説明

導管反力を介した腱張力の感知

【課題】例えばロボットの手における腱の張力を正確に測定できる小型のセンサーを提供する。
【解決手段】本発明の教示によれば、腱が通る導管にかかる導管反力を使用して腱の張力を判定する技法が開示されている。この目的のためには、導管反力を使用する如何なる適式な腱張力センサーも採用できる。非限定的一実施形態においては、腱張力センサー50は、円筒形ひずみゲージ素子62と、導管54の一端に搭載されている力片56とを備えている。力片56は、内腔を有する円筒形部58と、力プレート60とを備えており、その円筒形部58は、ひずみゲージ素子62の内腔64に挿入される。腱52は、ひずみゲージ素子62及び力片56を貫通している。ひずみゲージ70及び72がひずみゲージ素子62に搭載されており、腱52にかかる張力によりひずみゲージ素子62が力片56に対して押されるときの反力を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府により後援された研究又は開発に関する陳述
ここに記述された発明は、米国政府に対して、又はそのために実施料を支払うことなく、米国政府の(つまり非商業的)目的のために、米国政府により、又はそのために製造され、使用される。
【0002】
本発明は、概して、腱に通る導管にかかる導管反力を使用して腱にかかる張力を測定するための腱張力センサーに関し、特に、センサーが、腱が通る導管の端に搭載され、そのセンサーが導管にかかる導管反力を測定するようなロボットの手内の腱にかかる張力を測定するための腱張力センサーに関する。
【背景技術】
【0003】
各種の機能を実行する器用なロボットシステムというのは当該技術分野では知られている。器用なロボットシステムは、とりわけ、物や、特定の応用のための部品を掴むように動作する指と関連の関節を伴ったロボットの手を有するロボットの腕を備えている。1つの器用なロボットシステムの設計においては、指を操作するために腱が採用されており、それらの腱は、指の関節に接続されている。指を動かすために腱を操作するアクチュエーターは、典型的には、ロボットの腕の前腕領域内に置かれている。腱は、アクチュエーターから指関節に延びて、そこに取り付けられている。とりわけ、指の単一関節を操作するには2本の腱が必要である。つまり、一方の腱は指を閉じるためのものであり、他方の腱は指を開くためのものである。
【0004】
腱は、しばしば、アクチュエーターと関節の間に生じる構成変更から関節動作を隔離する導管に通される。導管は、腱の力に抵抗する役割を果たす反力をその支持構造で受けている。これにより、各アクチュエーター関節力が、関節からのトルクに応じて上流の各関節を妨害することが抑制されている。更に、導管は、腱の長さを一定に維持する。従って、ロボットの腕の手首が動いたとしても、導管は、腱の長さを一定に保ち、それにより指は動かない。
【0005】
ロボットの指の力の制御に関するループを閉じたものとするために、腱張力に対してはフィードバックが必要である。腱張力を直接測定することは挑戦的なことであることが分かっている。主要摩擦力の下流位置を示す等のいくつかの因子がこの挑戦に貢献している。しかし、そのような位置において、下流のロボットアセンブリ、特にロボットの掌、での空間は厳しく制限されている。更に、腱は固定されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロボットの腱における張力を測定するための1つの知られた技法においては、腱の引張り変形を測定するためのひずみゲージセンサーが採用されている。しかしながら、ロボットの応用において生ずる引張り力の範囲は非常に小さいので、ひずみゲージセンサーは、正確な測定値を呈するに十分な感度を有しない。また、ひずみゲージセンサーは、腱の変形を測定するのではなく、腱に曲げを導入するひずみ素子を採用しているので、腱張力がより大きくなれば、その素子におけるひずみもより大きくなる。しかしながら、とりわけ、そのようなセンサーのための十分な空間がない。
【0007】
当該技術分野において、張力を測定するためのロードセルを使用することも知られている。しかしながら、商業的に利用できるロードセルは、ロボットの応用には大き過ぎるので、それらはロボットの腕の内部に十分に収容できない。
【0008】
