説明

光デバイスおよび光送信器

【課題】 大型化を抑制しかつ接続損失を抑制しつつ曲がり導波路と別の導波路とを交差させることができる光デバイスおよび光送信器を提供する。
【解決手段】 光デバイスは、基板(30)と、基板に形成され曲がり部を有する第1光導波路(10)と、第1光導波路の曲がり部と交差する第2光導波路(20)と、を備え、基板において、第1光導波路の曲がり部の外側に溝(40)が形成されている。光送信器は、光デバイスと、入力光を強度変調して変調された第1変調光および第2変調信号を第1光導波路および第2光導波路にそれぞれ入力する強度変調部(210)と、第1光導波路を経由した第1変調光を第1データ信号で変調する第1変調部(220)と、第2光導波路を経由した第2変調光を第2データ信号で変調する第2変調部(230)と、第1変調部および第2変調部で変調された各変調信号光を偏波多重する偏波多重部(240)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスおよび光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信技術においては、高速化が進んでいる。現状システムでは、10Gb/sから40Gb/sへの移行が行われている。今後は、40Gb/sまたはさらに高速の100Gb/sの通信システムで用いられる光送信器および光受信器の開発が重要となってくる。
【0003】
光導波路を用いた光デバイスは、小型で優れた特性を示すため、光変調器、光受信器、光スイッチ等の様々な機器で実用化されている。通信システムの進展に伴って光導波路に求められる性能も複雑化しており、従来とは異なる光導波路が求められる。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2には、交差光導波路が開示されている。また特許文献3には、折り返し光導波路を用いた光変調器の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−60929号公報
【特許文献2】国際公開第2002/023264号
【特許文献3】特開2007−94440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
折り返し光導波路のような曲がり光導波路に別の光導波路を交差させることができれば、デバイスの設計自由度が高くなる。
【0007】
図1は、代表的な曲がり光導波路110の構成例を説明するための図である。図2は、図1のA−A’線断面図である。図1および図2の光導波路110は、光変調器等に用いられるLiNbOからなる基板130にTi等を拡散させることによって設けた拡散光導波路である。基板130において、この光導波路110の曲がり部分の外側には溝140が形成されている。曲がり部分の光のモードフィールドは、図2で説明されるように曲がり部分の外側に偏ることが知られている。したがって、曲がり部分の外側に溝140(空気層、屈折率n=1)のように光導波路110(LiNbO拡散導波路、屈折率n=2.15)と比べて屈折率差の大きな媒体を配置することによって、低損失な曲がり光導波路を実現することができる。
【0008】
このような光導波路110の曲がり部分に別の光導波路を交差させようとした場合、一度直線導波路に戻して交差させれば、特許文献1,2に開示されるような方法で交差部を形成することが可能である。しかしながら、この場合、デバイスの長さが大きくなり、かつ光導波路110の曲がり部分と直線導波路との接続部での接続損失(〜1dB×2箇所)が発生してしまう。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大型化を抑制しかつ接続損失を抑制しつつ曲がり導波路と別の導波路とを交差させることができる光デバイスおよび光送信器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、明細書開示の光デバイスは、基板と、基板に形成され曲がり部を有する第1光導波路と、第1光導波路の曲がり部と交差する第2光導波路と、を備え、基板において、第1光導波路の曲がり部の外側に溝が形成されているものである。
【0011】
