説明

作業機

【課題】旋回内側の後輪による圃場の荒らしが軽減できると共に、連結されている作業装置などの揺れや振動を低減し、操作性を向上させる作業機の提供である。
【解決手段】原動機20を備えた走行車体2と、前輪10及び後輪11と、操縦席31と、操向ハンドル34と、操向ハンドル34の操作に連動して前輪10の向きを変更できるステアリング機構(86Iなど)と、走行車体2の後側に昇降リンク装置3により装着された苗植付部4と、原動機の回転数検出手段102と、ステアリング機構(86Iなど)に連動して旋回内側の後輪11の駆動力を断続的に入切する制御機能Bを備えた制御装置163とを備えた作業機であって、制御装置163は、原動機回転数検出手段102により検出される回転数が所定値以上である場合に制御機能Bの旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入切周期の入り時間の割合を減少させる補正機能Cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両に苗植え付け装置などの作業装置を連結した乗用型作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両の進行方向左右に配置される車輪にサイドクラッチやサイドブレーキを装備し、前輪を設定角度以上に操向させる作動に連動して旋回内側となる後輪の推進力を抑制させて左右後輪の推進力の差によって機体を旋回させることで、小回り旋回を行うようにした乗用型作業機などがある。これは、操向ハンドルの操作で、該ハンドルの操作に対応した車輪のサイドクラッチやサイドブレーキなどを入り切りして旋回させるものである。
【0003】
下記特許文献1には、左右の後輪への伝動を各別に断続するサイドクラッチと、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると旋回内側のサイドクラッチを切り操作する機械式の自動操向機構を備えており、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されている状態が検出されると、旋回内側の後輪に対するサイドクラッチをアクチュエータによって自動的かつ間欠的に入り切り制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−196000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成によれば、自動操向機構が作動して旋回内側の後輪に対するサイドクラッチが切り操作される状態になると、自動的にアクチュエータが作動制御されてサイドクラッチを間欠的に入り切り操作することにより、旋回内側の後輪は遊転状態と駆動状態に繰り返し切り換えられる。したがって、前輪を大きく操向操作するだけで小回り旋回を行うことのできる自動操向機構の特徴を活かしながら、旋回内側の後輪による圃場の荒らしを軽減できるようになる。
【0006】
しかし、上記構成では、前輪が直進姿勢から設定角度以上に操向されると一定の周期で所定時間ずつ間欠的に通電制御されるもので、前輪の操向角度には対応しているものの、設定角度以上に操向されると、後は自動的に入り切り状態となる画一的な制御である。
このような画一的な制御では、例えば、エンジンなどの原動機の駆動回転数が大きい場合、サイドクラッチの入り操作時には旋回内側の後輪の駆動力が大きくなって、機体が大きく揺れたり、振動したりすることがある。作業車両に苗植え付け装置などの作業装置を連結した作業機では、苗植え付け装置などの作業装置の揺れが増大すると、操縦者(オペレータ)にもその揺れによって不快感をもたらし、また、適正な植え付け作業が困難となる。そして、リンク機構等により作業車両に作業装置を連結している場合は、作業装置の揺れが増大することによって連結機構の耐久性が劣ってしまう。
【0007】
そこで、本発明の課題は、旋回内側の後輪による圃場の荒らしが軽減できると共に、連結されている作業装置などの揺れや振動を低減し、操作性や作業装置の連結機構の耐久性を向上させる乗用型作業機などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、原動機(20)を備えた走行車体(2)と、該走行車体(2)の前進方向に向かって左右にそれぞれ設けられた前輪(10)と、該前輪(10)の左右後方にそれぞれ設けられ、前記原動機(20)により駆動する後輪(11)と、前記走行車体(2)上に設けられ、走行車体(2)の操縦を行うための操縦席(31)と、該操縦席(31)に設けられ、走行車体(2)の操向方向を決める操向ハンドル(34)と、該操向ハンドル(34)の操作に連動して、左右の前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(86I、180、217)と、前記走行車体(2)の前進方向に向かって後側に昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に装着された作業装置(4)と、前記原動機(20)の出力軸の駆動回転数を検出する原動機回転数検出手段(102)と、前記原動機(20)からの動力を左右の後輪(11)に伝達する左右のサイドクラッチと、前記ステアリング機構(86I、180、217)に連動して旋回内側の後輪(11)のサイドクラッチを断続的に入り切りする断続的入り切り制御機能(B)を有する制御装置(163)とを備えた作業機であって、前記制御装置(163)は、原動機回転数検出手段(102)により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に前記断続的入り切り制御機能(B)の旋回内側の後輪(11)のサイドクラッチの入り切り周期の入り時間の割合を減少方向に変更する断続的入り切り制御補正機能(C)を有する作業機である。
なお、原動機回転数検出手段(102)により検出される駆動回転数とは、原動機(20)の出力軸の単位時間あたりの回転数を意味している。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記左右の後輪(11)の回転数を検出する左右の後輪回転数検出手段(205)を設け、前記制御装置(163)は、前記後輪回転数検出手段(205)により検出された旋回外側の後輪(11)の回転数に基づいて、該旋回外側の後輪(11)の回転数よりも小さい旋回内側の後輪(11)の回転数を演算し、設定する旋回内側の後輪(11)の回転数演算設定機能(D)を有し、前記断続的入り切り制御機能(B)は、該回転数演算設定機能(D)により設定された回転数よりも前記後輪回転数検出手段(205)により検出された旋回内側の後輪(11)の回転数が大きい場合はサイドクラッチを切りにし、前記旋回内側の後輪(11)の回転数演算設定機能(D)により設定された回転数よりも前記後輪回転数検出手段(205)により検出された旋回内側の後輪(11)の回転数が同じ又は小さい場合はサイドクラッチを所定時間入りにする制御を行い、前記断続的入り切り制御補正機能(C)は、前記原動機回転数検出手段(102)により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に前記断続的入り切り制御機能(B)のサイドクラッチ入りの所定時間を減少方向に変更する制御を行う請求項1記載の作業機である。
なお、旋回外側の後輪(11)の回転数及び旋回内側の後輪(11)の回転数とは、回転速度を意味している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、制御装置(163)に、原動機回転数検出手段(102)により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に断続的入り切り制御機能(B)の旋回内側の後輪(11)のサイドクラッチの入り切り周期の入り時間の割合を減少方向に変更する断続的入り切り制御補正機能(C)を設けたことで、原動機(20)の駆動回転数が比較的大きい場合はサイドクラッチの入り切り周期の入り時間の割合が小さくなる。
【0011】
原動機(20)の駆動力が大きい場合はサイドクラッチ入り操作時の旋回内側の後輪(11)の駆動力が大きくなって、機体が大きく揺れたり、振動したりすることがある。しかし、このような場合に、原動機(20)の駆動力を旋回内側の後輪(11)に伝わりにくくすることができるため、走行車体(2)の揺れ及び振動を抑えて操縦者の不快感をなくし、操作性を向上させることができ、作業環境を良好に維持できる。
