説明

半導体デバイス

【課題】半導体デバイスにおいて耐圧を高めること。
【解決手段】n型のシリコン基板1と、シリコン基板1の表層に形成されたp型のベース領域2と、ベース領域2の上方に形成され、シリコンよりもバンドギャップが広い半導体材料を含むn型のコレクタ層7aとを有する半導体デバイスによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体デバイスにおいては、シリコン基板に対して不純物導入や絶縁膜形成等の様々なプロセスを行うことにより、トランジスタ等の素子が形成される。このようにシリコン基板をベースにしたプロセスは既に十分に確立されていると共に、シリコン基板を備えた半導体デバイスは高い信頼性を備えている。
【0003】
しかしながら、シリコンはバンドギャップが約1.1eV程度しかないため、シリコンの価電子帯にある電子は外部電場によって容易に導電帯に遷移する。そして、その電子は、外部電場によって加速されて衝突イオン化を引き起こし、これが原因の大電流によって半導体デバイスが破壊されてしまう。
【0004】
このような問題は、シリコンに高電圧を印加することにより顕著に発生するので、従来のシリコンを使用した半導体デバイスは高耐圧化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−35857号公報
【特許文献2】特開2008−193063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスにおいて耐圧を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点によれば、第1導電型のシリコン基板と、前記シリコン基板の表層に形成された第2導電型のベース領域と、前記ベース領域の上方に形成され、シリコンよりもバンドギャップが広い半導体材料を含む第1導電型のコレクタ層とを有する半導体デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以下の開示によれば、コレクタ層がシリコンよりもバンドギャップが広い半導体材料を含むので、コレクタ層において衝突イオン化が発生し難くなり、デバイスの高耐圧化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る半導体デバイスの製造途中の断面図(その1)である。
【図2】本実施形態に係る半導体デバイスの製造途中の断面図(その2)である。
【図3】本実施形態に係る半導体デバイスの製造途中の断面図(その3)である。
【図4】本実施形態に係る半導体デバイスのエネルギバンド図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る半導体デバイスについて、その製造工程を追いながら詳細に説明する。
【0011】
図1〜図3は、本実施形態に係る半導体デバイスの製造途中の断面図である。
【0012】
本実施形態では、半導体デバイスとしてバイポーラトランジスタを以下のように製造する。
【0013】
まず、図1(a)に示すように、n型(第1導電型)シリコン基板1の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して第1のレジストパターン3を形成する。
【0014】
そして、第1のレジストパターン3の窓3aを通じてシリコン基板1にボロン等のp型不純物をイオン注入することにより、シリコン基板1の一方の主面1aの表層にp型(第2導電型)のベース領域2を形成する。
【0015】
このイオン注入を終了後、図1(b)に示すように、第1のレジストパターン3を除去する。
【0016】
次に、図1(c)に示すように、シリコン基板1の上に第2のレジストパターン4を形成し、第2のレジストパターン4が備える窓4aを通じてシリコン基板1にリン等のn型不純物をイオン注入する。
【0017】
これにより、シリコン基板1の主面1aの表層に、ベース領域2に含まれる大きさであって、かつ、ベース領域2よりも浅いn型のコレクタ領域5が形成される。そのコレクタ領域5におけるn型不純物濃度は、シリコン基板1におけるn型不純物濃度よりも低くされる。
【0018】
その後に、図2(a)に示すように、第2のレジストパターン4を除去する。
【0019】
次に、図2(b)に示すように、シリコン基板1の上にn型の半導体層7を約100nmの厚さに形成する。
【0020】
半導体層7の材料は、シリコンのバンドギャップ(約1.1eV)よりも広いバンドギャップを有する半導体であれば特に限定されない。例えば、酸化亜鉛、酸化亜鉛マグネシウム、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化チタン、酸化ストロンチウムチタン、酸化ニッケル、及び酸化インジウムスズのいずれかを半導体層7の材料として使用し得る。
【0021】
これらの材料のうち、酸化亜鉛は、バンドギャップが約3.4eVであってシリコンのバンドギャップよりも広いうえに、酸化亜鉛とは異なる材料の上に室温程度の低温で形成しても高い移動度が得られる点で、他の半導体よりも有利である。
【0022】
そこで、本実施形態では、上記の半導体層7として酸化亜鉛層を形成する。
【0023】