上記課題を解決するために、明細書開示の光送信器は、光デバイスを備え、基板は、電気光学効果を有し、入力光を強度変調して変調された第1変調光および第2変調信号を第1光導波路および第2光導波路にそれぞれ入力する強度変調部と、第1光導波路を経由した第1変調光を第1データ信号で変調する第1変調部と、第2光導波路を経由した第2変調光を第2データ信号で変調する第2変調部と、第1変調部および第2変調部で変調された各変調信号光を偏波多重する偏波多重部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
明細書開示の光デバイスおよび光送信器によれば、大型化を抑制しかつ接続損失を抑制しつつ曲がり導波路と別の導波路とを交差させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】代表的な曲がり光導波路の構成例を説明するための図である。
【図2】図1のA−A’線断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る光デバイスの上面図である。
【図4】(a)は図3のA−A’線断面図であり、(b)は図3のB−B’線断面図である。
【図5】第1の実施形態の変形例1に係る光デバイスの上面図である。
【図6】図5のA−A’線断面図である。
【図7】第1の実施形態の変形例2に係る光デバイスの上面図である。
【図8】第1の実施形態の変形例3に係る光デバイスの上面図である。
【図9】第1の実施形態の変形例4に係る光デバイスの上面図である。
【図10】第2の実施形態に係る光デバイスの上面図である。
【図11】第2の実施形態の変形例1に係る光デバイスの上面図である。
【図12】(a)は図11のA−A’線断面図であり、(b)は図11のB−B’線断面図であり、(c)は第2光導波路の光モードフィールドを説明するための図である。
【図13】第2の実施形態の変形例2に係る光デバイスの上面図である。
【図14】第2の実施形態の変形例3に係る光デバイスの上面図である。
【図15】第3の実施形態に係る光送信器を説明するための図である。
【図16】データ変調方式として強度変調方式を採用する場合の出力状態を説明するための図である。
【図17】光伝搬損失の測定結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係る光デバイス100を模式的に表わした上面図である。図4(a)は、図3のA−A’線断面図である。図4(b)は、図3のB−B’線断面図である。以下、図3、図4(a)および図4(b)を参照しつつ、光デバイス100について説明する。
【0016】
光デバイス100は、第1光導波路10および第2光導波路20が基板30に形成された構造を有する。基板30は、LiNbO基板等である。第1光導波路10および第2光導波路20は、基板30にTi等を拡散させることによって形成された拡散光導波路である。
【0017】
第1光導波路10は、曲がり部を有する曲がり光導波路である。第1光導波路10を伝搬する光は、曲がり部においては外側に偏って伝搬する。そこで、第1光導波路10の光伝搬損失を低減するために、基板30において、第1光導波路10の曲がり部の外側に溝部40が形成されている。すなわち、溝部40は、第1光導波路10の曲がり部に沿ってカーブする形状を有する。
【0018】
第2光導波路20は、溝部40を通って、第1光導波路10の曲がり部と交差するように形成された直線光導波路である。第2光導波路20は、溝部40において、両側面が除去されたリッジ構造を有するリッジ部21を備える。リッジ部
21のリッジ幅は、9μm以下であることが好ましい。
【0019】
リッジ部21は、マスクを用いたRIE(Reactive Ion Etching)技術によって形成することができる。上記のような狭いリッジ幅は、サブミクロンオーダーの解像度でマスクを製造可能な装置と、RIE技術を用いて10μm程度の深さのエッチングに耐える耐エッチング性を有するマスクと、によって実現される。従来は、上記のようなマスクを製造できなかったため、本実施形態に係る光デバイス100を作製することは困難であった。
【0020】
本実施形態によれば、第1光導波路10と第2光導波路20との交差部において第1光導波路10を直線にする必要がない。それにより、光デバイスの大型化を抑制することができる。また、溝部40において第2光導波路20がリッジ構造を有することから、溝部40の途切れ目の幅が小さくなる。それにより、第1光導波路10の曲がり部における光伝搬損失を低く維持することができる。したがって、第1光導波路10と第2光導波路20との接続損失が低減される。
【0021】