そして、請求項2記載の発明によれば、断続的入り切り制御機能(B)は、回転数演算設定機能(D)により設定された回転数よりも旋回内側の後輪(11)の回転数が大きい場合はサイドクラッチを切りにし、回転数演算設定機能(D)により設定された回転数よりも旋回内側の後輪(11)の回転数が同じ又は小さい場合はサイドクラッチを所定時間入りにする制御を行う。旋回内側の後輪(11)の回転数が比較的小さい場合は、当該旋回内側の後輪(11)がスリップしている可能性が高い。
したがって、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の上記効果に加えて、旋回内側の後輪(11)がスリップしやすい条件の時にサイドクラッチを所定時間入りにして旋回内側の後輪(11)を駆動することで、適正な操向が行える。また、原動機(20)の駆動回転数が所定値以上である場合に前記断続的入り切り制御機能(B)のサイドクラッチ入りの所定時間を減少方向に変更する制御を行うことで、サイドクラッチの入り切り周期の入り時間の割合が小さくなる。したがって、原動機(20)の駆動力による走行車体(2)の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図3(a)は、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図(平面図)であり、図3(b)は、図3(a)の側面図である。
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大図である。
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図である。
【図6】図1の乗用型田植機のチェンジレバー部の斜視図である。
【図7】図1の乗用型田植機の制御ブロック図である。
【図8】図1の乗用型田植機の旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図9】図8の旋回連動制御のフローチャートである。
【図10】図1の乗用型田植機の旋回連動制御のフローチャートである。
【図11】図10の旋回連動制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入切り周期のタイムチャートである。
【図12】図1の乗用型田植機の旋回連動制御時に車体が深く沈み込んでいる場合などで苗植付装置の下降を速くするためのフローチャート(図12(a))と旋回内側の車輪の回転数設定値N1又は設定値N2の昇降リンクセンサの検出値に対する値の関係を示すグラフ(図12(b))である。
【図13】図1の乗用型田植機の操作盤の間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル部分の平面図である。
【図14】図1の乗用型田植機の操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図である。
【図15】図1の乗用型田植機の間欠サイドクラッチ制御による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。
【図16】図1の乗用型田植機の別の例の間欠サイドクラッチ制御による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。
【図17】図1の乗用型田植機の別の例の間欠サイドクラッチ制御による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。
【図18】図1の乗用型田植機の別の例の間欠サイドクラッチ制御による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の作業機の一実施例である乗用型田植機の側面図と平面図である。この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。 走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸(前輪アクスル)14(図4)に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0014】
原動機としてのエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。変速レバー16などにより決められるミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0015】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に操縦席31が設置されている。操縦席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するステアリングハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0016】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0017】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(迎い角センサとも言う)235により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブ(昇降バルブ)161を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0018】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0019】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0020】
フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0021】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
【0022】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0023】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0024】
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ49(図4,図5)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0025】
図3(a)の平面図(展開図)には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示し、図3(b)には、図3(a)の側面図を示す。また、図4には、図3(b)のミッションケース12周辺の拡大図を示し、図5には、図3(a)の平面図に油圧式無段変速装置23を図示した場合を示している。図6には、図1の乗用型田植機のチェンジレバー部の斜視図を示し、図7には、図1の乗用型田植機の制御ブロック図を示す。
左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0026】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5)を備えている上記構成を用いて、ステアリングハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期(又は不定期)で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ステアリングハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0027】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチ195(図7)を作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0028】
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、図6に示すように、チェンジレバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片190が接当してオンになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図7)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0029】
