説明

基板姿勢変更装置および基板処理装置

【課題】基板姿勢変更装置の製造コストを低減すること。
【解決手段】基板姿勢変更装置5は、基板Wを保持している状態で回転軸線L1まわりに回転可能であり、基板Wを保持している状態での重心GCの位置が回転軸線L1に対してずれている保持ユニット6と、回転軸線L1まわりの回転角が異なる複数の位置で保持ユニット6の回転を停止可能であり、前記複数の位置で保持ユニット6を保持可能な回転停止ユニット17と、回転軸線L1に交差する交差方向D1に保持ユニット6を移動させ、交差方向D1に保持ユニット6を加速または減速させる走行ユニット9とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の姿勢を変更する基板姿勢変更装置、および基板を処理する基板処理装置に関する。基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。例えば特許文献1に記載の基板処理装置は、基板を搬送する2つのロボットと、2つのロボット間で基板を搬送すると共に、基板を反転させる基板反転移動装置とを備えている。基板反転移動装置は、基板を保持する反転機構と、2つのロボット間で反転機構を移動させる移動機構とを含む。反転機構は、基板を上下に挟んで水平に保持する第1および第2の支持部材と、第1および第2の支持部材を水平な軸線まわりに回転させる回転機構とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−172160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の基板反転移動装置では、モータ等が内蔵された回転機構が基板を反転させる。そのため、回転機構を省略することにより、基板反転移動装置および基板処理装置のコスト(製造コスト)を低減することができない。
そこで、この発明の目的は、コストを低減することができる基板姿勢変更装置を提供することである。
【0005】
さらに、この発明の他の目的は、コストを低減することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持している状態で回転軸線(L1)まわりに回転可能であり、基板を保持している状態での重心(GC)の位置が前記回転軸線に対してずれている保持ユニット(6)と、前記回転軸線まわりの回転角が異なる複数の位置で前記保持ユニットの回転を停止可能であり、前記複数の位置で前記保持ユニットを保持可能な回転停止ユニット(17、17A、17B)と、前記回転軸線に交差する交差方向(D1、D201)に前記保持ユニットを移動させ、前記交差方向に前記保持ユニットを加速または減速させる走行ユニット(9)とを含む、基板姿勢変更装置(5、205)である。
【0007】
この構成によれば、基板を保持している状態での保持ユニットの重心の位置が回転軸線に対してずれているので、回転停止ユニットが保持ユニットの回転停止を解除している状態で、走行ユニットが回転軸線に交差する交差方向に保持ユニットを加速または減速させると、保持ユニットが、慣性力によって回転軸線まわりに回転する。回転停止ユニットは、保持ユニットの回転を停止させ、回転後の回転角で保持ユニットを保持する。これにより、保持ユニットに保持されている基板の姿勢が変更される。このように、基板姿勢変更装置は、慣性力を利用して保持ユニットを回転させるので、保持ユニットを回転軸線まわりに回転させるだけの回転機構が不要である。したがって、基板姿勢変更装置のコストを低減できる。
【0008】
前記保持ユニットは、前記回転軸線としての鉛直軸線まわりに回転可能であってもよい。また、請求項2記載の発明のように、前記保持ユニットは、前記回転軸線としての水平軸線まわりに回転可能であってもよい。
保持ユニットが水平軸線まわりに回転可能である場合、回転停止ユニットが、保持ユニットの回転停止を解除すると、保持ユニットが、重力によって回転軸線まわりに回転し、保持ユニットの重心が下方に移動する。すなわち、基板姿勢変更装置は、慣性力だけでなく、重力によっても、保持ユニットを回転軸線まわりに回転させることができる。したがって、基板姿勢変更装置は、保持ユニットの姿勢を速やかに変更することができる。
【0009】
基板姿勢変更装置は、基板を回転軸線まわりに180度回転させることにより、基板を反転させる装置(基板反転装置)であってもよいし、180度を除く360度未満の範囲内で基板を回転軸線まわりに回転させることにより基板の姿勢を変更する装置であってもよい。たとえば、基板姿勢変更装置は、水平な姿勢と垂直な姿勢との間で基板の姿勢を変更する装置であってもよい。
【0010】
基板姿勢変更装置が基板反転装置である場合、請求項3記載の発明のように、前記回転停止ユニットは、前記回転軸線まわりの回転角が180度異なり、前記保持ユニットによって保持されている基板が水平に配置される2つの位置で前記保持ユニットを保持可能であってもよい。この場合、基板姿勢変更装置は、デバイス形成面である基板の表面が上向きの上向き姿勢と、基板の表面が下向きの下向き姿勢との間で、基板の姿勢を変更することができる。
【0011】
請求項4記載の発明のように、前記走行ユニットは、前記交差方向としての水平方向に前記保持ユニットを移動させてもよい。また、請求項5記載の発明のように、前記走行ユニットは、前記交差方向としての鉛直方向に前記保持ユニットを移動させてもよい。
交差方向が鉛直方向であり、走行ユニットが保持ユニットを下降させる場合、保持ユニットは、走行ユニットからの動力だけでなく、重力によっても加速される。したがって、基板姿勢変更装置は、保持ユニットを速やかに回転させることができる。また、交差方向が鉛直方向であり、走行ユニットが保持ユニットを上昇させる場合、走行ユニットから保持ユニットへの動力の伝達が停止されると、保持ユニットは、重力によって減速する。したがって、慣性力を保持ユニットに確実に作用させて、保持ユニットを回転軸線まわりに回転させることができる。
【0012】
一方、交差方向が水平方向である場合、走行ユニットが、水平方向の一方の方向および他方の方向(一方の方向と反対の方向)のいずれの方向に保持ユニットを移動させる場合でも、重力による交差方向への保持ユニットの速度変化がない。すなわち、保持ユニットは、走行ユニットから保持ユニットに伝達される動力の大きさに対応する速度で交差方向に走行する。したがって、基板姿勢変更装置は、回転軸線まわりの保持ユニットの回転速度を精度よく制御することができる。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記保持ユニットおよび前記保持ユニットに保持されている基板の少なくとも一方に、前記回転軸線から離れた位置で補助力を加える回転補助ユニット(340)をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板姿勢変更装置である。
