説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排出されるNOの量を低減することが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】オゾン生成部、及び、オゾン生成部で生成されたオゾンの濃度を検出する濃度センサを有するオゾン供給手段と、検出されたオゾン濃度を用いてオゾン供給可能量を算出する算出手段と、排気ガスに含まれるNO量を検出する検出手段と、触媒の温度を検出する温度センサとを備え、触媒の温度が活性温度未満であり、且つ、算出されたオゾン供給可能量が検出されたNO量よりも少ない場合に、NO排出抑制運転が行われる、内燃機関の排気浄化装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスには、NO等に代表される化学物質(以下において、単に「NO」ということがある。)が含まれており、この化学物質は大気汚染の一因と考えられている。それゆえ、大気汚染を抑制するためには、排気ガスから上記化学物質を除去することが重要である。
【0003】
大気汚染の一因になる化学物質を排気ガスから除去する技術としては、例えば、化学物質を触媒に吸着させることによって排気ガスを浄化する排気浄化装置等が知られている。
【0004】
このような排気浄化装置に関する技術として、例えば特許文献1には、酸素富化ガスを供給する酸素富化ガス供給部及び酸素富化ガスを処理してオゾンを発生させるオゾン生成部を有する排気ガス浄化システム、過給機、並びに、EGRシステムを有する内燃機関の制御方法が開示されている。また、特許文献2には、排ガスを流通させる排気管に設けたNO浄化触媒と、気体をプラズマ化してNO浄化触媒の排ガス流れ上流側で排気管に供給するプラズマ発生装置と、再循環排ガス及び空気の一方を切り替えてプラズマ化される気体としてプラズマ発生装置に供給する供給ガス切り替え装置と、プラズマ発生装置でプラズマ化される又はプラズマ化された気体に還元剤を添加するインジェクターと、を有する排ガス浄化装置が開示されている。また、特許文献3には、EGRガス供給作用時であって且つEGR触媒温度があらかじめ定められた設定温度内にあるときにオゾン供給作用を行い、EGRガス供給作用停止時又はEGR触媒温度が設定温度範囲外にあるときにオゾン供給作用を停止することで、排気再循環ガス中の粒子状物質を確実に酸化除去する内燃機関の排気浄化装置が開示されている。また、非特許文献1乃至非特許文献3には、ディーゼル機関の無煙低温燃焼法に関する技術が開示されている。また、特許文献4には、エンジンの排気ガス中の汚染物を減ずるための装置であって、エンジン内に導かれた空気中の酸素をオゾンに変換する約200ナノメータ未満の波長を持った紫外線を作り出すための少なくとも1つの光源と、内燃機関の排気ガス中のオゾンを検出するためのオゾンセンサと、内燃機関の排気ガス中に所定量のオゾンが検出された時に少なくとも1つの光源を消し、内燃機関の排気ガス中に所定量未満のオゾンしか検出されなかったときに少なくとも1つの光源をつけるためのコントローラと、を有し、オゾンが、内燃機関による燃料の燃焼効率を高め、これにより、排気ガス中の少なくとも1つの汚染物質の濃度が減ずる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−113459号公報
【特許文献2】特開2006−150211号公報
【特許文献3】特開2009−174381号公報
【特許文献4】特表2001−508514号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】佐々木静夫、他2名、「ディーゼル機関の無煙低温燃焼法(第1報)−冷却された大量EGRガスを用いた理論空燃比前後での無煙燃焼−」、自動車技術会論文集、社団法人自動車技術会、2003年1月、Vol.34、No.1、p.65−70
【非特許文献2】稲垣和久、他3名、「ディーゼル機関の無煙低温燃焼法(第2報)−数値解析によるメカニズムの解明−」、自動車技術会論文集、社団法人自動車技術会、2003年1月、Vol.34、No.1、p.71−76
【非特許文献3】佐々木静夫、他2名、「ディーゼル機関の無煙低温燃焼法(第3報)−吸蔵還元型NOx触媒のディーゼル機関への適用−」、自動車技術会論文集、社団法人自動車技術会、2003年1月、Vol.34、No.1、p.77−82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている技術によれば、オゾン生成部を有しているので、オゾンを用いて排気ガス中の粒子状物質等を浄化することが可能になると考えられる。ここで、オゾンを用いて排気ガス中のNO量を十分に低減するためには、オゾン濃度を一定値以上にすることが好ましい。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、オゾン生成部によって生成されたオゾンの濃度を検出する機器が備えられておらず、排気ガスに含まれるNO量が多くなりやすい状況(例えば、内燃機関の始動直後等)への対策が施されていない。そのため、特許文献1に開示されている技術には、排気ガスに含まれるNOの低減効果が不十分になる虞があった。また、特許文献4に開示されている装置は、オゾンセンサを有しているが、特許文献4には、オゾンセンサで検出したオゾン濃度を用いて排気ガスに含まれるNOの量を低減するための技術が開示されていない。そのため、特許文献1及び特許文献4に開示されている技術と、特許文献2、特許文献3、及び、非特許文献1乃至非特許文献3に開示されている技術とを組み合わせたとしても、排出されるNOの量を低減することは困難であった。
【0008】
そこで本発明は、排出されるNOの量を低減することが可能な、内燃機関の排気浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、内燃機関から排出された排気ガスを、触媒を用いて浄化する装置であって、オゾン生成部、及び、該オゾン生成部で生成されたオゾンの濃度を検出する濃度センサを有するオゾン供給手段と、濃度センサによって検出されたオゾン濃度を用いて、排気ガスへと供給されるオゾンの供給可能量を算出する算出手段と、排気ガスに含まれるNO量を検出する検出手段と、触媒の温度を検出する温度センサと、を備え、温度センサによって検出された触媒の温度が活性温度未満であって、且つ、算出手段によって算出されたオゾン供給可能量が検出手段によって検出されたNO量よりも少ない場合に、NO排出抑制運転が行われることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置である。