なお、本実施形態においては第1光導波路10の曲がり部と溝部40との間に隙間があるが、それに限られない。例えば、第1光導波路10の曲がり部と溝部40との間に隙間を設けなくてもよい。伝搬する光は、溝部側に偏ることによって、基板(屈折率=2.14)と光導波路(屈折率=2.16)との屈折率差ではなく、光導波路(屈折率=2.16)と溝部(屈折率=1.0)との屈折率差によって閉じ込められるからである。したがって、第1光導波路10と溝部40との間に拡散導波路が部分的に残っていても残っていなくても、伝搬損失に大きな差は生じない。
【0022】
(変形例1)
図5は、第1の実施形態の変形例1に係る光デバイス100aを模式的に表わした上面図である。図6は、図5のA−A’線断面図である。光デバイス100aが図3の光デバイス100と異なる点は、第2光導波路20の代わりに第2光導波路20aを備える点である。第2光導波路20aは、溝部40において、両側面が除去されたリッジ構造を有するリッジ部21aを備える。
【0023】
リッジ部21aは、溝部40以外の箇所における第2光導波路20aの幅よりも小さいリッジ幅を有する。この場合、溝部40の途切れ目の幅をより小さくすることができる。それにより、第1光導波路10の曲がり部における光伝搬損失をより低く維持することができる。
【0024】
なお、リッジ幅が狭くなって光導波路の幅が狭くなると、光モードフィールドの一部が削減されることによって過剰損失が生じるおそれがある。これは、リッジ側壁部分の荒れによりリッジ部分を伝搬する光が散乱するためである。しかしながら、図6で説明されるように、光導波路の両側端では光強度が低いため、過剰損失を抑制することができる。光強度のピークを中心に第2光導波路20aの両側端を対称的に削ることによって、光モードフィールドの過剰損失をより抑制することができる。
【0025】
(変形例2)
図7は、第1の実施形態の変形例2に係る光デバイス100bを模式的に表わした上面図である。光デバイス100bが図3の光デバイス100と異なる点は、第2光導波路20の代わりに第2光導波路20bを備える点である。第2光導波路20bは、溝部40において、両側面が除去されたリッジ構造を有するリッジ部21bを備える。
【0026】
リッジ部21bのリッジ幅は、溝部40の第1導波路10と反対側から第1導波路10にかけてテーパ状に徐々に狭くなっている。リッジ幅がより狭い場合には、リッジ部分の光モードフィールドとリッジでない部分の光モードフィールドの違い(ミスマッチ)により、過剰損失が発生する。この場合、テーパ状に徐々に光モードフィールドを変化させることで、過剰損失を抑えることができる。また、第1光導波路10の曲がり部において溝部40の途切れ目の幅を小さくすることができる。それにより、第1光導波路10の曲がり部における光伝搬損失をより低く維持することができる。また、リッジ部21bは、溝部40の第1導波路10と反対側においては広い幅を有することから、第2光導波路20bにおける過剰損失を抑制することができる。
【0027】
(変形例3)
図8は、第1の実施形態の変形例3に係る光デバイス100cを模式的に表わした上面図である。光デバイス100cが図3の光デバイス100と異なる点は、第2光導波路20の代わりに第2光導波路20cを備える点である。第2光導波路20cは、溝部40において、両側面が除去されたリッジ構造を有するリッジ部21cを備える。
【0028】
リッジ部21cのリッジ幅は、溝部40の第1導波路10側において狭くなっている。この場合、第1光導波路10の曲がり部において溝部40の途切れ目の幅を小さくすることができる。それにより、第1光導波路10の曲がり部における光伝搬損失をより低く維持することができる。また、リッジ部21cは、溝部40の第1導波路10と反対側においては広い幅を有することから、第2光導波路20cにおける過剰損失を抑制することができる。
【0029】
(変形例4)
図9は、第1の実施形態の変形例4に係る光デバイス100dを模式的に表わした上面図である。光デバイス100dが図3の光デバイス100と異なる点は、第2光導波路20の代わりに第2光導波路20dを複数備える点である。なお、第2光導波路20dは、上記の第2光導波路20〜20cのいずれであってもよい。各第2光導波路20dは、第1光導波路10の曲がり部の異なる箇所で第1光導波路10と交差する。このように、第1光導波路10の曲がり部と交差する光導波路の本数は制限されない。
