説明

剥離フィルム用樹脂組成物

【課題】プリント配線板のビルドアップ層の硬化後は高い密着強度を保持し、剥離用加熱処理後においては良好な剥離強度を有する、剥離フィルム用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂に水酸化アルミニウムを配合させることによって、剥離用加熱処理後においては良好な剥離強度を有して剥離容易であり、ビルドアップ層の硬化後は高い密着強度が発現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の組成を有する剥離フィルム用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、ICチップやLSI等の電子部品では高密度集積化が急速に進んでおり、基板にも高密度配線化および多端子化が求められてきた。
特許文献1には、高密度化配線化の一例として加熱剥離性接着層を有するコアレス基板の製造方法が記載されている。しかしながら、積層硬化処理温度での接着性は必ずしも満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−243999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ビルドアップ層の硬化後は高い密着強度を保持し、剥離用加熱処理後においては良好な剥離強度を有する、剥離フィルム用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ樹脂、水酸化アルミニウムを配合させることによって、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする剥離フィルム用樹脂組成物。
[2]180℃、90分の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する密着強度が0.25kgf/cm以上であり、更に270℃、55秒の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する剥離強度が0.2kgf/cm以下であることを特徴とする、上記[1]に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[3]180℃、90分の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する密着強度が0.25kgf/cm以上であり、更に270℃、55秒の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する剥離強度が0.07kgf/cm以下であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[4]剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、(B)水酸化アルミニウムの含有量が5〜85質量%であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[5](B)水酸化アルミニウムの平均粒径が0.01〜5μmであることを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[6]更に(C)硬化剤を含有することを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[7](C)硬化剤がフェノール系硬化剤であることを特徴とする、上記[6]に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[8](A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに、(C)硬化剤の反応性官能基数が0.05〜1であることを特徴とする、上記[6]または[7]に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[9]更に(D)熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[10](D)熱可塑性樹脂が、変性ポリイミド樹脂であることを特徴とする、上記[9]に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[11]前記変性ポリイミド樹脂が分子内にポリブタジエン構造、ウレタン構造及びイミド構造を有することを特徴とする、上記[10]に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[12]更に(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
[13]上記[1]〜[12]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物を含有することを特徴とする、剥離フィルム。
[14]
上記[1]〜[12]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物を含有することを特徴とする、支持体付き剥離フィルム。
[15]
上記[1]〜[12]のいずれかに記載の剥離フィルム用樹脂組成物を用いて製造されたことを特徴とする、回路基板。
【発明の効果】
【0007】
エポキシ樹脂、水酸化アルミニウムを配合させることによって、ビルドアップ層の硬化後は高い密着強度を保持し、剥離用加熱処理後においては良好な剥離強度を有する、剥離フィルム用樹脂組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(A)エポキシ樹脂、(B)水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする剥離フィルム用樹脂組成物である。
以下詳細に説明する。
【0009】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明における(A)エポキシ樹脂は特に限定はされず、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、初期の密着強度を向上させるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がより好ましい。例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER828EL」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D])、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」、「HP4710」)、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP7200H」)ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、三菱化学(株)製「YX4000」)などが挙げられる。
【0010】
