジェネレータ(32)により生成された伝送データ信号から信号を抽出し、前記クロック信号(33)として、前記クロック抽出回路が伝送データ信号から抽出した信号を用いるものがあげられる。なお、クロック抽出回路は、データ信号から基調繰り返し周波数を抽出するための回路であり、発振器や、位相同期ループ等の帰還回路を用いて実現される既存の電気回路である。
【0065】
本実施形態では、前記電源から発生したクロック信号(33)は、パルスパターンジェネレータ(32)により、前記クロック信号の位相と所定に位相差、例えば式(I)で示される位相差を有するベースバンド信号(27)とされた後に、前記メインマッハツェンダー電極(23)に印加される。これにより、ベースバンド信号(27)を切り換えることによりUSB信号からLSB信号へ、またはLSB信号からUSB信号へ光信号を切り換えても、正弦波クロック信号(25,26)と、ベースバンド信号(27)との位相差(遅延量)Δφが所定の位相差となるように、例えば上記式(I)のように制御されることになるので、切り替え前後で光信号の位相がずれなくなる。なお、ベースバンド信号のビット速度としては、1Gbps〜40Gbps、好ましくは5Gbps〜30Gbps、より好ましくは10Gbps〜20Gbpsであり、クロック信号の周波数としては、0.25GHz〜10GHz、好ましくは1.25GHz〜7.5GHz、より好ましくは2.5GHz〜5GHzが挙げられる。なお、MSK変調とする場合には、クロック信号の周波数はベースバンド信号のビット速度の4分の1となる。
【0066】
<光復調器>
以下、本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器(1)により符号化された光信号を復号するための光復調器について説明する。図7は、実施態様にかかるCPFSK変調器に適用される光復調器の例を示す図である。図7に示されるとおり、光復調器(51)は、光路(52)と、前記光路(52)に設けられたカプラなどの分波器・合波器(53)と、前記分波器・合波器により分波された一方の光信号に遅延(又は位相差)を与えるための遅延器(54)と、前記遅延器により遅延された光信号と、前記分波器・合波器により分波されたもう一方の光信号を合波し、2つの光信号として出力するためのカプラなどの第2の分波器・合波器と、前記第2の分波器・合波器からの出力光を光信号に変換するフォトダイオードなどの光検出器(55)と、前記光検出器が観測した光信号を差動増幅するための差動増幅器(56)と、前記差動増幅器(56)の出力を出力するための出力路(57)とを含む。すなわち、光遅延検波器を用い、差動増幅による光復調器があげられる。このような構成を有する光復調器を用いれば、例えば、受信感度が3dB程度向上する。
【0067】
さらに、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器による光FSK変調信号は、位相が連続しているので、変調帯域幅が狭く、USB信号とLSB信号との中心周波数が近い場合であっても(たとえば、USB信号とLSB信号のすそや信号自体が重なっていても)、コヒーレント復調により、容易に復号化できる。従来は、光FSK変調信号を復調するためには、USB信号とLSB信号とがきちんと分離していなければならず、それゆえ従来の光FSK変調方式による光情報通信では、広帯域な光周波数占有帯域を必要とした。しかしながら、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器による光FSK変調信号は、光位相信号情報を検出できるので、USB信号とLSB信号とがきちんと分離していなくてもよく、広帯域な光周波数占有帯域を必要としないため、光周波数占有帯域を節約できる。
【0068】
<RZ−CPFSK変調器>
リターントゥゼロ(RZ:return to zero)−位相連続FSK(CPFSK)信号を得ることができる外部変調方式による光FSK変調は、特に図示しないが、上述した位相連続光周波数偏移変調器と、前記位相連続光周波数偏移変調器からの出力光が入射する強度変調器とを具備し、前記強度変調器へ印加される変調信号は、前記電源から発生したクロック信号であり、リターントゥゼロ位相連続光周波数偏移変調信号を得るための光変調器である。
【0069】
従来の光FSK変調器では、USBとLSBとを切り換える際の過渡期に、両信号のビートにより光信号強度が高速に変化する。この過渡信号が、光伝送システムにおいて信号劣化などをもたらす原因となる。そのため、上述した実施態様では、位相連続な光FSK変調信号を達成したが、RZ−CPFSK変調器は、さらにこの過渡信号を制御することによりさらに高品質な光FSK変調信号を得るものである。
【0070】
このRZ−CPFSK変調器では、基本的には、光FSK信号に強度変調を加え、USB信号とLSB信号との過渡期の出力強度を小さくすることにより、過渡信号の強度を小さくする(抑圧する)というものである。このようにすれば、光FSK信号のうちUSB信号やLSB信号の強度をわずかに損なうものの、過渡信号の強度を小さくできるので、品質の高い光FSK信号を得ることができる。
【0071】
この態様に用いられる強度変調器として、信号の強度を、光FSK信号の周期と同期した所定の周期で変調できるものであれば特に限定されない。好ましい光強度変調器は、マッハツェンダー導波路であり、より好ましくはプッシュプル型マッハツェンダー導波路である。マッハツェンダー導波路であれば、後述の光FSK変調器と同一の基板上に設けることができるからである。また、マッハツェンダー導波路であれば、強度変調時の不要な光位相変化(周波数チャープ)を回避することが出来るからである。このようなマッハツェンダー導波路として、公知の光SSB変調器などに用いられたマッハツェンダー導波路を利用できる。
【0072】
<RZ−CPFSK変調器の動作>
RZ−CPFSK変調器は、信号強度が光FSK信号と同期して印加されるようになっている。そして、光FSK変調信号の過渡信号が現れる時点での強度が0になるような変調(RZ)を強度変調器に施している。このような変調を施すことにより、過渡信号が抑圧され、USB信号及びLSB信号の質が高まる。なお、強度変調信号と、光FSK変調信号とのタイミング制御は、公知の方法により制御できる。具体的には、強度変調器に印加する信号と光FSK変調器の各電極に印加される信号とのタイミングを制御することにより、光RZ−FSK信号を得ることができる。具体的には、強度変調器に印加する信号と、光FSK変調器に印加される信号も同期を取ることで、光FSK変調信号の周期に合わせて強度変調を行うことができるようにされている。
【0073】
RZ−CPFSK変調器についても、初期位相制御器を直列的に接続して、入力光をあらかじめ位相制御しておくことにより、任意の変異量・変調度を有する変調信号など、上述する効果を得ることができる。
【0074】
<光情報通信システム>
本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器(1)を用いた光情報通信システムは、たとえば、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器(1)と上述した光復調器とを具備し、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器により符号化した光情報を、上記の光復調器が復号するものがあげられる。
【実施例1】
【0075】
以下、実施例1において、同期制御方法の実験例を具体的に説明する。図8は、実施例1において用いたシステムの概略図である。図8において、“LD”はダイオードなどの光源、“FSK-mod.”は光FSK変調器(上述するように2つのサブマッハツェンダー導波路と1つのメインマッハツェンダー導波路を具備するもの)、“PPG”はパルスパターンジェネレータ、“EA-mod.”は任意の電気吸収型変調器、“FBG”は任意のファイバーグレーティング、“EDFA”は任意のエルビウムドープファイバ増幅器、“BPF”はバンドパスフィルタ、“ATT”は任意の可変アッテネータ、“MZ”はマッハツェンダー導波路を示す。1ビット遅延マッハツェンダー導波路(1-bit delay MZI)と差動増幅器とは、光遅延検波器を構成する。“sampling oscilloscope”は、オシロスコープを示し、“BER detector”は、任意のビットエラーレート検出器を示す。
【0076】
電源からの信号を3つに分けた。そして、その信号の一つを光FSK変調器のサブマッハツェンダー導波路の2つの電極にπ/2位相のずれた2つの正弦波クロック信号として入力した。分けられた光のうち一つは、パルスパターンジェネレータに入力し、ここで所定のパターンを有する信号を形成し、メインマッハツェンダー導波路の電極にベースバンド信号として入力した。このようにして、所定の条件を満たし、クロック信号と同期の取れた信号を各マッハツェンダー導波路の電極に印加した。その際、正弦波クロック信号−ベースバンド信号間の位相差(遅延量)Δφをπ/4+nπ(nは整数)とした(同期制御)。これにより、位相が連続した光FSK信号を得ることができた。さらに、光遅延検波器を用いた、光位相検波によるコヒーレント復調を用いた差動増幅により、受信感度が増大し、3dBの改善が見られた。
【0077】
位相連続FSK変調信号のスペクトルを計算により求めた。ベースバンド信号は10Gbps、クロック周波数は5GHzである。また、Δφをπ/4(45度)とした。その結果を下記の図9に示す。図9は、実施例1における位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)の信号の計算に基づくスペクトルである。図9から、位相連続性により変調スペクトルの高次サイドローブが抑圧されていることがわかる。なお、参考のため従来の位相不連続光FSK変調器(Δφを3π/4(135度))により得られた光FSK変調信号のスペクトルを図10に示す。すなわち、図10は、従来の位相が不連続な光FSK変調器により得られた光FSK信号のスペクトルである。
【0078】
なお、遅延検波を行う場合の検波特性について計算を行った。計算条件は、上記と同様である。図11は、遅延検波信号を示すグラフである。図11(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)信号を用いたものであり、図11(B)は、位相が不連続な(上記の例で、Δφが135度のもの)光FSK変調信号を用いたものである。図11(B)に示されるように、位相が不連続な光FSK変調信号を復調した場合は、USB信号とLSB信号との符号を切り換える際に、検波信号に不連続な部分が生ずる。よって、従来の光FSK変調信号では、うまく遅延検波を行うことができない。一方、図11(A)に示される位相連続光FSK変調信号では、位相が連続しているので、遅延検波を好適に行うことができる。
【0079】
また、従来の二値位相シフトキーイング(BPSK)と、本実施形態による位相連続周波数シフトキーイング(CPFSK)スペクトルを計算により求めた。その結果を図12に示す。図12は、光FSK変調信号のスペクトルを示すグラフである。図12(A)は、位相連続周波数偏移変調(CPFSK)のスペクトルを示す。図12(B)は、従来の二値位相周波数偏移変調(BPSK)のスペクトルを示す。BPSKは、符合間で位相が不連続となった。一方、CPFSKでは、位相が連続しており、高周波成分(サイドローブ)を抑えることができた。よって、CPFSKは、波長多重通信などにも有効に利用されるものと考えられる。
【実施例2】
【0080】
以下、実施例2を用いて、初期位相制御の実験例を具体的に説明する。図13は、変調スペクトルの数値計算例であり、初期位相制御を行わなかった場合である。図13(a)は、光位相の軌道を示し、図13(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。図14は、変調スペクトルの数値計算例であり、最良の初期位相制御を行った場合である。図14(a)は、光位相の軌道を示し、図14(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。これらの図に示す、光変調スペクトルは、クロック周波数f0=2.5GHz,ベースバンド信号のビットレートB=10Gb/sの条件(すなわち、f0(クロック信号)=B(ベースバンド信号)/4)に基づいて計算した。また、クロック信号とベースバンド信号との間の遅延量Δφをπ/4とした。
【0081】
図13(b)に示すように、初期位相制御を行わないFSK変調は、より高次までサイドローブが発生した。これは、周波数シフトの際に発生する位相ギャップが、高周波数成分を含んでいるためである。すなわち、図13(a)に示すように光位相に不連続が生じ、急激な位相変化をもたらすため、図13(b)に示すように光変調スペクトルがブロードとなる。
【0082】