【0010】
ここに、「活性温度」とは、オゾン不存在下でNOが触媒によって良好に除去され始める温度をいい、具体的には、250℃から300℃程度の温度をいう。また、本発明において、「NO排出抑制運転」とは、内燃機関を有する機器から排出される排気ガスに含まれるNO量が低減されるような運転をいう。本発明における「NO排出抑制運転」は、例えば、後述の調節手段を用いて、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させることにより空燃比を25未満にしてNO量を低減する運転や、併設されているモーターを駆動させることによって排気ガスに含まれるNO量を低減する運転のほか、これらの運転を組み合わせた態様等も含む概念である。
【0011】
また、上記本発明において、オゾン供給手段は、さらに、オゾン生成部とは異なるオゾン貯蔵部を有し、濃度センサは、オゾン貯蔵部におけるオゾン濃度を検出することが好ましい。
【0012】
また、上記本発明において、さらに、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を調節する調節手段を有し、温度センサによって検出された触媒の温度が活性温度以上であって、且つ、触媒のNO吸蔵が破過している場合に、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を14.6未満にするように調節手段が作動されても良い。
【0013】
また、調節手段を有する上記本発明において、NO排出抑制運転は、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように調節手段が作動されることによって実現されても良い。
【0014】
また、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように調節手段が作動されることによってNO排出抑制運転が実現される上記本発明において、さらに、排気ガスに含まれるNOを吸着可能な吸着材を有し、温度センサによって検出された触媒の温度が活性温度未満であって、且つ、吸着材に吸着されたNOの量が吸着材によるNO吸着量の飽和量を超えた場合にも、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように調節手段が作動されることにより、NO排出抑制運転が実現されることが好ましい。
【0015】
また、調節手段を有する上記本発明において、NO排出抑制運転は、内燃機関の着火遅れ期間を定常運転時よりも長くし、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように調節手段が作動されることによって実現することができる。
【0016】
ここに、「着火遅れ期間」とは、燃料を噴射し始めた時から着火が起こる時までの期間をいう。また、「定常運転」とは、ディーゼルエンジンを成り行きで回転させた運転をいう。
【0017】
また、上記本発明において、NO排出抑制運転は、併設されているモーターを駆動させ、内燃機関の負荷を軽減することによって実現されても良い。
【0018】
また、併設されているモーターを駆動させ、内燃機関の負荷を軽減することによってNO排出抑制運転が実現される本発明において、モーターと内燃機関との負荷配分は、算出手段によって算出されたオゾン供給可能量を用いて決定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の内燃機関の排気浄化装置では、触媒の温度が活性温度未満であって、且つ、オゾン供給可能量がNO量よりも少ない場合に、NO排出抑制運転が行われる。ここで、オゾン供給可能量がNO量よりも少ないと、触媒に吸着されるNOの量が低減するため、外部へと排出されるNO量が増大しやすい。そのため、かかる場合にNO排出抑制運転を行うことにより、排出されるNOの量を低減することが可能になる。したがって、本発明によれば、排出されるNOの量を低減することが可能な、内燃機関の排気浄化装置を提供することができる。
【0020】
また、本発明において、オゾン供給手段に、オゾン生成部とは別にオゾン貯蔵部が備えられていることにより、オゾン生成部で生成されたオゾンをオゾン貯蔵部に貯蔵することができる。加速運転時等、一気にオゾンを放出する必要がある場合に、必要とされる量のオゾンを必要に応じてオゾン生成部で生成する形態では、オゾン供給不足になる虞があるが、オゾン生成部の他にオゾン貯蔵部が備えられる形態とすることにより、オゾン供給不足を抑制することが容易になる。
【0021】
また、本発明において、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を14.6未満にすることで、排気ガスに含まれるHCやCOを増大させることが容易になる。NOの還元剤として機能するHCやCOを増大させることにより、触媒に吸着されたNOの還元効率を増大させることが可能になり、触媒の温度を上昇させることが可能になる。触媒の温度を上昇させると、除去されるNOの量を増大させることが可能になり、その結果、排出されるNOの量を低減することが可能になる。したがって、かかる形態とすることにより、排出されるNOの量を低減することが容易になる。
【0022】
また、オゾン供給可能量がNO量よりも少ないと、触媒に吸着されるNOの量が低減するため、外部へと排出されるNO量が増大しやすいが、本発明において、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にすると、内燃機関から排出されるNOの量を大幅に低減することが可能になる。したがって、かかる形態とすることにより、排出されるNOの量を低減することが容易になる。
【0023】
また、吸着材に吸着されたNOの量が飽和量を超えると、外部へと排出されるNOの量が増大しやすいが、かかる場合であっても、本発明で、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にすることにより、外部へと排出されるNOの量を低減することが容易になる。
【0024】
また、本発明において、内燃機関の着火遅れ期間を定常運転時よりも長くし、内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように調節手段を作動させることによって、NO排出抑制運転を実現することにより、外部へと排出されるNOの量を低減することが容易になる。
【0025】
また、本発明において、併設されているモーターを駆動させ、内燃機関の負荷を軽減させたNO排出抑制運転が実現されることにより、内燃機関から排出されるNOの量を低減することが容易になる。