(A)エポキシ樹脂は1種又は2種以上を併用してもよいが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が含有される。(A)エポキシ樹脂のうちの少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。また、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂であるエポキシ樹脂、および1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を含有する態様がより好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環構造を有するエポキシ樹脂を意味する。またエポキシ当量(g/eq)とは、平均分子量を1分子あたりのエポキシ基数で割った値のことである。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を使用することで、剥離フィルム用樹脂組成物を剥離フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性を示し、取扱い性に優れた剥離フィルムを形成できると同時に、剥離フィルム用樹脂組成物の剥離用加熱処理後の剥離性も向上する。
【0011】
(A)エポキシ樹脂の含有量は特に制限はされないが、(A)エポキシ樹脂の含有量の下限値は、硬化用加熱処理後の密着強度を良好に保持するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましく、11質量%以上が更に一層好ましい。一方、(A)エポキシ樹脂の含有量の上限値は、剥離フィルム用樹脂組成物が脆くなるのを防止するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0012】
<(B)水酸化アルミニウム>
本発明における(B)水酸化アルミニウムとしては、具体的には、昭和電工(株)製「H−42S」、「「H−43S」、「H−42M」、住友化学(株)製「CL301R」、「CL−303」、日本軽金属(株)製「B703」、「B703T」、「B703S」、河合石灰工業(株)製「ALH」等が挙げられる。
【0013】
(B)水酸化アルミニウムの含有量は特に制限はされないが、(B)水酸化アルミニウムの含有量の下限値は、剥離用加熱処理後の剥離性を向上させるという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、25質量%以上が更に一層好ましく、30質量%以上が殊更好ましく、35質量%以上が特に好ましく、40質量%以上がとりわけ好ましく、45質量%以上がなおさら好ましい。一方、(B)水酸化アルミニウムの含有量の上限値は、剥離用加熱処理前の密着強度を確保するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が更に一層好ましく、65質量%以下が殊更好ましく、60質量%以下が特に好ましい。
【0014】
(B)水酸化アルミニウムの平均粒径は特に限定されるものではないが、(B)水酸化アルミニウムの平均粒径の上限値は、剥離性を向上させるという観点から、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましく、2μm以下が更に一層好ましい。一方、(B)水酸化アルミニウムの平均粒径の下限値は、剥離フィルム用樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、樹脂ワニスの粘度が上昇して取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.3μm以上が更に一層好ましく、0.4μm以上が殊更好ましく、0.5μm以上が特に好ましく、1μm以上がとりわけ好ましい。
【0015】
上記水酸化アルミニウムの平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、水酸化アルミニウムの粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、水酸化アルミニウムを超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
【0016】
<(C)硬化剤>
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物には、耐熱性向上という目的で(C)硬化剤を含有させることができる。(C)硬化剤は特に限定はされず、具体的には、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。これらの中でも、フェノール系硬化剤が好ましい。(C)硬化剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0017】
フェノール系硬化剤としては、特に制限はないが、フェノールノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、トリアジン骨格含有ナフトール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。例えば、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂として、「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」(明和化成(株)製)、「NHN」、「CBN」、「GPH」(日本化薬(株)製)、ナフトールアラルキル型樹脂として、「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」(新日鐵化学(株)製)、フェノールノボラック樹脂として「TD2090」(DIC(株)製)、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂「LA3018」、「LA7052」、「LA7054」、「LA1356」(DIC(株)製)等が挙げられる。フェノール系硬化剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物エステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られるものがより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られるものが更に好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル系硬化剤としては、特開2004−427761号公報に開示されている活性エステル系硬化剤を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル系硬化剤としては、例えば、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB−9451、EXB−9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(三菱化学(株)製)、などが挙げられる。活性エステル系硬化剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
