説明

作業車両

【課題】耕耘作業を行う作業車両の発進時に、耕耘負荷や走行負荷が大きい場合であっても、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジンの停止を回避することができる作業車両を提供する。
【解決手段】走行速度を変速する無段変速機を備え、ロータリ耕耘装置を昇降可能に装着する作業車両となるトラクタであって、前記トラクタが停止し、前記ロータリ耕耘装置が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置が駆動して、その後、前記トラクタが発進する場合は、その発進から規定距離X又は規定時間Tが経過するまでは、前記無段変速機の目標変速比を所定の補正率で減速側に補正するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘装置を備える作業車両における車速制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるが如く、トラクタ等の車両本体に対して昇降可能且つ左右に傾動可能に連結されたロータリ耕耘装置の位置制御を行う昇降制御装置として、前記ロータリ耕耘装置を該車両本体に対して昇降させる昇降アクチュエータ(リフトシリンダー)と、前記ロータリ耕耘装置の上下高さを設定する上下位置操作手段(ポジションレバー)と、前記ロータリ耕耘装置の耕深深さを設定する耕深深さ設定手段(耕深調節ダイヤル)と、前記ロータリ耕耘装置の上下位置を検出する上下位置検出手段(リフトアームセンサ)と、前記ロータリ耕耘装置の耕耘位置を検出する耕耘位置検出手段(リヤカバーの上限回動位置を検出する耕深センサ)と、前記昇降用アクチュエータを作動させる制御手段と、を備え、前記ロータリ耕耘装置の検出上下位置を前記上下位置操作手段による設定上下位置に追従させる自動高さ制御(昇降制御)と、前記ロータリ耕耘装置の検出耕耘位置を前記耕深深さ設定手段による設定耕深位置に追従させる耕深制御とを行えるように構成された昇降制御装置が知られている。
【0003】
そして、通常の耕耘作業を終了し、枕地耕耘(圃場の端を耕耘)を開始する時は、ロータリ耕耘装置を可能な限り圃場端に近い位置に下降させ、車両本体を停止した状態から耕耘を開始する。このような作業開始時においては、耕深深さを検出するリヤカバーが未耕地の土壌表面に接しているため耕深が深くなり、ロータリ耕耘装置の耕耘カバー内に土が溜まることとなる。そして、車両本体を発進させた際には、この耕耘カバー内に溜まった土によって、リヤカバーが開く方向に回動するため、ロータリ耕耘装置を上昇させる制御が行われ、土が溜まった箇所を通過後には、リヤカバーが閉じる方向に回動するため、ロータリ耕耘装置を下降させる制御が行われる。そして、このような制御を行うと図14(a)に示すように、圃場面に凹凸ができ仕上がりが悪くなる虞があることから、図14(b)に示すように、ロータリ耕耘装置の上昇側の動きを一定時間規制制御している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−41415号公報
【特許文献2】特開2007−110924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に示す技術においては、車両本体停止状態での耕耘開始は、ロータリカバー内に土が溜まった状態で耕耘を続けるため、耕耘負荷が大きく、また車両本体発進時には走行負荷も加わり、その影響でエンジン回転数が低下したり、場合によってはエンジンが停止するという問題があった。
【0006】
本発明は、耕耘作業を行う作業車両の発進時に、耕耘負荷や走行負荷が大きい場合であっても、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジンの停止を回避することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、走行速度を変速する変速機と、前記変速機の変速比を変更操作する変速アクチュエータと、前記変速機における目標変速比を設定する変速比設定手段と、前記変速比が前記目標変速比となるように前記変速アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備え、ロータリ耕耘装置を昇降可能に装着する作業車両であって、前記作業車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置の接地状態を検出する接地状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記作業車両が停止し、前記ロータリ耕耘装置が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置が駆動して、その後、前記作業車両が発進する場合は、その発進から規定距離又は規定時間が経過するまでは、前記目標変速比を減速側に補正して、前記変速アクチュエータを駆動制御するものである。
【0009】
請求項2においては、走行速度を変速する変速機と、前記変速機の変速比を変更操作する変速アクチュエータと、前記変速機における目標変速比を設定する変速比設定手段と、前記変速比が前記目標変速比となるように前記変速アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備え、ロータリ耕耘装置を昇降可能に装着する作業車両であって、前記作業車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置の接地状態を検出する接地状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記作業車両が停止し、前記ロータリ耕耘装置が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置が駆動して、その後、前記作業車両が発進する場合は、その発進から規定距離又は規定時間が経過するまでは、前記目標変速比の増加率を所定の増加率に制限して、前記変速アクチュエータを駆動制御するものである。
【0010】
請求項3においては、エンジンの負荷を検出する負荷検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記エンジンの負荷が設定値よりも小さい場合は、前記規定距離又は規定時間を短くするものである。
【0011】
請求項4においては、エンジンの負荷を検出する負荷検出手段をさらに備え、前記制御手段は、前記エンジンの負荷が設定値よりも小さい場合は、前記変化率を大きくするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、発進時の走行負荷が大きい場合であっても、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジンの停止を回避することができる。また、発進時にロータリ耕耘装置の上昇側の動きを制限して、所定の高さに保持して耕耘作業を行う場合であっても、圃場面の仕上がりを良好な状態としつつ、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジンの停止を回避することができる。
