光送信機の調整方法および装置
【課題】安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とする光送信機の調整方法および装置を提供する。
【解決手段】複数の位相変調部と少なくとも1つの位相変調部の前段または後段に設けられた位相シフト部を有するLN光変調器10を備えた光送信機20の調整方法および装置であって、駆動パルスパターン信号の振幅を位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、位相シフト部に印加される位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、振幅調整段階、バイアス電圧調整段階、および、位相シフト量調整段階が、光送信機20から出力される位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、駆動パルスパターン信号の振幅、駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、位相シフト電圧の最適値を与える。
【解決手段】複数の位相変調部と少なくとも1つの位相変調部の前段または後段に設けられた位相シフト部を有するLN光変調器10を備えた光送信機20の調整方法および装置であって、駆動パルスパターン信号の振幅を位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、位相シフト部に印加される位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、振幅調整段階、バイアス電圧調整段階、および、位相シフト量調整段階が、光送信機20から出力される位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、駆動パルスパターン信号の振幅、駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、位相シフト電圧の最適値を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信機の調整方法および装置に係り、特に4値以上の位相変調方式を用いた光送信機の調整方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線のトラフィック量増加により、光通信においても従来の強度変調方式から位相変調方式が使われるようになってきている。各種位相変調方式の中でもBPSK(Binary Phase Shift Keying)方式、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式、および差分符号化を表すD(Differential)を冠したDBPSK、DQPSK方式が注目されている。これらの方式の光送信機ではニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶を用いた光変調器(以下、LN光変調器と記す)が用いられている。
【0003】
NRZ(Non-Return to Zero)方式のDQPSK光送信機とその調整用測定系の構成の例を図13に示す。パルスパターン発生器45より擬似ランダムビット系列(Pseudo-Random Bit Sequence:以下、PRBSと記す)の信号を光送信機20に供給する。ここで、PRBS信号は、(2N−1)(Nを段数と呼ぶ)のビット周期を有する周期信号である。
【0004】
光送信機20から出力された位相変調信号は擬似光線路41に入射する。擬似光線路41は、実際の通信で使われる長さの光ファイバと同じ程度の光損失値や波長分散値または偏波モード分散値を、光ファイバを使わずに実現させたものであり、光送信機20に対する負荷となる。この擬似光線路41からの位相変調信号をDQPSK光受信機42で電気信号に変換し、この電気信号の誤り率を誤り率検出器44で判定して誤り率が所定の値以下になるように光送信機20の電圧印加部15を調整する。この調整の良否が光送信機20の性能を大きく左右する。QPSK方式またはDQPSK方式の光送信機では調整項目が多く煩雑で難しいことが、非特許文献1などで指摘されている。
【0005】
以下、NRZ−DQPSKまたはNRZ−QPSK方式の光送信機の調整項目について、図13を参照しながら説明する。ここでは両方式とも作用は同じなので、以下「NRZ−QPSK方式」と総称する。ここで、NRZ−QPSK方式のLN光変調器10のI(In-phase)ポート12a−1およびQ(Quadrature)ポート12a−2に印加される各駆動パルスパターン信号の振幅およびバイアス電圧を、LN光変調器10の特性を表す値である半波長電圧Vπで正規化した値を「駆動振幅」および「バイアス値」とする。対象とする調整項目は以下の5項目である。
(1)Iポートにおける駆動振幅、(2)Qポートにおける駆動振幅、(3)Iポートにおけるバイアス値、(4)Qポートにおけるバイアス値、(5)IポートとQポートのバランス電圧(I−Qバランス)
【0006】
非特許文献1に開示された方法では、誤り率検出器44で判定される誤り率が所定値以下になるように各調整項目を交互に調整する。このため、調整に時間がかかっていた。また、この所定値の設定が適切でない場合には、各調整項目が真に最適となる前に調整を終了している可能性もあった。
【0007】
このとき、例えば特許文献1に開示されているような、光コンスタレーションが表示可能なサンプリング型光波形観測装置43を併用すると調整を容易にすることができるが、この装置は超高速電子回路を多用するため、非常に高価であるという問題があった。
【0008】
一方、本発明者らは、安価な光スペクトラムアナライザで強度変調方式光送信機の調整を可能とする方法を発明した(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
以下では、Iポート12a−1およびQポート12a−2にそれぞれ供給される駆動パルスパターン信号が、パルスパターン発生器45から出力されるPRBS信号(段数Nが10)を電圧印加部15により増幅した信号であり、ポート当たりのビットレートを20Gbpsとした場合の計算例を用いて、特許文献2に開示された方法の問題点を説明する。
【0010】
(1)、(2)IポートおよびQポートにおける各駆動振幅
図13において、Iポート12a−1に印加される駆動パルスパターン信号の駆動振幅が最適値から20%低下したときの光スペクトラムの変化を図14のグラフに示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。同図(a)は光スペクトラムの全体像、同図(b)に同図(a)に示した光スペクトラムの30GHzから70GHzのデータを示す。グラフ中の太線は駆動振幅が最適値のときの光スペクトラムを、細線は駆動振幅が最適値から20%低下したときの光スペクトラムを示している。
【0011】
このように駆動振幅の変化は光スペクトラムの変化となって現れる。しかしながら、この変化はIポート12a−1とQポート12a−2のどちらの駆動振幅が最適値から偏移した場合でも同様に生じるため、光スペクトラムからだけではどちらのポートの駆動振幅に偏移が発生しているかの判断ができないという問題があった。
【0012】
(3)、(4)IポートおよびQポートにおける各バイアス値
図13において、Iポート12a−1に印加される駆動パルスパターン信号のバイアス値が最適値から10%ずれた場合の光スペクトラムの変化を図15に示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。同図(a)は光スペクトラムの全体像、同図(b)に同図(a)に示した光スペクトラムの17GHzから23GHzの部分の拡大図を示す。バイアス値が最適値よりずれると光スペクトラムのローブ間にピークが現れる。しかしながら、上記(1)、(2)の駆動振幅の場合と同様に、バイアス値にずれの生じているポートを判別できないという問題があった。
【0013】
(5)I−Qバランス
NRZ−QPSK方式の光送信機においてはIポートとQポートの間の位相シフト量をπ/2に設定することが必要である。これは通常「I−Qバランス」と呼ばれており、具体的には図13における位相シフト部12b−1の電極電圧を調整している。このI−Qバランスが最適値から10%変化したときの光スペクトラムの変化を図16に示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。同図(a)は最適値(0.5π)の光スペクトラム、同図(b)は10%変化したとき(0.45π)の光スペクトラム、同図(c)は両者を重ね書きした光スペクトラムである。この図が示すように、光スペクトラムからI−Qバランスの変化を検知することは困難であり、従って調整できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−93515号公報
【特許文献2】特願2009−155648号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】星田剛司、外4名、「偏波多重4値位相変調光送受信機のための制御技術」、信学技報、電子情報通信学会、2009年2月、第108巻、第423号、OCS2008−120、pp.79―83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上述べたように、特許文献2に開示された方法は、4値以上の位相変調方式においてはIポートとQポートの判別ができず、さらに、I−Qバランスについては光スペクトラムの変化として検知できないなどの問題があるため、4値以上の位相変調方式の光送信機には適用できなかった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、高価なサンプリング型光波形観測装置を用いることなく、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とする光送信機の調整方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の光送信機の調整方法は、入力光を複数に分岐する分岐部と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部と、を少なくとも有し、前記入力光の位相変調信号を出力する光変調器を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機の調整方法であって、前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、前記位相シフト部に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする構成を有している。
【0019】
また、本発明の請求項2の光送信機の調整方法は、入力光を複数に分岐する分岐部と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部と、前記光結合部によって結合した光の位相を、印加される駆動パルスパターン信号に応じてシフトして位相変調信号を出力する位相シフト部と、を有する光変調器を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機の調整方法であって、前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする構成を有している。
【0020】
これらの構成により、位相変調信号の誤り率に依存せずに、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整が可能な光送信機の調整方法を実現できる。
【0021】
また、本発明の請求項3の光送信機の調整方法は、前記振幅調整段階および前記バイアス電圧調整段階において、前記複数の位相変調部のうちの1つに、所定の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部にマーク信号あるいはスペース信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定し、前記光スペクトラムと予め求められた基準光スペクトラムとの差異が最小となるように、前記1つの位相変調部に印加する前記駆動パルスパターン信号の振幅およびバイアス電圧を調整することを特徴とする構成を有している。
【0022】
この構成により、測定した光スペクトラムのサイドローブには、マーク信号あるいはスペース信号を印加して無変調状態となった位相変調部からの寄与が含まれないため、測定した光スペクトラムのサイドローブと基準光スペクトラムのサイドローブとの差異を最小にすることにより、位相変調部ごとに独立に駆動振幅およびバイアス値の最適値を決定することができる。
【0023】
