説明

位置決め装置

【課題】回動駆動機構を設けることなく水平方向に対する移動体の移動量差に応じた回転角度で回転させて位置決めすることができ、装置自体を小型化及び軽量化する。
【解決手段】各電動モータを同期駆動してそれぞれの送りねじ9、11を所要の方向へ回転することにより各水平可動体17、19を一致する送り量で水平方向へ移動させ、水平方向に対する各水平可動体17,19の移動量の差に応じて一対のアーム37,41を平行揺動して取り付け部材35を回転して被位置決め手段を位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置や作動装置等が設けられる取付け盤を水平方向へ移動させると共に上下方向の軸線周りに回動して各方向に対して位置決めする位置決め装置、詳しくは取り付け部材を水平方向へ移動可能とすると共に上下方向の軸線周りに対して水平方向に対する移動量の差に応じた角度で回動して位置決めする位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取付け盤を水平方向へ移動させると共に回転させて各方向に対して位置決めする水平及び回転駆動装置として、例えば特許文献1に示すステージ装置が知られている。該ステージ装置は、水平移動する移動体と、移動体が移動する定盤を支持する架台と、ワークを吸着する吸着テーブルと、ワークを搬入・搬出する搬送ユニットとを備え、搬送ユニットは、ベースが架台と一体的に固定され、ワークを搬入・搬出する搬送機能と、ワークを水平方向(θz方向)に回動させて吸着面に対するワークの位置を調整する位置調整機能とを併せ持つように構成される。
【0003】
即ち、上記したステージ装置にあっては、移動体を水平方向へ移動する水平駆動機構と、該移動体に設けられてワークを水平方向へ回動させる回動駆動機構をそれぞれ設けて位置決めしなければならず、位置決め装置自体が大型化すると共に重量化する問題を有している。このため、上記ステージ装置にあっては、広い取付けスペースを必要とするため、該ステージ装置が取付けられる加工装置等が大型化及び重量化することが避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−159784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、移動体を水平方向へ移動させると共に回転させるには、水平駆動機構及び回動駆動機構を設けて位置決めしなければならず、装置自体が大型化すると共に重量化する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1は、互いに平行して水平方向へ移動可能に支持される一対の水平可動体と、各水平可動体を水平方向へ往復移動する水平駆動部材と、各水平可動体に対して水平直交方向へ移動可能にそれぞれ支持されるスライド部材と、適宜の間隔をおいた平行状態で長手方向両端部が対応するそれぞれのスライド部材に対して揺動可能に軸支される一対のアームと、少なくとも一方の水平可動体に追従して水平方向へ移動可能に支持され、一方のアームの長手方向中間部を揺動可能に支持する支持軸と、一方のアームにおける長手方向中間部に長手方向中心部を一致させた状態で設けられ、被位置決め手段が設けられる取り付け部材を備え、水平方向に対する各水平可動体の移動量の差に応じて一対のアームを平行揺動して取り付け部材を回動して被位置決め手段を位置決め可能にすることを最も主要な特徴とする。
【0007】
請求項2は、互いに平行して水平方向へ移動可能に支持される一対の水平可動体と、各水平可動体を水平方向へ往復移動する水平駆動部材と、各水平可動体に対して水平直交方向へ移動可能にそれぞれ支持されるスライド部材と、適宜の間隔をおいた平行状態で長手方向両端部が対応するそれぞれのスライド部材に対して揺動可能に軸支される取り付け部材及びアームと、少なくとも一方の水平可動体に追従して水平方向へ移動可能に支持され、一方のアームの長手方向中間部を揺動可能に支持する支持軸と、一方のアームにおける長手方向中間部に長手方向中心部を一致させた状態で設けられ、被位置決め手段が設けられる取り付け部材を備え、水平方向に対する各水平可動体の移動量の差に応じて一対のアームを平行揺動して取り付け部材を回転して被位置決め手段を位置決め可能にすることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、回動駆動機構を設けることなく水平方向に対する移動体の移動量差に応じた回転角度で回転させることができ、装置自体を小型化及び軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】位置決め装置の概略を示す全体斜視図である。
【図2】各水平可動体を平行リンクで連結した構造を示す略体分解斜視図である。
【図3】昇降装置を水平方向へ往復移動する状態を示す説明図である。
【図4】昇降装置を反時計方向へ回転した状態を示す説明図である。
【図5】昇降装置を時計方向へ回転した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
水平方向に対する各水平可動体の移動量の差に応じて一対のアームを平行揺動して取り付け部材を回転して被位置決め手段を位置決め可能にすることを最適の実施形態とする。
【実施例1】