次に、旋回時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に自動リフト切替スイッチ192(図14)をオンにすると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。 操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図7,図14)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がオンになるか自動リフト切替スイッチ192がオンでステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転すると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない。
【0030】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がオンになっても自動リフト切替スイッチ192がオフであればステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0031】
なお、自動リフト切替スイッチ192をオフにして、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0032】
また、上記構成からなる乗用型田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0033】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをステアリングハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ(後輪回転数検出手段)205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0034】
この制御の考え方を図8と表1に示す。
【表1】

【0035】
すなわち、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切れた状態で、左右ドライブシャフトの回転数を検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数(旋回開始時からの走行距離であり累計回転数を示す)が設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付具126の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置52が上げ状態に移って)からステアリングハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると 植付クラッチケース25内の植付クラッチが入りになって植付「入り」にする機構である(図7のPTOクラッチ作動ソレノイドを作動させて、植付「入り」にする)。
植付クラッチが入り状態になることで、全植付条の苗植付け具126が作動すると共に、苗載台51も左右移動を開始し、苗載台51の左右移動端では全植付条の苗送りベルト51bが作動する。伝動機構としては、植付クラッチから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動され、苗植付部4内において各畦クラッチ(図示せず)を介して各々対応する苗植付け具126へ伝動され、苗植付部4内において各苗送りクラッチ(図示せず)を介して各々対応する苗送りベルト51bへ伝動される。
【0036】
上記旋回連動制御のフローを図9に示す。
まず、左右の後輪11,11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値(左旋回と判断する角度))、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値(右旋回と判断する角度))をセットする。
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ(圃場深さ)等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図7)により、補正値n0を設定する。
【0037】
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166(苗植付部4の駆動の入り切り操作をしたり、苗植付部4の昇降操作をしたりできるレバー)の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき(図7のPTOクラッチ作動ソレノイドを作動させて、植付「切り」にする)、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを旋回内側の伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図7)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0038】
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ステアリングハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、植付クラッチケース25内の植付クラッチが入りになり苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0039】
本実施例の乗用型田植機1では、自動植付開始モードが設定された時にも、自動的に制御装置163によって、旋回外側の後輪11の回転数(回転速度)に応じて旋回内側の後輪11の駆動を伝動するサイドクラッチを断続的に入り切りする断続的入り切り制御機能(B)(間欠サイドクラッチ制御ともいう)を作動させることができる。
【0040】
なお、断続的入り切り制御機能(B)の「後輪(11)のサイドクラッチを断続的に入り切りする」とは、(a)後輪(11)の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される作動周期Tが一定であり、且つ前記作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)が一定であること、及び(b)後輪(11)の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される作動周期Tが可変であること、又は前記作動周期中のオン/オフ時間の割合(比率)が可変であることを言う。
【0041】
すなわち、(a−1)作動周期(T)が一定で、オン/オフ時間の割合も一定、(b−1)作動周期Tが一定で、オン/オフ時間の割合は可変、(b−2)作動周期Tが可変で、オン/オフ時間の割合は一定、(b−3)作動周期Tが可変で、オン/オフ時間の割合も可変、の4つの形態がある。
なお、上記作動周期Tとは、後輪11の駆動力の入り又は切りがそれぞれ1回現出される時間のことであり、すなわち一回だけオン/オフが現出される時間をいう。
【0042】
このように間欠サイドクラッチ制御を行うことにより、旋回半径をコントロールでき、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。前記旋回内側の後輪11のクラッチをオン/オフする間欠サイドクラッチ制御において、車速が遅ければ遅い程クラッチをオン/オフする周期を短く、速ければ速いほどクラッチをオン/オフする周期を長くすることで、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができる。車速は伝動軸回転数センサ205で測定する。
【0043】
例えば、車速0m/sで旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず:クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)の作動周期T(オン/オフを含む)が0.5秒、車速0.5m/sで前記サイドクラッチ作動周期T(オン/オフを含む)が1.0秒、車速1.0m/sで前記サイドクラッチ作動周期T(オン/オフを含む)が1.5秒となるように一次関数的に車速に応じて旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ作動周期を変更する。 高速走行時は特に後輪11の伝動軸のクラッチをオンするときでも、オフするときでも衝撃が大きい。そこで上記のように、間欠サイドクラッチ制御による衝撃を少なくするために、高速走行時ほど間欠サイドクラッチ制御(クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)のオン/オフの周期を長めにする。
