説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排気ガス中に含まれる高酸化能物質を除去する。
【解決手段】パティキュレートフィルタ14上流の機関排気通路内に電圧を印加することにより排気ガス中のカーボン粒子凝集体を細分化する細分化装置11を配置する。細分化装置11により細分化されたカーボン粒子を排気タービン7b内に送り込んでカーボン粒子を撹拌することにより排気ガス中に含まれる高酸化能物質をカーボン粒子に付着させる。次いで高酸化能物質の付着したカーボン粒子をパティキュレートフィルタ14により捕獲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボン粒子凝集体を含む気体に交番電圧或いはパルス電圧を印加してカーボン粒子凝集体を細分化し、細分化されたカーボン粒子を活性媒体に導びいてカーボン粒子を酸化させ、それによって気体中からカーボン粒子凝集体を除去する方法が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開昭56−45750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで内燃機関では排気ガス中に燃焼時に生成されたケトン、アルデヒド、オゾン、パーオキサイド等の高酸化能物質が含まれている。この高酸化能物質は有害であるがこれまでこの高酸化能物質を排気ガス中から除去することについて何ら関心が向けられていないのが現状である。
本発明はカーボン粒子凝集体を細分化する公知の技術を利用して排気ガス中から高酸化能物質を確実に除去するようにした排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち、本発明によれば、機関排気通路内にパティキュレートフィルタを配置した内燃機関の排気浄化装置において、パティキュレートフィルタ上流の機関排気通路内に電圧を印加することにより排気ガス中のカーボン粒子凝集体を細分化する細分化装置を配置し、細分化装置により細分化されたカーボン粒子を含む排気ガスを断面の狭められた小断面排気通路内に導びいてカーボン粒子を撹拌することにより排気ガス中に含まれる高酸化能物質をカーボン粒子に付着させ、次いで高酸化能物質の付着したカーボン粒子を含んだ排気ガスを上述の小断面排気通路から断面の拡大された大断面排気通路内に導びいて高酸化能物質の付着したカーボン粒子を減速させ、次いでこれらカーボン粒子をパティキュレートフィルタにより捕獲するようにしている。
【発明の効果】
【0005】
高酸化能物質の付着したカーボン粒子をパティキュレートフィルタにより捕獲することによって高酸化能物質が大気中に排出するのを阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを夫々示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口はエアクリーナ8に連結される。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁9が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置10が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置10内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
【0007】
一方、排気マニホルド5の出口は電圧を印加することにより排気ガス中のカーボン粒子凝集体を細分化する細分化装置11を介して排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口は排気後処理装置12に連結される。この排気後処理装置12内には上流側から順に酸化触媒13、パティキュレートフィルタ14およびNO吸蔵還元触媒15が配置される。なお、パティキュレートフィルタ14上にもNO吸蔵還元触媒を担持させることができる。排気マニホルド5内にはNO吸蔵還元触媒15に吸蔵されたNOをNO吸蔵還元触媒15から放出させて還元するための還元剤の供給弁16が配置されている。
【0008】
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路17を介して互いに連結され、EGR通路17内には電子制御式EGR制御弁18が配置される。また、EGR通路17周りにはEGR通路17内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置19が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置19内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管20を介してコモンレール21に連結される。このコモンレール21内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ22から燃料が供給され、コモンレール21内に供給された燃料は各燃料供給管20を介して燃料噴射弁3に供給される。
【0009】