【0014】
請求項2においては、発進時の走行負荷が大きい場合であっても、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジンの停止を回避することができる。また、発進時にロータリ耕耘装置の上昇側の動きを制限して、所定の高さに保持して耕耘作業を行う場合であっても、圃場面の仕上がりを良好な状態としつつ、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジンの停止を回避することができる。
【0015】
請求項3においては、エンジン負荷が小さい場合は、早く作業をすることができる。
【0016】
請求項4においては、エンジン負荷が小さい場合は、早く作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの全体側面図。
【図2】トラクタの動力伝達構造を示す図。
【図3】トラクタの制御に係る構成を示すブロック図。
【図4】(a)第一実施形態に係る車速制限制御の制御態様を示すグラフ。(b)第二実施形態に係る車速制限制御の制御態様を示すグラフ。
【図5】第一実施形態に係る車速制限制御のフローチャート。
【図6】第二実施形態に係る車速制限制御のフローチャート。
【図7】(a)第三実施形態に係る車速制限制御の制御態様を示すグラフ。(b)第四実施形態に係る車速制限制御の制御態様を示すグラフ。
【図8】第三実施形態に係る車速制限制御のフローチャート。
【図9】第四実施形態に係る車速制限制御のフローチャート。
【図10】(a)第五実施形態に係る車速制限制御の制御態様を示すグラフ。(b)第六実施形態に係る車速制限制御の制御態様を示すグラフ。
【図11】第五実施形態に係る車速制限制御のフローチャート。
【図12】第六実施形態に係る車速制限制御のフローチャート。
【図13】(a)車速制限制御の制御態様を示す模式図で、車速制限制御の開始時。(b)同じく車速制限制御の継続時。(c)同じく車速制限制御の終了時。
【図14】(a)従来におけるロータリ耕耘装置の制御態様を示す模式図。(b)従来における他のロータリ耕耘装置の制御態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態に係る作業車両をトラクタ1とし、トラクタ1に連結する作業機をロータリ耕耘装置30として、その全体構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、トラクタ1においては、機体フレーム2が長手方向を前後方向として配置され、その前部でフロントアクスルを介して左右一対の前輪3・3に支持されるとともに、その後部でリアアクスルを介して左右一対の後輪4・4に支持される。機体フレーム2の前部にはエンジン5が設けられ、ボンネット6によって覆われている。機体フレーム2の後部にはトラクタ1の動力伝達機構の一部を収納するミッションケース7が設けられている。
【0020】
ボンネット6の後方にはキャビン8が配置され、キャビン8の内部には、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部10が設けられる。運転操作部10においては、操向ハンドル11が前部に設けられ、操向ハンドル11の後方には座席12が配置される。また、座席12の側部には、変速比設定手段63である主変速レバー及び速度調節ダイヤルや昇降位置設定手段72である作業機昇降レバー、耕深設定手段65である耕深設定ダイヤル等が配置され、操向ハンドル11のハンドルコラム側部にエンジン回転数設定手段70であるアクセルレバーや前後進切換レバー62が配置されている(図3参照)。そして、座席12前下方のステップ上にはアクセルペダル、ブレーキペダル、主クラッチペダル、デフロックペダル等が配設されている。
【0021】
作業機連結装置20は、主としてトップリンク21、ロアリンク22・22、リフトロッド23・23を備える。トップリンク21は、ミッションケース7の後部に固設したトップリンクブラケットに回動自在に連結される。ロアリンク22・22は、ミッションケース7またはリヤアクスルハウジングの両側に回動自在に連結される。リフトロッド23・23は、一端がロアリンク22・22の前後中途部に回動自在に連結されて、他端が油圧ケースより後方に突出したリフトアーム24・24に回動自在に連結される。トップリンク21およびロアリンク22・22の後端には、ロータリ耕耘装置30が連結される。
【0022】
ロータリ耕耘装置30は、耕耘爪31、耕耘カバー32、リヤカバー33、チェーンケース34等を備える。耕耘爪31・31・・・は左右方向に回転自在に横架した爪軸35上に適宜間隔をあけて放射状に植設され、該耕耘爪31・31・・・の先端の回転軌跡36の上方及び側方を覆うように耕耘カバー32が配置され、該耕耘カバー32の後端にはリヤカバー33の前端が回動自在に連結され、リヤカバー33の回動基部にカバー角センサ37が設けられる(図13参照)。前記爪軸35はチェーンケース34、ユニバーサルジョイント等を介して、前記ミッションケース7の後面より後方に突出したPTО軸49と連動連結される(図2参照)。
【0023】
そして、図2に示すように、エンジン5の動力が、主変速機構41、前後進切替機構42、副変速機構43、後輪差動機構44等を順次介して、後輪4・4に伝達されるとともに、エンジン5の動力が、主変速機構41、前後進切替機構42、副変速機構43、前輪駆動切替機構45、前輪差動機構46等を順次介して、前輪3・3に伝達される。これにより、前輪3・3や後輪4・4が回転駆動されて、トラクタ1の走行が行われる。また、エンジン5の動力が、PTOクラッチ機構47、PTO変速機構48、PTO軸49等を順次介して、ロータリ耕耘装置30の爪軸35に伝達される。これにより、爪軸35とともに耕耘爪31・31・・・が回転駆動されて、耕耘作業が行なわれる。
【0024】
次に、トラクタ1の制御態様を説明する。
【0025】
制御装置100はトラクタ1の任意の位置に具備される。制御装置100は、中央処理装置、記憶装置等により構成される。制御装置100は、図3に示すように、車速センサ61と、前後進切換レバー62と、変速比設定手段63と、変速比検出手段64と、耕深設定手段65と、耕深検出手段66と、PTOスイッチ67と、PTOレバー68と、PTO切換ダイヤル69と、エンジン回転数設定手段70と、エンジン回転数検出手段71と、昇降位置設定手段72と、昇降位置検出手段73と、接続される。また、制御装置100は、変速アクチュエータ81と、昇降アクチュエータ82と、接続される。
【0026】