この構成によれば、回転補助ユニットからの補助力が、保持ユニットおよび保持ユニットに保持されている基板の少なくとも一方に加えられる。補助力の加わる位置が、回転軸線から離れているから、保持ユニットおよび基板の少なくとも一方に補助力が加わると、回転軸線まわりのモーメントが発生し、保持ユニットおよび基板が回転軸線まわりに回転する。このように、基板姿勢変更装置は、慣性力だけでなく、回転補助ユニットからの補助力によっても保持ユニットを回転軸線まわりに回転させることができる。したがって、基板姿勢変更装置は、保持ユニットの姿勢を速やかに変更することができる。
【0014】
基板姿勢変更装置は、前記回転軸線まわりの前記保持ユニットの回転角を検出する回転角センサ(34)と、前記回転角センサの出力に基づいて前記回転軸線まわりの前記保持ユニットの重心の位置(重心の回転角)を検出する制御装置(4)とをさらに含んでいてもよい。この場合は、制御装置は、前記保持ユニットの進行方向(交差方向と平行な方向)と前記重心の回転角とに基づいて前記走行ユニットを制御することにより、前記保持ユニットの走行を制御してもよい。前記保持ユニットの走行の制御には、たとえば、加速および減速のいずれを行うかの選択や、加速または減速の開始時期などが含まれる。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板姿勢変更装置と、基板を処理する処理ユニット(3)と、前記基板姿勢変更装置と前記処理ユニットとの間で基板を搬送する第1搬送ロボット(CR)とを含む、基板処理装置(1、201)である。
この構成によれば、基板姿勢変更装置に保持されている基板が、第1搬送ロボットによって処理ユニットに搬送され、処理ユニットによって処理される。そして、処理ユニットによって処理された基板は、第1搬送ロボットによって処理ユニットから基板姿勢変更装置に搬送される。基板の姿勢は、基板が処理ユニットに搬送される前や、基板が処理ユニットによって処理された後に、基板姿勢変更装置によって変更される。このように、基板姿勢変更装置が基板の姿勢を変更するので、第1搬送ロボットに基板の姿勢を変更するユニットを設けなくてもよい。したがって、第1搬送ロボットの構成を簡素にできる。また、前述のように、保持ユニットを回転させるだけの回転機構が基板姿勢変更装置に不要であるので、基板姿勢変更装置のコストを低減できる。したがって、基板処理装置のコストを低減できる。
【0016】
請求項8記載の発明は、前記基板姿勢変更装置に基板を搬送する第2搬送ロボット(IR)をさらに含む、請求項7に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板が、第2搬送ロボットによって基板姿勢変更装置に搬入される。基板姿勢変更装置に搬送された基板は、第1搬送ロボットによって基板姿勢変更装置から処理ユニットに搬送され、処理ユニットによって処理される。そして、処理ユニットによって処理された基板は、第1搬送ロボットによって処理ユニットから基板姿勢変更装置に搬送され、第2搬送ロボットによって基板姿勢変更装置から搬出される。基板の姿勢は、第1および第2搬送ロボットが基板姿勢変更装置から基板を搬出する前に、基板姿勢変更装置によって変更される。このように、基板姿勢変更装置が基板の姿勢を変更するので、第2搬送ロボットに基板の姿勢を変更するユニットを設けなくてもよい。したがって、第2搬送ロボットの構成を簡素にできる。
【0017】
請求項9記載の発明は、前記交差方向は、前記保持ユニットが前記第1搬送ロボットまたは第2搬送ロボットに対向する方向であり、前記走行ユニットは、前記第1搬送ロボットまたは第2搬送ロボットに向けて前記保持ユニットを移動させる、請求項7または8に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、保持ユニットが基板を保持している状態で、走行ユニットが、第1搬送ロボットまたは第2搬送ロボットに向けて保持ユニットを移動させる。これにより、基板が搬送される。したがって、基板姿勢変更装置は、基板の搬送と、基板の姿勢変更とを同時に行うことができる。これにより、基板処理装置の動作を効率化できるので、基板処理装置のスループット(単位時間当たりの基板の処理枚数)を増加させることができる。
【0018】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシャトルの模式的な側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るシャトルの模式的な平面図である。
【図4】図3に示す矢印IVの方向からシャトルを見た模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る保持ユニットを搬送方向から見た模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る保持ユニットの模式的な平面図である。
【図7】図5に示す矢印VIIの方向から保持ユニットを見た模式図である。
【図8A】本発明の第1実施形態に係る回転停止ユニットの一例を示す模式図である。
【図8B】本発明の第1実施形態に係る回転停止ユニットの他の例を示す模式図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係るシャトルが基板を反転させるときの動作の一例を示す模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る回転補助ユニットの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な側面図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容する複数のキャリアCを保持するキャリア保持ユニット2と、基板Wを処理する処理ユニット3と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置4とを備えている。さらに、基板処理装置1は、キャリア保持ユニット2と処理ユニット3との間に配置されたシャトル5(基板姿勢変更装置)と、キャリア保持ユニット2とシャトル5との間で基板Wを水平な姿勢で搬送するインデクサロボットIR(第2搬送ロボット)と、処理ユニット3とシャトル5との間で基板Wを水平な姿勢で搬送するセンターロボットCR(第1搬送ロボット)とを備えている。シャトル5は、基板Wの表面が上向きの上向き姿勢と、基板Wの表面が下向きの下向き姿勢との間で基板Wの姿勢を変更する基板反転装置である。シャトル5は、基板Wを反転させると共に、水平に延びる搬送方向D1(交差方向)に基板Wを搬送する。
【0021】
インデクサロボットIRは、キャリア保持ユニット2とシャトル5との間に配置されている。センターロボットCRは、処理ユニット3とシャトル5との間に配置されている。インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRは、シャトル5に対して搬送方向D1に対向している。インデクサロボットIRは、キャリアCおよびシャトル5に基板Wを搬入する搬入動作、およびキャリアCおよびシャトル5から基板Wを搬出する搬出動作を行う。センターロボットCRは、処理ユニット3およびシャトル5に基板Wを搬入する搬入動作、および処理ユニット3およびシャトル5から基板Wを搬出する搬出動作を行う。
