説明

保護膜形成用材料及びホトレジストパターン形成方法

【課題】液浸露光プロセスにおいて、形成するホトレジスト膜の特性に関係なく利用できる保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、(a)アルカリ可溶性ポリマー、及び(b)フッ素系溶剤を含有することを特徴とする保護膜形成用材料。本発明の保護膜形成用材料を用いてホトレジスト膜上に保護膜を形成した場合、保護膜形成用材料中に含まれる成分が各種ホトレジスト膜を溶解することがない。このため、ホトレジスト膜の種類に関係なく、液浸露光プロセスを用いて微細で良好なホトレジストパターンを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造には、リソグラフィー法が多用されているが、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるホトレジストパターンの微細化が要求されている。
【0003】
現在では、リソグラフィー法により、例えば、最先端の領域では、線幅が90nm程度の微細なホトレジストパターンを形成することが可能となってきているが、今後は更に微細なパターンを形成することが要求される。
【0004】
しかしながら、光源波長の短波長化には新たに高額な露光装置が必要になる。また、高NA化では、解像度と焦点深度幅とがトレードオフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度が低下するという問題がある。
【0005】
以上の問題を解決するためのリソグラフィー技術として、液浸露光法が報告されている(例えば、非特許文献1から3)。液浸露光法においては、露光時に、レンズと基板上のホトレジスト膜との間に所定厚さの純水、又はフッ素系不活性液体等の液浸露光用液体を介在させる。この方法では、露光光路空間に存在していた空気や窒素ガス等の不活性ガスを屈折率(n)のより大きい液体で置換するため、同じ露光波長の光源を用いても、解像度の高いホトレジストパターンを形成できると共に、露光時の焦点深度幅の低下を防ぐこともできる。
【0006】
しかしながら、上述した液浸露光プロセスを用いた場合、ホトレジスト膜の上層に液浸露光用液体を介在させることから、液浸露光用液体による液浸露光中のホトレジスト膜の変質や、ホトレジスト膜からの成分溶出による液浸露光用液体の変質が懸念される。このため、ホトレジスト膜上にフッ素含有樹脂を用いた保護膜を形成し、ホトレジスト膜の変質や液浸露光用液体の変質を防止する技術が利用されている(例えば、特許文献1)。
【非特許文献1】Journal of Vacuum Science & Technology B、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁
【非特許文献2】Journal of Vacuum Science & Technology B、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁
【非特許文献3】Proceedings of SPIE、2002年、第4691巻、459−465頁
【特許文献1】特開2005−264131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液浸露光プロセスにおいて用いられる保護膜としては、アルカリ溶液によるホトレジスト膜の現像時に保護膜を同時に除去可能なアルカリ現像型の保護膜が知られている。このアルカリ現像型の保護膜を形成するための保護膜形成材料は、従来ポジ型のホトレジスト膜上に保護膜を形成するためのものが一般的であった。ここで、ポジ型のホトレジスト膜用の保護膜形成用材料を用いて、ネガ型のホトレジスト膜や2層レジスト法において用いられるホトレジスト膜上に保護膜を形成した場合、保護膜形成材料中に含まれる溶剤が上記ホトレジスト膜を溶解してしまうため、露光後に現像してもホトレジストパターンを得られないことがあった。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、液浸露光プロセスにおいて、形成するホトレジスト膜の特性に関係なく利用できる保護膜形成用材料、及びこの保護膜形成用材料を用いたホトレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、アルカリ可溶性ポリマー及びフッ素系溶剤を含有する保護膜形成用材料を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
本発明の第一の態様は、ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、(a)アルカリ可溶性ポリマー、及び(b)フッ素系溶剤を含有することを特徴とする保護膜形成用材料である。
【0011】
本発明の第二の態様は、液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設ける工程と、このホトレジスト膜上に本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、前記基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光する工程と、アルカリ水溶液により前記保護膜を除去して、露光後の前記ホトレジスト膜を現像する工程と、を有するホトレジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保護膜形成用材料を用いてホトレジスト膜上に保護膜を形成した場合、形成されたホトレジスト膜がネガ型のホトレジスト膜や、2層レジスト法において用いられるシリコン含有ポリマーを使用したホトレジスト膜であったとしても、保護膜形成用材料中に含まれる成分がホトレジスト膜を溶解することがない。このため、ホトレジスト膜の種類に関係なく、液浸露光プロセスを用いて微細で良好なホトレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<保護膜形成用材料>
本発明の保護膜形成用材料は、(a)アルカリ可溶性ポリマーと、(b)フッ素系溶剤とを含有する。また、本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて(c)架橋剤と、(d)酸性化合物と、(e)酸発生補助剤と、(f)界面活性剤とを含む。
【0015】
[(a)アルカリ可溶性ポリマー]
本発明の保護膜形成用材料に用いることができるアルカリ可溶性ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、保護膜形成用材料に用いられるものとして従来公知のアルカリ可溶性ポリマーを用いることができる。そのようなアルカリ可溶性ポリマーとしては、アルカリ可溶性基を有する構成単位を有するものを用いることが好ましく、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位と、アルカリ難溶性基を有する繰り返し単位とを有するものを用いることが更に好ましい。
【0016】
このようなアルカリ可溶性ポリマーの具体例としては、例えば、以下に示す第1の態様から第8の態様において表されるアルカリ可溶性ポリマーを挙げることができる。
【0017】
(第1の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第1の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも下記一般式(a−1)により表される構成単位を有する。ここで、下記一般式(a−1)で表される構成単位が、アルカリ可溶性基を有する構成単位である。
【0018】
【化1】