車速センサ61は、トラクタ1の実際の走行速度(車速)を検出するものであり、本実施形態においては、後輪4における車軸の回転数を検出して走行速度を検出する構成とされる。車速センサ61は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等で構成され、車速センサ61で検出された検出値は、走行速度として、制御装置100に送信される。
【0027】
前後進切換レバー62は、トラクタ1の進行方向を設定するものである。前後進切換レバー62は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。制御装置100は、操作量に基づいて電磁弁に信号を送信して油圧アクチュエータを駆動させ、前進クラッチ42a及び後進クラッチ42bを「入」「切」に作動させる。詳細には、前後進切換レバー62を「前進」位置に操作した場合は前後進切換機構42の前進クラッチ42aを「入」に作動させ、「後進」位置に操作した場合は後進クラッチ42bを「入」に作動させ、「中立」位置に操作した場合は前進クラッチ42a及び後進クラッチ42bを「切」に作動させる(図2参照)。
【0028】
変速比設定手段63は、主変速機構41における無段変速機41aの変速比(車速)を設定するものである。変速比設定手段63は、例えば、主変速レバーや速度調節ダイヤルで構成される。これら主変速レバーや速度調節ダイヤルは、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標変速比として、制御装置100に送信される。
【0029】
変速比検出手段64は、主変速機構41における無段変速機41aの変速比を検出するものである。変速比検出手段64は、例えば、無段変速機の油圧ポンプ又は油圧モータの斜板角度を検知するセンサとされ、このセンサで検出した信号は、実際の無段変速機41aの変速比(実変速比)として、制御装置100に送信される。
【0030】
耕深設定手段65は、ロータリ耕耘装置30における耕耘爪31の耕深深さを任意の耕深深さに設定するものである。耕深設定手段65は、例えば、回動操作が可能な耕深設定ダイヤルとされる。耕深設定ダイヤルは、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、設定深さとして、制御装置100に送信される。
【0031】
耕深検出手段66は、ロータリ耕耘装置30の耕深深さを検出するものである。耕深検出手段66は、例えば、耕耘カバー32に対するリヤカバー33の回動角度(リヤカバー33の開度)を検出するカバー角センサ37とされ(図13参照)、このカバー角センサ37の検出値は、耕深深さHとして、制御装置100に送信される。
【0032】
PTOスイッチ67は、PTO軸49への動力の伝達及び遮断の設定を行うものである。PTOスイッチ67は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。制御装置100は、PTOスイッチ67及び後述するPTO切換ダイヤル69の操作位置に基づいて電磁弁に信号を送信して油圧アクチュエータを作動させ、PTOクラッチ機構47のPTOクラッチ47a及びこのPTOクラッチ47aと背反的に作動するPTOブレーキ47bを「入」「切」に作動させる。
【0033】
PTOレバー68は、PTO軸49の回転数や回転方向を変更するものである。PTOレバー68は、PTO変速機構48における変速ギヤの噛合を選択的に変更するシフタと連結される。PTOレバー68は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサで検出された操作位置は、制御装置100に送信される。本実施形態においては、PTOレバー68は、「正転」、「中立」、「逆転」位置に操作可能とされ、この操作に基づいてPTO変速機構48のシフタが摺動して、PTO軸49の回転数や回転方向が変更される。
【0034】
PTO切換ダイヤル69は、PTOクラッチ機構47の作動モードを切り替えるものである。PTO切換ダイヤル69は、操作位置を検出するセンサを備え、このセンサが制御装置100と接続される。PTO切換ダイヤル69は、「連動」「独立」「昇降連動」位置に切り換え操作可能とされる。「連動」位置に操作されると、走行系伝動経路の動力が遮断されたときは、制御装置100は、前記PTOスイッチ67の操作にかかわらずPTOクラッチ機構47が動力を遮断するように作動する。「独立」位置に操作されると、制御装置100は、前記走行系動力伝達経路の動力伝達状態にかかわらず、PTOスイッチ67の操作によってPTOクラッチ機構47の動力伝達状態が切り替わる。「昇降連動」位置に操作されると、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が非作業位置等の所定の上昇位置とされる場合に、前記PTOスイッチ67の操作にかかわらずPTOクラッチ機構47が動力を遮断するように作動する。
【0035】
エンジン回転数設定手段70は、エンジン5の回転数を設定するものである。エンジン回転数設定手段70は、例えば、アクセルレバーやアクセルペダルとされる。これらアクセルレバーやアクセルペダルは、操作量を検出するポテンショメータ等のセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、設定したエンジン回転数(目標エンジン回転数Ns)として制御装置100に送信される。
【0036】
エンジン回転数検出手段71は、エンジン5の回転数を検知するものである。エンジン回転数検出手段71は、例えば、エンジン5のフライホイールやクランク軸の回転数を検出する構成とされる。エンジン回転数検出手段71は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等で構成され、エンジン回転数検出手段71で検出した信号は、実際のエンジン回転数(実エンジン回転数Nr)として、制御装置100に送信される。制御装置100は、実エンジン回転数Nrが、目標エンジン回転数Nsと一致するように不図示の燃料噴射装置を駆動制御する。
【0037】
昇降位置設定手段72は、トラクタ1の車両本体に対するロータリ耕耘装置30の高さを設定するものである。昇降位置設定手段72は、例えば、作業機を任意の高さに昇降させる作業機昇降レバーや、予め設定した所定の位置(上昇位置や下降位置)に昇降させる作業機上昇スイッチ及び作業機下降スイッチとされる。これら作業機昇降レバーや作業機上昇スイッチ及び作業機下降スイッチは、操作量を検出するセンサを備え、このセンサで検出した操作量は、目標昇降位置として、制御装置100に送信される。
【0038】
昇降位置検出手段73は、トラクタ1の車両本体に対するロータリ耕耘装置30の高さを検知するものである。昇降位置検出手段73は、例えば、リフトアーム25・25の回動基部に設置された回動角度を検出するリフト角センサとされ、このリフト角センサで検出した検出値は、実昇降位置として、制御装置100に送信される。
【0039】
