説明

作業車両

【課題】作業の省力化を図るため、除草作業と同時に施肥作業をも行えるようにし、除草機の中耕ディスクの土寄せと同時に畝に散布した肥料に覆土することで、散布肥料の畝底への脱落や雨による流亡を防止する。
【解決手段】本発明は、チゼル14を挟んで前後に第1中耕ディスク13と第2中耕ディスク15を配置してなる除草作業機9を車体後部に昇降可能に装備してある作業車両において、作業車両の適所に設置された施肥装置27からの粒状肥料を畝Uの作物列近傍に沿って散布する施肥ホース28を設けると共に、この施肥ホース28は前記第2中耕ディスク15の進行方向前側に配置してあることを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両に関する。特に農業用トラクタや乗用管理機等に利用される作業車両の除草作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作物の条間を進行し、条間の表土を中耕しながら除草を行う除草作業機は一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−259812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作物の生育を促進するため、畝の上部に粒剤肥料を散布するようにしているが、散布する肥料が粒状である場合、畝間の溝底に転げ落ちたり、雨による流亡が発生し易く、肥料効果が低減する問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、作業の省力化を図るため、除草作業と同時に施肥作業をも行えるようにし、除草作業機の中耕ディスクの土寄せと同時に畝に散布した肥料に覆土することで、上記問題点を解消せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、チゼル(14)を挟んで前後に第1中耕ディスク(13)と第2中耕ディスク(15)を配置してなる除草作業機(9)を車体後部に昇降可能に装備してある作業車両において、作業車両の適所に設置された施肥装置(27)からの粒状肥料を畝(U)の作物列近傍に沿って散布する施肥ホース(28)を設けると共に、この施肥ホース(28)は前記第2中耕ディスク(15)の進行方向前側に配置してあることを特徴とする作業車両とする。
【0007】
作業車両の前進に伴い除草作業機(9)が作物の条間を進行すると、先行するゲージ輪(12)に後続して移動する第1中耕ディスク(13)によって中耕しながら左右方向への土寄せ作用が行われ、続いて、チゼル(14)の作用によって条間の土が掘り起こされ、そして、更に第2中耕ディスク(15)によって掘り起こされた土が左右方向に寄せられ、仕上げ培土がなされる。
【0008】
この除草作業と同時に施肥装置(27)からの粒状肥料が施肥ホース(28)を通じて畝上の作物列近傍に沿って散布される。そして、この散布された肥料は第2中耕ディスク(15)によって寄せられる培土により覆土される。
【0009】
従って、肥料が粒状であるにも拘わらず、畝間の溝底への転がりによる落ち込みや雨による流亡の発生がなく、肥効効果が高く維持される。
請求項2記載の本発明は、前記施肥ホース(28)は、チゼル(14)前側の第1中耕ディスク(13)の進行方向前側に配置してあることを特徴とする請求項1記載の作業車両とする。
【0010】
この施肥ホース(28)によって散布される肥料は、第1中耕ディスク(13)により寄せられる培土によって覆土される。
請求項3記載の本発明は、前記施肥ホース(28)は、肥料の排出口(29)を畝(U)の肩口に臨ませてあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両とする。
【0011】
肥料が畝の肩口に散布されるので、作物の根部全域にわたり肥効を得ることになり、作物の生育が効果的に促進される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、中耕ディスクの土寄せと同時に畝に散布した粒状肥料に覆土するので、肥料の畝間溝底への転がりによる落ち込みや雨による流亡の発生がなく、肥効効果を高めることができる。また、これにより、肥料の散布量を大幅に低減でき、生産コストの抑制を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、第1中耕ディスクによっても土寄せと同時に畝に散布した粒状肥料に覆土することができ、請求項1の発明効果と同等の効果を奏する。