また、本発明の請求項4の光送信機の調整方法は、前記複数の位相変調部の個数が2であり、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部の個数が1であることを特徴とする構成を有していてもよい。
【0024】
また、本発明の請求項5の光送信機の調整方法は、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部の前記位相シフト量調整段階が、前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの差分の積分値の絶対値が最小となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする構成を有している。
【0025】
この構成により、2つの駆動パルスパターン信号を用い、2つの光スペクトラムの差分を得ることにより、1つの光スペクトラムでは検知できなかったI−Qバランスの変化を検知することができる。
【0026】
また、本発明の請求項6の光送信機の調整方法は、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部の前記位相シフト量調整段階は、前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に該第1の駆動パルスパターン信号と信号パターンの等しい第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの比が1となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする構成を有していてもよい。
【0027】
本発明の請求項7の光送信機の調整装置は、上記のいずれかの光送信機の調整方法を用いたことを特徴とする構成を有している。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、高価なサンプリング型光波形観測装置を用いることなく、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とする光送信機の調整方法および装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】LN光変調器の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明に係る光送信機の調整方法の構成の一例を示す概略図
【図3】IポートおよびQポートに送出される駆動パルスパターン信号の駆動振幅およびバイアス値の調整手順を示すフローチャート
【図4】第1および第2のパルスパターン信号の一例を示す説明図
【図5】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号の駆動振幅が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図6】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号のバイアス値が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図7】位相シフト量調整段階の第1の調整手順を示すフローチャート
【図8】位相シフト量調整段階の第1の調整手順における差分光スペクトラム積分値の計算結果を示すグラフ
【図9】位相シフト量調整段階の第1の調整手順における差分光スペクトラムの計算例を示すグラフ
【図10】位相シフト量調整段階の第2の調整手順を示すフローチャート
【図11】位相シフト量調整段階の第2の調整手順における光スペクトラム比の計算結果を示すグラフ
【図12】位相シフト量調整段階の第2の調整手順における光スペクトラムの計算例を示すグラフ
【図13】従来の光送信機の調整方法の構成例を示す概略図
【図14】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号の駆動振幅が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図15】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号のバイアス値が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図16】I−Qバランスが変化したときの位相変調信号の光スペクトラムを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る光送信機の調整方法および装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
本発明に係る光送信機の調整方法の第1の実施形態を図1〜図6を用いて説明する。本発明に係る光送信機の調整方法は、4値以上の位相変調方式の光送信機20が備えるLN光変調器10に印加する電圧信号を調整するものである。
【0032】
図1はLN光変調器10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、LN光変調器10は、入力光を複数に分岐する分岐部11と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて分岐部11によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う2個の位相変調部12a−1、12a−2と、位相変調部12a−1、12a−2のうちの少なくとも1つの前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部12b−1と、位相変調部および位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部13と、を有する。
【0033】
さらに、LN光変調器10は、光結合部13によって結合した光の位相を、印加される駆動パルスパターン信号に応じてシフトして位相変調信号を出力する位相シフト部12b−2、・・・、12b−M(Mは2以上の自然数)を有していてもよい。
【0034】
このように構成されたLN光変調器10は、2M+1値PSK信号を入力光の位相変調信号として出力できるようになっている。このとき、各位相シフト部12b−1、12b−2、・・・、12b−Mの位相シフト量は、π/2m(m=1、・・・、M)である。光結合部13の後段に位相シフト部12b−2、・・・、12b−Mが配置されない場合には、LN光変調器10はQPSK信号を出力するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態の光送信機の調整方法について述べる。本実施形態の光送信機の調整方法は、駆動パルスパターン信号の駆動振幅を位相変調部12a−1、12a−2ごとに調整する振幅調整段階と、駆動パルスパターン信号のバイアス値を位相変調部12a−1、12a−2ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、位相シフト部12b−1に印加される位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含む。
【0036】
以下では、位相変調部の個数が2、位相シフト部の個数が1の場合、即ち、4値の位相変調方式を例にとって説明する。なお、位相変調部12a−1、12a−2をそれぞれIポート、Qポートと呼ぶ。
【0037】
図2は、本実施形態の光送信機の調整方法の構成の一例を示す概略図である。
光送信機20は、位相変調信号を出力するLN光変調器10と、LN光変調器10に入力光としての単一縦モードのレーザ光を送出するレーザ光源14と、Iポート12a−1、Qポート12a−2、および位相シフト部12b−1のそれぞれに電圧信号を印加するための電圧印加部15と、を有する。
【0038】
光送信機20から出力される位相変調信号は擬似光線路21に入射し、擬似光線路21を伝播した位相変調信号は、光スペクトラムアナライザ22やDQPSK光受信機23に入力される。光スペクトラムアナライザ22では、位相変調信号の光スペクトラムが測定される。ここで用いる光スペクトラムアナライザ22は波長分解能が高いほうが望ましく、例えばボーレートが40Gbpsであれば波長分解能は2pm以下であることが望ましい。このような光スペクトラムアナライザは特開平3−115938号公報に開示されている。
【0039】
DQPSK光受信機23では位相変調信号が電気信号に変換される。DQPSK光受信機23の後段には誤り率検出器24が配置され、DQPSK光受信機23から出力された電気信号の誤り率が判定される。誤り率検出器24には、パルスパターン発生器25からクロック信号が供給されるようになっている。なお、本実施形態の光送信機の調整方法においては、DQPSK光受信機23と誤り率検出器24は必須ではない。
【0040】
パルスパターン発生器25は、さらに第1のパルスパターン信号および第2のパルスパターン信号を電圧印加部15に送出するようになっている。電圧印加部15には電圧設定部26からの制御信号が入力されるようになっている。電圧設定部26は、光スペクトラムアナライザ22により測定された光スペクトラムに応じて、第1および第2のパルスパターン信号を増幅するためのパラメータ、即ち、第1および第2の駆動パルスパターン信号の駆動振幅およびバイアス値を決定し、決定した駆動振幅およびバイアス値を電圧印加部15に設定するようになっている。
【0041】
電圧設定部26で決定された駆動振幅およびバイアス値を有する第1および第2の駆動パルスパターン信号は、電圧印加部15によりIポート12a−1およびQポート12a−2に出力される。
【0042】
図3(a)は、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)および第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)の駆動振幅を調整する手順(振幅調整段階)を示すフローチャートである。
【0043】
まず、Iポート用信号の駆動振幅を調整する場合は、パルスパターン発生器25を用いて、第1のパルスパターン信号として図4(a)に示すような信号パターン、例えば、10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出する。同時に、パルスパターン発生器25を用いて、図4(b)に示すような値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS100)。ここで、マーク信号またはスペース信号のビット数は、第1のパルスパターン信号のビット数以上であるとよい。
【0044】
これによりQポート12a−2は無変調状態となり、Qポート12a−2から出力される光のスペクトラムは、サイドローブを有さず、レーザ光源14から出力されるレーザ光の光スペクトラム(単一縦モード)とほぼ同一となる。図5(a)、(b)に、このときの光送信機20から出力される位相変調信号の光スペクトラムの計算例を示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。また、図中の太線は駆動振幅が最適値のときの基準光スペクトラムを、細線は駆動振幅が最適値から10%低下したときの光スペクトラムを示している。
【0045】
ここで、基準光スペクトラムは、光送信機20の符号誤り率を測定しながら駆動電圧やバイアス電圧を調整し、符号誤り率が最低となった状態での光スペクトラムであってもよく、あるいは、理論的に求めた光スペクトラムであってもよい。このような基準光スペクトラムを得る方法は、本発明者による特許(特願2009−157030号)に開示されている。
【0046】
なお、図5(a)は光スペクトラムの全体像であり、中央部にはQポートの光スペクトラムの特徴である単一縦モードが現れている。同図(b)は同図(a)に示した光スペクトラムの10GHzから90GHzの部分の拡大図である。
【0047】
実際に測定した光スペクトラムが図5の細線で示したようなものであった場合は、該光スペクトラムと基準光スペクトラムとの差異が最小となるような駆動振幅を決定し、電圧印加部15に設定する。具体的には、例えば、実際に測定した光スペクトラムのサイドローブには無変調状態となったQポート12a−2からの寄与が含まれないことを利用して、実際に測定した光スペクトラムと太線で示した基準光スペクトラムのサイドローブのレベルが一致するまで駆動振幅を少しずつ変化させ、一致したときの駆動振幅を最終的な駆動振幅として決定する(ステップS101)。
【0048】
次に、Qポート用信号の駆動振幅の調整を行う手順を説明する。この手順は、上述のIポート用信号の駆動振幅の調整において、IポートとQポートを入れ替えたものと同様である。ここでは値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出し、第2のパルスパターン信号として10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS102)。そして、ステップS101と同様に駆動振幅を決定する(ステップS103)。