【0022】
インデクサロボットIRは、互いに異なる高さで基板Wを水平に支持する2つのハンドHを備えている。インデクサロボットIRは、2つのハンドHを互いに独立して水平に移動させる。さらに、インデクサロボットIRは、2つのハンドHを昇降させ、2つのハンドHを鉛直軸線まわりに回転させる。同様に、センターロボットCRは、互いに異なる高さで基板Wを水平に支持する2つのハンドHを備えている。センターロボットCRは、2つのハンドHを互いに独立して水平に移動させる。さらに、センターロボットCRは、2つのハンドHを昇降させ、2つのハンドHを鉛直軸線まわりに回転させる。
【0023】
キャリアCには、デバイス形成面である基板Wの表面が上に向けられた状態(上向き姿勢)で基板Wが収容されている。制御装置4は、インデクサロボットIRによって、表面が上向きの状態でキャリアCからシャトル5に基板Wを搬送させる。そして、制御装置4は、シャトル5によって、基板Wを搬送方向D1に搬送させると共に、基板Wを反転させる。これにより、基板Wの裏面が上に向けられる。その後、制御装置4は、センターロボットCRによって、裏面が上向きの状態(下向き姿勢)でシャトル5から処理ユニット3に基板Wを搬送させる。そして、制御装置4は、処理ユニット3によって基板Wの裏面を処理させる。
【0024】
基板Wの裏面が処理された後は、制御装置4は、センターロボットCRによって、裏面が上向きの状態で処理ユニット3からシャトル5に基板Wを搬送させる。そして、制御装置4は、シャトル5によって、基板Wを搬送方向D1に搬送させると共に、基板Wを反転させる。これにより、基板Wの表面が上に向けられる。その後、制御装置4は、インデクサロボットIRによって、表面が上向きの状態でシャトル5からキャリアCに基板Wを搬送させる。これにより、処理済みの基板WがキャリアCに収容される。制御装置4は、インデクサロボットIR等にこの一連動作を繰り返し実行させることにより、複数枚の基板Wを一枚ずつ処理させる。
【0025】
図2は、シャトル5の模式的な側面図である。図3は、シャトル5の模式的な平面図である。図4は、図3に示す矢印IVの方向からシャトル5を見た模式図である。
図2に示すように、シャトル5は、基板Wを保持する保持ユニット6と、保持ユニット6を支持する2つの支持プレート7と、2つの支持プレート7に連結されたスライドプレート8と、ベースB1に対してスライドプレート8を搬送方向D1にスライドさせる走行ユニット9とを含む。
【0026】
図4に示すように、支持プレート7は、鉛直な姿勢でスライドプレート8に連結されている。2つの支持プレート7は、対向方向D2(搬送方向D1に直交する水平な方向)に対向している。保持ユニット6は、2つの支持プレート7の間に配置されている。支持プレート7は、スライドプレート8の上方に配置されている。支持プレート7は、スライドプレート8と共に搬送方向D1に移動する。
【0027】
図4に示すように、スライドプレート8は、スライドプレート8に取り付けられた複数のスライドブロック10と、ベースB1に取り付けられた複数のリニアガイド11とを介してベースB1に支持されている。図2に示すように、リニアガイド11は、搬送方向D1に延びている。スライドブロック10は、リニアガイド11に沿って搬送方向D1にスライドする。したがって、スライドプレート8は、搬送方向D1に移動可能にベースB1に支持されている。
【0028】
図2に示すように、走行ユニット9は、動力源としての電動モータ12と、電動モータ12の動力をスライドプレート8に伝達するベルト伝達ユニット13とを含む。電動モータ12は、ベースB1に取り付けられている。電動モータ12は、鉛直軸線まわりに回転駆動される出力軸12aを含む。ベルト伝達ユニット13は、電動モータ12の出力軸12aに連結された駆動プーリー14と、鉛直軸線まわりに回転可能にベースB1に連結された従動プーリー15と、駆動プーリー14と従動プーリー15とに巻き掛けられた無端ベルト16とを含む。図3に示すように、スライドプレート8は、無端ベルト16に取り付けられている。電動モータ12が駆動プーリー14を回転させると、無端ベルト16が駆動され、スライドプレート8がベースB1に対して搬送方向D1に移動する。これにより、保持ユニット6が搬送方向D1に走行する。
【0029】
図2に示すように、制御装置4は、電動モータ12を制御することにより、インデクサロボットIRと保持ユニット6との間で基板Wの受け渡しが行われるIR受け渡し位置(図2において実線で示す位置。第2受け渡し位置)と、センターロボットCRと保持ユニット6との間で基板Wの受け渡しが行われるCR受け渡し位置(図2において二点鎖線で示す位置。第1受け渡し位置)との間で、保持ユニット6を搬送方向D1に移動させる。これにより、保持ユニット6に保持されている基板Wが搬送方向D1に搬送される。搬送方向D1への保持ユニット6の移動速度は、制御装置4によって制御される。
【0030】
図5は、保持ユニット6を搬送方向D1から見た模式図である。図6は、保持ユニット6の模式的な平面図である。図7は、図5に示す矢印VIIの方向から保持ユニット6を見た模式図である。図5では、側壁28が取り外れた状態を示している。
保持ユニット6は、水平に延びる反転軸線L1(回転軸線)まわりに回転可能に支持プレート7に支持されている。シャトル5は、反転軸線L1まわりの保持ユニット6の回転を停止可能な回転停止ユニット17をさらに含む。回転停止ユニット17は、保持ユニット6の回転を停止させることにより、保持ユニット6をその回転角で保持する回転停止状態と、保持ユニット6の回転停止を解除する回転停止解除状態との間で切り替わる。回転停止ユニット17は、保持ユニット6によって保持されている基板Wが水平に配置される2つの水平位置で保持ユニット6を保持する。2つの水平位置は、反転軸線L1まわりの回転角が180度異なる位置である。一方の水平位置の回転角は、0度(360度)であり、他方の水平位置の回転角は、180度である。
【0031】
図5に示すように、保持ユニット6は、基板Wを周囲から挟むことにより基板Wを水平な姿勢で保持している。保持ユニット6は、2つの上ガイド18および2つの下ガイド19を含むチャック20と、上ガイド18および下ガイド19を水平に移動させる複数のシリンダ21と、複数のシリンダ21を保持する2つの保持ボックス22と、2つの保持ボックス22にそれぞれ連結された2つの回転軸23とを含む。2つの回転軸23は、それぞれ、2つの支持プレート7によって反転軸線L1まわりに回転可能に支持されている。
【0032】
図5に示すように、2つの保持ボックス22は、2つの支持プレート7の内側(2つの支持プレート7の間)に配置されている。チャック20は、2つの保持ボックス22の間に配置されている。2つの回転軸23は、それぞれ、2つの保持ボックス22から外側に延びている。回転軸23は、軸受24を介して支持プレート7に支持されている。2つの回転軸23は、反転軸線L1上に配置されている。反転軸線L1は、チャック20に保持されている基板Wの中心C1を通り、対向方向D2に延びる水平な軸線である。
【0033】