本実施例の8条植の乗用型田植機1のように、大型の作業車両(作業機)は旋回時には比較的大回りをする必要がある。しかし、旋回中に旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切ったままでおくと、小回りになり過ぎる。しかし、本実施例のように旋回内側の後輪11の伝動軸を間欠サイドクラッチ制御すると、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができ、オペレータの希望する適切な旋回半径で8条植の乗用型田植機1に相応しい比較的大回りの旋回が可能となる。
【0044】
前記旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチの接続は、図13に示すように操作盤33に設けている間欠サイドクラッチ制御(ポンピングクラッチともいう)調節ダイヤル210で設定された回転数(回転角度)に旋回内側の後輪11の回転数(走行距離、すなわち累計回転数のことである)が達するまでなされる。
間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210は、後輪回転角度(=後輪11の伝動軸の回転角度)で11度〜27度の間で調整を行う。なお、前記間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210を後輪11(後輪11の伝動軸)の回転角度でなく、後輪11の伝動軸作動用のクラッチ(図示せず)の作動時間、例えば210msから510msまでの時間で設定できる構成にして、この間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210で設定された時間の間、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず)が接続される構成としても良い。また、路上走行などで高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、路上走行などの高速走行中には、前記間欠サイドクラッチ制御は不要である。そこで、作業車両が一定車速、例えば1.0m/s以上で高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御が行われないようにしている。
【0045】
本実施例の乗用型田植機1において、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、旋回外側の後輪11の回転数(a1)に応じて旋回内側の後輪11の回転数(b1;b1<a1)を決めるように前記間欠サイドクラッチ制御を行う構成としても良い。
この制御フローの具体実施例を図10に示すが、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、旋回を始めてから旋回外側の後輪11の回転数(走行距離(累計回転数)) が所定値(a0)に達すると(この間は旋回「内」側後輪11のサイドクラッチは「切」)、前記旋回「内」側の後輪11のサイドクラッチを「入」にして、それから旋回「外」側の後輪11が所定の回転数(a1)になるまで旋回「内」側の後輪11のサイドクラッチを「入」にしておく。
【0046】
また、前記旋回内側の後輪11のサイドクラッチの「入」と「切」のタイミングは制御装置163が自動設定するが、図11に示すタイムチャートのように旋回内側後輪11のサイドクラッチの「切」に対応する旋回外側の後輪11の回転数(a0)と旋回内側のサイドクラッチの「入」に対応する旋回外側の後輪11の回転数(a1)を間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210により手動で設定することもできる。
この様な図10のフローに示す制御を行うと湿田での作業性が従来より向上する。
【0047】
また、図9に示す制御フローの設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)を小さくするほど、旋回内側の後輪11が深い圃場などにおいて深く沈み込んでいる場合など、苗の植え付け時の苗植付装置52の下降を速く行いたい場合に有効である。
【0048】
後輪11が深く圃場に沈み込んでいる場合には昇降リンクセンサ48で上リンク40と下リンク41の昇降の程度を検出することにより、苗植付部4の昇降の程度も検出できる。この昇降リンクセンサ48は、上リンク40の角度を検出するセンサであり、上リンク40の上下回動範囲に亘って上リンク40の角度を検出する。そして、この昇降リンクセンサ48によって、圃場の深さ(耕盤深さ)を測定する。
なお、昇降リンクセンサ48は上リンク40に設けても、下リンク41に設けても良い。下リンク41に設けると、下リンク41の上下回動範囲に亘って下リンク41の角度を検出する。昇降リンクセンサ48は上リンク40又は下リンク41のいずれか一方に設ければ良く、どちらに設けても昇降リンク装置3のリンク角度を検出するものである。
【0049】
そして、この場合の制御フローを図12(a)に示し、図12(b)に旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値N1又は機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの旋回内側の前記ドライブシャフト回転信号設定値N2の昇降リンクセンサ48の検出値に対する値の関係を示す。
【0050】
また、図9に示す自動植付制御モードにおいて、ステアリングハンドル34の操作角度θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)による苗植付部4の上昇のタイミングを前記θ1、θ2の設定ダイヤル206a,206bで任意に変更可能なように構成することができる。
上記構成により旋回制御中にオペレータが苗植付部4の上昇タイミングを任意に設定できるので自分のペースに合わせた作業を行うことができる。
こうして、8条植えなどの多条植え用の乗用型作業機であっても、前回の植付条に一部重なった状態で苗の植え付けをするおそれがなく圃場での旋回が可能となる。
なお、右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0051】
このようにサイドクラッチが切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出する方法は、動力の伝わっている後輪11の回転数検出方法に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅が一定)となる効果がある。
また、上記図9に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を、上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。 このように、畦際から発進して苗植付のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0052】
前記自動植付開始モードの設定は植始め調節ダイヤル212(図14)で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、図14に示す植始め調節ダイヤル212を回して設定する。
前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0053】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記間欠サイドクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。
これは、湿田での旋回走行中では、前輪10及び後輪11がスリップし易く、自動植付開始モードで苗の植え付け開始位置が予定した位置になり難いため、前記間欠サイドクラッチ制御を選定するが、このときも連動して間欠サイドクラッチ制御をすることができる。こうしてスリップし易い条件下での車両の旋回走行を容易に行うことができるようになる。