【0026】
また、本発明において、モーターと内燃機関との負荷配分を、算出手段によって算出したオゾン供給可能量を用いて決定することにより、例えば、オゾン供給可能量が所定値以下であるためにオゾンを用いたNO量の低減効果が得られ難い時には、モーターの負荷配分を増大し内燃機関の負荷配分を低減することができる。オゾンを用いたNO量の低減効果が得られ難い時に内燃機関の負荷配分を低減すると、NOを含んだ排気ガスの量を低減することが可能になる。したがって、かかる形態とすることにより、内燃機関から排出されるNOの量を低減することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】内燃機関の排気浄化装置10を説明する図である。
【図2】内燃機関の排気浄化装置10の動作形態を説明するフローチャートである。
【図3】内燃機関の排気浄化装置30を説明する図である。
【図4】内燃機関の排気浄化装置30の動作形態を説明するフローチャートである。
【図5】実験結果を示す図である。
【図6】NO量及び車両の速さと時間との関係を示す図である。
【図7】NO量及び車両の速さと時間との関係を示す図である。
【図8】ECモードにおける車両の速さと時間との関係を説明する図である。
【図9】ECモード中の800sまでのNO排出量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。以下の説明において、排気ガス再循環を「EGR」と表記する。
【0029】
図1は、本発明の内燃機関の排気浄化装置10(以下において、単に「排気浄化装置10」という。)を説明する図である。内燃機関20から排出された排気ガスを浄化する排気浄化装置10は、オゾン供給手段4と、該オゾン供給手段4から排気ガス流路21へのオゾン供給のON/OFFを制御する制御弁5と、排気ガスが流通する排気ガス流路21に配置された吸着材6、温度センサ7、触媒8、フィルター9、及び、検出手段11と、制御装置12と、を有している。オゾン供給手段4は、排気ガス流路21へと供給されるオゾンを生成するオゾン生成器1と、該オゾン生成器1で生成されたオゾンを貯蔵するオゾン貯蔵部2と、該オゾン貯蔵部2のオゾン濃度を検出する濃度センサ3と、を有している。濃度センサ3によって検出されたオゾン濃度に関する情報は、制御装置12へと送られ、制御弁5の動作は制御装置12によって制御される。吸着材6は、排気ガス流路21を流通する排気ガスに含まれるNOを吸着する吸着材であり、触媒8はNO還元に用いられる触媒である。触媒8の温度は温度センサ7によって検出され、温度センサ7によって検出された触媒8の温度に関する情報は、制御装置12へと送られる。検出手段11は、排気ガスに含まれるNOの量を検出するセンサであり、検出手段11によって検出されたNO量に関する情報は、制御装置12へと送られる。排気浄化装置10において、吸着材6、温度センサ7、触媒8、及び、フィルター9は、オゾン供給手段4と排気ガス流路21との接続部よりも排気ガスの流通方向下流側に配置されている。これに対し、検出手段11は、オゾン供給手段4と排気ガス流路21との接続部よりも排気ガスの流通方向上流側に配置されている。
【0030】
排気ガス流路21を流通する排気ガスを排出する内燃機関20は、ディーゼル機関であり、4つの気筒22、22、22、22(以下において、単に「気筒22」という。)を有している。気筒22は吸気ダクト23に接続されており、気筒22から排出された排気ガスは、排気ガス流路21へと流入する。内燃機関20は、気筒22から排出された排気ガスの一部が、排気ガス流路21に接続されたEGR流路24へと流入可能なように構成されている。EGR流路24には、EGRクーラー25、スロットル弁26、及び、EGR制御弁27が配置されており、EGR流路24を流通したEGRガスは、再び気筒22へと流入する。EGRクーラー25はEGR流路24を流通するEGRガスを冷却する機器である。スロットル弁26はEGR流路24を流通するEGRガスの流量を制御する機能を有し、EGR制御弁27は気筒22へと供給されるEGRガスの量を制御する。すなわち、スロットル弁26及びEGR制御弁27は、内燃機関20へと再循環させる排気ガス(EGRガス)の量を調整する調整手段として機能し、調整手段の動作は、制御装置12によって制御される。
【0031】
制御装置12は、制御弁5、スロットル弁26、及び、EGR制御弁27の動作制御を実行可能なCPU12aと、該CPU12aに対する記憶装置とが設けられている。CPU12aは、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU12aに対する記憶装置は、例えば、制御弁5、スロットル弁26、及び、EGR制御弁27の動作制御に必要なプログラムや各種データを記憶するROM12bと、CPU12aの作業領域として機能するRAM12c等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、CPU12aが、ROM12bに記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、排気浄化装置10における制御装置12が機能する。濃度センサ3によって検出されたオゾン濃度に関する情報(出力信号)、温度センサ7によって検出された触媒8の温度に関する情報(出力信号)、及び、検出手段11によって検出されたNO量に関する情報(出力信号)は、制御装置12の入力ポート12dを介して、入力信号としてCPU12aへと到達する。CPU12aは、入力信号及びROM12bに記憶されたプログラムに基づいて、制御弁5、スロットル弁26、及び、EGR制御弁27に対する動作指令を決定し、決定された動作指令は、出力ポート12eを介して制御弁5、スロットル弁26、及び、EGR制御弁27へと出力され、これらの動作が制御される。
【0032】
図2は、排気浄化装置10の動作形態を説明するフローチャートである。排気浄化装置10は内燃機関20の作動時に排出される排気ガスを浄化する装置であり、排気浄化装置10を用いて排気ガスを浄化する際には、まず、内燃機関20が通常燃焼(空燃比が20以上40以下の燃焼をいう。以下において同じ。)で作動される(S1)。通常燃焼で作動されたら、S2へと進み、燃焼を継続するか否かが判断される。S2で否定判断がなされたら、排気浄化装置10を用いた処理は終了される。S2で肯定判断がなされたら、S3へと進み、温度センサ7によって検出された触媒8の温度が300℃未満であるか否かが判断される。温度が300℃未満の場合はオゾンが熱分解され難い。そのため、S3で肯定判断がなされた場合には、S4へと進む。S4では、オゾン生成器1で生成させたオゾンを用いてNOを触媒8へと効率的に吸着させ得る状態であるか否かを判断すべく、濃度センサ3で検出されたオゾン濃度を用いて算出されたオゾン供給可能量が、検出手段11によって検出されたNO量以上であるか否かが判断される。S4で肯定判断がなされた場合には、オゾンを用いてNOを触媒8へと効率的に吸着させ得る状態であるため、制御装置12によって動作を制御される制御弁5が開くことにより、オゾン供給手段4から排気ガス流路21へオゾンの供給が開始される(S5)。