【0049】
図3(b)は、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)および第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)のバイアス値を調整する手順(バイアス電圧調整段階)を示すフローチャートである。同図(a)に示した駆動振幅の調整手順と同様に、Iポート用信号のバイアス値を調整する場合は、パルスパターン発生器25を用いて、例えば、10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出する。同時に、パルスパターン発生器25を用いて、値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS104)。
【0050】
図6(a)、(b)にこのときの光スペクトラムの計算例を示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。また、図中の太線はバイアス値が最適値であるときの基準光スペクトラムを、細線はバイアス値が最適値から10%低下したときの光スペクトラムを示している。同図(b)は同図(a)に示した光スペクトラムの17GHzから23GHzの部分の拡大図である。
【0051】
図6(b)に示すように、搬送波周波数の中心光周波数からポート当たりのビットレート相当離れた周波数において光スペクトラムの顕著な変化が現れる。従って、この部分に着目して基準光スペクトラムと一致するまでバイアス値を少しずつ変化させ、一致したときのバイアス値を最終的なバイアス値と決定する(ステップS105)。
【0052】
次に、Qポート用信号のバイアス値の調整を行う手順を説明する。この手順は、上述のIポート用信号のバイアス値の調整において、IポートとQポートを入れ替えたものと同様である。ここでは値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出し、10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS106)。そして、ステップS105と同様にバイアス値を決定する(ステップS107)。
【0053】
以上の説明では、位相変調部の個数を2、位相シフト部の個数を1としたが、位相シフト部の個数が1より多い場合は、一方の位相変調部に、所定の駆動パルスパターン信号(例えば、10段のPRBS信号)を印加し、他方の位相変調部にマーク信号あるいはスペース信号を入力した状態とし、さらに、光結合部に後続する位相シフト部にマーク信号あるいはスペース信号を入力した状態とすることにより、位相変調部ごとに駆動振幅を調整することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
背景技術の欄で述べたように、NRZ−QPSK送信機においては、IポートとQポートの間の位相シフト量をπ/2に設定することが必要である。このためには位相シフト電圧を調整すればよいが、このような調整を行っても図16に示したように光スペクトラムはほとんど変化しないという問題があった。そこで、本発明者は、この問題を回避して、光スペクトラムアナライザを用いて位相シフト量φを調整するための手順を二種類考案した。本実施形態では、一つ目の手順について図7〜図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0055】
図7は、位相シフト量調整段階の第1の調整手順を示すフローチャートである。まず、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)をIポート12a−1に送出し、同時に第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)をQポート12a−2に送出する(ステップS110)。ここで、パルスパターン発生器25が出力する第1および第2のパルスパターン信号は通常のPRBS信号であればよく、かつ、互いに異なる信号パターンであるとする。
【0056】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラム(以下、S1(ω)と記す)を測定する(ステップS111)。
【0057】
次に、第1の駆動パルスパターン信号をIポート12a−1に送出し、論理反転した第2の駆動パルスパターン信号をQポート12a−2に送出する(ステップS112)。
【0058】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に論理反転した第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラム(以下、S2(ω)と記す)を測定する(ステップS113)。
【0059】
次に、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の差である差分光スペクトラムF(ω)の積分値(以下、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)と記す)を算出する(ステップS114)。図8に差分光スペクトラム積分値∫F(ω)と位相シフト量φとの対応関係を与える計算結果を示す。同図に示すように差分光スペクトラム積分値∫F(ω)がゼロとなったときが位相シフト量φの最適値であるπ/2に対応している。
【0060】
よって、位相シフト電圧を少しずつ変化させ、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)の絶対値が最小となったときの位相シフト電圧を最終的な位相シフト電圧と決定する(ステップS115)。
【0061】
なお、上記のステップS110およびS111の処理は第1の光スペクトラム測定段階に該当し、ステップS112およびS113の処理は第2の光スペクトラム測定段階に該当している。
【0062】
以下に、位相シフト量調整段階の第1の調整手順の理論的根拠を示す。
Iポート12a−1、Qポート12a−2からの出力電場をそれぞれx(t)、y(t)とし、Qポート12a−2側に付属する位相シフト部12b−1の寄与をejφ(φ≒π/2)とおくと、LN光変調器10からの出力電場e(t)はx(t)+ejφy(t)と表される。光スペクトラムS(ω)はe(t)のフーリエ変換E(ω)の絶対値の自乗として求められ、x(t)、y(t)のフーリエ変換をそれぞれX(ω)=|X(ω)|ejθ(ω)、Y(ω)=|Y(ω)|ejψ(ω)とおくと次式を得る。
【数1】
【0063】
ここで[数1]の光スペクトラムをS1(ω)とおく。Qポート12a−2への入力データの論理を反転して得られる光スペクトラムS2(ω)は、[数1]のψ(ω)をψ(ω)+πで置き換えたものとなり、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の差である差分光スペクトラムF(ω)は次式のようになる。
【数2】
【0064】
[数2]を積分し、cosφ、sinφに比例する項に分離すると次式のようになる。
【数3】
【0065】
ここで、LN光変調器10が完全なプッシュプル動作をすると仮定すると、両ポートからの出力電場x(t)、y(t)は実数値を取るので、θ(−ω)=−θ(ω)、ψ(−ω)=−ψ(ω)が成り立つ。|X(ω)|、|Y(ω)|はPSK変調のスペクトラム形状により偶関数と見なせるので、[数3]のFeven(ω)は偶関数、Fodd(ω)は奇関数である。
【0066】
従って、奇関数であるFodd(ω)の積分はゼロとなるため、偶関数であるFeven(ω)のみ着目すればよく、差分光スペクトラムF(ω)の積分値(差分光スペクトラム積分値∫F(ω))をcosφの推定に利用できる。ここで、位相シフト量φのπ/2からの偏差をε(≪1)とすると、cos(π/2+ε)=−sinε≒−εより、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)は最適値φ=π/2の近傍で偏差εに比例することが分かる。
【0067】
図9にφ=3π/8、π/2、5π/8の場合の差分光スペクトラムF(ω)の計算例を示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。グラフ中の太線はFeven(ω)を、細線はFodd(ω)を示している。同図に示すようにφ=π/2においてFeven(ω)=0、即ち、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)がゼロとなる。
【0068】
以上の説明では、Qポート12a−2に論理が反転関係にある2つの駆動パルスパターン信号を送出する場合を例に挙げたが、逆にIポート12a−1に論理が反転関係にある2つの駆動パルスパターン信号を送出しても、同様に位相シフト量φを調整できることは言うまでもない。
【0069】
(第3の実施形態)
光スペクトラムアナライザを用いて位相シフト量φを調整する二つ目の手順について図10〜図12を用いて説明する。図10は、位相シフト量調整段階の第2の調整手順を示すフローチャートである。
【0070】
まず、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)をIポート12a−1に送出し、同時に第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)をQポート12a−2に送出する(ステップS120)。ここで、パルスパターン発生器25が出力する第1および第2のパルスパターン信号は通常のPRBS信号でよいが、互いに同一の信号パターンである点が第2の実施形態と異なる。
【0071】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラムS1(ω)を測定する(ステップS121)。
【0072】
次に、第1の駆動パルスパターン信号をIポート12a−1に送出し、論理反転した第2の駆動パルスパターン信号をQポート12a−2に送出する(ステップS122)。
【0073】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に論理反転した第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラムS2(ω)を測定する(ステップS123)。
【0074】
次に、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の比(以下、光スペクトラム比と記す)S2(ω)/S1(ω)を算出する(ステップS124)。光スペクトラム比が1(S2(ω)/S1(ω)=1)のときφ=π/2と推定される。一連の光スペクトラムの計算より得られる光スペクトラム比と位相シフト量φとの対応関係の計算結果を図11に示す。
【0075】
図11の縦軸は、搬送波周波数からの偏差10GHz以下における光スペクトラム比S2(ω)/S1(ω)の平均値である。実際の調整では位相シフト電圧を少しずつ変化させながら光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)を測定し、光スペクトラム比が1となったときの位相シフト電圧を最終的な位相シフト電圧と決定する(ステップS125)。
【0076】
なお、上記のステップS120およびS121の処理は第1の光スペクトラム測定段階に該当し、ステップS122およびS123の処理は第2の光スペクトラム測定段階に該当している。
【0077】
本実施形態の方法は第2の実施形態の方法と比べて簡単ではあるが、最初に第1のパルスパターン信号と第2のパルスパターン信号とを一致させなければならないという制限がある。
【0078】
以下に、位相シフト量調整段階の第2の調整手順の理論的根拠を示す。
LN光変調器10のIポート12a−1およびQポート12a−2が同一の入出力特性を持つと仮定すると、[数1]においてX(ω)=Y(ω)とすることにより、光スペクトラムS1(ω)、S2(ω)は次式のようになる。
【数4】
【0079】
従って、光スペクトラム比S2(ω)/S1(ω)はφ=π/2+ε(ε≪1)とおくと次式のようになる。
【数5】
即ち、光スペクトラム比S2(ω)/S1(ω)は位相シフト量φのπ/2からの偏差εに比例する項を持つことが分かる。
【0080】
具体例としてφ=3π/8、π/2、5π/8の場合の各光スペクトラムの計算例を図12に示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。グラフ中の太線はS1(ω)を、細線はS2(ω)を示している。
【0081】
φ=π/2のときに光スペクトラムS1(ω)、S2(ω)は一致し、S2(ω)/S1(ω)=1となる。また、φ=3π/8、5π/8では、それぞれ大となる光スペクトラムが異なるので、S2(ω)とS1(ω)のどちらが大きいかを知ることにより、位相シフト量φのずれ方向も知ることができる。
【0082】