【0054】
また、自動植付開始モードが設定されていない時、例えば路上走行時には前記間欠サイドクラッチ制御をしないで、旋回内側の車輪(後輪11)の伝動軸のサイドクラッチを継続的に切りながら旋回する通常の旋回モード(上述の継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A))とすることもできる。
【0055】
そして、本実施例による乗用型田植機1の制御装置163によれば、サイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などのステアリング機構に連動して旋回内側の後輪11の駆動を入り又は切りにする継続的入り切り制御機能(A)と伝動軸回転数センサ205により検出される旋回外側の後輪11の回転数(回転速度)に応じて旋回内側の後輪11の駆動を伝動するサイドクラッチを断続的に入/切する断続的入り切り制御機能(B)を設けている。
更に、本実施例による乗用型田植機1の制御装置163によれば、エンジン20の回転数を検出するエンジン回転数センサ102をエンジン出力軸(図示せず)に設け、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数(駆動回転数とは、単位時間あたりの回転数(rpm))が所定値以上である場合に断続的入り切り制御機能(B)の旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入り切り周期(作動周期T)の入り時間の割合(作動周期T中のオン時間の割合(比率))を減少方向に変更する断続的入り切り制御補正機能(C)を設けたことを特徴としている。
【0056】
エンジン20のスロットルの開度が大きく、エンジン20の駆動力が大きい場合はサイドクラッチ入り操作時の旋回内側の後輪11の駆動力が大きくなって、機体が大きく揺れたり、振動したりすることがある。
しかし、このような場合に、サイドクラッチの作動周期Tの入り時間の割合を小さくすることで、エンジン20の駆動力を旋回内側の後輪11に伝わりにくくすることができるため、走行車体2の揺れ及び振動を抑えて操縦者の不快感をなくし、操作性を向上させることができ、作業環境を良好に維持できる。
【0057】
図15には、断続的入り切り制御補正機能(C)が作動した場合の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。図15には、間欠サイドクラッチ制御(断続的入り切り制御機能(B)による制御)の作動周期Tを0.6秒(オン時間0.3秒/オフ時間0.3秒)とした場合のタイムチャートを示している。
図15(a)に示すように、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値(例えば3000rpm)以上となった場合に、サイドクラッチ入り時間を設定時間(0.3秒)よりも短い時間、例えば半分の時間(0.15秒)に変更する。なお、サイドクラッチ切り時間(0.3秒)は変更せず、作動周期Tは0.6秒から0.45秒になり、サイドクラッチ入り時間の割合は1/2から1/3に減少する。
【0058】
また、図15(b)に示すように、サイドクラッチ入り時間を0.15秒に変更するとともに、サイドクラッチ切り時間(0.3秒)を設定時間よりも短い時間(例えば0.2秒)に変更した場合も、サイドクラッチ入り時間の割合は1/2から3/7に減少するため、本実施形態に含まれる。この場合は、作動周期Tは0.6秒から0.35秒になる。
【0059】
更に、図15(c)に示すように、サイドクラッチ入り時間(0.3秒)を設定時間よりも長い時間(例えば0.4秒)に変更した場合でも、サイドクラッチ切り時間を0.4秒よりも長い時間(例えば0.5秒)に変更した場合は、サイドクラッチ入り時間の割合は1/2から4/9に減少するため、本実施形態に含まれる。この場合は、作動周期Tは0.6秒から0.9秒になる。
【0060】
また、本実施例による乗用型田植機1の制御装置163は、伝動軸回転数センサ205により検出された旋回外側の後輪11の回転数(回転速度)に基づいて、該旋回外側の後輪11の回転数よりも小さい旋回内側の後輪11の回転数(回転速度)を演算し、設定する旋回内側の後輪11の回転数演算設定機能(D)を有している。
なお、旋回外側の後輪11の回転数及び旋回内側の後輪11の回転数とは、回転速度を意味する。
【0061】
そして、制御装置163の断続的入り切り制御機能(B)は、旋回外側の後輪11の回転数に基づいて、回転数演算設定機能(D)により演算、設定された回転数よりも旋回内側の後輪11の回転数が大きい場合はサイドクラッチを切りにし、回転数演算設定機能(D)により設定された回転数と同じ又は設定された回転数よりも旋回内側の後輪11の回転数が小さい場合はサイドクラッチを所定時間入りにする制御を行う。
乗用型田植機1の旋回内側の後輪11の回転数が比較的小さい場合は、当該旋回内側の後輪11がスリップしている可能性が高い。
したがって、このような旋回内側の後輪11がスリップしやすい条件の時にサイドクラッチを所定時間入りにして旋回内側の後輪11を駆動することで、適正な操向が行える。 更に、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に断続的入り切り制御機能(B)のサイドクラッチ入りの所定時間を変更する制御を行うことで、エンジン20の駆動力による走行車体2の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【0062】
例えば、制御装置163の回転数演算設定機能(D)により演算、設定される旋回内側の後輪11の回転数を旋回外側の後輪11の回転数の1/5とする。この1/5とは、操向外側の後輪11が1回転する間に操向内側の後輪11が1/5回転するという意である。そして、旋回外側の後輪11及び旋回内側の後輪11の回転数の検出は、旋回時にステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切りになったとき(以下、「間欠サイドクラッチ制御が開始されたとき」という)から始まる。
【0063】
そして、旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5よりも大きくなった場合に、サイドクラッチを切りにする制御を行う。なお、旋回開始から旋回終了まで旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5よりも常時大きい場合は、間欠サイドクラッチ制御は行われず、継続的入り切り制御機能(A)による制御となる。
【0064】
また、旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5以下になった場合はサイドクラッチを所定時間(例えば0.3秒)入りにする制御を行う。所定時間入り後も旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5以下である場合は理論的には旋回開始から旋回終了まで常時サイドクラッチが入りになるが、サイドクラッチが入りの間は旋回内側の後輪11は旋回外側の後輪11と同速で回転するため、サイドクラッチを切りにしない限りは旋回内側の後輪11の回転数が設定回転数よりも小さくなることはなく、サイドクラッチを切りにしたときに旋回内側の後輪11の回転数が設定回転数よりも小さくなる。
【0065】
図16には、図1の乗用型田植機の別の例の間欠サイドクラッチ制御による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
図16(a)に示す例は、旋回外側の後輪11が所定の回転数(累計回転数)Kに到達するたびに旋回内側の後輪11の回転数(回転速度)が旋回外側の後輪11の回転数(回転速度)の1/5以下となる場合を想定しており、所定の走行距離ごとにサイドクラッチが所定時間((ロ)で示す)入りになるサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。なお、「所定の回転数に到達するたびに」累積回転数Kのカウントはクリアする。累計回転数Kのカウント開始は先の間欠サイドクラッチ制御が開始されたときである。
【0066】
なお、制御の始期について、本制御は旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切りになったとき(間欠サイドクラッチ制御が開始されたとき)から始まり、図16(a)に示すように、1回目はオフから累計回転数Kのカウントが始まる。しかし、2回目以降の旋回外側の後輪11が所定の累計回転数Kに到達するたびにサイドクラッチオンするという構成は、サイドクラッチのオン開始時が累計回転数Kの始期となる。