【0033】
こうしてオゾンの供給が開始されたら、S6へと進み、吸着材6に吸着されたNOの量が、飽和量に達したか否かが判断される。吸着材6に吸着されたNOの量が飽和量に達したか否かの判断は、例えば、エンジン排出量をinとしてECUに記録しておき、ある温度以上で吸着材6から脱離してくる量(予め設定)を、温度×時間でoutとして記録し、inとoutの演算結果から得た吸着量が予め設定した飽和量に達しているか否かによって行うことができる。S6で肯定判断がなされた場合には、処理がS1へと戻される。これに対し、S6で否定判断がなされた場合には、排気ガス流路21から外部へと排出されるNOの量が増大しやすい状態であるため、排出されるNO量を低減すべく、S10へと進む。また、オゾン生成器1の作動時間が不足している等の理由によりS4で否定判断がなされた場合には、オゾンを用いてNOを触媒8へと効率的に吸着させることが困難な状態であるため、排気ガス流路21から外部へと排出されるNO量の増大が懸念される。そのため、S4で否定判断がなされた場合にも、排出されるNO量を低減すべく、S10へと進められる。
【0034】
S10では、NO量を低減するために、制御装置12によってスロットル弁26及びEGR制御弁27の動作を変更し、気筒22へと供給されるEGRガスの量を増大させる。非特許文献1乃至非特許文献3に記載されているように、気筒22へと供給されるEGRガスの量を増大させると、燃焼状態を、通常燃焼から空燃比が25未満の無煙低温燃焼へと切り替えることができる。こうして空燃比が25未満の無煙低温燃焼へと切り替えられると、通常燃焼時と比較して、排気ガスに含まれるNO量が低減し、排気ガスに含まれるCOやHCの量が増大する。COやHCはNOの高効率な還元剤として機能するため、排気ガスに含まれるCOやHCの量を増大させることにより、吸着材6に吸着されたNOを還元することができる。そのため、S10で空燃比が25未満の無煙低温燃焼へと切り替えられたら、引き続きS11へと進み、吸着材6に吸着されているNOの量が、飽和量以下になったか否かが判断される。S11で肯定判断がなされた場合には、吸着材6を用いて、排出されるNOの量を低減することが可能な状態になったと考えられるため、処理はS1へと戻される。これに対し、S11で否定判断がなされた場合には、吸着材6のNO吸着能が回復しておらず、排出されるNOの量が増大しやすい。そこで、かかる場合には、触媒8を用いてNOを還元しやすい状態にすることを目的としてS12へと進み、触媒8が昇温される。より具体的に、S12では、制御装置12によってスロットル弁26及びEGR制御弁27の動作を変更し、気筒22へと供給されるEGRガスの量を更に増大させることにより、空燃比を低減し、排気ガス中に含まれるCOやHCの量を増大させる。そして、増大させたCOやHCを触媒8の表面で酸化させることにより、触媒8を昇温する。
【0035】
こうしてS12で昇温制御がなされたら、S13へと進み、温度センサ7によって検出された触媒8の温度が300℃以上であるか否かが判断される。S13で肯定判断がなされた場合には、触媒8を用いてNOを効率的に還元し得る温度になったと考えられるため、処理がS7へと進められる。これに対し、S13で否定判断がなされた場合には、NOを効率的に還元し得る温度にまで触媒8が昇温されていないと考えられるので、処理がS12へと戻され、触媒8の温度が300℃以上になるまで昇温制御が継続される。
【0036】
上記S3で否定判断がなされた場合や上記S13で肯定判断がなされた場合には、NOを効率的に還元し得る温度にまで触媒8が昇温されている。そのため、触媒8のNO吸蔵が破過していなければ、触媒8を用いてNOを還元することにより、排出されるNOの量を低減することができる。そこで、S3で否定判断がなされた場合、及び、S13で肯定判断がなされた場合には、処理がS7へと進められ、触媒8のNO吸蔵が破過しているか否かが判断される。触媒8のNO吸蔵が破過しているか否かの判断は、例えば、エンジン排出量をinとしてECUに記録しておき、ある温度以上で触媒8から脱離してくる量(予め設定)を、温度×時間でoutとして記録し、inとoutの演算結果から得た吸着量が予め設定した飽和量に達しているか否かによって行うことができる。
【0037】
S7で肯定判断がなされた場合には、触媒8にNOを吸着させてNOを還元することは困難であるため、排出されるNOの量が増大する虞がある。そこで、かかる場合には、排気ガス中に含まれるNOの量を一層低減するために、また、排気ガス中に含まれるCOやHCを増大させて触媒8に吸蔵されたNOを還元し、触媒8のNO吸着能を回復させるために、処理がS8へと進められる。S8では、制御装置12によってスロットル弁26及びEGR制御弁27の動作を変更し、気筒22へと供給されるEGRガスの量を増大させることにより、空燃比が14.6未満の無煙低温燃焼へと切り替えられる。非特許文献1乃至非特許文献3に記載されているように、空燃比を14.6未満にすることで、排気ガス中に含まれるCOやHCを容易に増大させることができるので、触媒8のNO吸着能を回復させることができる。こうして空燃比が14.6未満の無煙低温燃焼へと切り替えられたら、S9へと進められ、触媒8のNOが還元されたか否か、すなわち、触媒8のNO吸着能が回復したか否か判断される。S9で肯定判断がなされた場合、また、上記S7で否定判断がなされた場合には、触媒8を用いてNOを還元し得る状態であると考えられるため、処理はS1へと戻される。これに対し、S9で否定判断がなされた場合には、触媒8のNO吸着能が十分に回復しておらず、排出されるNOの量が増大しやすい状態にあると考えられる。そのため、かかる場合には、触媒8のNO吸着能が十分に回復するまで(例えば、触媒8に吸着されていたNOの5割以上が還元されることによりS9で肯定判断がなされるまで)、空燃比が14.6未満の無煙低温燃焼が継続される。
【0038】