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32,RAM(ランダムアクセスメモリ)33,CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。アクセルべダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42と車速に比例した出力パルスを発生する車速センサ43とが接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁9駆動用ステップモータ、還元剤供給弁16,EGR制御弁18、燃料ポンプ20および細分化装置11に印加すべき高電圧を発生する高電圧発生装置44に接続される。
【0010】
図2は図1に示される細分化装置11の拡大側面断面図を示している。図2を参照すると細分化装置11は接地側電極を構成している円筒状ケーシング50と、円筒状ケーシング50内をケーシング50内の中心軸線に沿って延びかつ絶縁体52を介してケーシング50により支持されている中心電極51とを具備しており、この中心電極51に高電圧発生装置44において発生せしめられた例えば60Hzの交流又は直流からなる2400(v)程度の高電圧が印加される。
【0011】
中心電極51にこのような高電圧が印加されると図3(A)に示されるような排気ガス中に含まれるカーボン粒子凝集体は各カーボン粒子に発生する誘電分極作用によって図3(B)に示されるように各カーボン粒子に細分化される。なお、細分化装置11内においてコロナ放電を生じさせるとカーボン粒子凝集体はより一層確実にカーボン粒子に細分化することができる。
【0012】
図4はコロナ放電を生じさせるに適した細分化装置11を示している。この細分化装置11では接地側電極を構成している円筒状ケーシング50により電極53が絶縁体54を介して支持されており、この電極53の先端部55はコロナ放電が生じるように尖頭形状を有する。
【0013】
さて、内燃機関では排気ガス中に燃焼時に生成されたケトン、アルデヒド、オゾン、パーオキサイド等の高酸化能物質が含まれている。この高酸化能物質はカーボン粒子が図3(A)に示されるような凝集体の形をしていてもカーボン粒子の表面に付着するがこのような凝集体の形をしていると表面積が小さいためにカーボン粒子に付着する高酸化能物質の量はそれほど多くない。そこで本発明ではできるだけ多くの高酸化能物質をカーボン粒子に付着させるためにカーボン粒子凝集体を細分化装置11において図3(B)に示されるようにカーボン粒子に細分化するようにしている。
【0014】
ところで、このようにカーボン粒子凝集体を細分化するとカーボン粒子への高酸化能物質の付着量を増大することができるがカーボン粒子への高酸化能物質の付着量を更に増大するには高酸化能物質とカーボン粒子との接触する機会を更に増大することが必要となる。そこで本発明では細分化されたカーボン粒子を含む排気ガスを断面の狭められた小断面排気通路内に導びくようにしている。
【0015】
図1に示される実施例ではこの小断面排気通路は排気タービン7b内に形成されている。即ち、排気タービン7b内はタービン翼車の翼に沿って排気ガスを高速度で流すために排気タービン7bのタービン翼車周りではタービン7bの入口および出口に比べて断面が狭められている。従って排気タービン7b内には小断面排気通路が形成されていることになる。
【0016】
排気ガスが小断面排気通路内に導びかれると排気ガス流が乱されるために高酸化能物質とカーボン粒子との接触する機会は極度に増大し、斯くして多量の高酸化能物質がカーボン粒子に付着することになる。特に図1に示されるように小断面排気通路が排気タービン7b内に形成されている場合には排気タービン7b内で排気ガスが撹拌されるので高酸化能物質とカーボン粒子との接触する機会は更に増大し、斯くして更に多量の高酸化能物質がカーボン粒子に付着することになる。
【0017】
次いで高酸化能物質が付着したカーボン粒子はパティキュレートフィルタ14に導びかれる。このときパティキュレートフィルタ14内を流れる排気ガスの流速が速いとカーボン粒子はパティキュレートフィルタ14に捕獲されることなくパティキュレートフィルタ14を素通りしてしまい、斯くして高酸化能物質がカーボン粒子と共に大気中に排出されてしまう。一方、このときカーボン粒子がパティキュレートフィルタ14を素通りせず、パティキュレートフィルタ14に捕獲されるようにするにはパティキュレートフィルタ14内を流れる排気ガスの流速を遅くする必要がある。
【0018】
そこで本発明では高酸化能物質の付着したカーボン粒子を含んだ排気ガスを小断面排気通路から断面の拡大された大断面排気通路内に導びいて高酸化能物質の付着したカーボン粒子を減速させ、それによってこれらカーボン粒子をパティキュレートフィルタ14により捕獲するようにしている。この場合、図1に示される実施例では排気タービン7bの出口からパティキュレートフィルタ14に至る間の排気通路が大断面排気通路を形成している。
【0019】
一方、本発明による実施例ではパティキュレートフィルタ14上に捕獲されたパティキュレート量が予め定められている許容量を越えると例えば還元剤供給弁16から還元剤が供給されてこの還元剤の酸化反応熱によりパティキュレートフィルタ14が昇温せしめられ、それによってパティキュレートフィルタ14上に捕獲されているパティキュレートが燃焼除去せしめられる。このとき同時にパティキュレートフィルタ14に捕獲されたカーボン粒子に付着している高酸化能物質も燃焼除去せしめられる。斯くして大気中に高酸化能物質が排出されるのを阻止することができる。