【0067】
そして、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値(例えば3000rpm)以上である場合は、サイドクラッチ入りの所定時間(ロ)を減少方向に変更する(例えば0.3秒から0.2秒に)制御を行う。この場合はサイドクラッチ入りの所定時間を減る方向にしか変更しない。本制御により旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入り切り周期(作動周期T)の入り時間の割合も減少方向に変更する。したがって、エンジン20の駆動力による走行車体2の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【0068】
なお、旋回開始から旋回終了まで旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5以下で常時小さい場合は、常時サイドクラッチが入りとなると考えられるが、上述のようにサイドクラッチが入りの間は旋回内側の後輪11は旋回外側の後輪11と同速で回転するため、サイドクラッチを切りにしない限りは旋回内側の後輪11の回転数が設定回転数よりも小さくなることはない。したがって、このような旋回内側の後輪11の回転数が設定回転数に近く、比較的小さい場合は場合は図16(b)に示すように、図16(a)に示す例よりも作動周期Tが短い(オフ時間が短い)タイムチャートになる。 また、制御装置163の断続的入り切り制御機能(B)は、旋回外側の後輪11の回転数に基づいて、回転数演算設定機能(D)により設定された回転数(旋回外側の後輪11の回転数よりも小さい回転数)よりも旋回内側の後輪11の回転数が大きい場合はサイドクラッチを所定時間(例えば0.3秒)切りにし、回転数演算設定機能(D)により設定された回転数と同じ又は設定された回転数よりも旋回内側の後輪11の回転数が小さい場合はサイドクラッチを入りにする制御を行っても良い。
【0069】
図17には、図1の乗用型田植機の別の例の間欠サイドクラッチ制御による制御時の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
図17(a)に示す例は、旋回外側の後輪11が所定の累計回転数Kに到達するたびに旋回内側の後輪11の回転数(回転速度)が旋回外側の後輪11の回転数(回転速度)の1/5よりも大きくなる場合を想定しており、所定の走行距離ごとにサイドクラッチが所定時間((イ)で示す)切りになるサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートである。なお、「所定の回転数に到達するたびに」累積回転数Kのカウントはクリアする。
【0070】
そして、旋回開始から旋回終了まで旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5よりも常時大きい場合は、所定時間サイドクラッチが切りになった後、サイドクラッチが入りになる。なお、この入り時間はプログラミングされている初期値(基本設定されている(通常の)間欠サイドクラッチ制御に比べて短時間)である。
また、所定時間切り後も旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5よりも大きい場合は、サイドクラッチが所定時間切りになった後、サイドクラッチが入りになる。なお、この入り時間はプログラミングされている初期値であり、上記旋回内側の後輪11の回転数が旋回外側の後輪11の回転数の1/5よりも常時大きい場合と同じで、同様な制御となる。そして、この入り時間は機体の種類、圃場状態などの種々の条件により決まるものである。
そして、このような場合は、図17(b)に示すように、図17(a)に示す例よりも作動周期Tが短い(オン時間が短い)タイムチャートになる。
【0071】
そして、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に、断続的入り切り制御機能(B)のサイドクラッチ切りの所定時間(イ)を増加方向に変更する制御を行うことで、サイドクラッチ入りの所定時間は減少方向に変更される。この場合はサイドクラッチ切りの所定時間を増やす方向にしか変更しない。
したがって、旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入り切り周期(作動周期T)の入り時間の割合も減少方向に変更するため、エンジン20の駆動力による走行車体2の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【0072】
または、単に回転数演算設定機能(D)により設定された回転数と旋回内側の後輪11の回転数との大小を比較した制御ではなく、下記(1)〜(3)に示す制御例も可能である。また、下記(1)〜(3)においても、「所定の回転数」とは、累計回転数のことであり、すなわち距離のことである。また、「所定の回転数に到達するたびに」累積回転数のカウントはクリアする。回転数を変えるのは、増える方向でも減る方向でも良い。
(1)更に、旋回外側の後輪11の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、当該回転数が所定の回転数に到達するたびに、旋回内側の後輪11のサイドクラッチを所定時間入りにする制御を行っても良い。
【0073】
図18(a)には、(1)の例の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
例えば、所定の回転数を2/3回転とし、まず、間欠サイドクラッチ制御が開始されたときから旋回外側の後輪11の回転数が2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、所定時間((ロ)で示す。例えば0.3秒)サイドクラッチがオンのままになる。累計回転数はサイドクラッチがオンになるとクリアされて再び回転数のカウントが始まる。
【0074】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(1回目のオン開始時から数える)になったときに再び所定時間(0.3秒)サイドクラッチがオンになる。そして、この作動周期を繰り返す。
車速一定の前提条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(作動周期T)は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。そして、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値(例えば3000rpm)以上である場合は、サイドクラッチ入りの所定時間を減少方向に変更する(例えば0.3秒から0.2秒に)制御を行うことで、旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入り切り周期(作動周期T)の入り時間の割合も減少方向に変更するため、エンジン20の駆動力による走行車体2の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【0075】
(2)更に、旋回外側の後輪11の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、当該回転数が所定の回転数に到達するたびに、旋回内側の後輪11のサイドクラッチを所定時間切りにする制御を行っても良い。
図18(b)には、(2)の例の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
例えば、所定の回転数を2/3回転とし、まず、間欠サイドクラッチ制御が開始されたときから旋回外側の後輪11の回転数が2/3回転になったときにサイドクラッチがオフになり、所定時間((イ)で示す。例えば0.3秒)サイドクラッチがオフのままになる。この場合の累計回転数はサイドクラッチがオフになるとクリアされて再び回転数のカウントが始まる。
【0076】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(1回目のオフ開始時から数える)になったときに再び所定時間(0.3秒)サイドクラッチがオフになる。そして、この作動周期を繰り返す。
