説明

圧電モータ及び圧電モータ付き電子機器

【課題】 簡単な構成で振動体の振動を抑制することなく安定した支持ができる支持構造を得る事で、位置決め精度及び位置決め制御性の向上、位置決め安定性を図り、モータの性能バラツキを小さくする圧電モ−タの提供。
【解決手段】 圧電素子を有する振動体1の振動により、振動体1もしくは振動体1に設けられた摩擦部材3と接する接触部材5もしくは振動体1自体を稼動する圧電モータにおいて、振動体1に設けられた複数の凹部1aと、凹部1aと係合する複数の凸部を有する支持部材2を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電モータ及び圧電モータ付き電子機器及びステージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電素子を有する振動体の振動によりこれと接する移動体を摩擦駆動する圧電アクチュエータ、いわゆる超音波モータが超精密位置決めを達成する手段として各方面で注目されている。特に、矩形板の振動体を利用したものはリニヤモータとして幅広い分野でその応用が期待されている。
【0003】
矩形板の振動体の支持方法としては図15に示す様に、圧電素子からなる矩形板の振動体100周囲を弾性部材101で挟み込むようにして支持する構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2980541号公報(第10−11頁、第11図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、弾性部材で挟み込んで支持する構造とした場合、位置決め終了後に弾性部材が自ら変形してしまい、稼動部の位置がずれてしまうことが有る。また起動時、あるいは停止時にも移動体からの反力で、支持部が変形し、駆動特性移動量にヒステリシスを生じ易くなっていた。従って、結果的に移動体の位置がずれ易く、高精度な位置決めの実現が難しいという課題が有った。
【0006】
また、弾性体を用いずに金属等の部材同士の係合により支持する例もあるが、この場合も係合部に、ガタが有ると同様の結果を招く恐れが有った。
【0007】
更には、弾性部材による支持の様に支持の条件(拘束力等)が変動するとモータ個々の特性のばらつきが大きくなるだけでなく、外部環境温度等によっても特性が大きく変化する可能性が有った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の第1の態様は、圧電素子を有する矩形形状の振動体と、
前記振動体に設けられた摩擦部材と、前記振動体の振動の節に設けられた回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する軸受けを有する押さえ板と、前記振動体に加圧力を与え、前記摩擦部材と前記移動体を接触させる加圧ばねと、を有する圧電モータにある。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記加圧ばねの加圧力は前記振動体の前記摩擦部材が設けられた側面であることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータにある。
【0010】
本発明の第3の態様は、圧電素子を有する矩形形状の振動体と、前記振動体に設けられた摩擦部材と、前記振動体の振動の節に設けられた回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する軸受けを有する押さえ板と、前記回転軸に設けられた加圧受け部材と、前記加圧受け部材に加圧力を与え、前記摩擦部材と前記移動体を接触させる加圧ばねと、を有する圧電モータにある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から3のいずれかの態様の圧電モータを有し、移動体と一体に動作する伝達機構と、伝達機構の動作に基づいて動作する出力機構とを有する圧電モータ付き電子機器にある。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から3のいずれかの態様の圧電モータを有し、移動体と一体に動作する伝達機構と、伝達機構の動作に基づいて稼動される出力機構とを有する圧電モータを備えたステージにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧電素子を有する振動体の振動により、振動体と接する接触部材もしくは振動体自体を稼動する圧電モータにおいて、振動体に設けられた複数の凹部と、凹部と係合する複数の凸部を有する支持部材を備える。また、振動体に設けられた複数の凸部と、凸部と係合する複数の凹部を有する支持部材を備える。これによれば、振動体と接触部の間では安定な接触状態が得られるとともに、振動体は他の方向には動きが拘束される。
【0014】
また、凸部もしくは凹部は振動体が励振する振動の節の位置近傍に設けることにより、振動体の振動を阻害しない。
【0015】