他の知られた設計においては、ひずみゲージが搭載されるS形状弾性素子が採用されている。腱の一端がそのS形状素子の一端に接続され、他の腱の一端がそのS形状素子の他端に接続され、そうすると腱にかかる張力によりS形状素子が変形する。この設計によれば、腱を切断することが必要であり、素子の直径も比較的大きくなってしまう。この設計は、また、空間の欠如という問題とともに、動く部材に取り付けられた配線が空間内にぶら下っているという問題を呈している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の教示によれば、腱が通る導管にかかる導管反力を使用して腱の張力を判定する技法が開示されている。この目的のためには、導管反力を使用する如何なる適式な腱張力センサーも採用できる。非限定的一実施形態においては、腱張力センサーは、円筒形ひずみゲージ素子と、導管の一端に搭載されている力部材とを備えている。力部材は、内腔を有する円筒形部と、プレート部とを備えており、その円筒形部は、ひずみゲージ素子の内腔に挿入される。腱は、ひずみゲージ素子及び力部材を貫通している。ひずみゲージがひずみゲージ素子に搭載されており、腱にかかる張力によりひずみゲージ素子が力部材に対して押されるときの反力を測定する。
【0010】
本発明の更なる特徴は、添付図面を組み合わせることにより、以下の詳細な説明及び付属の請求の範囲から、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ロボットの手と手首の斜視図であり、ロボットの手の指を操作する導管に通された腱を示している。
【図2】図2は、腱の自由物体図である。
【図3】図3は、腱が貫いている導管の自由物体図である。
【図4】図4は、導管に貫いている腱にかかる張力に応じて導管にかかる力の平面図である。
【図5】図5は、ケーブルに搭載された腱張力センサーの斜視図である。
【図6】図6は、図5に示されたセンサーに関連したひずみゲージ素子の斜視図である。
【図7】図7は、腱張力センサーのための他のひずみゲージ素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
腱が通された導管にかかる反力を測定する、ロボットの腕のための腱張力センサーを意図した本発明の実施形態についての以下の議論は、本質的に単なる例示であり、本発明又はその応用もしくは使用を制限しようとするものではない。例えば、本発明には、ロボットの腕内の腱にかかる張力を測定するという応用がある。しかしながら、当業者であれば理解できるように、腱張力センサーは、他にも応用できる。
【0013】
図1は、旋回関節16により互いに旋回可能なロボットの手12及びロボットの手首14を含むロボットの腕10の一部の斜視図である。ロボットの手12は、ロボットの指18及びロボットの掌20を有している。ロボットの指18は、当該分野でよく理解できるように、ロボットの手12がある構成物を掴めるように操作可能な複数の関節22を有している。腱24は、関節22に結合され、腱24を動かして関節22を閉じたり開いたりする、例えばモータのような適当なアクチュエーター(図示せず)により操作される。各腱24は、示されているように、手首14及び掌24を通して延びている上述のようなタイプの導管26を貫いて延びている。かかる構成のロボットの腕の動作は、当業者にはよく理解できる。
【0014】
図2は、ケーブル30の自由物体図であり、図3は、導管32の自由物体図であり、それぞれ腱24と導管26を意図して示されている。これらの自由物体図は、導管32の端部の局所導管反力Pは、腱30上の対応する局所腱張力Tを方向及び大きさの双方において正確に予測する。この近似は、張力負荷が増すと、正確性が増す。従って、これらの図が示していることや、本発明が提案していることは、腱24にかかる張力に応じた導管反力Pが、ロボットの腕10内の腱張力を測定する技法として使用できる、ということである。
【0015】
図4は、導管44に通された腱42を含む力図40を示しており、上述の導管反力を描いている。特に、ロボットの関節を動かすような腱42の操作の結果として腱42にかかる引張り力により、プレート46上の導管44の一端部分に反力が生じる。
【0016】
本発明は、腱が貫いている導管にかかる導管反力を使用して腱の張力を判定する技法を提案している。この目的のためには、導管反力を使用する如何なる適式な腱張力センサーも採用できる。
【0017】
図5は、1つの適した非限定的実施形態としての、上で議論した導管反力を使用して、導管に通された腱52にかかる張力を測定する腱張力センサー50の斜視図である。張力センサー50は、導管54の一端に通された、又は搭載された円筒形力片56を含んでいる。力片56は、円筒形部58及び力プレート60を含んでいる。内腔64を有する円筒形ひずみゲージ素子62が、円筒形部58を内腔64内に摺動することにより、力片56に搭載されている。図6は、センサー50から分離されたひずみゲージ素子62の斜視図である。ひずみゲージ素子62は、円筒形本体部材66の側面を刻みとって得られた4つの対称スカロップ部68を有する円筒形本体部66を備えている。一対のひずみゲージ70及び72が、スカロップ部68の一つに位置付けされており、ひずみゲージ70は、長手方向のひずみを測定し、ひずみゲージ72は、横断方向のひずみを測定する。従って、腱52にかかる張力が、力片56をひずみゲージ素子62内に引っ張り、それにより、ひずみゲージ70及び72により測定される導管反力に応じてひずみゲージ素子が縮む。ひずみゲージ70及び72は、その張力を示す電気信号を配線(図示せず)上に送る。上で議論のように、導管反力は、腱52の張力を正確に予測したものである。
