説明

内視鏡

【課題】 低消費電力で、安全基準条件を満たす電子内視鏡を提供すること。
【解決手段】 内視鏡1の先端部11内には照明用LEDを配置した照明部21と、照明光によって照らされた観察像を撮像するC−MOS23とが設けられている。操作部15内には照明部21及びC−MOS23に電力を供給する電池24が配置されている。操作部15の基端部には表示装置2へ映像信号を出力するビデオケーブル16の一端部が接続される映像出力端子部25が設けられている。電池24と、照明部21及びC−MOS23とは照明用電源ケーブル27と撮像素子用電源ケーブル28とに分岐する電源供給用ケーブル26によって接続されている。電源供給用ケーブル26の中途部には照明部21及びC−MOS23に過剰電流が流れることを防止する電流制限回路29が設けてある。映像出力端子部25にはC−MOS23から延出する映像信号伝送ケーブル30が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電力で駆動する電子内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体腔内に細長の挿入部を挿入することにより、体腔内臓器等を観察したり、必要に応じ処置具チャンネル内に挿通した処置具を用いて各種治療処置のできる内視鏡が広く利用されている。また、工業用分野においても、ボイラ、タービン、エンジン、化学プラント等の内部の傷、腐食等の観察、検査に工業用内視鏡が広く用いられている。
【0003】
上述のように使用される内視鏡には挿入部の先端部に光学像を画像信号に光電変換するCCDなどの撮像素子を配設した電子内視鏡(以下内視鏡と略記する)がある。この内視鏡では、光源装置から供給される照明光によって照らされた観察部位の観察像を撮像素子の撮像面に結像させ、この撮像素子で光電変換した観察像の画像信号を外部装置であるカメラコントロールユニット(以下CCUと略記する)の信号処理部に伝達して映像信号を生成し、モニタ画面上に内視鏡画像を表示させて観察を行う構成になっていた。
【0004】
例えば特開平8−117184号公報には光ファイバーから成るライトガイドファイバをなくすことによって、細径でかつ簡素な構成で高機能化を実現する内視鏡装置を提供するため、先端部に観察部位を撮像する固体撮像素子と、観察部位を照明する面発光光源とを備えた内視鏡装置が開示されている。
【0005】
工業用分野で使用される内視鏡の中には、化学プラントの配管やガスタンク等、爆発性雰囲気等の危険場所(以下危険場所と記載する)で使用されるものがある。そして、この危険場所で使用される機器は、この機器が発火源等になることを防止するため、少なくとも「DC28V以下、93mA以下、0.66W以下」という安全基準条件を満たさなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記内視鏡に設けられているCCDは、駆動時に発生する立ち上がり電流値が高くなるという特性を有するため、たとえ消費電力の問題を解消できたとしても前述した電流値の条件を満たすことができないので危険場所で使用するには問題が残る。
【0007】
また、CCD近傍に設けられている抵抗等の電子部品の発熱や光源装置から供給される照明光の熱によって先端部が高温になることによって、例えば発火点が80℃の亜硝酸エチルや85℃の硝酸エチル等の低温度で発火するおそれのあるガスを扱う配管等では電子内視鏡を使用することが困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、低消費電力で、危険場所における安全基準条件を満たす電子内視鏡を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子内視鏡は、挿入部の先端部に、光学像が結像する撮像面を有する撮像手段及び観察部位を照らす照明手段を設けた電子内視鏡であって、前記撮像手段は、映像信号を出力するC−MOSイメージセンサであり、前記照明手段は照明光を発する照明用LEDである。
【0010】
この構成によれば、電子内視鏡の電力消費量が少なくなるとともに、危険場所での使用が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、低消費電力で、危険場所における安全基準条件を満たす電子内視鏡を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2は本発明の第1実施形態に係り、図1は本発明の電子内視鏡を備えた電子内視鏡装置の構成を説明する図、図2は電子内視鏡の構成を説明する図である。
【0013】
図1に示すように本実施形態の内視鏡装置は、挿入部10の先端部11に照明手段として面発光光源である照明用LEDを配置して構成した照明部及び撮像手段としてC−MOS(相補型金属酸化膜半導体:Complementary Metal-Oxide Semiconductor の略称)イメージセンサを配設した電子内視鏡(以下内視鏡と略記する)1と、この内視鏡1の把持部を兼ねる操作部15から延出するビデオケーブル16に接続された表示手段である例えばCRTモニタ等の表示装置2とで主に構成されている。
【0014】
前記挿入部10は、先端側から順に硬質部材で形成された先端部11、複数の湾曲駒を連接して回動自在に形成された湾曲部12、柔軟部材で構成された可撓管部13を連設して構成されている。
【0015】