以上の実施形態では、NRZ−QPSK方式を例にとって説明したが、RZ−QPSK方式においても、NRZ−PSK光変調部の後にRZ用の光変調器が付加されるだけなので、本方法は有効である。また、差動型であるNRZ−DQPSK方式においても、NRZ−QPSK方式との違いは信号コーディングであり、光特性は変わらないので本方法は有効である。また、RZ−DQPSK方式についても上記と同じ理由で本方法は有効である。
【0083】
(第4の実施形態)
本発明に係る光送信機の調整装置について図2を参照しながら説明する。
本実施形態の光送信機の調整装置は、光送信機20から出力された位相変調信号が入射する擬似光線路21と、擬似光線路21を伝播した位相変調信号の光スペクトラムを測定する光スペクトラムアナライザ22と、第1および第2のパルスパターン信号を出力するパルスパターン発生器25と、光スペクトラムアナライザ22により測定された光スペクトラムに応じて、パルスパターン発生器25から出力された第1および第2のパルスパターン信号を増幅するためのパラメータ、即ち、第1および第2の駆動パルスパターン信号の駆動振幅およびバイアス値を決定し、決定した駆動振幅およびバイアス値を光送信機20の電圧印加部15に設定する電圧設定部26と、を備える。
【0084】
また、本実施形態の光送信機の調整装置は、擬似光線路21を伝播した位相変調信号を電気信号に変換するDQPSK光受信機23と、DQPSK光受信機23から出力された電気信号の誤り率を判定する誤り率検出器24と、をさらに備えていてもよい。
【0085】
電圧設定部26は、パーソナルコンピュータ等の演算装置(不図示)により実現されるものとする。演算装置は、電圧設定部26で決定された駆動振幅、バイアス値、位相シフト電圧、および、基準光スペクトラム等を記憶する記憶部や、記憶部での記憶内容を適宜表示する表示部を備えていてもよい。また、演算装置は、パルスパターン発生器25、光スペクトラムアナライザ22、DQPSK光受信機23、誤り率検出器24を制御するようになっている。
【0086】
以上のように構成された本実施形態の光送信機の調整装置において、Iポート12a−1の駆動振幅を調整する場合(図3)は、パルスパターン発生器25から第1のパルスパターン信号としてのPRBS信号およびマーク信号(あるいはスペース信号)が送出される。
【0087】
パルスパターン発生器25から出力された2つの信号は、電圧印加部15を介して、Iポート12a−1およびQポート12a−2に送出される(図3のステップS100)。
【0088】
レーザ光源14から出射された単一縦モードのレーザ光のうち、Iポート12a−1に分岐された光はIポート用信号により変調されるが、Qポート12a−2に分岐された光は無変調となる。変調されたIポート12a−1からの光と無変調のQポート12a−2からの光はLN光変調器10内の光結合部13で合波されて位相変調信号となり、擬似光線路21に送出される。
【0089】
擬似光線路21を伝播した位相変調信号は光スペクトラムアナライザ22に入射し、光スペクトラムが測定される。この光スペクトラムは光スペクトラムアナライザ22から電圧設定部26に出力される(ステップS100−1)。
【0090】
電圧設定部26は、入力された光スペクトラムと不図示の記憶部に予め記憶されている基準光スペクトラムとを比較し、サイドローブのレベルが十分に一致していないと判定した場合には、電圧印加部15に設定する駆動振幅の値を現在の駆動振幅より所定値だけ異なる値に更新する(ステップS100−2)。
【0091】
更新された駆動振幅は電圧印加部15に設定され、更新された駆動振幅を有するIポート用信号が電圧印加部15からIポート12a−1に印加される。そして、ステップS100−1とステップS100−2の処理が再び実行される。
【0092】
一方、電圧設定部26は、入力された光スペクトラムと記憶部に予め記憶されている基準光スペクトラムのサイドローブのレベルが十分に一致していると判定した場合には、現在の駆動振幅を最終的な駆動振幅として決定して記憶部に記憶させる(図2のステップS101)。
【0093】
Qポート12a−2の駆動振幅の調整(図3のステップS102、S103)については、上記のIポート12a−1の場合と同様であるため説明を省略する。
【0094】
また、バイアス値の調整(図3のステップS104〜S107)を行う場合についても同様であるため説明を省略する。ただし、電圧設定部26が、入力された光スペクトラムと記憶部に予め記憶されている基準光スペクトラムとを比較し、搬送波周波数の中心光周波数からポート当たりのビットレート相当離れた周波数における光スペクトラムのレベルが十分に一致しているか否かを判定する点が上記の駆動電圧の調整の場合と異なる。
【0095】
また、本実施形態の光送信機の調整装置において、位相シフト電圧を調整する場合(図7)には、まず、パルスパターン発生器25から第1のパルスパターン信号(PRBS信号)および第2のパルスパターン信号(PRBS信号)が送出される。
【0096】
第1および第2のパルスパターン信号は、電圧印加部15によりIポート用信号およびQポート用信号となって、Iポート12a−1およびQポート12a−2に送出される(図7のステップS110)。
【0097】
レーザ光源14から出射された単一縦モードのレーザ光のうち、Iポート12a−1に分岐された光はIポート用信号により変調され、Qポート12a−2に分岐された光はQポート用信号により変調されるとともに、位相シフト部12b−1で位相シフトされる。それぞれ変調されたIポート12a−1からの光とQポート12a−2からの光はLN光変調器10内の光結合部13で合波されて位相変調信号となり、擬似光線路21に送出される。
【0098】
擬似光線路21を伝播した位相変調信号は光スペクトラムアナライザ22に入射し、光スペクトラムS1(ω)が測定される(図7のステップS111)。光スペクトラムS1(ω)は電圧設定部26に出力される。
【0099】
次に、パルスパターン発生器25から第1のパルスパターン信号および論理反転した第2のパルスパターン信号が送出され(図7のステップS112)、光スペクトラムアナライザ22によって光スペクトラムS2(ω)が測定される(図7のステップS113)。光スペクトラムS2(ω)は電圧設定部26に出力される。
【0100】
電圧設定部26は、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の差である差分光スペクトラムF(ω)の積分値(差分光スペクトラム積分値∫F(ω))を算出する(図7のステップS114)。
【0101】
電圧設定部26は、電圧印加部15に設定する位相シフト電圧の値を現在の位相シフト電圧の値より所定値だけ異なる値に更新する(ステップS114−1)。
【0102】
更新された位相シフト電圧は電圧印加部15に設定され、更新された位相シフト電圧が電圧印加部15から位相シフト部12b−1に印加される。そして、ステップS110からステップS114−1の処理が繰り返し実行される。なお、ステップS114−1における位相シフト電圧の更新回数や更新範囲は予め適切な範囲に定められているものとする。
【0103】
電圧設定部26は、上記の処理で得られた複数の差分光スペクトラム積分値∫F(ω)のデータのうち、最も絶対値の小さい差分光スペクトラム積分値∫F(ω)を得たときの位相シフト電圧を最終的な位相シフト電圧として記憶部に記憶させる(図7のステップS115)。
【0104】
以上説明したように、本発明に係る光送信機の調整方法および装置は、高価なサンプリング型光波形観測装置を用いることなく、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 LN光変調器
11 分岐部
12a−1、12a−2 位相変調部
12b−1、・・・、12b−M 位相シフト部
13 光結合部
14 レーザ光源
15 電圧印加部
20 光送信機
21、41 擬似光線路
22 光スペクトラムアナライザ
23、42 DQPSK光受信機
24、44 誤り率検出器
25、45 パルスパターン発生器
26 電圧設定部
43 サンプリング型光波形観測装置
45 パルスパターン発生器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信機の調整方法および装置に係り、特に4値以上の位相変調方式を用いた光送信機の調整方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線のトラフィック量増加により、光通信においても従来の強度変調方式から位相変調方式が使われるようになってきている。各種位相変調方式の中でもBPSK(Binary Phase Shift Keying)方式、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式、および差分符号化を表すD(Differential)を冠したDBPSK、DQPSK方式が注目されている。これらの方式の光送信機ではニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶を用いた光変調器(以下、LN光変調器と記す)が用いられている。
【0003】
NRZ(Non-Return to Zero)方式のDQPSK光送信機とその調整用測定系の構成の例を図13に示す。パルスパターン発生器45より擬似ランダムビット系列(Pseudo-Random Bit Sequence:以下、PRBSと記す)の信号を光送信機20に供給する。ここで、PRBS信号は、(2N−1)(Nを段数と呼ぶ)のビット周期を有する周期信号である。
【0004】
光送信機20から出力された位相変調信号は擬似光線路41に入射する。擬似光線路41は、実際の通信で使われる長さの光ファイバと同じ程度の光損失値や波長分散値または偏波モード分散値を、光ファイバを使わずに実現させたものであり、光送信機20に対する負荷となる。この擬似光線路41からの位相変調信号をDQPSK光受信機42で電気信号に変換し、この電気信号の誤り率を誤り率検出器44で判定して誤り率が所定の値以下になるように光送信機20の電圧印加部15を調整する。この調整の良否が光送信機20の性能を大きく左右する。QPSK方式またはDQPSK方式の光送信機では調整項目が多く煩雑で難しいことが、非特許文献1などで指摘されている。
【0005】
以下、NRZ−DQPSKまたはNRZ−QPSK方式の光送信機の調整項目について、図13を参照しながら説明する。ここでは両方式とも作用は同じなので、以下「NRZ−QPSK方式」と総称する。ここで、NRZ−QPSK方式のLN光変調器10のI(In-phase)ポート12a−1およびQ(Quadrature)ポート12a−2に印加される各駆動パルスパターン信号の振幅およびバイアス電圧を、LN光変調器10の特性を表す値である半波長電圧Vπで正規化した値を「駆動振幅」および「バイアス値」とする。対象とする調整項目は以下の5項目である。
(1)Iポートにおける駆動振幅、(2)Qポートにおける駆動振幅、(3)Iポートにおけるバイアス値、(4)Qポートにおけるバイアス値、(5)IポートとQポートのバランス電圧(I−Qバランス)
【0006】
非特許文献1に開示された方法では、誤り率検出器44で判定される誤り率が所定値以下になるように各調整項目を交互に調整する。このため、調整に時間がかかっていた。また、この所定値の設定が適切でない場合には、各調整項目が真に最適となる前に調整を終了している可能性もあった。
【0007】
このとき、例えば特許文献1に開示されているような、光コンスタレーションが表示可能なサンプリング型光波形観測装置43を併用すると調整を容易にすることができるが、この装置は超高速電子回路を多用するため、非常に高価であるという問題があった。
【0008】
一方、本発明者らは、安価な光スペクトラムアナライザで強度変調方式光送信機の調整を可能とする方法を発明した(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
以下では、Iポート12a−1およびQポート12a−2にそれぞれ供給される駆動パルスパターン信号が、パルスパターン発生器45から出力されるPRBS信号(段数Nが10)を電圧印加部15により増幅した信号であり、ポート当たりのビットレートを20Gbpsとした場合の計算例を用いて、特許文献2に開示された方法の問題点を説明する。
【0010】
(1)、(2)IポートおよびQポートにおける各駆動振幅
図13において、Iポート12a−1に印加される駆動パルスパターン信号の駆動振幅が最適値から20%低下したときの光スペクトラムの変化を図14のグラフに示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。同図(a)は光スペクトラムの全体像、同図(b)に同図(a)に示した光スペクトラムの30GHzから70GHzのデータを示す。グラフ中の太線は駆動振幅が最適値のときの光スペクトラムを、細線は駆動振幅が最適値から20%低下したときの光スペクトラムを示している。
【0011】