変速アクチュエータ81は、主変速機構41における無段変速機41aの変速比、すなわち、斜板角度を変更するものである。変速アクチュエータ81は、電磁比例弁、シリンダ、モータ等で構成される。変速アクチュエータ81は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、無段変速機41aの斜板角度を変更して、主変速機構41の変速比を変更している。制御装置100は、変速比検出手段64で検出された実変速比が、変速比設定手段63で設定された目標変速比と一致するように、変速アクチュエータ81を駆動制御して、無段変速機41aの変速比を変更している。
【0040】
昇降アクチュエータ82は、車両本体に対してロータリ耕耘装置30を昇降させるものである。昇降アクチュエータ82は、前記リフトアーム25・25を回動させる油圧シリンダへの圧油の送油量や方向を切り換える電磁弁等で構成される。昇降アクチュエータ82は、制御装置100から送信された信号に基づいて駆動して、ロータリ耕耘装置30の高さを変更している。詳細には、制御装置100は、昇降位置検出手段73で検出された検出値(実昇降位置)が、昇降位置設定手段72で設定された設定値(実昇降位置)と一致するように昇降アクチュエータ82を駆動制御して、ロータリ耕耘装置30を昇降させる(昇降制御)。または、制御装置100は、耕深検出手段66で検出された検出値(耕深深さH)が、耕深設定手段65で設定された設定値(設定深さ)と一致するように昇降アクチュエータ82を駆動制御して、ロータリ耕耘装置30を昇降させる(耕深制御)。
【0041】
次に、本発明の実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。
【0042】
トラクタ1が圃場端等で耕耘作業を行いつつ走行を開始する場合は、制御装置100によって、トラクタ1の車速を減じる制御(車速制限制御)が行なわれる。この車速制限制御は、停止状態検出手段、接地状態検出手段、駆動状態検出手段及び発進状態検出手段の検出値に基づいて行われる。
【0043】
停止状態検出手段は、トラクタ1の停止状態(停止しているか否か)を検出するものである。停止状態検出手段は、例えば、車速センサ61で構成される。車速センサ61で走行速度が検出されない場合は、制御装置100は、トラクタ1が停止していると判断する。また、停止状態検出手段は、前後進切換レバー62及び変速比設定手段63で構成することも可能である。前後進切換レバー62が「中立」に操作された場合や、前後進切換レバー62が「前進」に操作されて、かつ、設定値(目標変速比)を「零」として変速比設定手段63が操作された場合は、制御装置100は、トラクタ1が停止していると判断する。また、変速比設定手段63の代替として変速比検出手段64を用いることも可能である。ただし、停止状態検出手段は、トラクタ1の停止状態を検出可能であればよく、上記に限定するものでない。
【0044】
接地状態検出手段は、ロータリ耕耘装置30の接地状態(接地しているか否か)を検出するものである。接地状態検出手段は、例えば、耕深検出手段66で構成することも可能である。耕深検出手段66の検出値が、初期値から所定の変化が生じた場合には、同様にロータリ耕耘装置30が接地していると判断する。ただし、接地状態検出手段は、ロータリ耕耘装置30の接地状態を検出可能であればよく、上記の構成に限定するものでない。また、接地状態検出手段は、例えば、耕深設定手段65及び耕深検出手段66で構成することも可能である。耕深設定手段65の設定値(設定深さ)と、耕深検出手段66の検出値(耕深深さH)と、が一致したとき、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が接地していると判断することも可能である。
【0045】
駆動状態検出手段は、ロータリ耕耘装置30の駆動状態(駆動しているか否か)を検出するものである。駆動状態検出手段は、例えば、PTOクラッチ47aを操作する操作具(PTOスイッチ67とPTO切換ダイヤル69)及びPTOレバー68で構成される。PTOクラッチ機構47のPTOクラッチ47aが作動して、かつ、PTOレバー68が「正転」位置に操作された場合は、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が駆動していると判断する。ただし、駆動状態検出手段は、ロータリ耕耘装置30の駆動状態を検出可能であればよく、上記の構成に限定するものでない。
【0046】
発進状態検出手段は、トラクタ1の発進状態(発進したか否か)を検出するものである。発進状態検出手段は、例えば、前後進切換レバー62及び変速比設定手段63で構成される。変速比設定手段63の設定値(目標変速比)が「零」以外であって、前後進切換レバー62が「前進」位置に操作された場合は、制御装置100は、トラクタが発進したと判断する。また、発進状態検出手段は、停止状態検出手段で代用することも可能であり、すなわち、停止状態検出手段でトラクタ1が「停止」から「走行」を検出した場合に、トラクタ1が発進したと判断する。ただし、発進状態検出手段は、トラクタ1の発進状態を検出可能であればよく、上記の構成に限定するものでない。
【0047】
負荷検出手段は、エンジン5の負荷を検出するものである。負荷検出手段は、例えば、エンジン回転数設定手段70と、エンジン回転数検出手段71と、で構成される。エンジン5の負荷は、エンジン回転数設定手段70で設定した目標エンジン回転数Nsと、エンジン回転数検出手段71で検知した実エンジン回転数Nrと、により算出される。具体的には、エンジン5の負荷率(実エンジン回転数Nr/目標エンジン回転数Ns)や、エンジン回転ダウン量(目標エンジン回転数Ns−実エンジン回転数Nr)が算出され、この算出値に基づいて制御装置100は、エンジン5の負荷が小さいか否かを判断する。ただし、負荷検出手段は、エンジン5の負荷を検出可能であればよく、上記の構成に限定するものでない。
【0048】
次に、本発明の第一実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。
【0049】
第一実施形態においては、制御装置100は、停止状態検出手段でトラクタ1の停止を検出し、かつ、接地状態検出手段でロータリ耕耘装置30の接地を検出し、かつ、駆動状態検出手段でロータリ耕耘装置30の駆動を検出した場合であって、その後、発進状態検出手段でトラクタ1の発進を検出した場合は、図4(a)に示すように、発進位置(耕耘開始位置)から規定距離Xが経過するまでは、変速比設定手段63で設定された目標変速比を、所定の補正率(補正値)で減速側に補正する。そして、発進位置(耕耘開始位置)から規定距離Xの経過後(到達後)に、目標変速比に対する補正を停止する。
【0050】
ここで、補正率は、目標変速比に対する減速側に補正する割合とされ、補正率が100%ならば目標変速比の補正は行なわれず、補正率が80%ならば、例えば、補正率が100%の場合に車速が10km/hであると、補正率が80%の場合は、車速が8km/hとなるように目標変速比が補正される。本実施形態においては、補正率は80%とされ、規定距離Xは1mとされる。これら補正率及び規定距離Xは、制御装置100に予め設定されるか、作業者が操作具を操作して設定される。