図5に示すように、上ガイド18および下ガイド19は、基板Wの周縁部に沿って配置されている。2つの上ガイド18は、対向方向D2に対向しており、2つの下ガイド19は、上ガイド18より下方で対向方向D2に対向している。2つの上ガイド18は、それぞれ、2つの下ガイド19の上方に配置されている。上ガイド18および下ガイド19は、楔形の正面および背面を有しており、上下に並んだ第1上ガイド187および下ガイド19は、基板Wの中心C1向きに開いたV字状の保持溝を形成している。基板Wの周縁部は、この保持溝内に配置されている。このように、上ガイド18および下ガイド19の一方は、他方を上下に反転させた形状を有している。上ガイド18および下ガイド19は、反転軸線L1に関して上下対称に配置されている。
【0034】
図5に示すように、上ガイド18は、基板Wの中心C1を通る鉛直な基準線L2に向かって斜め上向きに傾斜した上傾斜部25を含む。下ガイド19は、基準線L2に向かって斜め下向きに傾斜した下傾斜部26を含む。図7に示すように、上傾斜部25および下傾斜部26を基板W側から対向方向D2に見ると、上傾斜部25は、倒立台形状であり、下傾斜部26は、台形状である。図5に示すように、上傾斜部25および下傾斜部26は、基板Wの周縁部に接触している。基板Wは、各下傾斜部26と基板Wの周縁部との点接触によって水平な姿勢で支持されている。さらに、基板Wは、複数の下傾斜部26の傾斜によって、基板Wの中心C1が2つの下ガイド19の中間に位置するように案内されている。さらにまた、基板Wは、各下傾斜部26と基板Wの周縁部との点接触、および各上傾斜部25と基板Wの周縁部との点接触によって、水平方向および鉛直方向への移動が規制されている。これにより、基板Wが挟持されている。
【0035】
図6に示すように、上ガイド18および下ガイド19は、反転軸線L1に対して同じ側に偏っており、反転軸線L1に関して非対称な形状を有している。したがって、保持ユニット6は、反転軸線L1に関して非対称な形状を有している。基板Wを保持している状態での保持ユニット6の重心GCは、平面視において、基板Wの中心C1から搬送方向D1に離れている。反転軸線L1は、基板Wの中心C1を通り、搬送方向D1に直交する水平な軸線である。したがって、保持ユニット6の重心GCは、平面視において、反転軸線L1に対して搬送方向D1にずれている。さらに、図5に示すように、保持ユニット6が水平位置で保持されている状態では、保持ユニット6の重心GCは、反転軸線L1と同じ高さに配置されている。基板W単体の重心は、基板Wの中心C1とほぼ一致している。したがって、保持ユニット6に保持されている基板Wと保持ユニット6とを含む回転体全体の重心は、保持ユニット6単体の重心GCとほぼ一致しており、平面視において、反転軸線L1に対して搬送方向D1にずれている。
【0036】
図5に示すように、上ガイド18および下ガイド19は、支持ブラケット27を介していずれかのシリンダ21に連結されている。シリンダ21は、上ガイド18および下ガイド19ごとに設けられている。シリンダ21は、いずれかの保持ボックス22に保持されている。したがって、上ガイド18および下ガイド19は、支持ブラケット27およびシリンダ21を介していずれかの保持ボックス22に保持されている。共通の保持ボックス22に保持されている上ガイド18、下ガイド19、支持ブラケット27、およびシリンダ21は、保持ボックス22と共に反転軸線L1まわりに一体回転する。
【0037】
図7に示すように、保持ボックス22は、2つのシリンダ21を収容している。2つのシリンダ21は、2つの側壁28の間に配置されている。上ガイド18に連結されているシリンダ21は、保持ボックス22の内部を仕切る仕切壁29の一方側(図7では、仕切壁29の右側)で保持ボックス22の上壁30に取り付けられている。下ガイド19に連結されているシリンダ21は、仕切壁29の他方側(図7では、仕切壁29の左側)で保持ボックス22の下壁31に取り付けられている。共通の保持ボックス22に収容されている2つのシリンダ21は、反転軸線L1に関して対称な位置に配置されている。
【0038】
シリンダ21は、上ガイド18および下ガイド19が基板Wの周縁部に接触する接触位置(図5および図6に示す位置)と、上ガイド18および下ガイド19が基板Wの周縁部から離れる退避位置との間で、対応する上ガイド18および下ガイド19を対向方向D2に水平に移動させる。接触位置は、上ガイド18および下ガイド19の内端(基準線L2側の端)が基板Wの周端面より内側(基準線L2側)に配置される位置である。退避位置は、上ガイド18および下ガイド19の内端が基板Wの周端面より外側に配置される位置である。図5に示すように、各支持ブラケット27には、支持ブラケット27と共に移動する位置決めブロック32が取り付けられている。また、保持ボックス22には、対向方向D2に位置決めブロック32に対向するストッパ33が取り付けられている。上ガイド18および下ガイド19は、位置決めブロック32とストッパ33との接触によって接触位置に精度よく位置決めされる。
【0039】
制御装置4は、複数のシリンダ21によって、対向方向D2に対向する2つのガイドの間隔を他のガイドの間隔とは独立して変更させる。制御装置4は、上ガイド18が退避位置に配置されており、下ガイド19が接触位置に配置されている状態で、いずれかのハンドH(図5参照)によって、2つの下ガイド19の下傾斜部26に基板Wを載置させる。これにより、基板Wが2つの下ガイド19に渡される。また、制御装置4は、上ガイド18が退避位置に配置されており、下ガイド19が接触位置に配置されている状態で、いずれかのハンドHによって、2つの下ガイド19に支持されている基板Wをすくい上げさせる。これにより、2つの下ガイド19から基板Wが受け取られる。さらに、制御装置4は、2つの下ガイド19によって基板Wが支持されている状態で、2つの上ガイド18を接触位置に移動させて、各上ガイド18を基板Wの周縁部に接触させる。これにより、基板Wが挟持される。
【0040】
後述するように、シャトル5は、保持ユニット6が基板Wを保持している状態で、保持ユニット6を搬送方向D1に走行させることにより、保持ユニット6を反転軸線L1まわりに180度回転させて、基板Wを反転させる。保持ユニット6が反転軸線L1まわりに180度回転すると、上傾斜部25が上向きになり、下傾斜部26が下向きになる。2つの上ガイド18が上向きの状態では、制御装置4は、前述の2つの下ガイド19とハンドHとの間での基板Wの受け渡しと同様に、2つの上ガイド18への基板Wの搬入、および2つの上ガイド18からの基板Wの搬出を行わせる。さらに、制御装置4は、2つの上ガイド18によって基板Wが支持されている状態で、2つの下ガイド19を接触位置に移動させて、各下ガイド19を基板Wの周縁部に接触させる。これにより、基板Wが挟持される。
【0041】
図8Aは、回転停止ユニット17の一例を示す模式図であり、図8Bは、回転停止ユニット17の他の例を示す模式図である。