このように駆動振幅の変化は光スペクトラムの変化となって現れる。しかしながら、この変化はIポート12a−1とQポート12a−2のどちらの駆動振幅が最適値から偏移した場合でも同様に生じるため、光スペクトラムからだけではどちらのポートの駆動振幅に偏移が発生しているかの判断ができないという問題があった。
【0012】
(3)、(4)IポートおよびQポートにおける各バイアス値
図13において、Iポート12a−1に印加される駆動パルスパターン信号のバイアス値が最適値から10%ずれた場合の光スペクトラムの変化を図15に示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。同図(a)は光スペクトラムの全体像、同図(b)に同図(a)に示した光スペクトラムの17GHzから23GHzの部分の拡大図を示す。バイアス値が最適値よりずれると光スペクトラムのローブ間にピークが現れる。しかしながら、上記(1)、(2)の駆動振幅の場合と同様に、バイアス値にずれの生じているポートを判別できないという問題があった。
【0013】
(5)I−Qバランス
NRZ−QPSK方式の光送信機においてはIポートとQポートの間の位相シフト量をπ/2に設定することが必要である。これは通常「I−Qバランス」と呼ばれており、具体的には図13における位相シフト部12b−1の電極電圧を調整している。このI−Qバランスが最適値から10%変化したときの光スペクトラムの変化を図16に示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。同図(a)は最適値(0.5π)の光スペクトラム、同図(b)は10%変化したとき(0.45π)の光スペクトラム、同図(c)は両者を重ね書きした光スペクトラムである。この図が示すように、光スペクトラムからI−Qバランスの変化を検知することは困難であり、従って調整できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−93515号公報
【特許文献2】特願2009−155648号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】星田剛司、外4名、「偏波多重4値位相変調光送受信機のための制御技術」、信学技報、電子情報通信学会、2009年2月、第108巻、第423号、OCS2008−120、pp.79―83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上述べたように、特許文献2に開示された方法は、4値以上の位相変調方式においてはIポートとQポートの判別ができず、さらに、I−Qバランスについては光スペクトラムの変化として検知できないなどの問題があるため、4値以上の位相変調方式の光送信機には適用できなかった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、高価なサンプリング型光波形観測装置を用いることなく、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とする光送信機の調整方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の光送信機の調整方法は、入力光を複数に分岐する分岐部と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部と、を少なくとも有し、前記入力光の位相変調信号を出力する光変調器を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機の調整方法であって、前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、前記位相シフト部に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする構成を有している。
【0019】
また、本発明の請求項2の光送信機の調整方法は、入力光を複数に分岐する分岐部と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部と、前記光結合部によって結合した光の位相を、印加される駆動パルスパターン信号に応じてシフトして位相変調信号を出力する位相シフト部と、を有する光変調器を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機の調整方法であって、前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする構成を有している。
【0020】
これらの構成により、位相変調信号の誤り率に依存せずに、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整が可能な光送信機の調整方法を実現できる。
【0021】
また、本発明の請求項3の光送信機の調整方法は、前記振幅調整段階および前記バイアス電圧調整段階において、前記複数の位相変調部のうちの1つに、所定の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部にマーク信号あるいはスペース信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定し、前記光スペクトラムと予め求められた基準光スペクトラムとの差異が最小となるように、前記1つの位相変調部に印加する前記駆動パルスパターン信号の振幅およびバイアス電圧を調整することを特徴とする構成を有している。
【0022】
この構成により、測定した光スペクトラムのサイドローブには、マーク信号あるいはスペース信号を印加して無変調状態となった位相変調部からの寄与が含まれないため、測定した光スペクトラムのサイドローブと基準光スペクトラムのサイドローブとの差異を最小にすることにより、位相変調部ごとに独立に駆動振幅およびバイアス値の最適値を決定することができる。
【0023】
また、本発明の請求項4の光送信機の調整方法は、前記複数の位相変調部の個数が2であり、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部の個数が1であることを特徴とする構成を有していてもよい。
【0024】
また、本発明の請求項5の光送信機の調整方法は、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部の前記位相シフト量調整段階が、前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの差分の積分値の絶対値が最小となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする構成を有している。
【0025】
この構成により、2つの駆動パルスパターン信号を用い、2つの光スペクトラムの差分を得ることにより、1つの光スペクトラムでは検知できなかったI−Qバランスの変化を検知することができる。
【0026】
また、本発明の請求項6の光送信機の調整方法は、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部の前記位相シフト量調整段階は、前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に該第1の駆動パルスパターン信号と信号パターンの等しい第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの比が1となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする構成を有していてもよい。
【0027】
本発明の請求項7の光送信機の調整装置は、上記のいずれかの光送信機の調整方法を用いたことを特徴とする構成を有している。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、高価なサンプリング型光波形観測装置を用いることなく、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とする光送信機の調整方法および装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】LN光変調器の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明に係る光送信機の調整方法の構成の一例を示す概略図
【図3】IポートおよびQポートに送出される駆動パルスパターン信号の駆動振幅およびバイアス値の調整手順を示すフローチャート
【図4】第1および第2のパルスパターン信号の一例を示す説明図
【図5】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号の駆動振幅が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図6】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号のバイアス値が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図7】位相シフト量調整段階の第1の調整手順を示すフローチャート
【図8】位相シフト量調整段階の第1の調整手順における差分光スペクトラム積分値の計算結果を示すグラフ
【図9】位相シフト量調整段階の第1の調整手順における差分光スペクトラムの計算例を示すグラフ
【図10】位相シフト量調整段階の第2の調整手順を示すフローチャート
【図11】位相シフト量調整段階の第2の調整手順における光スペクトラム比の計算結果を示すグラフ
【図12】位相シフト量調整段階の第2の調整手順における光スペクトラムの計算例を示すグラフ
【図13】従来の光送信機の調整方法の構成例を示す概略図
【図14】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号の駆動振幅が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図15】Iポートに送出される駆動パルスパターン信号のバイアス値が変化したときの位相変調信号の光スペクトラム変化を示すグラフ
【図16】I−Qバランスが変化したときの位相変調信号の光スペクトラムを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る光送信機の調整方法および装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
本発明に係る光送信機の調整方法の第1の実施形態を図1〜図6を用いて説明する。本発明に係る光送信機の調整方法は、4値以上の位相変調方式の光送信機20が備えるLN光変調器10に印加する電圧信号を調整するものである。
【0032】
図1はLN光変調器10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、LN光変調器10は、入力光を複数に分岐する分岐部11と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて分岐部11によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う2個の位相変調部12a−1、12a−2と、位相変調部12a−1、12a−2のうちの少なくとも1つの前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部12b−1と、位相変調部および位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部13と、を有する。
【0033】
さらに、LN光変調器10は、光結合部13によって結合した光の位相を、印加される駆動パルスパターン信号に応じてシフトして位相変調信号を出力する位相シフト部12b−2、・・・、12b−M(Mは2以上の自然数)を有していてもよい。
【0034】
このように構成されたLN光変調器10は、2M+1値PSK信号を入力光の位相変調信号として出力できるようになっている。このとき、各位相シフト部12b−1、12b−2、・・・、12b−Mの位相シフト量は、π/2m(m=1、・・・、M)である。光結合部13の後段に位相シフト部12b−2、・・・、12b−Mが配置されない場合には、LN光変調器10はQPSK信号を出力するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態の光送信機の調整方法について述べる。本実施形態の光送信機の調整方法は、駆動パルスパターン信号の駆動振幅を位相変調部12a−1、12a−2ごとに調整する振幅調整段階と、駆動パルスパターン信号のバイアス値を位相変調部12a−1、12a−2ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、位相シフト部12b−1に印加される位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含む。