このように、排気浄化装置10によれば、オゾン供給可能量がNO量よりも少ない場合には、空燃比が25未満の無煙低温燃焼を行うことにより、NO排出量を低減することができる。そして、吸着材6によって吸着されたNOが飽和量に達した場合には、昇温させた触媒8にNOを吸着させることにより、NO排出量を低減することができ、触媒8のNO吸着が破過した場合には、さらに空燃比が14.6未満の無煙低温燃焼を行うことにより、触媒8のNO吸着能の回復を図りつつNO排出量を低減することができる。したがって、本発明によれば、外部へと排出されるNOの量を低減することが可能な、排気浄化装置10を提供することができる。
【0039】
図3は、他の実施形態にかかる本発明の内燃機関の排気浄化装置30(以下において、単に「排気浄化装置30」という。)を説明する図である。図3において、排気浄化装置10と同様に構成されるものには、図1で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0040】
内燃機関20から排出された排気ガスを浄化する排気浄化装置30は、オゾン供給手段31と、該オゾン供給手段31から排気ガス流路21へのオゾン供給のON/OFFを制御可能な制御弁32、33と、排気ガスが流通する排気ガス流路21に配置された吸着材6、温度センサ7、触媒8、フィルター9、及び、検出手段11と、制御装置37と、を有している。オゾン供給手段31は、排気ガス流路21へと供給されるオゾンを生成するオゾン生成器1と、該オゾン生成器1で生成されたオゾンを貯蔵するオゾン貯蔵部2と、該オゾン貯蔵部2のオゾン濃度を検出する濃度センサ3と、を有している。オゾン供給手段31は、オゾン生成器1と排気ガス流路21とを繋ぐ流路34から分岐した流路35に、オゾン貯蔵部2が接続されており、オゾン貯蔵部2と排気ガス流路21とを繋ぐ流路36を介して、オゾン生成器1で生成されたオゾンを排気ガス流路21へと供給可能なように構成されている。かかる形態とすることにより、内燃機関20及びモーター38を備えた機器(例えば、ハイブリッドディーゼル車)のアイドル時や定常運転時のように、NO濃度が低く安定している状態の時には、制御装置37によって制御弁32、33の動作を制御してオゾン生成器1から排気ガス流路21へ向けて直接オゾンを供給することができる。そして、排気ガス流路21を流通する排気ガス中のNO量を低減するために必要とされる量を超えるオゾンはオゾン貯蔵部2へと流入させ、オゾン貯蔵部2で貯蔵することができる。これに対し、加速時等のNO排出量が多くなる状態の時には、必要とされるオゾン量を、例えば制御装置37で、内燃機関20の回転数やアクセル開度等の情報を用いて算出する。そして、制御装置37における算出結果に基いて制御弁32、33の動作を制御して、オゾン貯蔵部2に貯蔵されているオゾンのうち必要な分量を排気ガス流路21へと供給することにより、排気ガス中のNO量を低減することができる。すなわち、オゾン供給手段31では、オゾン生成器1から排気ガス流路21へと供給されるオゾン量と、オゾン生成器1からオゾン貯蔵部2へと流入させ貯蔵されるオゾン量との配分を制御することができ、排気ガス流路21へと供給されるオゾン量を、運転状態に応じて容易に変更することができる。
【0041】
排気浄化装置30において、濃度センサ3によって検出されたオゾン濃度に関する情報は、制御装置37へと送られ、制御装置37によって制御弁32、33の動作が制御される。吸着材6は、排気ガス流路21を流通する排気ガスに含まれるNOを吸着する吸着材であり、触媒8はNO還元に用いられる触媒である。触媒8の温度は温度センサ7によって検出され、温度センサ7によって検出された触媒8の温度に関する情報は、制御装置37へと送られる。検出手段11は、排気ガスに含まれるNOの量を検出するセンサであり、検出手段11によって検出されたNO量に関する情報は、制御装置37へと送られる。排気浄化装置30において、吸着材6、温度センサ7、触媒8、及び、フィルター9は、オゾン供給手段31と排気ガス流路21との接続部よりも排気ガスの流通方向下流側に配置されている。これに対し、検出手段11は、オゾン供給手段31と排気ガス流路21との接続部よりも排気ガスの流通方向上流側に配置されている。
【0042】
制御装置37は、オゾン生成器1、内燃機関20、スロットル弁26、EGR制御弁27、制御弁32、33、及び、モーター38の動作制御を実行可能なCPU37aと、該CPU37aに対する記憶装置とが設けられている。CPU37aは、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU37aに対する記憶装置は、例えば、オゾン生成器1、内燃機関20、スロットル弁26、EGR制御弁27、制御弁32、33、及び、モーター38の動作制御に必要なプログラムや各種データを記憶するROM37bと、CPU37aの作業領域として機能するRAM37c等を組み合わせて構成される。当該構成に加えて、さらに、CPU37aが、ROM37bに記憶されたソフトウエアと組み合わされることにより、排気浄化装置30における制御装置37が機能する。濃度センサ3によって検出されたオゾン濃度に関する情報(出力信号)、温度センサ7によって検出された触媒8の温度に関する情報(出力信号)、及び、検出手段11によって検出されたNO量に関する情報(出力信号)は、制御装置37の入力ポート37dを介して、入力信号としてCPU37aへと到達する。CPU37aは、入力信号及びROM37bに記憶されたプログラムに基づいて、オゾン生成器1、内燃機関20、スロットル弁26、EGR制御弁27、制御弁32、33、及び、モーター38に対する動作指令を決定する。決定された動作指令は、出力ポート37eを介してオゾン生成器1、内燃機関20、スロットル弁26、EGR制御弁27、制御弁32、33、及び、モーター38へと出力され、これらの動作が制御される。
【0043】
図4は、排気浄化装置30の動作形態を説明するフローチャートである。図4において、図2と同様に構成される工程には、図2で使用した符号と同一の符号を付す。排気浄化装置30は、内燃機関20やモーター38の作動時(内燃機関20のみの作動時、及び、内燃機関20及びモーター38の作動時を含む。)に排出される排気ガスを浄化する装置である。排気浄化装置30を用いて排気ガスを浄化する際には、まず、内燃機関20が通常燃焼で作動される(S1)。通常燃焼で作動されたら、S2へと進み、燃焼を継続するか否かが判断される。S2で否定判断がなされたら、排気浄化装置30を用いた処理は終了される。S2で肯定判断がなされたら、S3へと進み、温度センサ7によって検出された触媒8の温度が300℃未満であるか否かが判断される。温度が300℃未満の場合はオゾンが熱分解され難い。そのため、S3で肯定判断がなされた場合には、S21へと進む。これに対し、S3で否定判断がなされた場合、処理は上記S7(図2参照)へと進められる。