ベンゾオキサジン系硬化剤としては、特に制限はないが、具体的に、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
【0020】
シアネートエステル系硬化剤としては、特に制限はないが、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル系硬化剤、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル系硬化剤、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。具体的には、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製、「PT30」、「PT60」)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、「BA230」)、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製、「DT−4000」、「DT−7000」)等が挙げられる。
【0021】
(C)硬化剤の含有量は特に制限はされないが、硬化用加熱処理後の密着強度を良好に保持するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上が更に好ましく、0.6質量%が更に一層好ましい。一方、硬化物が脆くなるのを防止するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、16質量%以下が更に好ましく、14質量%以下が更に一層好ましく、12質量%以下が殊更好ましく、10質量%以下が特に好ましく、8質量%以下がとりわけ好ましい。
【0022】
(C)硬化剤の配合比率は特に制限されないが、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに、(C)硬化剤の反応性官能基数は0でもよいが、耐熱性向上という点から0.05以上が好ましい。一方、硬化用加熱処理後の密着強度を良好に保持するという観点から、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに、(C)硬化剤の反応性官能基数は1以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0,8以下が更に好ましく、0.7以下が更に一層好ましく、0.67以下が殊更好ましく、0.64以下が特に好ましく、0.61以下、0.6以下、0.58以下、0.56以下、0.54以下、0.52以下の順でとりわけ好ましい。なお、反応性官能基とは、エポキシ基と反応する官能基のことを指す。たとえば、フェノール系硬化剤の場合はフェノール性水酸基のことをいい、活性エステル系硬化剤の場合は活性エステル基のことをいい、シアネート系硬化剤の場合はシアネート基のことをいう。
【0023】
<(D)熱可塑性樹脂>
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物には、剥離フィルムの可とう性を高めて取り扱い性を向上させ、さらに剥離後の剥離界面の外観を良好にするという目的で(D)熱可塑性樹脂を含有させることができる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができ、なかでもポリイミド樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000〜200000の範囲であるのが好ましく、10000〜100000の範囲であるのがより好ましい。なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0024】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。また、分子内にポリブタジエン構造、ウレタン構造、イミド構造を有する変性ポリイミド樹脂等も挙げられる。
【0025】
変性ポリイミド樹脂の一例としては、その分子内に下式(1-a)で表されるポリブタジエン構造と、下式(1-b)で表されるイミド構造の双方を含むものが挙げられ、[a]ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、[b]ジイソシアネート化合物、及び[c]四塩基酸二無水物の3成分を反応して得られるものが好ましい。変性ポリイミド樹脂中のポリブタジエン構造の含有率は、剥離フィルムの柔軟性を向上させるという観点から、45質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。変性ポリイミド樹脂中のポリブタジエン構造部分の含有率(質量%)は、反応に用いる上記[a]〜[c]の3成分の質量の合計値に対する[a]の質量割合として定義することができる。
【0026】
【化1】

【0027】
式中、R1はヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとしては、数平均分子量が800〜10000であるヒドロキシル基末端ポリブタジエンが好ましい。また式(1-a)のポリブタジエン構造としては、式中のR1が、数平均分子量が800〜10000のヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示す場合が好ましい。ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの数平均分子量が800未満の場合、変性ポリイミド樹脂が柔軟性に欠ける傾向にあり、10000を超える場合、変性ポリイミド樹脂が熱硬化性樹脂との相溶性に欠ける傾向があり、また耐熱性にも欠ける傾向にある。なお本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定した値である。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルムを用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0028】
変性ポリイミド樹脂における、1分子当たりの(1-a)ポリブタジエン構造の存在数は、1〜10,000となり、好ましくは1〜100である。また、(1-b)イミド構造の存在数は、1〜100となり、好ましくは1〜10である。
【0029】
また変性ポリイミド樹脂の原料となる各成分[a]〜[c]は、順に以下の各式(a)〜(c)で表すことができる。
【0030】
【化2】

【0031】
各式中の記号は前記と同義である。変性ポリイミド樹脂は、[d]その他の成分と反応させて更に変性することが可能である。
【0032】
本発明における変性ポリイミド樹脂の製造法の一例として例えば以下の手順が挙げられる。
【0033】