また、振動体に設けられた摩擦部材には振動体から張り出した部分を持たせることにより支持部材からの加圧に対しても振動体が倒れることなく安定に位置を保つことができる。
【0016】
また、振動体に設けられ、振動体と接触部材との接触方向に延出する支持部材と、支持部材を案内する案内部材からなり、支持部材と案内部材とで、振動体の振動体と接触部材との接触方向以外の動きを規制する様にすることにより、簡単で安定な支持が得られる。
【0017】
また、振動体に設けられ、振動体と接触部材との接触方向に延出する支持部材と、支持部材を案内する案内部材と、振動体と接触部材との間に接触圧を与えるばね部材からなり、支持部材と案内部材とで、振動体の振動体と接触部材との接触方向へ移動可能な様に案内し、ばね部材と、ばね部材と係合するばね案内部とで振動体の支持部材周りの回転を拘束することによっても同様の効果が得られる。
【0018】
また、振動体に設けられた案内部と、案内部と係合する係合部を有する一つの支持部材からなり、支持部材に加圧力を与えることにより、振動体と接触部材との接触圧を得る構造とすることにより、振動体と接触部の間では安定な接触状態が得られるとともに、振動体は他の方向には動きが拘束される為、ガタの無い安定な支持が可能となる。
【0019】
また、案内部は振動体が励振する振動の節の位置近傍に設けることにより振動体の振動を妨げず、安定な支持が可能となる。
【0020】
また、振動体に設けられた延出部を支持部材により加圧することにより、摩擦部材と接触部材との接触圧を得るとともに、延出部は支持部材と係合し、延出部の中心線を回転中心とする回転可能とするとともに、回転動作以外は規制される様に延出部と支持部材の形状を決めることによりガタの無い安定な支持が可能となる。
【0021】
また、摩擦部材を半球もしくは半円柱形状とすることにより、複数の支持部の寸法の違いを吸収し、振動体と接触部の間では安定な接触状態が得られる。
【0022】
また、振動体に設けられた回転軸により振動体は回転可能な様に支持され、ばね部材からの加圧力により、振動体と移動体は接触圧が与えられる構造とすることにより支持部でのガタの無い構造が可能となる。
【0023】
また、ばね部材からの加圧力は、振動体の励振する振動の節近傍に働く様にすることで振動体の振動を阻害せず、効率のよいモータが実現できる。
【0024】
また、ばね部材からの加圧力は、回転軸の回転力として働くような構造とすることにより、加圧が直接振動体に働かないからロスが無く、高効率でモータ個々の特性のばらつきは小さくなる。
【0025】
また、上記何れかの圧電モータを搭載した圧電モータ付き電子機器は、応答が速く位置決め分解能が高い可動部の駆動が可能であり、低消費電力な電子機器が実現できる。
【0026】
また、上記何れかの圧電モータを備えたステージは、機構が簡単かつ小型であるとともに、磁化を避ける環境下でも使用できる圧電モータを備えたステージを提供することができる。 以上により、本発明によれば、支持部での機械的ガタは無いか、有ったとしても振動体と移動体の間の摩擦力によって保持される為、高精度で安定な位置決め制御が可能となる。そして支持部での振動のロスが極めて小さいとともに、振動体と移動体の間では良好な接触が得られるため高効率で寿命の長い圧電モータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1にかかわる圧電モータの支持構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかわる圧電モータの支持構造の別の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかわる圧電モータの支持構造の別の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかわる圧電モータの支持構造の別の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかわる圧電モータの支持構造を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかわる圧電モータの支持構造の別の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3にかかわる圧電モータの振動体周辺部を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかわる圧電モータの支持部材の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3にかかわる圧電モータの支持構造の別の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4にかかわる圧電モータの支持構造を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4にかかわる圧電モータの支持部材の別の例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態5にかかわる圧電モータの支持部材および電子機器への応用の例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態5にかかわる圧電モータの支持部材および電子機器への応用の別の例を示す図である。