【0019】
一般式(a−1)において、Rは水素原子、又は炭素数1以上6以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基であり、Rは炭素数1以上5以下のアルキレン鎖であり、Rは炭素数1以上5以下のアルキル基又はフルオロアルキル基であり、Zは炭素数1若しくは2のアルキレン鎖、又は酸素原子であり、nは0以上3以下の整数である。
【0020】
特に、Rとして具体的には、水素原子のほかに、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、及びtert−ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;並びにシクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。これらアルキル基は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。これらの中でも、Rが水素原子であることが最も好ましいが、特に撥水性を向上させたい場合には、Rは水素原子全部がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であることが好ましく、その場合、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0021】
また、Rとして具体的には、メチレン鎖、エチレン鎖、n−プロピレン鎖、n−ブチレン鎖、及びn−ペンチレン鎖等の直鎖状のアルキレン鎖;1−メチルプロピレン鎖及び2−メチルプロピレン鎖等の分岐鎖状のアルキレン鎖等を挙げることができる。
【0022】
また、Rとして具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ペンチル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、及びtert−ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基等の環状のアルキル基等を挙げることができる。これらアルキル基は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよく、撥水性向上の観点からは水素原子の全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rとしては、特にトリフルオロメチル基が好ましい。
【0023】
更に、上記一般式(a−1)において、Zは好ましくはメチレン鎖であり、nは好ましくは0又は1である。
【0024】
第1の態様においては、一般式(a−1)で表される構成単位と併せて、後述する一般式(a−10)で表される構成単位を用いることができる。
【0025】
本発明においては、アルカリ可溶性ポリマーとして、第1の態様のアルカリ可溶性ポリマーを用いることが特に好ましい。第1の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、後述するフッ素系溶剤への溶解性が良好であるため、保護膜形成用材料を均質なものとすることができると共に、保護膜形成用材料の塗布性を向上させることができる。
【0026】
(第2の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第2の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも下記一般式(a−2)で表される構成単位を有する。
【0027】
【化2】

【0028】
上記一般式(a−2)中、R、Z、及びnは第1の態様におけるR、Z、及びn同様であり、Rは炭素数1以上6以下のアルキレン鎖又はフルオロアルキレン鎖であり、Rは炭素数1以上15以下の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基又はフルオロアルキル基(但し、アルキル基の一部がエーテル結合を介してもよく、更にはアルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい)であり、Zは炭素数1又は2のアルキレン鎖又は酸素原子である。
【0029】
また、Rとして具体的には、メチレン鎖、エチレン鎖、n−プロピレン鎖、n−ブチレン鎖、n−ペンチレン鎖、及びn−ヘキシレン鎖等の直鎖状のアルキレン鎖;1−メチルプロピレン鎖及び2−メチルプロピレン鎖等の分岐鎖状のアルキレン鎖等を挙げることができる。これらアルキレン鎖の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0030】
また、Rとして具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、及びn−ペンタデシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、及びtert−ブチル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状のアルキル基等を挙げることができる。これらアルキル基は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。また、アルキル基の一部がエーテル結合を介してもよく、更にはアルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい。
【0031】
第2の態様のアルカリ可溶性ポリマーにおいては、上記一般式(a−2)で表される構成単位に加え、下記一般式(a−3)、(a−4)、及び(a−5)で表される構成単位の中から選ばれる少なくとも1種を構成単位として有していてもよい。
【0032】
【化3】