まず成分[a]のポリブタジエンと成分[b]のジイソシアネート化合物を該ポリブタジエンのヒドロキシル基に対するジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量が1を超える比率で反応させポリブタジエンとジイソシアネートの反応物を得る。該反応物は下記式(a-b)で表すことができる。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、R1はヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、nは1以上100以下(1≦n≦100)の整数を示す。nは好ましくは1以上10以下(1≦n≦10)の整数を示す。式(a-b)で表される反応物においては、式中のR1が、数平均分子量が800〜10000のヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示す場合が好ましい。
【0036】
ポリブタジエンとジイソシアネート化合物の反応割合は、該ポリブタジエンのヒドロキシル基の官能基当量を1とすると、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量が1.5〜2.5となる比率で反応させるのが好ましい。
【0037】
次に、該ポリブタジエンとジイソシアネートの反応物に四塩基酸二無水物を反応させる。四塩基酸二無水物の反応割合は特に限定されないが、組成物中にイソシアネート基を極力残さないようにするのが好ましく、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量をX、原料であるヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基の官能基当量をW、四塩基酸二無水物の酸無水物基の官能基当量をYとすると、Y>X−W≧Y/5(W>0、X>0、Y>0)の関係を満たす比率で反応させるのが好ましい。
【0038】
このようにして得られる変性ポリイミド樹脂は、前述したように、その分子内に式(1-a)で表されるポリブタジエン構造と、式(1-b)で表されるイミド構造の双方を含むものである。また本発明における変性ポリイミド樹脂は、下式(a-b-c)で表される構造を含む変性ポリイミドを主成分とするものが好ましい。
【0039】
【化4】

【0040】
式中、R1はヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、n及びmは1以上100以下(1≦n≦100)の整数を示す。n及びmは好ましくは1以上10以下(1≦n≦10)の整数を示す。式(a-b-c)で表されるポリブタジエンイソシアネートにおいては、式中のR1が、数平均分子量が800〜10000のヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示す場合が好ましい。
【0041】
組成物中のイソシアネート基を極力残さないようにするために、反応中において、FT−IR等でイソシアネート基の消失を確認するのが好ましい。このようにして得られる変性ポリイミド樹脂の末端基は下式(1-c)又は下式(1-d)等で表すことができる。
【0042】
【化5】

【0043】
各式中の記号は前記と同義である。
【0044】
線状変性ポリイミド樹脂の製造において、ポリブタジエンとジイソシアネートの反応物と四塩基酸二無水物を反応させた後、更にジイソシアネート化合物と反応させることにより、より高分子量の線状変性ポリイミド樹脂を含有する組成物を得ることができる。この場合のイソシアネート化合物の反応割合は特に限定されないが、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量をX、原料であるヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基官能基当量をW、四塩基酸二無水物の酸無水物の官能基当量をY、新たに反応させるイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量をZとすると、Y−(X−W)>Z≧0(W>0、X>0、Y>0、Z>0)の関係を満たす比率で反応させるのが好ましい。
【0045】
変性ポリイミド樹脂は、上記式(1-a)で表されるポリブタジエン構造及び上記式(1-b)で表されるイミド構造の2つの化学構造単位を含む。通常、樹脂組成物に柔軟性を付与するためには、ポリブタジエン樹脂のようなゴム系樹脂を樹脂組成物に直接混合することが一般的であるが、非極性のゴム系樹脂は、極性の高い熱硬化性樹脂組成物中で相分離を起こしやすく、特にゴム系樹脂の含有割合が高い場合は、安定した組成物を得ることが難しい。また、ゴム系樹脂を含有する樹脂組成物は、十分な耐熱性が得られないことが多い。一方、ポリイミド樹脂は耐熱性を有しているとともに、極性が高いために熱硬化性樹脂組成物との相溶性が比較的良好である。変性ポリイミド樹脂は、このポリイミド構造と柔軟性を付与するポリブタジエン構造の双方をひとつの分子内に有するため、柔軟性と耐熱性の両方の特性に優れた材料となり、さらに熱硬化性樹脂との相溶性も良好なため、安定した熱硬化性樹脂組成物を得るのに適した材料となる。
【0046】
変性ポリイミド樹脂の原料となる成分[a]ヒドロキシル基末端ポリブタジエンは、分子内の不飽和結合が水素化されたものでもよい。ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの具体例としては、例えば、G−1000、G−3000、GI−1000、GI−3000(日本曹達(株)社製)、R−45EPI(出光石油化学(株)社製)などが挙げられる。
【0047】
なお本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定した値である。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルムを用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0048】
変性ポリイミド樹脂の原料となる成分[b]ジイソシアネート化合物としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられる。
【0049】
変性ポリイミド樹脂の原料となる成分[c]四塩基酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオンなどが挙げられる。
【0050】
変性ポリイミド樹脂の製造において、ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物の反応は、有機溶媒中、反応温度が80℃以下、反応時間が1〜8時間の条件で行うことができる。また必要により触媒存在下に行ってもよい。ポリブタジエンとジイソシアネートの反応物と四塩基酸二無水物の反応は、上記反応後に得られるポリブタジエンとジイソシアネートの反応物を含む溶液を室温まで冷却した後、これに四塩基酸二無水物を添加し、反応温度120〜180℃、反応時間2〜24時間の条件で反応を行うことができる。反応は触媒存在下に行われるのが好ましい。また有機溶媒を更に添加して行ってもよい。得られた反応溶液は、必要により不溶物を除くため濾過を行ってもよい。このようにして、変性ポリイミド樹脂ワニスとして得ることができる。変性ポリイミド樹脂ワニス中の溶媒量は、反応時の溶媒量を調整する、又は反応後に溶媒を添加するなどして適宜調整することができる。また、ポリブタジエンとジイソシアネートの反応物と四塩基酸二無水物の反応の後、更にジイソシアネートを反応させて、より高分子量体である変性ポリイミド樹脂を得ることもできる。この場合ポリブタジエンとジイソシアネートの反応物と四塩基酸二無水物の反応物にジイソシアネート化合物を滴下により添加し、反応温度120〜180℃、反応時間2〜24時間の条件で反応を行うことができる。