請求項3記載の本発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果を奏するものでありながら、施肥ホースの肥料排出口を畝の肩口に臨ませることによって作物の根部全域にわたって肥効を得ることができ、作物の生育を効果的に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】除草作業機を備えたトラクタの側面図
【図2】同上平面図
【図3】除草作業機及び施肥装置を備えたトラクタ要部の側面図
【図4】除草作業機と施肥装置を備えた要部の側面図
【図5】同上要部の背面図
【図6】作業機取付ヒッチ部の昇降装置を示す要部の側面図
【図7】除草作業機と除草剤散布装置を備えたトラクタの側面図
【図8】同上平面図
【図9】トラクタ後部に備えた除草作業機平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は作業車両の一例としてトラクタを示し、車体1前部のボンネット2内部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5とに伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4,4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。また、取付ヒッチ部8は、除草作業機9を上昇位置から下方の接地作業状態に下げたり、接地作業状態から上方の非作業状態に上げたりすることができるように昇降シリンダ39の伸縮作動により昇降リンク38を介して昇降するように連動構成している。
【0016】
車体側後部の取付ヒッチ部8には、後記する除草作業機9を支持するための作業部側メインフレーム10が装着支持されていて、耕深調節ハンドル11の回動操作によって上下方向に昇降動し耕深調節が行えるようになっている。
【0017】
除草作業機9は、進行方向の前側から順に配置したゲージ輪12、第1中耕ディスク13、チゼル14、第2中耕ディスク15からなり、本例では3条の条間分の中耕を行いながら除草する構成としている。ゲージ輪12、第1中耕ディスク13及びチゼル14は、アンダーフレーム16によって支持され、第2中耕ディスク15は、前記アンダーフレーム16と一体構成のアッパーフレーム(平行フレーム)17によって支持されている。中央に位置するメインフレーム10と一体でこれより左右横方向に延びるツールバー18には、左右の除草作業機を支持する左右フレーム10L,10Rが装着支持されている。また、該ツールバー18からは支持アーム19が後方上方に向けて延設されている。支持アーム19の先端は、前記チゼル14の鉛直方向上方位置でアッパーフレーム17に連結された支持ロッド20に接続されている。支持ロッド20には、下方のチゼル14側に向けて加圧付勢する加重スプリング21が外嵌されている。
【0018】
また、前記メインフレーム10(左右フレーム10L,10R)とアッパーフレーム17との間には、各除草作業機10の重心位置G近くを吊り下げ状態に連結支持する平行リンク機構22が介装されている。除草作業機は、平行リンク機構により上下に平行移動しながら対地面の凹凸に対して滑らかに順応する。
【0019】
チゼル14を挟んで前側の第1中耕ディスク13と後側の第2中耕ディスク15との離間距離L1,L2を略同等としている。これにより、前後の両ディスクは共に土の反転量を同じにすることができ、作物への土寄せ量調整が行い易くなる。
【0020】
第1中耕ディスク13は、作物の条間を進行しながら左右一対のディスクによって条間の土を中耕しながら除草するもので、周面が丸型で平面視ハの字型に配設されて左右方向への土寄せが行えるように構成されている。又、第2中耕ディスク15は、第1中耕ディスクと同様に、作物の条間を進行しながら左右一対のディスクによって条間の土を中耕しながら除草するものであり、周面が凹凸のある花型で平面視ハの字型に配設され左右側への土寄せが行えるように構成されている。
【0021】
なお、前後のディスク13,15の外径を同一にしておくと、進行方向との角度を統一できるので、作業時の土寄せ量の調節が容易にできる。また、第2中耕ディスク15は、上下方向に伸縮調節可能な伸縮調節具23を介してアッパーフレーム17に連結支持させた構成としている。
【0022】
チゼル14は、アンダーフレーム16に固着された取付ベース24に取り付けられ、作物の条間を進行しながら左右複数のチゼルによって条間の土を掘り起こすようになっている。なお、前記チゼル14は、図8に示すように、左右のサイドチゼル14a,14bと中央前位のセンターチゼル14cからなるように配置構成されている。
【0023】