【0051】
具体例を説明すると、図5に示すように、耕耘作業を開始する時は、ステップS11において、作業者は、昇降位置設定手段72を操作して、昇降制御によりロータリ耕耘装置30を非作業位置(最上げ位置)に上昇させる。そして、ステップS12に移行する。ただし、作業者は、予めPTO切換ダイヤル69を「昇降連動」位置、PTOスイッチ67を「ON」位置、PTOレバー68を「正転」(「中立」及び「逆転」以外)位置に操作して、PTOクラッチ機構47のPTOブレーキ47bを作動させて、ロータリ耕耘装置30を停止させているものとする。
【0052】
ステップS12において、制御装置100は、車速センサ61によりトラクタ1の車速が零か否かを判断する。そして、ステップS13に移行する。車速が零でない場合は、車速制限制御を終了する。
【0053】
本実施形態においては、停止状態検出手段は車速センサ61で構成されており、ステップS12において、車速センサ61が車速=0を検出した場合は、制御装置100は、トラクタ1が停止していると判断する。
【0054】
ステップS13において、作業者が、昇降位置設定手段72である作業機下降スイッチを操作したか否かを判断する。操作された場合、ステップS14に移行する。
【0055】
ステップS14において、制御装置100は、昇降アクチュエータ82を駆動制御して、ロータリ耕耘装置30を下降させる。そして、ステップS15に移行する。なお、ステップS14において、ロータリ耕耘装置30の高さが所定の高さ以下となったときには、PTOクラッチ機構47のPTOクラッチ47aが作動する。すなわち、動力が、PTOクラッチ機構47、PTO変速機構48、PTO軸49を介してロータリ耕耘装置30に伝達され、ロータリ耕耘装置30が駆動する。そして、ロータリ耕耘装置30の下降を継続して、耕耘爪31が土壌と接触した場合は、トラクタ1の停止位置(例えば圃場端)で耕耘作業を行うこととなる。
【0056】
本実施形態においては、駆動状態検出手段はPTOクラッチ47a及びPTOレバー68で構成されており、ステップS14において、PTOクラッチ47aが作動して、PTOレバー68が「中立」位置以外に操作された場合は、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が駆動していると判断する。
【0057】
ステップS15において、制御装置100は、耕深検出手段66であるカバー角センサ37の検出値(リヤカバー角)が浅い側(開き側)に変化したか否かを判断する。変化した場合は、ロータリ耕耘装置30が接地したとしてステップS16に移行する。変化しない場合は、ステップS14に移行する。
【0058】
本実施形態においては、接地状態検出手段は昇降位置設定手段72及び耕深検出手段66で構成され、ステップS15において、昇降位置設定手段72による下降操作により、リヤカバー33が接地すると、耕深検出手段66の検出値が開き側に変化することから、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が接地したと判断する。
【0059】
ステップS16において、制御装置100は、耕深制御を開始する。つまり、昇降制御から耕深制御に切り替わり、耕深検出手段66で検出した耕深深さHが、耕深設定手段65で設定した設定深さと一致するように昇降アクチュエータ82を駆動制御する。この作業開始時は、ロータリ耕耘装置30は駆動しているので、図13(a)に示すように、ロータリ耕耘装置30は、その下方の土を耕耘して、耕耘爪31の回転軌跡36の後方に土が盛られて凸部38が形成される。このとき、発進から規定距離Xに到達するまでは、後述するように耕深制御は制限される。そして、ステップS17に移行する。
【0060】
ステップS17において、制御装置100は、発進操作が行われたか否かを判断する。作業者が発進状態検出手段である変速比設定手段63の主変速レバー及び速度調節ダイヤルの設定値(目標変速比)が「零」以外であって、前後進切換レバー62を「前進」位置に操作した場合は、制御装置100は、電磁弁や油圧アクチュエータを作動させて、前後進切換機構42の前進クラッチ42aを作動させる。そして、トラクタ1が走行を開始する。そして、制御装置100は、発進操作が行われたものと判断して、ステップS18に移行する。
【0061】
本実施形態においては、発進状態検出手段は変速比設定手段63及び前後進切換レバー62で構成され、ステップS17において、変速比設定手段63の設定値(目標変速比)が「零」以外であって、前後進切換レバー62を「前進」位置に操作したとき(車速センサ61が前進回転を検知したときであってもよい)、制御装置100は、トラクタ1が発進したと判断する。
【0062】
なお、トラクタ1が走行を開始する際、制御装置100は、耕深制御を制限して、ロータリ耕耘装置30の上昇側の動きを制限している。本実施形態においては、制御装置100は、ロータリ耕耘装置30が設定深さに至るとその高さを、設定深さに至らない場合には最も低くなった時の停止時における高さを保持するように昇降アクチュエータ82を駆動制御しており、図13(b)及び図13(c)に示すように、ロータリ耕耘装置30の耕深深さH(耕深設定手段65の設定深さ)はそのまま維持されたうえで、トラクタ1が走行されて耕耘作業が行われる。つまり、耕深検出手段66であるリヤカバー33が上昇回動しても、ロータリ耕耘装置30の高さを保持するのである。
【0063】
ステップS18において、制御装置100は、車速制限制御を開始する。すなわち、変速比設定手段63で設定された目標変速比を検出し、この目標変速比を80%の補正率で減速側に補正する(図4(a)参照)。そして、制御装置100は、変速比検出手段64で検出される実変速比が、補正された目標変速比(目標変速比の80%)と一致するように変速アクチュエータ81を駆動制御してトラクタ1の車速を制限する。そして、ステップS19に移行する。
【0064】
ステップS19において、制御装置100は、トラクタ1の走行距離が予め設定された規定距離Xである1mを越えたか否かを判断する。走行距離は、例えば、制御装置100が車速センサ61の検出値を発進位置から積算して算出される。走行距離が1mを経過(1mに到達)した場合は、ステップS20に移行する。走行距離が1mを経過していない場合は、走行距離が1mを経過するまで走行を継続する。
【0065】
ステップS20において、制御装置100は、前記変速比設定手段63で検出された目標変速比の補正を停止(補正率を100%)して、変速アクチュエータ81を駆動制御し、トラクタ1の車速制限を解除する。こうして、車速制限制御を終了する。また、車速制限制御の終了時(規定距離到達時)から耕深制御が行われる。
【0066】
次に、本発明の第二実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。ただし、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