【0033】
上記一般式(a−3)、(a−4)、及び(a−5)中、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数0以上6以下のアルキレン鎖又はフルオロアルキレン鎖であり、R及びR10はそれぞれ独立に炭素数1以上15以下の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基又はフルオロアルキル基(但し、アルキル基の一部がエーテル結合を介してもよく、更にはアルキル基又はフルオロアルキル基の水素原子又はフッ素原子の一部が水酸基により置換されていてもよい)であり、R、Z、及びnは、第1の態様におけるR、Z、及びnと同様である。
【0034】
(第3の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第3の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも、フッ素原子又はフルオロアルキル基、及びアルコール性水酸基又はオキシアルキル基を共に有する脂肪族環式化合物から誘導されるアルカリ可溶性の構成単位を有する。
【0035】
すなわち、上記構成単位は、フッ素原子又はフルオロアルキル基、及びアルコール性水酸基又はアルキルオキシ基が、脂肪族環上にそれぞれ結合し、当該脂肪族環が主鎖を構成しているものである。
【0036】
上記フッ素原子又はフルオロアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、及びノナフルオロブチル基等を挙げることができるが、工業的には、フッ素原子やトリフルオロメチル基が好ましい。また、アルコール性水酸基又はアルキルオキシ基としては、具体的には、アルコール性水酸基、又は炭素数1以上15以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキルオキシ基若しくはアルキルオキシアルキル基である。
【0037】
炭素数1以上15以下のアルキルオキシ基としては、具体的には、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基等を挙げることができ、炭素数1以上15以下のアルキルオキシアルキル基としては、メチルオキシメチル基、エチルオキシメチル基、プロピルオキシメチル基、及びブチルオキシメチル基等が挙げることができる。
【0038】
このような構成単位を有するポリマーは、水酸基とフッ素原子とを有するジエン化合物の環化重合により形成される。ジエン化合物としては、透明性、耐ドライエッチング性に優れる5員環又は6員環を有する重合体を形成しやすいヘプタジエンであることが好ましく、更には、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−4−トリフルオロメチル−4−ヒドロキシ−1,6−ヘプタジエン(CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH)であることが工業上最も好ましい。
【0039】
以下に、上記ポリマーが有する構成単位の具体例を示す。
【0040】
【化4】

【0041】
上記一般式(a−7)において、R11は水素原子、又は炭素数1以上15以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキルオキシ基、若しくはアルキルオキシアルキル基である。
【0042】
(第4の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第4の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも、下記一般式(a−8)及び(a−9)で表される構成単位を有する。
【0043】
【化5】

【0044】
上記一般式(a−8)及び(a−9)において、R12は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基であり、R13は炭素数1以上5以下の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基又はフルオロアルキル基であり、これらR12及びR13の少なくともいずれかがフッ素原子を有する基である。R14は水素原子又はメチル基である。
【0045】
また、第4の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、上記一般式(a−8)及び(a−9)で表される構成単位と、下記一般式(a−10)で表される構成単位との共重合体、並びに/又は上記一般式(a−8)及び(a−9)で表される構成単位を有する共重合体と、下記一般式(a−10)で表される構成単位を有する重合体の混合ポリマーであってもよい。このような共重合体及び/又は混合ポリマーとすることにより、更にアルカリ可溶性を向上させることができる。
【0046】
【化6】

【0047】
上記式(a−10)において、R15は、水素原子、又は炭素数1以上5以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基である。
【0048】
(第5の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第5の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも、下記一般式(a−11)で表される構成単位を有する。
【0049】
【化7】

【0050】
上記式(a−11)において、Cはアルキレン鎖又はフルオロアルキレン鎖であり、R16は炭素数1以上5以下の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のフルオロアルキル基であり、qは0以上3以下の整数である。なお、上記一般式(a−11)中、環骨格を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい。
【0051】
(第6の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第6の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも下記一般式(a−12)で表される構成単位を有する。
【0052】
【化8】