撮像手段として使用するC−MOSは、例えば駆動信号発生部やノイズ低減回路、出力信号レベル安定化回路、A/Dコンバータ等、カメラとしての機能が全て搭載された高密度化に適し、「DC28V以下、93mA以下、0.66W以下」という安全基準条件を照明用LEDを含めたシステムとして満たして動作するのが特徴である。なお、前記表示装置2を危険場所内に配置する際には前記安全基準条件を満たす構成の表示装置を使用する。
【0016】
図2に示すように前記内視鏡1の挿入部10の先端部11内には観察部位を照明する照明用LEDを例えば複数配置して構成した照明部21と、この照明部21から出射された照明光によって照らされた観察部位の観察像を対物レンズ22を通して撮像するC−MOSイメージセンサ(以下C−MOSと略記する)23とが設けられている。
【0017】
一方、前記内視鏡1の操作部15内には前記照明部21及び前記C−MOS23に電力を供給する電源部として例えば乾電池等の電池24が配置されている。また、この操作部15の例えば基端部には前記表示装置2へ映像信号を出力する信号出力部となる前記ビデオケーブル16の一端部が接続される映像出力端子部25が設けられている。
【0018】
そして、前記電池24と、前記照明部21及び前記C−MOS23とは中途部で照明用電源ケーブル27及び撮像素子用電源ケーブル28とに分岐する電源供給用ケーブル26によって電気的に接続されている。
【0019】
前記電源供給用ケーブル26の中途部には前記前記照明部21及び前記C−MOS23にショートなどが原因で過剰電流が流れることを防止する電流制限回路29が設けられている。また、前記映像出力端子部25には前記C−MOS23から延出して映像信号を伝送する映像信号伝送ケーブル30が電気的に接続されている。
【0020】
このことにより、本実施形態の内視鏡1に設けた照明部21の照明用LEDは、操作部15内に設けた電池24から供給される電力によって点灯して観察部位を照らす。そして、この照明用LEDによって照らされた観察部位の観察像は、前記対物レンズ22を通してC−MOS23の撮像面に結像し、このC−MOS23内で映像信号に信号処理されて映像出力端子部25に向けて出力されていく。つまり、前記内視鏡1は、前記安全基準条件を満たして観察を行える構成になっている。
【0021】
上述のように構成した電子内視鏡1の作用を説明する。まず、作業者は、表示装置2を安全領域に配置し、内視鏡1及びビデオケーブル16を危険場所内に持ち込む。
【0022】
次に、前記ビデオケーブル16を映像出力端子部25に接続し、この操作部15に設けられている図示しない電源スイッチを操作する。すると、操作部15に設けられている電池24から電流制限回路29を通して前記C−MOS23及び前記照明部21に電力が供給されていく。
【0023】
このことにより、照明部21より照明光が出射されるとともに、対物レンズ22でとらえた観察像がC−MOS23の撮像面に結像し、このC−MOS23から出力される映像信号が映像信号伝送ケーブル30、映像出力端子部25、ビデオケーブル16を介して表示装置2に伝送される。このことにより、表示装置2の画面上に観察部位の内視鏡画像が表示される。観察者はこの表示装置2の画面に表示される内視鏡画像を見ながら観察等を行うとともに、作業者に操作指示を送って所望の観察を行える。
【0024】
このように、DC28V以下、93mA以下、0.66W以下で動作するC−MOS及び照明用LEDを先端部に設けて電子内視鏡を構成したことにより、危険場所持ち込んで安全に内視鏡観察を行うことができる。
【0025】
また、先端部に設けたC−MOS及び照明用LEDの電源を操作部に設けた電池とすることによって携帯性の大幅な向上を図ることができる。
【0026】
さらに、操作部に電流制限回路を設けたことによって、C−MOS及び照明用LEDに過剰電流が供給されることを確実に防止して電子内視鏡の安全性を図ることができる。
【0027】
なお、図3に示すように前記挿入部10の先端部11に、この先端部11の温度を検出する温度センサ31を設けるとともに、前記照明用電源ケーブル27の中途部にこの温度センサ31から伝送される温度情報にしたがって前記照明部21への電力の供給を制御して照明光量を調整する安全回路32を設けている。このことによって、前記照明部21の発熱が原因で先端部11が所定温度以上に上昇することをなくして、照明部21の発熱による不具合の発生を確実に防止することができる。
【0028】
また、本実施形態においては電源部を電池としているが電源部は電池に限定されるものではなく、電源制限回路を備えた外部電源等であってもよい。電源を外部電源とする場合には、外部電源側で電流値を制御することによって、操作部の構成の更なる簡略化を図ることができる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、対物レンズ及び照明部を先端面に設けているが、これら対物レンズ及び照明部側面部等に設ける構成にしてもよい。
【0030】
図4は本発明の第2実施形態に係る電子内視鏡の他の構成を説明する図である。
【0031】
図に示すように本実施形態の電子内視鏡1Aは、先端部11に設けられている前記照明部21に対しては第1電池24aから第1電流制限回路29aを介して照明用電源ケーブル27によって電力が供給され、前記C−MOS23に対しては第2電池24bから第2電流制限回路29bを介して撮像素子用電源ケーブル28によって電力が供給されるようになっている。つまり、照明部21及びC−MOS23に対してそれぞれ独立した回路で構成している。その他の構成は前記第1実施形態と同様であり、同部材には同符合を付して説明を省略する。
【0032】