【0018】
図7は、他の実施形態による、ひずみゲージ素子62の代わりのひずみゲージ素子80の斜視図である。ひずみゲージ素子80は、上述のように素子56を受け入れる内腔82を有している。ひずみゲージ素子80は、また、内腔82と連通する対向切欠き部86及び88を有する円筒形本体部材84を備えている。切欠き部86及び88は、対向する柱90及び92を画定している。ひずみゲージ94及び96が、柱90の各対向面に搭載されている。
【0019】
腱52にかかる張力により、軸方向の負荷が与えられ、その負荷は、偏心柱90を介して曲げモーメントに変換される。その曲げモーメントは、一面を圧縮し、一面を拡張させる。ひずみゲージ94及び96は、その圧縮力と伸長力を測定する。これにより信号強度が2倍になり、特別な無アクセスゲージなしに温度補償が行える。両搭載面は、素子80により提供される円筒形包絡線の内側にあり、それによりゲージ94及び96を掌20の物理的接触から保護している。
【0020】
以上の議論は、本発明の単なる例示の実施形態を開示し記述するものである。当業者であれば、かかる議論及び添付の図面及び請求の範囲から、各種の変更、修正及び変形態様が、以下の請求の範囲に規定されたような発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形成できることが認識できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管を貫いてその一端から出るように延びている腱にかかる張力を測定するためのセンサーであって、
前記導管の前記一端に搭載され、前記腱が貫いて延びている内腔を有する円筒形部と、プレート部とを含む力素子と、
内腔を有する円筒形本体を含むひずみゲージ素子と、
を備え、
前記力素子の前記円筒形部は、前記ひずみゲージ素子の前記円筒形本体の前記内腔に挿入され、前記腱は、前記円筒形本体の前記内腔をも貫いて延び、前記ひずみゲージ素子は、搭載される少なくとも1つのひずみゲージを有し、当該少なくとも1つのひずみゲージは、前記腱にかかる張力に応じて前記プレート部を押す前記ひずみゲージ素子により生じた、前記導管の前記一端における導管反力を測定することを特徴とするセンサー。
【請求項2】
前記ひずみゲージ素子は、対向する柱を画定する、前記円筒形本体の切欠き部を備え、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記対向する柱の一方に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記対向する柱の一方の対向面に搭載された2つのひずみゲージであり、前記導管反力による前記ひずみゲージ素子にかかる曲げの動きに応じて、それらのひずみゲージの一方は圧縮を測定し、他方のひずみゲージは伸長を測定することを特徴とする請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
前記ひずみゲージ素子は、前記円筒形本体に複数の平坦面を有し、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記円筒形本体の前記平坦面の一面に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサー。
【請求項5】
前記少なくとも1つのひずみゲージは、平坦面に搭載され、前記ひずみゲージ素子の各対向方向のひずみを測定するように反対に向けられた2つのひずみゲージであることを特徴とする請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
前記腱は、ロボットの手において、ロボットの指の関節を動かす腱であることを特徴とする請求項1に記載のセンサー。
【請求項7】
ロボットの手における導管を貫いてその一端から出て前記ロボットの手の指に入るように延びている腱にかかる張力を測定するためのセンサーであって、
前記導管の前記一端に搭載され、前記腱が貫いて延びる力素子と、
前記力素子に搭載されたひずみゲージ素子と、
を備え、