第二実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御においては、制御装置100は、停止状態検出手段でトラクタ1の停止を検出し、かつ、接地状態検出手段でロータリ耕耘装置30の接地を検出し、かつ、駆動状態検出手段でロータリ耕耘装置30の駆動を検出した場合であって、その後、発進状態検出手段でトラクタ1の発進を検出した場合は、図4(b)に示すように、発進時から規定時間Tが経過(規定時間Tに到達)するまでは、変速比設定手段63で設定された目標変速比を所定の補正率(補正値)で減速側に補正する。そして、発進時から規定時間Tの経過後(到達後)に、目標変速比に対する補正を停止する。
【0068】
ここで、本実施形態においては、規定時間Tは10秒とされ、制御装置100に予め設定されるか、作業者が操作具を操作して設定される。
【0069】
具体例を説明すると、図6に示すように、ステップS11からステップS18までは第一実施形態と同じ行程とされ、ステップS18からステップS21に移行する。
【0070】
ステップS21においては、制御装置100は、トラクタ1の走行時間が、規定時間Tである10秒が経過したか否かを判断する。走行時間は、例えば、制御装置100に予めタイマーが内蔵され、これにより発進からカウントを開始して算出する。走行時間が10秒を経過(10秒に到達)した場合は、ステップS20に移行して、以降は第一実施形態と同様の行程とされる。走行時間が10秒を経過していない場合は、走行時間が10秒を経過するまで走行を継続する。
【0071】
以上のように、本発明の第一及び第二実施形態に係る作業車両となるトラクタ1においては、走行速度を変速する無段変速機41aと、前記無段変速機41aの変速比を変更操作する変速アクチュエータ81と、前記無段変速機41aにおける目標変速比を設定する変速比設定手段63と、前記変速比が前記目標変速比となるように前記変速アクチュエータ81を駆動制御する制御装置100と、を備え、ロータリ耕耘装置30を昇降可能に装着するトラクタ1であって、前記トラクタ1の停止状態を検出する停止状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置30の接地状態を検出する接地状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置30の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、を備え、前記制御装置100は、前記トラクタ1が停止し、前記ロータリ耕耘装置30が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置30が駆動して、その後、前記トラクタ1が発進する場合は、その発進から規定距離X又は規定時間Tが経過するまでは、前記目標変速比を所定の補正率で減速側に補正して、前記変速アクチュエータ81を駆動制御するものである。これにより、発進時の走行負荷が大きい場合であっても、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジン5の停止を回避することができる。また、発進時にロータリ耕耘装置30の上昇側の動きを制限して、所定の高さに保持して耕耘作業を行う場合であっても、圃場面の仕上がりを良好な状態としつつ、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジン5の停止を回避することができる。
【0072】
次に、本発明の第三実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。ただし、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0073】
第三実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御においては、制御装置100は、停止状態検出手段でトラクタ1の停止を検出し、かつ、接地状態検出手段でロータリ耕耘装置30の接地を検出し、かつ、駆動状態検出手段でロータリ耕耘装置30の駆動を検出した場合であって、その後、発進状態検出手段でトラクタ1の発進を検出した場合は、図7(a)に示すように、発進位置(耕耘開始位置)から規定距離Xが経過するまでは、変速比設定手段63で設定された目標変速比の増加率を所定の増加率に制限する。
【0074】
言い換えれば、補正された目標変速比が、目標変速比に至るまでの増加率を所定の増加率に制限する。本実施形態においては、前記補正率を、発進位置で0%とし、その後は走行距離の増加に伴って徐々に増加させ、規定距離Xで100%となるように変化させる。そして、この補正率で補正された目標変速比における増加率を、所定の増加率に制限するのである。ここで、所定の増加率は、制御装置100に予め設定されるか、作業者が操作具を操作して設定される。ただし、補正された目標変速比及び走行距離の関係は、図7(a)に示すように、比例関係に限定するものでなく、例えば、二次関数や対数関数の関係としてもよい。また、発進位置における補正率は、0%に限定するものでなく、例えば、第一実施形態と同じ80%であってもよい。
【0075】
具体例を説明すると、図8に示すように、ステップS11からステップS17までは第一実施形態と同じ行程とされ、ステップS17からステップS31に移行する。
【0076】
ステップS31においては、制御装置100は、図7(a)に示すように、目標変速比の補正率を規定距離Xである1mの間で、0%から100%まで走行距離に応じて比例関係で増加させる。すなわち、発進位置で補正した目標変速比を増速側に徐々に増加させる。この際、補正した目標変速比及び走行距離の関係は、所定の増加率に制限される。そして、制御装置100は、前記変速比設定手段63で検出された目標変速比を補正したうえでその補正された目標変速比に応じて変速アクチュエータ81を駆動制御する。走行距離が1mを経過(1mに到達)した場合は、前記変速比設定手段63で検出された目標変速比の補正を停止(補正率100%)して、変速アクチュエータ81を駆動制御する。こうして、車速制限制御を終了する。
【0077】
次に、本発明の第四実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。ただし、第二及び第三実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0078】
第四実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御においては、制御装置100は、停止状態検出手段でトラクタ1の停止を検出し、かつ、接地状態検出手段でロータリ耕耘装置30の接地を検出し、かつ、駆動状態検出手段でロータリ耕耘装置30の駆動を検出した場合であって、その後、発進状態検出手段でトラクタ1の発進を検出した場合は、図7(b)に示すように、発進時から規定時間Tが経過するまでは、変速比設定手段63で設定された目標変速比の増加率を所定の増加率に制限する。