一方、図14に示すように、最適条件の初期位相制御を行った場合には、位相がビット間を通してなめらかにシフトされる(位相ギャップが補正されている)ため、この位相連続性により変調スペクトルの高次サイドローブ成分は有効に抑圧されている。図14(b)の変調スペクトルはMSK変調スペクトルと等しく、これがMSK変調の条件である。このように、初期位相制御法を用いることにより、MSK変調が実現可能なことが証明された。
【0083】
最後に、ベースバンドと初期位相制御器に入力されるデータとの間のミスタイミングによる遅延量(τ’)の影響について検証した。図15(a)は、サイドローブの抑圧比と初期位相制御の遅延量との関係を示し、図15(b)は、遅延量τ’=20psの場合の変調スペクトルを示す。図15(a)で示すように、遅延量τ’が大きくなるほど、サイドローブ成分の強度は強くなることが分かり、遅延量τ’=20psの場合にはサイドローブ成分は有効に抑圧されていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の光位相連続周波数偏移変調器、初期位相制御器を備えた当該変調器は、光信号を生成できるので、光情報通信などの分野において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の実施態様にかかる任意の周波数偏移を有する位相連続変調が実現可能な位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器の基本的構成を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1における光FSK変調器及び電源系の一例を示す概略構成図である。
【図3】図3は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)を説明するための概念図である。図3(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)のパルスを示す概念図であり、図3(B)は従来の光周波数偏移変調(FSK)のパルスを示す概念図である。
【図4】図4は、図1における光FSK変調器及び電源系の他の例を示す概略構成図である。
【図5】図5は、図4における光FSK変調器の各点での光スペクトルの概念図である。
【図6】図6は、図1における光FSK変調器の他の例を示す概略構成図である。
【図7】図7は、実施態様にかかるCPFSK変調器に適用される光復調器の例を示す図である。
【図8】図8は、実施例1において用いたシステムの概略図である。
【図9】図9は、実施例1における位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)の信号の計算に基づくスペクトルである。
【図10】図10は、従来の位相が不連続な光FSK変調器により得られた光FSK信号のスペクトルである。
【図11】図11は、遅延検波信号を示すグラフである。図11(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)信号を用いたものであり、図11(B)は、位相が不連続な(上記の例で、Δφが135度のもの)光FSK変調信号を用いたものである。
【図12】図12は、光FSK変調信号のスペクトルを示すグラフである。図12(A)は、位相連続周波数偏移変調(CPFSK)のスペクトルを示す。図12(B)は、従来の二値位相周波数偏移変調(BPSK)のスペクトルを示す。
【図13】図13は、変調スペクトルの数値計算例であり、初期位相制御を行わなかった場合である。図13(a)は、光位相の軌道を示し、図13(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。
【図14】図14は、変調スペクトルの数値計算例であり、最良の初期位相制御を行った場合である。図14(a)は、光位相の軌道を示し、図14(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。
【図15】図15は、ベースバンドと初期位相制御器に入力されるデータと間のミスタイミングによる遅延量(τ’)の影響について示す図である。図15(a)は、サイドローブの抑圧比と位相制御の遅延量との関係を示し、図15(b)は、遅延量τ’=20psの場合の変調スペクトルを示す。
【符号の説明】
【0086】
1 位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器
2 光周波数偏移(FSK)変調器
3 光周波数偏移変調器の電極
4、5 正弦波クロック信号
6 ベースバンド信号
7 光周波数偏移変調器の電極
8 電源系
9 初期位相制御器
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器などに関する。
【背景技術】
【0002】
マッハツェンダー変調器は、光情報通信などの分野で盛んに用いられている。そして、発明者らは、マッハツェンダー変調器を組み合わせた光単側波帯(SSB:Single Side Band)変調器や光周波数偏移(FSK:Frequency Shift Keying)変調器(光周波数シフトキーイング変調器ともよぶ)を開発してきた。光SSB変調器を利用した光FSK変調方法については、例えば、下記非特許文献1に記載されている。
【0003】
光FSK変調を実現するためには、半導体レーザに対する直接変調方式と外部から変調を加える外部変調方式とによるものがある。直接変調方式による光FSK変調信号によれば、位相連続光FSK変調信号を得ることができる。しかし、変調速度が低く、しかも広帯域動作は困難である。
【0004】
一方、リチウムニオブ基板を用いた光変調器による単SSB変調器型光変調器は、外部変調方式により光FSK変調を実現するので、数10Gbpsの高速変調を可能とする。しかし、外部変調方式による光FSK変調信号は、上側波帯信号(USB信号:Upper Side Band信号)と下側波帯信号(LSB信号:Lower Side Band信号)とを切り換える際に光位相が連続でなくなるという問題がある。そして、周波数を切り換える際に、光強度が過渡的に振動し、高周波を発生するという問題があった。また、現在、実用化されている光通信技術では、光の強度に変調をかけ情報を伝達するが、高速・高密度・長距離光伝送を行うためには、光の位相や周波数に情報を乗せることが必要となる。さらに、光伝送信号の低電力化を図るためには、コヒーレント光復調技術を適用した高感度受信が不可欠である。しかしながら、従来の光FSK変調器を用いた場合は、コヒーレント変調方式を採用できないので、USB信号とLSB信号とが重なることを避けるために、広帯域な光周波数占有領域が必要になるという問題があった。
【0005】
一方、光最小偏移変調(MSK:Minimum Shift Keying)は、無線を利用したデジタル通信の分野では有名な変調方式である。MSK変調方式の特徴は、変調スペクトルにおける主要ローブが差分位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)方式のものよりもコンパクトであり、より高周波数成分の付近のサイドローブは大きく減衰することである。そのようなコンパクトなスペクトルは、潜在的に良好な分散耐性を与えるので、長距離伝送に非常に有利である。しかしながら、MSK変調方式は、無線通信においてはその有効性が実証されているものの、光通信においては、実践的な外部変調による高速変調が実現されていない。
【0006】
【非特許文献1】T. Kawanishi and M. Izutsu, “Optical FSK modulator using an integrated light wave circuit consisting of four optical phase modulator”, CPT 2004 G-2, Tokyo Japan, 14-16 Jan.2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外部変調方式によっても位相が連続な光FSK変調(CPFSK:Continuous Phase Frequency Shift Keying)信号を得ることができる光変調方法を提供することを目的とする。本発明は、光周波数占有帯域を節約できる外部変調方式による光FSK変調方法を提供することを目的とする。本発明は、リターントゥゼロ(RZ:return to zero)−位相連続FSK(CPFSK)信号を得ることができる外部変調方式による光FSK変調方法を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、光初期位相制御法を適用することにより、任意の変移量・変調度を有する光CPFSK変調を実現することを目的とする。この結果、最小偏移変調(MSK)方式と呼ばれる変調方式を高速に実現することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基本的には、これまで確立してきた光SSB変調器や光FSK変調器と同様の構成をもつ変調器を用いて、正弦波クロック信号とベースバンド信号との位相差Δφを制御することにより、位相連続FSK変調を達成し、更に変調器に入力される入力光の位相を制御することにより、任意の変移量・変調度を有するCPFSK変調を実現するものである。
【0010】
本発明の基本概念をより具体的に説明すると、本発明は、前記Δφを所定の位相差、例えばπ/4+nπ(nは整数)とすれば、USB信号とLSB信号との間の位相が連続になり、更にベースバンド信号に同期させて前記入力光の位相を制御すれば、前記ベースバンド信号の切り替え(USB信号とLSB信号との切り替え)の際に光FSK変調器において発生する位相ギャップを補償することができ、これにより位相が連続すると共に任意の変移量・変調度を有する光FSK信号を得ることができるという知見に基づくものである。すなわち、正弦波クロック信号とベースバンド信号との位相差Δφを所定の位相差、例えばπ/4+nπ(nは整数)となるように制御しても、周波数偏移量によっては(特に光MSK変調を実現する場合には)、ベースバンド信号の切り替えの際に、位相差Δφに誤差として位相ギャップδφが生じてしまう(例えば「Δφ=π/4+nπ」と制御しても、条件によっては、「Δφ=π/4+nπ+δφ」となってしまう。)。そこで、この位相ギャップを入力光の位相制御により補償しようとするものである。
【0011】
また、本発明によれば、光位相情報を検出できるので、USB信号とLSB信号とが重なってもよく、これにより光周波数占有帯域を節約できる。よって、変調帯域幅が狭くても、適切に復調することができることになる。
【0012】
なお、光FSK信号に強度変調を加え、USB信号とLSB信号との過渡期の出力強度を小さくするように制御することにより、RZ−CPFSK信号を得ることもできる。
【0013】
本発明に係る位相連続光周波数偏移変調器としては、例えば、
光周波数偏移変調器(2)と、
前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、
前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、
を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の光SSB変調器や光FSK変調器を用いても、位相が連続したFSK変調信号を得ることができるので、光情報通信に好適に用いることができる。さらに、本発明により得られる位相連続FSK信号では、高周波成分が抑圧されているので、波長分割多重通信などに好適に応用されることが期待される。また、光位相検波によるコヒーレント復調を用いるので、差動増幅により受信感度が増大することになる。
【0015】
本発明によれば、初期位相制御という新しい手法を従来の光SSB変調器や光FSK変調器に適用することにより、任意の変調度を持つCPFSK変調信号を得ることができるので、光情報通信に好適に用いることができる。特に、最小変移変調(MSK)方式と呼ばれる光周波数利用効率良い光変調方式を実現することが出来る。そのため、波長分割多重の多重密度の向上されるため、従来の強度変調方式や位相変調方式に比べ伝送容量の拡大が期待できる。また、光伝送路中の波長分散や非線形現象などの擾乱要素に強く、伝送距離の拡大や、伝送信号の低電力化も期待できる。
【0016】
本発明によれば、非常に狭帯域な占有帯域で十分であるため、高い周波数利用効率となり、例えば大容量伝送に有利となる。また、高い分散耐力であるため、例えば長距離伝送に有利となる。また、位相変調(PSK)方式に比べて高域成分の抑圧度が大きく、例えば隣接チャネルへのクロストークを抑制することができる。さらに、定包絡線変調であるため、高い非線形耐力を有し、例えば長距離伝送に有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<基本構造>