【0036】
以下では、位相変調部の個数が2、位相シフト部の個数が1の場合、即ち、4値の位相変調方式を例にとって説明する。なお、位相変調部12a−1、12a−2をそれぞれIポート、Qポートと呼ぶ。
【0037】
図2は、本実施形態の光送信機の調整方法の構成の一例を示す概略図である。
光送信機20は、位相変調信号を出力するLN光変調器10と、LN光変調器10に入力光としての単一縦モードのレーザ光を送出するレーザ光源14と、Iポート12a−1、Qポート12a−2、および位相シフト部12b−1のそれぞれに電圧信号を印加するための電圧印加部15と、を有する。
【0038】
光送信機20から出力される位相変調信号は擬似光線路21に入射し、擬似光線路21を伝播した位相変調信号は、光スペクトラムアナライザ22やDQPSK光受信機23に入力される。光スペクトラムアナライザ22では、位相変調信号の光スペクトラムが測定される。ここで用いる光スペクトラムアナライザ22は波長分解能が高いほうが望ましく、例えばボーレートが40Gbpsであれば波長分解能は2pm以下であることが望ましい。このような光スペクトラムアナライザは特開平3−115938号公報に開示されている。
【0039】
DQPSK光受信機23では位相変調信号が電気信号に変換される。DQPSK光受信機23の後段には誤り率検出器24が配置され、DQPSK光受信機23から出力された電気信号の誤り率が判定される。誤り率検出器24には、パルスパターン発生器25からクロック信号が供給されるようになっている。なお、本実施形態の光送信機の調整方法においては、DQPSK光受信機23と誤り率検出器24は必須ではない。
【0040】
パルスパターン発生器25は、さらに第1のパルスパターン信号および第2のパルスパターン信号を電圧印加部15に送出するようになっている。電圧印加部15には電圧設定部26からの制御信号が入力されるようになっている。電圧設定部26は、光スペクトラムアナライザ22により測定された光スペクトラムに応じて、第1および第2のパルスパターン信号を増幅するためのパラメータ、即ち、第1および第2の駆動パルスパターン信号の駆動振幅およびバイアス値を決定し、決定した駆動振幅およびバイアス値を電圧印加部15に設定するようになっている。
【0041】
電圧設定部26で決定された駆動振幅およびバイアス値を有する第1および第2の駆動パルスパターン信号は、電圧印加部15によりIポート12a−1およびQポート12a−2に出力される。
【0042】
図3(a)は、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)および第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)の駆動振幅を調整する手順(振幅調整段階)を示すフローチャートである。
【0043】
まず、Iポート用信号の駆動振幅を調整する場合は、パルスパターン発生器25を用いて、第1のパルスパターン信号として図4(a)に示すような信号パターン、例えば、10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出する。同時に、パルスパターン発生器25を用いて、図4(b)に示すような値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS100)。ここで、マーク信号またはスペース信号のビット数は、第1のパルスパターン信号のビット数以上であるとよい。
【0044】
これによりQポート12a−2は無変調状態となり、Qポート12a−2から出力される光のスペクトラムは、サイドローブを有さず、レーザ光源14から出力されるレーザ光の光スペクトラム(単一縦モード)とほぼ同一となる。図5(a)、(b)に、このときの光送信機20から出力される位相変調信号の光スペクトラムの計算例を示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。また、図中の太線は駆動振幅が最適値のときの基準光スペクトラムを、細線は駆動振幅が最適値から10%低下したときの光スペクトラムを示している。
【0045】
ここで、基準光スペクトラムは、光送信機20の符号誤り率を測定しながら駆動電圧やバイアス電圧を調整し、符号誤り率が最低となった状態での光スペクトラムであってもよく、あるいは、理論的に求めた光スペクトラムであってもよい。このような基準光スペクトラムを得る方法は、本発明者による特許(特願2009−157030号)に開示されている。
【0046】
なお、図5(a)は光スペクトラムの全体像であり、中央部にはQポートの光スペクトラムの特徴である単一縦モードが現れている。同図(b)は同図(a)に示した光スペクトラムの10GHzから90GHzの部分の拡大図である。
【0047】
実際に測定した光スペクトラムが図5の細線で示したようなものであった場合は、該光スペクトラムと基準光スペクトラムとの差異が最小となるような駆動振幅を決定し、電圧印加部15に設定する。具体的には、例えば、実際に測定した光スペクトラムのサイドローブには無変調状態となったQポート12a−2からの寄与が含まれないことを利用して、実際に測定した光スペクトラムと太線で示した基準光スペクトラムのサイドローブのレベルが一致するまで駆動振幅を少しずつ変化させ、一致したときの駆動振幅を最終的な駆動振幅として決定する(ステップS101)。
【0048】
次に、Qポート用信号の駆動振幅の調整を行う手順を説明する。この手順は、上述のIポート用信号の駆動振幅の調整において、IポートとQポートを入れ替えたものと同様である。ここでは値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出し、第2のパルスパターン信号として10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS102)。そして、ステップS101と同様に駆動振幅を決定する(ステップS103)。
【0049】
図3(b)は、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)および第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)のバイアス値を調整する手順(バイアス電圧調整段階)を示すフローチャートである。同図(a)に示した駆動振幅の調整手順と同様に、Iポート用信号のバイアス値を調整する場合は、パルスパターン発生器25を用いて、例えば、10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出する。同時に、パルスパターン発生器25を用いて、値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS104)。
【0050】
図6(a)、(b)にこのときの光スペクトラムの計算例を示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。また、図中の太線はバイアス値が最適値であるときの基準光スペクトラムを、細線はバイアス値が最適値から10%低下したときの光スペクトラムを示している。同図(b)は同図(a)に示した光スペクトラムの17GHzから23GHzの部分の拡大図である。
【0051】
図6(b)に示すように、搬送波周波数の中心光周波数からポート当たりのビットレート相当離れた周波数において光スペクトラムの顕著な変化が現れる。従って、この部分に着目して基準光スペクトラムと一致するまでバイアス値を少しずつ変化させ、一致したときのバイアス値を最終的なバイアス値と決定する(ステップS105)。
【0052】
次に、Qポート用信号のバイアス値の調整を行う手順を説明する。この手順は、上述のIポート用信号のバイアス値の調整において、IポートとQポートを入れ替えたものと同様である。ここでは値が全て「1」となる信号(マーク信号)、あるいは全て「0」となる信号(スペース信号)を電圧印加部15を介してIポート12a−1に送出し、10段のPRBS信号などの所定の信号パターンを電圧印加部15を介してQポート12a−2に送出する(ステップS106)。そして、ステップS105と同様にバイアス値を決定する(ステップS107)。
【0053】
以上の説明では、位相変調部の個数を2、位相シフト部の個数を1としたが、位相シフト部の個数が1より多い場合は、一方の位相変調部に、所定の駆動パルスパターン信号(例えば、10段のPRBS信号)を印加し、他方の位相変調部にマーク信号あるいはスペース信号を入力した状態とし、さらに、光結合部に後続する位相シフト部にマーク信号あるいはスペース信号を入力した状態とすることにより、位相変調部ごとに駆動振幅を調整することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
背景技術の欄で述べたように、NRZ−QPSK送信機においては、IポートとQポートの間の位相シフト量をπ/2に設定することが必要である。このためには位相シフト電圧を調整すればよいが、このような調整を行っても図16に示したように光スペクトラムはほとんど変化しないという問題があった。そこで、本発明者は、この問題を回避して、光スペクトラムアナライザを用いて位相シフト量φを調整するための手順を二種類考案した。本実施形態では、一つ目の手順について図7〜図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0055】
図7は、位相シフト量調整段階の第1の調整手順を示すフローチャートである。まず、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)をIポート12a−1に送出し、同時に第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)をQポート12a−2に送出する(ステップS110)。ここで、パルスパターン発生器25が出力する第1および第2のパルスパターン信号は通常のPRBS信号であればよく、かつ、互いに異なる信号パターンであるとする。
【0056】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラム(以下、S1(ω)と記す)を測定する(ステップS111)。
【0057】
次に、第1の駆動パルスパターン信号をIポート12a−1に送出し、論理反転した第2の駆動パルスパターン信号をQポート12a−2に送出する(ステップS112)。
【0058】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に論理反転した第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラム(以下、S2(ω)と記す)を測定する(ステップS113)。
【0059】
次に、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の差である差分光スペクトラムF(ω)の積分値(以下、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)と記す)を算出する(ステップS114)。図8に差分光スペクトラム積分値∫F(ω)と位相シフト量φとの対応関係を与える計算結果を示す。同図に示すように差分光スペクトラム積分値∫F(ω)がゼロとなったときが位相シフト量φの最適値であるπ/2に対応している。
【0060】
よって、位相シフト電圧を少しずつ変化させ、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)の絶対値が最小となったときの位相シフト電圧を最終的な位相シフト電圧と決定する(ステップS115)。
【0061】
なお、上記のステップS110およびS111の処理は第1の光スペクトラム測定段階に該当し、ステップS112およびS113の処理は第2の光スペクトラム測定段階に該当している。
【0062】
以下に、位相シフト量調整段階の第1の調整手順の理論的根拠を示す。
Iポート12a−1、Qポート12a−2からの出力電場をそれぞれx(t)、y(t)とし、Qポート12a−2側に付属する位相シフト部12b−1の寄与をejφ(φ≒π/2)とおくと、LN光変調器10からの出力電場e(t)はx(t)+ejφy(t)と表される。光スペクトラムS(ω)はe(t)のフーリエ変換E(ω)の絶対値の自乗として求められ、x(t)、y(t)のフーリエ変換をそれぞれX(ω)=|X(ω)|ejθ(ω)、Y(ω)=|Y(ω)|ejψ(ω)とおくと次式を得る。
【数1】
【0063】
ここで[数1]の光スペクトラムをS1(ω)とおく。Qポート12a−2への入力データの論理を反転して得られる光スペクトラムS2(ω)は、[数1]のψ(ω)をψ(ω)+πで置き換えたものとなり、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の差である差分光スペクトラムF(ω)は次式のようになる。
【数2】
【0064】