【0044】
S21では、オゾン生成器1で生成させたオゾンを用いてNOを触媒8へと効率的に吸着させ得る状態であるか否かを判断すべく、濃度センサ3で検出されたオゾン濃度を用いて算出されたオゾン供給可能量が、第1の所定値以上であるか否か(例えば、オゾン貯蔵部2のオゾン貯蔵量がオゾン貯蔵部2によるオゾン貯蔵可能量の1/2以上であるか否か)が判断される。S21で肯定判断がなされた場合には、内燃機関20の負荷を軽減しなくても、オゾンを用いて排気ガス中のNO量を低減し得る状態であると考えられるため、処理は上記S5(図2参照)へと進められる。これに対し、S21で否定判断がなされた場合には、S22へと進み、オゾン供給可能量が第2の所定値以上であるか否か(オゾン貯蔵部2のオゾン貯蔵量がほぼゼロであるか否か(例えば、オゾン貯蔵部2によるオゾン貯蔵可能量の1/10以上であるか否か))が判断される。
【0045】
S22で肯定判断がなされた場合には、オゾン貯蔵部2に貯蔵されているオゾンを用いて排気ガス中のNO量を低減することは可能と考えられるものの、オゾン量が豊富ではないため、オゾンを用いたNO量の低減効果は不十分なものになりやすい。そこで、S22で肯定判断がなされた場合には、内燃機関20の負荷を軽減するとともに、モーター38を作動させ、オゾンを用いたNO量低減とモーター38の作動とを併用することにより、排気ガス中のNO量を低減する。かかる制御形態を実現するため、S22で肯定判断がなされると、S23へと進み、制御装置37から内燃機関20へ向けて負荷を低減する動作指令が出力され、且つ、制御装置37からモーター38へ向けてモーター38を作動させる動作指令が出力される。こうしてS23が行われたら、オゾン貯蔵部2に貯蔵されるオゾン量を増大させるべく、S24へと進み、制御装置37からオゾン供給手段31へ向けて動作指令が出力され、オゾン生成器1の出力が増大される。
【0046】
S22で否定判断がなされた場合には、オゾン貯蔵部2に貯蔵されているオゾン貯蔵量が極めて少なく、オゾンを用いたNO量低減効果は大幅に低下する。そこで、S22で否定判断がなされた場合には、内燃機関20及びモーター38のうち、モーター38を作動させる一方、内燃機関20の作動を停止し、NOを含む排気ガスが内燃機関20から排出されないようにすることにより、NO量を低減する。かかる制御形態を実現するため、S22で否定判断がなされると、S25へと進み、制御装置37からモーター38へ向けてモーター38の負荷を増大させる動作指令が出力され、さらに、S26へと進むことにより、制御装置37から内燃機関20へ向けて作動を停止する動作指令が出力される。
【0047】
このように、排気浄化装置30によれば、オゾン供給可能量が第1の所定値以上である場合には、排気浄化装置10によるS5以降と同様の処理を行うことにより、NO排出量を低減することができる。さらに、排気浄化装置30によれば、オゾン供給可能量が第2の所定値以上であって第1の所定値未満である場合には、内燃機関20と共にモーター38を作動させ、内燃機関20の負荷を軽減することにより、NO排出量を低減することができる。内燃機関20と共にモーター38を作動させることにより、過度のオゾン消費を抑制することも可能になる。加えて、排気浄化装置30によれば、オゾン供給可能量が第2の所定値未満である場合には、内燃機関20を停止しモーター38のみを作動させることによって、NO排出量を低減することができる。
【0048】
排気浄化装置30による上記処理において、内燃機関20と共にモーター38を作動させる場合における、内燃機関20とモーター38との負荷配分の決定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、オゾン供給可能量及びアクセル開度を用いて負荷配分を決定することができる。例えば、加速運転が連続される場合には、オゾン貯蔵部2に貯蔵されているオゾン量が低減すると考えられるため、モーター38の負荷を増大するように負荷配分を決定することができる。
【0049】
排気浄化装置10及び排気浄化装置30において、オゾン生成器1は、オゾンを生成可能であればその形態は特に限定されるものではなく、例えば、放電リアクタやプラズマ処理装置等、公知のオゾン生成器を用いることができる。例えば、最大出力が100Wの公知のオゾン生成器を用いた場合、6.7g/h≒1.86mg/sの速さでオゾンを生成することができる。また、オゾン貯蔵部2は、オゾン生成器1で生成されたオゾンを貯蔵可能であればその形態は特に限定されるものではなく、公知の貯蔵器を適宜用いることができる。オゾン貯蔵部2の容量が1.0Lであり、オゾン貯蔵部2内のオゾン濃度が3%である時のオゾン貯蔵量が、オゾン貯蔵部2におけるオゾン貯蔵量の最大値である場合、オゾン貯蔵部2には約59mgのオゾンを貯蔵することができる。したがって、約1.86mg/sの速さでオゾンを生成するオゾン生成器1を用いると、オゾン貯蔵部2内のオゾン量を最大にするまでの所要時間は、約31.7sとなる。
【0050】
また、濃度センサ3は、オゾン貯蔵部2におけるオゾン濃度を検出可能であればその形態は特に限定されるものではなく、公知の濃度センサを適宜用いることができる。また、制御弁5は、オゾン供給のON/OFFを制御し得る公知の弁を適宜用いることができる。
【0051】
また、吸着材6は、容量が1.0Lの、Pt、Pd、Rhを0.5g/L担持したTiO/SiO/Al/ZrO触媒等、一般的な酸化触媒を吸着材とすることができる。オゾンを供給した場合に、エンジン排ガス中のNOはNを主成分とする過酸化状態となるため、一般的な酸化触媒であれば十分な吸着能が発揮されるためである。吸着材6は、例えば、100g/LのFe/ゼオライト(ZSM5)、及び、50g/Lのアルミナによってコートすることができる。
【0052】