【図14】本発明にかかわる圧電モータを用いた電子機器を示したブロック図である。
【図15】従来の支持構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1〜図15を参照して本発明を適用した実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る圧電モータを示し、特に図1(b)、図1(c)は振動体1の長手方向に対する振動振幅の様子、すなわち振幅の分布を示す。
【0029】
図1(a)において圧電素子を有する振動体1は、図1(b)に示すように、両端部で振幅が最大となり中央部で振動の節となる縦振動と、図1(c)に示すように、振動体1の厚みに沿って屈曲振動を行う。これらを位相が異なるように励振すると屈曲振動の最大となる点、例えば振動体1に接合された摩擦部材3は楕円運動をする為、これと接する接触部材5あるいは振動体1自体は振動体長手方向に移動する。ここで、振動体は圧電素子と金属等の弾性体と接着したものを用いてもよいし、圧電素子のみ、例えば積層圧電素子を用いてもよい。また使用する電極も任意である。
【0030】
ここで、振動体1の上面、振動の節部に位置する点の近傍には二つの半球状の凹部1aが設けられている。そして、振動体1の上方からは先端に凹部1aと係合する二つの半球状の凸部を有するピン形状の支持部材2が設けられている。図1(d)に示すように、支持部材2は案内部材4により案内され、振動体1もしくは振動体1に設けられた摩擦部材3と接触部材5との接触圧方向にのみ移動可能となる。例えば支持部材2の一端に加圧を与えることにより摩擦部材3と接触部材5の間には接触圧が働く。この際、振動体1は摩擦部材3と接触部材5の接触が良好に成る様にならうが他の方向への動きは規制される。従って、高効率で耐久性に優れ、位置決め分解能が高い圧電モータが実現できる。
【0031】
摩擦部材3としては例えばカーボンファイバーを含有したエンジニヤリングプラスチックやアルミナ等のセラミクス、ステンレス等の硬質金属、接触部材としてはステンレス等の硬質金属、アルミナ等のセラミクスを用いる。
【0032】
図2を用いて、実施の形態1の変形例を説明する。振動体1は図1のものと同様であるが、振動体1には半球状の凹部の代わりに、二つの半球状の凸部1bが設けられている。そして支持部材6は一体となっており、途中から二つの部分に分かれ、その先端に設けられた凸部1bと係合する二つの半球状の凹部を有している。これによれば、図1の構成同様に、振動体と接触部の間では安定な接触状態が得られるとともに、振動体は他の方向には動きが拘束される。
【0033】
図3は、実施の形態1の別の例の圧電モータを示し、特に図3(b)、図3(c)は振動体の長手方向に対する振動振幅の様子、すなわち振幅の分布を示す。
図3(a)において圧電素子を有する振動体7は、図3(b)に示すように、両端部で振幅が最大となり中央部で振動の節となる縦振動と、図3(c)に示すように、振動体1の厚みに沿って屈曲振動を行う。これらを位相が異なるように励振すると屈曲振動の最大となる点、例えば振動体7に接合された摩擦部材8は楕円運動をする為、これと接する接触部材5あるいは振動体7自体は振動体長手方向に移動する。ここで、振動体7は圧電素子と金属等の弾性体と接着したものを用いてもよいし、圧電素子のみ、例えば積層圧電素子を用いてもよい。また使用する電極も任意である。
【0034】
ここで、振動体の曲げ振動の節部に位置する点の近傍には二つの半球状の凹部10aを有する受け部材10が設けられている。そして、振動体7の上方からは先端に凹部10aと係合する二つの半球状の凸部9aを有するピン形状の支持部材9が設けられている。図3(d)に示すように、支持部材9は案内部材4により案内され、振動体7もしくは振動体7に設けられた摩擦部材8と接触部材5との接触圧方向にのみ移動可能となる。図3(d)において、例えば案内部材4と受け部材10の間にばね部材11を設けることにより摩擦部材8と接触部材5の間には接触圧が働く。この際、振動体7は摩擦材8と接触部材5の接触が良好に成る様にならうが、他の方向への動きは規制される。
【0035】
以上の様に、凸部もしくは凹部は前記振動体が励振する振動の節の位置近傍に設けることにより、振動体の振動を阻害しない。また、摩擦部材8を長くし、前記振動体から張り出した部分を持たせることにより、振動体7の厚みが薄い場合にも、支持部材9からの加圧に対しても振動体が倒れることなく、簡単な支持で安定に位置を保つことができる。
【0036】