[数2]を積分し、cosφ、sinφに比例する項に分離すると次式のようになる。
【数3】
【0065】
ここで、LN光変調器10が完全なプッシュプル動作をすると仮定すると、両ポートからの出力電場x(t)、y(t)は実数値を取るので、θ(−ω)=−θ(ω)、ψ(−ω)=−ψ(ω)が成り立つ。|X(ω)|、|Y(ω)|はPSK変調のスペクトラム形状により偶関数と見なせるので、[数3]のFeven(ω)は偶関数、Fodd(ω)は奇関数である。
【0066】
従って、奇関数であるFodd(ω)の積分はゼロとなるため、偶関数であるFeven(ω)のみ着目すればよく、差分光スペクトラムF(ω)の積分値(差分光スペクトラム積分値∫F(ω))をcosφの推定に利用できる。ここで、位相シフト量φのπ/2からの偏差をε(≪1)とすると、cos(π/2+ε)=−sinε≒−εより、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)は最適値φ=π/2の近傍で偏差εに比例することが分かる。
【0067】
図9にφ=3π/8、π/2、5π/8の場合の差分光スペクトラムF(ω)の計算例を示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。グラフ中の太線はFeven(ω)を、細線はFodd(ω)を示している。同図に示すようにφ=π/2においてFeven(ω)=0、即ち、差分光スペクトラム積分値∫F(ω)がゼロとなる。
【0068】
以上の説明では、Qポート12a−2に論理が反転関係にある2つの駆動パルスパターン信号を送出する場合を例に挙げたが、逆にIポート12a−1に論理が反転関係にある2つの駆動パルスパターン信号を送出しても、同様に位相シフト量φを調整できることは言うまでもない。
【0069】
(第3の実施形態)
光スペクトラムアナライザを用いて位相シフト量φを調整する二つ目の手順について図10〜図12を用いて説明する。図10は、位相シフト量調整段階の第2の調整手順を示すフローチャートである。
【0070】
まず、第1の駆動パルスパターン信号(Iポート用信号)をIポート12a−1に送出し、同時に第2の駆動パルスパターン信号(Qポート用信号)をQポート12a−2に送出する(ステップS120)。ここで、パルスパターン発生器25が出力する第1および第2のパルスパターン信号は通常のPRBS信号でよいが、互いに同一の信号パターンである点が第2の実施形態と異なる。
【0071】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラムS1(ω)を測定する(ステップS121)。
【0072】
次に、第1の駆動パルスパターン信号をIポート12a−1に送出し、論理反転した第2の駆動パルスパターン信号をQポート12a−2に送出する(ステップS122)。
【0073】
そして、Iポート12a−1に第1の駆動パルスパターン信号、Qポート12a−2に論理反転した第2の駆動パルスパターン信号がそれぞれ送出されている状態で光スペクトラムS2(ω)を測定する(ステップS123)。
【0074】
次に、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の比(以下、光スペクトラム比と記す)S2(ω)/S1(ω)を算出する(ステップS124)。光スペクトラム比が1(S2(ω)/S1(ω)=1)のときφ=π/2と推定される。一連の光スペクトラムの計算より得られる光スペクトラム比と位相シフト量φとの対応関係の計算結果を図11に示す。
【0075】
図11の縦軸は、搬送波周波数からの偏差10GHz以下における光スペクトラム比S2(ω)/S1(ω)の平均値である。実際の調整では位相シフト電圧を少しずつ変化させながら光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)を測定し、光スペクトラム比が1となったときの位相シフト電圧を最終的な位相シフト電圧と決定する(ステップS125)。
【0076】
なお、上記のステップS120およびS121の処理は第1の光スペクトラム測定段階に該当し、ステップS122およびS123の処理は第2の光スペクトラム測定段階に該当している。
【0077】
本実施形態の方法は第2の実施形態の方法と比べて簡単ではあるが、最初に第1のパルスパターン信号と第2のパルスパターン信号とを一致させなければならないという制限がある。
【0078】
以下に、位相シフト量調整段階の第2の調整手順の理論的根拠を示す。
LN光変調器10のIポート12a−1およびQポート12a−2が同一の入出力特性を持つと仮定すると、[数1]においてX(ω)=Y(ω)とすることにより、光スペクトラムS1(ω)、S2(ω)は次式のようになる。
【数4】
【0079】
従って、光スペクトラム比S2(ω)/S1(ω)はφ=π/2+ε(ε≪1)とおくと次式のようになる。
【数5】
即ち、光スペクトラム比S2(ω)/S1(ω)は位相シフト量φのπ/2からの偏差εに比例する項を持つことが分かる。
【0080】
具体例としてφ=3π/8、π/2、5π/8の場合の各光スペクトラムの計算例を図12に示す。グラフの横軸は搬送波周波数からの偏差を示している。グラフ中の太線はS1(ω)を、細線はS2(ω)を示している。
【0081】
φ=π/2のときに光スペクトラムS1(ω)、S2(ω)は一致し、S2(ω)/S1(ω)=1となる。また、φ=3π/8、5π/8では、それぞれ大となる光スペクトラムが異なるので、S2(ω)とS1(ω)のどちらが大きいかを知ることにより、位相シフト量φのずれ方向も知ることができる。
【0082】
以上の実施形態では、NRZ−QPSK方式を例にとって説明したが、RZ−QPSK方式においても、NRZ−PSK光変調部の後にRZ用の光変調器が付加されるだけなので、本方法は有効である。また、差動型であるNRZ−DQPSK方式においても、NRZ−QPSK方式との違いは信号コーディングであり、光特性は変わらないので本方法は有効である。また、RZ−DQPSK方式についても上記と同じ理由で本方法は有効である。
【0083】
(第4の実施形態)
本発明に係る光送信機の調整装置について図2を参照しながら説明する。
本実施形態の光送信機の調整装置は、光送信機20から出力された位相変調信号が入射する擬似光線路21と、擬似光線路21を伝播した位相変調信号の光スペクトラムを測定する光スペクトラムアナライザ22と、第1および第2のパルスパターン信号を出力するパルスパターン発生器25と、光スペクトラムアナライザ22により測定された光スペクトラムに応じて、パルスパターン発生器25から出力された第1および第2のパルスパターン信号を増幅するためのパラメータ、即ち、第1および第2の駆動パルスパターン信号の駆動振幅およびバイアス値を決定し、決定した駆動振幅およびバイアス値を光送信機20の電圧印加部15に設定する電圧設定部26と、を備える。
【0084】
また、本実施形態の光送信機の調整装置は、擬似光線路21を伝播した位相変調信号を電気信号に変換するDQPSK光受信機23と、DQPSK光受信機23から出力された電気信号の誤り率を判定する誤り率検出器24と、をさらに備えていてもよい。
【0085】
電圧設定部26は、パーソナルコンピュータ等の演算装置(不図示)により実現されるものとする。演算装置は、電圧設定部26で決定された駆動振幅、バイアス値、位相シフト電圧、および、基準光スペクトラム等を記憶する記憶部や、記憶部での記憶内容を適宜表示する表示部を備えていてもよい。また、演算装置は、パルスパターン発生器25、光スペクトラムアナライザ22、DQPSK光受信機23、誤り率検出器24を制御するようになっている。
【0086】
以上のように構成された本実施形態の光送信機の調整装置において、Iポート12a−1の駆動振幅を調整する場合(図3)は、パルスパターン発生器25から第1のパルスパターン信号としてのPRBS信号およびマーク信号(あるいはスペース信号)が送出される。
【0087】
パルスパターン発生器25から出力された2つの信号は、電圧印加部15を介して、Iポート12a−1およびQポート12a−2に送出される(図3のステップS100)。
【0088】
レーザ光源14から出射された単一縦モードのレーザ光のうち、Iポート12a−1に分岐された光はIポート用信号により変調されるが、Qポート12a−2に分岐された光は無変調となる。変調されたIポート12a−1からの光と無変調のQポート12a−2からの光はLN光変調器10内の光結合部13で合波されて位相変調信号となり、擬似光線路21に送出される。
【0089】
擬似光線路21を伝播した位相変調信号は光スペクトラムアナライザ22に入射し、光スペクトラムが測定される。この光スペクトラムは光スペクトラムアナライザ22から電圧設定部26に出力される(ステップS100−1)。
【0090】
電圧設定部26は、入力された光スペクトラムと不図示の記憶部に予め記憶されている基準光スペクトラムとを比較し、サイドローブのレベルが十分に一致していないと判定した場合には、電圧印加部15に設定する駆動振幅の値を現在の駆動振幅より所定値だけ異なる値に更新する(ステップS100−2)。
【0091】
更新された駆動振幅は電圧印加部15に設定され、更新された駆動振幅を有するIポート用信号が電圧印加部15からIポート12a−1に印加される。そして、ステップS100−1とステップS100−2の処理が再び実行される。
【0092】
一方、電圧設定部26は、入力された光スペクトラムと記憶部に予め記憶されている基準光スペクトラムのサイドローブのレベルが十分に一致していると判定した場合には、現在の駆動振幅を最終的な駆動振幅として決定して記憶部に記憶させる(図2のステップS101)。
【0093】
Qポート12a−2の駆動振幅の調整(図3のステップS102、S103)については、上記のIポート12a−1の場合と同様であるため説明を省略する。
【0094】
また、バイアス値の調整(図3のステップS104〜S107)を行う場合についても同様であるため説明を省略する。ただし、電圧設定部26が、入力された光スペクトラムと記憶部に予め記憶されている基準光スペクトラムとを比較し、搬送波周波数の中心光周波数からポート当たりのビットレート相当離れた周波数における光スペクトラムのレベルが十分に一致しているか否かを判定する点が上記の駆動電圧の調整の場合と異なる。
【0095】
また、本実施形態の光送信機の調整装置において、位相シフト電圧を調整する場合(図7)には、まず、パルスパターン発生器25から第1のパルスパターン信号(PRBS信号)および第2のパルスパターン信号(PRBS信号)が送出される。
【0096】
第1および第2のパルスパターン信号は、電圧印加部15によりIポート用信号およびQポート用信号となって、Iポート12a−1およびQポート12a−2に送出される(図7のステップS110)。
【0097】
レーザ光源14から出射された単一縦モードのレーザ光のうち、Iポート12a−1に分岐された光はIポート用信号により変調され、Qポート12a−2に分岐された光はQポート用信号により変調されるとともに、位相シフト部12b−1で位相シフトされる。それぞれ変調されたIポート12a−1からの光とQポート12a−2からの光はLN光変調器10内の光結合部13で合波されて位相変調信号となり、擬似光線路21に送出される。
【0098】
擬似光線路21を伝播した位相変調信号は光スペクトラムアナライザ22に入射し、光スペクトラムS1(ω)が測定される(図7のステップS111)。光スペクトラムS1(ω)は電圧設定部26に出力される。
【0099】
次に、パルスパターン発生器25から第1のパルスパターン信号および論理反転した第2のパルスパターン信号が送出され(図7のステップS112)、光スペクトラムアナライザ22によって光スペクトラムS2(ω)が測定される(図7のステップS113)。光スペクトラムS2(ω)は電圧設定部26に出力される。
【0100】
電圧設定部26は、光スペクトラムS1(ω)とS2(ω)の差である差分光スペクトラムF(ω)の積分値(差分光スペクトラム積分値∫F(ω))を算出する(図7のステップS114)。
【0101】
電圧設定部26は、電圧印加部15に設定する位相シフト電圧の値を現在の位相シフト電圧の値より所定値だけ異なる値に更新する(ステップS114−1)。
【0102】
更新された位相シフト電圧は電圧印加部15に設定され、更新された位相シフト電圧が電圧印加部15から位相シフト部12b−1に印加される。そして、ステップS110からステップS114−1の処理が繰り返し実行される。なお、ステップS114−1における位相シフト電圧の更新回数や更新範囲は予め適切な範囲に定められているものとする。
【0103】
電圧設定部26は、上記の処理で得られた複数の差分光スペクトラム積分値∫F(ω)のデータのうち、最も絶対値の小さい差分光スペクトラム積分値∫F(ω)を得たときの位相シフト電圧を最終的な位相シフト電圧として記憶部に記憶させる(図7のステップS115)。
【0104】