酸化亜鉛層の成膜方法は特に限定されないが、本実施形態ではRF(Radio Frequency)マグネトロンスパッタ法により半導体層7として酸化亜鉛層を形成する。そのスパッタ法では、酸化亜鉛のターゲットに約20W〜500Wの高周波電力を印加しながら、20℃〜300℃の基板温度で半導体層7を形成する。
【0024】
シリコン基板1は、400℃以上の温度によって熱的なダメージを受けるが、これよりも低い20℃〜300℃の基板温度で成膜し得る酸化亜鉛層は、成膜時にシリコン基板1に与えるダメージが少ない。
【0025】
ここで、上記のようにスパッタ法で酸化亜鉛層を形成すると、意図せずとも膜中の酸素が化学量論的組成であるZnOよりも不足した状態となる。このように酸素不足の状態になると、酸化亜鉛層はn型の導電性を示すようになるので、半導体層7をn型にするための工程は不要である。
【0026】
但し、半導体層7におけるn型不純物濃度は、コレクタ領域5におけるn型不純物濃度よりも高いのが好ましく、そのためには積極的に半導体層7にn型不純物をドープするのが好ましい。
【0027】
そのため、半導体層7の成膜後に、半導体層7に対してCF4プラズマ処理やSF6プラズマ処理を行うことにより、半導体層7にn型不純物であるフッ素をドープするのが好ましい。
【0028】
なお、スパッタ法に代えて、ALD(Atomic Layer Deposition)法により酸化亜鉛層を形成してもよい。この場合は、亜鉛材料としてジンクアセテート、ジエチルジンク、ジメチルジンク、及びアセチルアセトナトジンクのいずれかを使用し得る。また、酸素材料としては、純水、過酸化水素水、オゾン、酸素、及び一酸化二窒素のいずれかを使用し得る。
【0029】
ALD法でも、シリコンがダメージを受ける400℃よりも低い70℃〜300℃程度の温度で酸化亜鉛層を形成できる。
【0030】
更に、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法を用いて半導体層7として酸化亜鉛層を形成してもよい。この場合、高純度の亜鉛材料をクヌーセンセルで蒸発させ、酸素と共にシリコン基板1上に供給することにより、酸化亜鉛層を形成することができる。また、成膜時にシリコン基板1上にn型不純物であるアルミニウム原子を供給することで、n型にドープした酸化亜鉛層を形成することができる。
【0031】
なお、半導体層7にドープし得るn型不純物としては、フッ素やアルミニウムの他に、ガリウム、ボロン、インジウム、スカンジウム、イットリウム、シリコン、ゲルマニウム、錫、塩素、及びヨウ素もある。
【0032】
また、上記のように半導体層7として酸化亜鉛層を形成する場合は、酸化亜鉛の結晶性を良好にするため、図2(b)の点線円内に示すように、シリコン基板1の上にバッファ層9を形成してからその上に半導体層7を形成してもよい。この場合のバッファ層9としては、例えば、酸化亜鉛マグネシウム層がある。
【0033】
その後、図2(c)に示すように、半導体層7の上にフォトレジストを塗布し、それを露光、現像して第3のレジストパターン8を形成する。
【0034】
そして、第3のレジストパターン8をマスクに使用しながら、エッチング液として酢酸を用いるウエットウエットエッチングにより半導体層7をエッチングし、コレクタ領域5の上にコレクタ層7aを形成する。
【0035】
この後に、第3のレジストパターン8は除去される。
【0036】
次いで、図3(a)に示すように、シリコン基板1の上に第4のレジストパターン10を形成した後、シリコン基板1の上側全面に導電膜11としてアルミニウム膜を蒸着法により約100nmの厚さに形成する。
【0037】
そして、図3(b)に示すように、第4のレジストパターン10を除去し、その上の導電膜11をリフトオフする。
【0038】
これにより、ベース領域2の上にベース電極11Bが形成され、コレクタ層7aの上にコレクタ電極11Cが形成される。また、ベース領域2の外側のシリコン基板1の主面1a上にエミッタ電極11Eが形成される。
【0039】
以上により、本実施形態に係る半導体デバイスの基本構造が完成したことになる。
【0040】
この半導体デバイスはバイポーラトランジスタであって、ベース領域2の外側のシリコン基板1がエミッタ領域としての機能を兼ねる。そして、図3(b)の電流パスP1のように、エミッタ電極11Eからコレクタ電極11Cに向かって電子が流れる。
【0041】
図4は、コレクタ−エミッタ間にバイアス電圧を印加した状態における、電子から見た電流パスP1に沿ったエネルギバンド図である。
【0042】
図4に示すように、シリコン基板1、ベース領域2、及びコレクタ領域5におけるバンドギャップΔE1は、シリコンのバンドギャップに等しい約1.1eVである。
【0043】
一方、酸化亜鉛層等の半導体層7をパターニングして形成されたコレクタ層7aにおいては、バンドギャップΔE2がシリコンのそれよりも大きい約3.4eV程度となる。
【0044】
よって、コレクタ層7aの材料として基板1と同じシリコンを使用する場合と比較して、外部電場が原因でコレクタ層7aにおける電子が価電子帯から導電帯に不必要に遷移するのが抑制される。そのため、遷移した電子が原因の衝突イオン化がコレクタ層7aにおいて発生し難くなり、大電流によって半導体デバイスが破壊される危険性を低減できる。
【0045】