【0053】
上記一般式(a−12)において、R17は水素原子又はメチル基であり、R18は炭素数1以上5以下のアルキレン鎖であり、R19は水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された炭素数1以上10以下のフルオロアルキレン鎖である。
【0054】
(第7の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第7の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、少なくとも下記一般式(a−13)で表される構成単位を有する。
【0055】
【化9】

【0056】
上記一般式(a−13)において、Cは第5の態様におけるCと同様であり、R20は水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された炭素数1以上5以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のフルオロアルキル基であり、R21は水素原子、又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子に置換されている炭素数1以上5以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のフルオロアルキル基であり、qは0以上3以下の整数である。なお、上記一般式(a−13)において、環骨格を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい。
【0057】
(第8の態様のアルカリ可溶性ポリマー)
第8の態様のアルカリ可溶性ポリマーは、鎖式パーフルオロアルキルポリエーテル及び環式パーフルオロアルキルポリエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種である。これらのパーフルオロアルキルポリエーテルは、単独で用いることが好ましいが、他のフッ素樹脂と併用して用いてもよい。他のフッ素樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を挙げることができる。
【0058】
上述したアルカリ可溶性ポリマーの市販品としては、鎖式パーフルオロアルキルポリエーテルである「デムナムS−20」、「デムナムS−65」、「デムナムS−100」、及び「デムナムS−200」(いずれも、ダイキン工業社製)、環式パーフルオロアルキルポリエーテルであるサイトップシリーズ(旭硝子社製)、並びに「テフロン(登録商標)−AF1600」及び「テフロン(登録商標)−AF2400」(いずれも、デュポン社製)等を挙げることができる。
【0059】
上記第1の態様から第8の態様として上述したアルカリ可溶性ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の任意のモノマーと共重合し、又は他の任意の樹脂と混合して共重合体又は混合ポリマーとしてもよい。
【0060】
このようなアルカリ可溶性ポリマーは、公知の方法によって合成することができる。また、このポリマーのGPCによるポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、2000以上80000以下であり、3000以上50000以下であることが好ましい。
【0061】
アルカリ可溶性ポリマーの配合量は、保護膜形成用材料の全体量に対して0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以上10質量%以下とすることが更に好ましい。
【0062】
[(b)フッ素系溶剤]
本発明の保護膜形成用材料において用いられるフッ素系溶剤としては、芳香族系炭化水素基含有化合物を用いることができる。また、本発明においては、芳香族系炭化水素基含有化合物のほかにも、フッ素化エーテル系溶剤を用いてもよい。このような芳香族系炭化水素基含有化合物やフッ素化エーテル系溶剤は、各種ホトレジスト膜を構成する構成材料を溶解させることがない。このため、本発明の保護膜形成用材料を各種ホトレジスト膜上に塗布したとしても、ホトレジスト膜に対してダメージを与えることが無く、その後の工程において良好なホトレジストパターンを形成することができる。
【0063】
(芳香族系炭化水素基含有化合物)
芳香族系炭化水素基含有化合物としては、下記一般式(b−1)で表される化合物を用いることができる。
【化10】

【0064】
上記一般式(b−1)において、Arは芳香族系炭化水素基であり、Rはフッ素原子又は水素原子の一部若しくは全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基であり、nは1以上10以下の整数である。
【0065】
上記芳香族炭化水素基としては、特に限定されるものではなく、フェニル基、ナフタレニル基、及びアントラセニル基等を挙げることができる。
【0066】
本発明においては、上記一般式(b−1)で表される芳香族系炭化水素基含有化合物としては、特に下記一般式(b−1−1)で表される化合物が好ましい。
【化11】

【0067】
上記一般式(b−1−1)において、Rはフッ素原子又は水素原子の一部若しくは全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基を表し、mは1以上6以下の整数を表す。
【0068】
一般式(b−1−1)において、Rで表される上記フッ素化アルキル基としては、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基であることが好ましく、特に炭素原子数が1以上3以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、及びヘプタフルオロプロピル基であり、トリフルオロメチル基であることが更に好ましい。特に、Rで表される上記フッ素化アルキル基がトリフルオロメチル基の場合には、mが2であることが特に好ましい。
【0069】
具体的には、一般式(b−1−1)で表される芳香族系炭化水素基含有化合物として、下記式(b−1−1’)で表されるキシレンヘキサフルオライドを特に好ましく用いることができる。
【化12】