前記腱は、前記ひずみゲージ素子を貫いて延び、前記ひずみゲージ素子は、少なくとも1つのひずみゲージを搭載し、当該少なくとも1つのひずみゲージは、前記腱にかかる張力に応じて前記力素子を押す前記ひずみゲージ素子により生じた、前記導管の前記一端における導管反力を測定することを特徴とするセンサー。
【請求項8】
前記力素子は、円筒形部及びプレート部を備え、前記円筒形部は、前記腱が貫いて延びる内腔を有することを特徴とする請求項7に記載のセンサー。
【請求項9】
前記ひずみゲージ素子は、前記腱が貫いて延びる内腔を有する円筒形本体を備えることを特徴とする請求項7に記載のセンサー。
【請求項10】
前記ひずみゲージ素子は、対向する柱を画定する、前記円筒形本体の切欠き部を備え、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記対向する柱の一方に搭載されていることを特徴とする請求項9に記載のセンサー。
【請求項11】
前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記対向する柱の一方の対向面に搭載された2つのひずみゲージであり、前記導管反力による前記ひずみゲージ素子にかかる曲げの動きに応じて、それらのひずみゲージの一方は圧縮を測定し、他方のひずみゲージは伸長を測定することを特徴とする請求項10に記載のセンサー。
【請求項12】
前記ひずみゲージ素子は、前記円筒形本体に複数の平坦面を有し、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記円筒形本体の前記平坦面の一面に搭載されていることを特徴とする請求項9に記載のセンサー。
【請求項13】
前記少なくとも1つのひずみゲージは、平坦面に搭載され、前記ひずみゲージ素子の各対向方向のひずみを測定するように反対に向けられた2つのひずみゲージであることを特徴とする請求項12に記載のセンサー。
【請求項14】
導管を貫いてその一端から出るように延びている腱にかかる張力を測定するためのセンサーであって、
前記導管の前記一端に搭載され、前記腱にかかる張力に応じた前記導管の前記一端における導管反力に感応する力素子を備え、前記前記導管反力を測定することを特徴とするセンサー。
【請求項15】
前記力素子に搭載される一方で、少なくとも1つのひずみゲージを搭載するひずみゲージ素子を更に備え、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記腱にかかる張力に応じて前記力素子を押す前記ひずみゲージ素子により生じた、前記導管の前記一端における前記導管反力を測定することを特徴とする請求項14に記載のセンサー。
【請求項16】
前記力素子は、円筒形部及びプレート部を備え、前記円筒形部は、内腔を有し、前記腱は、前記円筒形部の前記内腔を貫いて延びることを特徴とする請求項15に記載のセンサー。
【請求項17】
前記ひずみゲージ素子は、内腔を有する円筒形本体を含み、前記力素子の前記円筒形部は、前記ひずみゲージ素子の前記円筒形本体の前記内腔に挿入され、前記腱は、前記円筒形本体の前記内腔をも貫いて延びていることを特徴とする請求項16に記載のセンサー。
【請求項18】
前記ひずみゲージ素子は、対向する柱を画定する、前記円筒形本体の切欠き部を備え、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記対向する柱の一方に搭載されていることを特徴とする請求項17に記載のセンサー。
【請求項19】
前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記対向する柱の一方の対向面に搭載された2つのひずみゲージであり、前記導管反力による前記ひずみゲージ素子にかかる曲げの動きに応じて、それらのひずみゲージの一方は圧縮を測定し、他方のひずみゲージは伸長を測定することを特徴とする請求項18に記載のセンサー。
【請求項20】
前記ひずみゲージ素子は、前記円筒形本体に複数の平坦面を有し、前記少なくとも1つのひずみゲージは、前記円筒形本体の前記平坦面の一面に搭載されていることを特徴とする請求項17に記載のセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−117347(P2010−117347A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−227252(P2009−227252)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(505212049)ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・インコーポレーテッド (221)
【Fターム(参考)】