次に図4を用いて、実施の形態1の別の例を説明する。図4における振動体7は図3のものと同様なものである。ここでは図のように、振動体7の振動の節にあたる中央部分近傍の側面に沿って張り出し部を有する支持受け部材13が接合されている。支持受け部材13と振動体7の側面には隙間が空いているが、これは振動体7の振動のロスを極力少なくする為である。勿論、支持受け部材13を振動体7の側面に接合しても構わない。この場合大きな支持部の剛性が期待できるため振動体7には大きな加圧力を加えられ大きな推力が得られると共に、起動、停止時の安定性が増す為、制御性に優れる。支持受け部材13は金属等を用いても構わないがエンジニヤリングプラスチック等、振動体7とは弾性率、音響インピーダンスが大きく異なり、振動体7に対する振動の影響を受け難い材料から成る。支持受け部材13の張り出し部には凹部となる貫通穴13aが設けられ、以上示した様に、図示しない先端に円錐形状の凸部37aを有する支持部材37と係合し、支持される。支持部材37は図示しない案内部材により案内され、振動体7もしくは振動体7に設けられた摩擦部材12と接触部材5との接触圧方向にのみ移動可能となる。これにより、これまで示した効果に加え、支持点となる二つの係合部の距離を広げられるとともに、係合部の位置を接触部材5に近い点まで下げられる為、振動体7の厚みが薄い場合にも安定した支持が可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について、図5、図6を基に説明する。
【0037】
図5、図6において振動体7は図3と同様のものであるので相違点のみを述べる。図5において、振動体7には振動体7と接触部材5との接触方向に延出する支持部材14と、支持部材14を案内する案内部材15からなり、支持部材14には異形部14aが設けられており、案内部材15の案内形状もそれにならう形状の為、振動体7と接触部材5との接触方向以外の動きを規制する様になっており、簡単な構造で強固で安定な支持が得られる。従って、起動、停止時における振動体7の動きを抑え、制御性に優れ、高精度な位置決め制御が可能となる。支持部材14は振動体の振動の節近傍に設けられている為、振動体7の振動を阻害しない。
【0038】
図6は本発明の実施の形態2の別の例を示すものである。振動体7には振動体7と接触部材5との接触方向に延出する支持部材19と、支持部材19を案内する案内部材4からなり、振動体7と接触部材5との接触方向の動きと、支持部材19を回転軸とする回転運動以外の動きを規制する様になっている。振動体7と案内部材4を固定する固定板18の間には、ばね部材として加圧ばね17と、加圧ばね17と固定された規制部材16が設けられている。規制部材16及び加圧ばね17には穴が設けられており、支持部材19が通る構造となっている。加圧ばね17の、振動体7と接触部材5との接触方向以外の動きは案内溝18aで規制される。規制部材16にはV溝16aが設けられている為、加圧ばね17の力を受け、振動体7の動きも規制される。このように簡単で、加圧機構も含めて薄型な構造で、強固で安定な支持が得られる。また、支持部材19及び規制部材16は振動体の振動の節近傍に設けられている為、振動体7の振動を阻害しない。
(実施の形態3)
図7、図8、図9を用いて本発明の実施の形態3について説明する。振動体7及び20は図3に示したものと同様のものである。図7(a)において振動体7の上面、振動の節に当たる位置近傍にはV溝を有する受け部材21が接合されている。受け部材21は金属等を用いても構わないが振動体7とは音響インピーダンス、弾性率等が大きく異なる例えばエンジニヤリングプラスチック等を用いる事が好ましい。受け部材21のV溝21aには、図8に示すように、支持部材22が係合する。支持部材22には異形部22bが設けられており、図示しない案内部材で案内され、実施の形態1と同様に振動体7を支持するとともに加圧力を与える構造となっている。また、支持部材22は受け部材21のV溝21aで係合される為、がたなく安定に支持される。振動体7の幅方向への動きは支持部材22と受け部材21との摩擦力によって得られるが念の為ストッパー22aが設けられている。また、支持部材22と受け部材21との摩擦力が摩擦部材12と接触部材5の摩擦力よりも大きくなるように材料等の選択をする事が好ましい。支持部材の形状としては図8(c)の様に、支持部材24にV溝24aを有するもの、図8(b)の様に、図8(a)におけるストッパー22aの代わりに円柱状のストッパー23aを設けたもの、あるいはこれらの組合わせ等が考えられる。但し、図8(b)のように、支持部材23を用いる場合には、受け部材21にストッパー23aが収まる穴を空ける必要がある。また、支持部材23には異形部23bが設けられており、図示しない案内部材で案内され、実施の形態1と同様に振動体7を支持するとともに加圧力を与える構造となっている。同様に、支持部材24には異形部24bが設けられており、図示しない案内部材で案内され、実施の形態1と同様に振動体7を支持するとともに加圧力を与える構造となっている。
【0039】
図7(a)では受け部材21を振動体7に接合したが、図7(b)に示す様に振動体20に直接受け部20aを設けても構わない。この様に受け部20a並びに受け部材21は振動体7、20に対して対象に設ける事が好ましい。この様な構造とする事で、振動体7、20に発生する振動も対象形となり、不要振動が発生しにくい。