【0070】
(フッ素化エーテル系溶剤)
本発明においては、上記芳香族系炭化水素基含有化合物に代えて、或いは上記芳香族系炭化水素基含有化合物と併用してフッ素化エーテル系溶剤を用いることができる。
【0071】
フッ素化エーテル系溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(b−2)で表されるフッ素化エーテル系溶剤を用いることができる。
【0072】
【化13】

【0073】
ここで、一般式(b−2)において、R22及びR23はそれぞれ独立に、炭素数1以上8以下の直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基であり、R22及びR23の少なくとも一方は、フッ素化アルキル基である。
【0074】
このようなフッ素化エーテル系溶剤としては、特に、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタンが好ましい。
【0075】
芳香族系炭化水素基含有化合物と、フッ素化エーテル系溶剤とを併用して用いる場合、フッ素化エーテル系溶剤の含有量は、フッ素系溶剤全体に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。フッ素化エーテル系溶剤の含有量を上記範囲内のものとすることにより、レジストマッチングを向上させることができる。
【0076】
[(c)架橋剤]
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、架橋剤を含有していてもよい。この架橋剤としては、水素原子をヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換したアミノ基を有する含窒素化合物、並びに水素原子をヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換したイミノ基を有する含窒素化合物、から選ばれる少なくとも1種の含窒素化合物を用いることができる。
【0077】
これら含窒素化合物としては、例えばアミノ基の水素原子がメチロール基及び/又はアルコシキメチル基で置換された、メラミン系誘導体、尿素系誘導体、グアナミン系誘導体、アセトグアナミン系誘導体、ベンゾグアナミン系誘導体、及びスクシニルアミド系誘導体や、イミノ基の水素原子が置換されたグリコールウリル系誘導体及びエチレン尿素系誘導体等が挙げられる。
【0078】
これらの含窒素化合物は、例えば、上述の水素原子がヒドロキシアルキル基及びアルコキシアルキル基で置換された含窒素化合物を沸騰水中においてホルマリンと反応させてメチロール化することにより、或いはこれに更に低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等を反応させてアルコキシル化することにより得られる。中でも好適な架橋剤は、テトラブトキシメチル化グリコールウリルである。
【0079】
更に、架橋剤としては、水酸基及びアルキルオキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換された炭化水素化合物と、モノヒドロキシモノカルボン酸化合物と、の縮合反応物も好適に用いることができる。上記モノヒドロキシモノカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基とが、同一の炭素原子又は隣接する2つの炭素原子のそれぞれに結合しているものが好ましい。
【0080】
架橋剤を配合する場合、その配合量は、アルカリ可溶性ポリマーの配合量に対して、0.5質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
【0081】
[(d)酸性化合物]
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、酸性化合物を含有していてもよい。この酸性化合物を添加することにより、ホトレジストパターンの形状改善の効果が得られる。更に、液浸露光を行った後現像する前において、ホトレジスト膜が微量のアミンを含有する雰囲気中に曝された場合であっても(露光後の引き置き)、酸性化合物を含有する保護膜の介在によってアミンによる悪影響を効果的に抑制することができる。これにより、その後の現像によって得られるホトレジストパターンの寸法に大きな狂いを生じることを未然に防止することができる。
【0082】
このような酸性化合物としては、例えば下記一般式(d−1)、(d−2)、(d−3)、及び(d−4)から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0083】
【化14】

【0084】
上記一般式(d−1)、(d−2)、(d−3)、及び(d−4)中、sは1以上5以下の整数であり、tは10以上15以下の整数であり、uは2又は3であり、vはそれぞれ2又は3であり、R24は炭素数1以上15以下のアルキル基又はフルオロアルキル基(水素原子又はフッ素原子の一部は、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、若しくはアミノ基により置換されていてもよい)である。
【0085】
これらの酸性化合物は、いずれも重要新規利用規則(SNUR)の対象となっておらず、人体に対する悪影響がないとされている。
【0086】
上記一般式(d−1)で表される酸性化合物としては、具体的には、(CSONH、及び(CSONH等が好ましく、上記一般式(d−2)で表される酸性化合物としては、具体的には、C1021SOCOOH等が好ましい。
【0087】
また、上記一般式(d−3)及び(d−4)で表される酸性化合物としては、具体的には、それぞれ下記式(d−3−1)及び(d−4−1)で表される化合物が好ましい。
【0088】
【化15】

