説明

回転速度表示装置

【課題】加工条件を変更した場合における加工能率の変化を作業者が容易に把握することができ、びびり振動を抑制する際における作業者の負担を軽減することができる回転速度表示装置を提供する。
【解決手段】びびり振動の発生を検出すると、安定回転速度を算出するとともに、加工プログラムをもとに、現在の回転速度で加工した際の想定加工時間と、安定回転速度で加工した際の想定加工時間とを夫々算出し、さらに回転軸3の回転速度を安定回転速度へと変更した場合に、加工能率がどのように変化するかを演算し、安定回転速度とともにモニタ15に表示するようにした。したがって、作業者は、モニタ15の表示にもとづいて回転速度の変更に伴う加工能率の変化を容易に把握することができ、ひいては加工能率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具又はワークを回転させながら加工を行う工作機械において、加工中に発生するびびり振動を抑制可能な回転軸の回転速度を表示するための回転速度表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸を回転させて加工を行う工作機械では、切り込み量や回転軸の回転速度などの加工条件が適切でない等に起因して加工中に所謂びびり振動が生じるおそれがある。そして、びびり振動が生じると、加工面の仕上げ精度が悪化したり工具が破損してしまうといった問題が生じることから、びびり振動の抑制が求められている。
【0003】
このようなびびり振動を抑制するための技術としては、非特許文献1に記載の技術、すなわち安定限界線図の理論を用いた技術が公知となっている。そして、この技術を利用した振動抑制方法としては、たとえば特許文献1に記載されているように、工作機械の回転軸の近傍に振動検出手段を取り付けることによってびびり周波数を測定し、該びびり周波数を60倍すると共に工具刃数及び所定の整数で除して得た値を安定回転速度とし、該安定回転速度にて回転軸を回転させるといったものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−44852号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2001年日本機械学会講習会資料「切削加工、びびり振動の基礎知識」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の振動抑制方法によれば、回転速度の変更のみによってびびり振動の抑制を図るとしているが、実際には回転速度のみならず、たとえば主軸(回転軸)の送り速度や切込量等の加工条件も変更しなければならない場合がある。そして、そのような加工条件を安易に変更してしまうと、加工能率がそれほど向上しない事態が起こり得るばかりか、逆に加工能率が悪化してしまうおそれもある。そこで、作業者は、びびり振動を抑制するに際して加工能率の向上比率等を一々計算しながら加工条件を変更しなければならず、作業者に多大な負担がかかるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、加工条件を変更した場合における加工能率の変化を作業者が容易に把握することができ、びびり振動を抑制する際における作業者の負担を軽減することができる回転速度表示装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、工具又はワークを回転させるための回転軸を備え、前記工具及び/又はワークを所定方向へ相対的に送りながら加工する工作機械において、前記回転軸にびびり振動が発生した際に生じる振動情報を検出する振動検出手段と、前記びびり振動の発生を検出すると、前記びびり振動を抑制可能な安定回転速度を算出する演算手段と、前記安定回転速度を表示する表示手段と、加工プログラムを記憶する記憶手段とを備えた回転速度表示装置であって、前記演算手段は、前記加工プログラムをもとに、前記びびり振動が発生した際の回転速度で加工した場合の第1の想定加工時間と、回転速度を前記安定回転速度に変更して加工した場合の第2の想定加工時間とを算出するとともに、前記第1の想定加工時間と前記第2の想定加工時間とをもとに、回転速度を前記安定回転速度に変更することによる加工能率の変化を算出し、前記表示手段に前記加工能率の変化を表示することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、演算手段は、前記加工プログラムにおける座標値をもとに、直線指令及び円指令での夫々の移動距離Lを下記式で算出するとともに、その累積値を移動距離Lcとし、前記第1の想定加工時間及び前記第2の想定加工時間を、前記移動距離Lcを送り速度Fで割って求めることを特徴とする。
【数1】