図8Aおよび図8Bに示すように、シャトル5は、保持ユニット6の回転角を検出する回転角センサ34をさらに含む。回転角センサ34は、支持プレート7に取り付けられている。回転角センサ34は、支持プレート7に対する反転軸線L1まわりの保持ユニット6の回転角を検出する。制御装置4は、回転角センサ34の出力に基づいて反転軸線L1まわりの重心GCの位置(重心GCの回転角)を検出する。さらに、制御装置4は、回転角センサ34の出力に基づいて回転停止ユニット17を制御することにより、保持ユニット6の回転を水平位置で停止させる。回転停止ユニット17は、図8Aに示すような機械式の回転停止ユニット17Aであってもよいし、図8Bに示すような電気式の回転停止ユニット17Bであってもよい。
【0042】
図8Aに示すように、機械式の回転停止ユニット17Aは、保持ユニット6と共に反転軸線L1まわりに回転する複数(たとえば、2つの)の回転部材35と、回転部材35の回転を停止させるストッパ36と、ストッパ36を移動させるアクチュエータ37とを含む。アクチュエータ37は、エアーシリンダなどの空気圧によって駆動される空圧アクチュエータであってもよいし、電磁プランジャなどの磁力によって駆動されるソレノイドアクチュエータであってもよい。
【0043】
2つの回転部材35は、反転軸線L1まわりの回転角が180度異なる位置で、共通の回転軸23に連結されている。2つの回転部材35は、回転軸23から互いに反対の方向に延びている。回転部材35は、先細りの先端部35aを含む。保持ユニット6が水平位置に位置している状態では、ストッパ36は、一方の回転部材35に対向している。ストッパ36は、アクチュエータ37に連結されており、アクチュエータ37は、支持プレート7に連結されている。したがって、ストッパ36は、アクチュエータ37を介して支持プレート7に連結されている。ストッパ36は、回転軸23向きに開いた溝を形成している。
【0044】
アクチュエータ37は、保持ユニット6の回転が停止される回転停止位置(図8Aに示す位置)と、保持ユニット6の回転停止が解除される回転停止解除位置との間で、ストッパ36を移動させる。回転停止位置は、保持ユニット6が水平位置に位置している状態で回転部材35の先端部35aがストッパ36の内部(溝)に配置される位置である。回転部材35の先端部35aがストッパ36の内部に配置されると、回転部材35とストッパ36との接触によって保持ユニット6の回転が規制される。これにより、保持ユニット6の回転が停止される。また、回転停止解除位置は、ストッパ36が回転部材35から離れている位置である。保持ユニット6の回転が停止されている状態で、アクチュエータ37が、ストッパ36を回転停止位置から回転停止解除位置に移動させると、回転部材35がストッパ36の内部から脱出する。これにより、保持ユニット6の回転停止が解除される。
【0045】
一方、図8Bに示すように、電気式の回転停止ユニット17Bは、保持ユニット6と共に反転軸線L1まわりに回転する複数(たとえば、2つの)の回転部材38と、回転部材38の回転を停止させる複数(たとえば、2つの)の電磁石39とを含む。2つの回転部材38は、反転軸線L1まわりの回転角が180度異なる位置で、共通の回転軸23に連結されている。2つの回転部材38は、回転軸23から互いに反対の方向に延びている。回転部材38は、永久磁石または軟磁性材料(たとえば、鉄)によって形成された先端部38aを含む。保持ユニット6が水平位置に位置している状態では、2つの電磁石39は、それぞれ、2つの回転部材38に対向している。電磁石39は、支持プレート7に連結されている。
【0046】
電磁石39への通電が行われている状態(回転停止状態)では、電磁石39と回転部材38との間に働く引力(磁力)によって、保持ユニット6が水平位置に保持される。これにより、保持ユニット6の回転が停止される。そして、保持ユニット6の回転が停止されている状態で、電磁石39への通電が停止されると、電磁石39と回転部材38との間に働く引力が弱まるので、保持ユニット6の回転停止が解除される。すなわち、電磁石39への通電が行われていない状態(回転停止解除状態)では、保持ユニット6の回転が停止されておらず、保持ユニット6は反転軸線L1まわりに回転可能である。
【0047】
図9は、シャトル5が基板Wを反転させるときの動作の一例を示す模式図である。
以下では、保持ユニット6が基板Wを保持している状態で、シャトル5が、保持ユニット6をIR受け渡し位置からCR受け渡し位置に移動させると共に、保持ユニット6に保持されている基板Wを反転させるときの動作の一例について説明する。以下の説明における保持ユニット6の進行方向(搬送方向D1の一方の方向)は、CR受け渡し位置に向かう方向(図9では右方向)である。シャトル5が、保持ユニット6をCR受け渡し位置からIR受け渡し位置に移動させると共に、保持ユニット6に保持されている基板Wを反転させるときの動作については、進行方向が異なるだけで、以下の動作と同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
[加速による反転]
最初に、図9に示すように、保持ユニット6の重心GCの位置が、反転軸線L1に対して進行方向(図9では右方向)にずれている場合について説明する。
制御装置4は、保持ユニット6がIR受け渡し位置(実線で示す位置)に位置しており、保持ユニット6が基板Wを水平に保持している状態で、走行ユニット9によって保持ユニット6を進行方向に走行させて、保持ユニット6をIR受け渡し位置からCR受け渡し位置(二点鎖線で示す位置)に移動させる。制御装置4は、保持ユニット6がCR受け渡し位置に到達する前に、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転停止を解除させる。さらに、制御装置4は、少なくとも保持ユニット6の回転停止が解除された後に、走行ユニット9によって保持ユニット6を進行方向に加速させて、進行方向への保持ユニット6の速度を増加させる。すなわち、保持ユニット6の回転停止が解除された後に保持ユニット6が加速されるのであれば、保持ユニット6の加速の開始時期は、保持ユニット6の回転停止が解除される前であってもよい。
【0049】
保持ユニット6の重心GCが反転軸線L1に対して進行方向にずれているので、保持ユニット6の回転停止が解除されると、保持ユニット6は、重力によって、反転軸線L1まわりに回転し始める(一点鎖線で示す基板W参照)。これにより、保持ユニット6の重心GCが、進行方向とは反対の方向に移動しながら下降する。さらに、保持ユニット6が進行方向に加速されるので、進行方向と反対の方向の慣性力が保持ユニット6に加わる。反転軸線L1まわりの保持ユニット6の回転は、この慣性力によって加速される。これにより、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに180度回転し、保持ユニット6に保持されている基板Wが反転される(二点鎖線で示す基板W参照)。
【0050】
制御装置4は、保持ユニット6の速度を制御することにより、保持ユニット6がCR受け渡し位置に到達するまでに、保持ユニット6を反転軸線L1まわりに180度回転させる。そして、制御装置4は、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに180度回転した後、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転を停止させ、保持ユニット6を水平位置で保持させる。このようにして、基板Wが、IR受け渡し位置からCR受け渡し位置に搬送されると共に、基板Wが反転される。