作業車両の運転席7の後側には、除草作業と同時に施肥作業を行う施肥タンク25や繰出しバルブの繰出しモータ26等からなる施肥装置27が装備されている。施肥装置27には、繰出しバルブから繰り出される粒状肥料を作物畝Uの肩口に沿って散布する施肥ホース28が設けられている。そして、この施肥ホース28は、図3に示す実施例では、前記第2中耕ディスク15の進行方向前側に配置されてあり、散布後の肥料が第2中耕ディスク15によって土寄せられる培土にて覆土されるようになっている。
【0024】
また、この施肥ホース28は、図4例で示ように、第1中耕ディスク13の進行方向前側に配置することによっても、散布後の肥料が第1中耕ディスクによる土寄せ作用によって覆土されるように配置構成するものであっても良い。
【0025】
更に、施肥ホース28は、肥料の排出口29が畝Uの肩口に臨むように配置することにより、作物の根部全域にわたって肥効効果が得られるように構成されている。
図5に示す実施例では、施肥ホース28を途中部から左右二股に分岐28a,28bして左右の畝U,Uの肩口に散布するよう配置構成している。
【0026】
平行に昇降する平行フレーム17に前側からゲージ輪12、第1中耕ディスク13、チゼル14、第2中耕ディスク15の順に配置して設けた除草作業機において、前記ゲージ輪12には、これの回転速度を検出するゲージ輪回転センサ32を設け、ゲージ輪の回転数の増減に応じて繰出しバルブによる肥料の繰出し量を制御するように構成している。
【0027】
この繰出し量制御は、ゲージ輪回転センサ32の回転数検出結果に基づき繰出しモータ26によって制御する。本機側に車速センサを設ける一般的な仕様も考えられるが、本機側の車輪が磨耗している場合は、車速と散布粒の繰出し量が合わず、散布過多になるなどの不具合が発生する。ゲージ輪による場合は、本機旋回時、リフトアップするので、ゲージ輪の磨耗が小さく、長時間、安定車速を検出でき、車速に応じた散布量が精度良く行える。
【0028】
また、ゲージ輪12の回転センサ32と、本機側ミッションの走行カウンタギヤの回転数を検知して車速を求める車速センサ33を設け、通常は、ゲージ輪の回転速度に応じて散布制御し、ゲージ輪からの回転パルスが一時的に停止した時は、本機側の車速センサによる検出に自動的に切り替えるように構成することで、ゲージ輪に不具合があっても、直ちに車速散布制御に切り替えて対応することができる。つまり、作業中、圃場面が硬くなると、前後の中耕ディスクが浮き上がり、ゲージ輪が空転する場合がある。このようになると、ゲージ輪からの正常な回転速をマイコンが検知不能になって、繰出しモータがストップし、肥料の繰り出しが停止してしまう不具合が発生するが、本例ではこれを解消することができる。
【0029】
車両旋回時には、除草作業機を非作業状態位置にリフトアップするが、その時、慣性でゲージ輪が回り、回転パルスを発するので、肥料の繰り出しが止まらず、散布肥料が無駄になる。そこで、除草作業機がリフトした時は、繰出しモータを自動的に停止させるように構成することができる。そして、旋回終了後、再度、条間に本機が侵入し、作業機を降下した時、ゲージ輪の回転検出を開始するように構成することで、肥料の誤作動繰り出しを防止することができる。
【0030】
本機側に車速センサ33を、ゲージ輪12側に回転センサ32を設けた構成において、それぞれの検出値がある規定以上の割合、ずれが生じた場合は、マイコンにエラー表示させる構成としている。従って、車速連動の散布制御においては、自動制御の信頼性が高まることになる。
【0031】
作業部側メインフレーム10を基準にして、上下に(平行リンク機構22を介して)平行移動するフレーム17に対し前側からゲージ輪12、第1中耕ディスク13、チゼル14、第2中耕ディスク15の順に配置して設けた除草作業機において、平行リンク機構22の角度を検出するポテンショメータ34を設け、昇降リンク38及び作業部側メインフレーム10と第1・第2中耕ディスク13,15の高さ関係が常に一定になるように昇降リンク38の昇降制御が行えるように構成する。従来の昇降リンクの調節は、ポジションレバーにてその都度オペレータが行っている。
【0032】
したがって、凹凸のある圃場では昇降リンクと中耕ディスクとの高さ関係が常に変動するため、加重スプリング21の荷重も変動し、中耕ディスクの地面への押圧力が変化し、作物への土寄せ量が不安定で、土寄せ精度が安定しない欠点があった。本例によれば、圃場の凹凸が存在しても本機側昇降リンクの高さ制御を行うことで、中耕ディスクの圃場面側への荷重が常に一定となるので、土寄せ量が同じでありながら作物への土寄せ精度もより向上する。
【0033】
また、前記平行リンク機構22が下方へ作動し、昇降制御域を超えた場合は、除草作業機のリフトアップと判定し、施肥装置27の施肥繰り出しを停止(繰出しモータ26停止)する制御に構成することで、枕地旋回時には、いちいちポジションレバーを操作して作業機をリフトする必要がなく、運転操作が楽であり、旋回時の施肥装置の停止忘れがなく、肥料の無駄をなくすことができる。