尚、上記式中のx、y、zは夫々現在位置座標であり、x、y、zは夫々目標位置座標である。また、Rは円弧半径である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記演算手段は、前記加工プログラムをもとに、前記回転速度に加えて他の加工条件についても変更前と変更後とで夫々想定加工時間を算出するととともに、変更前後での想定加工時間をもとに、前記他の加工条件を変更することによる加工能率の変化を算出し、前記表示手段に前記加工能率の変化を表示することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記演算手段は、下記式(1)〜(5)を用いて安定回転速度を算出することを特徴とする。
安定回転速度=係数×60×びびり周波数/(任意の整数×工具刃数) ・・・(1)
係数=a−b×k値+c×位相情報 ・・・(2)
k’値=60×びびり周波数/(工具刃数×回転速度) ・・・(3)
k値=k’値の整数部 ・・・(4)
位相情報=k’値−k値 ・・・(5)
なお、式(2)におけるa、b、cは予め定められた定数である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、びびり振動の発生を検出すると、安定回転速度を算出するとともに、回転軸の回転速度を安定回転速度へと変更した場合に、変更する前からどのように加工能率が変化するかを演算し、表示手段に表示する。したがって、作業者は、表示手段の表示にもとづいて回転速度の変更に伴う加工能率の変化を容易に把握することができ、ひいては加工能率の向上を図ることができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、回転軸の回転速度のみならず他の加工条件(たとえば送り速度)を変更する場合についても、該加工条件の変更に伴って加工能率がどのように変化するかを演算し、表示手段に表示するため、作業者は、表示手段の表示にもとづいて他の加工条件をどのように変更すれば加工能率がどのように変化するかを容易に把握することができる。したがって、加工能率が向上しないばかりか悪化してしまうような加工条件としてしまうおそれがなく、極めて容易且つ確実に加工能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】振動抑制装置のブロック構成を示した説明図である。
【図2】振動抑制の対象となる回転軸ハウジングを側方から示した説明図である。
【図3】回転軸ハウジングを軸方向から示した説明図である。
【図4】モニタにおける安定限界線図の表示態様を示した説明図である。
【図5】加工条件や想定加工時間、加工能率の比率をソートして表示する表示画面の一例であって、表示前の状態を示した説明図である。
【図6】加工条件や想定加工時間、加工能率の比率をソートして表示する表示画面の一例であって、表示後の状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態となる回転速度表示装置を含んだ振動抑制装置について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0012】
図1は、振動抑制装置10のブロック構成を示した説明図である。図2は、振動抑制の対象となる回転軸ハウジング1を側方から示した説明図であり、図3は、回転軸ハウジング1を軸方向から示した説明図である。
振動抑制装置10は、回転軸ハウジング1にC軸周りで回転可能に備えられた回転軸3に生じるびびり振動を抑制するためのものであって、回転中の回転軸3に生じる振動に伴う特性値である時間領域の振動加速度(時間軸上の振動加速度を意味する)を検出するための振動センサ2a〜2cと、該振動センサ2a〜2cによる検出値を解析してびびり振動の発生の有無を判定するとともに、その判定結果に基づいてびびり振動を抑制可能な安定回転速度を算出・表示したり、回転軸3の回転速度を制御したりする制御装置5とを備えてなる。尚、回転軸ハウジング1は、所定の方向へスライド可能となっており、回転軸3に装着されて回転する工具(図示せず)を所定方向へ送りながら、ワークを加工するようになっている。
【0013】
振動センサ2a〜2cは、図2及び図3に示す如く回転軸ハウジング1に取り付けられており、一の振動センサは、他の振動センサに対して直角方向への時間領域の振動加速度を検出するようになっている(たとえば、振動センサ2a〜2cにて、それぞれ直交するX軸、Y軸、Z軸方向での時間領域の振動加速度を検出するように取り付ける)。
【0014】