また、温度センサ7は、触媒8の温度を検出可能であればその形態は特に限定されるものではなく、公知の温度センサを適宜用いることができる。また、触媒8は、排気ガス中のNOを還元してNにする反応を促進する任意の触媒を用いることができ、例えば、NO吸蔵還元触媒、NO選択還元触媒、又は、三元触媒と呼ばれるものを用いることができる。NO吸蔵還元触媒の具体例としては、アルミナ等の多孔質酸化物担体に、Pt、Rh、Pd、Ir又はRuのような貴金属と、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選択されるNO吸蔵剤とを担持させたもの等を挙げることができる。また、NO選択還元触媒の具体例としては、ゼオライトにCu等の遷移金属をイオン交換して担持させたもの、又は、ゼオライト若しくはアルミナに貴金属を担持させたもの等を挙げることができる。また、三元触媒の具体例としては、PtとPhとの混合物、又は、PtとPdとRhとの混合物をアルミナに担持させたもの等を例示することができる。これらの触媒の量は、当該技術分野における適当な量とすることができ、ウォッシュコート等の任意の方法によってセラミックハニカム担体のような公知の担体に担持させて用いることができる。担体の容量は例えば2.0Lとすることができ、担体は、例えば、100g/Lのアルミナ、100g/LのTiO−ZrO、及び、50g/LのRh/ZrOによってコートすることができる。また、担持させる触媒の量は、Pt/Rhは2.0g/L/0.5g/Lとすることができ、Ba/Liは0.2mol/L/0.1mol/Lとすることができる。
【0053】
また、フィルター9は、特に限定されるものではなく、例えば、セラミックハニカム製フィルター、合金製フィルター、及び、セラミック繊維製フィルター等に代表される公知のPMフィルター等を用いることができる。フィルター9の容量は例えば3.0Lとすることができ、フィルター9のコート量は例えば50g/L、コート材はアルミナゾル等を用いることができる。さらに、フィルター9に担持させる触媒は例えばPt/Pdとすることができ、触媒の担持量はPt=0.6g/L、Pd=0.3g/Lとすることができる。また、検出手段11は、排気ガス中に含まれているNO量を検出可能であればその形態は特に限定されるものではなく、公知の検出手段を適宜用いることができる。
【0054】
また、本発明において、排気浄化装置10や排気浄化装置30によって浄化される排気ガスを排出する内燃機関20の形態も特に限定されるものではなく、ディーゼル機関等、公知の内燃機関とすることができる。さらに、本発明において、制御装置12や制御装置37は、上記処理を行うことが可能であれば、その形態は特に限定されるものではなく、例えば、ECU等、公知の制御装置を適宜用いることができる。
【実施例】
【0055】
<排気浄化装置10の効果確認試験>
2.2L排気量の内燃機関20を搭載した実車両を用いてEC−cold(NEDC(New European Driving Cycle))を走行し、走行中のエミッション値(NO量)を、フィルター9よりも排気ガスの流通方向下流側に配置した検出手段を用いて測定した。具体的には、排気浄化装置10を用いてオゾン添加制御及び無煙低温燃焼制御を行った場合(実施例1)、排気浄化装置10を用いたがオゾン添加も無煙低温燃焼も制御しなかった場合(比較例1)、及び、排気浄化装置10を用いてオゾン添加を制御し無煙低温燃焼を制御しなかった場合(比較例2)のNO排出量を測定した。吸着材6、触媒8、及び、フィルター9によって浄化される前の排気ガスに含まれていたNO量の結果(エンジン出ガス)とともに、実施例1、比較例1、及び、比較例2の結果を図5に示す。なお、排気浄化装置10の吸着材6は、容量1.0Lの、100g/LのFe/ゼオライト(ZSM5)と50g/Lのアルミナと50g/LのTiOとをコートし、Pt1.0g/Lを担持した触媒を用い、触媒8は、100g/Lのアルミナ、100g/LのTiO−ZrO、及び、50g/LのRh/ZrOをコートし、触媒(2.0g/L/0.5g/LのPt/Rh及び0.2mol/L/0.1mol/LのBa/Li)を担持させた容量2.0Lの吸蔵還元型触媒を用いた。また、フィルター9は、50g/Lのアルミナゾルをコートし0.6g/L/0.3g/LのPt/Pdを担持させた容量3.0LのDPF触媒を用いた。なお、触媒の耐久性を向上させるため、750℃の電気炉で50時間に亘る焼成を行った。
【0056】
図5に示すように、吸着材6等によって浄化される前の排気ガスには、1kmの走行で0.190gのNOが含まれていたが、排気浄化装置10を上記S1乃至S13によって制御した(すなわち、オゾンを添加し、無煙低温燃焼も行った)実施例1によれば、内燃機関20から排出されたNOを90%程度低減することができた。これに対し、オゾン添加を行わず無煙低温燃焼も行わなかった比較例1では、NO量の低減が30%程度に留まり、オゾン添加を行う一方で無煙低温燃焼を行わなかった比較例2では、NO量の低減が60%弱に留まった。以上より、排気浄化装置10を用いてオゾン添加及び無煙低温燃焼を制御することにより、排出されるNOの量を大幅に低減可能であった。
【0057】
<排気浄化装置30の効果確認試験>
2.2L排気量の内燃機関20、モーター38、及び、排気浄化装置30を搭載した車両を用いた走行試験を行い、走行中のエミッション値(NO量)を、フィルター9よりも排気ガスの流通方向下流側に配置した検出手段を用いて測定した。具体的には、排気浄化装置30を用いてオゾン添加制御を行いながら内燃機関20のみを用いて走行する試験(実施例2)、及び、排気浄化装置30を用いてオゾン添加制御を行いながら内燃機関20及びモーター38を用いて走行する試験(実施例3)を実施し、排気ガス中に含まれるNO量を測定した。なお、排気浄化装置30の吸着材6は、130g/LのTiO−SiO−Al及び20g/LのAlをコートし、且つ、触媒(1.0g/L/0.5g/LのPt/Pd)を担持させた容量1.0Lの吸着材を用いた。また、触媒8は、100g/Lのアルミナ、100g/LのTiO−ZrO、及び、50g/LのRh/ZrOをコートし、触媒(2.0g/L/0.5g/LのPt/Rh及び0.2mol/L/0.1mol/LのBa/Li)を担持させた容量2.0LのNO吸蔵還元型触媒を用いた。また、フィルター9は、50g/Lのアルミナゾルをコートし0.6g/L/0.3g/LのPt/Pdを担持させた容量3.0LのDPF触媒を用いた。触媒の耐久性を向上させるため、750℃の電気炉で50時間に亘る焼成を行った。また、1.9mg/sの速さでオゾンを生成可能な最大出力100Wのオゾン生成器1を用い、オゾン貯蔵部2の容量は1.0Lとした。
【0058】
実施例2の試験結果を図6に、実施例3の試験結果を図7に、それぞれ示す。図6及び図7は、NO排出量及び車両速さと時間との関係を示している。図6及び図7の左側の縦軸はNO排出量[mg/s]、右側の縦軸は車両速さ[km/h]、横軸は時間[s]である。
【0059】
図6に示すように、モーター38を作動せず内燃機関20のみを用いて走行した実施例2では、cold(図6の0〜195sの期間)を除くと、1回の加速で最大55mgのNOは、オゾンを用いて触媒へと吸着させる必要がある。オゾンを用いて55mgのNOすべてを触媒へと吸着させるためには、NO量の2倍、すなわち110mgのオゾンを供給する必要がある。しかしながら、排気浄化装置30に備えられているオゾン貯蔵部2の最大オゾン貯蔵量は約59mgであり、オゾン生成器1のオゾン生成速さは約1.86mg/sであるため、オゾン生成器1を最大出力で作動させても、すべてのNOを触媒へと吸着させることは困難であり、微量のNOが排出されてしまった。