【0051】
[減速による反転]
次に、保持ユニット6の重心GCの位置が、反転軸線L1に対して進行方向とは反対方向(図9では左方向)にずれている場合について説明する。
保持ユニット6の回転停止が解除されると、保持ユニット6は、重力によって、反転軸線L1まわりに回転し始める。保持ユニット6の重心GCが反転軸線L1に対して進行方向とは反対の方向にずれているので、保持ユニット6の重心GCは、進行方向に移動しながら下降する。さらに、保持ユニット6が進行方向に減速されるので、進行方向の慣性力が保持ユニット6に加わる。反転軸線L1まわりの保持ユニット6の回転は、この慣性力によって加速される。これにより、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに180度回転し、保持ユニット6に保持されている基板Wが反転される。制御装置4は、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに180度回転した後、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転を停止させ、保持ユニット6を水平位置で保持させる。このようにして、基板Wが、IR受け渡し位置からCR受け渡し位置に搬送されると共に、基板Wが反転される。
【0052】
以上のように第1実施形態では、保持ユニット6が基板Wを保持している状態で、走行ユニット9が、保持ユニット6を搬送方向D1に移動させることにより、インデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。さらに、走行ユニット9は、保持ユニット6が基板Wを保持している状態で、保持ユニット6を搬送方向D1に移動させることにより、基板Wを反転させる。すなわち、走行ユニット9は、保持ユニット6を加速または減速させることによって保持ユニット6を反転軸線L1まわりに回転させるだけでなく、保持ユニット6に保持されている基板Wを搬送する。これにより、基板Wの搬送と基板Wの反転とが同時に行われる。したがって、基板Wの搬送と基板Wの反転とが別々に行われる場合よりも、基板処理装置1のスループットを増加させることができる。さらに、シャトル5は、重力および慣性力を利用して、基板Wを反転させるので、保持ユニット6を反転軸線L1まわりに回転させるだけの専用の回転機構が不要である。したがって、シャトル5のコストを低減でき、これによって、基板処理装置1のコストを低減できる。
【0053】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201のレイアウトを示す模式的な側面図である。この図10において、前述の図1〜図9に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、保持ユニットを鉛直方向に加速または減速させることにより、上向き姿勢と下向き姿勢との間で基板の姿勢を変更する基板反転装置としての反転ユニットがさらに設けられていることである。
【0054】
具体的には、基板処理装置201は、反転ユニット205(基板姿勢変更装置)をさらに備えている。反転ユニット205は、シャトル5と同様の構成を備えており、保持ユニット6が鉛直方向D201(交差方向)に移動するように配置されている。反転ユニット205は、シャトル5より上方または下方に配置されていてもよいし、反転ユニット205の一部とシャトル5とが同じ高さに位置するように配置されていてもよい。また、反転ユニット205は、搬送方向D1に関してインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間に配置されていてもよいし、搬送方向D1に関してインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間以外の位置に配置されていてもよい。図10では、反転ユニット205が、搬送方向D1に関してインデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間に配置されており、シャトル5の上方に位置している状態が示されている。
【0055】
反転ユニット205の走行ユニット9は、IR受け渡し位置に対応する上位置(実線で示す位置)と、CR受け渡し位置に対応する下位置(二点鎖線で示す位置)との間で保持ユニット6を鉛直方向D201に移動させる。反転ユニット205の回転停止ユニット17は、保持ユニット6に保持されている基板Wが水平に配置される2つの水平位置で保持ユニット6を保持している。反転ユニット205の保持ユニット6は、反転ユニット205のスライドプレート8に対してセンターロボットCR側に配置されている。反転ユニット205は、センターロボットCRが保持ユニット6にアクセス可能な位置に配置されている。センターロボットCRは、反転ユニット205の保持ユニット6が上位置および下位置のいずれの位置に位置している状態でも、保持ユニット6との間で基板Wの受け渡しが可能である。
【0056】
反転ユニット205は、保持ユニット6を上位置と下位置との間で鉛直方向D201に移動させることにより、基板Wを反転させる。反転ユニット205が、保持ユニット6を上位置から下位置に移動させることにより、基板Wを反転させる場合には、制御装置4は、保持ユニット6が下位置に到達する前に、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転停止を解除させる。保持ユニット6の重心GCが、反転軸線L1に対して搬送方向D1にずれているので、保持ユニット6の回転停止が解除されると、反転ユニット205の保持ユニット6は、重心GCが下方に移動する方向に回転し始める。制御装置4は、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに90度以上回転した後、反転ユニット205の走行ユニット9によって保持ユニット6を進行方向(下方向)に加速させる。これにより、反転軸線L1まわりの保持ユニット6の回転が加速され、反転ユニット205の保持ユニット6が180度回転する。そして、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに180度回転すると、制御装置4は、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転を停止させ、反転ユニット205の保持ユニット6を水平位置で保持させる。このようにして、基板Wが、上位置から下位置に搬送されると共に、基板Wが反転される。
【0057】
一方、反転ユニット205が、保持ユニット6を下位置から上位置に移動させることにより、基板Wを反転させる場合には、制御装置4は、保持ユニット6が上位置に到達する前に、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転停止を解除させる。これにより、反転ユニット205は、重心GCが下方に移動する方向に回転し始める。そして、制御装置4は、反転ユニット205の走行ユニット9によって保持ユニット6を進行方向(上方向)に加速または減速させることにより、反転ユニット205の保持ユニット6を反転軸線L1まわりに180度回転させる。