一方、制御装置5は、振動センサ2a〜2cから検出される時間領域の振動加速度をもとにした解析を行うFFT演算装置11と、作業者に入力される各種の値(びびり振動の発生を判定したり、安定回転速度を算出したりする際に用いる値)や加工プログラム等を記憶するための記憶装置13と、びびり振動が発生しているか否かを判定するとともに、後述の如くして加工能率を演算したり安定回転速度を算出したりする演算装置12と、回転軸3の回転速度を制御するNC装置14とを備えており、NC装置14には、加工プログラムや機械の現在位置に加え、加工能率や安定回転速度等の演算装置12での演算結果等を表示するためのモニタ15が備えられている。
【0015】
また、振動抑制装置10による「びびり振動」の振動抑制制御について説明する。
まず、加工を開始する前に、加工プログラムや工具刃数等の工具情報、びびり振動の発生を判定するための閾値等を入力し、記憶装置13に予め記憶させておく。そして、加工が開始されると、制御装置5では、振動センサ2a〜2cにより得られる振動情報をもとに、回転軸ハウジング1にびびり振動が生じているか否かを監視する。すなわち、振動センサ2a〜2cにより回転軸ハウジング1における時間領域の振動加速度を常時検出し、FFT演算装置11においてその時間領域の振動加速度のフーリエ解析を行い、振動情報である周波数領域の振動加速度の最大値(最大加速度)とその周波数(びびり周波数)とを取得する。また、演算装置12において、取得した最大加速度と記憶装置13に記憶されている閾値とを比較し、最大加速度が閾値を超えると、回転軸ハウジング1に抑制すべきびびり振動が発生していると判定し、下記式(1)〜式(5)により安定回転速度を算出する。そして、算出した安定回転速度を後述するようにして求める安定限界線図とともにモニタ15に表示し(図4のような態様で表示し)、作業者に対して回転速度の変更の指令を入力するように促す。
【0016】
安定回転速度=係数×60×びびり周波数/(任意の整数×工具刃数) ・・・(1)
係数=a−b×k値+c×位相情報 ・・・(2)
k’値=60×びびり周波数/(工具刃数×回転速度) ・・・(3)
k値=k’値の整数部 ・・・(4)
位相情報=k’値−k値 ・・・(5)
なお、式(2)におけるa、b、cは予め定められた定数であり、記憶装置13に記憶されているものとする。
【0017】
したがって、作業者により、回転軸3の回転速度が安定回転速度へと変更されるとともに、必要に応じて回転軸3の送り速度等の加工条件が変更されることによってびびり振動の抑制が図られることになるが、演算装置12では、各パラメータ(回転速度や送り速度等)を変更した際における加工能率の変化を以下のようにして算出し、図4に示す如く安定回転速度と共にモニタ15に表示する。
【0018】
ここで、本発明の要部となる加工能率の算出及び表示態様について、図4〜図6をもとに詳述する。
まず、現在の加工プログラムにおいて、使用する工具の種類(工具番号に対応付けて記憶)、回転軸3の回転速度(安定回転速度へと変更前の回転速度)、及び送り速度と、加工プログラムの座標から算出される切削送りの移動距離とから、当該条件(変更前の初期条件)で加工した際の想定加工時間(第1の想定加工時間)を算出し、初期条件の欄(図5中の左側の欄)に表示する。次に、回転速度を安定回転速度へと変更した場合についての想定加工時間(第2の想定加工時間)を、安定回転速度と送り速度(変更する場合、変更しない場合の両方を含む)との組み合わせ毎に切削送りの移動距離を用いて算出し、最終条件の欄(図5中の右側の欄)に表示する。そして、各場合において初期条件での想定加工時間からどれだけ加工時間が短縮されるかを示す加工能率の比率(加工能率の変化)を演算し、加工能率比率の欄に表示する。また、変更前の条件や変更後の各条件を選択すると、演算装置12は、図4に示すような態様で安定限界線図及び加工能率の比率をモニタ15に表示する。
【0019】
なお、図5は、想定加工時間等が表示される前の画面であり、想定加工時間等が表示されると、たとえば図6に示すような画面となる。図6に示す例では、1行目の工程は同じであるものの、2行目〜4行目の工程において、加工時間や回転速度、送り速度等が異なっており、加工条件を最終条件に示されている条件に変更した方が効率の良い加工を期待できることがわかる。特に3行目及び4行目の工程では、左側の欄に記載の回転速度(たとえば加工プログラム等で設定されている回転速度)から、右側の欄に記載の回転速度(安定回転速度)へ変更したとしても加工時間が短縮され、加工能率が向上することがわかる。
【0020】
また、想定加工時間を算出するに際しては、たとえば以下のようにして算出することができる。つまり、加工プログラムが直線指令である場合、及び円指令である場合における移動距離を下記式で夫々算出して、工具、回転速度、送り速度が同じ連続した指令の累積値を移動距離Lcとして求める。そして、求めた移動距離Lcを送り速度Fで割ることにより、想定加工時間Tを算出することができる(想定加工時間T=移動距離Lc/送り速度F)。尚、式中のx、y、zは夫々現在位置座標であり、x、y、zは夫々目標位置座標である。また、Rは円弧半径である。
【数2】