車速一定の前提条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(作動周期T)は変わらず、オフ時間が変われば、オン時間も変わることになる。そして、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値(例えば3000rpm)以上である場合は、サイドクラッチ切りの所定時間を増加方向に変更する(例えば0.3秒から0.4秒に)制御を行うことで、旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入り切り周期(作動周期T)の入り時間の割合が減少方向に変更するため、エンジン20の駆動力による走行車体2の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【0077】
(3)更に、旋回外側の後輪11の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、当該回転数が第一の所定の回転数に到達するたびに、旋回内側の後輪11のサイドクラッチを旋回外側の後輪11の回転数が第二の所定の回転数に到達するまでサイドクラッチを入りにする制御を行っても良い。
図18(c)には、(3)の例の旋回内側の車輪のサイドクラッチの入り切り周期のタイムチャートを示す。
例えば、第一の所定の回転数を2/3回転とし、第二の所定の回転数を1/15回転とした場合に、まず、旋回外側の後輪11の回転数が前回のオン開始時から2/3回転になったときにサイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が1/15回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。
【0078】
そして、さらに旋回外側の後輪11が回転して2/3回転(1回目のオン開始時から数える)となったときにサイドクラッチがオンになり、旋回内側の後輪11が再び1/15回転(サイドクラッチのオン開始時から数える)に到達するまでサイドクラッチがオンのままになる。そして、この作動周期を繰り返す。
そして、エンジン回転数センサ102により検出される駆動回転数が所定値(例えば3000rpm)以上である場合は、前記第一の所定の回転数又は第二の所定の回転数を変更する。例えば、具体的には、第一の所定の回転数を増加方向に変更するか、第二の所定の回転数を減少方向に変更するか、第一の所定の回転数を増加方向に変更すると共に第二の所定の回転数を減少方向に変更する場合が想定される。
【0079】
車速一定の前提条件の下では、オンオフがそれぞれ1回現出される時間(作動周期T)は変わらず、オン時間が変われば、オフ時間も変わることになる。したがって、前記想定例ではサイドクラッチの入り時間が短くなるため旋回内側の後輪11のサイドクラッチの入り切り周期(作動周期T)の入り時間の割合も減少方向に変更される。したがって、エンジン20の駆動力による走行車体2の揺れ及び振動を適確に抑えることができる。
【0080】
また、本実施例による乗用型田植機1は、エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12(図1)に伝達されるが、ミッションケース12内に前輪10と後輪11に発生する回転差を吸収する前輪差動装置(前輪デフ装置、図示せず)を設け、更に前輪差動装置を牽制するための前輪差動牽制装置(フロントデフロック、図示せず)を設けても良い。この場合は、エンジン20の回転動力が、前輪差動装置又は前輪差動牽制装置を介して前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動する。
【0081】
更に、この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着されている。そして、旋回時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成として、上述のようにステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に自動リフト切替スイッチ192(図14)をオンにすると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。これら電磁油圧バルブ161、油圧シリンダー46及び昇降リンク装置3などを苗植付部上昇装置という。
【0082】
そして、苗植付部上昇装置(3,46,161)の他に、この苗植付部上昇装置(3,46,161)の作動を牽制する苗植付部上昇牽制装置(苗植付部上昇牽制スイッチ230などの手動ボタンで良い)を設け、苗植付部上昇牽制装置の牽制作動に連動して前輪差動牽制装置を牽制作動させる機能を制御装置163に設けても良い。
なお、この苗植付部上昇牽制装置は、変形田など植付中でもハンドル操作が多くなるときに、植付中に苗植付部4が上昇しないようにする場合に必要である。
オペレータは前輪10が空転していると判断した場合に左右の前輪10を等速で駆動させるために、前輪差動牽制装置を入りにする(牽制作動する)。オペレータが前輪デフロックペダル245を踏むと、前輪デフロックペダルセンサ247により当該信号が検出されて前輪差動牽制装置が入りになって牽制作動する。
【0083】
例えば、変形した圃場で機体を操向させながら作業を行うとき、必然的に切り返しが多くなるため、前輪10が前輪差動牽制装置により牽制作動されている方が、乗用型田植機1の操作性が良い。このような変形した圃場(変形田など)では、植付中でもハンドル操作が多くなる。したがって、植付中に苗植付部4が上昇しないようにする場合に、苗植付部上昇装置(3,46,161)の作動を苗植付部上昇牽制装置により牽制する。
そして、このような場合は オペレータが前輪デフロックペダル245を踏むことなく、制御装置163により苗植付部上昇牽制装置の作動に連動して前輪差動牽制装置が牽制作動することで左右の前輪10のスリップを抑えて駆動力を得ることができ、機体の操向性能を向上させることができる。すなわち、変形田などでは苗植付部4の上昇を牽制するぐらいハンドル操作が多いため、本構成により操向性能を向上させるものである。
【0084】
また、苗植付部4は、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。更に、機体の旋回に連動して作用状態となるマーカを左右何れかに切り替えるマーカ自動切替装置(図示せず)と、マーカ自動切替装置を作動状態と非作動状態とに切り替えるマーカ自動入切装置(マーカ入切スイッチ237など)とを設け、マーカ自動入切装置を非作動状態に切り替えるのに連動して前輪差動牽制装置を牽制作動させる機能を制御装置163に設けても良い。
なお、マーカ自動切替装置とは、ハンドル操作の検出に基づいて、旋回方向(左、右)を判断し、植付が開始された後、次に出す側(旋回外側であった側)のマーカをマーカ作動モータ(図示せず)で自動的に線引き状態にする装置である。
【0085】
例えば、変形した圃場で機体を操向させながら作業を行うとき、必然的に切り返しが多くなり、又小回りが必要となる。このような変形した圃場では、植付時もハンドル操作で旋回と判断して、勝手に線引きするマーカが左右で切り替わるおそれがあるため、マーカ自動切替装置を作動状態にしないように、マーカ自動入切装置によりマーカ自動切替装置を非作動状態に切り替える。
したがって、このような場合は、制御装置163によりマーカ自動入切装置を非作動状態に切り替えるのに連動して前輪差動牽制装置を牽制作動するので、左右の前輪10のスリップを抑えて駆動力を得ることができ、機体の操向性能を向上させることができる。すなわち、マーカ自動入切装置を非作動状態にするぐらいハンドル操作が多いため、本構成により操向性能を向上させるものである。
【0086】
また、本実施例による乗用型田植機1はメインフレーム15(図1)の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
そして、左右の後輪11のローリング機構による後輪11の上下動(ローリング)に連動して前輪差動牽制装置を牽制作動させる機能を制御装置163に設けても良い。後輪11のローリングの程度は後輪ローリング軸に設けられた後輪ローリングセンサ240(図7)により検出される。
【0087】
例えば、凹凸が激しく耕盤が荒れている圃場等で作業を行うとき、乗用型田植機1の後輪11のローリングの程度が大きくなるが、後輪11のローリングに連動して前輪差動牽制装置を牽制作動するので、左右の前輪10のスリップを抑えて駆動力を得ることができ、機体の操向性能を向上させることができると共に、機体の直進性が向上する。
