説明

多数個取り基板

【課題】クラックが生じる可能性を低減できる多数個取り基板を提供する。
【解決手段】基板として取り出されるべき基板領域E11〜E74が複数形成された多数個取り基板1であって、第1主面2a、および第1主面2aの反対側に設けられた第2主面2bを有する絶縁体2と、複数の基板領域E11〜E74のそれぞれに対応して絶縁体2の第1主面2aに設けられており、検出対象ガスに対して活性であるガス感応体を載置するための載置部3と、複数の基板領域E11〜E74のそれぞれに対応して絶縁体2に埋設された抵抗体4と、平面視して複数の基板領域E11〜E74のそれぞれを覆うように絶縁体2の第2主面2bに設けられており、かつ載置部3に対して熱を与えるためのシート状の発熱体5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板として取り出されるべき基板領域が複数形成された多数個取り基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスセンサに用いられる基板は、一般に、多数個取り基板を個片化することによって作製される(例えば、特許文献1参照)。この多数個取り基板は、基板として取り出されるべき基板領域が複数形成されている。また、多数個取り基板は、第1主面を有する絶縁体と、複数の基板領域のそれぞれに対応して絶縁体の第1主面に設けられた載置部と、複数の基板領域のそれぞれに対応して絶縁体に埋設された発熱抵抗体と、を備えている。なお、載置部は、検出対象ガスに対して活性であるガス感応体を載置するための役割を担う部材である。
【0003】
ここで、ガスセンサを作製する場合、一般に、次のような方法が行われている。まず、複数の基板領域の載置部のそれぞれに、ガス感応体となるペースト状の触媒を載置する。そして、配線導体を介して発熱抵抗体に電圧を印加することにより、発熱抵抗体を発熱させる。発熱抵抗体が発熱することにより、載置部に載置されたペースト状の触媒が暖められ乾燥・固着しガス感応体となる。そして、基板領域同士の境界部分に形成された分割溝に沿って分割することにより、基板領域をガスセンサ用の基板として取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−010103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、載置部に載置されたペースト状の触媒を乾燥・固着するために、複数の発熱抵抗体を発熱させると、発熱抵抗体が設けられた部位と発熱抵抗体が存在しない部位との間で熱応力が発生し、絶縁体にクラックが生じる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クラックが生じる可能性を低減できる多数個取り基板に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明における多数個取り基板は、基板として取り出されるべき基板領域が複数形成された多数個取り基板であって、第1主面、および前記第1主面の反対側に設けられた第2主面を有する絶縁体と、複数の前記基板領域のそれぞれに対応して前記絶縁体の第1主面に設けられており、検出対象ガスに対して活性であるガス感応体を載置するための載置部と、複数の前記基板領域のそれぞれに対応して前記絶縁体に埋設された抵抗体と、平面視して複数の前記基板領域のそれぞれを覆うように前記絶縁体の第2主面に設けられており、かつ通電することにより発熱し前記載置部に対して熱を与えるためのシート状の発熱体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の多数個取り基板は、クラックが生じる可能性を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る多数個取り基板の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1中に示した切断線I−Iに沿って切断した断面図である。
【図3】上記の多数個取り基板から取り出したガスセンサ用の基板の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る多数個取り基板1は、基板として取り出されるべき基板領域E11〜E74が、縦横の並びに複数配列形成されている。なお、図1では、基板領域E11〜E74が28個形成されている例について図示したが、これに限定されない。すなわち、多数個取り基板1に形成されるべき基板領域の数については、任意である。
【0012】
ここで、以下では、基板領域を説明する際、特に区別する必要のある場合にのみ、例えば、基板領域E11のように、それぞれを区別するための数字を付して説明し、特に区別する必要がない場合、あるいは、総称する場合には、例えば、基板領域Eのように、数字を付さずに説明する。
【0013】
図1および図2に示すように、多数個取り基板1は、絶縁体2、載置部3、抵抗体4、発熱体5、および保護体6を備えている。
【0014】
絶縁体2は、第1主面2a、および第1主面2aの反対側に位置する第2主面2bを有している。絶縁体2は、例えば、セラミック、シリコン、ガラス等の絶縁性材料からなるが、特に、セラミックからなるのが好ましい。セラミックは、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体、ガラスセラミック焼結体等である。
【0015】
また、絶縁体2には、基板領域E同士の境界部分に分割溝21が形成されている。分割溝21が形成されているので、分割溝21に沿って基板領域Eをガスセンサ用の基板として容易に取り出すことができる。ここで、分割溝21は、例えば、金型、レーザ等により形成される。なお、分割溝21の幅、深さ、形状、数については特に限定されるものではなく、任意である。
【0016】
載置部3は、複数の基板領域E11〜E74のそれぞれに対応して絶縁体2の第1主面2aに設けられている。本実施形態においては、載置部3は、基板領域Eの中央部に設けられている。また、載置部3は、検出対象ガスに対して活性であるガス感応体を載置するための役割を担う部材である。ここで、ガス感応体としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が挙げられる。すなわち、ガス感応体は、検出対象ガスとの接触に起因して触媒反応が生じ、触媒反応が生じることにより発熱反応が生じる部材となる。