【0089】
本発明の保護膜形成用材料に酸性化合物を配合する場合、その配合量は、保護膜形成用材料の全体量に対して0.1質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
【0090】
[(e)酸の存在下で酸を発生する酸発生補助剤]
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて、酸発生補助剤を配合してもよい。この酸発生補助剤とは、単独で酸を発生する機能はないものの、酸の存在化で酸を発生させる化合物をいう。これにより、ホトレジスト膜中の酸発生剤から発生した酸が保護膜に拡散した場合であっても、拡散した酸により保護膜中の酸発生補助剤から酸が発生し、保護膜からホトレジスト膜に拡散して酸の不足分を補填し、ホトレジストパターンの解像性の劣化や、焦点深度幅の低下を抑制することが可能となる。これにより、より微細なホトレジストパターン形成が可能となる。
【0091】
このような酸発生補助剤は、分子内にカルボニル基及びスルフォニル基を共に有する脂環式炭化水素化合物であることが好ましい。
【0092】
このような酸発生補助剤は、具体的には、下記一般式(e−1)及び(e−2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0093】
【化16】

【0094】
上記一般式(e−1)及び(e−2)において、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1以上10以下の直鎖状若しくは分枝鎖状のアルキル基であり、Xはスルフォニル基を有する求電子基である。
【0095】
ここで、「炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、及びイソデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0096】
また、Xは、「スルフォニル基を有する求電子基」である。ここで、「スルフォニル基を有する求電子基」は、−O−SO−Yであることが好ましい。Yは、炭素数1以上5以下のアルキル基又は炭素数1以上10以下のハロゲン化アルキル基である。中でも、Yがフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0097】
上記一般式(e−1)及び(e−2)で表される化合物としては、具体的には、下記式(e−1−1)から(e−1−4)及び(e−2−1)から(e−2−4)で表される化合物が挙げられる。
【0098】
【化17】