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態を説明する。図1は、本発明の実施態様にかかる任意の周波数偏移を有する位相連続変調が実現可能な位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器の基本的構成を示す概略構成図である。図2は、図1における光FSK変調器及び電源系の一例を示す概略構成図である。これらの図に示すように、本実施形態にかかる位相連続光周波数偏移変調器(1)は、光周波数偏移変調器(2)と、前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)、例えばクロック信号の位相と次の式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、レーザ光源(10)から前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させたエンコードデータにより当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)とを具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)である。
【0018】
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
【0019】
すなわち、本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器(1)は、周波数切り換えのタイミングを制御し、USB信号とLSB信号とを切り換えるのみならず、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)Δφを所定の位相差となるように、例えば上記式(I)のように制御すると共に、光FSK変調器(2)に入力される入力光の位相をベースバンド信号(6)に同期させて制御することにより、任意の変移量・変調度を有するCPFSK変調を可能とするものである。
【0020】
<基本動作>
なお、図2の光周波数偏移変調器(2)が光FSK変調器として機能すること及びその動作については、たとえば上記非特許文献1に記載されるとおりである。図3は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)を説明するための概念図である。図3(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)のパルスを示す概念図であり、図3(B)は従来の光周波数偏移変調(FSK)のパルスを示す概念図である。図3(B)に示すように、従来の外部変調方式による光FSK変調信号は、USB信号とLSB信号との連続部分の位相が不連続であった。本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器における光周波数偏移変調器(2)では、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)Δφを例えば上記式(I)のように制御することにより、USB信号とLSB信号とを切り換える際の位相の不連続が解消される。本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器における電源系(8)は、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)を制御するので、上記のような位相連続周波数偏移変調が可能となる。
【0021】
すなわち、ベースバンド信号(6)を切り換えることによりUSB信号からLSB信号へ、またはLSB信号からUSB信号へ光信号を切り換えても、正弦波クロック信号(4,5)と、ベースバンド信号(6)との位相差(遅延量)Δφが例えば上記式(I)のように制御されているので、切り替え前後で光信号の位相がずれなくなる。
【0022】
上述する光周波数偏移変調器(2)と電源系(8)との組み合わせでは、同期制御技術(同期変調法)を用いることにより、光位相連続周波数偏移(CPFSK)変調と呼ばれる外部変調による高速変調が実現された。この同期制御技術が提案されるまでは、レーザダイオード(LD)に対する直接変調が、光CPFSK信号を発生させるための唯一の方法であり[K. Iwashita and T. Matsumoto, J. Lightwave. Technol., LT-5, 854-856(1987)],[B. Wedding et al., ECOC’03., Th1.5.5(2003)]、したがって、変調速度は、LDの反応によって制限されていた。また、LDにおける熱の結合効果により、CPFSK信号の低周波成分は低下してしまうという問題があった。同期制御技術はこの問題を解決する有効な手段である。
【0023】
一方、上述する同期制御技術で得られる光CPFSK変調信号の偏移量・変調度には制限がある。すなわち、このCPFSK変調においては、利用できる最小のゼロトゥピーク周波数偏移は、最低に見積もってもB/2である(BはCPFSK信号のビットレートを示す。)。すなわち、CPFSK変調のための構成は、例えばSSB変調技術に基づいた周波数シフトキーイング(FSK)変調器を使用し、当該変調器は選択的にUSB信号またはLSB信号を生成する[T. Kawanishi et al., OFC’04., PDP16(2004)]。FSK変調器は、正弦波クロック信号とベースバンド信号により駆動され、FSK信号の周波数偏移とビットレートは、それぞれ、正弦波クロック信号(4,5)のクロック周波数f0と、ベースバンド信号(6)のビットレートBにより決定される。このクロック周波数f0とビットレートBが下記式(II)にしたがってCPFSK変調器に同期して入力されるならば、下記詳細に説明する初期位相制御がなくとも、CPFSK変調が達成できる。
【0024】
クロック周波数f0=nB/2、Δφ=±2π/4B ・・・(II)
【0025】
ここで、nは整数であり、Δφは前記クロック信号とベースバンド信号との間の遅延量である。しかしながら、この場合に得られる最小の周波数偏移はf0=B/2である。このように、同期制御技術で得られる光CPFSK変調信号の偏移量・変調度に制限がある理由は、同期制御技術では、光位相が一致した場合にのみ周波数切り替えが許されるためであり、変調度(周波数偏移量)は1以上に限定され、0.5のMSK変調は行えない。
【0026】
そこで、より狭いB/4の周波数偏移を実現しMSK変調方式を実現するため、次に、上述したCPFSK変調とともに用いる初期位相制御について説明する。具体的には、例えば、周波数切り替えのタイミングで光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光の光初期位相を制御し、位相連続性を確保するようにする。
【0027】
光MSK変調(f0=B/4)を実現するためには、CPFSK変調器に直列的に接続される初期位相制御器(9)により、ベースバンド信号(6)に対して光位相をビット同期させて制御する。光FSK変調器(2)において発生する位相ギャップを初期位相制御器(9)が補償することにより、任意の周波数偏移を有する位相連続変調が得られる。初期位相制御器(9)は、入力光の位相を下記式(III)で示す補正量δφ(t)だけずらして、ベースバンド信号(6,27)の切り替えの際に光周波数偏移変調器(2,24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップδφ(t)を補償する。
δφ(t)={(2kπf0/B+φ0)mod 2π} ・・・(III)
ここで、kは整数、f0は正弦波クロック信号の周波数、Bはベースバンド信号のビット速度、φ0は初期位相である。なお、「mod」関数は、剰余演算を示し、(2kπf0/B+φ0)を2πで割った余りがδφ(t)となる。
【0028】
詳細に説明すると、ベースバンド信号(6)を切り換えることによりUSB信号からLSB信号へ、またはLSB信号からUSB信号へ光信号を切り換えると、光周波数偏移変調器(2,24)では、上式(III)に依存する位相ギャップδφ(t)が発生する。したがって、ベースバンド信号を切り換える際には、この発生することが予め分かっている位相ギャップδφ(t)を打ち消すように、初期位相制御器(9)において入力光の位相をδφ(t)だけずらして、光周波数偏移変調器(2,24)に入力するようにする。
【0029】
ここで、上記式(III)において、f0=B/4の場合には、φ0+π/2,φ0+π,φ0+3π/2,φ0+2πの4つの位相状態の変調データからなることが分かり、初期位相制御器はこの4つのデータに基づいて制御される。しかし、MSK変調の場合、上記式(III)に基づく初期位相制御は、下記条件[1]から条件[4]を全て満たすようなエンコードデータに従って単純化される。
条件[1]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記正弦波クロック信号の位相と上式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号を前記光周波数偏移変調器の電極(7,23)に印加する。
条件[2]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[3]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが同じ場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[4]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが異なる場合には、前記入力光の位相をπ変化させる。
ここで、kは条件[1]から[4]全てにおいて偶数であるか、又は条件[1]から[4]全てにおいて奇数である。
【0030】
詳細に説明すると、MSK変調の場合、f0=B/4であるから、δφ(t)={(kπ/2+φ0)mod 2π}となり、2回のベースバンド信号の印加に対して1回の位相ギャップが生じうる。すなわち、例えば、偶数回目の信号印加で位相ギャップが発生しないとすると、奇数回目の信号印加で位相ギャップが発生する場合がある。この奇数回目において位相ギャップが発生する場合とは、ベースバンド信号を切り換えた場合(LSB信号、USB信号間の相互の切り換え)である。そしてこのとき生じる位相ギャップはπである。したがって、偶数回目の信号印加では、位相ギャップδφが生じないのであるから、入力光の位相を制御することなく、上式(I)に基づく制御のみで十分に位相連続性が実現できる(条件[1]、[2])。一方、奇数回目の信号印加では、ベースバンド信号を切り換えたときに位相ギャップπが発生するので、ベースバンド信号を切り換えない場合には入力光の位相を制御せず、ベースバンド信号を切り換える場合には入力光の位相πだけずらす制御をすることにより、位相連続性が実現できる(条件[3]、[4])。
【0031】
<基本構成>
同図に示すように、本実施形態にかかる位相連続光周波数偏移変調器(1)は、CPFSK変調のための構成部分(2,8)と、初期位相制御のための構成部分(9)との2つの部分を有する。本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器(1)における、光周波数偏移変調器(2)、電源系(8)、及び位相制御器(9)は、光情報通信の分野において用いられる公知のものを適宜利用することができる。
【0032】
<初期位相制御器>
初期位相制御器としては、公知の位相制御器を適宜利用することができる。例えば、特許公報(特開平8−79174号)の図2に示されているような、LiNbO3結晶からなる光導波路に上下面を挟むように2つの電極を設け、電極間に数Vの電圧を印加して結晶の屈折率を制御し、等価的に光路長を変化させ、位相を制御するように構成した位相制御器などを用いることができる。
【0033】
具体的な駆動例としては、これらの位相制御器を初期位相制御器(2)として適用し、たとえば、図示しないコンピュータなどの制御装置により、電源系(8)と初期位相制御器(2)とを電気的に接続する。各種信号をコンピュータの入力装置・出力装置から入力・出力し、CPUなどの演算手段により、メインメモリ中の制御プログラムから受けた指令、メモリなどの記憶手段から読み出された記憶情報などに基づいて、電源系(8)におけるベースバンド信号(6)を元に、上式(III)に基づいた位相制御や、上記条件[1]から条件[4]を満たすような位相制御に基づくエンコードデータにより、所定の動作を行うようにすればよい。
【0034】
<光周波数偏移変調器>