【0060】
これに対し、図7に示すように、内燃機関20とモーター38とを作動させ、内燃機関20の負荷を実施例2よりも軽減した実施例3では、cold(図7の0〜195sの期間。以下において同じ。)を含め、実施例2よりもNO排出量を低減することができ、coldを除くと、1回の加速で排出されたNOの最大量は23mgとなった。また、実施例3では、オゾン貯蔵器2内のオゾンを使いきることがなく、オゾンを用いて多くのNOを触媒へと吸着させることができた。したがって、決定された負荷配分によって内燃機関20とモーター38とを共に用いることが可能な排気浄化装置30によれば、排出されるNO量を大幅に低減することが可能であった。
【0061】
なお、図6及び図7に示した加速以上の加速を伴う場合には、触媒床温が250℃以上になるため、オゾンを供給しなくても触媒8でNOを吸蔵することができ、さらに上記S7以降の処理を行ってNOを還元することによって、排出されるNO量を低減することが可能になる。
【0062】
図8は、ECモードを説明する図である。図9は、図8に示すECモード中のUDC部(運転開始時(0s)から800s経過後までの期間)で排出された、実施例2及び実施例3のNO量の結果を、吸着材6、触媒8、及び、フィルター9によって浄化される前の排気ガスに含まれていたNO量の結果(エンジン出ガス)とともに示す図である。図9に示すように、エンジン出ガスと比較して、実施例2によればNO排出量を6割程度低減することができ、実施例3によればNO排出量を8割程度低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、自動車等に代表される内燃機関の排気ガスに含まれる化学物質を浄化する装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…オゾン生成器(オゾン生成部)
2…オゾン貯蔵部
3…濃度センサ
4…オゾン供給手段
5…制御弁
6…吸着材
7…温度センサ
8…触媒
9…フィルター
10…排気浄化装置
11…検出手段
12…制御装置
12a…CPU(算出手段)
20…内燃機関
21…排気ガス流路
24…EGR流路
25…EGRクーラー
26…スロットル弁(調節手段)
27…EGR制御弁(調節手段)
30…排気浄化装置
31…オゾン供給手段
32、33…制御弁
34、35、36…流路
37…制御装置
37a…CPU(算出手段)
38…モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスを、触媒を用いて浄化する装置であって、
オゾン生成部、及び、該オゾン生成部で生成されたオゾンの濃度を検出する濃度センサを有するオゾン供給手段と、
前記濃度センサによって検出されたオゾン濃度を用いて、前記排気ガスへと供給されるオゾンの供給可能量を算出する算出手段と、
前記排気ガスに含まれるNO量を検出する検出手段と、
前記触媒の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記温度センサによって検出された前記触媒の温度が活性温度未満であって、且つ、前記算出手段によって算出されたオゾン供給可能量が前記検出手段によって検出されたNO量よりも少ない場合に、NO排出抑制運転が行われることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記オゾン供給手段は、さらに、前記オゾン生成部とは異なるオゾン貯蔵部を有し、前記濃度センサは、前記オゾン貯蔵部におけるオゾン濃度を検出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
さらに、前記内燃機関へと再循環させる排気ガスの量を調節する調節手段を有し、
前記温度センサによって検出された前記触媒の温度が活性温度以上であって、且つ、前記触媒のNO吸蔵が破過している場合に、前記内燃機関へと再循環させる前記排気ガスの量を増大させて空燃比を14.6未満にするように前記調節手段が作動されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記NO排出抑制運転は、前記内燃機関へと再循環させる前記排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように前記調節手段が作動されることによって実現されることを特徴とする、請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
さらに、前記排気ガスに含まれるNOを吸着可能な吸着材を有し、
前記温度センサによって検出された前記触媒の温度が活性温度未満であって、且つ、前記吸着材に吸着されたNOの量が前記吸着材によるNO吸着量の飽和量を超えた場合にも、前記内燃機関へと再循環させる前記排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように前記調節手段が作動されることにより、前記NO排出抑制運転が実現されることを特徴とする、請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記NO排出抑制運転は、前記内燃機関の着火遅れ期間を定常運転時よりも長くし、前記内燃機関へと再循環させる前記排気ガスの量を増大させて空燃比を25未満にするように前記調節手段が作動されることによって実現されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記NO排出抑制運転は、併設されているモーターを駆動させ、前記内燃機関の負荷を軽減することによって実現されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記モーターと前記内燃機関との負荷配分は、前記算出手段によって算出されたオゾン供給可能量を用いて決定されることを特徴とする、請求項7に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−252469(P2011−252469A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128421(P2010−128421)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】