【0079】
言い換えれば、補正された目標変速比が、目標変速比に至るまでの増加率を所定の増加率に制限する。本実施形態においては、前記補正率を、発進位置で0%とし、その後は走行距離の増加に伴って徐々に増加させ、規定時間Tで100%となるように変化させる。そして、この補正率で補正された目標変速比における増加率を、所定の増加率に制限するのである。ここで、所定の増加率は、制御装置100に予め設定されるか、作業者が操作具を操作して設定される。ただし、補正された目標変速比及び走行時間の関係は、図7(b)に示すように、比例関係に限定するものでなく、例えば、二次関数や対数関数の関係としてもよい。また、発進位置における補正率は、0%に限定するものでなく、例えば、第二実施形態と同じ80%であってもよい。
【0080】
具体例を説明すると、図9に示すように、ステップS11からステップS17までは第三実施形態と同じ行程とされ、ステップS17からステップS41に移行する。
【0081】
ステップS41においては、制御装置100は、図7(b)に示すように、目標変速比の補正率を規定時間Tである10秒の間で、0%から100%まで走行時間に応じて比例関係で増加させる。すなわち、発進時で補正した目標変速比を増速側に徐々に増加させる。この際、補正した目標変速比及び走行時間の関係は、所定の増加率に制限される。そして、制御装置100は、前記変速比設定手段63で検出された目標変速比を補正したうえでその補正された目標変速比に応じて変速アクチュエータ81を駆動制御する。走行時間が10秒を経過(10秒に到達)した場合は、前記変速比設定手段63で検出された目標変速比の補正を停止(補正率100%)して、変速アクチュエータ81を駆動制御する。こうして、車速制限制御を終了する。
【0082】
以上のように、本発明の第三及び第四実施形態に係る作業車両となるトラクタ1においては、走行速度を変速する無段変速機41aと、前記無段変速機41aの変速比を変更操作する変速アクチュエータ81と、前記無段変速機41aにおける目標変速比を設定する変速比設定手段63と、前記変速比が前記目標変速比となるように前記変速アクチュエータ81を駆動制御する制御装置100と、を備え、ロータリ耕耘装置30を昇降可能に装着するトラクタ1であって、前記トラクタ1の停止状態を検出する停止状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置30の接地状態を検出する接地状態検出手段と、前記ロータリ耕耘装置30の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、を備え、前記制御装置100は、前記トラクタ1が停止し、前記ロータリ耕耘装置30が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置30が駆動して、その後、前記トラクタ1が発進する場合は、その発進から規定距離X又は規定時間Tが経過するまでは、前記目標変速比の増加率を所定の増加率に制限して、前記変速アクチュエータ81を駆動制御するものである。これにより、発進時の走行負荷が大きい場合であっても、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジン5の停止を回避することができる。また、発進時にロータリ耕耘装置30の上昇側の動きを制限して、所定の高さに保持して耕耘作業を行う場合であっても、圃場面の仕上がりを良好な状態としつつ、エンジン回転数の低下を抑制することができ、エンジン5の停止を回避することができる。
【0083】
次に、本発明の第五実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。ただし、第一実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0084】
第五実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御においては、制御装置100は、負荷検出手段でエンジン5の負荷を検出し、エンジン5の負荷が予め設定した設定値よりも小さい場合は、図10(a)に示すように、前記規定距離X(又は規定時間T)を短くするように構成される。詳細には、制御装置100は、エンジン5の負荷率50%未満が5秒以上継続している場合又はエンジンダウン量が50rpm未満である場合、若しくは、負荷率50%未満が5秒以上継続している場合であって、エンジンダウン量が50rpm未満である場合にエンジン負荷が小さいと判断する。ここで、閾値となる設定値は、制御装置100に予め設定されるか、作業者が操作具を操作して設定される。
【0085】
具体例を説明すると、図11に示すように、ステップS11からステップS18までは第一実施形態と同じ行程とされ、ステップS18からステップS51に移行する。
【0086】
ステップS51においては、制御装置100は、エンジン5の負荷率(実エンジン回転数Nr/目標エンジン回転数Ns)が50%未満が5秒以上継続しているか否かを判断する。5秒以上継続している場合は、ステップS52に移行する。5秒以上継続していない場合は、ステップS53に移行する。
【0087】
ステップS52においては、制御装置100は、規定距離X=0.2mとする。そして、ステップS55に移行する。
【0088】
ステップS53においては、制御装置100は、エンジン回転ダウン量(目標エンジン回転数Ns−実エンジン回転数Nr)が、50rpm未満か否かを判断する。50rpm未満である場合は、ステップS52に移行する。50rpm未満でない場合は、ステップS54に移行する。
【0089】
ステップS54においては、制御装置100は、規定距離X=1mとする。そして、ステップS55に移行する。
【0090】
ステップS55においては、制御装置100は、制御装置100は、トラクタ1の走行距離がXmを越えたか否かを判断する。走行距離がXm以上の場合は、ステップS20に移行して、以降は第一実施形態と同様の行程とされる。Xm未満の場合は、Xm以上となるまで走行を継続する(ステップS55を繰り返す)。
【0091】
以上のように、本発明の第五実施形態に係る作業車両となるトラクタ1においては、エンジン5の負荷を検出する負荷検出手段をさらに備え、前記制御装置100は、前記エンジン5の負荷が設定値よりも小さい場合は、前記規定距離X又は規定時間Tを短くするものである。これにより、エンジン負荷が小さい場合は、車速制限制御の継続時間が短くなり、早く作業をすることができる。
【0092】
次に、本発明の第六実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御について説明する。ただし、第四及び第五実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0093】