【0088】
また、制御装置163により設定されているエンジン20の駆動回転数を変更するエンジン回転数変更装置(エンジン回転数変更スイッチ243(図7)など)を設け、ステアリングハンドル34が操向中立状態の時(旋回角度(切れ角)センサ193(図7)で検知する。すなわち、図9のフローの直進時(θ1<θ<θ2)の時である)にエンジン回転数変更スイッチ243によりエンジン20の駆動回転数を変更していないのにも関わらず、エンジン回転数が低下したときは、前輪差動牽制装置を牽制作動させる機能を制御装置163に設けても良い。
例えば、走行負荷が大きくてエンジン回転数が低下したときは、前輪差動牽制装置を牽制作動するので、左右の前輪10のスリップを抑えて駆動力を得ることができ、機体の操向性能を向上させることができると共に、機体の直進性が向上する。
【0089】
また、ステアリングハンドル34を頻繁に操作した時に、前輪差動牽制装置を牽制作動させる機能を制御装置163に設けても良い。ステアリングハンドル34の操作は旋回角度(切れ角)センサ193により検出し、例えば、所定時間内に左操舵及び右操舵を繰り返す回数が設定回数以上である場合に頻繁に操作されていると判断する。
本構成により、例えば、機体の左右方向の位置合わせの際にステアリングハンドル34を頻繁に操作すると、左右の前輪10のスリップを抑えて駆動力を得ることができ、機体の操向性能を向上させることができると共に、機体の直進性が向上する。
【0090】
また、左右の後輪11の上下動機構による後輪11の上下動に連動してステアリングハンドル34のトルクジェネレータ37(パワーステアリング装置)のアシスト力を小さくする(ステアリングハンドル34が重くなる)機能を制御装置163に設けても良い。
例えば、凹凸が激しく耕盤が荒れている圃場等で作業を行うとき、ステアリングハンドル34が軽いと機体の振動によってステアリングハンドル34が取られて機体が大きく操向されてしまう。
しかし、後輪ローリングセンサ240により検出される後輪11のローリングの程度に連動してトルクジェネレータ37のアシスト力を小さくするので、むやみに機体が操向することを抑制できると共に、機体の直進性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、8条植などの多条の苗植付用作業機の旋回時の操作性がよいので乗用型田植機などの乗用型作業機に利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1 乗用型田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 14 前輪アクスル
15 メインフレーム 16 変速レバー
18 後輪ギヤケース 19 苗植付レバー
20 エンジン(原動機) 21 ベルト伝動装置
23 油圧式無段変速装置 25 植付クラッチケース
26 植付伝動軸 27(27a,27b) ロータ
28 施肥伝動機構 30 エンジンカバー
31 操縦席 32 フロントカバー
33 操作盤 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
37 トルクジェネレータ 38 予備苗載台
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 45 ケーブル
46 昇降油圧シリンダー 48 昇降リンクセンサ
49 油圧ポンプ 50 苗植付伝動ケース
51 苗載台 51a 苗取出口
51b 苗送りベルト 52 苗植付装置
53 ブロア用電動モータ 55 センターフロート
56 サイドフロート 57 ミドルフロート
58 ブロア 59 エアチャンバ
60 肥料ホッパ 61 繰出部
62 施肥ホース 65 支持枠体
65a 支持ローラ 65b 両側辺部材
66 梁部材 66a 突出部
67 支持アーム 68 ロータ支持フレーム
70 駆動軸 71 連結部材
76,77 リンク部材 78 スプリング
81 ロータ上下位置調節レバー 82 折曲片
86I 左右クラッチ操作アーム
90 チェンジレバー(前後進レバー)
102 エンジン回転数センサ 126 苗植付け具
161 昇降バルブ 163 制御装置
166 フィンガーレバー 180 左右ロッド
184 旋回制御のスタートボタン(スイッチ)
190 接当片 191 バックリフトスイッチ
192 自動リフト切替スイッチ 193 ハンドル切れ角センサ
195 サイドクラッチスイッチ 205 伝動軸回転数センサ
206a〜208b 設定ダイヤル
210 間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル
212 植始め調節ダイヤル 217 プルシリンダ
221 クラッチ制御用電磁バルブ
230 苗植付部上昇牽制スイッチ
235 迎い角センサ 237 マーカ入切スイッチ
243 エンジン回転数変更スイッチ
240 後輪ローリングセンサ 245 前輪デフロックペダル
247 前輪デフロックペダルセンサ
A 継続的入り切り制御機能
B 断続的入り切り制御機能(間欠サイドクラッチ制御)
C 断続的入り切り制御補正機能
D 回転数演算設定機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機(20)を備えた走行車体(2)と、
該走行車体(2)の前進方向に向かって左右にそれぞれ設けられた前輪(10)と、
該前輪(10)の左右後方にそれぞれ設けられ、前記原動機(20)により駆動する後輪(11)と、
前記走行車体(2)上に設けられ、走行車体(2)の操縦を行うための操縦席(31)と、
該操縦席(31)に設けられ、走行車体(2)の操向方向を決める操向ハンドル(34)と、
該操向ハンドル(34)の操作に連動して、左右の前輪(10)の向きを変更できるステアリング機構(86I、180、217)と、
前記走行車体(2)の前進方向に向かって後側に昇降リンク装置(3)を介して昇降可能に装着された作業装置(4)と、
前記原動機(20)の出力軸の駆動回転数を検出する原動機回転数検出手段(102)と、
前記原動機(20)からの動力を左右の後輪(11)に伝達する左右のサイドクラッチと、
前記ステアリング機構(86I、180、217)に連動して旋回内側の後輪(11)のサイドクラッチを断続的に入り切りする断続的入り切り制御機能(B)を有する制御装置(163)と
を備えた作業機であって、
前記制御装置(163)は、原動機回転数検出手段(102)により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に前記断続的入り切り制御機能(B)の旋回内側の後輪(11)のサイドクラッチの入り切り周期の入り時間の割合を減少方向に変更する断続的入り切り制御補正機能(C)を有することを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記左右の後輪(11)の回転数を検出する左右の後輪回転数検出手段(205)を設け、
前記制御装置(163)は、前記後輪回転数検出手段(205)により検出された旋回外側の後輪(11)の回転数に基づいて、該旋回外側の後輪(11)の回転数よりも小さい旋回内側の後輪(11)の回転数を演算し、設定する旋回内側の後輪(11)の回転数演算設定機能(D)を有し、
前記断続的入り切り制御機能(B)は、該回転数演算設定機能(D)により設定された回転数よりも前記後輪回転数検出手段(205)により検出された旋回内側の後輪(11)の回転数が大きい場合はサイドクラッチを切りにし、前記旋回内側の後輪(11)の回転数演算設定機能(D)により設定された回転数よりも前記後輪回転数検出手段(205)により検出された旋回内側の後輪(11)の回転数が同じ又は小さい場合はサイドクラッチを所定時間入りにする制御を行い、
前記断続的入り切り制御補正機能(C)は、前記原動機回転数検出手段(102)により検出される駆動回転数が所定値以上である場合に前記断続的入り切り制御機能(B)のサイドクラッチ入りの所定時間を減少方向に変更する制御を行うことを特徴とする請求項1記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−263803(P2010−263803A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116051(P2009−116051)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】