【0011】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1及び図2に示すように位置決め装置1の本体3には、水平直交方向へ所要の間隔をおいて水平方向へ延出する一対のガイドレール5・7が取付けられる。また、本体3には、上記水平方向へ延出する2本の送りねじ9・11がそれぞれのガイドレール5・7に近い個所で回転可能に軸支される。各送りねじ9・11の軸端部には、数値制御可能なサーボモータ等の電動モータ13・15がそれぞれ駆動連結される。
【0012】
各送りねじ9・11には、水平可動体17・19のナット部(図示せず)がそれぞれ噛合わされ、上記した対応する電動モータ13・15の駆動に伴って水平方向へ個別に往復移動される。各水平可動体17・19には、水平直交方向へ延出する2個の直線ガイド21・23が水平方向へ適宜の間隔をおいてそれぞれ固定される。
【0013】
上記した各直線ガイド21、23には、スライド板25・27の下面に水平直交方向へ延出して固定されたガイドレール29・31が水平直交方向へ摺動可能に支持される。そして各スライド板25・27における水平方向の両側には、被位置決め装置を構成する駆動装置や作動装置としての昇降装置33が設けられる取付け部材としての取付け盤35及びリンクアーム37の長手方向端部がそれぞれ揺動可能に軸支される。上記取付け盤35及びリンクアーム37は、それぞれの長手方向が互いに平行するように配置される。
【0014】
なお、上記取付け盤35は、リンクアームと取付け部材を兼ねた部材であるが、取付け盤35の代わりにリンクアーム37と同様にリンクアームの長手方向端部を揺動するように軸支し、該リンクアームに対して取付け盤35を、それぞれの長手方向中間部を一致させて取付けた構成としてもよい。
【0015】
上記した一方のガイドレール5には、従動体39が水平方向へ移動可能に支持され、該従動体39には、先端部が上記ガイドレール5・7相互間の中間に至る軸支アーム41が固定される。そして該軸支アーム41の先端部には、支持軸43の基端部が固定され、該支持軸43は、上記したリンクアーム37の長手方向中間部に対して回転可能に軸支される。
【0016】
また、上記した昇降装置33は、取付け盤33の長手方向両端部にて上下方向へ移動可能に支持される一対のガイドロッド45と、一対のガイドロッド45の両端部にそれぞれ固定される取付け板47・49と、上下方向に軸線を有し、上記取付け盤33の長手方向中間部に設けられた孔を挿通してそれぞれの取り付け板47・49に回転可能に軸支される上下送りねじ51と、上記取付け盤33の長手方向中間部にて回転可能に支持されると共に上記上下送りねじ51に噛合わされるナット部材53と、上記ナット部材53に対してタイミングベルト、歯車等の駆動力伝達部材55により駆動連結される電動モータ57とから構成される。
【0017】
そして下方に位置する取付け板47には、例えばワークを吸着したり把持したりするチャック部材59が設けられ、上記電動モータ57の駆動に伴ってチャック部材59を昇降させる。
【0018】
次に、上記のように構成された位置決め装置1の作用を説明する。
先ず、昇降装置33を水平方向へ直線移動するには、各電動モータ13・15を同期駆動してそれぞれの送りねじ9・11を所要の方向へ回転することにより各水平可動体17・19を一致する送り量で水平方向へ移動させる。
【0019】
このとき、昇降装置33のチャック部材59は、その保持面が移動方向下手を向くように保たれる。また、従動体39は、軸支アーム41に設けられた支持軸43がリンクアーム37の長手方向中間部に軸支されているため、上記水平可動体17・19と共に移動される。(図3参照)
【0020】
一方、昇降装置33を水平方向の所定位置へ移動すると共にチャック部材59を上下方向の軸線周りへ所要の角度で回動させる場合に付いて説明すると、例えば昇降装置33を水平方向の所定位置aへ移動させると共に該位置aにて昇降装置33を上下方向軸線周りの反時計方向へ所要の角度で回動させるには、先ず一方の電動モータ13を回転駆動して一方の水平可動体17を位置aより手前の位置bへ移動させると共に他方の電動モータ15を回転駆動して他方の水平可動体19を位置bより先の位置cへ移動させる。
【0021】
このとき、リンクアーム37の長手方向中間部が軸支アーム41に設けられた支持軸43により上記ガイドレール5・7間の水平直交方向中間部に位置した状態で上記距離bに応じた所定の角度で揺動されると、それぞれの水平可動体17・19に対して対応するスライド板25・27が水平直交方向の互いに近づく方向へ等しいストロークで移動し、リンクアーム37に対して取付け盤35を平行した状態で揺動させる。
【0022】
これにより上記取付け盤35に設けられた昇降装置33は、チャック部材39が水平方向に対する上記水平可動体17・19の各位置b、cの距離差に応じた角度で反時計方向へ回動して位置決めされる。(図4参照)
【0023】
なお、昇降装置33を上下方向軸線周りの時計方向へ所要の角度で回動させるには、一方の水平可動体17を位置aより先の位置dへ移動させると共に他方の水平可動体19を位置dより手前の位置eへ移動させることにより昇降装置33を、上記水平可動体17・19の各位置d、eの距離差に応じた角度で時計方向へ回動して位置決めさせる。(図5参照)
【0024】