図4は、図1における光FSK変調器及び電源系の他の例を示す概略構成図である。図4に示されるとおり、他の例に係る光FSK変調器(24)及び電源系(28)は、第1のサブマッハツェンダー導波路(12:MZA)と、第2のサブマッハツェンダー導波路(13:MZB)と、前記第1のサブマッハツェンダー導波路及び前記第2のサブマッハツェンダー導波路とを含み、光の入力部(14)と、変調された光の出力部(15)とを具備するメインマッハツェンダー導波路(16:MZC)と、前記第1のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(17,18)に印加される電圧を調整するための第1のサブマッハツェンダー電極(19:電極A)と、前記第2のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(20,21)に印加される電圧を調整するための第2のサブマッハツェンダー電極(22:電極B)と、メインマッハツェンダー導波路に印加される電圧を調整するためのメインマッハツェンダー電極(23:電極C)とを具備する光周波数偏移変調器(24)と、前記第1のサブマッハツェンダー電極及び前記第2のサブマッハツェンダー電極に位相がπ/2異なる正弦波クロック信号(25,26)を印加するとともに、前記メインマッハツェンダー電極に、前記第1のサブマッハツェンダー電極又は前記第2のサブマッハツェンダー電極に印加される前記正弦波クロック信号の位相と所定の位相差、例えば次の式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(27)を印加するための電源系(28)と、からなる。
【0035】
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・・・・(I)
【0036】
そして、前記光周波数偏移変調器(24)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(27)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(24)において発生する位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)を、この光FSK変調器(28)に直列的に接続し、電源系(28)と接続することにより、本実施形態に係る任意の周波数偏移を有する位相連続変調が実現可能な位相連続光周波数偏移変調器が作製できる。
【0037】
以下、光周波数偏移変調器(光FSK変調器)について説明する。光FSK変調器を構成するそれぞれのマッハツェンダー導波路は、例えば、略六角形状の導波路(これが2つのアームを構成する)を具備し、並列する2つの位相変調器を具備するようにして構成される。図4に示される光FSK変調器は、第1のサブマッハツェンダー導波路(MZA)と、第2のサブマッハツェンダー導波路(MZB)と、メインマッハツェンダー導波路(MZC)とを含む。メインマッハツェンダー導波路(MZC)は、MZA及びMZBをその両アームとして具備するマッハツェンダー導波路である。
【0038】
通常、マッハツェンダー導波路や電極は基板上に設けられる。基板及び各導波路は、光を伝播することができるものであれば、特に限定されない。例えば、LN基板上に、Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし、シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO2)導波路を形成しても良い。また、InPやGaAs基板上にInGaAsP、GaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を用いても良い。基板として、XカットZ軸伝搬となるように切り出されたニオブ酸リチウム(LiNbO3:LN)が好ましい。これは大きな電気光学効果を利用できるため低電力駆動が可能であり、かつ優れた応答速度が得られるためである。この基板のXカット面(YZ面)の表面に光導波路が形成され、導波光はZ軸(光学軸)に沿って伝搬することとなる。Xカット以外のニオブ酸リチウム基板を用いても良い。また、基板として、電気光学効果を有する三方晶系、六方晶系といった一軸性結晶、又は結晶の点群がC3V、C3、D3、C3h、D3hである材料を用いることができる。これらの材料は、電界の印加によって屈折率変化が伝搬光のモードによって異符号となるような屈折率調整機能を有する。具体例としては、ニオブ酸リチウムの他に、タンタル酸リチウム(LiTaO3:LT)、β−BaB2O4(略称BBO)、LiIO3等を用いることができる。
【0039】
基板の大きさは、所定の導波路を形成できる大きさであれば、特に限定されない。各導波路の幅、長さ、及び深さも本実施形態のモジュールがその機能を発揮しうる程度のものであれば特に限定されない。各導波路の幅としては、たとえば1〜20マイクロメートル程度、好ましくは5〜10マイクロメートル程度があげられる。また、導波路の深さ(厚さ)として、10nm〜1マイクロメートルがあげられ、好ましくは50nm〜200nmである。
【0040】
第1のバイアス調整電極(電極A)は、MZAを構成する2つのアーム(Path1及びPath3)間のバイアス電圧を制御することにより、MZAの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。一方、第2のバイアス調整電極(電極B)は、MZBを構成する2つのアーム(Path2及びPath4)間のバイアス電圧を制御することにより、MZBの2つのアームを伝播する光の位相を制御するための電極である。電極A及び電極Bは、好ましくは通常直流または低周波用電極である。ここで低周波用電極における「低周波」とは、例えば、0Hz〜500MHzの周波数を意味する。なお、この信号源の出力には位相変調器が設けられ、出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0041】
第1の変調電極(電極A)は、MZAを構成する2つのアームにラジオ周波数(RF)信号を入力するための電極である。一方、第2の変調電極(電極B)は、MZBを構成する2つのアームにRF信号を入力するための電極である。電極A、及び電極Bとしては、進行波型電極または共振型電極が挙げられ、好ましくは共振型電極である。
【0042】
電極A、及び電極Bは、好ましくは高周波電気信号源と接続される。高周波電気信号源は、電極A及び電極Bへ伝達される信号を制御するためのデバイスであり、公知の高周波電気信号源を採用できる。電極A及び電極Bに入力される高周波信号の周波数(fm)として、例えば1GHz〜100GHzがあげられる。高周波電気信号源の出力としては、一定の周波数を有する正弦波があげられる。なお、この高周波電気信号源の出力には位相変調器が設けられ、出力信号の位相を制御できるようにされていることが好ましい。
【0043】
電極A及び電極Bは、たとえば金、白金などによって構成される。電極A及び電極Bの幅としては、1μm〜10μmが挙げられ、具体的には5μmが挙げられる。電極A及び電極Bの長さとしては、変調信号の波長の(fm)の0.1倍〜0.9倍が挙げられ、0.18〜0.22倍、又は0.67倍〜0.70倍が挙げられ、より好ましくは、変調信号の共振点より20〜25%短いものである。このような長さとすることで、スタブ電極との合成インピーダンスが適度な領域に留まるからである。より具体的なRFA電極、及びRFB電極の長さとしては、3250μmがあげられる。以下では、共振型電極と、進行波型電極について説明する。
【0044】
共振型光電極(共振型光変調器)は、変調信号の共振を用いて変調を行う電極である。共振型電極としては公知のものを採用でき、例えば特開2002−268025号公報、「川西哲也、及川哲、井筒雅之、"平面構造共振型光変調器"、信学技報、TECHNICAL REPORT OF IEICE、IQE2001-3(2001-05)」に記載のものを採用できる。
【0045】
進行波型電極(進行波型光変調器)は、光波と電気信号を同方向に導波させ導波している間に光を変調する電極(変調器)である(例えば、西原浩、春名正光、栖原敏明著、「光集積回路」(改訂増補版)オーム社、119頁〜120頁)。進行波型電極は公知のものを採用でき、例えば、特開平11−295674号公報、特開平11−295674号公報、特開2002−169133号公報、特開2002−40381号公報、特開2000−267056号公報、特開2000−471159号公報、特開平10−133159号公報などに開示されたものを用いることができる。
【0046】
進行波型電極として、好ましくは、いわゆる対称型の接地電極配置(進行波型の信号電極の両側に、少なくとも一対の接地電極が設けられているもの)を採用するものである。このように、信号電極を挟んで接地電極を対称に配置することによって、信号電極から出力される高周波は、信号電極の左右に配置された接地電極に印加されやすくなるので、高周波の基板側への放射を抑圧できる。
【0047】
電極A及び電極Bは、RF信号用の電極と、DC信号用の電極とを兼ねたものでもよいし、別々に設けられていてもよい。
【0048】
第3のRF電極(電極C)は、MZA及びMZBのバイアス電圧を制御することによりMZA及びMZBを伝播する光の位相を制御するための電極である。第3の電極(RFC電極)は、進行波型の電極であることが好ましい。電極Cの切り換え速度が、光FSK変調器のデータ速度になるので、電極Cを進行波型電極とすることで高速の切り換え(USB信号とLSB信号との切り換え)が可能となるからである。
【0049】
光FSK変調器は、符号切り換えを高速で実現するために、光SSB変調器の電極Cに相当する電極をRF(ラジオ周波数)電極、又はバイアス調整電極とRF電極とに置き換えたものであるが、本実施形態ではバイアス調整電極のものを用いることもできる。RF電極のみを用いるものとしては、RF電極がDC信号とRF信号とを混合して供給する給電回路(バイアス回路)と連結されているものが挙げられる。RF電極として、好ましくは、高速スイッチングに対応した進行波型電極を用いることができる。ここで、RF電極とは、RF周波数の入出力に対応した電極である。FSK変調器においても、電極Cの信号電圧の位相や振幅を切り換えることで、上側波成分と下側波成分とを切り換えて出力できる。
【0050】
光FSK変調器の動作は、光SSB変調器の動作と同様である。光SSB変調器の動作は、たとえば、「川西哲也、井筒雅之、"光SSB変調器を用いた光周波数シフター"、信学技報、TECHNICAL REPORT OF IEICE、OCS2002-49、PS2002-33、OFT2002-30(2002-08)」、「日隅ら、Xカットリチウムニオブ光SSB変調器、エレクトロンレター、vol. 37、515-516 (2001).」などに詳しく報告されている。すなわち、光SSB変調器によれば、所定量周波数がプラスにシフトした上側波帯(USB)信号、及び下側波帯(LSB)信号を得ることができる。
【0051】
光FSK変調器の動作を以下に説明する。並列する4つの光位相変調器に位相が90°ずつ異なる正弦波RF信号を入力する。また、光に関してもそれぞれの位相差が90°となるようにバイアス電圧DCA電極、DCB電極、RFC電極を調整する。すると、RF信号の周波数分だけ周波数がシフトした光が出力される。周波数シフトの方向(減少/増加)は、RFC電極に印加する信号の電圧値又は位相を調整することにより選択できる。すなわち、図4に示される光FSK変調器では、各位相変調器で、電気・光とも90°ずつの位相差をもつこととなる。なお、基板として、X−カット基板を用いるとRF信号用電極RFA電極、及びRFB電極に位相が90°異なる正弦波を供給するだけで、4つの位相変調器でそれぞれ位相が0°、90°、180°、270°のRF信号の変調を実現できる(日隅ら、Xカットリチウムニオブ光SSB変調器、エレクトロンレター、vol. 37、515-516 (2001).)。
【0052】
図5は、図4における光FSK変調器の各点での光スペクトルの概念図である。図中の黒い矢印は光を表す。図4のそれぞれのMZ構造部分において電極A、電極Bのバイアス電圧を2つのPath(パス1とパス3、パス2とパス4)での光の位相差が180°となるように調整する(図5の領域A及び領域Bを参照)。電極Cのバイアス電圧を、2つのMZ構造部分の光位相差が90°となるように調整する。図4のP点、及びQ点においては、それぞれ両側波帯が存在する(図5の領域C及び領域Dを参照)。しかしながら、P点とQ点とでは、下側波帯光の位相が逆である。このため、これらの光を合波した出力光では、上側波成分のみが含まれる(図5の領域Eを参照)。
【0053】
一方、電極Cのバイアス電圧を、2つのMZ構造部分の光位相差が270°となるように調整すると、下側波成分のみが出力される。したがって、電極Cの信号(又は2つのアームに印加される信号の位相)を切り換えることで、上側波成分と下側波成分とを切り換えて出力できる。電極Cとして、RF周波数に対応した進行波型電極を用いると、上記の周波数シフトを高速に行うことができる。
【0054】