このように、照明部に対する回路及びC−MOSに対する回路をそれぞれ独立させ、危険場所で使用可能な「DC28V以下、93mA以下、0.66W以下」という安全基準条件をそれぞれの回路で満たす構成としたことにより、照明部に十分な電力を供給して十分な照明光量を得ることができる。その他の作用及び効果は前記第1実施形態と同様である。
【0033】
図5は本発明の第3実施形態に係る電子内視鏡の別の構成を説明する図である。
【0034】
図に示すように本実施形態の電子内視鏡1Bは、操作部15に信号出力部として映像出力端子部25の代わりに危険場所で使用可能な微弱電波や赤外光を出力する送信部33を設けている。また、前記表示装置2の代わりに受信部2aを有する少なくとも1台の表示装置2Aや記録装置(不図示)等を使用する。
【0035】
そして、前記送信部33への電力の供給を第3電池24cによって行っている。なお、この第3電池24cと前記送信部33との間には第3電流制限回路29cが設けられている。また、前記第1電池24a又は第2電池24bを送信部33の電源部にする構成であってもよい。このとき、送信部33と電池24a,24bとの間に電流制限回路を設ける。その他の構成は前記第2実施形態と同様であり、同部材には同符合を付して説明を省略する。
【0036】
このように、操作部に設けた送信部から安全領域に配置されている表示装置等の受信部に信号を伝送して、観察及び記録を行うことができる。また、危険場所と安全領域とを連絡するビデオケーブル等を不用にして内視鏡の可搬性及び操作性及び作業の自由度を大幅に向上させることができる。その他の作用及び効果は前記第1実施形態と同様である。
【0037】
なお、上述した実施形態では電子内視鏡を危険場所で使用される電子内視鏡として説明したが、本実施形態の構成を安全領域で使用する工業用の内視鏡や医療用の内視鏡に適用するようにしてもよい。
【0038】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0039】
[付記]以上詳述したような本発明の上記実施形態によれば、以下の如き構成を得ることができる。
【0040】
(1)挿入部の先端部に、光学像が結像する撮像面を有する撮像手段及び観察部位を照らす照明手段を設けた電子内視鏡において、前記撮像手段は、映像信号を出力するC−MOSイメージセンサであり、前記照明手段は照明光を発する照明用LEDであることを特徴とする電子内視鏡。
【0041】
(2)前記C−MOSイメージセンサ及び前記照明用LEDの電源は、前記挿入部の基端部に配設されている操作部に設けられる電池である付記1記載の電子内視鏡。
【0042】
(3)前記電池を、前記C−MOSイメージセンサ及び前記照明用LEDにそれぞれ対応するように1つずつ前記操作部に設けた付記1記載の電子内視鏡。
【0043】
(4)前記電池と、前記照明部及び前記C−MOSイメージセンサとの間に電流制限回路を設けた付記2又は付記3記載の電子内視鏡。
【0044】
(5)前記挿入部の先端部に、さらに温度センサ及び安全回路を設けた付記1記載の電子内視鏡。
【0045】
(6)前記C−MOSイメージセンサから出力される映像信号は、前記挿入部の基端部に配設されている操作部に設けた信号出力部から表示装置に向けて出力される付記1記載の電子内視鏡。
【0046】
(7)前記信号出力部は、映像出力端子部である付記3記載の電子内視鏡。
【0047】
(8)前記信号出力部は、送信部である付記3記載の電子内視鏡。
【0048】
(9)前記送信部は、単独の電池から電流制限回路を通して供給される電力によって動作する付記8記載の電子内視鏡。
【0049】
(10)前記C−MOSイメージセンサは、安全基準条件を満たして動作する付記1記載の電子内視鏡。
【0050】
(11)前記照明用LEDは、安全基準条件を満たして照明光を発する付記1記載の電子内視鏡。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1及び図2は本発明の第1実施形態に係り、図1は本発明の電子内視鏡を備えた内視鏡装置の構成を説明する図
【図2】電子内視鏡の構成を説明する図
【図3】さらに、温度センサと安全回路とを設けた電子内視鏡の構成を説明する図
【図4】電子内視鏡の他の構成を説明する図
【図5】電子内視鏡の別の構成を説明する図
【符号の説明】
【0052】
1…電子内視鏡
10…挿入部
15…操作部
21…照明部
23…C−MOSイメージセンサ
24…電池
25…映像出力端部
27…照明用電源ケーブル
28…撮像素子用電源ケーブル
29…電流制限回路
30…映像信号伝送ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端部に、光学像が結像する撮像面を有する撮像手段及び観察部位を照らす照明手段を設けた電子内視鏡において、前記撮像手段は、映像信号を出力するC−MOSイメージセンサであり、前記照明手段は照明光を発する照明用LEDであることを特徴とする電子内視鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−99503(P2010−99503A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13109(P2010−13109)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【分割の表示】特願平11−252034の分割
【原出願日】平成11年9月6日(1999.9.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】