【0051】
上記各反応に使用される有機溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジグライム、トリグライム、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの極性溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、必要により芳香族炭化水素などの非極性溶媒を適宜混合して用いることもできる。
【0052】
上記各反応に使用される触媒としては、例えば、テトラメチルブタンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルピペリジン、α−メチルベンジルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、トリエチレンジアミン等の三級アミンや、ジブチル錫ジラウレート、ジメチル錫ジクロライド、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の有機金属触媒などを挙げることができる。これらの触媒は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。触媒としては、特に、トリエチレンジアミンを使用するのが好ましい。
【0053】
フェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、新日鐵化学(株)製FX280、FX293、三菱化学(株)製YX8100、YL6954、YL6974、YL7213、YL6794、YL7553、YL7482等が挙げられる。
【0054】
(D)熱可塑性樹脂の含有量は特に制限はされないが、(D)熱可塑性樹脂の含有量の下限値は、剥離フィルムの可とう性を高めて取り扱い性を向上させ、剥離後の剥離界面の外観を良好にするという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上が更に一層好ましく、20質量%以上が殊更好ましい。一方、(D)熱可塑性樹脂の含有量の上限値は、剥離用加熱処理後の剥離性が低下するのを防止するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0055】
<(E)硬化促進剤>
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤を効率よく反応させる目的で(E)硬化促進剤を含有させることができる。(E)硬化促進剤としては特に制限されないが、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0056】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に制限はないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、 1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
(E)硬化促進剤の含有量は特に制限はされないが、(E)硬化促進剤の含有量の下限値は、硬化促進効果を十分に発揮させるという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。一方、(E)硬化促進剤の含有量の上限値は、剥離フィルム用樹脂組成物の保存安定性が低下するのを防止するという観点から、剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更に一層好ましい。
【0058】
<他の成分>
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物等の熱硬化性樹脂、シリカ、アルミナ等の無機充填材、ゴム粒子、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤、難燃剤等を挙げることができる。
【0059】
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、配合成分を、必要により溶媒等を添加し、回転ミキサーなどを用いて混合する方法などが挙げられる。
【0060】
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物の用途は、剥離フィルムとして用いることが好適であり、支持体付き剥離フィルムの形態で用いることができる。さらに、プリプレグ、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂、回路基板、積層板、多層プリント配線板等の樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に転用できる。
【0061】
<剥離フィルム>
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物は、樹脂ワニス状態で支持基板上に塗布し、剥離フィルム用樹脂組成物層を形成して、剥離フィルムとすることができる。また、予め支持体上に形成された剥離フィルムを支持基板に積層して用いることもできる。本発明の剥離フィルムは様々な支持基板に積層させ、剥離用加熱処理によって剥離することができる。支持基板としては主に、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。
【0062】
<支持体付き剥離フィルム>
本発明の剥離フィルム用樹脂組成物は、樹脂組成物層が支持体上に層形成された支持体付き剥離フィルムの形態で好適に使用することができる。支持体付き剥離フィルムは、当業者に公知の方法に従って、例えば、本発明の樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0063】
支持体は、剥離フィルムを製造する際の支持体となるものであり、最終的には除去されるものである。支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、更には離型紙や銅箔、アルミ箔等の金属箔などを挙げることができる。ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー等の耐熱樹脂も使用することができる。なお、銅箔を支持体として使用する場合は、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより除去することができる。支持体はマット(mat)処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよいが、剥離性を考慮すると離型処理が施されている方がより好ましい。支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0064】