光導波路の形成方法としては、チタン拡散法等の内拡散法やプロトン交換法など公知の形成方法を利用できる。すなわち、上記光FSK変調器は、例えば以下のようにして製造できる。まず、ニオブ酸リチウムのウエハー上に、フォトリソグラフィー法によって、チタンをパターニングし、熱拡散法によってチタンを拡散させ、光導波路を形成する。この際の条件は、チタンの厚さを100〜2000オングストロームとし、拡散温度を500〜2000℃とし、拡散時間を10〜40時間としすればよい。基板の主面に、二酸化珪素の絶縁バッファ層(厚さ0.5〜2μm)を形成する。次いで、これらの上に厚さ15〜30μmの金属メッキからなる電極を形成する。次いでウエハーを切断する。このようして、チタン拡散導波路が形成された光変調器が形成される。
【0055】
光FSK変調器は、たとえば以下のようにして製造できる。まず基板上に導波路を形成する。導波路は、ニオブ酸リチウム基板表面に、プロトン交換法やチタン熱拡散法を施すことにより設けることができる。例えば、フォトリソグラフィー技術によってLN基板上に数マイクロメートル程度のTi金属のストライプを、LN基板上に列をなした状態で作製する。その後、LN基板を1000℃近辺の高温にさらしてTi金属を当該基板内部に拡散させる。このようにすれば、LN基板上に導波路を形成できる。
【0056】
また、電極は上記と同様にして製造できる。例えば、電極を形成するため、光導波路の形成と同様にフォトリソグラフィー技術によって、同一幅で形成した多数の導波路の両脇に対して電極間ギャップが1マイクロメートル〜50マイクロメートル程度になるように形成することができる。
【0057】
なお、シリコン基板を用いる場合は、たとえば以下のようにして製造できる。シリコン(Si)基板上に火炎堆積法によって二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする下部クラッド層を堆積し、次に、二酸化ゲルマニウム(GeO2)をドーパントとして添加した二酸化シリコン(SiO2)を主成分とするコア層を堆積する。その後、電気炉で透明ガラス化する。次に、エッチングして光導波路部分を作製し、再び二酸化シリコン(SiO2)を主成分とする上部クラッド層を堆積する。そして、薄膜ヒータ型熱光学強度変調器及び薄膜ヒータ型熱光学位相変調器を上部クラッド層に形成する。
【0058】
図6は、図1における光FSK変調器の他の例を示す概略構成図である。光FSK変調器以外の構成は先に説明したものを適宜用いることができる。図6に示す光FSK変調器(41)は、光変調器(42)とフィルタリング手段である光フィルタ(43)により構成されている。そして、光変調器により、DSB−SC信号(USB信号とLSB信号とからなる信号)を得て、光フィルタにより、DSB−SC信号中のUSB信号又はLSB信号のいずれかを透過させ、USB信号又はLSB信号を含む光SSB信号又は光FSK信号を得るものである。
【0059】
光変調器(42)として、強度変調器(DSB信号を得ることができる)、位相変調器、又はDSB−SC変調器(キャリア信号を抑え、USB信号とLSB信号とからなる光信号をえることができる)などを適宜用いることとができる。
【0060】
光フィルタ(43)として、公知の光フィルタを用いることができるが、好ましくは、USB信号又はLSB信号を透過できるフィルタである。このような光フィルタとして、マッハツェンダー型導波路の片方のアームに遅延を与える遅延器を具備し、印加電圧を制御することにより、高速に透過する光信号の中心周波数を制御できるものがあげられる。
【0061】
<電源系>
そして、電源系(28)は、例えば図示しないコンピュータなどの制御系につながれてもよい。電源系(28)は、高周波電源などの電源(29)と、前記電源と連結された周波数変調器(30)と、前記電源と連結された位相変調器(31)と、前記電源と連結されたパルスパターンジェネレータ(32)とを具備する。
【0062】
電源(29)は、光FSK変調器(24)に電気信号を与えるためのデバイスであり、公知の高周波電気信号源などを採用できる。高周波周波数としては、例えば1GHz〜100GHzが挙げられる。高周波電気信号源の出力としては、一定の周波数を有する正弦波があげられる。
【0063】
周波数変調器(30)として、公知の周波数変調器を用いることができる。位相変調器(31)として、公知の位相変調器を用いることができる。パルスパターンジェネレータ(32)として、公知のパルスパターンジェネレータを用いることができる。パルスパターンジェネレータは、伝送データ信号を生成することのできる装置であれば特に限定されず公知のデータ信号生成装置を用いることができる。これらは、たとえば、図示しないコンピュータなどの制御装置と電気的に連結されており、各種信号がコンピュータの入力装置・出力装置から入力・出力され、CPUなどの演算手段が、メインメモリ中の制御プログラムの指令を受け、メモリなどの記憶手段に記憶された情報を読み出して、所定の動作を行うようにすればよい。
【0064】
<電源系の動作例>
電源から発生したクロック信号(33)は、前記周波数変調器(30)により周波数が半分の整数倍(例えば、1倍、2倍、又は3倍など)のクロック信号(25)に変換され、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記第1のサブマッハツェンダー電極(19)又は前記第2のサブマッハツェンダー電極(22)に印加される。また、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記位相変調器(31)によりその位相がπ/2+mπ(mは、整数を示す。)だけ変調され、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)とは位相がπ/2異なるクロック信号(26)として、残りのサブマッハツェンダー電極(22又は19)に印加される。すなわち、サブマッハツェンダー電極(22又は19)には、位相がπ/2ずれた信号が印加されることとなる。これにより、ベースバンド信号(27)を変化させることにより、USB信号とLSB信号とを出力できることとなる。なお、サブマッハツェンダー導波路に導入されるクロック信号(25,26)は、伝送するデータ信号から、たとえばクロック抽出回路を用いて抽出した信号など、伝送するデータ信号から抽出したものを用いても良い。具体的には、前記パルスパターンジェネレータ(32)と連結されたクロック抽出回路を具備し、前記クロック抽出回路が、パルスパターンジェネレータ(32)により生成された伝送データ信号から信号を抽出し、前記クロック信号(33)として、前記クロック抽出回路が伝送データ信号から抽出した信号を用いるものがあげられる。なお、クロック抽出回路は、データ信号から基調繰り返し周波数を抽出するための回路であり、発振器や、位相同期ループ等の帰還回路を用いて実現される既存の電気回路である。
【0065】
本実施形態では、前記電源から発生したクロック信号(33)は、パルスパターンジェネレータ(32)により、前記クロック信号の位相と所定に位相差、例えば式(I)で示される位相差を有するベースバンド信号(27)とされた後に、前記メインマッハツェンダー電極(23)に印加される。これにより、ベースバンド信号(27)を切り換えることによりUSB信号からLSB信号へ、またはLSB信号からUSB信号へ光信号を切り換えても、正弦波クロック信号(25,26)と、ベースバンド信号(27)との位相差(遅延量)Δφが所定の位相差となるように、例えば上記式(I)のように制御されることになるので、切り替え前後で光信号の位相がずれなくなる。なお、ベースバンド信号のビット速度としては、1Gbps〜40Gbps、好ましくは5Gbps〜30Gbps、より好ましくは10Gbps〜20Gbpsであり、クロック信号の周波数としては、0.25GHz〜10GHz、好ましくは1.25GHz〜7.5GHz、より好ましくは2.5GHz〜5GHzが挙げられる。なお、MSK変調とする場合には、クロック信号の周波数はベースバンド信号のビット速度の4分の1となる。
【0066】
<光復調器>
以下、本実施形態に係る位相連続光周波数偏移変調器(1)により符号化された光信号を復号するための光復調器について説明する。図7は、実施態様にかかるCPFSK変調器に適用される光復調器の例を示す図である。図7に示されるとおり、光復調器(51)は、光路(52)と、前記光路(52)に設けられたカプラなどの分波器・合波器(53)と、前記分波器・合波器により分波された一方の光信号に遅延(又は位相差)を与えるための遅延器(54)と、前記遅延器により遅延された光信号と、前記分波器・合波器により分波されたもう一方の光信号を合波し、2つの光信号として出力するためのカプラなどの第2の分波器・合波器と、前記第2の分波器・合波器からの出力光を光信号に変換するフォトダイオードなどの光検出器(55)と、前記光検出器が観測した光信号を差動増幅するための差動増幅器(56)と、前記差動増幅器(56)の出力を出力するための出力路(57)とを含む。すなわち、光遅延検波器を用い、差動増幅による光復調器があげられる。このような構成を有する光復調器を用いれば、例えば、受信感度が3dB程度向上する。
【0067】
さらに、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器による光FSK変調信号は、位相が連続しているので、変調帯域幅が狭く、USB信号とLSB信号との中心周波数が近い場合であっても(たとえば、USB信号とLSB信号のすそや信号自体が重なっていても)、コヒーレント復調により、容易に復号化できる。従来は、光FSK変調信号を復調するためには、USB信号とLSB信号とがきちんと分離していなければならず、それゆえ従来の光FSK変調方式による光情報通信では、広帯域な光周波数占有帯域を必要とした。しかしながら、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器による光FSK変調信号は、光位相信号情報を検出できるので、USB信号とLSB信号とがきちんと分離していなくてもよく、広帯域な光周波数占有帯域を必要としないため、光周波数占有帯域を節約できる。
【0068】
<RZ−CPFSK変調器>
リターントゥゼロ(RZ:return to zero)−位相連続FSK(CPFSK)信号を得ることができる外部変調方式による光FSK変調は、特に図示しないが、上述した位相連続光周波数偏移変調器と、前記位相連続光周波数偏移変調器からの出力光が入射する強度変調器とを具備し、前記強度変調器へ印加される変調信号は、前記電源から発生したクロック信号であり、リターントゥゼロ位相連続光周波数偏移変調信号を得るための光変調器である。
【0069】
従来の光FSK変調器では、USBとLSBとを切り換える際の過渡期に、両信号のビートにより光信号強度が高速に変化する。この過渡信号が、光伝送システムにおいて信号劣化などをもたらす原因となる。そのため、上述した実施態様では、位相連続な光FSK変調信号を達成したが、RZ−CPFSK変調器は、さらにこの過渡信号を制御することによりさらに高品質な光FSK変調信号を得るものである。
【0070】
このRZ−CPFSK変調器では、基本的には、光FSK信号に強度変調を加え、USB信号とLSB信号との過渡期の出力強度を小さくすることにより、過渡信号の強度を小さくする(抑圧する)というものである。このようにすれば、光FSK信号のうちUSB信号やLSB信号の強度をわずかに損なうものの、過渡信号の強度を小さくできるので、品質の高い光FSK信号を得ることができる。
【0071】
この態様に用いられる強度変調器として、信号の強度を、光FSK信号の周期と同期した所定の周期で変調できるものであれば特に限定されない。好ましい光強度変調器は、マッハツェンダー導波路であり、より好ましくはプッシュプル型マッハツェンダー導波路である。マッハツェンダー導波路であれば、後述の光FSK変調器と同一の基板上に設けることができるからである。また、マッハツェンダー導波路であれば、強度変調時の不要な光位相変化(周波数チャープ)を回避することが出来るからである。このようなマッハツェンダー導波路として、公知の光SSB変調器などに用いられたマッハツェンダー導波路を利用できる。
【0072】
<RZ−CPFSK変調器の動作>
RZ−CPFSK変調器は、信号強度が光FSK信号と同期して印加されるようになっている。そして、光FSK変調信号の過渡信号が現れる時点での強度が0になるような変調(RZ)を強度変調器に施している。このような変調を施すことにより、過渡信号が抑圧され、USB信号及びLSB信号の質が高まる。なお、強度変調信号と、光FSK変調信号とのタイミング制御は、公知の方法により制御できる。具体的には、強度変調器に印加する信号と光FSK変調器の各電極に印加される信号とのタイミングを制御することにより、光RZ−FSK信号を得ることができる。具体的には、強度変調器に印加する信号と、光FSK変調器に印加される信号も同期を取ることで、光FSK変調信号の周期に合わせて強度変調を行うことができるようにされている。