【0099】
保護膜形成用材料が酸発生補助剤を含有する場合、その含有量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下とすることが好ましく、1質量部以上20質量部以下とすることが更に好ましい。酸発生補助剤の含有量を上記範囲内のものとすることにより、塗布むらが発生することなく、ホトレジスト膜から溶出した酸に対して効果的に酸を発生させ、ホトレジストパターン形状を改善することが可能となる。
【0100】
[(f)界面活性剤]
本発明の保護膜形成用材料は、必要に応じて界面活性剤を配合してもよい。この界面活性剤としては、「XR−104」(商品名、大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができるが、これに限定されるものでない。界面活性剤を配合することにより、塗膜性や溶出物の抑制能をより一層向上させることができる。
【0101】
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、アルカリ可溶性ポリマー100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。
【0102】
[保護膜形成用材料の用途]
本発明の保護膜形成用材料は、特に液浸露光プロセスにおいて、液浸露光用液体による液浸露光中のホトレジスト膜の変質や、ホトレジスト膜からの成分溶出による液浸露光用液体の変質を防止するため、ホトレジスト膜上に保護膜を形成するために用いられるものである。特に、本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成した場合、保護膜形成用材料に含まれる溶媒が、ホトレジスト膜の構成材料を溶解することがなく、その後の工程において、良好なホトレジストパターンを得ることができる。
【0103】
<ホトレジストパターン形成方法>
本発明のホトレジストパターン形成方法は、液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、基板上にホトレジスト膜を設ける工程(工程(1))と、このホトレジスト膜上に本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程(工程(2))と、基板の少なくとも保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び保護膜を介して、ホトレジスト膜を選択的に露光する工程(工程(3))と、アルカリ水溶液により保護膜を除去して、露光後のホトレジスト膜を現像する工程(工程(4))と、を有する。
【0104】
[工程(1)]
まず、基板上にホトレジスト膜を設ける。具体的には、シリコンウエハ等の基板に、公知のホトレジスト組成物を、スピンナー等の公知の装置を用いて塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行ってホトレジスト膜を形成する。なお、基板上に有機系又は無機系の反射防止膜(下層反射防止膜)を設けてから、ホトレジスト膜を形成してもよい。
【0105】
ホトレジスト組成物は、特に限定されるものでなく、ネガ型及びポジ型ホトレジスト組成物、並びに2層レジスト法において使用され、シリコン含有ポリマーを含有するホトレジスト組成物を含め、アルカリ水溶液で現像可能なホトレジスト膜を形成するものとして従来公知のホトレジスト組成物を任意に使用できる。特に、本発明においては、ネガ型ホトレジスト組成物や2層レジスト法において用いられるホトレジスト組成物を用いた場合であっても、現像後に良好なホトレジストパターンを形成することができる。
【0106】
[工程(2)]
次に、ホトレジスト膜上に本発明の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する。具体的には、ホトレジスト膜の表面に、本発明の保護膜形成用材料を、ホトレジスト組成物を塗布する際の方法と同様の方法で均一に塗布し、ベークして硬化させることにより保護膜を形成する。
【0107】
[工程(3)]
次に、基板の少なくとも保護膜上に液浸露光用液体を配置する。液浸露光用液体は、空気の屈折率よりも大きく、かつ使用されるホトレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する液体であれば、特に限定されるものでない。このような液浸露光用液体としては、水(純水及び脱イオン水)並びにフッ素系不活性液体等を挙げることができるが、近い将来に開発が見込まれる高屈折率特性を有する液浸露光用液体も使用可能である。フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、及びC等のフッ素系化合物を主成分とする液体が挙げられる。これらのうち、コスト、安全性、環境問題、及び汎用性の観点からは、水(純水、脱イオン水)を用いることが好ましいが、157nmの波長の露光光(例えばFエキシマレーザー等)を用いる場合は、露光光の吸収が少ないという観点から、フッ素系溶剤を用いることが好ましい。
【0108】
次に、液浸露光用液体及び保護膜を介して、ホトレジスト膜を選択的に露光する。このとき、ホトレジスト膜は、保護膜によって液浸露光用液体から遮断されているため、液浸露光用液体の侵襲を受けて膨潤等の変質を被ることや、逆に液浸露光用液体中に成分を溶出させて液浸露光用液体自体の屈折率等の光学的特性が変化してしまうことを防止できる。
【0109】
露光に用いる波長は特に限定されるものではなく、ホトレジスト膜の特性によって適宜選択することができる。例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、及び軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0110】
液浸状態での露光が完了したら、基板を液浸露光用液体から取り出し、基板上から液体を除去する。なお、露光後のホトレジスト膜上に保護膜を積層したまま、ホトレジスト膜に対してポストベーク(PEB処理)を行うことが好ましい。
【0111】
[工程(4)]
次に、アルカリ水溶液からなる現像液(アルカリ現像液)により保護膜を除去して、露光後のホトレジスト膜を現像する。アルカリ現像液は公知の現像液を適宜選択して用いることができる。このアルカリ現像処理により、保護膜はホトレジスト膜の可溶部分と同時に溶解除去される。
【0112】
最後に、純水等を用いてリンスを行う。このリンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下又は噴霧して、基板上の現像液、及びこの現像液によって溶解した保護膜成分とホトレジスト組成物とを洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、ホトレジスト膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、ホトレジストパターンを得ることができる。
【実施例】
【0113】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0114】
<実施例1>
下記式(a−14)で表されるポリマー(Mw=8000、Mw/Mn=1.4)を下記式(b−1−1’)で表される溶剤(m−キシレンヘキサフルオライド)に溶解し、2質量%濃度の保護膜形成用材料を調製した。
【化18】

【化19】

【0115】
<比較例1>
実施例1において、溶剤としてm−キシレンヘキサフルオライドの代わりに4−メチル−2−ペンタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、2質量%濃度の保護膜形成用材料の溶液を調製した。
【0116】
<評価>
[ネガ型のホトレジスト膜の形成]
直径20cmのシリコンウエハ上に、反射防止膜形成用組成物「ARC−46」(Brewer社製)をスピン塗布し、215℃で60秒間加熱して膜厚31nmの反射防止膜を形成した。次いで、ネガ型ホトレジスト組成物「TArF−N027」(東京応化工業社製)をスピン塗布し、80℃で60秒間加熱して膜厚160nmのホトレジスト膜を形成した。
【0117】
[2層レジスト法により用いられるホトジレスト膜の形成]
直径20cmのシリコンウエハ上に、反射防止膜形成用組成物「TBLM−730」(東京応化工業社製)をスピン塗布し、250℃で60秒間加熱して膜厚250nmの反射防止膜を形成した。次いで、2層レジスト法用のシリコン含有レジスト組成物「TArF−SC152」(東京応化工業社製)をスピン塗布し、100℃で60秒間加熱して膜厚100nmのホトレジスト膜を形成した。
【0118】
[保護膜の形成]
ネガ型のホトレジスト膜を形成したレジスト積層体、又は2層レジスト法により用いられるホトレジスト膜を形成したレジスト積層体に対し、実施例1及び比較例1において調製した保護膜形成用組成物を、スピン塗布し、70℃で60秒間加熱して膜厚90nmの保護膜を形成した。
【0119】
次いで、露光装置「NSR−S302A」(ニコン株式会社製)を用いて120nmの1:1ライン・アンド・スペースパターンで選択的に露光した。その後、100℃で60秒間の加熱処理(PEB)を行い、現像液として2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて60秒間現像処理を行った。得られたホトレジストパターンに付き、電子顕微鏡下で観察を行い、以下の基準によりホトレジストパターンの評価を行った。結果を表1に示す。
○;微細なホトレジストパターンが形成される
×;ホトレジストパターンが形成されない
【0120】
【表1】