【0058】
加速の場合には、制御装置4は、少なくとも保持ユニット6の回転停止が解除された後に(保持ユニット6が90度以上回転する前に)、走行ユニット9によって保持ユニット6を加速させて、進行方向への保持ユニット6の速度を増加させる。一方、減速の場合には、制御装置4は、保持ユニット6が反転軸線L1まわりに90度以上回転した後に、走行ユニット9によって保持ユニット6を減速させて、進行方向への保持ユニット6の速度を減少させる。反転軸線L1まわりの保持ユニット6の回転は、保持ユニット6の加速または減速によって加速され、これによって、反転ユニット205の保持ユニット6が180度回転する。その後、制御装置4は、回転停止ユニット17によって保持ユニット6の回転を停止させる。
【0059】
制御装置4は、処理ユニット3またはシャトル5から搬出された基板WをセンターロボットCRによって反転ユニット205に搬入させる。これにより、反転ユニット205の保持ユニット6によって基板Wが水平に保持される。センターロボットCRによって反転ユニット205に基板Wが搬入されるとき、保持ユニット6は、上位置および下位置のいずれの位置に配置されていてもよい。制御装置4は、反転ユニット205に基板Wが搬入された後、反転ユニット205の保持ユニット6を鉛直方向D201に移動させることにより、基板Wを反転させる。そして、制御装置4は、センターロボットCRによって、上位置または下位置に位置している保持ユニット6から基板Wを搬出させる。その後、制御装置4は、反転ユニット205から搬出された基板WをセンターロボットCRによって処理ユニット3またはシャトル5に搬入させる。
【0060】
以上のように第2実施形態では、シャトル5とは別に、基板Wを反転させる反転ユニット205が設けられている。反転ユニット205は、保持ユニット6を鉛直方向D201に移動させることにより、保持ユニット6に保持されている基板Wを反転させる。反転ユニット205の走行ユニット9が保持ユニット6を下降させると、反転ユニット205の保持ユニット6は、走行ユニット9からの動力だけでなく、重力によっても加速される。したがって、反転ユニット205は、保持ユニット6を速やかに回転させることができる。また、反転ユニット205の走行ユニット9が保持ユニット6を上昇させているときに、走行ユニット9から保持ユニット6への動力の伝達が停止されると、反転ユニット205の保持ユニット6は、重力によって減速する。したがって、慣性力を保持ユニット6に確実に作用させて、反転ユニット205の保持ユニット6を反転軸線L1まわりに回転させることができる。
【0061】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態に係る回転補助ユニット340の模式的な側面図である。この図11において、前述の図1〜図10に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、保持ユニットに保持されている基板に反転軸線まわりの力(補助力)を与える回転補助ユニットが設けられていることである。
【0062】
具体的には、シャトル5は、回転補助ユニット340をさらに含む。回転補助ユニット340は、2つのノズル341を含む。ノズル341は、気体を吐出または吸引することにより、保持ユニット6および保持ユニット6に保持されている基板Wの少なくとも一方に、反転軸線L1から離れた位置で力(補助力)を与える。ノズル341の開口(吐出口および吸引口に相当)は、反転軸線L1から離れた位置で、保持ユニット6および保持ユニット6に保持されている基板Wの少なくとも一方に対向している。図11では、2つのノズル341が、搬送方向D1に間隔を空けて同じ高さに配置されている状態を示している。ノズル341は、基板Wの周縁部の上方に配置されている。ノズル341の開口は、基板Wの周縁部に上下に対向している。ノズル341は、アーム342によって支持プレート7に連結されている。
【0063】
ノズル341は、気体バルブ343が介装された気体配管344に接続されている。ノズル341は、気体配管344を介して気体供給源に接続されている。気体バルブ343が開かれると、ノズル341の開口から基板Wの周縁部に向けて気体が吐出される。これにより、基板Wの周縁部に気体が吹き付けられ、補助力が基板Wに加わる。気体が吹き付けられる位置が、反転軸線L1から離れているから、ノズル341から吐出された気体が基板Wに吹き付けられると、反転軸線L1まわりのモーメントが発生する。
【0064】
また、ノズル341は、吸引配管345を介して吸引装置346に接続されている。吸引装置346が駆動されると、ノズル341の開口から気体が吸引される。これにより、吸引装置346の吸引力(補助力)が基板Wの周縁部に作用する。吸引力が作用する位置が、反転軸線L1から離れているから、ノズル341から気体が吸引されると、反転軸線L1まわりのモーメントが発生する。
【0065】
制御装置4が保持ユニット6に保持されている基板Wを反転させるときには、制御装置4は、回転停止ユニット17による保持ユニット6の回転停止が解除されている状態で、保持ユニット6を搬送方向D1に加速または減速させると共に、回転補助ユニット340からの補助力を基板Wに与える。
具体的には、たとえば、制御装置4が図11において基板Wを右回りに回転させる場合には、制御装置4は、右側のノズル341に対応する気体バルブ343を開くことにより、右側のノズル341から気体を吐出させる。これにより、重力および慣性力に加えて、右側のノズル341からの補助力が基板Wに加わり、保持ユニット6に保持されている基板Wが反転する。
【0066】
また、制御装置4が図11において基板Wを右回りに回転させる場合には、制御装置4は、左側のノズル341に対応する吸引装置346を駆動することにより、左側のノズル341から気体を吸引させる。これにより、重力および慣性力に加えて、左側のノズル341からの補助力が基板Wに加わり、保持ユニット6に保持されている基板Wが反転する。
【0067】
また、制御装置4が図11において基板Wを右回りに回転させる場合には、制御装置4は、右側のノズル341から気体を吐出させると共に、左側のノズル341から気体を吸引させる。これにより、重力および慣性力に加えて、2つのノズル341からの補助力が基板Wに加わり、保持ユニット6に保持されている基板Wが反転する。
以上のように第3実施形態では、回転補助ユニット340からの補助力が、保持ユニット6に保持されている基板Wに加えられる。補助力の加わる位置が、反転軸線L1から離れているから、基板Wに補助力が加わると、反転軸線L1まわりのモーメントが発生し、保持ユニット6および基板Wが反転軸線L1まわりに回転する。このように、シャトル5は、慣性力および重力だけでなく、回転補助ユニット340からの補助力によっても、保持ユニット6を反転軸線L1まわりに回転させることができる。したがって、シャトル5は、保持ユニット6の姿勢を速やかに変更することができる。