【0073】
RZ−CPFSK変調器についても、初期位相制御器を直列的に接続して、入力光をあらかじめ位相制御しておくことにより、任意の変異量・変調度を有する変調信号など、上述する効果を得ることができる。
【0074】
<光情報通信システム>
本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器(1)を用いた光情報通信システムは、たとえば、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器(1)と上述した光復調器とを具備し、本実施形態の位相連続光周波数偏移変調器により符号化した光情報を、上記の光復調器が復号するものがあげられる。
【実施例1】
【0075】
以下、実施例1において、同期制御方法の実験例を具体的に説明する。図8は、実施例1において用いたシステムの概略図である。図8において、“LD”はダイオードなどの光源、“FSK-mod.”は光FSK変調器(上述するように2つのサブマッハツェンダー導波路と1つのメインマッハツェンダー導波路を具備するもの)、“PPG”はパルスパターンジェネレータ、“EA-mod.”は任意の電気吸収型変調器、“FBG”は任意のファイバーグレーティング、“EDFA”は任意のエルビウムドープファイバ増幅器、“BPF”はバンドパスフィルタ、“ATT”は任意の可変アッテネータ、“MZ”はマッハツェンダー導波路を示す。1ビット遅延マッハツェンダー導波路(1-bit delay MZI)と差動増幅器とは、光遅延検波器を構成する。“sampling oscilloscope”は、オシロスコープを示し、“BER detector”は、任意のビットエラーレート検出器を示す。
【0076】
電源からの信号を3つに分けた。そして、その信号の一つを光FSK変調器のサブマッハツェンダー導波路の2つの電極にπ/2位相のずれた2つの正弦波クロック信号として入力した。分けられた光のうち一つは、パルスパターンジェネレータに入力し、ここで所定のパターンを有する信号を形成し、メインマッハツェンダー導波路の電極にベースバンド信号として入力した。このようにして、所定の条件を満たし、クロック信号と同期の取れた信号を各マッハツェンダー導波路の電極に印加した。その際、正弦波クロック信号−ベースバンド信号間の位相差(遅延量)Δφをπ/4+nπ(nは整数)とした(同期制御)。これにより、位相が連続した光FSK信号を得ることができた。さらに、光遅延検波器を用いた、光位相検波によるコヒーレント復調を用いた差動増幅により、受信感度が増大し、3dBの改善が見られた。
【0077】
位相連続FSK変調信号のスペクトルを計算により求めた。ベースバンド信号は10Gbps、クロック周波数は5GHzである。また、Δφをπ/4(45度)とした。その結果を下記の図9に示す。図9は、実施例1における位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)の信号の計算に基づくスペクトルである。図9から、位相連続性により変調スペクトルの高次サイドローブが抑圧されていることがわかる。なお、参考のため従来の位相不連続光FSK変調器(Δφを3π/4(135度))により得られた光FSK変調信号のスペクトルを図10に示す。すなわち、図10は、従来の位相が不連続な光FSK変調器により得られた光FSK信号のスペクトルである。
【0078】
なお、遅延検波を行う場合の検波特性について計算を行った。計算条件は、上記と同様である。図11は、遅延検波信号を示すグラフである。図11(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)信号を用いたものであり、図11(B)は、位相が不連続な(上記の例で、Δφが135度のもの)光FSK変調信号を用いたものである。図11(B)に示されるように、位相が不連続な光FSK変調信号を復調した場合は、USB信号とLSB信号との符号を切り換える際に、検波信号に不連続な部分が生ずる。よって、従来の光FSK変調信号では、うまく遅延検波を行うことができない。一方、図11(A)に示される位相連続光FSK変調信号では、位相が連続しているので、遅延検波を好適に行うことができる。
【0079】
また、従来の二値位相シフトキーイング(BPSK)と、本実施形態による位相連続周波数シフトキーイング(CPFSK)スペクトルを計算により求めた。その結果を図12に示す。図12は、光FSK変調信号のスペクトルを示すグラフである。図12(A)は、位相連続周波数偏移変調(CPFSK)のスペクトルを示す。図12(B)は、従来の二値位相周波数偏移変調(BPSK)のスペクトルを示す。BPSKは、符合間で位相が不連続となった。一方、CPFSKでは、位相が連続しており、高周波成分(サイドローブ)を抑えることができた。よって、CPFSKは、波長多重通信などにも有効に利用されるものと考えられる。
【実施例2】
【0080】
以下、実施例2を用いて、初期位相制御の実験例を具体的に説明する。図13は、変調スペクトルの数値計算例であり、初期位相制御を行わなかった場合である。図13(a)は、光位相の軌道を示し、図13(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。図14は、変調スペクトルの数値計算例であり、最良の初期位相制御を行った場合である。図14(a)は、光位相の軌道を示し、図14(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。これらの図に示す、光変調スペクトルは、クロック周波数f0=2.5GHz,ベースバンド信号のビットレートB=10Gb/sの条件(すなわち、f0(クロック信号)=B(ベースバンド信号)/4)に基づいて計算した。また、クロック信号とベースバンド信号との間の遅延量Δφをπ/4とした。
【0081】
図13(b)に示すように、初期位相制御を行わないFSK変調は、より高次までサイドローブが発生した。これは、周波数シフトの際に発生する位相ギャップが、高周波数成分を含んでいるためである。すなわち、図13(a)に示すように光位相に不連続が生じ、急激な位相変化をもたらすため、図13(b)に示すように光変調スペクトルがブロードとなる。
【0082】
一方、図14に示すように、最適条件の初期位相制御を行った場合には、位相がビット間を通してなめらかにシフトされる(位相ギャップが補正されている)ため、この位相連続性により変調スペクトルの高次サイドローブ成分は有効に抑圧されている。図14(b)の変調スペクトルはMSK変調スペクトルと等しく、これがMSK変調の条件である。このように、初期位相制御法を用いることにより、MSK変調が実現可能なことが証明された。
【0083】
最後に、ベースバンドと初期位相制御器に入力されるデータとの間のミスタイミングによる遅延量(τ’)の影響について検証した。図15(a)は、サイドローブの抑圧比と初期位相制御の遅延量との関係を示し、図15(b)は、遅延量τ’=20psの場合の変調スペクトルを示す。図15(a)で示すように、遅延量τ’が大きくなるほど、サイドローブ成分の強度は強くなることが分かり、遅延量τ’=20psの場合にはサイドローブ成分は有効に抑圧されていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の光位相連続周波数偏移変調器、初期位相制御器を備えた当該変調器は、光信号を生成できるので、光情報通信などの分野において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明の実施態様にかかる任意の周波数偏移を有する位相連続変調が実現可能な位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器の基本的構成を示す概略構成図である。
【図2】図2は、図1における光FSK変調器及び電源系の一例を示す概略構成図である。
【図3】図3は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)を説明するための概念図である。図3(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)のパルスを示す概念図であり、図3(B)は従来の光周波数偏移変調(FSK)のパルスを示す概念図である。
【図4】図4は、図1における光FSK変調器及び電源系の他の例を示す概略構成図である。
【図5】図5は、図4における光FSK変調器の各点での光スペクトルの概念図である。
【図6】図6は、図1における光FSK変調器の他の例を示す概略構成図である。
【図7】図7は、実施態様にかかるCPFSK変調器に適用される光復調器の例を示す図である。
【図8】図8は、実施例1において用いたシステムの概略図である。
【図9】図9は、実施例1における位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)の信号の計算に基づくスペクトルである。
【図10】図10は、従来の位相が不連続な光FSK変調器により得られた光FSK信号のスペクトルである。
【図11】図11は、遅延検波信号を示すグラフである。図11(A)は、位相連続光周波数偏移変調(CPFSK)信号を用いたものであり、図11(B)は、位相が不連続な(上記の例で、Δφが135度のもの)光FSK変調信号を用いたものである。
【図12】図12は、光FSK変調信号のスペクトルを示すグラフである。図12(A)は、位相連続周波数偏移変調(CPFSK)のスペクトルを示す。図12(B)は、従来の二値位相周波数偏移変調(BPSK)のスペクトルを示す。
【図13】図13は、変調スペクトルの数値計算例であり、初期位相制御を行わなかった場合である。図13(a)は、光位相の軌道を示し、図13(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。
【図14】図14は、変調スペクトルの数値計算例であり、最良の初期位相制御を行った場合である。図14(a)は、光位相の軌道を示し、図14(b)は、その結果としての変調スペクトルを示す。
【図15】図15は、ベースバンドと初期位相制御器に入力されるデータと間のミスタイミングによる遅延量(τ’)の影響について示す図である。図15(a)は、サイドローブの抑圧比と位相制御の遅延量との関係を示し、図15(b)は、遅延量τ’=20psの場合の変調スペクトルを示す。
【符号の説明】
【0086】
1 位相連続光周波数偏移(CPFSK)変調器
2 光周波数偏移(FSK)変調器
3 光周波数偏移変調器の電極
4、5 正弦波クロック信号
6 ベースバンド信号
7 光周波数偏移変調器の電極
8 電源系
9 初期位相制御器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光周波数偏移変調器(2)と、
前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、
前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、
を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
【請求項2】
第1のサブマッハツェンダー導波路(12)と、
第2のサブマッハツェンダー導波路(13)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路及び前記第2のサブマッハツェンダー導波路とを含み、光の入力部(14)と、変調された光の出力部(15)とを具備するメインマッハツェンダー導波路(16)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(17,18)に印加される電圧を調整するための第1のサブマッハツェンダー電極(19)と、
前記第2のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(20,21)に印加される電圧を調整するための第2のサブマッハツェンダー電極(22)と、
メインマッハツェンダー導波路に印加される電圧を調整するためのメインマッハツェンダー電極(23)とを具備する光周波数偏移変調器(24)と、
前記第1のサブマッハツェンダー電極及び前記第2のサブマッハツェンダー電極に位相がπ/2異なる正弦波クロック信号(25,26)を印加するとともに、
前記メインマッハツェンダー電極に、前記第1のサブマッハツェンダー電極又は前記第2のサブマッハツェンダー電極に印加される前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(27)を印加するための電源系(28)と、
前記光周波数偏移変調器(24)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(27)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、