しかも、コレクタ層7a以外のベース領域2やコレクタ領域5については、シリコン用のプロセスとして十分に確立しているイオン注入を利用してシリコン基板1内に形成されるので、既存の設計資産を活用して安価で信頼性の高い半導体デバイスが得られる。
【0046】
ここで、図3(b)に示すように、コレクタ層7aの直下では電流パスP1がシリコン基板1の法線方向nに等しい。このような電流パスを備えた半導体デバイスは、縦型デバイスとも呼ばれる。縦型デバイスでは、シリコン基板1の法線方向nを向いた部分の電流パスP1において当該電流パスP1の断面積が大きくなり、大電流を流しやすい。そのため、本実施形態は、大電流を制御するパワーデバイスに好適である。
【0047】
そのようなパワーデバイスでは、コレクタ−エミッタ間に数100V〜数1000V程度の電圧が印加され、コレクタ層7a内に高電界が発生する。このように高電界が発生しても、本実施形態では既述のようにコレクタ層7aにシリコンよりもバンドギャップが広い材料を使用するので、コレクタ層7aで衝突イオン化が原因の大電流が発生するのを抑制でき、オン抵抗を増加させることなくデバイスの高耐圧化を図ることができる。
【0048】
よって、本実施形態に係る半導体デバイスは、サーバ等の電子機器、電気自動車、発電所等のように、高耐圧が求められる分野において好適に使用することができる。
【0049】
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0050】
(付記1) 第1導電型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の表層に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の上方に形成され、シリコンよりもバンドギャップが広い半導体材料を含む第1導電型のコレクタ層と、
を有することを特徴とする半導体デバイス。
【0051】
(付記2) 前記半導体材料は、n型の導電性を示す酸化亜鉛であることを特徴とする付記1に記載の半導体デバイス。
【0052】
(付記3) 前記半導体材料は、フッ素、アルミニウム、ガリウム、ボロン、インジウム、スカンジウム、イットリウム、シリコン、ゲルマニウム、錫、塩素、及びヨウ素のいずれかがドープされたことによりn型の導電性を示す酸化亜鉛であることを特徴とする付記1に記載の半導体デバイス。
【0053】
(付記4) 前記シリコン基板の上に、酸化亜鉛マグネシウム層を形成し、該酸化亜鉛マグネシウム層の上に、前記コレクタ層として酸化亜鉛層が形成されたことを特徴とする付記1に記載の半導体デバイス。
【0054】
(付記5) 前記シリコン基板の前記表層に、前記ベース領域に含まれる大きさの第1導電型のコレクタ領域が形成され、
前記コレクタ層は、前記コレクタ領域が形成された部分の前記シリコン基板上に形成されたことを特徴とする付記1〜4のいずれかに記載の半導体デバイス。
【符号の説明】
【0055】
1、21…シリコン基板、1a、21a、21b…主面、2…ベース領域、3、23…第1のレジストパターン、3a、23a…窓、4、27…第2のレジストパターン、4a、27a…窓、5…コレクタ領域、7…半導体層、7a…コレクタ層、8、31…第3のレジストパターン、9…バッファ層、10…第4のレジストパターン、11、32…導電膜、11B…ベース電極、11C、36…コレクタ電極、11E、32E…エミッタ電極、22…エミッタ領域、25…ゲート絶縁膜、26…ゲート電極、28…ソース領域、35…コレクタ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のシリコン基板と、
前記シリコン基板の表層に形成された第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の上方に形成され、シリコンよりもバンドギャップが広い半導体材料を含む第1導電型のコレクタ層と、
を有することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
前記半導体材料は、n型の導電性を示す酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記半導体材料は、フッ素、アルミニウム、ガリウム、ボロン、インジウム、スカンジウム、イットリウム、シリコン、ゲルマニウム、錫、塩素、及びヨウ素のいずれかがドープされたことによりn型の導電性を示す酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記半導体材料は、酸化亜鉛、酸化亜鉛マグネシウム、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化チタン、酸化ストロンチウムチタン、酸化ニッケル、及び酸化インジウムスズのいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−187630(P2011−187630A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50549(P2010−50549)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】