【0030】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係る光デバイス100eを模式的に表わした上面図である。光デバイス100eが図3の光デバイス100と異なる点は、第1光導波路10の代わりに第1光導波路10eを備え、第2光導波路20の代わりに第2光導波路20eを備える点である。第1光導波路10eおよび第2光導波路20eは、曲がり部を有する曲がり光導波路である。本実施形態においては、第1光導波路10eと第2光導波路20eとは、それぞれの曲がり部において交差する。
【0031】
溝部40は、第1光導波路10eの外側に沿って形成されている。また、第2光導波路20eの外側に沿って、溝部41が形成されている。したがって、基板30において、第1光導波路10eの内側かつ第2光導波路20eの外側、および、第2光導波路20eの内側かつ第1光導波路10eの外側に、溝が設けられている。第1光導波路10eは、溝部41においてリッジ構造を持つリッジ部11eを有する。第2光導波路20eは、溝部40においてリッジ構造を持つリッジ部21eを有する。
【0032】
本実施形態においては、第1光導波路10eの外側に沿って形成された溝部の途切れ目の幅が小さくなるとともに、第2光導波路20eの外側に沿って形成された溝部の途切れ目の幅が小さくなる。それにより、第1光導波路10eおよび第2光導波路20eの光伝搬損失を低減することができる。なお、本実施形態においては第1光導波路10eの曲がり部と溝部40、また第2光導波路20eの曲がり部と溝部40との間に隙間がないが、それに限らず。例えば、第1光導波路10eの曲がり部と溝部40、また第2光導波路20eの曲がり部と溝部40との間に隙間があってもよい。この理由は第1の実施形態の場合と同じである。
【0033】
(変形例1)
図11は、第2の実施形態の変形例1に係る光デバイス100fを模式的に表わした上面図である。図12(a)は、図11のA−A’線断面図である。図12(b)は、図11のB−B’線断面図である。図12(c)は、後述する第2光導波路20fの光モードフィールドを説明するための図である。
【0034】
光デバイス100fが図10の光デバイス100eと異なる点は、第1光導波路10eの代わりに第1光導波路10fを備え、第2光導波路20eの代わりに第2光導波路20fを備える点である。第1光導波路10fは、リッジ部11eの代わりにリッジ部11fを有する。第2光導波路20fは、リッジ部21eの代わりにリッジ部21fを有する。リッジ部11fは、溝部41以外の箇所における第1光導波路10fの幅よりも小さいリッジ幅を有する。リッジ部21fは、溝部40以外の箇所における第2光導波路20fの幅よりも小さいリッジ幅を有する。
【0035】
本変形例においては、第1光導波路10fの外側に沿って形成された溝部の途切れ目の幅がより小さくなるとともに、第2光導波路20fの外側に沿って形成された溝部の途切れ目の幅がより小さくなる。それにより、第1光導波路10fおよび第2光導波路20fの光伝搬損失を低減することができる。
【0036】
なお、リッジ部11fは、第1光導波路10fの内側の部分が除去された形状を有することが好ましい。また、リッジ部21fは、第2光導波路20fの内側の部分が除去された形状を有することが好ましい。図12(c)で説明されるように、外側に偏った光モードフィールドの過剰損失をより抑制することができるからである。
【0037】
(変形例2)
図13は、第2の実施形態の変形例2に係る光デバイス100gを模式的に表わした上面図である。光デバイス100gが図11の光デバイス100fと異なる点は、第1光導波路10eの代わりに第1光導波路10gを備え、第2光導波路20eの代わりに第2光導波路20gを備える点である。第1光導波路10gは、リッジ部11eの代わりにリッジ部11gを備える。第2光導波路20gは、リッジ部21eの代わりにリッジ部21gを備える。
【0038】
リッジ部11gのリッジ幅は、第2光導波路20g側に向かって徐々に狭くなっている。また、リッジ部21gのリッジ幅は、第1導波路10g側に向かって徐々に狭くなっている。この場合、第1光導波路10gの曲がり部において溝部40の途切れ目の幅を小さくすることができるとともに、第2光導波路20gの曲がり部において溝部41の途切れ目の幅を小さくすることができる。また、徐々にリッジ幅を狭くすることでリッジ部分とそれ以外の部分の光モードフィールドミスマッチの影響を低減できるため、リッジ部11gが第1光導波路10gに与える過剰損失を低減でき、かつリッジ部21gが第2光導波路20gに与える過剰損失を低減できる。それにより、第1光導波路10gおよび第2光導波路20gの曲がり部における光伝搬損失をより低く維持することができる。