【0068】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第3実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1実施形態では、シャトル5が、1つの保持ユニット6を備えており、保持ユニット6が1つのチャック20を備えている場合について説明した。しかし、複数の保持ユニット6がシャトル5に設けられていてもよいし、複数のチャック20が保持ユニット6に設けられていてもよい。
【0069】
また、前述の第1実施形態では、チャック20が、1枚の基板Wを周囲から挟むことにより水平な姿勢で保持する場合について説明した。しかし、チャック20は、基板Wを上下に挟むことにより水平な姿勢で保持するチャックであってもよい。また、チャック20は、鉛直な姿勢の基板Wを支持することによって、基板Wを鉛直な姿勢で保持するチャックであってもよい。さらに、チャック20は、複数枚の基板Wを保持するチャックであってもよい。
【0070】
また、前述の第1実施形態では、回転停止ユニット17は、保持ユニット6に保持されている基板Wが水平に配置される2つの水平位置で保持ユニット6の回転を停止させる場合について説明した。しかし、回転停止ユニット17は、保持ユニット6に保持されている基板Wが鉛直に配置される鉛直位置で保持ユニット6の回転を停止させてもよい。
また、前述の第1実施形態では、保持ユニット6の形状を反転軸線L1に関して非対称にすることにより、保持ユニット6の重心GCを反転軸線L1に対してずらす場合について説明した。しかし、保持ユニット6に重りを取り付けることによって、保持ユニット6の重心GCを反転軸線L1に対してずらしてもよい。この場合、保持ユニット6の形状は、反転軸線L1に関して対称であってもよい。
【0071】
また、前述の第1実施形態では、動力源としての電動モータ12の動力が、ベルト伝達ユニット13によって保持ユニット6に伝達される場合について説明した。しかし、動力源の動力を保持ユニット6に伝達する伝達ユニットは、ベルト伝達ユニット13以外の伝達ユニットであってもよい。たとえば、伝達ユニットは、動力源によって駆動されるボールねじと、ボールねじに取り付けられており、保持ユニット6と共に移動するボールナットとを含むボールねじ伝達ユニットであってもよい。
【0072】
また、前述の第1実施形態では、シャトル5が、保持ユニット6を水平方向に移動させることにより、基板Wの姿勢を変更する場合について説明した。また、前述の第2実施形態では、反転ユニット205が、保持ユニット6を鉛直方向に移動させることにより、基板Wの姿勢を変更する場合について説明した。しかし、シャトル5および反転ユニット205は、鉛直方向および水平方向に対して傾いた斜め方向に保持ユニット6を移動させることにより、基板Wの姿勢を変更してもよい。
【0073】
また、前述の第1および第2実施形態では、基板処理装置1、201が、円形基板を処理する装置である場合について説明した。しかし、基板処理装置1、201は、液晶表示装置用基板などの多角形基板を処理する装置であってもよい。さらに、基板処理装置1、201は、枚葉式の基板処理装置に限らず、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の基板処理装置であってもよい。
【0074】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 基板処理装置
3 処理ユニット
4 制御装置
5 シャトル(基板姿勢変更装置)
6 保持ユニット
9 走行ユニット
17 回転停止ユニット
17A 回転停止ユニット
17B 回転停止ユニット
34 回転角センサ
201 基板処理装置
205 反転ユニット(基板姿勢変更装置)
340 回転補助ユニット
CR センターロボット(第1搬送ロボット)
D1 搬送方向(交差方向)
D201 鉛直方向(交差方向)
GC 重心
IR インデクサロボット(第2搬送ロボット)
L1 反転軸線(回転軸線)
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持している状態で回転軸線まわりに回転可能であり、基板を保持している状態での重心の位置が前記回転軸線に対してずれている保持ユニットと、
前記回転軸線まわりの回転角が異なる複数の位置で前記保持ユニットの回転を停止可能であり、前記複数の位置で前記保持ユニットを保持可能な回転停止ユニットと、
前記回転軸線に交差する交差方向に前記保持ユニットを移動させ、前記交差方向に前記保持ユニットを加速または減速させる走行ユニットとを含む、基板姿勢変更装置。
【請求項2】
前記保持ユニットは、前記回転軸線としての水平軸線まわりに回転可能である、請求項1記載の基板姿勢変更装置。
【請求項3】
前記回転停止ユニットは、前記回転軸線まわりの回転角が180度異なり、前記保持ユニットによって保持されている基板が水平に配置される2つの位置で前記保持ユニットを保持可能である、請求項2記載の基板姿勢変更装置。
【請求項4】
前記走行ユニットは、前記交差方向としての水平方向に前記保持ユニットを移動させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板姿勢変更装置。
【請求項5】
前記走行ユニットは、前記交差方向としての鉛直方向に前記保持ユニットを移動させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板姿勢変更装置。
【請求項6】
前記保持ユニットおよび前記保持ユニットに保持されている基板の少なくとも一方に、前記回転軸線から離れた位置で補助力を加える回転補助ユニットをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板姿勢変更装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板姿勢変更装置と、
基板を処理する処理ユニットと、
前記基板姿勢変更装置と前記処理ユニットとの間で基板を搬送する第1搬送ロボットとを含む、基板処理装置。
【請求項8】
前記基板姿勢変更装置に基板を搬送する第2搬送ロボットをさらに含む、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記交差方向は、前記保持ユニットが前記第1搬送ロボットまたは第2搬送ロボットに対向する方向であり、
前記走行ユニットは、前記第1搬送ロボットまたは第2搬送ロボットに向けて前記保持ユニットを移動させる、請求項7または8に記載の基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−48178(P2013−48178A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186273(P2011−186273)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】