樹脂ワニスを調製するための有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
乾燥条件は特に限定されないが、剥離フィルムのラミネート性を保持するため、乾燥時に樹脂組成物の硬化をできる限り進行させないことが重要となる。また、剥離フィルム内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合は5質量%以下、好ましくは3質量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスにおいては、80〜120℃で3〜13分乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0066】
樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させるという観点から、5〜500μmの範囲とすることが好ましく、10〜200μmの範囲とするのがより好ましく、15〜150μmの範囲とするのが更に好ましく、20〜100μmの範囲とするのが更に一層好ましい。樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムはラミネートの際に剥離される。保護フィルムとしては支持体と同様の材料を用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1〜40μmの範囲が好ましい。
【0067】
本発明の支持体付き剥離フィルムは真空ラミネーターにより好適に支持基板にラミネートすることができる。市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、日立テクノエンジニアリング(株)製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0068】
ラミネートにおいて、支持体付き剥離フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、支持体付き剥離フィルムを加圧及び加熱しながら支持基板に圧着する。ラミネートの条件は、支持体付き剥離フィルム及び支持基板を必要によりプレヒートし、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cmとし、圧着温度を好ましくは70〜140℃、圧着時間を好ましくは15秒〜3分、空気圧20mmHg以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0069】
本発明の支持体付き剥離フィルムは、コアレス基板の製造時において特に有用であり、その一例として以下のような工程をたどる。
(1)支持体付き剥離フィルムを支持基板にラミネートした後、室温付近に冷却し支持体付き剥離フィルムの支持体を剥離する。
(2)剥離フィルムに金属箔をラミネートし、金属箔上にさらにビルドアップ層を形成し、ビルドアップ層を硬化してビルドアップ絶縁層を形成する。ビルドアップ層の硬化用加熱処理の条件は150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、160℃〜200℃で30〜120分の範囲が好ましい。硬化用加熱処理後の剥離フィルム用樹脂組成物は、180℃、90分の加熱処理を5回行った後の金属箔に対する密着強度が、ビア形成、メッキ、エッチングなど回路基板製造時において、金属箔を支持基板に固定し続けておく必要があるため、0.25kgf/cm以上が好ましく、0.27kgf/cm以上がより好ましく、0.3kgf/cm以上が更に好ましく、0.33kgf/cm以上が更に一層好ましい。金属箔に使用される金属としては、銅、アルミニウム、金、白金、銀、コバルト、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等が挙げられる。また、金属箔表面はクロメート処理、ニッケル処理、金処理等を施しても良い。また、樹脂付き金属箔を用いることもできる。
(3)ビルドアップ絶縁層にビア形成し、メッキ、エッチングなどを行い回路基板を形成する。必要に応じて、更にビルドアップ層を形成する。
(4)回路基板の形成後、剥離用加熱処理を行い、剥離フィルム用樹脂組成物と金属箔とを剥離する。剥離用加熱処理の温度はビルドアップ絶縁層の硬化温度以上であることが必要であり、例えばリフロー処理などが挙げられる。剥離用加熱処理の処理温度は220℃〜300℃の範囲で選択され、230℃〜290℃の範囲が好ましく、240℃〜280℃の範囲がより好ましい。また、剥離用加熱処理の処理時間は1分〜30分の範囲で選択され、1分〜25分の範囲が好ましく、1分〜20分の範囲がより好ましく、2分〜20分の範囲が更に好ましく、3分〜15分の範囲が更に一層好ましく、3分〜10分の範囲が殊更好ましい。剥離用加熱処理後の剥離フィルム用樹脂組成物は、更に270℃、55秒の加熱処理を5回行った後の金属箔に対する剥離強度が、金属箔を容易に剥離する必要があるため、0.2kgf/cm以下が好ましく、0.1kgf/cm以下がより好ましく、0.08kgf/cm以下が更に好ましく、0.07kgf/cm以下が更に一層好ましく、0.06kgf/cm以下が殊更好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
【0071】
まず、本明細書での物性評価における測定方法・評価方法について説明する。
【0072】
<熱履歴1(硬化用加熱処理1)後の密着強度の測定と評価>
実施例及び比較例で得られた支持体付き剥離フィルムを銅箔(日鉱金属(株)製 JTC箔)のS面に(株)名機製作所製真空ラミネーターにより、温度100℃、圧力7kgf/cm2、気圧5mmHg以下の条件で片面にラミネートし、銅箔/樹脂組成物層/PETフィルムの3層品をそれぞれ用意した。次いでPETフィルムを剥離し、樹脂組成物層をメックエッチボンドCZ−8100(アゾール類の銅錯体、有機酸を含む表面処理剤)処理済銅張積層板上に、上記と同様にしてラミネートした。そして樹脂組成物層に対して、180℃90分の加熱処理を1回(熱履歴1)行い、評価基板1を作成した。得られた評価基板1を150×30mmの小片に切断し、小片の銅箔部分に、幅10mm、長さ100mmの切込みをいれ、銅箔の一端を剥がしてつかみ具で掴み、インストロン万能試験機を用いて、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした。その時の荷重をJIS C6481に準拠して測定し、熱履歴1(180℃、90分の加熱処理を1回行うことに相当)後の密着強度(kgf/cm)とした。0.5kgf/cm未満の場合を「△」とし、0.5kgf/cm以上0.6kgf/cm未満の場合を「○」とし、0.6kgf/cm以上の場合を「◎」とした。
【0073】
<熱履歴2(硬化用加熱処理2)後の密着強度の測定と評価>