【0040】
また支持部材の形状としては図9に示す様に、凸部26aを有する支持部材26を+ドライバ形状とし、それに係合する様に受け部材25における受け部25aの形状を+の溝としても良い。
【0041】
以上のような構造とする事で、振動のロスが小さく、安定した支持が可能な為、高効率で位置決め分解能に優れた圧電モータが実現できる。
(実施の形態4)
実施の形態4を図10、11を基にして説明する。
【0042】
振動体7は図3に示したものと同様である。図10において、振動体7の側面中央部、すなわち振動の節に当たる位置近傍には延出部28が設けられている。延出部28は振動体7の側面に接着剤等で接合してもよいし、振動体7を貫通する穴を設け、ネジ等で結合しても設けても構わない。振動体7の上方には実施の形態1で示した様に、支持部材29には異形部29bとこれを案内する図示しない案内部材が設けられている。支持部材29の先端振動体7側は二つに分かれており、V溝29aを有している。延出部28にも周方向にV溝28aが設けられており、支持部材のV溝29aと、がた無く係合するようになっている。摩擦部材27の形状を半球状とすることにより二つのV溝29aと延出部28の係合部の寸法のずれを吸収し、振動体7と接触部5の間では安定な接触状態が得られる。
【0043】
延出部の構造としては図11に示すように帯状の形状31bにピン31aを一体
的に設けても構わない。この場合、延出部31と振動体7の接合強度は大きくなる。また、この場合、振動体7の幅方向全体にわたって延出部31が接合されている為、ピン31aの位置を中心に合せなくとも振動体7の振動に影響を与える事
はなく、例えばピン31aの位置を接触部材5側に下げる事により安定した支持
が可能となる。またここでは摩擦部材30を半円柱形状とすることにより図10と同様の効果が得られる。
【0044】
この様に、摩擦部材の形状を少なくとも振動体の幅方向に向かって曲線を有する形状とすることで摩擦部材と接触部材の間に接触圧を与える加圧や支持力が振動体の幅方向に複数ポイント働く構造であれば図4に示したものをはじめ、その構造に制限を与えるものではなく、複数ポイントの加圧のばらつきや支持部材の寸法のばらつき等によって生じる摩擦部材と接触部材の接触の不安定性を解消出来る。
【0045】
また、摩擦部材を半球状とすればこれらの効果はもとより、摩擦部材と振動体との接合部で生じる寸法の変動等の影響も無くすことが出来る。そしてこの場合、支持や加圧構造によらず効果が得られる。
【0046】
ところで、延出部28、31の材料としては振動体7とは音響インピーダンス、弾性率等が大きく異なる例えばエンジニヤリングプラスチック等を用いる事が好ましく、この場合振動体7の振動を損なわないばかりではなく、振動モード形状にも影響を与えにく、支持によるエネルギーロスや製品個々のばらつきを発生しにくい効果がある。
【0047】
但し、この様に延出部31が振動体7との接合部、例えば帯状の形状部31bを有するものであれば熱伝導性の良い金属、例えば銅合金やアルミ合金等を用いても良い。この場合振動体7で発生した熱を放熱することが可能な為、大きな入力を加えることが出来、高出力な圧電モータが実現できる。特に、本実施の形態では熱の発生の大きい振動の節の近傍に設けているので放熱の効率が良い。特に、ピン31aを振動体7の中心に設ければ振動のロスや、延出部をとり付けたことによる振動モード形状の変化の心配は少ない為、有効となる。
(実施の形態5)
図12、図13を用いて、本発明の実施の形態5を説明する。これは本発明の圧電モータを用いてハードディスクのヘッドの駆動に応用した例である。
【0048】
図12において振動体7の中心、すなわち振動の節になる位置近傍には回転軸47が設けられている。回転軸47は押さえ板39に固定された軸受け38により案内される。軸受け38の内輪に回転軸47は打ち込み固定されているとともに、軸受け38には図示しない予圧ばねにより予圧が加えられている為、回転軸47にガタは発生しない。振動体7に設けられた摩擦部材12とヘッド40cを有するアーム40bが取り付けられた移動体40aとは、振動体7の振動の節位置近傍をばね部材の加圧ばね32で加圧され、ばねの先端32aが加圧接触する。移動体40aとアーム40bとヘッド40cからなるアーム部40は、移動体40aの回転に合せて動作し、ヘッド40cはディスク41の情報を読み取る。本発明の圧電モータは位置決め分解能が極めて高く、応答性に優れている為、HDD,光ディスク等、情報量の高密度化が進む将来の情報記憶装置への応用が可能である。また、静止時には電力を消費しないから機器の省電力化が図れる。
【0049】
図13は図12の変形例である。図13において振動体7の中心、すなわち振動の節になる位置近傍には回転軸42が設けられている。回転軸42は押さえ板34に固定された軸受け33により案内される。軸受け33の内輪に回転軸42は打ち込み固定されている。ここでは、加圧を振動体7に与える代わりに、回転軸42に結合された加圧受け部材35の先端35aをばね部材36により加圧する事により、回転軸42の回転力として働くような構造とすることにより、加圧が直接、振動体7に働かないから振動のロスが無く、高効率でモータ個々の特性のばらつきは小さくなる。