【0039】
また、リッジ部21gは、溝部40の第1導波路10gと反対側においては広い幅を有するとともに、リッジ部21gは、溝部40の第1導波路10gと反対側においては広い幅を有する。それにより、第1光導波路10gおよび第2光導波路20gにおける過剰損失を抑制することができる。
【0040】
(変形例3)
図14は、第2の実施形態の変形例3に係る光デバイス100hを模式的に表わした上面図である。光デバイス100hが図11の光デバイス100fと異なる点は、第1光導波路10eの代わりに第1光導波路10hを備え、第2光導波路20eの代わりに第2光導波路20hを備える点である。第1光導波路10hは、リッジ部11eの代わりにリッジ部11hを備える。第2光導波路20hは、リッジ部21eの代わりにリッジ部21hを備える。
【0041】
リッジ部11hのリッジ幅は、第2光導波路20h側において狭くなっている。また、リッジ部21hのリッジ幅は、第1導波路10h側において狭くなっている。この場合、第1光導波路10hの曲がり部において溝部40の途切れ目の幅を小さくすることができるとともに、第2光導波路20hの曲がり部において溝部41の途切れ目の幅を小さくすることができる。それにより、第1光導波路10hおよび第2光導波路20hの曲がり部における光伝搬損失をより低く維持することができる。
【0042】
また、リッジ部21hは、溝部40の第1導波路10hと反対側においては広い幅を有するとともに、リッジ部21hは、溝部40の第1導波路10hと反対側においては広い幅を有する。それにより、第1光導波路10hおよび第2光導波路20hにおける過剰損失を抑制することができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図15は、第3の実施形態に係る光送信器200を説明するための図である。光送信器200は、上記のいずれかの光デバイスを備える。本実施形態においては、基板30は、電気光学効果を有する。また、光送信器200は、強度変調部として機能するRZ変調部210、データ変調部220,230および偏波多重部240を備える。RZ変調部210は、入力光を強度変調して変調された第1変調光および第2変調光をそれぞれ出力1および出力2として相補出力する。本実施形態においては、第1変調光が正相であり、第2変調光が逆相である。
【0044】
第1変調光は、第1光導波路10を経由してデータ変調部220に入力される。第2変調光は、第2光導波路20を経由してデータ変調部230に入力される。データ変調部220は、第1変調光にデータを載せた信号を出力3として出力する。データ変調部230は、第2変調光にデータを載せた信号を出力4として出力する。偏波多重部240は、データ変調部220,230からの各信号を合波させて、X偏波とY偏波とが多重した偏波多重信号を生成し、出力5として出力する。
【0045】
データ変調方式には、強度変調、位相変調等の様々な方式がある。図16においては、一例として、強度変調方式の場合の出力状態が描かれている。RZ変調部210から偏波多重部240までの2本の光路長は、互いに等しいことが好ましい。
【0046】
本実施形態によれば、第1変調信号および第2変調信号を低損失で交差させることができる。また、第1光導波路10と第2光導波路20との交差部において第1光導波路10および第2光導波路20を直線にする必要がない。それにより、小型で低損失な光送信器を実現することができる。
【0047】
なお、上記各実施形態においては拡散導波路の外側に溝を形成した曲がり導波路で例を挙げたが、それに限られない。例えば基板としてLiNbO基板を用いた場合には、基板中のLiをHとイオン交換することで形成されるイオン交換導波路を拡散導波路の代わりに用いてもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては溝に空気が充填されているが、基板と溝部との間に大きな屈折率差を設けられればよい。したがって、例えばSiO、ポリイミド等のような低屈折率充填剤を溝に埋め込んでもよい。また、曲がり光導波路の折り返し角度は、特に限定されるものではない。また、上記実施形態においては各曲がり光導波路の曲がり部において外側に溝部を設けたが、さらに内側に設けてもよい。