【0020】
なお、細分化装置11におけるカーボン粒子凝集体の細分化作用はカーボン粒子凝集体が強電界内に存在している時間が長いほど、即ち排気ガスの流速が遅いほど促進される。従って本発明では細分化装置11は排気タービン7b内に形成される小断面排気通路よりも大きな断面を有する排気通路内に配置されている。また、カーボン粒子凝集体は排気ガス温が高いほど細分化する。従って図1に示されるように排気ガス温の高い排気タービン7bの上流に細分化装置11を配置することによってカーボン粒子凝集体の細分化作用を促進することができる。
【0021】
また、高酸化能物質は燃焼温度が低いときほど発生し、従って高酸化能物質の発生量が多いときのみカーボン粒子凝集体の細分化作用を行うこともできる。図5は高酸化能物質の発生量が多い予め定められた機関の運転状態のときのみ、即ち車速が予め定められた車速以下のときのみ細分化装置11に高電圧を印加するようにした場合を示している。
【0022】
即ち、図5を参照するとまず初めにステップ60において車速センサ43の出力パルスから車速が算出される。次いでステップ61では車速が予め定められた車速、例えば20km/hよりも遅いか否かが判別され、車速が20km/h以下のときにはステップ62に進んで細分化装置11への高電圧の印加作用が行われる。
【0023】
図6に別の実施例を示す。この実施例では3つの気筒に対して共通の排気マニホルド70と、1つの気筒に対する独立した排気通路71とが設けられており、この排気通路71内に細分化装置11が配置されている。即ち、この実施例では細分化装置11は一部の気筒の排気通路内にのみ配置されている。このように一つの気筒から排出された排気ガス中のカーボン粒子凝集体のみを細分化しても数多くの細分化されたカーボン粒子が生成されるのでこの実施例では一つの気筒から排出された排気ガス中のカーボン粒子凝集体のみを細分化するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】圧縮着火式内燃機関の全体図である。
【図2】図1に示される細分化装置の拡大側面断面図である。
【図3】カーボン粒子凝集体の細分化を説明するための図である。
【図4】細分化装置の別の実施例を示す側面断面図である。
【図5】高電圧の印加を制御するためのフローチャートである。
【図6】圧縮着火式内燃機関の別の実施例を示す全体図である。
【符号の説明】
【0025】
5,70 排気マニホルド
7 排気ターボチャージャ
7b 排気タービン
11 細分化装置
14 パティキュレートフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関排気通路内にパティキュレートフィルタを配置した内燃機関の排気浄化装置において、パティキュレートフィルタ上流の機関排気通路内に電圧を印加することにより排気ガス中のカーボン粒子凝集体を細分化する細分化装置を配置し、該細分化装置により細分化されたカーボン粒子を含む排気ガスを断面の狭められた小断面排気通路内に導びいてカーボン粒子を撹拌することにより排気ガス中に含まれる高酸化能物質をカーボン粒子に付着させ、次いで高酸化能物質の付着したカーボン粒子を含んだ排気ガスを該小断面排気通路から断面の拡大された大断面排気通路内に導びいて高酸化能物質の付着したカーボン粒子を減速させ、次いでこれらカーボン粒子をパティキュレートフィルタにより捕獲するようにした内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
上記細分化装置は上記小断面排気通路よりも大きな断面を有する排気通路内に配置されている請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
上記細分化装置とパティキュレートフィルタとの間には排気ターボチャージャの排気タービンが配置されており、上記小断面排気通路が排気タービン内に形成されている請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
上記細分化装置は誘電分極させることによりカーボン粒子凝集体を細分化させる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
上記細分化装置はコロナ放電を生じさせることによりカーボン粒子凝集体を細分化させる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
上記細分化装置に対し予め定められた機関の運転状態のときにのみ電圧の印加作用が行われる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
上記細分化装置は一部の気筒の排気通路内にのみ配置されている請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163846(P2008−163846A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354510(P2006−354510)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】