【0017】
抵抗体4は、複数の基板領域E11〜E74のそれぞれに対応して絶縁体2に埋設されている。抵抗体4は、通電することにより発熱し載置部3に載置されたガス感応体を加熱することにより当該ガス感応体を所定の温度に上昇させ、これによってガス感応体を活性化させるための役割を担う部材である。また、抵抗体4は、ガス感応体に検出対象ガスが接触すると、ガス感応体の発熱反応により発生する熱によって暖められ、これによって抵抗値が変化する部材である。このため、抵抗体4は、載置部3の近傍であって、かつ載置
部3と対向する部位に設けられている。すなわち、ガス感応体の発熱反応により発生した熱によって抵抗体4が温められると、抵抗体4の抵抗値は大きくなる。この抵抗値の変化を検出することによって、検出対象ガスを検知することができる。ここで、抵抗体4は、例えば、白金、モリブデン、タンタル、あるいはタングステン等からなる。
【0018】
発熱体5は、平面視して複数の基板領域E11〜E74のそれぞれを覆うように絶縁体2の第2主面2bに設けられている。発熱体5は、シート状であり、通電することにより発熱し載置部3に対して熱を与えるための役割を担う部材である。すなわち、発熱体5は、外部から電圧が印加されることにより、通電し発熱することになる。ここで、発熱体5は、例えば、銀、銅、金、パラジウム、タングステン、モリブデン、あるいはマンガン等の金属材料からなる。なお、発熱体5は、載置部3に載置されたペースト状の触媒が暖められ乾燥・固着できる温度で発熱すれば、その厚み、印加すべき電圧値等は特に限定されない。
【0019】
保護体6は、平面視して発熱体5を覆うように当該発熱体5に設けられている。発熱体5に保護体6が設けられているので、発熱体5が空気等に接触することによる腐食の可能性を低減することができる。保護体6は、絶縁体2と同様、例えば、セラミック、シリコン、ガラス等の絶縁性材料からなる。
【0020】
次に、上記の構成に係る多数個取り基板1からガスセンサ用の基板を取り出す一具体例について説明する。
【0021】
まず、上記の構成に係る多数個取り基板1を準備する。すなわち、絶縁体2および保護体6がセラミックからなる場合、抵抗体4ならびに発熱体5となるメタライズペーストを印刷した絶縁体2となるセラミックグリーンシート、および保護体6となるセラミックグリーンシートを所定の温度で焼成することによって多数個取り基板1が作製される。そして、多数個取り基板1の複数の基板領域E11〜E74の載置部3のそれぞれに、ガス感応体となるペースト状の触媒を載置する。そして、発熱体5に電圧を印加することにより、発熱体5を発熱させる。発熱体5が発熱することにより、載置部3に載置されたペースト状の触媒が暖められ乾燥・固着しガス感応体となる。そして、基板領域E同士の境界部分に形成された分割溝21に沿って分割することにより、基板領域Eをガスセンサ用の基板として取り出すことができる。
【0022】
図3は、上記の構成に係る多数個取り基板1から取り出したガスセンサ用の基板10の概略構成を示す断面図である。図3に示すように、載置部3には、ガス感応体11が載置されている。
【0023】
以上のように、本実施形態に係る多数個取り基板1によれば、シート状の発熱体5は、平面視して複数の基板領域E11〜E74のそれぞれを覆うように絶縁体2の第2主面2bに設けられており、載置部3に対して熱を与えるための役割を担う部材である。すなわち、多数個取り基板1は、載置部3に載置されたペースト状の触媒を乾燥・固着するために、上記従来の複数の発熱抵抗体を発熱させることなく、発熱体5に電圧を印加することにより、当該発熱体5を発熱させる。
【0024】
また、発熱体5は、平面視して複数の基板領域E11〜E74のそれぞれを覆うように絶縁体2の第2主面2bに設けられているので、発熱体5の熱は、複数の基板領域E11〜E74の全体に渡って均一に伝わることになる。このため、多数個取り基板1は、上記従来の多数個取り基板のように、発熱抵抗体が設けられた部位と発熱抵抗体が存在しない部位との間で熱応力が発生することはない。この結果、多数個取り基板1は、絶縁体2にクラックが生じる可能性を低減できる。
【符号の説明】
【0025】
1 多数個取り配線基板
2 絶縁体
2a 第1主面
2b 第2主面
21 分割溝
3 載置部
4 抵抗体
5 発熱体
6 保護体
11〜E74 基板領域
10 ガスセンサ用の基板
11 ガス感応体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板として取り出されるべき基板領域が複数形成された多数個取り基板であって、
第1主面、および前記第1主面の反対側に設けられた第2主面を有する絶縁体と、
複数の前記基板領域のそれぞれに対応して前記絶縁体の第1主面に設けられており、検出対象ガスに対して活性であるガス感応体を載置するための載置部と、
複数の前記基板領域のそれぞれに対応して前記絶縁体に埋設された抵抗体と、
平面視して複数の前記基板領域のそれぞれを覆うように前記絶縁体の第2主面に設けられており、かつ通電することにより発熱し前記載置部に対して熱を与えるためのシート状の発熱体と、を備えたことを特徴とする多数個取り基板。
【請求項2】
平面視して前記発熱体を覆うように当該発熱体に設けられた保護体をさらに備える、請求項1に記載の多数個取り基板。
【請求項3】
前記絶縁体には、前記基板領域同士の境界部分に分割溝が形成されている、請求項1または2に記載の多数個取り基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の多数個取り基板において前記基板領域を取り出すことにより得られる、ガスセンサ用の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−174861(P2011−174861A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40171(P2010−40171)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】