第六実施形態に係るトラクタ1の車速制限制御においては、制御装置100は、負荷検出手段でエンジン5の負荷を検出し、エンジン5の負荷が予め設定した設定値よりも小さい場合は、図10(b)に示すように、車速制限制御中である前記規定時間T(又は規定距離X)内において補正された目標変速比が、目標変速比に至るまでの傾きを増加させる。詳細には、制御装置100は、エンジン5の負荷率50%未満が5秒以上継続している場合又はエンジンダウン量が50rpm未満である場合、若しくは、負荷率50%未満が5秒以上継続している場合であって、エンジンダウン量が50rpm未満である場合にエンジン負荷が小さいと判断する。ここで、閾値となる設定値は、制御装置100に予め設定されるか、作業者が操作具を操作して設定される。
【0094】
具体例を説明すると、図12に示すように、ステップS11からステップS17までは第四実施形態と同じ行程とされ、ステップS17からステップS61に移行する。
【0095】
ステップS61においては、走行時間の経過とともに目標変速比の補正率を徐々に増加させる。言い換えれば、発進時における補正された目標変速比を徐々に増速側に増加させる。そして、ステップS62に移行する。
【0096】
ステップS62においては、制御装置100は、エンジン5の負荷率(実エンジン回転数Nr/目標エンジン回転数Ns)が50%未満が5秒以上継続しているか否かを判断する。5秒以上継続している場合は、ステップS63に移行する。5秒以上継続していない場合は、ステップS64に移行する。
【0097】
ステップS63においては、制御装置100は、補正された目標変速比の増速側の傾きを増加させる。言い換えれば、補正率の変化率を増加させる。そして、ステップS66に移行する。
【0098】
ステップS64においては、制御装置100は、エンジン回転ダウン量(目標エンジン回転数Ns−実エンジン回転数Nr)が、50rpm未満か否かを判断する。50rpm未満である場合は、ステップS63に移行する。50rpm未満でない場合は、ステップS65に移行する。
【0099】
ステップS65においては、制御装置100は、補正された目標変速比の増速側の傾きを増加させず、維持させる。そして、ステップS66に移行する。
【0100】
ステップS66においては、制御装置100は、トラクタ1の走行時間が、規定時間である10秒が経過したか否かを判断する。走行時間が10秒を経過(10秒に到達)した場合は、ステップS67に移行する。走行時間が10秒を経過していない場合は、ステップS61に移行する。
【0101】
ステップS67において、制御装置100は、前記変速比設定手段63で検出された目標変速比の補正を停止(補正率を100%)して、変速アクチュエータ81を駆動制御し、トラクタ1の車速制限を解除する。こうして、車速制限制御を終了して、通常の車速制御に移行する。
【0102】
以上のように、本発明の第六実施形態に係る作業車両となるトラクタ1においては、エンジン5の負荷を検出する負荷検出手段をさらに備え、前記制御装置100は、前記エンジン5の負荷が設定値よりも小さい場合は、前記目標変速比に至る増加率を大きくするものである。これにより、エンジン負荷が小さい場合は、車速制限制御の継続時間が短くなり、早く作業をすることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 トラクタ(作業車両)
5 エンジン
30 ロータリ耕耘装置
31 耕耘爪
32 耕耘カバー
33 リヤカバー
41 主変速機構
41a 無段変速機(変速機)
63 変速比設定手段
81 変速アクチュエータ
82 昇降アクチュエータ
100 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行速度を変速する変速機と、
前記変速機の変速比を変更操作する変速アクチュエータと、
前記変速機における目標変速比を設定する変速比設定手段と、
前記変速比が前記目標変速比となるように前記変速アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備え、
ロータリ耕耘装置を昇降可能に装着する作業車両であって、
前記作業車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、
前記ロータリ耕耘装置の接地状態を検出する接地状態検出手段と、
前記ロータリ耕耘装置の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記作業車両が停止し、前記ロータリ耕耘装置が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置が駆動して、その後、前記作業車両が発進する場合は、その発進から規定距離又は規定時間が経過するまでは、前記目標変速比を減速側に補正して、前記変速アクチュエータを駆動制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行速度を変速する変速機と、
前記変速機の変速比を変更操作する変速アクチュエータと、
前記変速機における目標変速比を設定する変速比設定手段と、
前記変速比が前記目標変速比となるように前記変速アクチュエータを駆動制御する制御手段と、を備え、
ロータリ耕耘装置を昇降可能に装着する作業車両であって、
前記作業車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、
前記ロータリ耕耘装置の接地状態を検出する接地状態検出手段と、
前記ロータリ耕耘装置の駆動状態を検出する駆動状態検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記作業車両が停止し、前記ロータリ耕耘装置が接地し、かつ、前記ロータリ耕耘装置が駆動して、その後、前記作業車両が発進する場合は、その発進から規定距離又は規定時間が経過するまでは、前記目標変速比の増加率を所定の増加率に制限して、前記変速アクチュエータを駆動制御することを特徴とする作業車両。
【請求項3】
エンジンの負荷を検出する負荷検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記エンジンの負荷が設定値よりも小さい場合は、前記規定距離又は規定時間を短くすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
エンジンの負荷を検出する負荷検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記エンジンの負荷が設定値よりも小さい場合は、前記増加率を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−206019(P2011−206019A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79549(P2010−79549)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】