【0021】
そこで、作業者は、モニタ15の表示を参照して、びびり振動を抑制することができ、且つ、最も加工能率の高くなる加工条件を把握し、NC装置14を操作して回転軸3の回転速度を安定回転速度へと変更するとともに、回転軸3の送り速度を加工能率の最も高くなる送り速度とすればよい。
【0022】
なお、びびり振動の発生に拘わらず、加工能率の向上を狙って加工条件(たとえば回転速度や送り速度に加え、工具の種類や切込量等を含む)を変更したい場合も考えられる。そこで、そのような場合には、変更したい加工条件及び加工プログラムを入力することにより、上記同様の方法でたとえば工具、切込量、回転速度、及び送り速度の組み合わせ毎に想定加工時間を算出するとともに、当初の条件(初期条件)での想定加工時間との比較から加工能率の変化を夫々算出し、モニタ15に表示することも可能である。
【0023】
また、モニタ15に表示する安定限界線図の算出について説明する。
加工条件で定まる係数行列をA、系の伝達関数をGとすると、びびり振動が生じる臨界条件式は下記式(6)となる。
【0024】
【数3】

尚、式(6)中におけるFは切削力ベクトル、alimは限界切込量、Kは比切削抵抗、ωはびびり周波数、Tは切刃通過周期、iは虚数単位である。
【0025】
ただ、本実施例では簡単にするため系の回転軸直交方向のモーダルパラメータがそれぞれ等しいと仮定し、伝達関数行列を下記式(7)で定義する。
【数4】