【0050】
以上実施の形態1〜5について示したが、ここでの振動体の形状、動作原理等に制限を与えるものではなく例えば非共振型の超音波モータに本支持構造を適用しても構わない。この場合も、支持の位置は変位が小さい部分が望ましい。
【0051】
また、摩擦部材については無くても構わず、接触部材と振動体を直接接触させても構わない。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態1〜5にかかわる圧電モータを用いて電子機器を構成した例について、図14を基に説明する。
【0052】
図14は本発明により駆動される圧電モータ200を電子機器の駆動源に適用したブロック図を示したものであり、振動体50と、振動体50に接合された摩擦部材51と、摩擦部材51と移動体54とを加圧する加圧手段55と、加圧された状態で摩擦駆動される移動体54とからなる圧電モータ200と、移動体54と一体に動作する伝達機構52と、伝達機構52の動作に基づいて稼動される出力機構53から構成される電子機器である。
【0053】
ここでは移動体を回転体とし、移動体を回転動作させる例について説明する。
伝達機構52は例えば歯車列、摩擦車等の伝達車を用いる。出力機構53としては、プリンタにおいては紙送り機構、カメラにおいてはシャッタ駆動機構、レンズ駆動機構、フィルム巻き上げ機構等を、また電子機器や計測器においては指針等を、ロボットにおいてはアーム機構、工作機械においては歯具送り機構や加工部材送り機構等を用いる。
【0054】
尚、本実施の形態における電子機器としては電子時計、計測器、カメラ、プリンタ、印刷機、ロボット、工作機、ゲーム機、光情報機器、医療機器、移動装置等を実現できる。さらに移動体に出力軸を設け、出力軸からのトルクを伝達するための動力伝達機構を有する構成とすれば、圧電モータ駆動装置を実現できる。そして、圧電モータ駆動装置としてステージを構成すると、通常の電磁モータを用いたステージに比較して、機構が簡単かつ小型であるとともに、磁化を避ける環境下でも使用できる圧電モータを備えたステージを提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
1、7、20、50、100 振動体
2、6、9、14、19、22、23、24、26、29、37 支持部材
3、8、12、27、30、51 摩擦部材
4、15 案内部材
5 接触部材
11、17、32、36 ばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有する矩形形状の振動体と、
前記振動体に設けられた摩擦部材と、
前記振動体の振動の節に設けられた回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受けを有する押さえ板と、
前記振動体に加圧力を与え、前記摩擦部材と前記移動体を接触させる加圧ばねと、
を有する圧電モータ。
【請求項2】
前記加圧ばねの加圧力は前記振動体の前記摩擦部材が設けられた側面であることを特徴とする請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項3】
圧電素子を有する矩形形状の振動体と、
前記振動体に設けられた摩擦部材と、
前記振動体の振動の節に設けられた回転軸と、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受けを有する押さえ板と、
前記回転軸に設けられた加圧受け部材と、
前記加圧受け部材に加圧力を与え、前記摩擦部材と前記移動体を接触させる加圧ばねと、
を有する圧電モータ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の圧電モータを有し、移動体と一体に動作する伝達機構と、伝達機構の動作に基づいて動作する出力機構とを有する圧電モータ付き電子機器。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項に記載の圧電モータを有し、移動体と一体に動作する伝達機構と、伝達機構の動作に基づいて稼動される出力機構とを有する圧電モータを備えたステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−106156(P2009−106156A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27124(P2009−27124)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【分割の表示】特願2003−157636(P2003−157636)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】