【実施例】
【0049】
実施例においては、図13の光デバイス100gを作製して、損失を測定した。図17を参照して、その測定結果を説明する。図17において、横軸は光導波路幅と交差部におけるリッジ幅との差分dRwを示す。縦軸は、交差させたことに起因する過剰損失を示す。損失はそれぞれの光導波路について測定したが、差はなかった。dRwを2μm以上とすることで過剰損失を0dBとできることが確認された。
【符号の説明】
【0050】
10 第1光導波路
11 リッジ部
20 第2光導波路
21 リッジ部
30 基板
40 溝部
41 溝部
100 光デバイス
200 光送信器
210 RZ変調部
220 データ変調部
230 データ変調部
240 偏波多重部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に形成され、曲がり部を有する第1光導波路と、
前記第1光導波路の前記曲がり部と交差する第2光導波路と、を備え、
前記基板において、前記第1光導波路の曲がり部の外側に溝が形成されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第2光導波路は、前記溝においてリッジ構造を有することを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第2光導波路は、前記溝において、前記第2光導波路の前記溝以外の部位における幅よりも狭いリッジ幅を持つリッジ構造を有することを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第2光導波路は、複数設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第2光導波路の前記第1光導波路と交差する部位は、曲がり光導波路であることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第2光導波路の前記第1光導波路と交差する部位は、曲がり光導波路であり、
前記基板において、前記第1光導波路の内側かつ前記第2光導波路の外側に溝が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光デバイス。
【請求項7】
前記第1光導波路は、前記第2光導波路の外側の溝において、前記第1光導波路の前記溝以外の部位における幅よりも狭いリッジ幅を持つリッジ構造を有し、
前記第2光導波路は、前記第1光導波路の外側の溝において、前記第2光導波路の前記溝以外の部位における幅よりも狭いリッジ幅を持つリッジ構造を有することを特徴とする請求項6記載の光デバイス。
【請求項8】
前記第1光導波路のリッジ構造は、前記第1光導波路の内側の部分が除去された形状を有し、
前記第2光導波路のリッジ構造は、前記第2光導波路の内側の部分が除去された形状を有することを特徴とする請求項7記載の光デバイス。
【請求項9】
前記第1光導波路のリッジ構造は、前記第2光導波路との交差部位に近づくにつれて徐々に幅が狭くなり、
前記第2光導波路のリッジ構造は、前記第1光導波路との交差部位に近づくにつれて徐々に幅が狭くなることを特徴とする請求項7記載の光デバイス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光デバイスを備え、
前記基板は、電気光学効果を有し、
入力光を強度変調して変調された第1変調光および第2変調信号を前記第1光導波路および前記第2光導波路にそれぞれ入力する強度変調部と、
前記第1光導波路を経由した前記第1変調光を第1データ信号で変調する第1変調部と、
前記第2光導波路を経由した前記第2変調光を第2データ信号で変調する第2変調部と、
前記第1変調部および第2変調部で変調された各変調信号光を偏波多重する偏波多重部と、を備えることを特徴とする光送信器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−164642(P2010−164642A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4804(P2009−4804)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人情報通信研究機構、「λユーティリティ技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】