更に評価基板1に対し、180℃、90分の加熱処理を4回行い、評価基板2を作成した。得られた評価基板2を上記と同様にしてJIS C6481に準拠して測定し、熱履歴2(都合、180℃、90分の加熱処理を5回行ったことに相当)後の密着強度(kgf/cm)とした。0.2kgf/cmより大きい場合を「○」とした。硬化用加熱処理後に銅箔と絶縁層の間が膨れて浮き上がった場合を「×」とした。
【0074】
<熱履歴3(剥離用加熱処理)後の剥離強度の測定と評価>
更に評価基板2に対し、リフロー炉で、270℃、55秒の加熱処理を5回行い、評価基板3を作成した。得られた評価基板3を上記と同様にしてJIS C6481に準拠して測定し、熱履歴3(都合、180℃、90分の加熱処理を5回行い、270℃、55秒の加熱処理を5回行ったことに相当)後の剥離強度(kgf/cm)とした。0.1kgf/cm未満の場合を「○」とし、0.1kgf/cm以上0.2kgf/cm未満の場合を「△」とし、0.2kgf/cm以上の場合を「×」とした。
【0075】
<剥離性の外観評価>
評価基板3で熱履歴3(剥離用加熱処理)後の剥離強度を測定した後、剥離した面の銅箔の表面を目視で観察した。銅箔上に樹脂残りが若干ある場合を「△」、樹脂残りがほとんど無い場合を「○」とし、樹脂残りが全くない場合を「◎」とした。
【0076】
<製造例1 ポリイミド樹脂の製造(変性ポリイミド樹脂ワニスA) >
反応容器にG−3000( 2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5047(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100wt%:日本曹達(株)製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光石油化学(株)製)23.5g、ジブチル錫ジラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、トルエン−2,4−ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)4.8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量=161.1g/eq.)8.96gと、トリエチレンジアミン0.07gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル化学工業(株)社製)40.4gを添加し、攪拌しながら130℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT−IRより2250cm−1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して変性ポリイミド樹脂(変性ポリイミド樹脂ワニスA)を得た。変性ポリイミド樹脂ワニスAの性状:粘度=7.5Pa・s(25℃、E型粘度計)、酸価=16.9mgKOH/g、固形分=50wt%、数平均分子量=13723、ポリブタジエン構造部分の含有率=50*100/(50+4.8+8.96)=78.4質量% 。
【0077】
<実施例1>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次に、ポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂組成物の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80〜120℃(平均100℃)で7分間乾燥した(残留溶媒量約2質量%)。次いで樹脂組成物層の表面に厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の支持体付き剥離フィルムを幅507mmにスリットし、これより507mm×336mmサイズのシート状の支持体付き剥離フィルムを得た。
【0078】
<実施例2>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC(株)製、「TD2090」の固形分60質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0079】
<実施例3>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC(株)製、「TD2090」の不揮発分60質量%のMEK溶液)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0080】
<実施例4>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC(株)製、「TD2090」の不揮発分60質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを60部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0081】
<実施例5>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC(株)製、「TD2090」の不揮発分60質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、「CL−301R」、平均粒径1.5μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0082】
<実施例6>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量125、DIC(株)製、「フェノライトLA7054」の不揮発分60質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0083】
<実施例7>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、MEK10部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0084】
<実施例8>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)18部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0085】
<実施例9>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)56部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0086】
<実施例10>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、「H−43S」、平均粒径0.7μm)18.5部、球形シリカ(アドマテックス(株)製、「SO−C2」、平均粒径0.5μm)18.5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0087】