を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
【請求項3】
前記所定の位相差Δφは、下記式(I)の関係を満たす位相差である、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
【請求項4】
前記電源系(8,28)は、光周波数偏移変調器(2,24)から出力される上側波帯信号と下側波帯信号との位相が同期するように信号を供給する、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
【請求項5】
更に、前記光周波数偏移変調器(42)の出力側に、前記光周波数偏移変調器(42)から出力される上側波帯信号及び下側波帯信号のいずれかを透過するフィルタリング手段(43)を有する、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器(41)。
【請求項6】
前記ベースバンド信号のビット速度Bに対して、前記正弦波クロック信号の周波数はB/4である、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項7】
前記初期位相制御器(9)は、前記入力光の位相を下記式(II)で示す補正量δφ(t)だけずらして、前記ベースバンド信号(6,27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2,24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップδφ(t)を補償する、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
δφ(t)={(2kπf0/B+φ0)mod 2π} ・・・(II)
ここで、kは整数、f0は前記正弦波クロック信号の周波数、Bは前記ベースバンド信号のビット速度、φ0は初期位相である。
【請求項8】
前記初期位相制御器(9)は、下記条件[1]から条件[4]を全て満たすように前記入力光の位相を制御する、請求項6に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
条件[1]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記正弦波クロック信号の位相と下記式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号を前記光周波数偏移変調器の電極(7,23)に印加する。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
条件[2]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[3]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが同じ場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[4]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが異なる場合には、前記入力光の位相をπ変化させる。
ここで、kは条件[1]から[4]全てにおいて偶数であるか、又は条件[1]から[4]全てにおいて奇数である。
【請求項9】
前記電源系(28)は、
電源(29)と、
前記電源と連結された周波数変調器(30)と、
前記電源と連結された位相変調器(31)と、
前記電源と連結されたパルスパターンジェネレータ(32)とを具備し、
前記電源から発生したクロック信号(33)は、前記周波数変調器(30)により周波数が半分の整数倍であるクロック信号(25)に変換され、
前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記第1のサブマッハツェンダー電極(19)又は前記第2のサブマッハツェンダー電極(22)に印加され、
前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記位相変調器(31)によりその位相がπ/2+mπ(mは、整数を示す。)だけ変調され、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)とは位相がπ/2異なるクロック信号(26)として、残りのサブマッハツェンダー電極(19又は22)に印加され、
前記電源から発生したクロック信号(33)は、パルスパターンジェネレータ(32)により、前記クロック信号の位相に対して所定の位相差を有するベースバンド信号(27)とされた後に、前記メインマッハツェンダー電極(23)に印加される、
請求項2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項10】
前記パルスパターンジェネレータ(32)と連結されたクロック抽出回路を具備し、
前記クロック抽出回路が、パルスパターンジェネレータ(32)により生成された伝送データ信号から信号を抽出し、
前記クロック信号(33)として、前記クロック抽出回路が伝送データ信号から抽出した信号を用いる、請求項9に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項11】
前記光周波数偏移変調器に入力する光の光源としてレーザダイオードを用い、
前記光周波数偏移変調器としてLiNbO3基板上に設けられた光周波数偏移変調器を用い、
前記クロック信号の周波数は0.25GHz〜10GHzであり、前記ベースバンド信号のビット速度は1Gbps〜40Gbpsである、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載する位相連続光周波数偏移変調器と、
前記位相連続光周波数偏移変調器からの出力光が入射する強度変調器と、
を具備し、
前記強度変調器へ印加される変調信号は、前記電源から発生したクロック信号であり、
リターントゥゼロ位相連続光周波数偏移変調信号を得るための、
光変調器。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載する位相連続光周波数偏移変調器と、光遅延検波器とを具備する、
光情報通信システム。
【請求項14】
前記光遅延検波器が、光遅延回路と、差動増幅器とを具備する、
請求項13に記載する光情報通信システム。
【請求項15】
光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、光周波数偏移変調器の電極(7)に、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を印加し、
前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、
位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項16】
前記光周波数偏移変調器は、
第1のサブマッハツェンダー導波路(12)と、
第2のサブマッハツェンダー導波路(13)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路及び前記第2のサブマッハツェンダー導波路とを含み、光の入力部(14)と、変調された光の出力部(15)とを具備するメインマッハツェンダー導波路(16)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(17,18)に印加される電圧を調整するための第1のサブマッハツェンダー電極(19)と、
前記第2のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(20,21)に印加される電圧を調整するための第2のサブマッハツェンダー電極(22)と、
メインマッハツェンダー導波路に印加される電圧を調整するためのメインマッハツェンダー電極(23)とを具備する光周波数偏移変調器(24)であり、
前記正弦波クロック信号(25,26)は、前記第1のサブマッハツェンダー電極及び前記第2のサブマッハツェンダー電極に位相がπ/2異なる信号として印加され、
前記ベースバンド信号(27)は、前記メインマッハツェンダー電極に、前記第1のサブマッハツェンダー電極又は前記第2のサブマッハツェンダー電極に印加される前記正弦波クロック信号(25,26)の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有する信号として印加される請求項15に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項17】
前記所定の位相差Δφは、下記式(I)の関係を満たす位相差である、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
【請求項18】
前記ベースバンド信号は、光周波数偏移変調器から出力される上側波帯信号と下側波帯信号とは位相が同期するように光周波数偏移変調器の電極に供給される、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項19】
前記ベースバンド信号のビット速度Bに対して、前記正弦波クロック信号の周波数はB/4である、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項20】
前記入力光の位相の制御は、前記入力光の位相を下記式(II)で示す補正量δφ(t)だけずらして、前記ベースバンド信号(6,27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2,24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップδφ(t)を補償する、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
δφ(t)={(2kπf0/B+φ0)mod 2π} ・・・(II)
ここで、kは整数、f0は前記正弦波クロック信号の周波数、Bは前記ベースバンド信号のビット速度、φ0は初期位相である。
【請求項21】
前記入力光の位相の制御は、下記条件[1]から条件[4]を全て満たすように前記入力光の位相を制御する、請求項19に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
条件[1]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記正弦波クロック信号の位相と下記式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号を前記光周波数偏移変調器の電極(7,23)に印加する。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
条件[2]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[3]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが同じ場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[4]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが異なる場合には、前記入力光の位相をπ変化させる。
ここで、kは条件[1]から[4]全てにおいて偶数であるか、又は条件[1]から[4]全てにおいて奇数である。
【請求項1】
光周波数偏移変調器(2)と、
前記光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を、前記光周波数偏移変調器の電極(7)に印加するための電源系(8)と、
前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、
を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
【請求項2】
第1のサブマッハツェンダー導波路(12)と、
第2のサブマッハツェンダー導波路(13)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路及び前記第2のサブマッハツェンダー導波路とを含み、光の入力部(14)と、変調された光の出力部(15)とを具備するメインマッハツェンダー導波路(16)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(17,18)に印加される電圧を調整するための第1のサブマッハツェンダー電極(19)と、
前記第2のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(20,21)に印加される電圧を調整するための第2のサブマッハツェンダー電極(22)と、