以上説明したように、本発明に係る光送信機の調整方法および装置は、高価なサンプリング型光波形観測装置を用いることなく、安価かつ簡易な構成で4値以上の位相変調方式の光送信機の調整を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0105】
10 LN光変調器
11 分岐部
12a−1、12a−2 位相変調部
12b−1、・・・、12b−M 位相シフト部
13 光結合部
14 レーザ光源
15 電圧印加部
20 光送信機
21、41 擬似光線路
22 光スペクトラムアナライザ
23、42 DQPSK光受信機
24、44 誤り率検出器
25、45 パルスパターン発生器
26 電圧設定部
43 サンプリング型光波形観測装置
45 パルスパターン発生器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光を複数に分岐する分岐部(11)と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部(12a−1、12a−2)と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部(12b−1)と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部(13)と、を少なくとも有し、前記入力光の位相変調信号を出力する光変調器(10)を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機(20)の調整方法であって、
前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、
前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、
前記位相シフト部に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、
前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする光送信機の調整方法。
【請求項2】
入力光を複数に分岐する分岐部(11)と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部(12a−1、12a−2)と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部(12b−1)と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部(13)と、前記光結合部によって結合した光の位相を、印加される駆動パルスパターン信号に応じてシフトして位相変調信号を出力する位相シフト部(12b−2、・・・、12b−M)と、を有する光変調器(10)を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機(20)の調整方法であって、
前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、
前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、
少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、
前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする光送信機の調整方法。
【請求項3】
前記振幅調整段階および前記バイアス電圧調整段階において、前記複数の位相変調部のうちの1つに、所定の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部にマーク信号あるいはスペース信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定し、
前記光スペクトラムと予め求められた基準光スペクトラムとの差異が最小となるように、前記1つの位相変調部に印加する前記駆動パルスパターン信号の振幅およびバイアス電圧を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光送信機の調整方法。
【請求項4】
前記複数の位相変調部の個数が2であり、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)の個数が1であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光送信機の調整方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)の前記位相シフト量調整段階は、
前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、
前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、
前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの差分の積分値の絶対値が最小となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする請求項4に記載の光送信機の調整方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)の前記位相シフト量調整段階は、
前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に該第1の駆動パルスパターン信号と信号パターンの等しい第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、
前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、
前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの比が1となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする請求項4に記載の光送信機の調整方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光送信機の調整方法を用いたことを特徴とする光送信機の調整装置。
【請求項1】
入力光を複数に分岐する分岐部(11)と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部(12a−1、12a−2)と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部(12b−1)と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部(13)と、を少なくとも有し、前記入力光の位相変調信号を出力する光変調器(10)を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機(20)の調整方法であって、
前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、
前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、
前記位相シフト部に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、
前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする光送信機の調整方法。
【請求項2】
入力光を複数に分岐する分岐部(11)と、印加される駆動パルスパターン信号に応じて前記分岐部によって分岐した複数の入力光のそれぞれに対して位相変調を行う複数の位相変調部(12a−1、12a−2)と、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられ、印加される位相シフト電圧に応じて前記位相変調部を伝播する光の位相をシフトする位相シフト部(12b−1)と、前記位相変調部および前記位相シフト部からの複数の出力光を結合する光結合部(13)と、前記光結合部によって結合した光の位相を、印加される駆動パルスパターン信号に応じてシフトして位相変調信号を出力する位相シフト部(12b−2、・・・、12b−M)と、を有する光変調器(10)を備えた4値以上の位相変調方式の光送信機(20)の調整方法であって、
前記駆動パルスパターン信号の振幅を前記位相変調部ごとに調整する振幅調整段階と、
前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧を前記位相変調部ごとに調整するバイアス電圧調整段階と、
少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)に印加される前記位相シフト電圧を調整する位相シフト量調整段階と、を含み、
前記振幅調整段階、前記バイアス電圧調整段階、および、前記位相シフト量調整段階が、前記位相変調信号の光スペクトラムに基づいて、前記駆動パルスパターン信号の振幅、前記駆動パルスパターン信号のバイアス電圧、および、前記位相シフト電圧の最適値を与えることを特徴とする光送信機の調整方法。
【請求項3】
前記振幅調整段階および前記バイアス電圧調整段階において、前記複数の位相変調部のうちの1つに、所定の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部にマーク信号あるいはスペース信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定し、
前記光スペクトラムと予め求められた基準光スペクトラムとの差異が最小となるように、前記1つの位相変調部に印加する前記駆動パルスパターン信号の振幅およびバイアス電圧を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光送信機の調整方法。
【請求項4】
前記複数の位相変調部の個数が2であり、少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)の個数が1であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光送信機の調整方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)の前記位相シフト量調整段階は、
前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、
前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、
前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの差分の積分値の絶対値が最小となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする請求項4に記載の光送信機の調整方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記位相変調部の前段または後段に設けられた前記位相シフト部(12b−1)の前記位相シフト量調整段階は、
前記複数の位相変調部のうちの1つに、第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、他の位相変調部に該第1の駆動パルスパターン信号と信号パターンの等しい第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第1の光スペクトラム測定段階と、
前記1つの位相変調部に、前記第1の駆動パルスパターン信号を印加し、かつ、前記他の位相変調部に論理反転した前記第2の駆動パルスパターン信号を印加した状態で、前記光送信機から出力される前記位相変調信号の光スペクトラムを測定する第2の光スペクトラム測定段階と、を含み、
前記第1の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムと、第2の光スペクトラム測定段階で測定した光スペクトラムとの比が1となるように、前記位相シフト電圧を調整することを特徴とする請求項4に記載の光送信機の調整方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光送信機の調整方法を用いたことを特徴とする光送信機の調整装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−42796(P2012−42796A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185004(P2010−185004)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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