【0034】
また、旋回終了後、作業機を下降させ、本機側昇降リンクの制御範囲域に入った場合は、速やかに施肥装置の駆動が開始されるように構成することで、施肥開始の操作が不要で、散布開始のスイッチ操作忘れをなくすことができる。
【0035】
前記昇降制御を備えた除草作業機において、平行リンク機構22部の角度をポテンショメータ34にて検出する制御で、ゲージ輪12、第1中耕ディスク13、チゼル14、第2中耕ディスク15が圃場面の凹凸を検出するセンサとするよう構成することで、作業機全体で圃場面の凹凸を検出するので、昇降制御が正確に行える。つまり、細かな凹凸には反応しないので、土寄せのムラが生じない。また、作業機の中耕除草の機能部がそのままセンサとなるので、昇降制御のタイミングがタイムリーで高さ制御が良好に行える。
【0036】
図8に示す実施例では、第2中耕ディスク15は、左右ディスクのハの字角(後方広がり角)θ1を第1中耕ディスク13のハの字角θ2よりも大きくしている。これによって、左右の畝側への土寄せ量が大きくなり、除草効果を高めることができる。
【0037】
また、図7及び図8に示す実施例では、除草作業機9の後方に散布ノズル40を備えた除草剤散布装置を設けることにより、散布ノズルによる除草剤の散布と、ディスクによる除草及び土寄せ作業の複数作業が同時に行えるように構成している。図例における散布ノズル40は、ツールバー18から後方に突設するノズル支持フレーム41によって装着支持されている。
【0038】
図9に示す実施例について説明すると、チゼル14の前方に配した第1中耕ディスク13において、左右のディスク13a,13bを前後に位置をずらせて配置し、ディスク間の隙間が生じないように互いにセンター側に寄せた状態に配置(平面視人文字型)した構成としている。これによれば、左右のディスク間に隙間がないので、畝間(溝底)センター付近の除草処理を行うことができ、従来のセンターチゼルを廃止することができる。なお、上記のように第1中耕ディスク13の左右ディスクを人文字型配置とした場合には、チゼル後方の第2中耕ディスク15は通常のハの字型配置とすることが望ましい。これによると作業機の横ずれを防止でき、畝の肩口への土寄せ精度にバラツキが生じない。
【0039】
また、中央に位置する除草作業機9Cの第1中耕ディスク13は、通常のハの字型配置とし、左右両サイドに位置する除草作業機9L,9Rの第1中耕ディスクのみ人文字型配置とすることによって作業機の直進性を安定させるようにしている。
【0040】
図9の構成例において、前記除草作業機9は、車体後部の中央部において前後方向に架設されたローリング軸30周りに左右ローリング自在に懸架され、水平シリンダ31を介してローリング制御するように構成されている。車体が左右に傾いても除草作業機はその影響を受けないので、作業姿勢が安定し追従性が向上する。
【0041】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0042】
1 車体
9 除草作業機
10 作業部側メインフレーム
12 ゲージ輪
13 第1中耕ディスク
14 チゼル
15 第2中耕ディスク
27 施肥装置
28 施肥ホース
29 肥料排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チゼル(14)を挟んで前後に第1中耕ディスク(13)と第2中耕ディスク(15)を配置してなる除草作業機(9)を車体後部に昇降可能に装備してある作業車両において、作業車両の適所に設置された施肥装置(27)からの粒状肥料を畝(U)の作物列近傍に沿って散布する施肥ホース(28)を設けると共に、この施肥ホース(28)は前記第2中耕ディスク(15)の進行方向前側に配置してあることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記施肥ホース(28)は、チゼル(14)前側の第1中耕ディスク(13)の進行方向前側に配置してあることを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記施肥ホース(28)は、肥料の排出口(29)を畝(U)の肩口に臨ませてあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−10611(P2012−10611A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147882(P2010−147882)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】