【0121】
表1に示すように、実施例1では、ネガ型ホトレジスト組成物を用いた場合及び2層レジスト法で用いられるホトレジスト組成物を用いた場合の両者の場合において、微細で良好なホトレジストパターンが形成されたのに対し、比較例1では、両者の場合でホトレジストパターンが形成されなかった。これは、比較例においては、保護膜形成用材料に含まれる溶媒が、ホトレジスト膜を構成する構成材料を溶解したのに対し、実施例においては、そのようなことが起こらなかったためであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホトレジスト膜上に積層される保護膜を形成するための保護膜形成用材料であって、
(a)アルカリ可溶性ポリマー、及び(b)フッ素系溶剤を含有することを特徴とする保護膜形成用材料。
【請求項2】
前記(b)フッ素系溶剤が、芳香族系炭化水素基含有化合物であることを特徴とする請求項1に記載の保護膜形成用材料。
【請求項3】
前記芳香族系炭化水素基含有化合物が、下記一般式(b−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の保護膜形成用材料。
【化1】

[式中、Arは芳香族系炭化水素基を表し、Rはフッ素原子又は水素原子の一部若しくは全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基を表し、nは1以上10以下の整数を表す。]
【請求項4】
前記一般式(b−1)で表される化合物が下記一般式(b−1−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の保護膜形成用材料。
【化2】

[式中、Rはフッ素原子又は水素原子の一部若しくは全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基を表し、mは1以上6以下の整数を表す。]
【請求項5】
前記一般式(b−1−1)で表される化合物において、R=CF、m=2であることを特徴とする請求項4に記載の保護膜形成用材料。
【請求項6】
前記一般式(b−1−1)で表される化合物が下記式(b−1−1’)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の保護膜形成用材料。
【化3】

【請求項7】
前記(a)アルカリ可溶性ポリマーが、アルカリ可溶性基を有する繰返し単位を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の保護膜形成用材料。
【請求項8】
前記アルカリ可溶性基を有する繰返し単位は、下記一般式(a−1)で表されることを特徴とする請求項7に記載の保護膜形成用材料。
【化4】

[式中、Rは水素原子、又は炭素数1以上6以下の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基若しくはフルオロアルキル基であり、Rは炭素数1以上5以下のアルキレン鎖であり、Rは炭素数1以上5以下のアルキル基又はフルオロアルキル基であり、Zは炭素数1若しくは2のアルキレン鎖、又は酸素原子であり、nは0以上3以下の整数である。]
【請求項9】
前記(a)アルカリ可溶性ポリマーが、アルカリ難溶性基を有する繰返し単位を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の保護膜形成用材料。
【請求項10】
液浸露光プロセスに用いられるものであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の保護膜形成用材料。
【請求項11】
液浸露光プロセスを用いたホトレジストパターン形成方法であって、
基板上にホトレジスト膜を設ける工程と、
このホトレジスト膜上に請求項1から10のいずれかに記載の保護膜形成用材料を用いて保護膜を形成する工程と、
前記基板の少なくとも前記保護膜上に液浸露光用液体を配置し、この液浸露光用液体及び前記保護膜を介して、前記ホトレジスト膜を選択的に露光する工程と、
アルカリ水溶液により前記保護膜を除去して、露光後の前記ホトレジスト膜を現像する工程と、を有するホトレジストパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−92711(P2009−92711A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260274(P2007−260274)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】