また、時計方向又は反時計方向に対する昇降装置33の回動角度は各水平可動体17・19相互の間隔、正確には位置aと各水平可動体17・19の距離に応じて設定されるため、昇降装置33を大きく回動させるには、上記距離が大きくなるように各水平走行体17・19相互の間隔が長くなるように移動させればよい。
【0025】
本実施例は、昇降装置33を回転させる回動駆動装置を設けることなく、水平方向に対して各水平可動体17・19を異なる距離で移動することにより昇降装置33を水平可動体17・19の移動量の差分に応じた角度で回動して位置決めすることができ、装置自体を小型化及び軽量化することができる。
【0026】
上記説明は、各水平可動体17・19を水平方向へ移動して取付け盤35を水平方向の所定位置へ移動させると共に該位置にて取付け盤35を水平方向に対する各水平可動体17・19の移動量の差に応じた角度で回動して位置決めする構成としたが、常には取付け盤35を所定の水平位置に位置させた各水平可動体17・19を異なる位置へ移動して取付け盤35を各水平可動体17・19の移動量の差に応じた角度で回動して位置決めする構成としてもよい。
【0027】
上記説明は、取付け盤35に昇降装置33を設けてチャック部材59を各水平可動体の移動量の差に応じた角度で回動する例により説明したが、被回転装置としては、取付け盤35にワーク保持部材や吸着部材、把持部材等を設け、各水平可動体の移動量の差に応じた角度でこれらの部材を回動して位置決めする構成であっても本発明の技術範囲に含まれる。
【0028】
上記説明は、各水平可動体17・19を水平方向へ往復移動させる駆動機構として電動モータ13・15に連結された送りねじ9・11を採用したが、水平方向の両側に回転可能に支持された回転体(歯付きプーリ、スプロケット等)にベルトやチェーンを掛渡すと共に該ベルトやチェーンに固定された取付けバーを対応する水平可動体17・19に固定した構造、リニアモータにより対応する水平可動体17・19を水平方向へ往復移動する構造等の何れであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 水平及び回転位置決め装置
3 本体
5・7 ガイドレール
9・11 送りねじ
13・15 電動モータ
17・19 水平可動体
21・23 直線ガイド
25・27 スライド板
29・31 ガイドレール
33 被位置決め手段としての昇降装置
35 取り付け部材としての取付け盤
37 リンクアーム
39 従動体
41 軸支アーム
43 支持軸
45 ガイドロッド
47・49 取り付け板
51 上下送りねじ
53 ナット部材
55 駆動力伝達部材
57 電動モータ
59 チャック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行して水平方向へ移動可能に支持される一対の水平可動体と、
各水平可動体を水平方向へ往復移動する水平駆動部材と、
各水平可動体に対して水平直交方向へ移動可能にそれぞれ支持されるスライド部材と、
適宜の間隔をおいた平行状態で長手方向両端部が対応するそれぞれのスライド部材に対して揺動可能に軸支される一対のアームと、
少なくとも一方の水平可動体に追従して水平方向へ移動可能に支持され、一方のアームの長手方向中間部を揺動可能に支持する支持軸と、
一方のアームにおける長手方向中間部に長手方向中心部を一致させた状態で設けられ、被位置決め手段が設けられる取り付け部材と、
を備え、水平方向に対する各水平可動体の移動量の差に応じて一対のアームを平行揺動して取り付け部材を回動して被位置決め手段を位置決め可能にする水平及び回転位置決め装置。
【請求項2】
互いに平行して水平方向へ移動可能に支持される一対の水平可動体と、
各水平可動体を水平方向へ往復移動する水平駆動部材と、
各水平可動体に対して水平直交方向へ移動可能にそれぞれ支持されるスライド部材と、
適宜の間隔をおいた平行状態で長手方向両端部が対応するそれぞれのスライド部材に対して揺動可能に軸支される取り付け部材及びアームと、
少なくとも一方の水平可動体に追従して水平方向へ移動可能に支持され、一方のアームの長手方向中間部を揺動可能に支持する支持軸と、
一方のアームにおける長手方向中間部に長手方向中心部を一致させた状態で設けられ、被位置決め手段が設けられる取り付け部材と、
を備え、水平方向に対する各水平可動体の移動量の差に応じて一対のアームを平行揺動して取り付け部材を回転して被位置決め手段を位置決め可能にする水平及び回転位置決め装置。
【請求項3】
請求項1及び2の何れかにおいて、支持軸は、少なくとも一方の水平可動体の移動に伴って追従移動する従動体に対して各水平可動体間の水平直交方向中間部に位置するように設けられた水平及び回転位置決め装置。
【請求項4】
請求項1及び2の何れかにおいて、スライド部材は、対応する水平可動体に対して水平直交方向へ延出して設けられた直線ガイドにより開閉直交方向へ移動可能に支持された水平及び回転位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77605(P2013−77605A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215039(P2011−215039)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(506329292)スターテクノ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】