メインマッハツェンダー導波路に印加される電圧を調整するためのメインマッハツェンダー電極(23)とを具備する光周波数偏移変調器(24)と、
前記第1のサブマッハツェンダー電極及び前記第2のサブマッハツェンダー電極に位相がπ/2異なる正弦波クロック信号(25,26)を印加するとともに、
前記メインマッハツェンダー電極に、前記第1のサブマッハツェンダー電極又は前記第2のサブマッハツェンダー電極に印加される前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(27)を印加するための電源系(28)と、
前記光周波数偏移変調器(24)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(27)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、初期位相制御器(9)と、
を具備する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
【請求項3】
前記所定の位相差Δφは、下記式(I)の関係を満たす位相差である、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
【請求項4】
前記電源系(8,28)は、光周波数偏移変調器(2,24)から出力される上側波帯信号と下側波帯信号との位相が同期するように信号を供給する、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器(1)。
【請求項5】
更に、前記光周波数偏移変調器(42)の出力側に、前記光周波数偏移変調器(42)から出力される上側波帯信号及び下側波帯信号のいずれかを透過するフィルタリング手段(43)を有する、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器(41)。
【請求項6】
前記ベースバンド信号のビット速度Bに対して、前記正弦波クロック信号の周波数はB/4である、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項7】
前記初期位相制御器(9)は、前記入力光の位相を下記式(II)で示す補正量δφ(t)だけずらして、前記ベースバンド信号(6,27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2,24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップδφ(t)を補償する、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
δφ(t)={(2kπf0/B+φ0)mod 2π} ・・・(II)
ここで、kは整数、f0は前記正弦波クロック信号の周波数、Bは前記ベースバンド信号のビット速度、φ0は初期位相である。
【請求項8】
前記初期位相制御器(9)は、下記条件[1]から条件[4]を全て満たすように前記入力光の位相を制御する、請求項6に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
条件[1]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記正弦波クロック信号の位相と下記式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号を前記光周波数偏移変調器の電極(7,23)に印加する。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
条件[2]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[3]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが同じ場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[4]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが異なる場合には、前記入力光の位相をπ変化させる。
ここで、kは条件[1]から[4]全てにおいて偶数であるか、又は条件[1]から[4]全てにおいて奇数である。
【請求項9】
前記電源系(28)は、
電源(29)と、
前記電源と連結された周波数変調器(30)と、
前記電源と連結された位相変調器(31)と、
前記電源と連結されたパルスパターンジェネレータ(32)とを具備し、
前記電源から発生したクロック信号(33)は、前記周波数変調器(30)により周波数が半分の整数倍であるクロック信号(25)に変換され、
前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記第1のサブマッハツェンダー電極(19)又は前記第2のサブマッハツェンダー電極(22)に印加され、
前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)は、前記位相変調器(31)によりその位相がπ/2+mπ(mは、整数を示す。)だけ変調され、前記周波数が半分の整数倍となったクロック信号(25)とは位相がπ/2異なるクロック信号(26)として、残りのサブマッハツェンダー電極(19又は22)に印加され、
前記電源から発生したクロック信号(33)は、パルスパターンジェネレータ(32)により、前記クロック信号の位相に対して所定の位相差を有するベースバンド信号(27)とされた後に、前記メインマッハツェンダー電極(23)に印加される、
請求項2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項10】
前記パルスパターンジェネレータ(32)と連結されたクロック抽出回路を具備し、
前記クロック抽出回路が、パルスパターンジェネレータ(32)により生成された伝送データ信号から信号を抽出し、
前記クロック信号(33)として、前記クロック抽出回路が伝送データ信号から抽出した信号を用いる、請求項9に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項11】
前記光周波数偏移変調器に入力する光の光源としてレーザダイオードを用い、
前記光周波数偏移変調器としてLiNbO3基板上に設けられた光周波数偏移変調器を用い、
前記クロック信号の周波数は0.25GHz〜10GHzであり、前記ベースバンド信号のビット速度は1Gbps〜40Gbpsである、
請求項1又は2に記載する位相連続光周波数偏移変調器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載する位相連続光周波数偏移変調器と、
前記位相連続光周波数偏移変調器からの出力光が入射する強度変調器と、
を具備し、
前記強度変調器へ印加される変調信号は、前記電源から発生したクロック信号であり、
リターントゥゼロ位相連続光周波数偏移変調信号を得るための、
光変調器。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載する位相連続光周波数偏移変調器と、光遅延検波器とを具備する、
光情報通信システム。
【請求項14】
前記光遅延検波器が、光遅延回路と、差動増幅器とを具備する、
請求項13に記載する光情報通信システム。
【請求項15】
光周波数偏移変調器の電極(3)に、正弦波クロック信号(4,5)を印加するとともに、光周波数偏移変調器の電極(7)に、前記正弦波クロック信号の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有するベースバンド信号(6)を印加し、
前記光周波数偏移変調器(2)に入力される入力光について、前記ベースバンド信号(6)と同期させて、当該入力光の位相を制御し、前記ベースバンド信号(6)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップを補償する、
位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項16】
前記光周波数偏移変調器は、
第1のサブマッハツェンダー導波路(12)と、
第2のサブマッハツェンダー導波路(13)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路及び前記第2のサブマッハツェンダー導波路とを含み、光の入力部(14)と、変調された光の出力部(15)とを具備するメインマッハツェンダー導波路(16)と、
前記第1のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(17,18)に印加される電圧を調整するための第1のサブマッハツェンダー電極(19)と、
前記第2のサブマッハツェンダー導波路を構成する2つのアーム(20,21)に印加される電圧を調整するための第2のサブマッハツェンダー電極(22)と、
メインマッハツェンダー導波路に印加される電圧を調整するためのメインマッハツェンダー電極(23)とを具備する光周波数偏移変調器(24)であり、
前記正弦波クロック信号(25,26)は、前記第1のサブマッハツェンダー電極及び前記第2のサブマッハツェンダー電極に位相がπ/2異なる信号として印加され、
前記ベースバンド信号(27)は、前記メインマッハツェンダー電極に、前記第1のサブマッハツェンダー電極又は前記第2のサブマッハツェンダー電極に印加される前記正弦波クロック信号(25,26)の位相に対して所定の位相差(Δφ)を有する信号として印加される請求項15に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項17】
前記所定の位相差Δφは、下記式(I)の関係を満たす位相差である、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
【請求項18】
前記ベースバンド信号は、光周波数偏移変調器から出力される上側波帯信号と下側波帯信号とは位相が同期するように光周波数偏移変調器の電極に供給される、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項19】
前記ベースバンド信号のビット速度Bに対して、前記正弦波クロック信号の周波数はB/4である、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
【請求項20】
前記入力光の位相の制御は、前記入力光の位相を下記式(II)で示す補正量δφ(t)だけずらして、前記ベースバンド信号(6,27)の切り替えの際に前記光周波数偏移変調器(2,24)において発生し、前記位相差(Δφ)の誤差となる位相ギャップδφ(t)を補償する、
請求項15又は16に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
δφ(t)={(2kπf0/B+φ0)mod 2π} ・・・(II)
ここで、kは整数、f0は前記正弦波クロック信号の周波数、Bは前記ベースバンド信号のビット速度、φ0は初期位相である。
【請求項21】
前記入力光の位相の制御は、下記条件[1]から条件[4]を全て満たすように前記入力光の位相を制御する、請求項19に記載する位相連続光周波数偏移変調信号の取得方法。
条件[1]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記正弦波クロック信号の位相と下記式(I)で表される関係を満たす位相差(Δφ)を有するベースバンド信号を前記光周波数偏移変調器の電極(7,23)に印加する。
Δφ=π/4+nπ(nは、整数を示す。) ・・・(I)
条件[2]k番目のベースバンド信号を印加する場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[3]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが同じ場合には、前記入力光の位相は制御しない。
条件[4]k+1番目のベースバンド信号を印加する場合であって、k番目のベースバンド信号とk+1番目のベースバンド信号とが異なる場合には、前記入力光の位相をπ変化させる。
ここで、kは条件[1]から[4]全てにおいて偶数であるか、又は条件[1]から[4]全てにおいて奇数である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−340188(P2006−340188A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164327(P2005−164327)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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