<比較例1>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キスマ5」、平均粒径0.6−1.0μm)37部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして支持体付き剥離フィルムを得た。
【0088】
<比較例2>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)4部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC(株)製、「TD2090」の不揮発分60質量%のMEKワニス)1部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを40部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)6.8部、球形シリカ(アドマテックス(株)製、「SO−C2」、平均粒径0.5μm)35部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0089】
<比較例3>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学(株)製「jER828EL」)2部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、DIC(株)製、「TD2090」の不揮発分60質量%のMEKワニス)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成(株)製、「2P4MZ」)0.1部、変性ポリイミド樹脂ワニスAを20部、MEK20部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量280、DIC(株)製、「HP7200H」)2.6部、球形シリカ(アドマテックス(株)製、「SO−C2」、平均粒径0.5μm)15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物ワニスを作製した。その後、実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0090】
測定結果を、表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1の結果から、実施例1〜10で得られた支持体付き剥離フィルムは、熱履歴2後には密着強度を保持し、剥離用加熱処理後に良好な剥離性を有することがわかった。一方、比較例1〜3で得られた接着フィルムは、熱履歴3後の剥離強度が大きく、剥離フィルムとして使用できないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
エポキシ樹脂、水酸化アルミニウムを配合させることによって、ビルドアップ層の硬化後は高い密着強度を保持し、剥離用加熱処理後においては良好な剥離強度を有する、剥離フィルム用樹脂組成物、剥離フィルムを提供できるようになった。更にこれらを用いて、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、テレビ、等の電気製品や、自動二輪車、自動車、電車、船舶、航空機、等の乗物も提供できるようになったことは意義深い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)水酸化アルミニウムを含有することを特徴とする剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
180℃、90分の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する密着強度が0.25kgf/cm以上であり、更に270℃、55秒の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する剥離強度が0.2kgf/cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
180℃、90分の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する密着強度が0.25kgf/cm以上であり、更に270℃、55秒の加熱処理を5回行った後の、金属箔に対する剥離強度が0.07kgf/cm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
剥離フィルム用樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、(B)水酸化アルミニウムの含有量が5〜85質量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項5】
(B)水酸化アルミニウムの平均粒径が0.01〜5μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項6】
更に(C)硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項7】
(C)硬化剤がフェノール系硬化剤であることを特徴とする、請求項6に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項8】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1としたときに、(C)硬化剤の反応性官能基数が0.05〜1であることを特徴とする、請求項6または7に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項9】
更に(D)熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項10】
(D)熱可塑性樹脂が、変性ポリイミド樹脂であることを特徴とする、請求項9に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項11】
前記変性ポリイミド樹脂が分子内にポリブタジエン構造、ウレタン構造及びイミド構造を有することを特徴とする、請求項10に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項12】
更に(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物を含有することを特徴とする、剥離フィルム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物を含有することを特徴とする、支持体付き剥離フィルム。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の剥離フィルム用樹脂組成物を用いて製造されたことを特徴とする、回路基板。

【公開番号】特開2012−153885(P2012−153885A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−342(P2012−342)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】