【0026】
そして、fを系の固有振動数、ζを減衰比、Rmaxをコンプライアンスとすると、等価パラメータM、K、Cは、それぞれ下記式(8)で表される。
【数5】

【0027】
ここで、行列A・G(iω)の固有値の逆数をΛとおくと、下記式(9)の関係が成り立つ。
【数6】

【0028】
そして、このとき限界切込量alim、位相情報ε、及びびびり周波数ωに対応する回転軸回転速度Sは、夫々下記式(10)〜(12)で表される。
【数7】

尚、式(12)中のlは任意の整数である。
【0029】
ここで、式(12)中のlを加工結果から算出したk値とし、k値前後の回転軸回転速度Sと限界切込量alimとの関係を整理することにより、安定限界線図における安定回転速度を算出することができる。なお、式(6)〜式(11)の関係式から、コンプライアンスRmaxは位相情報εに影響しないため、Rmaxを任意の値とし、位相情報εを用いてパラメータ同定を行うことにより固有振動数及び減衰比を得ることができる。
【0030】
以上のような振動抑制装置10によれば、びびり振動の発生を検出すると、安定回転速度を算出するとともに、加工プログラムをもとに、現在の回転速度で加工した際の想定加工時間と、安定回転速度で加工した際の想定加工時間とを夫々算出し、さらに回転軸3の回転速度を安定回転速度へと変更した場合に、加工能率がどのように変化するかを演算し、安定回転速度とともにモニタ15に表示する。したがって、作業者は、モニタ15の表示にもとづいて回転速度の変更に伴う加工能率の変化を容易に把握することができ、ひいては加工能率の向上を図ることができる。
【0031】
また、回転軸3の回転速度のみならず送り速度を変更する場合についても、送り速度の値毎に変更前後で加工能率が変化するかを演算し、モニタ15に表示するため、作業者は、モニタ15の表示にもとづいて送り速度をどのように変更すれば加工能率がどのように変化するかを容易に把握することができる。したがって、加工能率が向上しないばかりか悪化してしまうような加工条件としてしまうおそれがなく、極めて容易且つ確実に加工能率の向上を図ることができる。
さらに、びびり振動の発生に関係なく加工条件を変更したい場合にも、加工条件の変更に伴い加工能率がどのように変化するかを演算し、モニタ15に表示するため、極めて使い勝手が良い。
【0032】
なお、本発明に係る回転速度表示装置は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、振動検出手段、及びびびり振動の検出後の制御等に係る構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0033】
たとえば、上記実施形態では、算出した安定回転速度をモニタ15に表示するにとどめているが、びびり振動の発生を検出すると、取り敢えずびびり振動を抑制するために、NC装置14において回転速度を自動的に安定回転速度へと変更するように構成することも可能である。
また、上記実施形態では、振動センサにより回転軸の振動加速度を検出するよう構成しているが、振動による回転軸の変位や音圧を検出し、当該変位や音圧にもとづいて安定回転速度を算出するようにしてもよく、他には、回転軸の位置や回転を検出する検出器、回転軸モータや送り軸モータの電流を測定する電流測定器を振動検出手段として採用することも可能である。
【0034】
さらに、演算装置12やFFT演算装置11を、NC装置14とは別体の外部コンピュータとし、ネットワークを介して両者を接続する等しても何ら問題はない。
加えて、上記実施形態では、工作機械の回転軸における振動を検出する構成としているが、回転しない側(固定側)の振動を検出し、安定限界線図や強制びびり領域を算出するように構成してもよい。また、工具を回転させるマシニングセンタに限らず、ワークを回転させる旋盤等といった工作機械にも適用可能であるし、振動検出手段の設置位置や設置数、閾値等を、工作機械の種類、大きさ等に応じて適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1・・回転軸ハウジング、2a、2b、2c・・振動センサ(振動検出手段)、3・・回転軸、5・・制御装置、10・・振動抑制装置(回転速度表示装置)、11・・FFT演算装置(振動検出手段)、12・・演算装置(振動検出手段、演算手段)、13・・記憶装置(記憶手段)、14・・NC装置、15・・モニタ(表示手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具又はワークを回転させるための回転軸を備え、前記工具及び/又はワークを所定方向へ相対的に送りながら加工する工作機械において、前記回転軸にびびり振動が発生した際に生じる振動情報を検出する振動検出手段と、前記びびり振動の発生を検出すると、前記びびり振動を抑制可能な安定回転速度を算出する演算手段と、前記安定回転速度を表示する表示手段と、加工プログラムを記憶する記憶手段とを備えた回転速度表示装置であって、
前記演算手段は、前記加工プログラムをもとに、前記びびり振動が発生した際の回転速度で加工した場合の第1の想定加工時間と、回転速度を前記安定回転速度に変更して加工した場合の第2の想定加工時間とを算出するとともに、
前記第1の想定加工時間と前記第2の想定加工時間とをもとに、回転速度を前記安定回転速度に変更することによる加工能率の変化を算出し、前記表示手段に前記加工能率の変化を表示することを特徴とする回転速度表示装置。
【請求項2】
演算手段は、前記加工プログラムにおける座標値をもとに、直線指令及び円指令での夫々の移動距離Lを下記式で算出するとともに、その累積値を移動距離Lcとし、前記第1の想定加工時間及び前記第2の想定加工時間を、前記移動距離Lcを送り速度Fで割って求めることを特徴とする請求項1に記載の回転速度表示装置。
【数1】

尚、上記式中のx、y、zは夫々現在位置座標であり、x、y、zは夫々目標位置座標である。また、Rは円弧半径である。
【請求項3】
前記演算手段は、前記加工プログラムをもとに、前記回転速度に加えて他の加工条件についても変更前と変更後とで夫々想定加工時間を算出するととともに、
変更前後での想定加工時間をもとに、前記他の加工条件を変更することによる加工能率の変化を算出し、前記表示手段に前記加工能率の変化を表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転速度表示装置。
【請求項4】
前記演算手段は、下記式(1)〜(5)を用いて安定回転速度を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の回転速度表示装置。
安定回転速度=係数×60×びびり周波数/(任意の整数×工具刃数) ・・・(1)
係数=a−b×k値+c×位相情報 ・・・(2)
k’値=60×びびり周波数/(工具刃数×回転速度) ・・・(3)
k値=k’値の整数部 ・・・(4)
位相情報=k’値−k値 ・・・(5)
なお、式(2)におけるa、b、cは予め定められた定数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39645(P2013−39645A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178990(P2011−178990)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】